イスラムアート紀行

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映画『あたらしい野生の地 リワイルディング』

忘れないうちに、印象が強いうちに、、と思うと、こんなに頻度低いブログアップが、映画の話題ばかりに、、。そう、今回も映画「あたらしい野生の地 リワイルディング」について、なのです。

いろんなことを書きたいと思っているんです。たとえば、

1: 日本のタイルの動き・まとめ (日本のタイルが動いています!多治見市モザイクミュージアムのオープン、各地の多彩なタイルイベント、タバコ屋とタイルの会に寄せられる日本各地のタイルの景、素晴らしい本『美濃のモザイクタイル つながる思い、つなげる力』、「タイルびとの会」のイベント、など)

2: 「工芸を体感する100日間」レポ (10月22日〜1月29日まで東京で開催される300に及ぶ工芸イベントについて、ガイドブックを見ながら行ける限り行き、見学体験し、なるべくトークなども参加し、それをレポしていこうと思い、別のブログの用意までしました。実際、展示やトークにも行っています。が、まだ書けていません、、)

3: 民藝を巡る (2とも関連しますが、この数年、あらたなブームとも言える若い層の民藝人気について、ショップやイベント体験を)

4: ホラズムのタイルと陶芸 (ウズベキスタン西部、ホラズム地方の装飾タイルと青の陶器について。陶芸工房訪問レポ。取材もしています。かなり秘境の地、二度訪問しました。でもまだ書けていません)

5: アースバッグの家づくり (今年の2月に出会った「アースバッグ」、土で作る家(空間)に一目惚れしました。天幕と土の好きな私の超ツボでした。主催者や集まる人たちも魅力的。時間をかけて追いかけたいと思っています、が、まだまだ動けていません)

6: タイルのテーマいろいろ (鳥の図柄、魚の図柄、多角形、幾何学、その意味や背景、文化など)

7: 九州北部の陶磁器 (有田、三川内、そしてこれから回りたい九州の産地。有田焼400周年イベントレポ)

8: 植物アルバム (去年秋から、コンデジでパシャパシャですが、植物の写真を撮っています。小さな植物の宇宙、枯れて満ちて開く時間の流れに惹かれています。雫も好き)

、、などなど。要気力&体力、です。

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(テーマいろいろ)



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「大自然の無尽の力を、春夏秋冬の歓喜を、途切れることのない命を、そして生死を見つめていた」〜『あたらしい野生の地 リワイルディング』 

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■ 干拓事業の失敗で放置された土地

オランダというと、海抜が低く人口過密な小さな国、というイメージが。そのオランダに、しかもアムステルダムから2時間ほどのエリアに、何万匹もの馬が駆け抜け、キツネや鹿が走り、さまざまな鳥が飛ぶ「野生の地」がある、そのことがまず、イメージできませんでした。しかも、1968年以降、50年に満たない時間の中で、ほぼ自然にできた野生というのですから、不思議でなりませんでした。

映画公式サイト、現在上映中の渋谷UPLINKサイト、そして菅啓次郎さん&ドリアン助川さんによるトークショー(濃くて充実!)の内容から(メモとっていないので記憶違いがあったらすいません!)、少し書いてみたいと思います。

まず、この野生の園が、元々は干拓事業の失敗で放置された土地だったということに驚きます。

「アムステルダムから北東50キロの海沿いに位置する6000ヘクタール程の小さな自然保護区「オーストファールテルスプラッセン」。もともとは1968年に行われた干拓事業の失敗で放置された人工の地だった。しかし、人に忘れられたその土地に、わずか45年で自然はあたらしい命を育み、野生の楽園を築きあげていた」(UPLINKより)

オランダは干拓事業による地域が多い国ですが、放置されたというこのエリアは海抜が低い湿地で、水はけがうまくいかなかったのだそうです。そして放置されたままに。


■ 生態系が自らを復元する

ところが数年後に、植物学者が訪れてみると、あらたな生態系ができている気配が。長期を見越した調査や計画がすすめられ、10年程後には馬をこの地に放ちます。

「この土地でもっとも人目を引くのは、美しいたてがみをゆらして草原を駆け抜ける馬の群れ。ヨーロッパ原生種の馬にもっとも近いといわれるポーランドのコニックがリワイルディング(野生の再生)の試みとして放たれると、馬たちはこの土地に適応し、人間の介入の外で順調に数を増やしていきた。今では2000頭を優に越える頭数が確認されている」(公式サイト)

