イスラムアート紀行

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「六古窯」展から「瀬戸本業窯」展へ

出光美術館「六古窯〜<和>のやきもの」展。越前や丹波などはしっかり見たことがなかったので、良い機会でした。猿投のものも数がありました。

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自然釉がたまりませ〜〜ん。土と炎の色の景色、焼成時に生じた歪みの味わい。デジタルなものに囲まれた高速な暮らしの中で、このようなやきものを見る時間、大事だなと思いました。土、やきもの、いいなあ。http://idemitsu-museum.or.jp/exhibition/present/


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テンション高いまま中目黒、桜満開の目黒川沿いを器のお店「SML」での「瀬戸本業窯」展へ。予想はしていましたが、好天もあり、ものすごい混雑。前に進むのも大変なくらい。たどり着いてホッとしました。

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やっぱり、いいなあ、瀬戸本業窯。以前、本業タイルのことで取材させていただいたこともあり、親しみがありますし、どの仕事も大好きです。三彩、馬の目、麦わら手、黄瀬戸、染付。絵付けもやわらかくやさしい。手に持った感触や程良い厚みなど、使いやすさは、さすが!と思います。

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ファンが多いです。盛況。この週末はご家族も店頭に。温かい空気に満ちていました。(4月14日まで。http://sm-l.jp)
by orientlibrary | 2019-04-07 21:49 | 日本のタイル、やきもの

多治見笠原 懐かしの「モザイク浪漫館」- 1

訳あって写真整理をしています。懐かしいなあ、「モザイク浪漫館」。「多治見市モザイクタイルミュージアム」(2016年オープン)の前身とも言える日本モザイクタイルの殿堂です(でした)。

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時間を忘れて熱中する、タイル好き、やきもの好きの聖地のような場所。地元有志が長い年月をかけて集めたタイルや資料、生き字引のような館長さん、皆さんのタイル愛に圧倒されました。

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日本を代表するタイル産地・笠原のタイル、全国から収集した歴史的価値のあるタイルやテラコッタ、浴槽や洗面台、タイル見本帳や道具。

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昭和のデザインや色使いは可愛らしく、明るい。前向きな心持ちを感じる。やきものとしての魅力度も高い。廃校を利用した建物の味わいも、たまらないものがあるのでした。

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心に残る、タイルのある場所。ありがとう。忘れません。
(写真がまだ結構あるので、またアップします)

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* 検索で発見したブログ「やきもの物語」内記事「タイルの変遷ーモザイク浪漫館」。笠原のタイルの歴史も合わせ、展示内容が詳しく紹介されています。写真も豊富! → http://www.kano.co.jp/blog/2009/06/タイルの変遷ーモザイク浪漫館/
by orientlibrary | 2019-03-09 23:05 | 日本のタイル、やきもの

グセアルス展 パターン・シード~漂う未来模様~@多治見市モザイクタイルミュージアム

タイルの魅力と可能性を探る企画展示を展開する多治見市モザイクタイルミュージアム。現在、陶磁器のかけらを使って、新たな模様「washed pattern」を創作する2人組のアーティスト 「guse ars (グセアルス)」の特別展を開催中。80ほどの模様(パターン)と、それぞれの模様の種子(シード)となった陶磁器片などを展示しているようです。(5月12日まで)

陶片って魅惑ですよね。大好きです。かけらの方が好きかも、と思うときがあるくらい。全体はどうだったんだろうと、遠い時代に思いを馳せます。

陶片から新たなパターンを生み出すというグセアルスさん、(実物を拝見していませんが)、パターンは軽やかで今に溶け込む小粋なリズムを感じます。「今回は日本を代表するタイルの産地、多治見で見つけた300近い陶片がパターンの種となっている」そうです。

一方、新パターンとその元になった皿の写真を見ると、ちょっと不思議。博物館などで陶磁器や着物の図案帳を見ること、ワクワクして好きなんですが、図案帳から図柄が生まれ、その陶片から新たなパターンができる。時空旅をしているみたいです。

私はイスラームタイル偏愛なので、それ以外は別カテゴリーとして考えるようにしているのですが(そうすると心穏やかに見られる)、日本でのタイルの可能性、あるいはタイルから広がる何か。いろんな発想で、まだまだ開いていけるのかなと感じます。



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(多治見市モザイクタイルミュージアム 同展紹介より引用   http://www.mosaictile-museum.jp/exhibition/gusears/)

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(多治見市モザイクタイルミュージアム 同展紹介より引用   http://www.mosaictile-museum.jp/exhibition/gusears/)

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* 多治見市モザイクタイルミュージアム
http://www.mosaictile-museum.jp

* 特別展 guse ars exhibition -PATTERN SEED-
http://www.mosaictile-museum.jp/exhibition/gusears/

* Casa BRUTUS WEBでの紹介記事
https://bit.ly/2ToMw5k
by orientlibrary | 2019-03-07 21:49 | 日本のタイル、やきもの

ホラズムのお皿、新うるしで金継ぎ

ウズベキスタン・ホラズムにて、陶芸家のお家での結婚の儀式の一部〜宴に参加させていただきました。お祝いの食事が盛り付けられたお皿が素敵で、目が釘付けになっていたら(というか、素敵〜〜!と騒いでいたら)、陶芸家さん(花嫁の父)が「気に入ったのならあげましょう」と、なんと皿をプレゼントしてくださったのです!

