イスラムアート紀行

orientlib.exblog.jp

タグ:社会・文化・現代 ( 52 ) タグの人気記事

イラク現代演劇4本&トークで4時間 濃い〜・・・

ときはバレンタインデー、ところは新宿の小劇場。挫折中のアラビア語クラスの課外授業編でイラクの現代演劇を見てきました。イラクは古代メソポタミア文明の地。サーマッラー(アッバース朝の都城址)も見たいし、行きたい国のひとつですが、タイル・建築も含めてあまり知識なし。おまけに演劇自体に疎いので、まったく予備知識なし。そんな私の見たまま感じたままの観劇メモですが、イラクの演劇公演自体が稀少でもあり、思うこともあったので、書いてみることにしました。(以下、少し長いので適当に、お好みで?・・

e0063212_23223973.gif●劇場は満員。床に座る形式のため、一番前の席に座った私の目の前に役者さん。構成は、イラク人劇作家のドラマを日本人役者が読むドラマリーディング(朗読)3本、イラク人の構成・演出・出演によるパントマイム、イラクと日本の関係者によるシンポジウム

● “ゴドーを待ちながら”のイラク受容だという抽象的な作品、国境線での逃走劇を描いた作品は、内容が理解できないわりには、日本人の役者さんたちの熱演のせいで最後まで目が離せませんでした。

●ドラマ朗読の『戦争時代のお父さん』は、誘拐され乞食として商売道具にされた年老いたお父さんを子供たちが奪い返すお話。なんと現実にあった出来事。大きなニュースにもなったそう。無法がまかり通り、人間さえ商品にされる社会、家族の裏切りや愛情。戦時下のイラクの話なんだけど、日本にもつながるような普遍性も。観客の反応も良。

●そしてパントマイム『バグダッドのオテロー僕たちには時間がない』は、正直、不可解(もとのヴェルディの「オテロ」自体を知らないし)。彫りの深い役者さんの真摯な表情がライティングで陰影を増し、鏡を手で割って血も出たりして・・。隣の女性はチラシで顔を隠してしまって泣きそう。その隣の人は役者さんが口から吹き上げた水を浴びてました。あの席でなくてよかったわ〜・・。

●シンポジウム(というより会場からの質疑応答が主)では、演劇関係者が多かったのか、イラクでの劇団運営をめぐる具体的な(生々しい)展開に。ただしイラクからの皆さんは、政治、宗教、社会の話は、慎重かつ断固として基本的に拒否。芸術の話のみ。

●たしかに、演劇という専門分野で来ているのに、どこへ行っても政治のことばかり聞かれるのもうんざでしょう。でも、あまりの素っ気なさに、いろいろ事情もあるのではないかと思いましたが・・。以下に、そのスケッチを少し。

* イラクには現在、伝統劇から現代劇まで合わせて25ほどの劇団がある。劇団員数は5名から20名など、いろいろ
* 劇団員には国から給料が支払われる(会場=「全員に?!」、、ため息)
* 劇場のキャパシティは500-600名。入場料はすべて無料(会場=「おお・・」)
* 概して善悪のはっきりした伝統劇の方が人気。現代劇を見る層はまだ少ない。しかし観客が一人でも意に介さない。メッセージを伝えたい
公演期間は観客数次第。人気があれば何ヶ月も続くし人が入らなければ3日で終わることもある。しかし終了を決定するのは監督で国ではない
* フセインの時代は検閲などもあったが、現在では自由に作ることができる
* 劇団員がどの宗派だろうと関係ない。実際、ここに座っているもの同士もスンニかシーアかとか互いに知らない

●会場に一人、「今日は観てないんだけどさあ」と言いながら、やたらと「需要」だとか「観客数」ばかり聞くオヤジがいて、「結局、市場は小さいんだな」とわかったようなことを言っているので、、、キレた。小さいから、どうなのさ。尊大な態度で浅薄なことを言う、すごいイヤだ。ずっと戦争や経済制裁が続いてきてさ、今も強い緊張状態なのに、演劇の市場の大小もないでしょうよ。何が言いたいの?!単に見下したいの?

●「今のイラクでは盛んではなくても、アラブ世界全体では演劇の歴史がありますよ」「イラクは芸術文化の長い歴史のあるところですよ」「この脚本は層が厚くないと書けないレベルのものですよ」・・・会場や役者さんからも声が出始めて、オヤジは「アフリカの演劇なんかも観てみたいね」と引っ込んだ。行ってこい、アフリカに。で、終了したのが23時でした(疲)。

●私には内容はよくわからなかったけど、人間について何か表現したい人たちが真摯にやっていることは伝わった。イラクの人を間近で初めて見て、話すのを初めて聞いた。アラビア語がきれいだった。ホームシックになったり喜怒哀楽を表わしたり、同じ人間なんだなあ、それがコクッとわかってよかった。全体はゴツゴツとした違和感があったけど、体験型の私にはいい機会だった。

e0063212_2326129.jpg●イラクの作家や俳優さんが伝えたかったのは、「イラクだからではなく、普遍的なこと」。ただし、チラシなどを見たら「バグダッドからの証言者、来たる。イラクで何が起きているのか」とか「未曾有の史的体験を伝えにやってくる」などと書かれており、そのへんについて質問し拒否された人たちの気持ちも複雑ではないか、とは思いました。  

