イスラムアート紀行

orientlib.exblog.jp

タグ:民族・部族・遊牧民 ( 25 ) タグの人気記事

トゥバのホーメイ、遊牧民の染織、ラスター彩故郷に還る

トゥバ共和国のホーメイ

「アルタイ共和国のカイ、トゥバ共和国のホーメイという、シベリアの喉歌における二大潮流が一堂に会するコンサートが、今年9月に東京と大阪で開催される。両共和国の歌手が同じステージに立つのは本邦初のこと。あわせて、その前後にもアルタイ、トゥバの歌手によるツアーがそれぞれ実施される」(Realtokyoより)

各地で連日盛況かつ感動のコンサート、そのなかの一夜、横浜で開催された「ホーメイの夕べ〜トゥバ共和国の超人的な倍音喉歌」(出演:モングンオール・オンダール、アヤス・クーラル
、ドスタイ・オトクン
、アンザット・クーラル
/横浜みなとみらいホール小ホール)へ。喉歌ワークショップとバックステージツアー付きという貴重な機会でした。

e0063212_1231322.jpg
(上段:ホーメイの夕べ。コンサート写真がないので、バックステージツアーの様子を少々/下段:東京駒場の日本民芸館、「特別展 柳宗理の見てきたもの」11月21日まで)

ロックやスーフィー音楽、そのフュージョンが今も好きだけれど、一方で喉歌や口琴系、パーカッション系に惹かれてきています。じつは、自分がこちら系に来るとは思っていませんでした。年齢とかいろんなことがあるのかな。ギリギリまでそぎ落とした音世界ならではの豊穣、電子音楽と紙一重のトランス感に巻込まれている感じです。

<ホーメイとは>
「
ロシア連邦トゥバ共和国に伝わる喉歌(のどうた)。声に含まれている倍音を、声帯の力で強調させ

て口笛に似た音を出す。非常に低い倍音を出したり、音を細かく震わしたりと、発声法が7種類以上

(28種類という説も)ある。また、この他にもアルタイ山脈周辺地域には類似した「喉歌」が伝えられ、

モンゴル国ではホーミー、アルタイ共和国ではカイ、ハカス共和国ではハイと呼ばれている」



(「ホーメイの夕べ」のワークショップ「ホーメイの魅力 トゥバ共和国発祥の奇跡の歌声」資料〜講師:巻上公一さん〜より)

音の響きの良いホールで、4名それぞれの個性あふれる生歌を堪能。低音の喉歌カルグラー、高い音の出る喉歌スグットなど圧巻。南シベリアの草原、自然の中にいるよう。全体を通して「風」を感じます。それが根源的な気持ち良さにつながっているのかもしれません。

モングンオール・オンダール(スグット)



---------------------------------------------

柳宗理の見てきたもの

特別展 柳宗理の見てきたもの」=「2011年のクリスマスの日に他界した柳宗理(1915~2011)。世界的な工業デザイナーとして活躍する一方、約30年間にわたり日本民藝館の三代目館長として活動しました。本展では、宗理が蒐集した当館コレクションの逸品をはじめ、柳家から遺贈された陶磁器や染織品、仮面などを展示。また、父宗悦から受け継いだ食器類も併せて展観し、柳宗理がどのようなものを見つめながら生活し、デザイン活動の糧としてきたのかを紹介」する展示。日本民芸館にて11月21日まで。

e0063212_1391618.jpg


ひとりの人が好きで集めたもの、いろんな地域、いろんな領域、でも一貫した「好き」が見えてくるようで興味深い。柳宗理さん、生命力がありながらどこか端正な感じ。繰り返す模様が織りなす妙味、色や色合わせの一歩引いたようなシックさ、などを私は感じました。


---------------------------------------------

西アジア遊牧民の染織

「アジアの染織 西アジア遊牧民の染織」(東京国立博物館・東洋館/~ 2013年12月1日)

「遊牧民研究家、松島清江氏が1960年代から1980年代にかけて現地で収集したコレクションを展示します。インド西北部からパキスタン、アフガニスタン、イランからトルコにかけて遊牧を営んだ部族が染め、織り、制作したハンドメイドの衣類や袋物、テント用敷物。家畜の毛をつむいで織り、あるいはフェルトにして作られた、各部族の特色ある色と文様の世界を紹介します」

松島きよえさんについては、トライバルラグディーラーのTRIBEさんが、これまで熱心に紹介しています。「トルコ~イラク~イラン~アフガニスタン~パキスタン~インドと西アジア~西南アジアを駆け巡り、
遊牧民と行動を共にしながら彼らの生活に溶け込み、同時に毛織物を収集された貴重な日本人である。
今生きていらっしゃればどれだけ話が弾んだであろうと思う。
特に野蛮(遊牧民らしい魅力溢れる)な部族に惹かれ、昔ながらの部族らしさを残した人々に
魅せられていたようである」(TRIBEさんHP)

* 遊牧民に魅せられて。松島きよえさんの物語
* 遊牧民に魅せられた人 松島きよえさん
* ブーラーフィー族 『Josephine Powell&松島きよえ』2

おかげでコレクションの実物も何度か拝見していました。東博のガラスケースの中、さすがに大作、状態の良い絨緞や塩袋が揃っていました。

e0063212_1254960.jpg
(アジアの染織 西アジア遊牧民の染織/東京国立博物館・東洋館)

e0063212_126167.jpg
(左:アフガニスタンとのこと。トライブ名不明/右:イランのバフティアリ族)

「ブロイ族」とあったので、初めて見る名前だと思いましたが、どうやらブラーフィー族のようです。アルファベット記載は「BRAHUI」。「バルチ族」「バクテアリ族」なども、ちょっと違和感。カタカナでの記載は難しいですね。東博さんはアカデミックな影響力があるところ。少しリサーチしてみてもよかったのでは?

東博ついでに。東博は、じつはモザイクタイルがけっこう使われているんです。有名なのは本館1階の壁面モザイク。外からの光の具合で色や光沢が変化して、とてもきれいです。表慶館の床はビザンチンっぽいモザイクが一面に施されています。表慶館はなぜか現在レストスペースのみ。もったいない!展示したい人が山のようにいると思う。貸出しも一法では?

e0063212_1254993.jpg
(東博のモザイクタイル。左:表慶館、右:本館1階)


----------------------------------------------

ラスター彩、故郷に還る

京王百貨店の「七代 加藤幸兵衛茶陶展<併催>ラスター彩イラン里帰り展」、もう一度じっくり見たかったな〜、、どこか心残りだったところに、21日放映のテレビ番組「ラスター彩、故郷に還る」。1年間の密着取材での製作光景、展覧会までの道のり、イランでの展覧会の様子など、75分しっかりとラスター彩に浸れて、これで満足しました。いい番組でした。

製作の日々には、圧倒されました。とくに焼成。本当に発色が難しいのですね。いくつもの失敗作もあっての、あの美しさ。感動です。また絵付け前の段階、八角星と十字からご本人が作っていらっしゃるとは、、分業なのかと思っていました。