なのに、思い出深いそのお皿を、移動中ではなく日本で粉々にしてしまい、申し訳なく思っていました。が、今回、「金継ぎワークショップ」(@横浜エスニカ)にて、お皿が復活しました!

金継ぎというと素人には敷居が高いもの。でも、このワークショップは、「植物由来の新うるしという合成の素材を使うことで、短時間で接着と硬化ができ、またかぶれにくいため、金継ぎに初めて触れるという方にも最適な講座」。

手順は、割れたパーツをマスキングテープで仮止め〜エポキシで接着〜パテで欠けを埋める〜整える〜パテの上に新うるしを塗る〜乾かす。

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パテで埋めるのが難しかった。先生やエスニカさんに強力サポートしていただき、不器用な私でもなんとか復元ができました!

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 以前、トルコから運んだ時に割れてしまった鉢、銀継ぎしていただいたもの、しまい込んでいましたが、出して写真撮りました。さすがに綺麗!!少しでも自分でやってみると、工芸作品の凄みに気づかされます。

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by orientlibrary | 2019-03-04 00:25 | ウズベキスタンのタイルと陶芸

『民藝 MINGEI -Another Kind of Art展』

『民藝 MINGEI -Another Kind of Art展』、見られた方も多いと思います。24日までということで、21_21 DESIGN SIGHTへ。先日、日本民藝館で『柳宗悦の「直観」』を見ましたが、また違う角度から柳さんの蒐集の眼と心に触れられた気がします。
http://www.2121designsight.jp/program/

『柳宗悦の「直観」』は、展示品の解説(キャプション)が一切無し。通常ついつい解説を先に見てしてしまう私ですが、解説無しは自由で清々しくて新鮮で楽しかった。『MINGEI展』も、各セクションのテーマをコメント的に表した短いコピーのみ。いずれも、民藝に合っているなあと感じました。

『MINGEI展』では、展示導入部の映像(現在の作り手たち)と「民藝運動フィルムアーカイブ」(特別上映)が印象に残りました。マーティ・グロスさんの40年に及ぶ記録映像は重要ですね。

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二つの映像の中に小鹿田の職人さんたちも多数登場していたのですが、先週、小鹿田に初めて行ったので、ぐっと感情移入して見ていました。

小鹿田へのローカルバス、乗客は私一人でした。みなさん車なのでしょう。山あいの集落、登り窯の煙突が見えてきます。せせらぎのなかに、唐臼の音があちこちから聞こえてくる。道沿いに10軒の窯元、小鹿田焼陶芸館、峠の茶屋風の蕎麦屋がありました。

前庭での天日干し、水簸、職人さんの姿、地元の土、釉、蹴ロクロ、伝統の技法。小鹿田焼はここで(ここだから)できるんだな、と、腑に落ちました。

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●「日本民芸館」(柳宗悦)『MINGEI展』配布資料より抜粋・引用 ●

国家は少数の異常な人々を挙げて、その名誉を誇るかも知れない。しかし一国の文化程度の現実は、普通の民衆がどれだけの生活を持っているかで判断すべきであろう。その著しい反映は、彼らの日々の用いる器物に現れる。民藝館は故国の栄誉のために、この問いに明確な答を与えようとするのである。訪れる方は他のどんな美術館においてよりも、ここで日本の生活をまともに見られるであろう。

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by orientlibrary | 2019-02-23 23:51 | 世界の陶芸、工芸

TORAFU’s TILE LAB

当ページ管理人orientlibraryは、イスラーム世界の建築を装飾するタイルに魅了されて四半世紀になります。テイストは違いますが、やきもの感の高い日本のタイル(例えば泰山タイル)にも惹かれます。この嗜好の流れから、工業製品としてのタイルは自分にとって好き嫌いではなく別カテゴリー。

が、「トラフ建築設計事務所の鈴野浩一氏が、実際のプロジェクトを通して、素材としてのタイルの魅力とデザインのプロセスを解説」(DESIGNER's TILE LAB、2月14日開催@渋谷ヒカリエ)というトークを知り、日本の建築・デザインの専門家が、どのような視点でタイルを見たり、選んだりしているのかに興味がわき、参加させていただきました。

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“デザイナーズ・タイル・ラボ”(LIXIL)のコンセプトは、「タイルのいまを知ると、デザインが楽しくなる」。この観点から新しいタイルを5つの方向に分類し、その可能性を考えていく」試みのようです。 
*→https://www.lixil.co.jp/…/ti…/designers_tile_lab/default.htm
トラフの鈴野さんのお話、メモを取りましたが、こちらにインタビューのまとめがありました。ラッキー!4回に分けて詳しく書かれています。 
*→https://www.lixil.co.jp/…/ti…/designers_tile_lab/default.htm 
ここでは感じたことだけを(勝手にすいません!)。