放たれた生き物もあれば、さまざまな地から入って来た多様な生き物が。

「同時期に放たれたアカシカも繁殖に成功。また鳥類では、17世紀以来ヨーロッパ大陸では目撃されたことがなかったオオワシが、おそらくスカンジナビア半島から飛来して姿を見せている」(公式サイト)


■ 春夏秋冬、生き物たちと自然、映像の美しさ

この野生の園の広さは東京大田区ほどであり、それほど広くありません。まさに都市近郊ですが、ゲートで囲まれており、一部を除き人間は入れないそうです。この中に、16人もの各分野(動物、昆虫等)の専門カメラマンが入り、600日かけて撮影したという映像の迫力、臨場感、美しさが素晴らしい。

「限られた土地の中で植生がどう移り変わってゆくのか、どこにどんな動物が戻り、他の動植物たちとの関係をつくっていったのか。湿原にはコケ類が、草原には一年生の草本が、そして森林には多年生の草木がはえ、土の性質を変えていく。水辺にはまず魚、両生類が戻り、鳥類が呼び寄せられ、それを狙ったキツネがやってくる。草原では馬やアカシカが子どもを育てる。こうした生態系復元のプロセスや自然のサイクルを美しい映像を通して学ぶことができる本作は、それはまるで動く生きもの図鑑のよう」(公式サイト)

トークでは福島の話がありました。避難指示が出された南相馬では一時、家畜が野生化して繁殖しているという報道がありましたが、守るのではなく殺すという選択が取られたそうです。南相馬は元々は湿地帯で、津波の後、農地に開拓された部分が流されて元の湿地に戻り、自然という面から見ると、この「オーストファールテルスプラッセン」的でもあったそうです。複雑な気持ちです。


■ 凍っていく鹿のように、、 

ドリアン助川さん、トークにて開口一番「この映画は(老子の)tao、タオだと思った」。そして「観られた幸せ」を、詩人の言葉でたくさん語ってくれました。皆さん同じなのでしょう。映画へのコメント、いい言葉がたくさんありました。(公式サイトより)

* 捨てられた土地で新しい生命の可能性が示された。それは人間の想像を超えた想定外のことだった。考えてみよう「捨てる」ことの積極的な意味を。認識を変えたとたん、それは新しい思想になる。(田口ランディ)

* なにもなかった場所にこれだけの宇宙が誕生するのであれば、この世の命あるどんなものも自らを再生する力を持っているのだと確信できた。(吉本ばなな)

* 映像を観ているうち、ボクは草に宿った水滴となり、大自然の無尽の力を、春夏秋冬の歓喜を、途切れることのない命を、そして生死を見つめていた。体験し得た者は、本当の意味でこの世の祝福を受けたのだ。(ドリアン助川)

* 人間の手の触れない世界が、隅から隅まで、どれほど喜ばしい生命に満たされているかを、本作品はつぶさに示してくれる。(野崎歓)

* ひたすら生きて繁殖して死んで食われる、食われて死ぬ。ただそれだけのことが圧倒的に美しい。この美しさは、ただ単に人間が「何もしなかった」ことの結果だ。その結果を驚くべき映像でつきつけられ、身体中の細胞が喜びに打ち震える。この映画の中で凍ってゆく鹿のように死にたい、と本気で思った。(小池桂一)


・・・ 「凍ってゆく鹿のように死にたい、と本気で思った」、同感です。もっとも強く印象に残ったシーンです。死期を悟った鹿の眼に映るオーストファールテルスプラッセンの景。それをカメラは静かに見つめます。動物の眼に映る自然の景、次第に閉じていく眼、閉じた眼に降り積もる雪。厳しく、悲しく、しかし美しかった。この死は不幸なのでしょうか。自然なのでしょう。私の心にも、思いが降り積もりました。