好きだったシーンは、幸兵衛氏がイランの村で、「土はいいなあ」と土壁にヒタとくっついているところ、そして青い壷を抱えるようにして道ばたに座っているところ。イランの人たちも土への思いは共通するものがあるはず。気持ちは通じますね。

そんなわけで、まだラスター彩気分が続いています。写真もラスターで!すべて「幸兵衛窯」にて。

e0063212_1264887.jpg
(靴、そして描かれた人の絵がかわいい。金や銀と青、これがまた合うのですよね。右は正統派)

e0063212_127140.jpg
(左:ラスター彩駱駝人物文大皿/右:ラスター彩楽人文茶わん、いずれも加藤卓男氏)

e0063212_1271176.jpg
(左:この青が好きです/右:ラスター彩神鹿文茶わん、いずれも加藤卓男氏)

e0063212_1275975.jpg
(右がテレビで追っていた「生命の樹」ですね。ペルシアのモチーフと日本の感性)

e0063212_1281363.jpg
(加藤幸兵衛氏作品のディテール。遠目にはとても繊細だけど、アップで見ると麒麟や龍が力強い。生きているよう。八角星と十字もきっちり整って緻密で丁寧。素晴らしい)

虹色の陶の光こそ
匠らの 生き死にの果てに
輝けり けふも           天山草


季節は、黄金色の実りの秋に。
by orientlibrary | 2013-09-24 01:41 | 中央ユーラシア暮らしと工芸

バー「部族地帯」

横浜若葉町、見学しました。「無謀な」チャレンジャーたちが町を活気づけています。いろいろ考えたりヒントを得たり、いい経験でした。
「シネマ・ジャック&ベティ」は、小さくとも珠玉の作品を揃え、舞台挨拶の機会を多く設けて、映画とお客が近い名画座を目指しています。「アートラボ・オーバ」は、不思議感覚あふれるアートやコミュニケーションの拠点。「nitehi works」、昭和な元金融機関のビルをリノベーション。広々とした個性的空間。アート展示やイベント会場に、カフェも。

e0063212_23492297.jpg
(上段:「nitehi works」。天井が高いとイメージ広がりますね。中2階もいい感じでした。錆ついた巨大扇風機は動きます/中段、下段:「cafe&bar 部族地帯」。水タバコあり。美味チャイ。バリ島のアラックはボトルの花模様がいい感じでまったりいい味わい。試作中のトルコピザ味見隊、やさしく品の良い味わい。粉もの上手!チンギスハーンのボトルは細工がきれい。カウンターにアジア系酒瓶が並びます)

横浜ついでに、、 こんな名前を聞いたら行くしかないでしょ!というバーのチェックに。横浜駅から徒歩10分ほどの場所に9月オープンした「cafe&bar 部族地帯」。ぶぞくちたい、って。。。

偵察心全開でドアを開けましたが、意外にもシンプル&ナチュラルな内装。あれれ。一枚板のカウンターにたくさんのお酒、バーの王道。でも水タバコ、マテ茶の道具があったりして、エスニックな気配がじりじりと忍び寄る。
まずチャイを。スパイシーで濃くて、うん、ナイス。お酒もよく見ると、トルコの蒸留酒ラキ、ガイアナ共和国のラム、ジャスミン米で作ったというタイの焼酎、バリ島のアラック、モンゴルのウオッカ・チンギスハーンなど、魅力どころが集結。
メニューを見ると、、アフガン、来た〜〜! アフガンナーン、カライ、カバーブ、ピラフ「カーブーリー・パラオ」。トルコのピザ「ピデ」も。

期待通りの部族地帯でした。マスターはアフガニスタンをフィールドにしたフリーランス・ジャーナリスト、研究者。料理上手!
客を選んでしまうようなリスキーな店名ですが、「店名に関しては、決して大国に屈せず、「国家」が基準単位となった世界で、なにものにも組しない部族民の独立精神にならう、との我ながらかなり楽観的というか好意的な解釈によっている」(ブログより)とのこと。スピリット、ですね。

「私の取材フィールドであるアフガニスタンでは2014年に基本的には全ての外国軍が撤退予定。そして同じ年にこれまで「ターリバーン後」の国家を担ってきたカルザイ大統領も退任する。その前後にはまた取材に行こうと思っている。ともあれ、アフガニスタンとは一生関わっていくつもりだ。立場はどうあれ...。」(ブログより)

次はしっかり食べ飲みに、おじゃましたいと思います。

 2013年10月、閉店されたようです。また違う場所で再開される旨、その際には情報を何かで見つけてうかがいたいと思います。料理の腕も酒選びのセンスやカクテル等も、とてもいいのですから!広くなくてもいい、カウンターだけでもいい、マスターと話がしたい、気軽に一杯飲みたい、旅好きの人や部族の話がしたい、という人は少なくないと思うのです。中央線や小田急沿線の空気と合うようなイメージを持っています(勝手ですいません!)。

皆様も良き秋の日々をお過ごし下さいね!風邪にはご注意を。
by orientlibrary | 2012-11-17 00:50 | 中央ユーラシア暮らしと工芸

日本の眼力。東洋文庫、民家ギャラリー、遊牧民織物コレクション

秋は各地で、祭り、コンサート、展覧会、映画祭、イベント等が多数開催される季節。今年は秋晴れの日が多いせいか、公園や散策路なども含め、各所とても人出が多い印象です。
今回は(脈絡がないのですが)、興味深いスペースと手工芸の展示をいくつかご紹介、です。

* … * … * …* … * … * … * …* … * … * … * … * * … * … * …* … * … * … * …* … *

まず、2011年10月、新たにミュージアムを併設してオープンした「東洋文庫」(東京都文京区本駒込)。
東洋文庫は、三菱財閥3代目の岩崎久彌が、1924年に設立した東洋学の専門図書館、研究所。東洋学センターとして国際的にも名高く世界5指の1つに数えられているそうです。 (東洋文庫の英語名は「The Oriental Library」。私の「orient library」は昔から考えていたものでこちらをマネしたわけじゃないんですが、なんかちょっと気恥ずかしくはあります。。)

名勝「六義園」にも近く、散策にも適したちょっと穴場的なこの施設。建物の建築も見応えあり。ライブラリー、ミュージアム、別棟のレストランなどのある大人の知的エンタテイメント施設という感じです。

新設の「東洋文庫ミュージアム」は、展示方法にデジタルを駆使、スタッフはラオスの民族衣装姿と、なかなかに新鮮な感じ。音声ガイドは、よくあるヘッドホンの貸出しではなく、作品の前に立つと自動的にスピーカーから声が流れる仕組み。しかも「田中真理(仮名)が解説します」など、学芸員さんなどの肉声での解説。けっこうインパクトありました。

e0063212_2092873.jpg
(アジアの街の夜景?アパート群??、、、東洋文庫ミュージアム内、こちらがウワサのモリソン書庫。圧巻!)

