イスラムアート紀行

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映画『あたらしい野生の地 リワイルディング』

忘れないうちに、印象が強いうちに、、と思うと、こんなに頻度低いブログアップが、映画の話題ばかりに、、。そう、今回も映画「あたらしい野生の地 リワイルディング」について、なのです。

いろんなことを書きたいと思っているんです。たとえば、

1: 日本のタイルの動き・まとめ (日本のタイルが動いています!多治見市モザイクミュージアムのオープン、各地の多彩なタイルイベント、タバコ屋とタイルの会に寄せられる日本各地のタイルの景、素晴らしい本『美濃のモザイクタイル つながる思い、つなげる力』、「タイルびとの会」のイベント、など)

2: 「工芸を体感する100日間」レポ (10月22日〜1月29日まで東京で開催される300に及ぶ工芸イベントについて、ガイドブックを見ながら行ける限り行き、見学体験し、なるべくトークなども参加し、それをレポしていこうと思い、別のブログの用意までしました。実際、展示やトークにも行っています。が、まだ書けていません、、)

3: 民藝を巡る (2とも関連しますが、この数年、あらたなブームとも言える若い層の民藝人気について、ショップやイベント体験を)

4: ホラズムのタイルと陶芸 (ウズベキスタン西部、ホラズム地方の装飾タイルと青の陶器について。陶芸工房訪問レポ。取材もしています。かなり秘境の地、二度訪問しました。でもまだ書けていません)

5: アースバッグの家づくり (今年の2月に出会った「アースバッグ」、土で作る家(空間)に一目惚れしました。天幕と土の好きな私の超ツボでした。主催者や集まる人たちも魅力的。時間をかけて追いかけたいと思っています、が、まだまだ動けていません)

6: タイルのテーマいろいろ (鳥の図柄、魚の図柄、多角形、幾何学、その意味や背景、文化など)

7: 九州北部の陶磁器 (有田、三川内、そしてこれから回りたい九州の産地。有田焼400周年イベントレポ)

8: 植物アルバム (去年秋から、コンデジでパシャパシャですが、植物の写真を撮っています。小さな植物の宇宙、枯れて満ちて開く時間の流れに惹かれています。雫も好き)

、、などなど。要気力&体力、です。

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(テーマいろいろ)



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「大自然の無尽の力を、春夏秋冬の歓喜を、途切れることのない命を、そして生死を見つめていた」〜『あたらしい野生の地 リワイルディング』 

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■ 干拓事業の失敗で放置された土地

オランダというと、海抜が低く人口過密な小さな国、というイメージが。そのオランダに、しかもアムステルダムから2時間ほどのエリアに、何万匹もの馬が駆け抜け、キツネや鹿が走り、さまざまな鳥が飛ぶ「野生の地」がある、そのことがまず、イメージできませんでした。しかも、1968年以降、50年に満たない時間の中で、ほぼ自然にできた野生というのですから、不思議でなりませんでした。

映画公式サイト、現在上映中の渋谷UPLINKサイト、そして菅啓次郎さん&ドリアン助川さんによるトークショー(濃くて充実!)の内容から(メモとっていないので記憶違いがあったらすいません!)、少し書いてみたいと思います。

まず、この野生の園が、元々は干拓事業の失敗で放置された土地だったということに驚きます。

「アムステルダムから北東50キロの海沿いに位置する6000ヘクタール程の小さな自然保護区「オーストファールテルスプラッセン」。もともとは1968年に行われた干拓事業の失敗で放置された人工の地だった。しかし、人に忘れられたその土地に、わずか45年で自然はあたらしい命を育み、野生の楽園を築きあげていた」(UPLINKより)

オランダは干拓事業による地域が多い国ですが、放置されたというこのエリアは海抜が低い湿地で、水はけがうまくいかなかったのだそうです。そして放置されたままに。


■ 生態系が自らを復元する

ところが数年後に、植物学者が訪れてみると、あらたな生態系ができている気配が。長期を見越した調査や計画がすすめられ、10年程後には馬をこの地に放ちます。

「この土地でもっとも人目を引くのは、美しいたてがみをゆらして草原を駆け抜ける馬の群れ。ヨーロッパ原生種の馬にもっとも近いといわれるポーランドのコニックがリワイルディング(野生の再生)の試みとして放たれると、馬たちはこの土地に適応し、人間の介入の外で順調に数を増やしていきた。今では2000頭を優に越える頭数が確認されている」(公式サイト)

放たれた生き物もあれば、さまざまな地から入って来た多様な生き物が。

「同時期に放たれたアカシカも繁殖に成功。また鳥類では、17世紀以来ヨーロッパ大陸では目撃されたことがなかったオオワシが、おそらくスカンジナビア半島から飛来して姿を見せている」(公式サイト)


■ 春夏秋冬、生き物たちと自然、映像の美しさ

この野生の園の広さは東京大田区ほどであり、それほど広くありません。まさに都市近郊ですが、ゲートで囲まれており、一部を除き人間は入れないそうです。この中に、16人もの各分野(動物、昆虫等)の専門カメラマンが入り、600日かけて撮影したという映像の迫力、臨場感、美しさが素晴らしい。

「限られた土地の中で植生がどう移り変わってゆくのか、どこにどんな動物が戻り、他の動植物たちとの関係をつくっていったのか。湿原にはコケ類が、草原には一年生の草本が、そして森林には多年生の草木がはえ、土の性質を変えていく。水辺にはまず魚、両生類が戻り、鳥類が呼び寄せられ、それを狙ったキツネがやってくる。草原では馬やアカシカが子どもを育てる。こうした生態系復元のプロセスや自然のサイクルを美しい映像を通して学ぶことができる本作は、それはまるで動く生きもの図鑑のよう」(公式サイト)

トークでは福島の話がありました。避難指示が出された南相馬では一時、家畜が野生化して繁殖しているという報道がありましたが、守るのではなく殺すという選択が取られたそうです。南相馬は元々は湿地帯で、津波の後、農地に開拓された部分が流されて元の湿地に戻り、自然という面から見ると、この「オーストファールテルスプラッセン」的でもあったそうです。複雑な気持ちです。


■ 凍っていく鹿のように、、 

ドリアン助川さん、トークにて開口一番「この映画は(老子の)tao、タオだと思った」。そして「観られた幸せ」を、詩人の言葉でたくさん語ってくれました。皆さん同じなのでしょう。映画へのコメント、いい言葉がたくさんありました。(公式サイトより)

* 捨てられた土地で新しい生命の可能性が示された。それは人間の想像を超えた想定外のことだった。考えてみよう「捨てる」ことの積極的な意味を。認識を変えたとたん、それは新しい思想になる。(田口ランディ)

* なにもなかった場所にこれだけの宇宙が誕生するのであれば、この世の命あるどんなものも自らを再生する力を持っているのだと確信できた。(吉本ばなな)

* 映像を観ているうち、ボクは草に宿った水滴となり、大自然の無尽の力を、春夏秋冬の歓喜を、途切れることのない命を、そして生死を見つめていた。体験し得た者は、本当の意味でこの世の祝福を受けたのだ。(ドリアン助川)

* 人間の手の触れない世界が、隅から隅まで、どれほど喜ばしい生命に満たされているかを、本作品はつぶさに示してくれる。(野崎歓)

* ひたすら生きて繁殖して死んで食われる、食われて死ぬ。ただそれだけのことが圧倒的に美しい。この美しさは、ただ単に人間が「何もしなかった」ことの結果だ。その結果を驚くべき映像でつきつけられ、身体中の細胞が喜びに打ち震える。この映画の中で凍ってゆく鹿のように死にたい、と本気で思った。(小池桂一)


・・・ 「凍ってゆく鹿のように死にたい、と本気で思った」、同感です。もっとも強く印象に残ったシーンです。死期を悟った鹿の眼に映るオーストファールテルスプラッセンの景。それをカメラは静かに見つめます。動物の眼に映る自然の景、次第に閉じていく眼、閉じた眼に降り積もる雪。厳しく、悲しく、しかし美しかった。この死は不幸なのでしょうか。自然なのでしょう。私の心にも、思いが降り積もりました。

映画は、東京アップリンクの他、名古屋、大阪、京都などで上映されるようです。
* 公式サイトはこちら
* UPLINKサイトでの紹介はこちら



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タイルのブログとしては、オランダ→デルフトを載せるべきなのでしょう。けれどもヨーロッパのタイルの写真がほとんどない、イスラームタイル一辺倒のorientlibraryです。中国染付と染付に憧れたデルフト&世界各地のブルー&ホワイトのやきものを少々ご紹介します。


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(青花魚藻文壺/景徳鎮窯/元時代14世紀)(青花唐草文水差/景徳鎮窯/明時代(1426−35))(デルフト/藍彩人物タイル)(イラン)


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(トルコ)(青磁染付鶴亀図大皿/伊万里/19世紀)(ウズベキスタン)(リシタン絵付け)


近々、何かアップしたいです。気合い入れつつ、セルフメンテナンスをゆるゆるやっていきます。
by orientlibrary | 2016-11-03 23:04 | 美術/音楽/映画

「あめつちの日々」とわたし

前回から1年2ヶ月、あまりに久しぶりのブログ更新となりました。去年の今頃は、ウズベキスタン(ホラズム)行きの準備などで、あわただしく過ごしていました。

昨年5月後半、ウズは極暑一歩前。真青な空、ホラズムの紺碧のタイル。イチャンカラ(ヒヴァ)でのミッション、煉瓦や木材の調達、工芸品探し、陶芸工房やアーティスト訪問と再会、中世のようなバザールの活気。遠い昔のようです。

昨年晩夏以降、気持ちも体調も低迷していました。自身の甘さ全開なのですが、大好きな母の急逝という喪失感は大きく、加えて今年に入って4ヶ月以上も続いた体調の悪さには滅入りました。でも、、ようやく気力が沸いてきました。体調が改善してきたタイミングもあったと思いますが、活力のきっかけにこの映画があったことは間違いありません。「あめつちの日々」。


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■ 「あめつちの日々」のはじまり ■


「2011年。私たちが探していたのは「土」でした。風土と人間の暮らし。撮ってみたかったのはその絶対的存在でした」(「あめつちの日々」WEBサイトより)

そして向かったのは、「四名で持つ共同窯「北窯」。沖縄最大といわれる登窯はダイナミックで上へ上へと昇りあがってます」 松田米司氏に話を聞く。「土はなくならないのでしょうか?」「いずれなくなるかもしれないね。自分たちにも責任はある。だから懸命に喜んでもらえるものをつくろうと思っている」

(*北窯(きたがま)=沖縄中部読谷村。宮城正享・與那原正守・松田米司・松田共司の4窯元の共同窯として1992年に開窯。13連房という大きな登り窯で年5回火入れする。)

約4年をかけて、松田米司さんとその工房、北窯を取材・撮影・編集。上映は16年5月7日が初日。現在、渋谷イメージフォーラムで上映中です。(* プロデューサー=高田 明男、監督・撮影=川瀬 美香。敬称略)

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■ 土と笑顔 ■


(じつは、「あめつちの日々」、すでに3回観ました。何度観ても発見があるし、何か書きたいと最初から思ったので、構成や言葉などを記憶したかったのです。が、覚えてません!無理。以下、あくまで私が覚えている範囲、しかも感覚的印象優位です。正確さは、別の何か?でご確認ください。)

映画の冒頭シーン、瓦の上に置かれたたくさんの赤い陶土。健やかなたくましい姿で、読谷の陽射しを浴びています。土の様子を見に来た松田米司さんの、土と呼応するような満面の笑み。その笑顔があまりにも素敵で、、一瞬にして映画に引き込まれました。

瓶のろくろ挽きの長回しもいいですね〜。端的でよくわかる。「土族(つちぞく)」としては、土がどーんとアップで撮られるということに、すでに興奮状態。しかも、その迫り方に土へのただならぬ愛を感じました。土のアップと長回しで、撮っているのは女性かな?と思いました(当たってました。気になるところにグッと、、そのお気持ち、わかる気がするのです)。

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■ キラキラするものを見つけてしまったんです(松田米司さん) ■


沖縄や“やちむん”(沖縄では焼物のことを「やちむん」という)のことを語る米司さんの言葉のきらめきに魅了されました。(繰り返しになりますが、以下、正確な再現ではありません!)