映画は、東京アップリンクの他、名古屋、大阪、京都などで上映されるようです。
* 公式サイトはこちら
* UPLINKサイトでの紹介はこちら



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タイルのブログとしては、オランダ→デルフトを載せるべきなのでしょう。けれどもヨーロッパのタイルの写真がほとんどない、イスラームタイル一辺倒のorientlibraryです。中国染付と染付に憧れたデルフト&世界各地のブルー&ホワイトのやきものを少々ご紹介します。


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(青花魚藻文壺/景徳鎮窯/元時代14世紀)(青花唐草文水差/景徳鎮窯/明時代(1426−35))(デルフト/藍彩人物タイル)(イラン)


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(トルコ)(青磁染付鶴亀図大皿/伊万里/19世紀)(ウズベキスタン)(リシタン絵付け)


近々、何かアップしたいです。気合い入れつつ、セルフメンテナンスをゆるゆるやっていきます。
by orientlibrary | 2016-11-03 23:04 | 美術/音楽/映画

ふわっと花を見ている(vegetation therapy)

またまた時間があっという間にすぎてしまいました。気がついたら、4月も最終週なのですね。連休はナイスなところに旅行の友人も多いのですが、私は旅行のテンションにならないままで、、普通に時間がすぎていきそうです。

後半に、短期間ですが東北に行く予定です。工芸と産品を見たいと思っています。いつか何かお知らせすることがあるかもしれませんが、もっと東北の風土と文化を知りたいという気持ちが高まり、ささやかなことを始めてみようかと思っています。

ブログもなかなか書けないままですが、今回はiphotoを見ながら、植物の写真を選んでいました。脈絡なくピンときたものを選んだ、そのままですが、花シリーズにしたいと思います。

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(カザフスタンにて。一面の芥子の花。単体だと愛らしいけれど、群生していると独特の空気感があると思います。赤が強いですね)

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(ブハラ。ウズベキスタンの5月は薔薇が盛り。子どもたちがさりげなくプレゼントしてくれる一輪の薔薇にクラクラです)

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(いろんな植物の写真があったのに、こういうものを選ぶんだなあ。カラカルパクの砂漠の夕暮れ。砂漠の植物です。砂漠の夕暮れは一面の金色で、夢か現実かわからないような、映像の中に入ったような、不思議な感覚になります。清浄を感じます)

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(インドのヨガの聖地、リシケシはヒマラヤの山深い地ですが、ブーゲンビリアが咲き乱れていました。意外と寒さにも強いんですね。リシケシの朝日、ガンジス源流の朝日の景は忘れられません)

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(中央アジアの芥子。中央アジアを出自とするムガル、更紗のモチーフには真っ赤な芥子がよく使われます/敷物 花卉模様/インド更紗、手描き/インド北部/ムガル17世紀/3mを超える大型の敷物。大輪を咲かせた芥子のような花を整然と配した清楚な模様。花は中央が正面向き、左右が側面から見た姿であらわされており、同様な花のはムガル王朝の立木手と呼ばれる花模様に類しており、同じ製作地を示唆するものであろう/東京国立博物館にて)

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(同じ更紗でもインドネシアは独特の濃厚さがありますね。たおやかそうでいて、ピンクと赤のインパクトがすごいと思います/腰布サロン白地花鳥獣模様更紗 ジャワ島20C/東京国立博物館にて)

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(オスマン朝トルコのテキスタイル。豪奢)

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(同じくオスマン朝トルコの刺繍。可憐です。花瓶に入った花模様はムガルやペルシアでも定番ですね)

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(ウズベキスタンのスザニ刺繍。花びらの色を変え、遠目にも動きがあり可愛らしいです。くるんくるんした茎や蔦が中央アジアテイストを感じさせます。話は変わりますが、このところ日本のファッションでウズ柄が流行していますね。にじんだ絣風、大柄な花模様がウズ風。やっと来たね、と思いますが、柄が中途半端な感じもして、意外にうれしさを感じません。ディープさがないよね〜。違うんだよなあ〜、、、)

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(ウズの青のお皿を見ると落ち着きます。この花の描き方が面白い。描き込むデザインが多い中、白の余白が多いのも、ちょっとアートな感じ。工房の樹々の緑が揺れ、爽やかです)