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まず、鈴野さんがタイルに興味を持ったきっかけは、INAXライブミュージアムで2013年に開催された展覧会「建築の皮膚と体温 – イタリアモダンデザインの父、ジオ・ポンティの世界」の会場構成を手がけたこと。「シンプルな形状をしたタイルでも、組み合わせ方で重なったり、段差が付いたりと、表情が変わって見える」ことが新鮮だったようです。インテリア雑誌「コンフォルト」の企画で、オリジナルのクローバー型タイルを作ったことも。

タイルの持つ特徴を生かしながら設計しているさまざまな事例がスライドで紹介されます。大理石のモザイクタイルを張り壁画のように見立てた事例、14mm角タイルに対して目地をレンガ用の荒々しい仕様の幅広の6mmに設定して焼き色が1つずつ異なるタイルと一体で奥行きが感じられるようにした事例、床にモザイクタイルを敷きつめて水を表現した事例など。次に、LIXILのタイル製造工場を見学した体験の紹介。

トラフのタイル使いは、異素材との組み合わせや余白など、タイルを生かすバランスの工夫が、タイル好きとしてはうれしく感じました。(日本の工業製品の)モザイクタイルは小さくてカラフルで、テキスタイルのような多彩な表現ができるのですね。

最後に衝撃の?YouTube映像。二人の若者が地元の泥から日干しレンガや焼成レンガを作り、プール付きハウスや塀をサクサクとセルフビルドしていく様子が紹介されました。

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さすが。鈴野さんのメッセージは、ここかなとも感じました。その後のトークで、「今回の5つの方向の中では、やきもののタイルに惹かれる。表情があっていいなと思う」「タイルは工業化されすぎているかなとも感じる。ガタガタしたり、ちょっと違うのが魅力」と、ばらつきや歪みへのおおらかな感性も語られました。
そうなんですよね。デザイン関係者でも、そういう人が少なくないのでは。でもメーカーの使命が、良い意味で均一な製品を提供することだと考えると、なかなか難しい。

だから、やはり分けて考えた方がわかりやすいと思いました。一方で、やきもの的なタイルをオーダーで作り提供するのもありかなと。


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添付写真4枚めからは、ウズベキスタン西部・ホラズムのタイル工房で、組み合わせで模様が変わるのを見せてもらった時のもの。あまりの早業に動画撮るのも間に合わず。ジオ・ポンティの幾何学模様変化映像を見て思い出しました(笑) 

このような幾何学模様が満載のヒヴァのタイルを少々。青が綺麗でしょう?時代はあまり古くなく18世紀以降のものが多いと思います。修復が盛んに行われていますが、難しそう!釉薬の発色も素地の強さも、昔の技術は凄いです。

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この数年、日本の古いタイル(大正、昭和)が人気。多治見にモザイクタイルミュージアムも開館し、タイルをめぐる状況も変化しつつ、変わらない部分もあり。自身の体調や各国の事情などあり海外に行けていないこの頃ですが、マイペースでいこうと思います。
by orientlibrary | 2019-02-15 22:40 | タイルのデザインと技法

キャプション無しって、なんて自由!〜日本民藝館『柳宗悦の「直観」』

展示品の解説無し。そのことを知らずに行ったので、余計に鮮度高く感じました。NO解説だけでなく、展示もNOカテゴリー(ジャンル、産地、年代、技法など)。強いて言えば、サイズ別のレイアウト。いろんなものが混ざっている。

あ〜、なんて自由!なんて清々しい!楽しい。キャプションがないだけで、こんなに新鮮に見られるなんて。


私、博物館などで、いつもキャプションから読んでしまうのです。見てから読もうと思っているのに、気が急いて読んでしまう。読んだ時点で見たつもりになっている。文字情報があると読まなくちゃと思ってしまう。囚われてるなあ。。


展示は、色や質感が心地良いバランス。ものたちが伸び伸び、そこにある。展示設計にはとても苦労されたそうですが、「楽しかったでしょうねえ」と何度も言ってしまった私でした。


館の方によると、キャプション無しの展示は日本民藝館開館以来初の試みだそうです。これはもちろん、展覧会のテーマである柳宗悦の「直観」を追体験するため。企画した方、英断です!


併設展の河井寛次郎、朝鮮半島の陶磁器、富本憲吉なども大好き。久々に展覧会を満喫しました。


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● 下記=「直観について」(柳宗悦/昭和15年5月末日 於病室/*日本民藝館配布資料)より抜粋・引用 ●


直観とは文字が示唆する通り「直ちに観る」意味である。美しさへの理解にとっては、どうしてもこの直観が必要なのである。知識だけでは美しさの中核に触れることが出来ない。


直観に在るとは、心を空しくする事を意味してくる。


平たく云えば何の色眼鏡も通さずして、ものそのものを直かに見届ける事である。


仏教流に云えば、空(くう)に帰って、その空の場から見る時、直観の働きが現れるわけである。


つまり直観はものを、「そのままの相」で、「そのままに観る」ことなのである。それ故見ることにも、見られる相手にも囚われず、又自ずからにすら囚われない自在さに入ってこそ、初めて直観が可能になる。この意味で「直観人」はいつも「自在人」たる事を意味する。