「沖縄が好き。くされ縁というか、面倒ではあるんだけど、その中に、キラキラするものを見つけてしまったんですよ。土に関わることなんだけど。それは自由で魅力的なことなんです」

「伝統というのは、個人が入ってはダメなんですよ。入らないほうがいい。沖縄の、というところに、誰の、が入ると、なんだか、、うるさいでしょう。工芸というのは、それを話題に皆が語り合うような、文化のものだから。沖縄には伝統があり、しっかりと作れる陶工たちがいるのだから」

「(車で出かけた先にて、カゴに何かを拾って入れながら)  これは釉薬に使う鉄分の多いマンガン。沖縄のやちむんは、自然からいろんなものをもらっているんだよ」  (*「この場所は旧日本軍の飛行場で、その後、米軍が占有していたところ」という。その上空を飛ぶのは米軍飛行機か。現在も米軍基地がある。奇しくも今日5月15日は沖縄返還の日。44年経ちました)

陶土を求めてベトナムへも。合間に街で気に入った茶碗や皿を買い求め、とろけるような笑顔。沖縄の白土の成分とほぼ近い白土(カオリン)の工場と原料採掘所へ。  「(土を手に持ち笑顔で) 採掘所っていうのは、ワクワクするね。この広い採掘所の地面の下、全部(土)でしょう。すごいな。なるべく原土のままで精製しないで使いたい。この土は化粧土にしたい。沖縄の土と混ぜて作陶もしたいし、釉薬にも。本当は沖縄の土でやりたい。でも、いろんな方法を考えなくちゃならない」

「琉球人らしく生きるには、沖縄人らしく生きるには。それを考えて職人になった。どこにも属さず、誰にも頼らず、自活していく。自立していく」

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■ 全国から集まる若い陶工さんたち ■


若い陶工さんたちの土づくりも印象深いシーンです。体全体をかけて何ヶ月も土と向き合う姿。陶芸はろくろ挽きや絵付けだけではないこと、大半は土の調子を整えていくような地道な作業であることに気づきます。

皆さん、いい顔。姿勢というか、姿がきれいです。打ち込んでいる人の意気が伝わります。

火入れ、数日の昼夜通しておこなわれる窯焚きも、じっくりと見ることができます。丸太をどーんと入れている、、豪快! 一方で、温度や時間と場所を細密に調整し続ける根気や集中力にも感心しました。

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● 尾久彰三さん(古民芸研究家) ●


「沖縄のやきものには長い伝統があります。そしてスケールが大きいんですよ。小さな島だけど海も含めると大きい。海洋国のスケールがある。そこが本土の陶芸産地との違いでしょうか」

「米司さんは、伝統を深めるほうでやっていかれればいいと思う。今立っている地の奥の方に行く、と言えばいいかな。沖縄にはそれだけの伝統やものづくりの幅があるのだから」

尾久さん、奥ゆかしくて、ほのぼのしてて、いいな。

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● 山内徳信さん(読谷村元村長) ●


強烈な印象です。こういう骨のある人がいたから、今の読谷があるのかなと思いました。

「村長になったとき、何ができるか、経済じゃない、と思った。当時、村の人が皆うつむいて歩いていることに気づいたの。戦後、村の95%が米軍に占有されていた。大人も子どもも、夜空の星を見上げるように胸を張って、自分の村に誇りを持って欲しかった」

「経済じゃない、文化だ。文化村を作ろう。花織りができる場、やちむんができる場を。そういう場を作るんだということで、交渉していった」

1986年の「読谷文化村」構想。詳細な経緯や経過については知らないのですが、現在の北窯も、この文化村構想があってこそのものなのでしょう。米軍占有地も36%まで減少したそうです。

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▼ 健やかで、骨太で、自由 ▼


全編を通じて、土も、人も、やきものも、健やかで、骨太で、自由、その波動が伝わってきました。この健やかさ、生命感が、私がこの映画と出会って受けとった宝物です。

「マカイ(沖縄の椀)は、重ねて焼成する、という制限がある。茶碗の形ではそれができない。そこからマカイの形が決まっていった」。

制限から生み出された形の美。また、重ねて焼成するには正確に中心が取れていないとダメ。基本がきちっとしているから、目に気持ちいいのかなと思いました。

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▼ リシタンやホラズムを重ねたくなる ▼


中世からの陶芸の歴史、今に続く伝統の継承、そして赤土に象牙色の化粧土、地元の植物を使った釉薬。やはりウズベキスタン陶芸と重ねてしまいます。以前から、沖縄とウズベキスタンは似ているという気がしていましたが、陶芸でも重なりを感じました。

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(リシタン)

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(リシタン)

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(ホラズム)

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(ホラズム)


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▼ 感謝します ▼


松田米司さん、工房の皆様、やちむんを生み出してくださってありがとうございます。

映画製作の皆様、熱くて温い、心に響く映画を作ってくださってありがとうございました。(プロデューサーの高田明男さん、監督・撮影の川瀬美香さんは、「紫」を製作された方なのですね。観ました、紫。こちらも迫る映画でした。工芸の次作はなんでしょう!?待ってます!)

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(上映後あいさつ(川瀬監督、松田米司さん)/今回の展示会で入手した茶碗、皿。緑釉は真鍮とガジュマルの灰釉と聞きました。興味深いなあ。これから知っていきたい)

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(「あめつちの日々」公開記念やちむん展示会にて)


とにかく書いてみました。とにかくラフなまま、アップしようと思います。健やかに歩いていきたいです。
by orientlibrary | 2016-05-15 23:01 | 日本のいいもの・光景

「アトラス、デシン、更紗???」(結果は・・) 、絢香、Superfly

軽すぎ&私的なトピックです! どんよりイライラのニュースが多い昨今、こういうのがあってもいいのでは、、な〜んて!

久々、YouTubeで音楽タイム。とくに理由なく、「次の動画」をパラパラ見ているうちに、絢香さんの「三日月」に。自然の中で歌ってるね。え!? その衣装、、ん?!、、これは「アトラス」では?!?、、アトラスだよね!?

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(「絢香 三日月 0608 NHK G SAVE THE FUTURE ECO UTA 2008」よりキャプチャー)

 *アトラス* ウズベキスタンやウイグルの特産である絹の経絣布(絹と綿を用いたものはアドラス)。華やかな色彩と大柄の抽象的な文様が繰り返し表される。

でも透けててシフォンみたいに柔らかそう、、デシン?!ウズベキスタンのデシン?! こんな柄のデシンもあるの!?

*デシン(〜クレープデシン)*  「細い生糸で平織にした薄地の縮緬。たて糸に無撚糸、よこ糸に強撚糸。織り上げた後に精錬して細かいしぼを立てる。ドレープ性があり、柔かくしなやかなタッチが特徴」。別名フランス縮緬とも。 

気になって気になって、、静止してキャプチャーして拡大。YouTubeも10回以上(今、「異常」って出た=そのほうが当たってるかも!)見たけれど、テキスタイル素人の悲しさ、う〜ん、わかりません。でも、先入観かもしれないけれど、デシンっぽいというか、そう思いたい、、大胆なアトラスの模様でステキ!! (*注:正確にはわかりません!)

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(「絢香 三日月 0608 NHK G SAVE THE FUTURE ECO UTA 2008」よりキャプチャー)

デシン、なぜウズベキスタンにあるのでしょう。中央アジアがソ連だった頃、1950〜60年代に流行ったのだそうです。透け感と浮遊感。色柄も、いわゆる「サイケデリック」に合いそう。世界的な時代感覚なのかな。そして、その頃のデッドストックが今、売られているのです。

私も数年前まで、知らなかった。アトラス布に触れる機会が増えるにつれ、チョルスー(タシケントにある巨大バザール)などで時々見かける、この貴重なシルクデシンのことも知るようになりました。値段も高めなので、日本人が店に行くとデシンが出てきます。とてもステキです。

→ 気になるのは3つ。(1)前身頃のアトラス模様の布 (2)袖から後身頃の、カラフルで櫛模様のようなものがある布 (3)襟元と袖の一部にアクセント的に使われている布。それぞれ、いったい何?

→ そして次に、これはいったい誰が提供したんだ!?ということ。番組は、2008年6月8日放送の「SAVE THE FUTURE ECO UTA 2008」(NHK BS)。(=この日、この放送があり絢香が出演したことは検索をたどって確認。検索範囲内だけれど、年月日はこの日と考えていいと思う)

絢香さんの衣装。(1)前身頃のアトラス模様の布。デシン?? ここだけ普通のアトラスかもと思ったけど、柔らかそうだし、襟元をアップで見ると、透けている感じ。わ〜、こんな柄のがあるんですね〜!白地に、正円ではない楕円状の模様とペイズリーなど。縦方向の流れが出てきれい。→→→ <追記及び修正?>こちら、プリントのシフォンかもしれません。理由は後半に書いていますが、この時期欧米のデザイナーやメゾンが中央アジアモチーフをコレクションで発表していた。一点ものではなく、既製品なのかも???