*写真は(上)「タイニイアリス・イラクNOW・プロジェクト」チラシ、(下)東トルコの老夫婦
by orientlibrary | 2006-02-15 23:40 | 美術/音楽/映画

「ちゃんちゃらおかしいぜ」 ブランドとしての”ロハス”

●先日、腑に落ちない記事を読みました。「空気清浄機や食器洗い器の広告に“ロハス”という言葉を使っているシャープに対して、“ロハス(LOHAS)”の商標権を持つトド・プレスが警告文を出す予定」というものです(日経MJ)。はあ!ロハス(LOHAS)の商標権だあ?いつからロハスがブランドになったのさ?! ・・・とっくの昔になってました

e0063212_1503058.jpg
ロハス=LOHASは「Lifestile of Health And Sustainability」=健康と環境に配慮した暮らし方を意味する英語の頭文字をとった造語です。もともとは1998年にアメリカの社会学者らが新しい人々のあり方として提唱した概念。このところ、雑誌や広告などで目にしたり聞いたりすることのある言葉ではあります。

●でも、もともとはひとつの「考え方」。言わんとしていること自体は結構なことで、何も文句をいうものでもありません。ただ、当初から何となく釈然としない思いがありました。そう思っていた人、意外と多かったのでは?・・・何か匂う、と

ロハスは去年から、衣料や食品などほとんどの商品領域でガンガン商標登録されていました。詳しくはここに。大半はトド・プレスと三井物産が権利を獲得しています。トド・プレスとは、ロハスの特集で部数を劇的に伸ばした雑誌『ソトコト』(世界初の環境ファッションマガジンとのこと)を発行する木楽舎のグループ会社。そして、『ソトコト』の編集長は、雑誌『ブルータス』の編集やテレビ番組「ワーズワースの庭」に関わったO氏です。“スローライフ”って声高に言ってるわりには、やること早いんじゃないの?

●で、彼のインタビュー。「今、いちばんおしゃれな生き方を考えると、そういうLOHAS的な生き方なんじゃないかと思う。つまり、環境コンシャスってことが、今いちばんおしゃれなんじゃないかと思うんだよね」(WEBフォーラム「もっと地球と話そう」より)。全文はこちら。パロディかとも思うけど、シャープに文句言ってるとこみると、マジみたいですね。いわく、「"LOHASはなんでもあり!"みたいな感じになるとLOHASの持つ価値はなくなって、ただの消費のキーワードになってしまうので、いい意味でLOHASを使用してもらえるよう考えていきたい」(NaYOGABlogより)。

●なんでもありにしてるのは誰?消費のキーワードになってしまう?だいたいが本来の概念を普及しようって気があるのか、おおいに疑わしい。

●企業というのは商品(含むサービス)を販売して利益を得ていかないと食べていけない。そのためには何らかの訴えかけが必要なわけで、飽きっぽい日本の消費者には麻薬のように新しい言葉(アピール)が必要です。

●だから、これがイケる、となるとみんなそれを使う。私も企画や調査という領域で仕事をし、ものを書いたりもしてきました。「どうすればもっとも伝わるか」を考えるのが仕事であり、考えて形にしていくことが好きです。

●では私も同類、同罪なんだろうか。自分のことで、うまく言えないけど、私は少なくとも環境を食い物にするのはイヤだ。人の持つ弱いところにつけ込むようなことはイヤだ。伝えたい内容が違う。方法が違う。発想としてはわかるだけに、すごく嫌悪感がある。でも、自分も自戒しないといけません。これからはもっと自分の関心に近いところで、本当に伝えたいことを、本気でやっていこうと思っています。

●今考えてる「遊牧民的な暮らし方」について、コンタクトをとらせて頂いたNさんからメールが届きました。Nさんは今、北海道で自分で家を建てています。モンゴルのエキスパートであり、南シベリアでトナカイ遊牧民といっしょに越冬もしたNさん、

●「必要最低限の状況で、最大最高の住環境を作るためには、基本的に、まずは人間が欲望を抑制しなければならないのだということがよくわかりました」として、「そういった意味で “ロハス”なんて言っても、めいいっぱい従来の物質文化を基盤にした“ちゃんちゃらおかしいぜ”ってのにしか聞こえないんです」。そう、ちゃんちゃらおかしいぜ、ですよね!Nさん、どうもありがとうございました。
e0063212_1511735.jpg

*写真は、(上)モロッコ・フェズ、中世の面影を残す街、(下)モロッコ・威勢のいいバザールの魚屋さん。並べ方にもお国柄。国王の写真あり
by orientlibrary | 2005-12-22 01:53 | 日本のいいもの・光景