直観の根のない知識ほど、美に向って力の弱いものはない。


なぜ美しさの理解に、直観がかくも必要となるのか。それは美しさが言葉や判断に余るものだからである。


真の直観人なら、同じものを度々見ても、いつも「今観る」想いで見るのである。この「今観る」という事が、直観の面目だと云ってよい。


今観る以外に直観はないのである。


いつ見ても常に「今観る」ことが、直観の本性なのである。


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*展覧会URL http://www.mingeikan.or.jp/events/


by orientlibrary | 2019-02-07 20:49 | 日本のいいもの・光景

「あめつちの日々」とわたし

前回から1年2ヶ月、あまりに久しぶりのブログ更新となりました。去年の今頃は、ウズベキスタン(ホラズム)行きの準備などで、あわただしく過ごしていました。

昨年5月後半、ウズは極暑一歩前。真青な空、ホラズムの紺碧のタイル。イチャンカラ(ヒヴァ)でのミッション、煉瓦や木材の調達、工芸品探し、陶芸工房やアーティスト訪問と再会、中世のようなバザールの活気。遠い昔のようです。

昨年晩夏以降、気持ちも体調も低迷していました。自身の甘さ全開なのですが、大好きな母の急逝という喪失感は大きく、加えて今年に入って4ヶ月以上も続いた体調の悪さには滅入りました。でも、、ようやく気力が沸いてきました。体調が改善してきたタイミングもあったと思いますが、活力のきっかけにこの映画があったことは間違いありません。「あめつちの日々」。


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■ 「あめつちの日々」のはじまり ■


「2011年。私たちが探していたのは「土」でした。風土と人間の暮らし。撮ってみたかったのはその絶対的存在でした」(「あめつちの日々」WEBサイトより)

そして向かったのは、「四名で持つ共同窯「北窯」。沖縄最大といわれる登窯はダイナミックで上へ上へと昇りあがってます」 松田米司氏に話を聞く。「土はなくならないのでしょうか?」「いずれなくなるかもしれないね。自分たちにも責任はある。だから懸命に喜んでもらえるものをつくろうと思っている」

(*北窯(きたがま)=沖縄中部読谷村。宮城正享・與那原正守・松田米司・松田共司の4窯元の共同窯として1992年に開窯。13連房という大きな登り窯で年5回火入れする。)

約4年をかけて、松田米司さんとその工房、北窯を取材・撮影・編集。上映は16年5月7日が初日。現在、渋谷イメージフォーラムで上映中です。(* プロデューサー=高田 明男、監督・撮影=川瀬 美香。敬称略)

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■ 土と笑顔 ■


(じつは、「あめつちの日々」、すでに3回観ました。何度観ても発見があるし、何か書きたいと最初から思ったので、構成や言葉などを記憶したかったのです。が、覚えてません!無理。以下、あくまで私が覚えている範囲、しかも感覚的印象優位です。正確さは、別の何か?でご確認ください。)

映画の冒頭シーン、瓦の上に置かれたたくさんの赤い陶土。健やかなたくましい姿で、読谷の陽射しを浴びています。土の様子を見に来た松田米司さんの、土と呼応するような満面の笑み。その笑顔があまりにも素敵で、、一瞬にして映画に引き込まれました。

瓶のろくろ挽きの長回しもいいですね〜。端的でよくわかる。「土族(つちぞく)」としては、土がどーんとアップで撮られるということに、すでに興奮状態。しかも、その迫り方に土へのただならぬ愛を感じました。土のアップと長回しで、撮っているのは女性かな?と思いました(当たってました。気になるところにグッと、、そのお気持ち、わかる気がするのです)。

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■ キラキラするものを見つけてしまったんです(松田米司さん) ■


沖縄や“やちむん”(沖縄では焼物のことを「やちむん」という)のことを語る米司さんの言葉のきらめきに魅了されました。(繰り返しになりますが、以下、正確な再現ではありません!)

「沖縄が好き。くされ縁というか、面倒ではあるんだけど、その中に、キラキラするものを見つけてしまったんですよ。土に関わることなんだけど。それは自由で魅力的なことなんです」

「伝統というのは、個人が入ってはダメなんですよ。入らないほうがいい。沖縄の、というところに、誰の、が入ると、なんだか、、うるさいでしょう。工芸というのは、それを話題に皆が語り合うような、文化のものだから。沖縄には伝統があり、しっかりと作れる陶工たちがいるのだから」

「(車で出かけた先にて、カゴに何かを拾って入れながら)  これは釉薬に使う鉄分の多いマンガン。沖縄のやちむんは、自然からいろんなものをもらっているんだよ」  (*「この場所は旧日本軍の飛行場で、その後、米軍が占有していたところ」という。その上空を飛ぶのは米軍飛行機か。現在も米軍基地がある。奇しくも今日5月15日は沖縄返還の日。44年経ちました)

陶土を求めてベトナムへも。合間に街で気に入った茶碗や皿を買い求め、とろけるような笑顔。沖縄の白土の成分とほぼ近い白土(カオリン)の工場と原料採掘所へ。  「(土を手に持ち笑顔で) 採掘所っていうのは、ワクワクするね。この広い採掘所の地面の下、全部(土)でしょう。すごいな。なるべく原土のままで精製しないで使いたい。この土は化粧土にしたい。沖縄の土と混ぜて作陶もしたいし、釉薬にも。本当は沖縄の土でやりたい。でも、いろんな方法を考えなくちゃならない」