(2)袖から後身頃の、赤や白や紺の模様がある布。櫛模様的なものしか、わからない。キャプチャーの限界。赤が絢香さんに、よく似合っている。

(3)襟元と袖の一部にアクセント的に使われている布。一瞬、ロシア更紗かと。花模様が更紗っぽい。美しい花模様の更紗は、通常、アトラス衣装の裏地に使われています。でも、質感が柔らかそう。ロシア更紗だったら、テンションもっと上がったけど。

*ロシア更紗* 19世紀になるとロシアでは綿花を主としてアメリカから輸入し、更紗生産では世界の中心地となった。ロシア更紗はブハラ商人の手を通して中央アジアにもたらされた。時々見える裏地に使われた可憐な花模様の更紗は、衣装を一層引き立てている。(「豊穣なる色彩 ウズベキスタンの布と器」) 

それにしても、この衣装、2008年ですか。スタイリストさん?現地の仕入れ? いやあ、現地の感覚と違う気がする。日本でデザイナーが作った?誰だろう。中央アジアファンとして、テキスタイルや工芸が、ジワジワとひろがっているのを、楽しみに見ていたので、気になるのです。

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(ウズベキスタンの染織工房)

<ブログにも何回か書きました>
● アブルバンディ・雲の織物。ウズベキスタンの絹絣(2007年9月19日)

ウズ風プリントが揺れる、街に、モードに!(2010年4月6日)

圧倒的にクールな中央アジア伝統染織!でも現代のアパレルは、、(2010年4月17日)

Atlas Today、色使いと模様が魅力、ウズベキスタンの絹織物(2013年2月18日)

日本のデザイナーでは、コシノヒロコさんのスザニコレクションは有名。東京都庭園美術館での「シルクロードの装い」展開催は2004年春。若い服飾関係者らしき人たちが、たくさん見ていたなあ。そういえば、ドン小西。初ウズが2011年だから2008年じゃないなあ。イッセイのブランド「PLANTATION」でもその頃、中央アジア柄を出していて、見に行ったけど、洗練されすぎでした。う〜ん、誰かいないか、、

ふと思い出したのが、高田賢三さん!たしかウズのファッションウイークに行っていたはず。元々が花柄を多用していたし、こういう高度な組合せができるのはケンゾーさんなのでは!?きっとそうだよ!

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世紀の大発見みたいに、がぜん色めきたちましたが、確認するとケンゾーさんの来ウズは「STYLE.UZ」(2008年10月12-17日開催)。いやあ、この頃は、「ウズベキスタン文化・芸術フォーラム基金」がガッツリ活動していたので、いろいろ華やかだったように思います。今は、、タブーですか、この話題。グリナラさん、、今どこに。

衣装が6月でケンゾーさんが10月か、惜しかった!ということで、私の遊びはここまででした。

キャプチャーして思ったけど、絢香さんは、どの瞬間もカワイイ。表情がイキイキして、この衣装と、とても合っていた。着こなして、魅力を引きだしていました。衣装を見たいかた、歌を聴きたいかた、こちらですよ!襟元が何かわかったら教えてくださいね〜。

→  FBコメントをいただき、気づきました!! 1990年代後半から一部のデザイナーが中央アジアのテキスタイルやモチーフを取り入れた斬新なコレクションを発表。とくにオスカー・デラ・ルンタは2005年頃から大々的に発表し注目を集める。ジョン・ガリアーノ、ドリスバン・ノッテン、バレンシアガ、さらにはグッチなど欧米のデザイナーやブランドは、2010年頃まで軒並み、パリコレ、ミラノコレで、中央アジア柄モチーフやウズベクの布を使ったコレクション発表してるんです。そこまでは、これまでもブログに書いてきたのですが、、それをスタイリストさんが取り入れた、というのが、いちばんあり得る線ですね! なんでそこが考えられなかったんだろう、、スッキリしました! いずれにしても、この3つの柄の組合せは、ウズの布についての知識と理解があるデザイナーさんだと思います。どうもありがとうございました! 





もうひとつ、こういう衣装を着て欲しい人ということでSuperflyの越智志帆さん。絶対似合うよ!たとえば、こういう中で。




カワイイなー!基本、ROCK AGEなので、いまだに好きです、こういう世界。Superfly、最高!

そして、このミュージックビデオ、何か懐かしさがあったのですが、「ルナ・パパ」(Luna Papa)だ!ルナパパを思い出す。1999年制作、タジキスタンが舞台の映画。不思議なファンタジーで、中央アジアに惹かれていった、ひとつのエポックでもありました。
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YouTubeのチラ見から、えらいところに来ちゃいました。長々すいません。これから、しばらく、「走りながら書く」にしようと思っています。「きちんとスタディして、まとまったら書く」ができないことが、よくわかったので(残念ながら)。ではまた!

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by orientlibrary | 2015-01-28 11:17

アイユーブ朝の青い陶器 〜「ラッカ」の地層にあるもの

戦略的かつ直裁的に「イスラム」を名乗られてしまったこと。世界の穏健なムスリム、ムスリマにとって大きな不幸であり、イスラームの地や人々や工芸やたくさんのことを愛する人々にとっても辛いことが多い日々であると思います。私もまた憤懣やるかたない気持ちになることがあります。

ラッカ(Raqqa)に行ったことはありません。でも、書籍を通してではありますが、憧れの地名でした。アイユーブ朝時代、青の陶器で一世を風靡した街。青釉黒彩、白釉藍彩、ラスター彩。描かれるのは、のびやかな植物や動物、力強いカリグラフィー。

ISが首都にしたという「ラッカ」とは、このラッカですよね??

ラッカは、今のラッカだけではない。それだけを書きたくて、急遽投稿します。歴史にはさまざまな変遷があり、もちろん栄枯盛衰もあるけれど、でもイスラム陶器生産の中心地であり、交易によって栄えた時代もある。そのことを書きたかった。予備知識はありません。wikipediaなどから抜粋、引用(「  」内)しました。

写真は、『Raqqa Revisited: Ceramics of Ayyubid Syria』(Jenkins-Madina, Marilyn / 2006)より。青い陶器を眺めていた本でした。

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(『Raqqa Revisited: Ceramics of Ayyubid Syria』(Jenkins-Madina, Marilyn, 2006))

『Raqqa Revisited: Ceramics of Ayyubid Syria』はメトロポリタンミュージアム所蔵のラッカウエアについての書籍であり、同館のサイトを見ると、多数の写真がありました。表紙を含め5点はスキャンしたもの。1点はサイトからの引用です。


 「ラッカは、シリア(シリア・アラブ共和国)北部の都市で、アレッポの160km東にあり、ユーフラテス川中流域の北岸に位置する。ラッカ県の県都。人口は190,000人から200,000人と推計されており、シリア第6位の都市」

  「ラッカはアレッポとデリゾールを結ぶ道路や鉄道が通り、ユーフラテス中流の農産物を集散する農業都市である。ラッカ西方にはユーフラテス川をせき止めたダム湖・アサド湖が広がる。ラッカのすぐ東で北からユーフラテスに合流する支流バリフ川があり二つの川沿いに農地が広がる。バリフ川を北へ遡るとトルコ領に入り、ハッラーンやウルファの平原に至る」

 「12世紀半ばのザンギー支配下(ザンギー朝)から13世紀前半のアイユーブ朝初期にかけての時代、ラッカは農業と手工業の生産力をもとに第二の繁栄期を迎える。この時期、ラッカの名を世界に轟かせたのはラッカ・ウェア(Raqqa ware)と呼ばれる青い釉薬をかけた陶器であり、イスラム陶芸の中心地のひとつであった

  「アイユーブ朝は、12世紀から13世紀にかけてエジプト、シリア、イエメンなどの地域を支配した スンナ派のイスラーム王朝。アイユーブ朝の政治体制は安定していなかったものの、エジプト・シリアの経済は順調に成長を遂げていく」

 「アイユーブ朝では農産物の生産量を増やす様々な政策が実施され、農地の灌漑を容易に行うために運河の開削が行われた。アイユーブ朝時代のエジプトではナイル川を利用した農業が経済の基盤をなし、小麦、綿花、サトウキビの栽培が盛んになった」

  「十字軍勢力との抗争がアイユーブ朝とヨーロッパ諸国の経済関係の発展を妨げる事はなく、二つの異なる文化の接触は経済活動、農業をはじめとする様々な分野において双方に良い影響をもたらした」

  「アイユーブ朝の領土内にはヴェネツィア人の居住区が設置され、領事館の開設が認められる。ショウガ、アロエ、ミョウバン、そしてアラビア半島とインドからもたらされた香料、香水、香油がヨーロッパに輸出され、グラス、陶器、金銀細工などのイスラーム世界で製造された工芸品はヨーロッパで珍重された。アイユーブ朝と十字軍の間に生まれた交流を通して中東・中央アジアで生産された絨毯、カーペット、タペストリーが西方に紹介され、ヨーロッパ世界の衣服や家具の様式に新しい風を吹き込んだ。また、アイユーブ朝およびザンギー朝との交易によって、ゴマ、キャロブ、キビ、コメ、レモン、メロン、アンズ、エシャロットといった植物がヨーロッパにもたらされた」

ラッカ陶器の画像です。

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(ランタン/13世紀初期/推定ラッカ/土と石英によるフリットウエア、コバルト青下絵付け、ラスター彩/四角形にドームが乗っている。四隅は柱、その上に梨の形状の装飾)

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(水差し/13世紀初頭/ラッカ/ラスター彩/クーフィー体で「al-izz」(栄光)の銘文が描かれている。植物模様、格子状のシルエット。茶色の中にラスター彩、コバルトブルー、薄い緑)

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(青釉黒彩鉢/12世紀/ラッカ/黒彩、花飾りのある「alif-lam」モチーフ)

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(青釉黒彩平縁鉢/12世紀項半から13世紀前半/ラッカ/反転した二羽の孔雀が描かれている。黒で彩画し青釉をかけている。口縁が平縁をなしている)

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(白釉藍彩鉢/13世紀/シリア/下絵付け/中心に八葉のロゼット模様、刀剣形の植物モチーフ、放射状のアラベスクのメダリオン)

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(瓶/12世紀/ラッカ/ラスター彩/円筒状首と反った縁、反転した梨のかたちの瓶 〜同館のサイトより)

 Sotheby's サイトでのRAQQA WARE  こちらにも画像あります。

地域の人々の安定と平和を祈っています。現在起きていることについて思うことはありますが、現時点では留めておきます。
by orientlibrary | 2015-01-21 22:40 | 世界の陶芸、工芸

柳宗悦が選ばなかったもの、インドTarabooksの本づくり、そしてモザイクタイル

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(スルチャル・マドラサ/コンヤ)

セルジュークの装飾タイル、そしてモザイクタイルへの道、少しずつ進めています。でも、連続だと、ブログの見た目にも、気持ち的にもちょっと重そうなので、今回は軽めの話題をいくつか。

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中央アジア積み&盛りコレクション


まずは、「中央アジア積み&盛りコレクション」。Facebookのページで、流れで始まった特集。以前から、面白いなあと思っていたんですよね、バザールなどで見かける、てんこ盛りみたいな、とことんやる積み上げ方。各地での採集投稿もいただき、楽しいです。

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(キッチリの「トルクメン積み」はアートの域/缶にまで及ぶ「トルクメ積み」/各所で見られる「ウズ積み」、クルト(チーズの一種)も積みます/トルコのバザール、こだわりの「トルコ積み」。とことん/総菜もすごい、「ウズ盛り」ラッシュ/ニンジンサラダの「ウズ盛り」)


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青の陶器とタイル、好き


青のfacebookも続いています。1年半かけて、「いいね」=400。とくに宣伝してはいないので自然に。青好き、タイル好きの方の存在を感じられて(これまで、なかなか実感が持てなかったので)、心強い気持ちになります。

