イスラムアート紀行

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絵付け初体験、熱中篇

タイル絵付け(イランのハフトランギ)教室は3回目となりました。何しろすべてが初めての体験。ドキドキ&楽しく進んでいます。(1回目=オリエンテーション=イスラムデザインの特徴、タイルの種類、釉薬基本など/宿題=デザイン/2回目=先生による修正、素焼き後のタイルへのトレース)

いよいよ絵付けです。色を決めます。シャーヒズインダタイルに合わせ、地色をコバルト青に。茎などをターコイズ青に。花びらとして黄瀬戸、白、茶色などを選びました。

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(色を選び筆を用意。筆なんて何十年ぶりかも?!)

最初に、マンガンで模様の縁取りを。筆にたっぷりと液をしみ込ませ、やや太めの線で輪郭を取りました。

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(黒い液体がマンガン。濃いめに塗り終わったところ。釉薬同士混ざらないよう「壁」となります)

次に輪郭の中を色で描きわけていきます。こちらもポッタリというくらい液を含み、厚めに塗っていきます。薄いと想定した色が出ないとのことで、たっぷりを心がけました。

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(輪郭の中にポタポタと色を入れていきます。焼成は8月中旬。どんな感じになるかなあ、、)

意外とスムーズにできましたが、地色を塗るときに時間的にちょっと焦ってしまい、これがどうでるかちょっと心配。というより、何しろ初めてのことなので、いったいどんな色になるのか、どういう仕上がりになるのか、さっぱり見当がつきません。

さらに、暑い夏を記念して「絵付け熱中篇」ということで、もうひとつにチャレ〜ンジ!!

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(ボーダーの模様がむつかしかった〜)

イスリミ(デザイン化〜抽象化された植物模様)とペルシャ書道を組み合わせたデザイン。先生に書いてもらったものをトレースしただけ。シンプルと思い、甘くみていましたが、これがむつかしかった〜!!

イスリミって、むつかしい。線をなぞって描くだけで、ぐったり。花模様のハタイのほうが何倍もラクでした。先生は、「慣れてきたら簡単になりますよ」と涼やかな笑み。修行です★

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(削ることにより修正可能で大助かり。ふ〜、、、。この道具、買おうっと!)

自分で少しでもやってみると、タイルや陶器を見る目が違ってきます。

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(ウズベキスタン・リシタンの絵付けタイル。コバルトの青い線が力強くて伸びやか。背景の薄い青の線が軽やか。青の表情の違い、いいですね)

構図や模様になるほどと思い、こんなに時間をかけて描いてくれていたんだなあと、ありがたく思い、職人さん一人一人の顔や、これまで見てきた仕事の様子が思い出されました。
これからは、もう一歩リアルな話ができるのではないか、ぜひそうしたいと思うこの頃です。

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(ウズベキスタン・リシタンの絵付け魚皿。A工房のものは、ひとつとして同じ模様がありません。どんなに小さな茶碗や人形であっても、細部に必ず違いがあります。これらは、全身全霊を込める「作品」ではなく、日々の糧を得るための「商品」です。でも、大量生産の品とは異なり、職人さんの矜持や遊び心があると思う。だからウズベキスタンの手仕事が好き。ちなみに敷いている布は、インド・ラジャスターンのブロックプリント。こちらは版木を作り捺染したものです。こういう線も以前より見ちゃいます。クッキリしてますね〜。)

そんなわけですっかり調子に乗ってしまい、練りや成形、ろくろも最初の一歩から少しやってみるつもり。「土族」になってきました。
by orientlibrary | 2010-07-25 21:53 | タイルのデザインと技法

タイル作り。シャーヒズインダの花模様をお手本に

<タイル絵付け>を習い始めたこと、以前ちょこっと書きました。最初の日から、「とにかく、まず一度作ってみたい。それから本格的に始めたい」とワガママをいう私。S先生は寛容な方なので、おっとりと「いいですよ」と言ってくださいました。
ですので、この進み方はイレギュラーなのですが、2回目にして素焼きのタイルへのトレースまで進みました。次回はいよいよ絵付けです。

作っているのは、「ハフトランギ」(虹色タイル=多色施釉タイル)。出来上がり15㎝×15㎝。絵は「ハタイ」と呼ばれる植物模様です。

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(右に見える青い写真がシャーヒズインダの花模様。右上が私のスケッチ。先生が赤で修正中。手前は習っていることのメモ)