「琉球人らしく生きるには、沖縄人らしく生きるには。それを考えて職人になった。どこにも属さず、誰にも頼らず、自活していく。自立していく」

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■ 全国から集まる若い陶工さんたち ■


若い陶工さんたちの土づくりも印象深いシーンです。体全体をかけて何ヶ月も土と向き合う姿。陶芸はろくろ挽きや絵付けだけではないこと、大半は土の調子を整えていくような地道な作業であることに気づきます。

皆さん、いい顔。姿勢というか、姿がきれいです。打ち込んでいる人の意気が伝わります。

火入れ、数日の昼夜通しておこなわれる窯焚きも、じっくりと見ることができます。丸太をどーんと入れている、、豪快! 一方で、温度や時間と場所を細密に調整し続ける根気や集中力にも感心しました。

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● 尾久彰三さん(古民芸研究家) ●


「沖縄のやきものには長い伝統があります。そしてスケールが大きいんですよ。小さな島だけど海も含めると大きい。海洋国のスケールがある。そこが本土の陶芸産地との違いでしょうか」

「米司さんは、伝統を深めるほうでやっていかれればいいと思う。今立っている地の奥の方に行く、と言えばいいかな。沖縄にはそれだけの伝統やものづくりの幅があるのだから」

尾久さん、奥ゆかしくて、ほのぼのしてて、いいな。

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● 山内徳信さん(読谷村元村長) ●


強烈な印象です。こういう骨のある人がいたから、今の読谷があるのかなと思いました。

「村長になったとき、何ができるか、経済じゃない、と思った。当時、村の人が皆うつむいて歩いていることに気づいたの。戦後、村の95%が米軍に占有されていた。大人も子どもも、夜空の星を見上げるように胸を張って、自分の村に誇りを持って欲しかった」

「経済じゃない、文化だ。文化村を作ろう。花織りができる場、やちむんができる場を。そういう場を作るんだということで、交渉していった」

1986年の「読谷文化村」構想。詳細な経緯や経過については知らないのですが、現在の北窯も、この文化村構想があってこそのものなのでしょう。米軍占有地も36%まで減少したそうです。

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▼ 健やかで、骨太で、自由 ▼


全編を通じて、土も、人も、やきものも、健やかで、骨太で、自由、その波動が伝わってきました。この健やかさ、生命感が、私がこの映画と出会って受けとった宝物です。

「マカイ(沖縄の椀)は、重ねて焼成する、という制限がある。茶碗の形ではそれができない。そこからマカイの形が決まっていった」。

制限から生み出された形の美。また、重ねて焼成するには正確に中心が取れていないとダメ。基本がきちっとしているから、目に気持ちいいのかなと思いました。

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▼ リシタンやホラズムを重ねたくなる ▼


中世からの陶芸の歴史、今に続く伝統の継承、そして赤土に象牙色の化粧土、地元の植物を使った釉薬。やはりウズベキスタン陶芸と重ねてしまいます。以前から、沖縄とウズベキスタンは似ているという気がしていましたが、陶芸でも重なりを感じました。

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(リシタン)

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(リシタン)

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(ホラズム)

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(ホラズム)


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▼ 感謝します ▼


松田米司さん、工房の皆様、やちむんを生み出してくださってありがとうございます。

映画製作の皆様、熱くて温い、心に響く映画を作ってくださってありがとうございました。(プロデューサーの高田明男さん、監督・撮影の川瀬美香さんは、「紫」を製作された方なのですね。観ました、紫。こちらも迫る映画でした。工芸の次作はなんでしょう!?待ってます!)

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(上映後あいさつ(川瀬監督、松田米司さん)/今回の展示会で入手した茶碗、皿。緑釉は真鍮とガジュマルの灰釉と聞きました。興味深いなあ。これから知っていきたい)

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(「あめつちの日々」公開記念やちむん展示会にて)


とにかく書いてみました。とにかくラフなまま、アップしようと思います。健やかに歩いていきたいです。
by orientlibrary | 2016-05-15 23:01 | 日本のいいもの・光景

「テーブルウェア・フェスティバル 2015」、好きだったものなどレポ

今年も「テーブルウェア・フェスティバル」の季節(東京ドームにて、2月9日まで、詳細はイベントサイトに)。ドームに満載の陶磁器やテーブル回りの品々に会いに、さっそく行ってきました。まとめられず調べきれなくても、「走りながら書く」スタイルに変えようと思っているので、写真中心に、超ザクッとですが速報レポとします。

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(「個性ある250以上の販売ブースが出展し、企業の新商品や提案商品、
産地の窯元や作家の作品などを直接購入することができます」HPより。おもてなし食空間=テーブルセッティングの展示も大きな要素。専門家からコンテスト入賞作品まで多数展示あり。会場は幅広い年代の女性ファン、器選びをするカップルなどで熱気/着物姿の女性は食卓との関係は?だけれど入口に。皆さん写真を撮っていたので、、モデルさんって顔が小さい〜)

今回の特集は「琳派400年の系譜と新時代の京焼・清水焼」。見応えありました。解説までは写真を撮っていないので詳細はわかりません。写真のみです。

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(「伝統的な琳派のデザインを受け継ぐ器や、楽茶碗に代表される茶道具。そして、斬新なデザインさえ感じる
今の新しい京焼・清水焼。古都、京都ならではの奥深さをご紹介いたします」(HPより))