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(青facebookより、いくつか//ティラカリ・マドラサのモザイクタイル〜サマルカンド/中国風図柄のフランス製ファイアンス花入れ。19世紀後半〜20世紀前半。ブハラのシトライ・モヒ・ホサ宮殿に展示されていた。中国の模様のフランスの錫釉陶磁器がブハラに。献上品だと思うが興味深い/ウズベキスタン、リシタン、ウスマノフ工房間の絵付けタイル。この写真をずっと見ていて、あらためて自分はタイルが好きなのだと気づいた。おおらかなタイルの世界/トルコの骨董屋で購入したキュタヘヤの青い小壷。調味料入れのようだ。タイルだけでなく陶磁器、青のテキスタイルなども時々アップしています)


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柳宗悦が選ばなかったもの


たった4日間の展示会、「柳宗悦が選ばなかったもの VOL3 茶わん 1900—1970」(倉日用品商店 企画展)@べにや民芸店(東京港区南青山/7月1日まで)。

「日本の雑器の7割を生産しながら、民藝という視点では必ずしも光が当たらなかった瀬戸や有田の茶わん。しかし、明治以降全国の家庭に、食卓に、旅館に使われ続けているそれらには窯屋の主人が頭をひねって生み出した、様々なデザインが施されていた。伝統の文様をベースにしつつも次第に珍奇になっていく、誰も記録していなかった「ふつうの飯茶碗」のデザインを、明治から戦後まで一挙公開!」

とても面白かったです。しかも全品即売。しかも1個数百円が大半、最高でも1000円ほどという値段。古いものの値段は私にはわかりませんが、見る人が見たら、かなりの値段がつくものもあるのでは。へたウマイラスト系のもの、昭和モダン系のものなど、お宝もありそう。倉日用品商店Facebookには「さすがに初日はプロに類する方が素早く「特にいいもの」を買っていかれまして、目利きの仕事の鮮やかさを目の当たりにした次第です」とありました。

本業ではないのですが、流れとご縁で、陶器の仕入れと販売をさせていただいた経験、少々あります。ひとつずつすべてが違う手作り品の梱包や値段つけは、素人には大変な作業でした。(とくに中央アジアからは、物流が大変すぎました。値段も前例がないので難しかった)。今回の茶碗は、脆くはないですが、やはり一つ一つのパッキングは手間だと思います。倉日用品商店さんのある京都から持ってきて、開梱して並べる、青山の老舗民芸品店のギャラリーで。思わず、数百円×個数で、かけ算してしまいました。

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(冊子が作成販売されていたので購入。「柳宗悦は、なぜ瀬戸と有田の雑器を選ばなかったのか」の考察、すべての出品茶わんの画像、解説付き。貴重な資料!/べにやギャラリーの様子/下左:初期の茶碗は模様で埋められていることに価値があると考えられたのか、染付印判での全面彩色が流行したのだそうです。その後、ハンコを全面に押す手間より手描きのほうがスピードが出たのか、理由は不明ですが突然姿を消したのだとか/小津映画に出てきそうな小ぶりな茶碗たち/下右:購入品。チャイ茶碗的なぽったりしたものと湯呑み。白地に絵付けをやはり選ぶ傾向。さっそく使っていますが、適度に重くていい感じ。もっと欲しい!)

京都西陣の堀川商店街にある「倉日用品商店」、荒物などを扱い、コーヒーも飲める。なんだか面白そう!今度行ってみよう。三井美術館の明治工芸展で興味津々の幕末、明治の工芸を展示している「清水三年坂美術館」も!&facebookのタイルの会で知った、すてきな京都のタイルも見たい。大好きな河井寛次郎も。


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インドTarabooksのゆかいな本づくり


「インドTarabooksのゆかいな本づくり」スライドトーク、というイベントがありました。案内人は矢萩多聞さん(装丁家) 。

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(以上3点、http://kokyuu.org/tara/?cat=13 より)

「手漉きの紙に、手刷りのシルクスクリーン、手製本で本を綴じ、なにもかも手づくりで絵本をつくっているインドの出版社Tarabooks。彼らの絵本に魅せられ、南インド・チェンナイの印刷工房へ見学にいった矢萩多聞が、現地の写真をたっぷりおみせつつ、彼らのゆかいな本づくりについてお話しします。ぼくはこの出版社に出版の原点、明るい未来を感じています。本好きはもちろん、多くの日本人にこのすばらしい出版社、美しい絵本のことを知ってもらいたいです」

素晴らしい絵本たちを画像で紹介できないのが残念ですが、リンク先に写真がたくさんあります。矢萩さんのHPは、詳細でわかりやすいです。ぜひ、ゆっくりとごらんください。

● Tarabooks とは  (1994年から美しい絵本を数多くつくり、
世界中の本好きたちを魅力しつづける、奇跡の出版社だ。本文用紙は手漉き紙。印刷はすべてシルクスクリーンで刷られている。造本は手製本。通し番号がふられ、工芸品のように美しい絵本たちはまるで宝物のようだ。絵本の挿絵の多くは、インド各地の少数民族たちが描いたもの、、など詳細な説明が。写真も、Tarabooksのオフィスや職人さんたち、制作行程など!)

● ニュース (「Drawing from the city」(街を描く)
作者は西インド、ラジャスターンの門付け芸人を夫にもつテージュベハム。
彼女がペンと紙で書きつづった自伝的絵本。ペンでかかれた世界は、絵の教育をうけた絵描きにはぜったいにかけないような
生き生きとした線にあふれています。ほとんど絵の描いたことのない人、絵本なんて作ったことのない人の絵で
こんな大判の絵本を作ってしまったTarabooksはすごいと思います。
まさに「誰もがもっている宝物を引き出す」仕事/インドから本が届きました!、、など)

● Tarabooks

矢萩多聞さん。矢萩さんと村山和之さんのトークイベント『「A.R.ラフマーンを語る」vol.3 イスラームとラフマーン』で、ラフマーンの音楽に出会いました。このときも矢萩さんは、ラフマーンを訪ねたときのことを、楽しそうに話してくれました。

出会って、好きになって、気になって、調べて、ある日出かけて行く、話を聞く、ますます好きになる。それを分かちたい、紹介したい。そんな自然なテンションや温かい感情が伝わります。

かといって、Tarabooksの代理店になってビジネスを、ということでもなく(すでに日本でもいくつかの代理店がありブックフェアなどにも出ています)、淡々と熱く、できることをする、そんな姿勢に共感しました。

たまたまなのかもしれませんが、倉日用品商店さんも、矢萩多聞さんも、あまり商売っ気がない感じ。でも、熱を感じます。そして行動しています。できることをしています。派手でなくても、大規模ではなくても。費用的にマイナスにはならないように工夫して、他のことでがんばって補いながら、気持ちのいい人たちと出会い、熱を持って思いをシェアしていく、自分も楽しみながら。それがいいのではないかと思うこのごろです。そういうふうに自分もなりたい。

矢萩さんは、20年くらい前からお名前を知っていました。パソコンでネットを見始めた頃、インドでの暮らしを描いた「メールマガジン」を読んでいました。どうも若い人のようだなとは思っていましたが、その頃はなんと10代半ばだったようです。14歳でドロップアウトして、インドで一人暮らし、街や村で生活の中の美を学んでいたのです。なので、20年くらい経っても、まだ34歳くらい。インドや日本の、心に響くものを、これからも伝えて欲しいなと思います。


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モザイクタイルへのみち


タイルについて、ずっと知りたかったこと。大きなテーマであった「なぜ青なのか」は、少し得心できました。もう一つのテーマ、「モザイクタイル(集成モザイク)は、いつ頃、なぜ、どのような背景の中で生まれたのか」。

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(集成モザイク的な要素/アフマドヤサヴィー廟)

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(圧倒的な集成モザイク/シャーヒズインダ墓廟)

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(ブハラの古いモスク。1400年代か?本物の凄みと包容力。素晴らしい)

そこに向かって歩いています。セルジュークのタイルの中に、大きなものを感じています。
by orientlibrary | 2014-07-01 00:03 | 日本のいいもの・光景

タイルと中央アジア話を中心に、ゲストハウスや民藝なども

中央アジア、タイルを中心に、街歩きトピックをまじえ、ダダダと行きます。

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ゲストハウス、バーラウンジのタイル

最初の話題、東京蔵前のゲストハウス「Nui.(ヌイ)」のタイルです。まず、「ゲストハウス」という業態(?)、日本でどのような状況か、動きか、ピンとくる方いらっしゃいますか。ゲストハウスという言葉自体、旅好きの若い層には馴染みのある言葉かもしれませんが、一般的には、「え、シェアハウス?」「あぁ、ユースホステルね!」というような言葉が立ち上がってくるのでは?

私もたまたま見つけたのですが、なんだか今どきのゲストハウス、ものすごくカッコいいことになってるんです。そして値段も手頃。いい立地。カフェ等を併設し、海外からの旅行者だけでなく、日本の若者や近所の方々にも親しまれています。

その先駆け的な存在が、3年前に開業した「東京の古民家ゲストハウス toco.(トコ)」(東京入谷)。築90年の古民家を改装しバックパッカー宿に。宿泊客を含め様々な人が交流出来るリビング&バーラウンジを併設。「宿泊は一泊2600円より。ゲストハウス泊が初めての方や、東京都内から週末の息抜きに来られる方まで、広く多くの方にご利用頂いております」。これは体験しなくては!と連絡した時は満室で泊まれず。まだ訪問もできていないのが残念。

そして同じチームが、蔵前に昨年11月にオープンさせたのがNui。6階建ての倉庫だったビルを大工さん、職人さん、仲間、ボランティアたちが、3ヶ月かけて手作りでリノベーション。隅田川に近く浅草寺も徒歩圏の立地で1泊2700円から。100人も宿泊できる規模でありながら、抜群の稼働率の高さが評判。

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(東京蔵前のゲストハウス「Nui.(ヌイ)。全国から集まったたくさんの人の手で作られた。1階のバーラウンジ、カフェタイムは9時から23時、誰でも利用可)

こちらも宿泊はまだなので感想は言えませんが、1階にあるバーラウンジがいい感じなんですよ。木や鉄や漆喰等の異素材ミックス。その中で、一列の青いタイルがアクセント、アイキャッチになっている。うれしいじゃないですか。

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(モロッコのタイル、土の味わい。キッチンも部分的にタイル貼り)

タイルはキッチンの壁面にも。すべてモロッコのものだそうです。さすが世界有数のタイルの国モロッコ。きちんとした中に味わいもあり、製品としての安心感があります。個人的には、これが日本の若手の手作りタイルだったらなあと想像してしまう。何枚かでもいいけど、ユーズドのジーンズのような手作りの青タイルだったら、空気がまた変わるだろうなあと。

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タイル愛好家・山本正之さん〜クリスチャン・ラクロワ&釉薬作り

INAXライブミュージアムのニュースレター、今号の特集は「世界のタイル〜山本コレクションにみるタイルへのまなざし」。

中東や中央アジアなどの旅先で出会ったタイルに魅せられて20年以上。けれども、装飾タイルの情報が少ない日本にあって、世界のタイル博物館や『イスラームのタイル』など、INAXのタイル関連の書籍がなかったら、関心が続いていたかどうかわからない。世界のタイルを蒐集した山本さんのコレクション。その展示と文章があっての私のタイル愛好。あらためて感謝の気持ちがわいてきます。山本正之さんの言葉です。