圧巻は、「モリソン書庫」。「1917年、東洋文庫の創設者、岩崎久彌は北京駐在のオーストラリア人G. E. モリソン博士(当時の中華民国総統府顧問)から東アジア関する欧文の書籍・絵画・冊子等約2万4千点をまとめて購入しました。それから一世紀の時間が流れた今ここにその貴重なコレクションがよみがえりました」、、たしかに蘇ってます。。
本好きの人にはたまらない空間かも。当時の書庫そのままではないそうですが、本の量感が独特の雰囲気を作っています。

東洋文庫の沿革、wikipedia等から見てみると、、
「岩崎久弥はモリソン文庫に加えて和書・漢籍をはじめとする東洋諸言語文献を収集し、日本を含めた東洋全域を網羅的に扱うコレクションを構築」
「三菱の海外支店をつうじて代金の支払いが確実になされるため、東洋に関する良書や貴重書が現れるや、世界中の書店が先を争って文庫に購入を持ちかけた」
けれども、「第二次世界大戦後の混乱期には支援者である三菱財閥の解体により経営が困難となり、蔵書は散逸の危機に瀕した」。
が、「この窮地に対して、1947年に理事長に就任した幣原喜重郎元首相の尽力により、国会が支援に乗り出し、1948年に同じく三菱財閥の支援下にあった静嘉堂文庫とともに、発足したばかりの国立国会図書館の支部とされた」そうです。
現在は、、「2009年3月末日をもって支部契約は終了した。現在は特殊公益増進法人に認定された財団であり、その必要資金は自己資産や三菱グループからの寄付金及び国等の補助金でまかなっている」。

美術工芸品の蒐集もそうですが、昔の財閥は、お金を文化にもふんだんに使いましたね。まさにパトロン、好事家。現代はせちがらい。

ライブラリーの資料は、「和書、欧文資料のほか、漢籍やチベット語、タイ語、アラビア語、ペルシア語、トルコ語などのアジア諸言語文献を蔵書」としており、「全種類の資料をあわせた所蔵総数は約90万点、5件の国宝と、7件の重要文化財を含む」。装飾タイル関連も、宝物があるのかもしれませんが、現地語がわからないと検索できず残念。(基本的に研究者向けのようです)

e0063212_2011692.jpg
(ミュージアム展示「ア!教科書で見たゾ展」/ロビンソン・クルーソー漂流記/オスマン帝国史/イブン・バットゥータ「三大陸周遊記」/ハンムラビ法典(くさび形文字) /コーラン/世界各地で出版された東方見聞録/百万塔陀羅尼〜日本最古の印刷物、経典が入った小塔が100万個作られた!/万葉集/オリエントホール)

ミュージアムの現在の企画展示、「ア!教科書で見たゾ展」(11月4日まで)、「解体新書」「国富論」等々、その昔、わけもわからず覚えたような書籍名の原書が、教科書とともに展示されていてユニーク。
こういうの(展示品リスト)、ご興味ある方は出かけてみられては?

* … * … * …* … * … * … * …* … * … * … * … * * … * … * …* … * … * … * …* … *

西早稲田界隈、一歩路地に入り込めば昭和の学生寮やアパートなどが立ち並び、レトロな空気感にほっこりします。
その一角、小さな看板を目印に緑あふれる庭を進んで行くと、こちらも昭和の民家が。この秋より一軒丸ごとギャラリーとして使われることになった「もくれんげ」です。第1回めの展示企画、洗練されたインドの刺子やショールで人気の「kocari」さんの展示会におじゃましてきました。

e0063212_2012526.jpg
(昭和民家を活用した「ギャラリーもくれんげ」)

一階に小さな部屋が5つ、二階に一部屋。日当りが良く、広い縁側から風が通り抜け、気持ちのいい空間。訪れた人たちは、皆さん笑顔で和やかな雰囲気。靴を脱いであがると、なんかくつろぎますよね。

ギャラリーとしてはデビューしたばかりですが、この雰囲気に惹かれる人は多いはず。何人かでシェアしての展覧会やイベントなどにも良さそう。私も展示のプランもないのに、自分はどの部屋がいいかなあなんて、ついつい想像が広がってしまいました。

しかも、こちらはレンタル代が東北支援に使われます。気仙沼の子どもたちのスクールバスの支援と、具体的なのもいいですね。
まだギャラリーのサイトはないようですが、地下鉄副都心線西早稲田駅から数分ほど。地下的の高田馬場駅からも8分くらい。便利な場所。これからが楽しみです。

* … * … * …* … * … * … * …* … * … * … * … * * … * … * …* … * … * … * …* … *

京橋にある「LIXILギャラリー」(以前のINAXギャラリー)、建築・工芸系の企画展、やきものや美術の展示が見られます。

e0063212_20131262.jpg
(毛塚友梨さんの青。水道もタライもぜ〜んぶやきもの/この展示は終了しています)

陶芸家・毛塚友梨さんの展示、クールな青の色味、存在感のある造形。日本の陶芸のレベルは本当に高いですね。やきものの国だなあと思います。

* … * … * …* … * … * … * …* … * … * … * … * * … * … * …* … * … * … * …* … *

美しい青のやきものを産する西アジア。1960年代からかの地を旅し、遊牧民の毛織物、染織に魅せられた松島きよえさん。遊牧民と生活をともにするなかで、毛織物や装飾品を蒐集されました。日本での遊牧民の手仕事コレクターの先駆けでしたが、残念なことに事故で帰らぬ人に。松島さんが好きで惹かれて集めたものたち、残されたコレクションは、本当に貴重です。

e0063212_20142912.jpg
(松島きよえさんコレクションより。トルクメン、クルド、バローチなどの毛織物。この色使いの洗練、キリッとした表情、魅力的な模様、全体から漂う世界観は何だろう。きびしい気候風土の中で、羊の毛を刈り糸を紡ぎ染料を作り自ら機を作り織り上げていく。自然とともに生きる人たちのすごさにガツンときます)

前回少しご紹介した 「”The Balochi” バローチ族の手仕事、芸能を紹介する10日間」(展示は終了しています)で、その一部が紹介されました。破れやほつれもあり、コンディションがいいとは言えないものもありますが、一点一点、語りかけてくる世界があり、引込まれます。

松島さんの言葉。部族の手仕事の本質的な魅力を語る言葉のように思えます。

 「部族意識が高い集団ほど衣服の刺繍も良く織物に専念し、デザインが冴えていた。これは大事なことである」

 「部族社会では勢力を増し権力地を広げるために他の人間に威信を示す必要」があり、デザインが重視された。デザインは「生活環境からモチーフを得ている。織り込まれた風景の描写は特色ある色彩と形を織り出す」

 「遊牧民は互いに種族の象徴である織物を織り、権威を示した。自族の織物が他の部族の目に何度もさらされているという経験の積み重ねを経て色彩やデザインが洗練度を増し、それぞれの種族の象徴となっている。小さな家庭用品にも生活用品にどのような細部にも種族のシンボルを織り入れる。織物で種族の違いがわかる」

今回、おかげさまで一点を手元に。パワーのある織物に触発され、鼓舞され、がんばっていかないと!と思います。。

皆様の秋の日々が素敵なものでありますように。
(謝謝。たくさんのfacebook「いいね」、押してくださってありがとうございます〜♪(त_त)♪)
by orientlibrary | 2012-10-22 20:21 | 日本のいいもの・光景