連休に入ると少し落ち着きそうです。ブログも更新していきたいです。

地震後、心の余裕がなく、なんとなくコメントのお返事を書けずにいました。これももう落ち着いてきたように思います。皆様のコメントに励まされてきたのに、しばらくコメント欄を閉じていて失礼しました。m(_ _)m
by orientlibrary | 2011-04-25 23:17 | 美術/音楽/映画

釉薬の青。空と海と湖と

「青の道」へ。今日は「タイル絵付け教室」を「釉薬教室」に変更してもらっての初日でした。
cuとかmgという記号を見たのは何十年ぶりという感じ。まずは基本の基本を学習。次回は青の釉薬作りにトライします。

十字タイルと多角星タイルが現在途中で止まっているので、そこに青の釉薬を使ってみようかという流れに。超ビギナーの好きなようにさせてもらって、本当に感謝です。

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(中央アジアの空の青/トゥルケスタンにある「アフマド・ヤサヴィー廟」。初期建造は1374年。ティムール朝初期の建造物として名高く、現在中央アジアに残っている歴史建造物の中で最大級。青の施釉レンガと無釉レンガの組み合わせが美しい)

今日はその後、「サハラの砂でガラス作品を作っている」というガラス作家・村山耕二さんの展覧会に行ってきました。
カメラを忘れてしまったので残念ながら写真はないのですが、村山さんのホームページに作品の写真がありました。ご興味のあるかたはぜひ。
オレンジ色の砂が、なんともやさしい藻のような色合いに変身するのが不思議。かたちもボリュームと安定感があり、好みでした。

サハラの砂の入手で関係が深いというモロッコの写真、とくにモロッコの陶芸工房でのタイル制作や窯炊きの写真を見せてもらったのが、とても参考になりありがたかった。
「砂族」と「土族」で、オタクな会話を楽しませて頂きました。

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(キルギスの空の青と緑。キルギスは風光明媚で、人々の顔立ちは日本人にとてもよく似ている)

釉薬、青については、まだまだなので、今回はこれまで文献等から抜き書きしてまとめていたものをそのままアップするという手抜きなのですが、中央アジアと日本の青の写真を選んでみました。

空の青、水の青、ちょっとニュアンスが違いますよね。
*色ってカメラや撮り方次第だと思いますが、すべて素人がオートで撮った写真ですので実際を反映しているとはいえないと思います。ご了解を。
*出所となった文献名がわからなくなってしまいました。部分の抜き書き、要旨です。著者の方、出所を記載できずすいません。

<釉薬の歴史>
・アッシリアの土器にガラス質の釉薬を用いた例は前1300年に見られる
・バビロニア緑釉薬の秘伝を記した楔形文書、当時すでに基本的な釉薬成分があった
・それに銅・鉛・硝石・石灰を混ぜ合わせて緑釉原料とした
・アッシリアは錫釉系。前12世紀すでに彩釉レンガ。色が混じり合うことなく釉薬の効果を発揮していた

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(中央アジアの空と湖の青/キルギス、イシククル湖)

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(日本の空の青、湖の青/富士山と河口湖)

<青色アルカリ釉>
・青色アルカリ釉はメソポタミアからインダスにまで広まった
・鉛釉はバビロンで発明された
・前1700年頃の文書によるとバビロニアやアッシリアには高度に発達した釉薬の知識があった
・ここで初めて石英フリットにではなく粘土に施される釉薬が考案された
・新アッシリア時代のニルムードでは施釉レンガが建築に用いられた
・酸化錫が不透明白色の発色剤として用いられた
・ネプカドネザル王時代の都であった新バビロンの建築物のなかで最も美しいイシュタル女神に捧げられた壮大な城門はニルムードのものに類似した施釉レンガで全面が覆われていた

<飾り釘>
・彩釉レンガによる壁画や装飾は高度に完成したアッシリアスタイルの門建築において半円柱飾りを施したものと並ぶ重要な要素だった
・壁本体はあくまで日干しレンガ積み、王宮の室内壁はプラスター絵画
・建築装飾として彩釉陶製品が利用された例はアッシリアの「ジガティ」飾り釘。絵のモチーフはパルメットが多かった
・バビロニアでは色彩よりも彫塑的な陰影をともなう傾向。壁画の凹凸を採用。宗教建築に採用
・壁画のレリーフを無釉薬の焼成レンガに分解