「多くの国でタイルの破片は、遠い日本から来た私に拾われたがって呼んでくれる。何気なく足元を見ると、不思議なことに、必ずといっていいほど落ちている。嬉しくて嬉しくて、まず掌にのせて重みを感じ、やがてじっと見つめると、その土地の土・砂・水などの環境もわかってくる。タイルがどんなふうに使われるのか、どんな人が施工に携わっているのかも。旅に出ると、いっぱい教えられる」

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(上段:「世界のタイル〜山本コレクションにみるタイルへのまなざし」特集/釉薬実験中、皿の青が理想/下段:インテリアライフスタイル展にて、「クリスチャン ラクロワ メゾン フォー デザイナーズ ギルド」、壁紙新柄は青いタイル模様)

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同じタイルでも、話がガラリと変わります。先日、ビッグサイトで開催された「インテリア・ライフスタイル」展で目についたのは、タイルの壁紙。「クリスチャン ラクロワ メゾン フォー デザイナーズ ギルド」の壁紙の新柄です。「アンダルシア地方からインスパイア」。なるほど。同じ柄のテキスタイルもありカーテンが紹介されていました。青だけでなく、いろんな模様を加えてデザイナーブランドらしい華やかさでした。

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ウズベキスタンに3年間住んだ漆作家、中村真さん

漆作品に触れる機会が少ない私。中村真さんの展覧会で拝見した漆の質感と色には、新鮮な驚きがありました。漆黒の夜にほの見える森の土のような黒、生命力を持つ植物のような緑、仏さまの手のような奥行のある質感。葉のかたちと合わせ、深く美しい世界を見せていただきました。

中村さんは、元々漆芸専攻でしたが、中央アジアの民芸に興味を持ち、タシケント暮らし3年。楽器工房で楽器を作ったり修理したりしながら、中央アジアの民族造形をテーマに研究をなさっていたそうです。日本に戻り、漆芸を再開。

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(六本木アクシス内サボア・ヴィーブルにて個展。〜器の原点とも思われる『葉っぱ』がモティーフ。「フォルムを追求できるので乾漆という技法で作っています。物作りの上での原点でもある『自然』を少しでも消化したいと思っています」〜)

「工房から早足15分で帰宅。旧市街の向こうの積乱雲は膨張を続け、空の色は明らかに黄色味を帯びてくる。洗濯物を急いで取り込み、家中の窓を締め切り、施錠の再確認をしてようやくお茶をひとすすりしながら西の窓を見張る。束の間の静けさは新緑のポプラ並木のざわめきで破られる」。タシケント時代の日記、抒情と温かみのある文章、いいですね!

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セレクトする眼、工芸喜頓

前々回アップした、突然の「いまどきの民藝」(若い人たちが愛好する「民藝のうつわのある暮らし、空間、食」とでもいうようなテイスト)への熱中。続いております。東京世田谷、世田谷通り沿いにある「工芸喜頓」さん。こちらのセレクトが、またいいんですよね〜!!若過ぎず、若々しく、絶妙。しびれます。

オーナーの石原さん、グレーのTシャツに黒のストール、気負わずにこなれたオシャレ上級。カッコいいです。以前はファッション関係の仕事をする一方、アジアやアフリカの工芸が好きだったそうです。日本の民藝に出会ったのは、当時住んでいたパリで。美術館で日本の民藝を紹介する展覧会があり感銘を受けた。そういう出会いもあるんですね。

オンラインの「日々の暮らし」を見れば、センスの良さが伝わりますよね。ショップはこの春から。天井が高く、スッキリ。一つ一つのうつわが、個性ゆたかに、きれいに見える。引き出しの中にもうつわがびっしり。豊富!価格も押さえてある印象です。

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(この日は小鹿田焼の柳瀬朝夫さんの作品が並んでいた。なんだかアフリカっぽさも感じる。オーナーがアフリカ好きと聞き、一人納得。出西窯、小鹿焼、瀬戸本業窯など、とにかく眼がいいなと感じる。それを表すセンスも)

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小伝馬町で、ほのぼの中東気分 「DALIA」&「DARVISH SHOP」

気になっていた「DALIA ダリア食堂」(東京小伝馬町)に。ロフトスペースもあるプチサイズの店内、工夫とセンスで独特の魅力。食事は次回のお楽しみに。クスクス、ハリラ、タジン、美味しそうすぎる!!

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(モロッコなど世界各地の手作り感あふれる雑貨が可愛くディスプレイ。マトリョーシカのウオッカかわいい。モロッコと思われるタイルも)

DARVISH SHOP」は、「DALIA」から歩いて10分もかからないご近所。以前、お店のハサンおじさんのこと、そしてスーフィー音楽で踊る文鳥の初代アンジュジェの旅立ちについて書きました。そのとき、二代めのアンジュジェはもの静かで恥ずかしがり屋さんでしたが、、見違えるように活動的に。飛び歌い踊っていました。良かった。

それもそのはず。立派なマイホームがあり、かわいいパートナーも。お隣は金魚。幸せな文鳥です。

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(小伝馬町では2009年から。イランの食材を中心とした輸入食品を販売。ハサンおじさんとのおしゃべりを楽しみに来店する人多し。私はこちらで、イランのアールグレー紅茶、干し葡萄などドライフルーツ、イラン菓子などを仕入れます。イランの方は缶詰やレトルト食品、香辛料など食品まとめ買い)

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今回、『風をたべた日々』(渡邊義孝さん著)とサマルカンドについて書こうと思い、写真も用意していましたが、もうすでに長文。次回に。今回はこれでアップします。写真が少ないので、青のFBから。

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(ブハラのモザイクタイル/青磁透彫唐草文箱、高麗時代、12世紀/ウスマノフ工房の扉)
by orientlibrary | 2013-11-11 22:35 | 日々のこと

かたち・きもち、民藝のうつわ、カンタ刺し

瀬戸から戻って1週間。この1週間、たくさんの「民藝のうつわ」に触れました。民藝のうつわ自体は、これまで見ていなかったわけではありません。が、この1週間、若い人たちの「民藝のうつわのある暮らし、空間、食」とでもいうようなテイストに出会いました。出会ったというよりも、興味が高まり、どうなっているのかな、どうしてなのかなと、どんどん出かけて行ったのです。

先週日曜日、瀬戸本業窯、民藝とのつながりの深い窯でギャラリーや資料館を見せていただきました。三彩、黄瀬戸、緑釉など、とても魅力的で使いやすそう。時間がなく、大急ぎで分けてもらった皿、やさしい色合いで軽くてサイズも程よくて使いやすい。手抜き料理も美味しく感じられて、とても満足です。

このようなうつわは、どこで買えるものなのか、ネットを見てみると、カジュアルなテイストの民藝の器や雑貨を販売するサイト、実店舗、けっこうありました。30代くらいの人がやっているみたい。え、そうなんだ、、民藝って今こうなってるんだ、人気の窯元があり、セレクトされ、程よい品揃えと価格で販売されているんだ、、この時点で、かなりの驚きがありました。

 注釈です。「民藝」と「民芸」。その違いはよくわかりません。後述の『日々、うつわ』によると、「柳らが「民藝」の言葉を使い始めた当時は、「藝」には「草木を植えること、修練によって得た技能」という意味があり、「草を刈る。香草の名」を意味する「芸」とはまったく異なるものであった。現在の使い分けとしては、元来の民藝の考えを踏襲するものは「民藝」、郷土色の強いもの、和風のものなどは「民芸」があてはめられることが多いようだ」とありました。わかりやすい説明です。今回の内容は、展覧会名や書籍での使用が「民藝」。個人的には旧漢字はあまり使いません。が、本文でだけ民芸と書くのもごちゃごちゃしてしまうので、民藝で統一しようと思います。今後はまた考えます)

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「日々、うつわ展 〜民藝のうつわのある、おいしい日常〜」

たまたま、東京ジャーミー(代々木上原)のすぐ近くの「CASE gallery」で、「日々、うつわ展〜民藝のうつわのある、おいしい日常〜」という展示が開催中であることを知りました。またしても土砂降りの雨でしたが、行ってきました。びっくりでした。

白い壁のシンプルな空間、木の展示台に各地のうつわ、壁にそのうつわに料理を盛った写真パネル。ギャラリーの方(坂元さん)とギャラリーが醸し出す、ナチュラルでデザイン感の高い雰囲気、なんだか「北欧」を感じていましたが、やはりというか、北欧と縁のあるスペースなのだそうです。厚かましくいろいろ聞く私に、坂元さんが親切に、そして端的に答えてくださってありがたかった。いまどきの「民藝のうつわ」、その感触をつかむことができました。

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(沖縄読谷北窯、小鹿田、小石原、石見など全国14の産地のうつわ/各産地のうつわのかたちや色にあった料理の写真と説明/お気に入りの小石原焼・飛び鉋皿を持つ坂元さん)

民藝のうつわが最近とみに好きになったという坂元さん、使いやすくて価格も手頃なのがよい、と。こういうセンスのいい人たちが手仕事のやきものを取り入れるようになる。うれしいですね。

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(やっぱり魅力的、一堂に揃ったうつわたち。北欧と和は重なり合うものがありますね。4枚のなかでひとつ、北欧の器集合写真があります。どれでしょうか?!)

書籍『日々、うつわ〜民藝のうつわのある、おいしい日常〜』(萩原健太郎著/誠文堂新光社)。9月末の発行。著者は1972年生まれ。簡潔な温かい文章で伝えたいことがよくわかります。

「全国の民窯をめぐるうちに、日本にはこれほど多くのうつわがあること、それぞれに地域に根ざした伝統や技術があることを知る。しかし、それらは価格も手頃なのにもかかわらず、日常のなかで見かける機会は多くない。(中略) うつわそのものを紹介するのではなく、うつわは使ってこそ輝きを放つことを証明したかった。料理のチカラを借りて、うつわの素晴らしさを伝えたいと思った」

料理がまた、いい。見かけだけのこじゃれたレシピじゃない、骨太な料理。筑前煮、かぼちゃのスープ、たまごサンド、ハンバーグ、親子どんぶりなど。これがおいしそうだし、器と合ってる。うつわが欲しくなる。これこそ、うつわと料理のしあわせなレシピ。

展覧会はすでに終了していますが、会期中にはトークイベントも。「民藝から北欧のデザインまで」「山陰のうつわ、料理、旅について」「調理から盛りつけまでの実演」も。「いま」を感じます。

このようなうつわを扱っている店がありますよ。え、それはどちらですか!?ということで、CASE galleryで教えてもらった「SML」(エスエムエル、ショップ、恵比寿)と「SMg」(エスエムジー、展示主体、目黒)に向かいます。

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「最高に美しいうつわ tableware as life」

目黒川沿いの道から少し入ったところにあるSMg。「因州 中井窯の仕事」展を開催中でした。黒いジャケットの眼鏡男子がじっくりセレクト中で、6点ほどまとめ買い。

因州中井窯は、緑、黒、白の染め分けが特徴。前述の『日々、うつわ』によると、「柳親子に愛された山陰を代表するモダン民藝」。和の力強さと感性が伝わります。インパクトがありますね。