フラグメントからアンティーク絨毯まで。「コレクター」という人生の愉しみ方

いくつになっても、ワクワクする「出会い」はあるもの。そして出会いは、どのようにして出会ったかの場面によって、ずいぶん印象が違います。
古いやきものやテキスタイルとは、博物館やギャラリーで対面することが多いですが、好きなものに出会ったときには、ガラスにおでこをくっつけて一人で熱狂、感動。

でも、コレクターを訪問して、お話を聞きながら、ゆっくりじっくりたっぷり見せてもらうときの、モノとの出会いは格別。コレクターの熱が移り、、こちらも熱に浮かされてきます。見ている全員で、没頭と浮遊の狭間のようなハイな状態に。

絨毯やテキスタイルのコレクター、taiさん宅に蒐集した品々を拝見にうかがいました。蒐集は人柄ですね。taiさんのモノたちは、古くて傷んでいるものもあるけれど、それが「味」。クタ〜ッとしたところがエレガントでかわいくて、時間の経過がモノが持っていた世界をより深めている感じがします。そういうものを「選ぶ」。眼ですね。いや、心かな。
そんなわけで、今回は、見て触れて狂ったすてきなモノたちを、なんちゃって写真ではありますがシェアさせていただきます。

* … * … * …* … * … * … * …* … * … * … * … * * … * … * …* … * … * … * …* … * … * …*

きゃ〜!、、、かわいい!! taiさんにとっては「前菜に、まずこちらを」という感じだったと思いますが、私には主役級。ドカ〜ン。

e0063212_21174751.jpg
(トルクメン、テッケ族、女性衣装「chyrpy」(マント状の衣装)、フラグメント化していますが、そこがまた想像力をかきたてます!!)

元はこんなのですか〜?(↓)こんな黄色だったんですか〜?
e0063212_2120485.jpg
(Tekke Turkmen Chyrpy  Seref Ozen
Cocoon
Istanbul, Turkey より引用)

tribesakakiさんによると、「黄色は男子を出産し成人させた女性、白はめったにありませんがたしか63歳以上(61歳だったかも?)と聴いた事があります。濃紺や黒地は一般女性です」、「フラグメント化していましたが、紋様はばっちり残っていて一つ一つがテケ族の伝統モチーフでした。裏に使われていたラジャスタンの鬼手更紗も見事なもので、時代を感じる事ができました」とのこと。

フラグメントが興味深いのは、繊維や構造が垣間みられること。タイルや陶器の「かけら」にグッと引き寄せられていく私、布も断片にすごく惹かれます。なんでしょうか、この感覚。
裏地の木綿木版更紗に描かれたざっくりした模様のかわいらしさ。真っ赤で丸みのある花たち、青と赤の太陽のようなモチーフ、生命の樹のようなギザギザ。褪せた黄色。やわらかい。やさしい。
taiさん言うところの「老貴婦人」のエレガンスにやられました。はぁ〜。。。

* … * … * …* … * … * … * …* … * … * … * … * * … * … * …* … * … * … * …* … * …*

何気なく置かれた数十㎝の小さなクタッとした布、、こちらも「前菜」だったと思いますが、当然強く反応。だってウズのベルベットじゃないですか!

e0063212_21321677.jpg
(Central Asian Silk Velvet Ikat )

色が褪せていても、いい味わいの色合いになってますね〜。寄って見たときの、かすれ方がたまりません。色が落ちた青が渋爽やか(こんな言葉あり?)。

こちらに全体のイメージが。例えば、赤のベルベットはアップで大きく見るとこんな感じ。生き物のよう。立派な衣装で展示されているのもいいのですが、小さいものから大きなものを想像する。これが楽しいな〜。

* … * … * …* … * … * … * …* … * … * … * … * * … * … * …* … * … * … * …* … * …* … *

本当はここからが本題。taiさんはトライバルラグ(部族絨毯)とキリムのコレクターなのですから。とくに、バローチ(Baluch)とカシュガイ(Qashqaie)。私にとってうれしいのは、両者とも青がきれいなラグであること。赤系があまり得意ではないので、絨毯で青を楽しめるのがうれしい。
そんなわけで、以下すべて、青に寄った趣味趣味のディテール写真ばかりです。

e0063212_21432620.jpg
(バローチ族の絨毯、ディテール)

<バローチ民族 >
パキスタン、イラン、アフガニスタンの国境が交わる地域バローチスターン地方を中心に居住する民族であり、イラン系バローチー語を母語とするバローチ族とドラヴィダ系ブラーフィー語を母語とするブラーフィ族との総体をさし、ともに類似した民族文化を持っている。同地域ではパシュトウーン民族が隣人。宗教はイスラーム教スンニー派。狂信的ではなく原理主義やテロとは無縁。都市やオアシス、農漁村の定住民と遊牧民からなる。商業活動を潔しとせず、隣接する他民族に比べても概して金持ちは少ない。主食は小麦。他に肉、野菜、乳製品、ナツメヤシ、茶、(酒)など。
(以上、村山和之氏が以前レクチャーして下さった時のレジュメより引用させていただきました)

なんて青でしょう。中央アジアの空を思わせるタイルや陶器の青の表情とはまた違い、絨毯の青は砂漠の夜を感じさせます。
taiさんのブログで、 「エレクトリック・ブルー」と呼ばれる「光る青」が使われた絨毯紹介している記事、「Balochi prayer rug 比較」。写真の青、光っています。

* … * … * …* … * … * … * …* … * … * … * … * * … * … * …* … * … * … * …* … * …* … *

絨毯の青です。深い。

e0063212_2152024.jpg
(左上:相当古そうな絨毯。クタクタになってもう布のような薄さに。だからこそ、この花模様が浮き上がって見えてきたのです。感激/下左と中:黒っぽい青、そこに白く小さい花。やられますね〜/下右:このような和室で拝見。床の間には「敷き瓦」、土族感激)

* … * … * …* … * … * … * …* … * … * … * … * * … * … * …* … * … * … * …* … * …* … *

は〜、、こんなに花や動物や星や不思議なものたちが、ぎっしりと満員電車のように織り込まれているのに、うるさくなく調和が取れて何の違和感もなく、物語に引込まれる。すごい、すごい。カシュガイのファンが多いのもうなずけます。青が美しいですよ〜。。

e0063212_21554663.jpg
(カシュガイ族の絨毯)

村の普通の女性が織った絨毯。どんな感性?何を見て育ち暮らしている?遊牧して羊を育て羊毛を刈り糸に紡ぎ植物から染料を作り毛を染め手作りの織り機にかけ織っていく。天幕の前で。絨毯素人にも、「無理矢理お金のためではなく、楽しそうに作っている」感じ、作ることへの熱が伝わります。魅力的ですね〜!