<バビロン イシュタール門>
・彩釉レンガと浮き彫りレンガを融合させた大壁画
・イシュタール(愛と戦いの女神)の名前を冠した市門
・それを貫く「行列道路」の側壁 彩釉浮き彫りレンガはベルリンに
・架空の有角龍ムシュフシュの名があった。バビロニアの最高神マルドゥク。地色を青釉薬で統一してレリーフには白や黄の釉薬を使ってコントラスト。アッシリア由来の白いロゼッタを配した。赤い釉薬も少し
・彩釉レンガをこれほど大胆に使った建築は空前絶後
・前612 年にアッシリア帝国は滅んだ。バビロンもアケメネス朝ペルシアの配下になった。ペルシアのスーサに伝わり精妙なレリーフとなった
・メソポタミアにタイルは採用されなかった
・釉薬に色と輝きを持つ建築装飾はもともと超富裕層のもの。外来王朝時代に釉薬は再度陶器だけのものになった

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(中央アジアの空の青/クズルクム沙漠に点在する古代ホラズム王国の遺跡カラ(都城跡))

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(日本の空と海の青/東京・晴海、湾岸高層ビル群)

青の道、続きます。
by orientlibrary | 2010-11-14 22:46 | 青の道

ホラズムの景(photo gallery)

アムダリアという憧れ。大河を超え、ディープ・ホラズム、カラカルパクスタンへ。


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パミール高原に源を発するアムダリア。ギリシア語文献ではオクサスと記されている。<トランス・オクシアナ>とは、「オクサス川の向こう側の土地」の意味であり、アムダリアの北のトルコ系の人が多く住む土地をさした。<マーワラー・アンナフル>は、アラビア語で「川の向こうの土地」。「川の向こう」への想像力。


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カラカルパクスタン。「カラ」(都城跡)は、20世紀後半までは1000以上も残っていたという。しかしソ連時代に道路作りなどで多くが破壊され、現在ではその10分の1程度のようだ。日干しレンガ作りの城壁、火を祀る神殿などがある。古代ホラズム美術はガンダーラやパルティア美術の影響があるが、東トルキスタンの仏教美術との関連も指摘されているという。


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カラカルパクスタンの女性。強い日差しに負けない存在感と美しさ。


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赤い砂・キジルクム。赤い砂漠に息づく多くの命。多彩な植物や生き物に眼を見張った。


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キジルクムの夕暮れ。遠くにラクダのシルエット。清浄な光。静けさという恵み。この一瞬のためにここに来たのだとしても、悔いはないと思う。


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ユルタホテル。どんなゴージャスなホテルより、私にはここがいい。砂漠と空と一体になれる天幕での夜がいい。
by orientlibrary | 2008-06-13 18:02 | 中央アジア5カ国

土と生きものの景。キジルクム〜カラクム

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カラカルパクスタン・キジルクム(赤い砂)砂漠。パコパコ、パコパコ、、この足跡は誰のもの?

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●夕陽は砂漠を金色に染めあげます。夕陽をあびて光るころころとしたフンも、この動物のもの?

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ラクダがいました!古代ホラズム王国の遺跡・カラ(都城跡)が点在するキジルクム砂漠。アヤズカラ周辺をゆったりと歩いています。スラッとしておとなしいラクダでした。

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●カラは大半が崩れて土に還っていますが、ホラズムの赤い土の色が美しく味わいがあります。規模の大きさから当時の繁栄がしのばれます。このようなカラは50ほどもあると言われているそうです。も気持ちよさそうに草を食んでいます。


●、、って、ほとんど、「生きもの自然紀行」になってますね〜(汗、汗)

●こうなった原因を考えてみたのですが、、装飾タイルのある場所、土の建築のある場所、古代や中世の趣のある場所、イスラム工芸のある場所、賑わいのあるバザール、、そんなところに行くと、動き回っては地元の人も驚くくらいにシャッターを押している私なのですが、今回のトルクメニスタン旅行では写真が少ないのです。(最も多いのは、フライト変更で予定外の滞在になったブハラのタイルでした)