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(SMg。「因州 中井窯の仕事」展。スッキリした店内、ユーズドの木の什器が陶器の味わいを引き立てています)

こちらでSML監修の書籍、『最高に美しいうつわ』(エクスナレッジ/2013年4月発行)を購入。安西水丸氏の推選の言葉=「うつわ、陶芸家、店、すべてがセンス良くまとまったこんな本ができたことがうれしい」。同感。作家、うつわを扱う店舗やカフェのオーナーなど、様々な角度から、うつわ、思い、伝統を受け継いできた土地、風土、人々を見つめます。「今」が伝わる。写真がとてもいい。深い魅力を引き出しています。

徒歩でSMLへ。恵比寿らしいかわいいお店ですが、小鹿田焼、砥部焼など、上の2冊の本に登場する民藝のうつわたちが並んでいます。値段も数千円台が多い。民藝の店というと、敷居が高く独特の雰囲気、知識がないと恥ずかしいというイメージもありましたが、今の民藝のお店は気さくでカジュアル。暮らしのなかで使って欲しいという思いが伝わります。

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(SML。手作り風の店内。人気は「やちむん」や「スリップウエア」。スリップウエアはファンが増えていてイベントなどもあるそうです)

SML、SMg、ともにこの数年内のオープン。話を聞いたスタッフの方々も、出会ったのはこの数年内とのお話。書籍も今年2冊。それ以前には、『Discover Japan TRAVEL 民藝のうつわをめぐる旅』(2010年)、『民藝の教科書1 うつわ』(2012年)も。今回は、「行ってきました!」だけで、とてもまとめられません。いつかまた書きたいと思います。

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(左2点:瀬戸本業窯にて。上はクバの草ビロードと黄瀬戸の経年変化/右3点:本文でご紹介した書籍2冊。料理が美味しそう。写真もいい)

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カンタ、ラリーキルト

うつわから刺繍に話題は飛びます。民藝のうつわで感じた、伝統、継承、時代性、実用など。どの手工芸でも同じ課題や取組みや試みがあるように思います。

ブログでも何度かご紹介している刺繍家の望月真理さんの展覧会。真理さんは、インド東部のウエストベンガル地方などで盛んなカンタ(古い布のサリーをはぎあわせ刺し子を施し丈夫で美しい布に仕上げる)を現地で知り、調査と研究を続けています。「この文化の途絶えるのを惜しみ、シルクロードの終点である日本で受け継いでいきたいと願っております」。

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(ベンガルのカンタ)

真理さんは、カンタを日本人の眼と手と心で刺します。細密な手仕事、遊び心が魅力。ベンガルの大胆で明るい構図や色使いから学び、真理さんのカンタを、87歳の今も、日々、時間を惜しんで作り続けています。

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(真理さんのカンタ)
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(真理さんのカンタ)

そのカンタ、この数年、「ラリーキルト」として、とりわけクオリティの高い手仕事のストールなどが紹介され、人気となっています。先日、横浜「エスニカ」の「染まるインディア」という展示とイベントで、コカリさんの展示を拝見。いつもながらセンスいい。

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(ラリーキルトのストール。インドの手仕事はすごい)

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(展示とイベント「染まるインディア」@エスニカ。陽射しが差し込む居心地良い展示空間)

ラリーキルト、初めて見たときから、どんどん洗練度が高まっている気がします。カンタ、ラリーキルト、時代や人々の思いのなかで、どのように変わらない芯の部分と変化する姿を見せてくれるでしょうか。

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最後に、今日、たまたま発見!北欧の雑貨のオンラインショップ(北欧、暮らしの道具店)で、九谷の器の販売を開始と。「石川県の九谷焼の器の販売を
開始しました。当店でご紹介させていただく、
初めての和食器となります。『北欧の器』と『日本の器』。このふたつが絶妙にマッチしてくれることは、
これまでの特集やスタイリング写真などで、
何度となくご提案させていただきました。様々なものを組み合わせ編集する
楽しさをご提案できたらという想いで、
初めて和食器を仲間入りさせることにしました」だそうです。

北欧と和は重なり合うものが多い。まだまだいろんな動きがありそうです。

相変わらず長文ブログです。今の「民藝のうつわ」に興味を持って1週間、まとまりませんが、その時しか書けないものがあると思い、書いてみました。ふぅ〜〜(汗)
by orientlibrary | 2013-10-30 00:17 | 日本のタイル、やきもの

シリアのタイル、釉薬づくり、新訳『わたしの名は赤』

シリア。2002年に、いわゆる「ツアー」で行きました。笑顔で接してくれる人懐っこい人々、重厚な歴史や文化を感じさせる建築と街、迷路のような路地、広い中庭のある住宅、五感を刺激するバザールの活気、イスラム世界独特の濃い空気。たった一度のツアーだけど、シリア、好きになりました。また行きたいと思っていました。

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(オスマン朝シリアのタイル <左>施釉タイル。糸杉と葡萄が描かれる。セージグリーンとマンガンの色がダマスカスの特徴 <中>六角形のタイル。花瓶と花が描かれる <右>施釉絵付けタイルの一部。カーネーションが描かれる/DARWISHIYYA MOSQUE, DAMASCUS,1571/『The Art of the Islamic Tile』〜DAMASCUS, SYRIA, AND PALASTINE, IN OTTOMAN TIMES〜より引用)

オスマン朝シリアのタイル。ザクッとした絵付けが愛らしい。深みのある青に爽やかなセージグリーン。白地に糸杉や葡萄の模様が好みです。

ずっと何も書けずにいました。今も何もできない。あまりなことに、報道を見るのを避けてしまっています。どうぞ早く安定しますように。家族の暮らしを取り戻せますように。必要な医療を受けて教育の場も保障されますように。写真は私が出会ったシリア。(スキャンではなくアルバムを撮影しており不鮮明です)

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(ウマイヤド・モスク、アゼムパレス)

 ウマイヤド・モスク=ウマイヤ朝、705年。現存する世界最古のモスクであり世界最大級のモスク。「古代地中海世界を継承したイスラーム建築。高さ20mを超える豪壮な石造りで威風堂々、外観はまるで小さな要塞のように見える。歴史の痕跡を観察しながら外回りを一周するだけで小一時間を要してしまうほど、巨大かつ興味深いモスクである」〜『世界のイスラーム建築』(深見奈緒子)より

 アゼムパレス=1749年、オスマン朝ダマスカスの知事だったアスアド・パシャの邸宅として作られた。ダール・アラビーエ(伝統的アラブ住宅)の粋と言われる。

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 古代都市ダマスカスは、シリアの首都ダマスカスの旧市街に残る歴史的な構造物が登録されたユネスコの世界遺産(文化遺産、1979年登録)。エジプトとメソポタミアを結ぶ交通の要衝であり、紀元前3000年ごろから都市が形成しはじめたと考えられている。2013年にシリア騒乱による被害のため、シリア国内の他の5つの世界遺産とともに危機遺産に登録された。(wikipediaより)

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(マルーラ。キリスト教の村。BC6世紀頃から東アラビアやイランで広く使われていたと言われる古代アラム語が残っていることで有名。とてもきれいな村だった。岩山に立つ聖サルキス教会でスタッフの説明を聞いた)

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国境なき医師団への寄付(←クリックでリンク先に飛びます)
 「国境なき医師団は、シリア政府の活動認可を得られないまま、シリア国内で人びとに直接援助を提供している数少ない国際NGOとして北部で6ヵ所の病院と4ヵ所の医療センターを運営しています(2013年8月末日現在)。また、シリアから周辺国に逃れた難民に対しても、緊急援助活動を実施しています。国境なき医師団では、シリアに関連する活動の完全なる中立・公平性を確保するために、民間の皆様からの寄付金のみを活動財源としていますが、2013年に予定している活動予算の6割が不足している状況です」

 山崎やよいさんのブログ
長引くシリア紛争で生活基盤のすべてを失いつつある女性たちに『針と糸』で収入の道を開くプロジェクト「イブラ・ワ・ハイト」発起人。

 イブラ・ワ・ハイトfacebook
「かつて平和なシリアの家庭で女性たちがたしなんできた手芸。シリア女性達は、美しい、独特の刺繍の伝統を日常生活の中で守ってきました。今、悲しいことにシリアでは、家、仕事、一家の大黒柱、そして社会インフラも含めた、生活基盤の全てが失われつつありますが、女性たちの手には、まだその独特の刺繍技術が残っています。『針と糸』があれば、社会インフラが破壊された街でも、避難先の仮住まいでも、刺繍ができるのです」

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青のfacebook、復活

青のfacebook、しばらくお休みしていました。ヤマイのように青、青と思っていたのが、2ヶ月ほど憑物が落ちたような感じに。まあ、この夏が暑すぎて体力がついていかなかっただけかもしれません。ささやかに復活しています。この間の更新画像をアトランダムに少々。

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(上段上から順に::色絵三壺文皿、鍋島、17世紀/瑠璃釉青花楼閣図稜花大皿、明時代、17世紀/青花唐花文大皿、ベトナム、15世紀/九谷焼五彩呈色試験版 初代徳田八十吉)

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(上段上から順に::ナディール・ディヴァン・ベギ・マドラサ (ブハラ)/ブハラ旧市街の観光名所ではないモスク。ここがすごい!オリジナルタイルが見られる/ナディール・ディヴァン・ベギ・マドラサ (ブハラ)/ザンギアタ廟(タシケント))

facebookは、「インサイト」というかたちで、見た人や気に入った人の数等、いろんなデータが、ビジュアル的にわかりやすく表示されます。人気上位は、青のタイル装飾。これはうれしいです。

日本でタイルの話が思い切りできる機会は少ない。とくにタイル装飾の華、イスラムタイルの認知度が低いのは残念。こういう状況、もう長いですから、かなり諦めていましたが、もしかしてイスラムタイルを好きな人も少なくないかも。ちょっとだけ希望の灯が。小さなことしかできないけれど、コツコツ続けていこうっと!