宿題でデザインを考えてくるようにとのことで、参考にするためにタイルの写真集を見ていたのですが、どうも適した構図がなく、結局は自分が撮った写真から選びました。
大好きなシャーヒズインダのモザイクタイルです。イキイキとした花模様が大好きなタイルです。
まずは自分で描いてみました。四分割を繰り返してラインを取ると描きやすいことがわかりました。方眼紙を使えばもっとラクだったと、後で気がつきました。

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(ウズベキスタンのモザイクタイル。センター部分が「イスリミ」(抽象化された植物模様)、周辺が「ハタイ」(自然な植物模様)。ハタイから習い始めています)

タイルが大好きで、長い間イスラムのデザインを親しみを持って見てきましたが、自分で描いてみて、「イスラムデザインって、なんて優れたものなんだろう」と感慨新たです。
たぶん、これからますますこの思いは高まっていくと思います。このあたり、またブログでご紹介できればと思います。

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(リシタンの陶芸家A氏による聖者廟の装飾タイル。センターのイスリミがおおらかで好きです。ハタイも勢いがあって広がりと凝縮力を感じます)

持参したスケッチ、教室で先生が修正してくださいます。これがやはりとっても大きいです。全体の配置、ちょっとした線のズレ、花びらの大きさや方向など、なるほど!ドキドキしながら見ていました。
トレースを繰り返しながら微調整を重ね、最終バージョンをタイルにトレースして、下描きは完成。
先生、どうもありがとうございました。次回の絵付けが、とっても楽しみです!

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(トレース終了。次回は絵付け)

「白金陶芸教室」にて。

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話は変わって。

「ザ・コーブ」という映画を見ました。和歌山県大地町のイルカ漁を描いた映画で2009年公開。2010年アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞をはじめ多くの賞を受賞しましたが、その製作手法などをめぐって物議をかもしています。
今年4月頃から、「反日」「情報によるテロリズム」などとして、上映中止を求める抗議行動もあり、一時は上映中止の映画館が相次ぎました。

新聞などで読んだ範囲では、隠し撮りなどの手法や一方的なイルカ漁への非難に製作者の傲慢さを感じ、上映中止もやむを得ないのかも、、と思っていました。
でも、一度見てみようか、何が問題かまずは見てみようか、と思いました。
映画の内容や製作経緯、製作者、動向、評価など、とても書ききれません。もしもご興味があれば下記をご参照ください。

wikipedia。概要、製作手法、評価、公開をめぐる動きなど
映画「ザ・コーブ」オフィシャルサイト(イントロダクション)
映画「ザ・コーブ」オフィシャルサイト(トップページから賛否両論コメントへ)
ダイビング関係サイトでの議論(RSS)

◆ wikipediaより一部引用してみます。(ただし真実、正確な事実関係は私には判断しかねます)

「撮影は「捕鯨発祥の地」とされ毎年9月にイルカ漁が開始される和歌山県太地町の漁港を中心として殆どが無許可で行われた。映画は一貫した恣意的な編集により太地町のイルカ漁と日本の水産庁や警察を徹底的に悪魔化して描いているため、太地町は世界中のイルカ好きから「アウシュビッツ」と認識されるようになった。しかし、日本では年間20,000頭のイルカが捕獲されており、太地町のある和歌山県では1,623頭(2007年)であり、太地町だけで行われているわけではない」

「太地町漁協の幹部は「イルカ漁への誤解が広がるのは心配だが、上映される以上は正確な理解を求めていきたい」と複雑な心情。ただ、一部団体による映画館への抗議については「主張が違う。(同じように上映中止を求めてはいても)全く別の立場だ」と述べている。また、別の組合員は「漁協は金もなく人もいないから、映画に反論する手段がない。普段通りに生活しているだけなのに…。太地町は力のある映画や団体に揺さぶられている」とのべた」(出所:産経ニュース)