●ひとつは撮影禁止のところが少なくなかったこと。国境ダメ、街中もけっこうダメ、一部の博物館もダメ、飛行機からダメ、空港ダメ、人にもカメラを向けにくい。面白そうなところは全体的にアウト。

●もうひとつは、行っても行っても土また土で、本来ならば土族感涙のはずなのですが、なぜかわかりませんが、あまりピンとこなかったんです。キジルクムは良かった、ホラズムは良かったんですが、個人的にはトルクメニスタン・カラクム砂漠(黒い砂の意。国土の面積の7〜8割を占める)がどうも単調でした。砂漠大好き!なんですが、、不思議です。私のトルクメニスタンの印象は「不思議」。砂漠もそのひとつなのかもしれませんね。

●なんとなくブログ更新頻度も落ちてしまっていたんですが、生きものたちに登場してもらってテンションを上げつつ、タイルに軸足を移していこうかと思っています。

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キジルクム砂漠のカメ砂の色と同化しているような甲羅の色。模様もきれいです。

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ふんころがし(スカラベ)もいました。見えますか?左下にいる黒いのがふんころがし。けっこう大きくて3、4㎝以上もあったと思います。手を下にして足で転がしていくんですね。器用なものです。かなりのスピードで大きなふんを転がしていましたが、カメラを向けるとピタっと止まってしまいました。

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カラクム砂漠の生きものにも登場してもらいましょう。とかげですよね?土と同じ色ですね。2.3㎝ほどと小さく、動きが早かったです。

●この他、広大なメルブ遺跡やマルグシュ遺跡には、ラクダや羊や牛などがサファリパーク状態で暮らしていました。遺跡というより生活域、ふつうの村という感じでした。

●トルクメニスタンの国境を越えウズベキスタンに入ります。しばらく走ると、遠目にもはっきりとブハラの青いタイルの建物が見えてきました。オアシスの街がすぐそこに!昔日のキャラバンや旅行者にとっての、オアシス都市の光景のうれしさや頼もしさを垣間見た思いがしました。ブハラはウズベキスタンの街ですが、トルクメニスタンの絨毯が「ブハラ絨毯」とも言われるその近さを実感しました。(ブハラはトルクメン絨緞の集散地だったそうです)

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●ウズベキスタンの生きもの代表は、コウノトリです。タシケントのバラクハーン・マドラサの周辺で。コウノトリも、青いタイルのドーム屋根や壁面装飾、うっとり見ているのかな〜♪!?


*生き物系、弱いです。間違いがありましたらお教え下さいませ。
by orientlibrary | 2008-06-05 00:03 | 中央アジア5カ国

トルクメニスタンにアハルテケあり!

トルクメニスタン(+カラカルパクスタン)の旅行で、最も感動したのはメインの目的であったホラズムのタイル。そして2番目は、名馬「アハルテケ」の美しさでした。(数々の名だたる遺跡じゃないのか!?という感じですが、、即物的なんでしょうか、私。。)

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(カードにもアハルテケ。「この国が好きだ!」というコピーとともに)

「アハルテケ」は、汗血馬(かんけつば)の子孫ではないかと言われる馬です。汗血馬といえば、『漢書』に「大宛(現在のウズベキスタン・フェルガナ地方)に天馬種あり」と書かれ、「一日に千里を走る」と言われた名馬中の名馬ですよね。

漢の時代の戦闘では、馬の善し悪しは騎馬軍団の能力を決定するもの。また権力の象徴としても、大きな意味があったようです。たしかに、馬に乗っている人って、上から見下ろす感じになり、力強く見えますよね。疾走すれば、さらに!

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中央アジアの馬は、当時の中国の皇帝や将軍たちの憧れ。とくに前漢の武帝はどうしてもこの汗血馬を手に入れようと、大宛に遠征軍を送ったほど。

血のような汗を流して走る」ことから汗血馬と呼ばれるようになったのですが、馬が皮膚の表面に出血するのは、現代では寄生虫によるものとも言われているようです。けれども、吹き出る汗と一体になって流れ落ちる血は、駆け抜ける馬体を赤く濡らし神秘的にも見せたのではないでしょうか。カッコイイですよね〜!