シンプルなテイストで人気の毛織物「ギャッベ」でおなじみのカシュガイ族ですが、ギャッベだけじゃないですよね! 、、あれ、検索してもギャッベばかり、、仕方ない、英語サイトを少し散策。で、下記のような感じです。 

<QASHQAIE TRIBE> 
南イランで最も名高い部族でありペルシャ語とチュルク系のカシュガイの言葉のバイリンガルである。領域は広く、イスファハーン州のアバデからペルシア湾岸のあたりまで。非常に多くの氏族があるが、主要なものは、Kashkooli, Sheesh Blocki, Khalaj, Farsi Madan, Safi Khani, Rahimi, Bayat, Darreh Shuyee。
素晴らしい絨毯や羊毛織物で有名。ときに、その昔絨毯の集散地であった「シーラーズ」を冠されることもある。羊毛はシーラーズ近郊の山岳や峡谷で産される。イランの他の地域と比較しても、格別に柔かく美しく深い色合いを持つ。深い青、暗いルビー赤はともに途方もなく美しい。輝くような羊毛は堅牢でもあり、シルク以上に透明だと言われている。カシュガイの絨毯は、イランの部族全ての中で最も有名だと言われてきた。とくにサドルバッグは多彩色の幾何学模様で飾られ、他の部族のものよりも優れている。

e0063212_22582627.jpg

e0063212_2258127.jpg
(wikipediaより2点)

* … * … * …* … * … * … * …* … * … * … * … * * … * … * …* … * … * … * …* … * …* … *

絨毯の端の部分にあるキリム(平織り)。絨毯産地では絨毯の価値が高く、キリムに重きを置かれなかったため、この部分がカットされた絨毯が流通しているケースが多いとのこと。

e0063212_22372611.jpg
(絨毯の端の部分、上下にあるキリムのパート。この色合い、質感!ざくざくして、かすれていて、、日本人好きですよね)

この美しいキリムがついているのは、貴重なのだそうです。もったいない!なんてことをするんでしょうか。taiさんのコレクションには、ちゃんとついていました。味わいがありますね〜。

* … * … * …* … * … * … * …* … * … * … * … * * … * … * …* … * … * … * …* … * …* … *

やっとここまで辿り着きました。「tekara wonder vol.1 ”The Balochi”  バローチ族の手仕事、芸能を紹介する10日間」。横浜青葉台のアジア家具店「エスニカ」にて開催中の”The Balochi”(10月12日〜21日)。

e0063212_2241299.jpg
(”The Balochi”の模様/上左:クイーンT作成のサドルバッグをつけたラクダも/上中:コレクションを説明するtaiさん/遊牧民の持ち物一覧を壁に展示、わかりやすい/下中:taiさんを囲んでの座談会/バローチ研究家・村山さんからバローチの音源を頂いてうれし〜!バローチのラグの上で記念撮影)

松島コレクション(1960~70年代に収集された遊牧民の毛織物)、taiさんのコレクション、tribeさんの展示と販売(バローチ族のラグやキリムを中心に、イラン~アフガニスタンに生活する遊牧系部族のラグ、キリム、袋物など)で、埋め尽くされています。こちらtekaraにも写真が。

時を経たもの、本物、手仕事の味わいを持つ部族の絨毯に、魔法にかかったように惹かれたというtaiさん。なんと蒐集を初めてまだ4年ほどとは!熱中人!愛情だけでなく、知識も素晴らしい。キリムや絨毯が好きな方がハマっているブログ、「My Favorite Rugs and Kilims」。ディープな話題、これからますます楽しみです。

まだ書きたい内容もあったんですが、長くなったので次回にします☆ ではまた!
by orientlibrary | 2012-10-14 23:14 | 絨緞/天幕/布/衣装

想いと技が凝縮した濃厚な美、民族の手仕事

久々活力。ペーパードライバーの路上講習が、そんなにこたえていたのかな?理由がわかりませんが、このところ集中力と気力が失せていました。あぶない、あぶない。

今回は、布系の話題です。

e0063212_22462386.jpg
(先日開催の「手仕事フェスタ5」にて(以下写真3点同様)/民族衣装特集。これはアフガン?パキスタン?いずれにしても、装飾の過剰さ、凝縮度がすごい。ジャラジャラ、キラキラ、重厚華美の迫力。いろんな意味合いがあるのでしょうけれど、きびしい気候風土に対峙するような強さも感じます)


e0063212_22531969.jpg
(木版のアジュラク(右側)、青と赤のバランスの良い両面染めのなかで「indomoyo」さんのおすすめのもの、到着を楽しみに待っています。木綿は夏に気持ち良さそう)


e0063212_22552876.jpg
(ウズベキスタンの絣布アトラス(絹)やアドラス(絹と木綿)が「ファッション」になっていてうれしい。日本人男性「KANNO」さんのデザインと製作。二度洗いしたという布はやわらかく肌触り、質感がいい。一見派手な印象ですが、意外と性別年齢を問わないかも。お洒落。素敵です)


e0063212_2343761.jpg
(苗(ミャオ)族の刺繍。細かい金属片を綴じ付けているようですが、とにかく稠密!ミャオ族の手仕事、本当に溜息のみ)


* … * … * …* … * … * … * …* … * … * … * … * * … * … * …* … * … * … * …* … * …

ミャオ族の刺繍については、以前の記事で、常滑の「苗族刺繍博物館」訪問時の驚きと感動を少しご紹介していました。

e0063212_2320488.jpg
(「苗族刺繍博物館」(以下写真8点同様)/メジャーの数値が信じられないような細かさ。正確にくるんくるんしています)


e0063212_2322547.jpg
(こちらもメジャーがかすんで見えてます。立体的で重厚感のある技法。色のコントラストが強烈)

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「苗族刺繍博物館」、禾苗(フゥミャオ)NET、雅+瑞さんのサイトmiao-japan.comより

ミャオの女性は子供の頃から刺繍や織物に慣れ親しみます。
自ら布を織って服を作る。

刺繍糸は絹。刺繍の図柄は蝶、鳥、虫、龍、虎、かえで…、身の回りの自然を抽象化したもの。

一針一針刺された刺繍は気が遠くなるほどに細かい。何年も何年も掛けて作られたものもある。
女性の愛情が造りだした芸術品。

若い女性が身に纏うのは色鮮やかな刺繍を施した服。
年配になると渋い緑や紺の刺繍がほどこされた服。 若い時の鮮やかな刺繍を藍で染め直して着たりもする。

苗族の刺繍、織物、藍染には、彼らの文化と歴史そして何より深く温かい心、優しい気持ちが凝縮されているのです。

技術、色彩、図案、全てが一つになって、見事な芸術性を持ちながらも、なんとも温かい感じがする。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

e0063212_23315299.jpg
(鳥の図柄。「苗族の刺繍法は実に多種多様。ひとくちに苗の刺繍といっても、彼らの暮らしの場・地域によって、図案・技法・色づかい等、それぞれ異なった特徴をもちます。そのひとつひとつは実に見事!山に暮らすもの達は鳥や虎、虫などを図案に取り入れます」miao-japan.com)


e0063212_23352331.jpg
(紫も美しいですね。神々しささえ感じます)

e0063212_23364629.jpg
(プリーツのスカートを埋め尽くす刺繍。たっぷりしたスカートは広げると巨大な布に。クラクラするほどの時間がかかりそう。でも、愛情こめて、腕によりをかけて刺す作業は、苦痛などではなく楽しみなのでしょうね。そんな勢いが伝わってくるようです)


e0063212_23483689.jpg
(プリーツ。ブルー&ホワイトがカッコいい)


e0063212_23464387.jpg
(人がいる!印象的な図柄。技法は、玉止めを作り縫い付けるもの、編み紐ををヒダヒダに縫い付けてゆくもの、裏側から刺していくものなど、10種以上あるそうです)

e0063212_23475840.jpg
(貝も使用。模様や素材、染、織、どれをとっても興味深い)