長くなるので簡潔に書きます。映画に対する私の印象は下記です。
* ドキュメンタリー風に仕上げた商業映画(エンタテイメント)。 構成、映像、表現が巧みで、見る者を飽きさせず強く引きつける(ドキュメントと銘打つのが問題では?)
* 情報過激派。自分の主張のみを正義とする非寛容、幼稚さ。そのためには手段を選ばない傲慢さ
*なぜイルカ漁に反対しているか、の論拠は力が抜ける(いろいろ言っているが、要はイルカが可愛いから、好きだから。水銀問題も無理やりな印象)

見る側に相当のリテラシー(理解能力)が求められると思います。今や、映画を見るのも大変です。
この映画だけでなく、「ドキュメンタリー」とされるものの中に、エンタテイメントとの境界があいまいなものがあるように感じます。
見る側、読む側の嗜好や要求(情報に強い刺激とわかりやすさを同時に求める)ゆえなのでしょうか。

一方で、「上映中止運動」も、過激な思想、行動といえるかもしれません。
むしろ、進化し続ける今どきの情報に心身や頭を慣らし、鍛えていく必要があるように思いました。

「ザ・コーブ」、編集の巧みさ、臨場感、スピード感、、まさにある種「アカデミー賞」なのかも。(ドキュメンタリー部門なのが問題。糾弾される対象は被害者です)。単純好みのアメリカの賞ですね。

そういう意味で、エンディングの曲、気になりました。音楽が好きなので、自分だったら選曲に意図を込めるなあと思うし、五感って大事です。映像を見た最後の音楽って、サブリミナル的にも大きいと思うんです。

エンディングの曲は、デビッド・ボウイの「Heroes 」。
「イルカのように泳げたら」という歌詞はあるけど、こじつけっぽい。製作者が「自分たちはヒーローだ」って言いたいのでは?!本音では?(念のため、デビッド・ボウイの歌詞はもっと深いと思います。)

口直しに ☆ 「Heroes (QUEEN with David bowie)」 ☆ (出だしの音量が大きめなのでご注意を。フレディ・マーキュリー追悼コンサートでクイーンと共演。最初のフレーズで「I wish I could swim. Like the dolphins. Like dolphins can swim」と歌っていますけどね、、)


暑い日々ですが、皆さんお元気で!

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(リシタン茶碗。いつか絵付けの茶碗も作りたいな!)
by orientlibrary | 2010-07-19 23:57 | タイルのデザインと技法

パキスタンバザール&ムルタンの青タイル

噴水広場に響くパキスタン音楽、立ち並び味を競うパキスタン料理屋台。3月最後の週末、花見客で賑わう上野公園で「パキスタンバザール」がおこなわれました。

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最近、代々木公園などで各国のイベントが開催されることが増えました。行ってみると、いつも多くの人出。屋台や雑貨店、旅行案内等々、お店がもたくさんあり、すごく賑わっています。
「パキスタンバザール」も、在日パキスタン人やパキスタンファン、行楽客などで盛り上がっていました。初パキスタンの人も、音楽や踊りやモノや食べ物から入ると入りやすいですよね。こういう機会は大事だと思います。
ただ、「世界最古のバザール来日!」というものすごく魅力的なキャッチフレーズが意味するところ、示すところが何だったのかは謎です。

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メヘンディをしてもらい、インスタントメヘンディやヘナもゲット。桜を背景にしての民族舞踊もきれいでした。
いちばん気に入ったのは、お人形でした。衣装だけでなく、アクセサリーや靴まで凝っていました。

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ムルタンの現在の製品も少しありました。

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◆ ムルタン(パキスタン)のタイル ◆

ムルタンの陶器つながりで、ムルタンのタイルを少し。イランや中央アジアよりも青の色合いが一段階強く、デザインもどこか土着的で、東のイスラムを感じさせるものがあります。

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(ウッチュ)

中央ユーラシアのタイル文化について、深見奈緒子さんの文章から。(「イスラーム建築とタイル」(深見奈緒子/2001/『砂漠にもえたつ色彩、中近東5000年のタイルデザイン』展覧会カタログより)

*タイルが発展した原因=乾燥地域における土の文化が大きく影響した
* 土を焼成したレンガが被膜材としての位置を獲得するなかで多様な形態をもつようになる
* より美しい被膜材をめざして多様なレンガに釉薬がかけられたものがタイル
* イランや中央アジアには土台となるレンガの文化があったからこそ、タイル文化が育まれた
* 発展の方向はレンガを受け継いだ凹凸で模様をつける時代からはじまり、平滑な面に彩色で文様を現す方向へと進展した
* 注目すべきは12世紀に建築用に開発された技法としてのモザイクタイル
*さらには14世紀後半に陶器の応用から脱して大規模建築の被膜材としての位置づけを獲得した絵付けタイルである