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(器だけでなく、セッティング提案してあると、やはり器の表情が出てきます。揃いも生きるし、組合せも楽しい。日本の器でのセッティングは、ルールが種々ありそうな欧米よりも自由な空気があり、私には楽しい。ひとつひとつの陶磁器に存在感)

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(端正なかたち、絵付けの細やかさ、色彩の優美さ。やはり華があります。粋と雅)

「日本の器を訪ねて」では、今回、和モダンな漆を特集。輪島塗、山中塗、津軽塗など、日本の代表的な産地の逸品、そして斬新な作品がセッティングされていました。

「日本の器を訪ねて」、毎回、大きなブースを展開するのは、日本の有名な陶芸産地。土岐市、瀬戸、多治見、有田、常滑、波佐見、鹿児島の工芸品。伝統的な作品からカジュアルなものまで豊富に揃い、値段も手頃に設定されています。楽しみにしている展示です。

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(土岐市は伝統的な名匠の作品から、現代作家の青白磁など魅せてくれます。さらにカジュアルな食器、今風のどんぶりなどが大人気で朝から行列ズラリ。レジや包装の皆さんも大変そうでした)

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(東海中部の産地。多治見、瀬戸、信楽、常滑。中部の土もの、いいですね〜)

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(九州。波佐見焼はブースも大きく、加えて窯元も個別に出展するなど、目立ちます。商品ラインが豊富。青中心の三河内は複数の窯元さんが出展。かごしまは工芸品全般。白薩摩は本当に美しい。有田のブースは大きくてモダンなものが多いのですが撮影禁止なので写真なし)

気に入ったもの、気になったものは、いろいろあるのですが、、ザクッとの範囲で、こちらをご紹介。オリエンタルなテイストを感じたもの。

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(左の上下:あれ?トルコタイルの模様、、と思ったら、やはりテーマが「トルコの花」なのだそうです。いい感じにあがっていますね。落着いたトーンの色合いでまとめてあったのが和風でおもしろかった。皿だけでなく商品ラインも豊富。ただ、食卓提案にトルコテイストがほとんどなかったのが残念。少しトルコものを入れてパンチを効かせたほうが良かったのでは?/右上:きれいですよね!!京焼の深鉢。ムガルの花模様を思い起こします。このようなブタ(花模様)が傾いでいってペイズリー模様になった、そのあたりも感じさせる動きのあるデザイン。色も青でいいですね/右下:カタール国大使夫人によるテーブルセッティング。キラキラ。ヒョウ柄とは意表をつかれました)

有田で写真を撮ってもいいですよ、と言ってくださった窯元さん。去年から注目していましたよ。「メデタイ」の窯元さん。今年はさらにパワーアップ。人も集まり注目の展示になっていました。明治時代の版木を使って成形し、すべて手描きで仕上げています。

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(有田の窯元による明治の鯛「メデタイ」鯛皿は、明治10年頃の型を使い再現した手造り物。現在の魚の置き方は頭が左ですが、当時「左前」は悪いイメージ。新しい日本の未来を祝うため、頭が右を向くように作られたのだとか。右向きの鯉皿は明治初期に限定されますが多数生産されたそうです。現在の鯛皿は華やかな絵付けが施され豪華。小さな魚皿も可愛い)

小さいものは可愛いですね〜。そこにびっしりと描き込んであるのですから、グッと惹き付けられます。

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(左上:こちらは陶器ではなくビーズ!「テーブルセッティングによる食空間提案」で、ビーズ刺繍デザイナーの田川啓二さんのテーブルにあった屏風=「葵祭」をモチーフにしたもの。これらはすべて、ビーズ、スパンコール、金モール、糸など、様々な種類と色の材料で一針一針手で刺繍したものです。人物は、最も難しい糸のテクニックであるレシャムワークでつくり、この糸刺繍のあとに縁取りをツイストワイヤーでまつっていきます。これは私の作品の中で、一番長い期間を費やして制作されたものです」(田川さんコメント)/右の上下:こちらは本当に綺麗でした!京焼の箸置き。やっぱり、日本の陶磁器はすごいわ、、)

あれ、、洋食器ブランド、見逃してました。でも、日本のブランドの洋食器はしっかり見ました。大倉陶園、こちらはちょっと別格。重厚というか格調というか、、美術品のようです。

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(呉須草花紋のカップ&ソーサー。瑠璃色と金色の大型陶板。図柄は正直好みではないけれど青には惹かれる。深い青「アジュール」の四角い皿。『婦人画報』の写真には、有名レストランのシェフによるお料理が。こんなふうに盛りつけてこそ映えるお皿ですね、ハイ!)