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アハルテケは、1935年に4152㎞(アシュハバードからモスクワまで。うち1000㎞は砂漠)を84日間で走破する記録を作ったそうです。走りますね〜!!乾燥気候に適応し、サラブレッドなど多くの品種を改良する際に利用されているとも聞きました。

見学したアハルテケの飼育場は、首都アシュハバードの郊外にありました。民族ドレスの女性たち(オーナーの娘さんたちのようです)に迎えられ、中へ。最初に目に入ったのは、なんと金色にも見えるアハルテケ!う・つ・く・し・い〜!!足が長く、たてがみが短め。これは汗血馬の特徴とそっくりなんだそうです。

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飼育場の中には、10頭くらいのアハルテケがいました。灰色の馬体のコンテスト優勝馬も。外の一角には子馬たちが。かわいい〜!♪!でも、こちらは柵越しにチラッとしか見られませんでした。宝物状態!?!そうこうしているうちにデモンストレーションが始まりました。

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どの馬もきれい〜!動くと美しさが格段に増します。見とれます。疾走する姿を見てみたい、、。育てるのにさぞや神経を使うのでは、と、オーナーに「アハルテケの飼育でいちばん大変なことはなんですか」と聞いたところ、しばし間をおいて、「金だね」。「・・・」。「金があれば簡単。金がないと大変」。もう少し文学的な答えを想像していましたが、、。たしかに現実はそうなのかも。

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たぶん、ものすごい費用がかかるのではないでしょうか。売れたら1億円とも聞きましたが、、。それにしても、経費は半端な額ではなさそうです。太っ腹そうなこのオーナーは何者?と思っていましたが、、お手洗いを借りるためご自宅に入れてもらうと、 、室内は絨毯の海。本場の、ト、トルクメン絨毯ですね!

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「す、すごいですね〜!」、「オレが作ったんだ」、「・・は!?」。聞けば、絨毯工場を経営しているそうです。なるほどお。納得。馬を飾る毛織物もきっちりときれいだったですよ〜。さすがです!

絨毯とアハルテケ。トルクメニスタンを代表する二つの美しいものに囲まれて(というか、生産して)いるオーナーは、トルクメニスタン一幸せな人ではないでしょうか。堅苦しい印象が強かったトルクメニスタンの旅行のなかで、(唯一?)おおらかな人柄に触れたのも、感動第2位に入った理由かもしれません。(今回は、旅行記風に書いてみました)

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(見とれるような毛並みのお手入れに)
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(人形のアハルテケも脚が長い)
by orientlibrary | 2008-05-27 22:05 | 中央アジア5カ国

ホラズムの青いタイルに憧れて

トルクメニスタンに行ってきます。いちばん楽しみにしているのは、ホラズム王国のオアシス都市として栄えた「クニャ(古)・ウルゲンチ」の建造物。

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(カザフスタン/2007)

円錐屋根の「テキシュ廟」(1200年)、鉛筆屋根のような「イル・アルスラン廟」(1172年)の青いタイル(〜施釉煉瓦)に長く憧れていました。修復されすぎていないことを願っています。

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(キルギス/2007)

「テュラベク・ハヌム廟」(14世紀)の華麗な装飾タイル、中央アジア最大の煉瓦造ミナレット「クトルグ・ティムールのミナレット」(14世紀)も、実際に見てみたかったものです。

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(ウズベキスタン/2007)

中央アジアの風を感じてきます。

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(ホラズム王国の版図1190-1220/wikipediaより引用)
by orientlibrary | 2008-04-28 21:40 | 中央アジア5カ国

椰子を編む少女

私の好きなエリアに共通する植物、大事にされている植物、活用されている植物に「椰子」があります。中東ではナツメヤシ、東南アジアではココヤシ

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●同じ椰子でも果実(デーツ/ココナッツ)は形も味もまったく違いますよね。でも美味!デーツの濃縮した甘味、ココナッツのみずみずしさ。旅先で食べる土地のものは最高においしいです。

●今ちょっと気分にインドが入っていて、インドの空気感でテンションを上げていこうとしています。インドの中でも暑いところ。クラクラするような熱が欲しい気分です。

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●そんな暑いインド、タミル・ナードゥ州椰子の葉を編んでいる少女を見かけました。かたわらには椰子の葉で屋根をふいた(と思われる)小さな家がありました。自分で作れる家、その「軽さ」に惹かれます。炎天下で椰子を編み続ける少女の邪気のない笑顔。スカーンと抜けるような思い切りのいい笑顔でした。

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すべてのものが繁茂しようとしのぎを削っている、そんな生命力あふれる世界。想像はどんな時でも自由で、どこへでも行けます。湿潤な風を感じてうっとりしている私です。 (次回よりタイルや建築、再開したいと思ってます!)