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(ウッチュ)

中央ユーラシアの土の建築文化の流れの中で、ムルタンの青のタイルは独自の輝きを見せています。濃さとゆるさと剛さと温かさが同居しているような、、イスラムタイルの東端の輝きを愛おしく思う私です。

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(ムルタン)
by orientlibrary | 2010-03-29 00:52 | インド/パキスタン

星が光り花が咲く、墓廟のタイル装飾

「イスラーム地域の墓廟はモスクやマドラサなどほかの建物に付随することもあるが、独立して立てられるときは多くの場合、方形または正方角形の集中式プランを基本とし、その上に大きなドームを架ける。埋葬方向と密接に関連するため、内部にはミフラーブが設けられる。むろん、地域や時代によって建築用材、ドームの構造や形、装飾様式は異なる」(『イスラームの美術 建築・写本芸術・工芸』より/桝谷友子/東京美術)

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(シャーヒズインダ墓廟/浮彫りのポタポタ滴るようなターコイズブルーの釉薬が魅力的。多角星(あるいは花?)の中心のラピスラズリ色が効いてますね)

中央アジア周辺のタイルが好きな私、好きなタイルは「墓廟」に多くあります。中央アジアには有名な墓廟が多いですもんね。

装飾タイルの萌芽が見られる「ソルタニエ」(イルハーン朝/オルジャイトゥの墓廟)、内部壁面のタイルは素朴ながら古雅の香りに満ちてドキドキするくらいに魅力的です。

ブハラの「サーマーン廟」(サーマーン朝/王族の墓廟)は、焼成煉瓦の組み合わせだけで宝石箱のような華麗な美を表現しています。

トルケスタン(現在のカザフスタン)にあり人気の巡礼地となっている「アフマド・ヤサヴィー廟」(ティムール朝/スーフィー指導者の墓廟)は、堂々とした建築の壁面にタイルが軽やかな模様を描きます。内部のタイルはティムール朝初期の生命感があります。

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(アフマド・ヤサヴィー廟/室内のタイル。撮影禁止なのでピンぼけ、でもいかにもティムール朝初期の可愛さがあるタイルなので何度もアップしてます)

そして「シャーヒ・ズインダ墓廟群」(ティムール朝/11世紀創建の聖人クサムの墓を核にティムール朝王族の墓廟が立ち並ぶ)は、タイル装飾の博物館と言われるほどで、多彩なタイルの美にクラクラします。

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(シャーヒズインダ/ディテールも可愛い。パルメットふう。ティムール朝)

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(シャーシズインダ/コーナーも楽しい。色味の違いもいいですね)

「トラベク・ハニム廟」(ホラズムシャー朝/ホラズム総督クトルグ・ティムール夫人の廟)のドーム内部の宇宙のようなタイルの世界は、タイル装飾の傑作中の傑作です。なぜあのタイルが無名なのか不思議です。

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(トラベク・ハニム廟ファサード壁面/八角星の中に植物模様や星が煌めく。力強い。シャーヒ・ズインダやアフマド・ヤサヴィー廟と同時代。14世紀頃のタイルが最高!!)

パキスタンのムルタンやウッチュのタイル。「シャー・ルクネ・アーラム」や「ビービー・シャビンディー」も聖者廟です。蒼のタイルが本当に魅力的です。こちらも同時代。ベースは中央アジア的なのですが、やはり西のイスラムとはどこか違う気がします。

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(ムルタン/六角星と六角形。じつは複雑な構成。青のバリエと白の組み合わせがリズミカルです)

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(ムルタン/なんだかかわいくて好きです。こういうのは、いいですね〜)

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(シャーヒズインダ/トランプを連想してしまう。黒が効果的。なんだか上のムルタンと同じ匂いを感じてしまいました)

と、墓廟のことを書いているのも、、風邪気味のぼーっとする頭で写真を選んでいて、選んだもの、気がついたらみんな墓廟のものだったからでした。

上に書いた墓廟やそのタイルのこと、これまで何度も書いてきました。まだ知らないことばかり。何度も見てみたいです。なかなか行けませんが、、。

今回は地味なディテールのものを選びました。でも、傾向がありました。八角星や多角星のモチーフ、パルメットや花模様。ティムール朝の特徴ですね。

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(シャーヒズインダ/LOVE!)