テーブルセッティングもさまざまなテーマで、展示されています。

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(左上:かなり作り込んだ野外のテーブルセッティング提案。細長い絨緞あり。このイベントで絨緞を見ることは少ない。床までいかないですね、だいたい/右上:カタール大使夫人のテーブル全体はこのような豪華な感じ/左下:たぶんスイーツガーデンというテーマのセッティング/右下:女性好みの世界。植物もいっぱい)

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(左上:花に負けない器の存在感/右上:先ほどの田川啓二さんのテーブル。後ろの屏風にビーズが施されています/左下:たしか昨年のコンテスト優秀作のコラボ/右下:今年の「テーブルウェア大賞」入賞作品より。華やかなセッティングが多いなかで意表をつくエコなテーブル。紙や洗濯バサミ、ヘチマなどで。オシャレです)

写真はたくさんあるのですが、長くなってしまうので、このくらいにしておきます。陶磁器見学、次はどこに行こうかな!? 北九州も行きたいな。

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気持ちが重い。いい方向に世の中が向かっているとは思えない。大好きな地域(人々)が、ますます辛い状況になっている。日本もモヤモヤ。世界、社会、すべてが加速度的に複雑になっていて、こじれていく。正直、今日は気を紛らわせて何かに向かいたかったこともあり、ブログを書きました。とにかく、自分の小さなことだけを考えていては、それさえも危うくなるのだと思う。というところまでしか、、うまく表せません。。
by orientlibrary | 2015-02-01 23:55 | 世界の陶芸、工芸

優美洗練!九谷焼美術館、超絶豪奢!横浜真葛焼

伝統ある産地、洗練の美意識と匠を伝える 「石川県九谷焼美術館」

イスラームの装飾タイル偏愛紀行ではありますが、日本の陶芸、工芸も、とても好きです。年々惹かれています。日本の陶芸産地には地元の陶芸をテーマにした博物館、美術館も多くあり、総合的かつ深く見られてありがたい存在。先日は、絵付けで有名な九谷焼を専門に展示紹介する「石川県九谷焼美術館」を訪ねました。

石川県九谷焼美術館は2002年開館。加賀市「古九谷の杜親水公園」内にあり、周囲の自然と一体化した心地よい美術館でした。設計は富田玲子さん(象設計集団)。公園と一体になったくつろぎ感、細部まで心配りされた素材使いや色使いなど、建築というものに久々に感動しました。行ってよかった。

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(小雨模様の天気でしたが、緑がしっとりとして気持ちも落着きます。やきものもまた雨に一層映えますから、雨もまた良しです)

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(公園内のなんらかの施設。何かはわからなくても、青をめざとく見つけ近寄ります。濃淡がやさしい日本の青。イスラームの紺碧の青を求めて旅をしていますが、こういう青も本当に好きなのです。九谷五彩、それぞれに何て魅惑なのでしょう)

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(公園内からも、次々と現れる五彩のやきもの。床に柱に壁面に。大きさを変えたり、表情を付けたり、見て歩くのが楽しい)

館内の常設展示は、
* 青手  (緑・黄・紺青・紫の4色を使い大胆な筆づかいで独自の世界を築きあげた青手古九谷、そして青手の伝統を受け継ついだ吉田屋窯、松山窯などの名品を紹介)
* 色絵・五彩  (「九谷五彩」と呼ばれる緑・黄・紺青・紫・赤の色絵の具で、山水や花鳥風月、人物などのモチーフを、大胆に繊細に描き出した色絵の名品を紹介)
* 赤絵・金襴  (宮本屋窯の飯田屋八郎右衛門によってスタイルが確立した赤絵細描の作品や、京都の名工永楽和全が伝えた金襴手の技法による九谷焼など、赤と金のコントラストで表現された作品を紹介)
など。見応えありました。

そして企画展示は現代作家の作品を多数展示。九谷と聞くと、ちょっと作風が古いのでは?というイメージの方もあるのでは?が、この現代作品が作風も多彩で、細密かつ力強く、圧倒的に素晴らしかったです。産地の底力!!!(展示作品が撮影不可なのは仕方ないことですが、アップできないことが非常に残念)

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(館内。直線曲線の変化、見え隠れする九谷カラー、ガラスだったり陶だったり。床や柱も陶の魅力をさまざまに伝える)

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(中庭には水琴窟。写真左上の青い椅子、なぜ斜めに置いてあるのかと思って座ってみると、ここから中庭がちょうど良く見えるのです。視線が低く、落着きます。展示室外の目立たないところに石のモザイクが。九谷カラーも使いシックです。右下は陶器破片を利用した飾り。大きな美術館ではないけれど、視線や素材の変化があるので飽きさせません)

2階の喫茶室も、作家さんの作品を使ってのセッティングが、とても洒落てました。庭を見ながら外のテラスで風に吹かれて、がおすすめです。

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(喫茶室にて。右下は青が美しい陶板)


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横浜のやきもの・真葛焼 「宮川香山真葛ミュージアム」


数年前からでしょうか、「横浜のやきもの」ということと、「明治工芸の超絶技巧」という2点から、ずっと気になっていた横浜真葛焼と、その専門博物館である「宮川香山真葛ミュージアム」。今回、横浜のアートイベントの一環として館でもイベントがあることを知り、良い機会と出かけてきました。

豪奢な細工や幽玄の色彩が特色の真葛焼、九谷焼とはかなり趣きが異なりますが、圧巻の匠の技で見る者を魅了するのは同じ。明治を代表する陶芸家、宮川香山の世界に浸りました。