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釉薬づくり

釉薬づくりのクラス受講を始めました。青、青と騒いでいるのに、あまりに何も知らない。基本の基本は知っておきたい。そして、自分の青を作りたいという野望がフツフツと。お世話になるのは、タイル作りを習った白金陶芸教室。

透明釉づくり=福島長石、赤坂石灰石、マグネサイト、韓国カオリン、福島珪石。
青の釉薬づくり=基礎釉+酸化コバルト、炭酸銅、酸化銅。

不器用な私、手仕事系がダメという残念人間ですが、人には何か取り柄があるはず。それが、「粉を量ること」だったことが、このたび、わかりました。妙に速いらしいのです。取り柄って、数が限られているものでしょうか。そしたら、そのカードの一つが「粉量り」って、どうなんだろう。摺ったり混ぜたり塗ったりも好き。楽しい釉薬づくり。今後が楽しみです。

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『わたしの名は赤』

コラージュの下段右は、、『わたしの名は赤』(オルハン・パムク)。文庫サイズの新訳版=右側の2冊。旧訳『わたしの名は紅』の難解な訳に対して、わかりやすいと評判の新訳。読むのが楽しみです。

以前のブログ記事で、旧訳の一部、好きなパートを、勝手に自分流に書いてみたことがあります。
 細密画師の幸福の闇 無限の空白の頁
 手が記憶だけで描く。黒羊朝細密画師アリの物語

「盲目は全生涯を美しさに捧げた細密画師にアラーの神が賜(たまわ)る最後の幸せである」「盲目の細密画師の記憶がアラーの神に到達したところには、絶対的な沈黙、幸福な闇、そして空白のページの無限がある」。オルハン・パムク氏、すごい作家です。


今回も、まとまりのない内容に。「中央アジア人」「タイル人」シリーズも、スタートしたいと思いつつ。陶芸家でありデザイナーであった日根野作三さんの展覧会図録も届いたし、日本のタイルもスタディしたい。銭湯のタイルも見に行きたい。ホレズム(ウズベキスタン)のタイルを見に行きたい。少しずつです。こんなブログですが、また遊びに来てくださいね〜♪
by orientlibrary | 2013-10-05 02:25 | 中東/西アジア

「遊牧のチャラパルタ」/「幸之助と伝統工芸」/「HandMade In Japan」

装飾タイルの「8」、写真は準備済みですが、今回はその前にいくつかの話題を。

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遊牧のチャラパルタ

まずは映画、「遊牧のチャラパルタ」。音楽ドキュメンタリーが大好きな私。しかもタイトルに「遊牧」が入っていては、もう絶対外せない。

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4年の月日をかけて撮影されたロードムービー&音楽ドキュメンタリー。2006年の公開で、世界の国際映画祭で受賞14、各地で熱い支持を受けてきた。日本では、ようやく先日が初上映(しかも上映は7月1回、8月1回のみ)。渋谷の会場はファンの期待で熱気にあふれる。

思った以上に惹き込まれました。大好きな「ラッチョ・ドローム」に匹敵すると言っても過言ではないとも思う。たぶん相当な低予算とギリギリの少人数で制作されたと思われる映画。丹念にていねいに、だが時には強く対象に迫っていく。

バスクの伝統の打楽器チャラパルタは、木の板を木の棒で叩くというシンプルな楽器だが、素材の音と音階と二人で会話するようなリズムが素晴らしい。その奏者の男性二人(オレカTX、撮影時20代前半)は、故郷バスクを飛び出し、世界のノマドのコミュニティを旅する。暮らすように滞在し、土地の材料でチャラパルタを作り、ノマドたちと共演する。灼熱の砂漠、極寒の北極圏、大草原。過酷ながら大自然は土地の人も旅人も包み込み、折々に美しい姿を見せてくれる。

ライブ演奏の熱。バスクの二人の単独演奏も、ノマドとの共演も、ノマドのパフォーマンスも。最高!!

ムンバイ。いきなりソウルな口琴でガツンときた。インド西部のノマドの村。カースト制には属していないという。儀式と芸能が暮らしに息づく。

モロッコサハラ、ベルベル人のノマドの村。近隣国の内戦や貧困化など社会の変容の中にある。暮らしはきびしい。そんななかでも、女性たちの歌と踊りは強烈。「家族を失って難民キャンプにいるけれど、これからも自分らしく生きていく。顔を上に上げてね」。

北極圏のサーミは氷の世界。氷を切り出しチャラパルタを作っての演奏。透明で天上から聴こえるようだ。サーミの音楽家が、中央アジア・トゥバの音楽家との交流を語る。距離は離れていても、北方の音楽はつながっている。

モンゴル。草原の遊牧民。馬を愛しホーミーを歌う。さらに、なんとトナカイ遊牧で知られるツアータンまで。極寒の中を旅するバスクの二人。温かく迎える土地の人の表情がいい。

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(モンゴルイメージ/orientlibrary/左上はポストカードのスキャンだったかも?記憶があいまい)

口琴、喉歌、打楽器、原初的な音世界の圧倒的な伝達力、迫力。総勢でたたみかけるようなラストが圧巻。




(nomadax tx trailer、「遊牧のチャラパルタ」より/口琴と喉歌、予感があり入れない。帰って来れない気がする。びよ〜んという口琴がとくにヤバい。自分でも意識していない「どこか」に響いてくる。まだ入れない)

映画すべてを通して、人と人、人と自然、素材と素材、文化と文化、時と場所が、奏で合う。音楽は対話。奏でる人たちの幸せな表情、聴衆の高揚。

「僕らがノマドのコミュニティーにフォーカスしたのは、音楽が「動き」であり、また「新たな音を探し続けること」だからだ。ノマド達は移動するし、だからこそ、そのコミュニティーのサウンドはスペシャルに違いないと僕らは思ったんだ。彼らは本当に必要なものだけを持って移動しなくてはならず、それは音楽も同じなんだよ」
「僕らの最終的な目的は、(一つの文化によって引き起こされる)サウンドを彼らの起源から理解することだったんだ。そのためには彼らの生き方まで分かち合う必要があったんだ」 (主催者の資料/演奏家オレカTXインタビューより) 

単発上映2回のみは残念ですが、今回、貴重な機会を作ってくださった主催者の皆様に感謝致します。ありがとうございました。

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幸之助と伝統工芸


「幸之助と伝統工芸」展(パナソニック汐留ミュージアム)。経営の神様と工芸?そもそも松下幸之助さんについて、ほとんど何も知らないまま、会場へ。

「松下幸之助が我が国の伝統文化に理解を示し、その普及を支援していたことはあまり知られていません。
美術品を見る目は持ち合わせていないと言いながらも、実際には、多年にわたり絵画から工芸作品にいたるまで美術品を収集したり、公益社団法人日本工芸会などの団体の役員を務めるなど、文化支援活動を続けていました」(開催趣旨より)

会場で最初に目に入ったのが、幸之助氏自身の書でした。とらわれのない筆運び。誠実、簡素、温かみ。どうしたらこのような線が書けるのだろう。しばらく動けず、ずっと見ていました。

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(松下幸之助《心》
  パナソニック株式会社蔵)

幸之助氏の一貫した「好み」で蒐集された、日本を代表する作家の各分野の工芸作品が多彩に展示された会場。そのなかでも、最初に見たこの書に最も感動しました。作品の上手い下手、完成度ではなく、こういう文字を書ける人がいるんだ、ということを不思議にさえ感じました。

「松下幸之助は「素直な心」を生涯大切にしていましたが、その「素直な心」を育てる道が茶道にあると考えるようになりました。
そして茶道具に触れるうち、その関心は工芸家に向けられるようになったのです。陶芸、染織、漆芸、金工、木竹工、人形、截金(きりかね)など、さまざまな素材を駆使し、伝統のわざを絶やさず時代の息吹を取り入れることによって成立する日本の工芸作品。松下幸之助は「伝統工芸は日本のものづくりの原点である」と確信し、このような作品を作り出す工芸家を支援することで、「ものづくりの心」を未来に伝えていきたいと考えました」

「素直」ということ、茶道との出会い、ものづくりの原点としての工芸への共感、伝統文化への生涯にわたる支援。骨太で本質的で一貫した態度。使命感と品格。器が違いますね。
あらためて年譜を見てみると、平成元年に逝去されている。昭和という時代を全身全霊で全うした経営者なのかもしれません。

素直が大事なんだと反省し、『素直な心になるために』という著書を買って帰りましたが、パラパラ見ただけで挫折。素直は遠い。

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HANDMADE IN JAPAN FES 2013

同じ「ものづくり」でも、こちらは昨今大人気の「ハンドメイド」。カタカナになっているところが軽やか。主役は一般人。
さらに、ハンドメイド作品を売買できるポータルサイト(Creema、iichiなど)が、日本でも盛り上がりを見せています。そんな「ハンドメイド」が一堂に介するイベントが開催されました。 “HANDMADE IN JAPAN FES 2013”。

「オンライン・クリエイターズマーケット「Creema」ではクリエイターが作りたいものを作り、 
自ら値付けして売り、 今や日本中から10万点以上の作品が集まっています。 
その多くは、この世にひとつしかないハンドメイドです」「ハンドメイドにはかつての “MADE IN JAPAN”の 精神がいきています。 
そして、その独自性やユニークさ、きめ細やかさは世界に誇る一つのカルチャーになりえるもの。
そんな思いを「HandMade In Japan」という言葉に込めました」(主催者挨拶)

東京ビッグサイト会場に参加した作り手2400名、来場者は2日間で26000人だったそうです。

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(わりとゆっくり見られてよかった/会場の造作、もっとハンドメイドであって欲しかった/ワークショップも多数開催/出展者は様々で面白かった。気軽に会話もしてくれる。交流が一番の魅力かな/虫が出てくる本/朱肉入れ付き印鑑入れ/タコ/知多半島から素焼きのお人形の窯元。通常問屋さんとの取引、この機会に出てみたとのこと/すごいバッグ。バッグメーカー勤務。仕事では作れないものをプライベートで作っているとのこと/さおり織とのコラボ人形/キャンパス地のポーチ。色がキレイ/オブジェ。目を引く/マトリョーシカロウソク/カワイイので人気だったディスプレー/ヘアバンド!/きれいな青の陶器/同じ作家さんの星座湯のみは光を当てると星座が浮かび上がる。素敵!)

正直、玉石混淆かと思っていましたが、全体のレベルは高かった。皆さん、器用!発表と交流の場としては良い機会なのでは。イベントや展示は、出展者がいちばん楽しいんですよね、大変ではあるけれど。

それにしても、アクセサリーやポーチは、今や使う人より作る人の方が多いかも。日本に「クリエーター」は2000万人くらいいそうですね。(「プロデューサー」は1500万人くらいいますね)。一般人のクラフト、ハンドメイドは、今後も確実に定着していく分野だと思います。

以前、同好の仲間とおこなっていた展示イベント「美しい世界の手仕事プロジェクト」は、西アジア中央アジアなどの工芸、手仕事(毛織物、テキスタイル、陶芸等)を紹介するのが趣旨。遊牧民の暮らしに根づいた手仕事、職人たちの匠、超絶手技、研ぎすまされた美的感性。

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(美しい世界の手仕事プロジェクトより)

趣味の手作り、プロの手技、魅力はどちらにもあり。個人的には、完成度の高いものとの出会いが嬉しい。ハンドメイドの後に松下の展覧会に行って、正直、ホッとしました。極めた人の仕事を見る幸せがあります。

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長くなりました。ペシャワール会のことも書きたかったけど、、。次回は「8」にいきます。

また今後、タイルや工芸、中央アジアに関わる方々へのインタビューをおこない、まとめていければという野望?を持っています。取材につきもののテープ起こしに戻る覚悟。
取材のお願いの連絡をさせて頂くこと、突然訪問などの失礼もあろうかと思います。どうぞ温かく見守ってください!!がんばります。

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by orientlibrary | 2013-07-23 23:20 | 日々のこと

絨毯織り体験、生命の樹、発色銅器、太陽、農パワー!