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by orientlibrary | 2008-03-26 17:31 | インド/パキスタン

地平線から今日も日が昇る ただそれだけのことなのに

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        巡礼地 カーニャクマリの 暁に 神の花咲く マリーゴールド


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        クメールの 紅き記憶の 密林を 染めあげていく おほき日輪


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           朝日さす サハラ幻影 豊穣の 山の姿に 海の姿に
by orientlibrary | 2006-09-07 23:50 | 中央ユーラシア暮らしと工芸

東トルコ・ヴァン紀行。村上春樹と勝手にコラボレーション

ディヤルバクルの「ジーエル・ケバブ」がきっかけになって、東トルコのアルバムを見ています。大自然、バザール、歴史的建物、人々など、ブログに載せたいものがたくさんあって迷ってしまいます。

歴史的背景が複雑で民族が入り組んでいるだけに、ひとつのエリアとは思えないくらい光景がいろいろですが、しかしそのことこそが「ユーラシア」というものなんだなあと、あらためて感じます。

いくつかのパートに分けてご紹介したいという気持ちが高まっています。ただ、“なんちゃってブログ”ではありますが、「旅行記」になるのは避けようと思っているので、断片的かつ独断的なご紹介になります。そのわりには、『雨天炎天』(村上春樹)という本の文章をナビゲーターにしたいと思います。引用多用失礼!村上さん謝謝!

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まずはヴァン湖。「ヴァン湖はトルコのいちばん奥のそのまた奥の、かなり辺境な地にある。標高5000メートルを超えるアララット山の南方、イランとの国境近くにある大きな湖である」(『雨天炎天』より引用。以下「」内は同様)

「標高1720メートルのところにある世界でも水面が高い湖のひとつである。流出河川がないせいで、塩分がかなりきつくて、濃度30%とものの本には書いてある。魚はほとんど住んでいない」「水は独特のターコイズブルーで、とてもきれいである」。

「ヴァン湖の夕暮れは文句なしに美しいものだった。空も水も山際も、何もかもがオレンジ色に染まり、空と稜線が触れあうあたりはまるで火のような真紅に燃え上がっていた。湖面はしんと静まりかえり、さざなみに合わせて細かい粉のような光が音もなく一面に揺れていた」。

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「ヴァンはイランからの亡命者と密輸業者で賑わっている町だということだ」「風景の美しいわりにはけっこう剣呑な土地なのである」。実際、強烈にしつこい物売り等々がいて、夕景をゆっくり見ることもできませんでした。

ヴァンには、もうひとつ有名なものがあります。「ヴァン猫というのはヴァン湖のそばに住む特殊な猫である」「右目と左目の色が違う」「この猫はヴァン湖の近くにしかいないのだが、彼の地にあっても一般的にはあまり見ることができないらしい」。

しかし、、「絨毯屋にはヴァン猫が結構多いのである」「客寄せのためである」「まさに招き猫である」。写真の猫はピクニックしていた裕福そうな家族のペット。絨緞屋でも見ましたが、こちらの方が貫禄あり。

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「ここの町の人々は観光客を見るととにかく絨毯を売りつけることしか思いつかないみたいだった」。絨緞屋にも行きました。素朴なキリムが多くて、かなり惹かれました。そこで購入したクルドのアンティーク・キリム(90〜100年前。上部は下部と対照になっている)。和っぽい柄が珍しくて、私は満足しています。クルドの文様や色あいが好きです。  

村上春樹と勝手にコラボレーション、第1回目ヴァン編でした。
by orientlibrary | 2006-04-02 17:39 | 中東/西アジア