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(横浜駅から徒歩でも10分かからない立地。ビルの1階。HPを見るとお菓子の会社がスポンサーのようなのですが、地元の真葛焼を紹介しようとするエネルギーと意思がすごい。施設の維持は大変なことでしょう。拍手/館内の展示。広くはないけれど作品がきちんと見えるように気配り/下の中と右=イベントの「真葛焼鑑定会」の様子)

まず真葛焼について。あまり情報が見当たらないこともあり、館のチラシから引用します。

「世界を驚愕させた横浜真葛焼 〜 1842年、初代宮川香山は、京都真葛が原の代々やきものを生業とする家庭に生まれました。29歳のとき、輸出向けの陶磁器を製造するため、横浜大田村字富士山下に真葛焼を開窯します。1876年(明治9年)、フィラデルフィア万国博覧会に出品された真葛焼は絶賛され、その名は世界に知れ渡ります。その後、フランス、アメリカ、イギリスなど各地の万国博覧会で輝かしい受賞を重ねました。真葛焼は初代から、二代、三代へと引き継がれますが、1945年横浜大空襲で壊滅的な被害を受け、閉窯。四代目香山の復興努力もむなしく、その歴史は閉じられ、今では「幻のやきもの」と言われています」

19世紀の万博と日本の明治工芸については、薩摩焼の細工や漆の超絶技巧で関心を持つようになりました。真葛焼も「高浮彫」という精緻な彫刻を施した技法が特徴です。じつは好みとしては、豪華絢爛で派手なものは、いくら美しくても苦手。真葛焼の「高浮彫」も引いてしまう面もあります。今回もトークなどで熱の入ったお話を聞かなければ、派手だったなあ、と帰ったかもしれません。が、エピソードなども聞き、あらためてじっくり見ると、やはりすごい!と見入ります。

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(初代香山の作品。右上=蟹が施されている作品は遺作だそうです。土で作られた蟹、生きているようです/右下の彫刻=TV番組の「鑑定団」に出た作品で、「いい仕事してますね〜」の絶賛賛辞が。傷がなければ1千万円の価値とか。縁あってこちらに寄贈されたとのことです)

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(香山は当初薩摩焼を研究していくつもの作品を制作、輸出していましたが、金を多量に使うため多額の資金が必要。そこで金のかわりに、身近な動物や植物を精密な彫刻で彫りり込む「高浮彫」を生み出します。より細密な表現のために、庭に鷹や熊を飼うまでしたそうです。鳥の表情がすごい。細かい!)

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(ここまでゴテゴテすると(失礼!)、苦手を通り越して興味が。細工に気を取られるけれど絵付け部分の描き込み密度もすごい。もちろん元々の成形や焼成も。しかし高浮彫は完成まで何年もの時間が必要なため、香山は後に作風を一変し清朝磁器を元に釉薬の研究したり釉下彩の研究に没頭。美しい作品を残しており館内にも展示されています)

精緻な細工を特色としていた初期真葛焼も、写実的な作品がしだいに減少。二代目香山はのちに、「外国人が濃厚な作風に飽き、日本本来の趣味である清楚淡白なものを好むようになってきたからであった」と語っているそうです。マーケティング!

また二代目による初代への、次のような回想も。「故人は西洋向けのけばけばしいものよりも、日本向けの沈んだ雅致に富んだ物の方が得手のようでした」。実際、晩年の作品は滋味あふれ、伝統的な情緒あふれる作品が多いとのこと。
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(植物も細工と絵付けを重ね、独特の世界。ときはアールヌーヴォーの時代。時代の気分、共時性というのもあるのかも? 館内での解説などによると、窯には200名もの職人がいたこともあり、誰がどの部分をおこなったというのはわからないそうです。香山作品であり真葛焼窯全体の作品でもあるのでしょう)

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(今回の企画展示は、稀少で貴重な高浮彫を展示室に満載。多彩な作品を見られる貴重な機会だったようです。こちらの虫の表現、花や鳥に気を取られて最初は目につきませんでしたが、長時間見ているうちに、ささやかな表現もすごいなあと気づきました)

京都の腕の良い職人が、海外との交易盛んな時代に輸出に都合が良い横浜で窯を開き、薩摩焼に彫刻的要素を加えた華やかな作風をもって流行の世界万博で一世を風靡、そのために渾身の努力をする。けれども晩年は滋味あふれる雅な作品を制作。しかしその後、窯は、横浜の大空襲により三代香山が亡くなり、多くの資料も失われ、閉窯に。

美しい陶磁器群のなかに、時代が刻々と流れている。ときには華やかに、ときには辛く悲しく。さまざまに思いが巡ると同時に、超絶技巧と淡白な美を両立し得る日本陶芸の深さに、あらためて感慨をおぼえました。


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これからも、たくさんの陶芸を見ていきたいと思います。今回ご紹介できなかった「河井寛次郎記念館」、機会があれば何かとまとめて書きたいと思います。

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(京都五条坂の河井寛次郎記念館。大好きな世界。河井さんの文章がまたいいですよね〜。。)


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&このところ、日本のタイルの動きがすごいです。ほんとにびっくり。個人ができる範囲ですが、取材などもおこないつつ、こちらも書きたいと思っています。
by orientlibrary | 2014-10-13 21:22 | 日本のタイル、やきもの