タイルの世界で少し遊んでいっていただければ幸いです。
私はちょっとだけウズベキスタンに行ってきます。零下の寒さから少し気温が上がってきたようです。
日本も早くあたたかくなって欲しいですね〜!☆

 タイルに関してはこちらのタグ「タイル」に過去記事全部載ってます!
by orientlibrary | 2010-02-22 23:47 | ウズベキスタンのタイルと陶芸

ホラズム、土の装飾の優美

灼熱のホラズム、古代ホラズムの都クニャ・ウルゲンチ。
10~14世紀頃に造営された廟やミナレットが今も残る。
焼成レンガは土色一色ながらも濃淡が美しく、文様はリズミカルで流麗。
土から生み出された装飾の美しさと力強さに、見入るばかりです。


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(上の写真ボーダー部分のアップ。アラビア文字のカリグラフィーと植物模様の組み合わせ。浮彫りを施した土を細長く奥行きのあるものにカットし焼成して組み合わせているように見えますが、どうでしょう)


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(上の写真真ん中上部分のアップ)


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(上の部分をアップ。レンガ一枚一枚は薄いが奥行きがかなりありそう。違和感なくきれいな筒状になっている)


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(より古いブハラのモスク。崩れかけていることでデザイン構成や技法が見えてくる。パネル状の浮彫り。サーマーン朝のサーマーン廟のようなレンガだけの模様もいろいろと採用されているようだ)


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(沙漠の模様、つけたのは誰?)
by orientlibrary | 2009-12-02 21:17 | タイルのデザインと技法

土色のメルヴ

●昨年、トルクメニスタン旅行から帰ったとき、ブログにこんな報告を書きました。「その印象は、土土土、風風風、日日日」。さらに「風というよりは砂嵐が吹きつけ、行けども行けども土族もびっくりの土づくし」とも。

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(メルヴ出土の15世紀・ティムール朝時代の皿。動物がイキイキと描かれています)

●今、メルヴ遺跡の写真を見ていて、その感覚を思い出しました。土を愛する自称「土族」の私ですが、あまりに広大な土色世界にちょっと食傷気味でした。

●メルヴ遺跡は、広大な沙漠の中にある60平方キロメートルのトルクメニスタン最大規模の遺跡群です。衰退した古い町に隣接して新しい町が作られたため、紀元前6世紀のアケメネス朝ペルシャから16世紀頃までの5つの時代に築かれた町の跡を見ることができます。現存する建造物としては、日干しレンガの城塞跡やアイスハウス(氷の貯蔵庫)、焼成レンガの廟などがあります。

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(大キズカラ)

●最も有名なのは、ササン朝時代に築かれた大キズカラ。パンフレットなどで紹介されることの多いメルヴのシンボル。ササン朝の土の建造物、今も各地に残ってますねえ。日干しレンガの質が違うのかなあ。すごいです。

●セルジューク朝のスルタンの廟「スルタン・サンジャール廟」は、1140年代の建造。当時のメルヴには、セルジューク朝の都が置かれ、イスラム圏ではバグダッドに次ぐほどに栄えたといいます。堅牢な造りなので、モンゴル軍の徹底的な破壊にも耐えたそうです。現在では修復の結果、立派に復元されています。味わいはありませんが、大きさや建築を知るには良いのでしょう。想像力が必要ですね。

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(スルタン・サンジャール廟、1890年の様子)

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(スルタン・サンジャール廟、2001年の様子)

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(スルタン・サンジャール廟、現在)

●タイル好きの私が最も反応したのは、7世紀の聖者廟・アスハーブ遺跡群。アーチ部分は14世紀に建て増しされたとのこと。タイル装飾隆盛期であることから、つじつまが合います。14世紀のタイル(=バンナーイという技法のレンガ装飾)とは感慨深い。いいですね〜!でも、はっきり覚えていませんが、撮影禁止と言われ、こっそりと撮った気がします。(昨年のことですが、もう記憶があいまい。でも撮影禁止の意味がわからないと思った記憶が、、)