またまた時間が経ってしまいました。訪問してくださった皆さん、ごめんなさい。こんなペースのブログですが、どうぞよろしくお願いします。今回は前回の「6」に続き「8」、、のつもりでしたが、その前に、トピック的なものを一気にまとめようと思います。話がいろいろ飛びますが、おつきあいくださいね。

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ミニ絨緞織り体験

まずは、絨緞織り体験のこと。以前、「ミニ絨緞作り」の様子をご紹介したことがあります。織り機はザルそばの容器の枠!しかも100円ショップのもの。手仕事クイーンTさんの工夫魂が冴えまくり!が、そのときは見ているだけ。今回ひょんなことから開催となった体験会、私も挑戦してみました。

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(先生はクイーンTさん。上段左がザルそば容器時代、真ん中が進化した新型織り機。Tさん手作り!最適なサイズを工夫し木材をカットして金具などで組み立てています。ホントにすごい人です。右下が3人の完成形、コースターサイズです。iPhone置きにもピッタリ!サソリ文様2名、ニワトリ文様1名)

先生が縦糸を張り下部のキリム織りまで準備してくださるという恵まれた環境。生徒はまず毛糸を選びます。深く考えず即決で選んだ縁の色=茶色、地色=白、文様の色=青。結び方はトルコ結び(対称結び)。必死で一段結び終え、横糸を通して固定。この程合いが難しい。固すぎてもダメ、緩すぎてもダメ。なんと数センチ編み上がるのにに4〜5時間かかりました、、、

さらに驚愕したのは、私が図面(マス目)を読めないということでした。というより、私以外の人が何の問題もなく読めるということを人生で初めて知りました。めげてもしょうがないので、マス目の色を文字情報に直しノートに記載。これでスピードアップ。最後にキリム部分を作り、縦糸を結んで終了。時間はなんと、、7時間半ほどもかかっていました。その間、生徒3名、お茶やおやつもそこそこにトイレも行かず。この熱中は自分でも意外。

生徒のうち一人は男子。日本初の「絨緞男子」誕生です。「嫌いじゃないです」って、上手いよ、、(画像右下の真ん中緑色の作品)。先生も感心。絨毯織りが趣味とかになったら、かなりすごいよ、S君!オリエントは左の白地のもの。これって染付、、無意識に色を選んでこうなるって、、頭が青。

バローチ絨緞女王mzさん作品は、バローチ愛の鳥文様がイキイキ!mzさんのブログにも「絨毯織りのおけいこ」として画像とともに、プロセスや織り方が詳しく紹介されています。T先生、同期の?皆さん、ありがとうございました☆

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イラン 生命の樹

絨緞の故郷イラン。イランのテキスタイル、ファッション、カリグラフィー等の展示がありました。「sarv サルブ 生命の樹」(青山グランピエにて/展示は6月30日で終了)。

「イランで活躍するクリエイターが作り出す、生命の樹や庭園をテーマにした作品は、古代アート先進国ペルシアへのオマージュ。神戸ファッションミュージアムと、京都グランピエ丁字屋に続く三度めの展示会です」

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(更紗、カリグラフィーなど。稠密!カリグラフィーにも感嘆〜実物は数m縦横の大きな作品です。服は写真がないんですが、更紗ロング丈や長い袖口が優美でした)

デザイナーであり、テヘラン芸術大学テキスタイル科で教えるモジュガンさんとも、いろんなお話ができました。イランの伝統工芸やアートへの敬意、自らのミッションとテーマへの邁進。包容力のある人柄とともに、その熱情が多くの人を巻込み、風を生み出しているのだなと感じました。

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(グランピエにて。チャイグラスと丸いカーブの小皿、インド更紗のコースターが素敵でハマった。同行の数人も、それぞれたくさんのコースターをゲット。小さいものってかわいくて数が欲しくなる、、上段右2点はイランの布だったと思う)

イランとインドがコラボしたかたちの展示。ムガルのテイスト。私がムガルが好きなのは、ペルシア(文化的影響が大きい)×中央アジア(初代皇帝バーブルはフェルガナに出自)×ヒンドゥスタン(独特の濃い感性と超絶手技)を感じるから。インドとペルシアが融合したテイストに目がない私にとって、うれしい展示会でした。(*7月6日からは、「abr アブル ウズベクの雲」と題して、kannotextileの作品と中央アジアの布の展示販売がスタート。19日まで)

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高岡銅器の青銅色

日本の工芸、こちらもまた最高です。
銅像、梵鐘、仏具等の銅器生産で歴史と伝統のある高岡市(富山県)は、日本における銅器生産額の95%程も占めるとか。ここでも新たな技法や取組みが生まれています。創業以来、銅器の「着色」を手がけ(銅器生産の行程は分業化されている)、昨今はその発色技法をインテリア用品やクラフトなどに生かして話題を呼んでいるのが「モメンタムファクトリー・Orii」。その展示と活動紹介が東京のギャラリーでありました。

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(「青銅色・煮色・宣徳色・鍋長色・朱銅色・焼青銅色・鉄漿色(オハグロ)等。いろいろな技法・薬品の組み合わせで数十種類もの色のバリエーションを作り上げております。これらの色の発し方(出し方)は先人方が試行錯誤を繰り返しながら研究し、開発してきた大切な財産であると思います。これら着色技法は、実に利に適った手法で、自然に背を向けず、ブロンズ・真鍮といった、銅合金に自然調和した着色法です」(OriiHより引用))

富山生まれの私ですが、正直言って銅器にはこれまであまり興味がありませんでした。なのに知って速攻出かけた理由、この青。深みのあるトルコ青と銅が織りなす色合いと表情。実物の質感が写真で出ないのが残念です。

「青銅色は、銅素材の自然腐食・錆色を人為的に発色させる技法です。緑青(銅錆)を短時間で俄かに発生するには様々な薬品、技法を使います。丹礬酢・硫酸銅・酢酸銅・塩化アンモンといった薬品を調合し、時には加熱しながら、時には日光の下で塗布し、何度も何度も繰り返し塗布、ふきあげを行うことによって自然に形成された緑青に近い酸化被膜を表面に発生させております」(Orii HPより引用)

ニューヨークでの見本市にも出展したOrii 。新しい工芸の世界をどんどん開いていってくださいね。応援してます!

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ソーラークッキング

話は変わって、太陽です。独立型ソーラーシステムを作る会に行ってきました。この分野、ほとんど接したことがない&理科系苦手の私、無心に参加。でもシンプルな作りで、ホームセンターで買ったもので作れることや、どのくらいの電気をまかなえるかも教えてもらい、苦手意識減になったのが良かったです。

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(あっと驚いた干しエノキの旨み。サツマイモもしっとりした仕上がり)

そして、非常に気になった&気に入ったのが、お楽しみ編のソーラークッキング。干しエノキはTVでも紹介されたらしいですね。初体験の私、見た目がひからびた糸みたいなエノキなのに、「スルメ要らずです」と言われ半信半疑でしたが、、本当に旨い!お酒にも合いそう。太陽の下2時間くらいでこんなになるのなら、高価なおつまみ?も不要。サツマイモはしっとりして甘い。

このときはガス台のアルミシートと市販のソーラークッカー使用。ソーラークッカーっていろんなものがあるんですね。びっくり。

これはウズベキスタンに持って行かねば!肉類苦手の私は外食で苦労します。食べるものがない。野菜をボイルしたりゆで卵を作ってナンでサンドにすればいいんじゃないの!?すっかりイメージが広がっていました。が、風での転倒や、光が集まりスクーターの車体が溶けた例などが報告されているサイトを見て、移動中の車内で燃えたらどうしようと心配に。ウズの陽射し、ハンパないですから、、しっかり検討しなくては。。

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日本の若き帰農家たち

このところ、「世界が食べられなくなる日」「フードインク」「よみがえりのレシピ(山形県の在来作物と種を守り継ぐ人々のドキュメンタリー映画。若い監督による素直でしなやかな作品。印象が深く残る)」など、食(食糧〜安全)関連の映画を観て、衝撃を受け、また地道な取組みも知り、いろいろ考えさせられました。野菜作りなどにも興味があります。
そんななか、「これからの農業 日本の若き帰農家たちと語り合う」というトークイベント、興味を持ちました。テクノロジーやカルチャーの雑誌&WEBサイト『WIRED』の主催です。「みんなが農業をやる時代が来る!」というパワー炸裂の90分でした。

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(植物工場のやさい。色が濃くて瑞々しい。有機のキャベツ、やわらかくて甘みがある/満員御礼、若い人中心に150名以上かな?/植物工場のアイスプラントとバジルをリシタン皿に。シャキシャキして味もしっかり。アイスプラントは「海水と同程度の塩化ナトリウム水溶液中でも水耕栽培が可能」とか。塩味があるのでドレッシングも何も要らない。ハマる食感)

登壇者4名は、いずれも大学院の研究者から転身。日本の人工光型植物工場の普及を目指す/世界中の最先端農業技術をリサーチしさまざまな企業に提供する/研究者から有機農家へと転身して無農薬野菜の栽培を行う/この秋からインド・バンガロールで日本の農業技術を広めようとする/とアプローチは異なるものの、農業はビジネスとしても有望とのスタンスで世界の市場をターゲットとし、フットワーク軽く、プレゼン力高く、世界を飛び回り、朝3時半から畑に出ています。

いくつかのコトバを抜粋。
「農業への参入は、すごくハードルが低いのに、誰も行かない。参加させないオーラがある。農家は超大変という罠。大多数の人が何となくダメかもと思っている日本独特の空気。若い人が関係ねえよと言って入っていけばいい」
「小さく細かく作る人たちが出てくれば変わる。庭先でちょっとずつ野菜作り。みんな物々交換するようになる」
「(千葉で農業をやっているが)農家に補助金出すのやめろよ。放っておいてくれれば、やろうと思ている人たちはやる。(イヤという人がいれば)集約して生産力のある農家がやればいい」
「(インドに行くが)農業はどこでやってもいい。どうせやるなら食糧が足りていないところでやろうと思った。ボーダーを超えて行くのは若い人間しかいない」
「インドでは日本が誇るイチゴ「あまおう」を甘くないと言う。シロップやコンデンスミルクをつけてしまう。繊細な甘さが通じない。日本で考えているモデルが通用しない。場に合わせて、高価ではないイチゴに変え、シロップをつける売り方にした」
「オーガニックフードからローカルフードへ。有機が普通に普通のスーパーに並ぶのが理想」
「旅行に行くときに、農場に行ってみようとかスーパーの野菜売場を見るとか、目的を持つと景色が違ってくる。そんなところから始めてみては」
等々、絶好調。が、最後の質問で出た「遺伝子組み換え」には、全員歯切れが悪くなってしまいました。「科学的には問題ない」は全員一致。高まる消費者の不安感や、風で飛んでいく花粉が引き起こしている問題などもあり、弁の立つ人たちをもってしても、短時間では語りきれない問題なのでしょうね。う〜ん、謎は深まる、、

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けっこう長くなりました。最後に農業つながり的なコラージュです。次回テーマは「8」の予定です。

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(ウズのフルーツ、メロン食べたい!/フェルガナのハーブ園/ベリー系?/庭でドライフルーツ作り。小規模でもそれぞれが少しずつ作るというのが大事なのかも/キルギスの畑作、かなたには天山山脈)
by orientlibrary | 2013-07-03 20:56 | 日々のこと