コレクター佐藤ご夫妻の情熱とお人柄の結晶であるコレクション。クオリティの高さ、素晴らしさ、多彩さ、量は圧倒的だと感じました。そのコレクションの一部(100点ほど)、この週末から横浜で見ることができます。

『Stitches & Stories 苗族刺繍の世界展』
*2012年6月2日(金)~10日(日)期間中は無休 12時~19時
*会場は「エスニカ」(上のリンクからごらんください)
*【特別講演】 6月3日(日)午後2時~4時/禾苗(フゥミャオ)NET代表・佐藤瑞代さんによるお話。苗族刺繍の技法やモチーフの解説の他、現地で行われている支援活動の紹介を映像や展示物とともに解説。

会の模様は、またご紹介したいと思います。

いきなりの雷雨など、どうなってるのかな〜と思う気候ですが、元気にいきたいですね!更新頻度アップ、めざしたい、、


e0063212_23502972.jpg
(博物館にあった瓦。中国?おおらかな土もので一息^^)
by orientlibrary | 2012-05-30 23:59 | 絨緞/天幕/布/衣装

遊牧民からまなぶ羊毛文化:糸紡ぎ体験(spinning workshop)

緑の草原、青い空、部族の天幕、その前で立ちながらスピンドルを繰る遊牧民の女性の姿、カッコいい。憧れです。手仕事できない私ですが、手紡ぎには興味があります。
そんな手紡ぎ、しかも本家本元の遊牧民の知恵の結晶である「羊毛文化」を学ぼうという趣旨のワークショップがありました。

e0063212_22474152.jpg
(イランのバクティアリー族の移動光景を描いたドキュメンタリー映像「grass」より。青々とした豊富な草を求め山や川を超え300キロも移動。こんな過酷な旅をともに乗り越える羊たち、毛も違ってくるはず。部族の手織り絨緞の味わいやツヤ、丈夫さは格別)

講師は羊大好きな羊毛文化研究家の駒木根智紘さん(ひつじ日和主宰)。羊に関する濃い〜お話や写真に会場からは「かわいい〜〜」の声。羊や織りや紡ぎが大好きな参加者の熱気で、会場はホントにひつじ日和です!
ワークショップも楽しかったです。まずは羊の毛刈り紹介から。

e0063212_22102729.gif
(この写真は私が以前参加した羊の毛刈りの写真。羊って生身はスリムです)

e0063212_22121280.jpg
(会場にて。以下同様。これが「フリース」=羊一頭から刈り取られたひとつながりの羊毛)

e0063212_22124894.jpg
(羊毛は水洗いした後「カーディング」=繊維方向が整った綿状の塊にする)

e0063212_2213128.jpg
(ドラム式の道具を使ってのカーディング)

e0063212_22155611.jpg
(糸車を使っての糸紡ぎ。伸ばしながら撚りをかけていきます)

e0063212_22171916.jpg
(これが憧れの「ハンドスピンドル」=こまの回転力を利用して繊維をねじって撚り合わせ糸にする。長い木の棒の先端に回転力を強めるおもりなどがついている。このような羊毛糸を使い何か月もかけて織られるキリムやラグには中央ユーラシアの風土や遊牧民の女性たちの思いがつまっています)

e0063212_2220146.jpg
(wikipediaより借りました。こちらはペルーだそうです)

そこに真白な毛を手にした女性が。

e0063212_22262741.jpg
(ビニール袋の中身はハスキーミックスの毛。毛の長さは短め。これで糸になるのでしょうか??)

飼っている犬の毛から糸ができるかとの相談。駒木根さん、「羊毛と混ぜれば大丈夫」。どのような糸になり、糸から何ができるか楽しみです。

そこにまたまた毛を持参の女性が。

e0063212_22283930.jpg
(オールドイングリッシュシープドッグだそうです。名前からして糸は可能そうな感じが、、)

e0063212_22295060.jpg
(手紡ぎでもサラサラと撚れていきます。「これはいいですね〜」と先生)

e0063212_22303620.jpg
(すご〜い!犬の毛からこんなに味わいのある糸が完成しました!!何か小物になるのでしょうか)

ワンちゃんの毛から糸紡ぎとは意外な展開になりましたが、犬好きの方が多い昨今、うちのコの毛から糸を作って何かを作りたい!という人、少なくないのでは。これから流行るかもしれませんね!?

イスラムタイルや陶器と同時に、テキスタイルや天幕が好き。とくに私の好きな中央ユーラシアは遊牧民の文化が基層にあるところが多く、遊牧民の暮らしには強い興味があります。これからも見ていきたいな、と思っています。

e0063212_22205629.jpg
(羊毛文化展示光景一部/右下にある青い皿はリシタンのもの/絨緞=トルクメン族エルサリ支族:祈祷用絨緞(ジョイナマーズ):パイル、羊毛:1930年〜:kanno コレクション)
by orientlibrary | 2011-02-05 22:48 | 中央ユーラシア暮らしと工芸

100年単位で熟成していくアフガンの楽器「ラバーブ」を聴く (@rabab gig)

音楽との出会いから、新しい扉が開くことがあります。
イスラムタイルに熱中する伏線としては(何度か書いていますが)、<カッワーリー>(スーフィズムの宗教儀礼で歌われる陶酔の音楽)とその代表的歌い手である<ヌスラット・ファテ・アリ・ハーン>のコンサートがあります。

また、「世界の手仕事プロジェクト」のきっかけは、アフガニスタンの民族楽器ラバーブ奏者<アミール・ジャン>のコンサートと、<メヘル・アーリー&シェール・アーリーのカッワーリー>コンサートが伏線にありました。

元々はハードロック、その後はいわゆるワールドミュージック、なかでも北インド音楽の系譜が好きなのですが、ライフワークや関心ジャンルにおいては、アフガニスタン、パキスタンなどの音楽に影響を受けているようです。

e0063212_2049921.jpg
(アフガニスタンの民族衣装、刺繍布が飾られたラバーブ演奏会会場。華やかで奥深い。このような演出があるとないとでは印象がずいぶん違います。感謝)

今もなお強い印象が残るアミール・ジャン。その名が記されたラバーブを持つ演奏家の演奏とお話の会がありました。「前世はアフガン人」と語る鈴木ひろしさん、アフガンの衣装でにこやかにたたずむその姿は、本当にアフガンのハザラ族(モンゴル系)のよう?!

e0063212_20515884.jpg


手に持つラバーブにはアミール・ジャンのサインと、元の持ち主であるショカットさん(ジャンと一緒に来日したラバーブ奏者)のサインが。とても美しいラバーブ、アミール・ジャンやショカットの来日時に入手したそうです。
高円寺のライブ、私も行きましたが、まさかその後、演奏使用のラバーブが日本人の手に渡っていたなんて!好きのエネルギーは通じるものですね。ホントに好きなことは、ホントに好きな人には伝わる、そう思います。

e0063212_2051433.jpg
(アミール・ジャンのサイン。わお!)