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(アスハーブ遺跡群)

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(アスハーブ遺跡群)

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(アスハーブ遺跡群)

●そして、一番好きだったのは、ムハンマド・イブン・サイード廟(ムハンマドから5代目の子孫)の内部装飾。レンガ積みとカリグラフィーに、簡素な美しさ、趣があります。暗いせいもありますが、荘厳な気持ちに。遺跡などで、一瞬ですが、その時代に自分がいるような気になるときがあります。それが私にとって、旅の醍醐味のひとつですが、このカリグラフィーは、そんな瞬間をプレゼントしてくれました。

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(ムハンマド・イブン・サイード廟)

●有名なメルヴ遺跡。シルクロード交易の拠点、オアシス都市、セルジューク朝の都、、私にとって興味津々のところのはずなのですが、どうも盛り上がりきれなかったのは、あまりに広大なせいでしょうか。遺跡を愉しむには、実際のところ、知識が重要、そしてそれを駆動させる柔軟な想像力も不可欠、と思うのでした。

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(花模様のレリーフ)
by orientlibrary | 2009-08-19 00:45 | 中央アジア5カ国

インド・ラジャスターンに咲く サンガネールの優雅なブロックプリント

●相当久しぶりに北インド音楽のライブへ。シタール、タブラ、声楽、そしてカタックダンス。やはり北インドの旋律が好きだなあ。演奏者や踊り、歌の皆さん、すべて私が以前聴いていた時代よりひと回りもふた回りも世代的に若い。そして客層もそれに合わせて若い。クラシックなインド音楽を好きな層というのは、今もちゃんとあるようです。出演の皆さんはインドで勉強をしている人ばかりで、技術も高く、内容的にも浸れました。

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●さて今日はインドにちなんで、インドの布です。私の好きな布、木版捺染(ブロックプリント)のあるラジャスターン地方は古代から様々な民族が行き交い、移り住んできた土地です。東方と西方、北方と南方の文化の起点として多彩な歴史を育んできました。木版捺染の模様もラジャスターンの歴史とともに息づいてきた文化のひとつです。

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●ラジャスターンに栄えたイスラム系の王朝ムガル朝期には、ペルシアの影響を受けた独特の文化が形成されました。インドの綿織物は古代から優れた技術を誇り、インド更紗も古くから作られていましたが、より繊細なものに洗練したのは、この時期権力と富を手にしたマハラジャ(藩王)たちです。マハラジャは贅を尽くして身を飾り、腕の立つ職人を保護して、華やかで洗練された様々な布を競って作らせました

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大航海時代、インドの染織文化はポルトガルによってアジアの国々や日本へ伝えられ、そのエキゾチズムで人々を魅了しました。18世紀にはインド原綿はヨーロッパを席巻し、ムガルのデザインはその後のヨーロッパの服飾や室内装飾にも大きな影響を与えたのです。

●しかし、インド染織をめぐる状況は、イギリスの統治や独立後の社会変化によって激動しました。私がサンガネールという町の工房を訪ねた頃(95年)も、まだ厳しい状況が続いているようでした。デリーから400キロ、ラジャスターンの州都であるジャイプール、その近郊にあるサンガネールやバグルーには木版捺染の工房が集積しています。その中のひとつに「サンガネール様式」を復元した工房がありました。小さな工房でしたが、その作品は私を圧倒しました。

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「サンガネール様式」は、自然主義とペルシア風の気品あふれた花柄が特徴です。花柄の繊細な色を生かすために地色は白のものが多く、清涼感があります。木綿は透けるくらいに薄いものです。縦糸か横糸に絹が入っているものもありますが、暑いインドでは絹よりも風を通す上質な木綿が贅沢なのです。布の「透け感」を見てください。ミニアチュールに描かれたマハラジャの透ける花模様の衣装、こんな感じだったのではないでしょうか。(製法や模様の意味等については次回に続きます)
by orientlibrary | 2009-08-06 01:33 | インド/パキスタン

陽のように輝き、星のように優雅に。ミラー刺繍の美

イスラムタイルといえば、青。緻密この上ないモザイクの美だけでなく、乾燥地帯の紺碧の空を映すようなラピスラズリ色、トルコ石色など、鮮烈な青色が大きな魅力です。イスラムタイルを愛する当ブログも、トーンはブルーが多くなります。