ラバーブは、「アフガニスタンを代表するリュート属の撥弦(はつげん)楽器。3本の旋律弦、3~5本のドローン(持続音)を演奏する弦、および15本ほどの共鳴弦が、クワ製の胴に張られている。声楽の伴奏をする器楽合奏で用いられるだけでなく、独奏楽器としても演奏される。北インドの古典音楽で演奏されるサロッドは、このラバーブが原型」(国立民俗学博物館サイトより)。

e0063212_20525473.jpg
(胴部分の象嵌装飾。工芸品のようです。装飾がある楽器にはみとれます。視覚も大事ですよね〜)

鈴木さんの演奏、とても良かったです!哀愁と激しさのある撥弦楽器の音色、独特の音階とリズムに引込まれます。卓越した技術はもちろんのこと、全体に温かい印象。人柄なのかな。
「男性の深い勘違い(女性への片思いなど)の歌を男たちが涙を流しながら聴いている。それがアフガン音楽の真骨頂」なのだそうです。

e0063212_2174028.jpg
(胴裏部分の装飾)

加えてナイスなのは、ほのぼのとした笑いを誘いつつ高速で進行する語り。「ラバーブ漫談」という言葉が頭に浮かんだほどです。
穏やかに炸裂する語りの合間も、じつは楽器をケアし、様子を見ています。「湿気に弱い。音が全然違ってきます。会場の温度や湿度の変化に合わせて微妙に調弦します」。ラバーブ、デリケートな楽器なのです。

e0063212_20541081.jpg
(かわいい花のようなナット?で調弦)

「ラバーブは一本の桑の木をくり抜いて作ります。中は空洞。職人が手彫りのみですべてを5ミリの厚さに揃えます。彫るだけで半年かかるんですよ」。
しかも、その前の準備期間が長い!「良さそうな木を見つけてきて、8年間雨ざらしにする。倉庫で1年半乾燥。半年かけて削る」。
さらに、「白木のものが飴色になるまでに30年、黒くなるのにその後50年。代々家に伝わり使い続けるスパンの長い楽器です。元々中世の楽器で今も形が変わっていない。古楽器だが現役。アフガニスタンにあったために生き残ったのかもしれません」

e0063212_20572158.jpg
(ネックにかけられた鈴が哀愁のリズムを刻む)

基本的に時間の感覚が違う。また譜面とか規格とかはなくて、なんとなくいい加減のようでありながら、全体は絶妙にうまく合う。「熟成」という言葉が浮かびました。
若さ、新しさ、スピード、変化、このような日々とは対極にあるような趣きや態度。昨今の価値観や感覚とはかなり異なる世界ですが、だからこそ、ときには浸りたくなるのだと思いました。

企画してくださったアフガン研究会の皆様、貴重な経験をどうもありがとうございました。

e0063212_20563573.jpg
(民族衣装胸当て刺繍部分)
by orientlibrary | 2011-01-30 21:13 | 美術/音楽/映画

アフガニスタン 生命の樹

2か月ずつのカレンダーだと、もう1枚、という時期になりました。紙のカレンダーを壁にかけること、いつもはしないのですが、今年は甲斐大策さんの「アリアナの生命樹」というカレンダーをかけていました。
甲斐さんはペシャワール会会報の表紙を描いていらっしゃる方。重厚でありながら底から温かさが立ち上がってくるような甲斐さんの絵が好きです。

9・10月の絵は、カレンダーの中で一番好きでした。そしてじつは今日初めて、絵の下に書かれている文章を読んだのでした。描かれた世界が息づいてくるような、愛おしくなるような「語り」でした。(部分抜粋にて引用させていただきました。)

e0063212_2274986.jpg
(「アリアナの生命樹」“樹々と人 ヌリスタン”部分/甲斐大策画、ペシャワール会事務局編、石風社制作より)

〜〜〜
樹々のヌリスタン
ところでヌリスタン人はどうしたのかな、平和な頃から少しづつ姿を見せなくなった。
アフガニスタン側の、五種類だったかな、怒らせると大変だが普段は、シャリーフ(高貴)な山の駱駝、という雰囲気のヌリスタニだったが、ソ連がきた頃から少しづつ減っていった気がする。
山奥の暮らしのせいか、上等な材木をたっぷり使い、扉は柱の彫刻が私たちより細やかで、木と葉と花で一杯、そうそう、スザン(刺繍)が最も素晴らしかったさ。
雪豹や珍しい蝶と同じだな、生命の樹の細工物も一緒に、静かに静かに少しづつ消えていく。あの人たちも消えてしまったのかなあ。
〜〜〜

最後の1枚は雪景色でした。

e0063212_228885.jpg
(「アリアナの生命樹」“北の薪市”部分/甲斐大策画、ペシャワール会事務局編、石風社制作より)

〜〜〜
北のたき木屋
薪も炭も高くてなぁ、近頃ペシャワルに出廻っている薪の大半は、古材の切れ端だよ。古い建物取り壊しが盛んになって二十年程かなぁ。
中には百年二百年を経た上等な松材もある。それもパクティア、そうだとも、私の村近くから出た松さ。そりゃあ、見ればすぐわかる。木目でわかるよ。それが、そこいらのユーカリやポプラや楡の枝と一緒にされていると哀しくなるよ。
(カバブ屋のコックが)このところの薪は信用ができない、炭はもっとひどい、と頭を抱えていた。カバブが臭くなってはなぁ。それもセラティーンの天下一カバブがだ。
(昔の薪は)ほとんどが根だった、それも太くて重いのばかり。うんと寒いところでじっくり育った樹の根だよ。もう何十年も前にそうだったのだから、その後樹を植えたり育てたりするような世の中ではなくなっただろう、今頃どうなっているかは想像がつく。
クンドゥズの夏はペシャワル並みに蒸し暑いが、もうそろそろ寒い頃だろう。薪をどうしているやら・・・・
〜〜〜

雪の中の薪、、薪ひとつからもいろいろなことが見えてくるのですね。

e0063212_22113881.jpg
(コヒスタンの衣装とバローチの絨緞/美しい世界の手仕事プロジェクト2010より)

今年は秋にパミールのお話を聞く会があり貴重な写真も見せて頂いたのですが、アフガニスタン、このごろ考えたり何かしたりすることがほとんどなくなっている私です。報道で接するアフガニスタンは、依然混迷しているようです。ペシャワール会のような地道な活動に頭が下がります。

e0063212_2292820.jpg
(「アリアナの生命樹」部分/甲斐大策画、ペシャワール会事務局編、石風社制作より)

〜〜〜
生命の樹
なぁ、これは生命の樹だよな、石榴、無花果、葡萄、林檎、桑の実、みんな一本の樹にぶら下がり、グリ・ライラ(夜の花=チューリップ)、グリ・ダウド(ダヴィデの花=雛罌粟)まで咲いている。
生命の樹、壁だけではない。木に彫り、布に刺し、絨緞に織り、西も東も、アリアナのどこへ行っても、恐らく何千年も昔からあったはずだ。
村そのものが生命の樹、皆その下で生まれ育ち、そして枯れもする。
ペシャワルかい?この都は永遠の生命の樹、善いこと悪いこと全てある。枯れはしない。
〜〜〜

e0063212_2225856.jpg
(HERAT FRIDAY MOSUQUE 1200-1498-1964/『COLOUR AND SYMBOLIZM IN ISLAMIC ARCHITECTURE』よりトリミングして引用)

甲斐さんの絵、じっくり見ていると、ますます絵の中に入りこみます。リアルだけれど幻想的、重いけれど温かい。そして何よりアフガニスタンへの強い愛を感じます。底流に信頼や希望を感じるのです。カレンダーはお終いになるけれど、絵は保存しておこうと思いました。
気が早いですが、どの国の人たちにとっても、良き年になりますように。
by orientlibrary | 2010-10-31 22:39 | ウイグル/アフガン

日本初の「サッジー」試食会、炎の大成功!☆

熱をもって暑さを制す、的な、なんとも野蛮な会がおこなわれました。
主催者Mさん(バローチをこよなく愛するパキスタン文化研究者)銘=「サッジー」実験試食会。サッジーとは、ざっくり言って「焼肉」みたいなもののようです。

これまで数回、バローチスタンの景色や人々、河原での食事の様子などを映像で見せてもらったことがありますが、今回のサッジー現場も期待を上回る野蛮さで、蚊や虫たちもゾロゾロと寄って来放題。

調理に関しては、「日本初の試み」ということで、企画&主催のMさんもワクワクドキドキでしたが、火の加減から各メニューの味付けまで、参加者絶賛の大成功。「次回は実験ではなく本格的に開催」とのことです。
以前より「遊牧民祭」をやりたいという声があがっていましたが(一部より)、サッジーを主役にした遊牧民祭、そのうちにどこかであるかもしれませんよ☆


<サッジー会 お品書き>
骨付きマトン・サッジ一
チキン・サッジー
チキン・スープ
チキン・カラーヒー
全粒粉のシンデレラ・ナン(灰被り焼き)
炭火焼き(鰯・鰹・南瓜・トウモロコシ・ポテト・トマト・パプリカ・ナツメヤシ等)
ハーブ(ミント・ローズマリー・ドクダミ等)
デザート(サクランボ・落ちていたアンズ)
その他(岩塩・レモン・イランのゆかりのような調味料〜名前忘れた・マサラ・乾燥レモン等・アルコール各種)


e0063212_21233187.jpg
(都内某所。Mさん渾身の火起こしが奏功し赤々とした炎。イチジクの枝にダイナミックに刺さっているのはマトン。埼玉県のハラルショップより買い出しの品)

e0063212_2121837.jpg
(奥の木には鶏が出番待ち。ピクニック気分のキリム。手前には鉈)

e0063212_2128591.jpg
(ナン制作班。手前には持ち寄ったハーブや野草。なかでも最強だったのは「カンボジアのドクダミ」。口の中、ピリピリ痺れたし、、)

e0063212_21314364.jpg
(豪華カツオタタキの炙り、野菜各種。イワシは串刺しを目指すも、串がなかなか土に刺さらず挫折し網焼きに)

e0063212_21302266.jpg
(野菜もワイルドを目指し桜の枝に刺してみました。奥にあるのはナツメヤシ。焼くと激甘になることが判明)

e0063212_2133252.jpg
(数時間という時間をかけ焼き上がったサッジー。レアなのでもう少し網で火を通す)

e0063212_21342129.jpg
(Mさん銘による「シンデレラナン」。オシャレな名前、そのココロは「灰被り」だから。灰の中にナンを投げ入れて焼いたもの。しっかし、これがウマイんです。灰って偉大!)

e0063212_21403846.jpg
(右奥がチキンスープ。これが絶品。レモンやミントで味は七変化〜☆ 右手前はトマトとチキンのカラーヒー。油度高し。ナンにつけて食べると最高のようです。ベジな私は生トマトとナンというヤワな組み合わせで)

e0063212_2142013.jpg
(山形の佐藤錦はゆうパック遅れ騒動勃発の前日着でセーフ。落ちていたという杏は、なんとも品のよい甘さで美味でした)

そんなわけで、ナイスな夏の休日でした。


*** タイル絵付け ***

予告編です。
ついに、ついに、夢がかないました。
タイルの絵付け、習い始めました。しかも先生は、イスラムデザインの専門家であり陶芸家でもあるという、最高の師。

e0063212_220120.jpg


5月からスタート予定が、ようやく7月より始めることができました。さっそく実践編。自分でデザインし絵付けし焼きます。
すでに魅了されています。こういうことがしたかったんだよね、私!!また随時ご報告したいと思います。

習える場所は、こちら「白金陶芸教室」
講師のお二人は、温かく穏やかなお人柄。和みの時空間です。
by orientlibrary | 2010-07-06 22:10 | インド/パキスタン

アジアな空気

一気に夏ですね。しかもこの湿度。モンスーンアジアですねえ。。
個人的には好きな気候ですが、いきなりきたので、フィジカル的にはちょっととまどいも。
こんなときにはアジア全開の布や衣装を見て、空気に慣れていきましょう。
写真でご紹介しているフィリピン少数民族にはイスラム教徒も多いようです。独特です。
今回も写真のみで失礼☆!

e0063212_1073735.jpg
(7000を超える諸島で構成されるフィリピン。少数民族固有の文化を伝える伝統衣装)


e0063212_108226.jpg
(現地でもできる人、しようとする人がいなくなったと推測される「つなぎ技法」のオリジナル。2枚の布を新たな組織を作りながらつなぎます。日本女性が多様なパターンを再現しました。素晴らしいことだと思います)


e0063212_1063961.jpg
(マラナオ族マロンー筒衣ーの織り部分。サイドに見えるのが布つなぎ技法。マラナオ族はイスラム教徒だそうです。つなぎ部分の幾何学模様や綴れ織りの模様、何も知らず最初に見た時から非常に惹かれたのですが、イスラムであることと何か関係があるのでしょうか。紫もとても好きです。一目見た時から、何か伝わるものを感じた衣装です)


e0063212_10101078.jpg
(ミラーにかかっている絣の衣装はウズのアンティーク。先日オークションにて購入。紫と白が上品で、でも中央アジアならではの生命感があり、とても気に入っています☆)


*写真はこちらからのリンクなど。

*更新していないのに、なぜかアクセスが増えて不思議に思っていたら、もしかして「キルギス」検索かも、、グーグルの画像検索に当ブログの写真が、、いいニュースのときならうれしいですが、ちょっと複雑。私の好きな町であるウズの陶芸産地リシタンはキルギス国境にあるので、、安心できる暮らしが戻りますように。
by orientlibrary | 2010-06-18 10:19 | 絨緞/天幕/布/衣装