今回は趣向を変えて、赤の世界でいきたいと思います。赤といえば、トルクメンの絨毯などが有名ですが、今日は赤の中でもキラキラした世界に飛んでみたいです。ミラー刺繍です。 

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(写真提供:YSさん)

インドのグジャラート地方などで有名な刺繍技法。写真は、すべてO氏のコレクションよりご紹介させていただきました。Oさんはパキスタン赴任中にミラー刺繍に惹かれるようになり、買い集められたそうです。そのコレクションを一堂に見せていただく機会がありましたが、濃い空気が立ち上がってくる気配に圧倒されました。一見同じように見えるのですが、よく見ると模様も技法も多彩です。

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(写真提供:YSさん)

このミラー刺繍、私の手持ちの本には解説を見つけることができませんでした。頼みのWEBにもなし、、。仕方なく英語のサイトを参照しました。怪しい訳だと思いますが、素人のざっくりのご紹介ということでお願いします。

WEB「India Crafts」/WEB「MIRROR WORK AND EMBROIDERRY GUJARAT」IN「INDIAN HOLIDAY PVT.LTD」などを参照し、まとめました。

・インドでは、“shisya”(この言葉の意味が?ミラーと同意?)、または、“mirror”は、インドの刺繍の伝統の最も魅力的で特徴的なもののひとつとして知られています。
・とくに、グジャラート、ラジャスターン、ハリヤナ、デリーなどの乾燥した灼熱の沙漠地方では、強い色彩で施されたミラー刺繍が、彼らの衣服や装飾品、室内調度品の中に見られます。
・ミラー刺繍は、「Garari Jat community」(ジャーティ〜職業集団名?)によって、白や赤やオレンジや青や緑色など色とりどりの縫い糸で刺繍されます。
・グジャラートのカッチ地方では、ミラーは鳥の目や花の中心として使われます。グジャラートだけでなく、ラジャスターン、ハリヤナ、さらにはオリッサでまで、“shisya”は同様の情熱で美しい装飾として使われます。
・ミラーワークの技法は、13世紀頃のペルシアに起源があると推測されています。元々は、ミラーではなく雲母で作られたと言われています。
・ミラーワークは、模様をより高度なものにする努力がなされ、テキスタイルや他の装飾品やアクセサリーの上に刺繍されたり描かれたりしてきました。
・通常、ミラーワークは、黒っぽい地の上に、花びらや花、鳥などのモチーフを刺繍します。これらの主要なモチーフは、古代の信仰、儀式や日々の暮らしから触発されたものです。しかし模様は地域によって、また時代によって異なります。
・ミラーの形は、円形、四角形、三角形、多角形など多彩です。サイズも豊富で大きなものから小さなものまであります。
・ 今日では、いくつかのタイプのミラーがあります。手で吹いて作ったガラスのもの、アンティークのもの、まだ雲母が使われているものなどです。ミラーワークは、優雅で豪華で印象的です。

*コメント欄より、私のわからなかった部分を補足してくださる情報をいただきました。(090708)
・“shisya”=より大雑把には「ガラス(製の物)」を指すので、必ずしも「鏡」とは限らないが、この場合は鏡の意味と考えてよい。「shisha」と綴られることが多く、「ミラーワーク(の~)」の場合は「shishedar」。
・「Garari Jat community」=この”Jat” は「ジャート」という、インド北西部を中心とする有力なジャーティ集団の一つ。ただ、一括りにするにはかなり無理がある巨大な集団なので、元々の居住地域や生業などによってさらに細かい集団に分かれる。分派の名称が”Garari”。通常はこちらが日本での苗字的に使用される。
*ブログを続けていてうれしいのは、このような情報をいただけることです。ek-japaniさん、シェアして頂き、本当にありがとうございました!!感謝しています。

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(写真提供:YSさん)(緻密な刺繍。サイズは畳1畳分の大きさを軽く超えていたと思います。飾り布として迫力がすごい!/O氏コレクション)

「ミラーワークの婚礼衣装」(『インド 大地の布』より)。「輝くミラー刺繍を好んで使うのは、森で暮らしていた頃、野獣を追い払うために用いた名残だという。ミラーで埋め尽くした婚礼衣装は、素材は木綿だが、豪華で何代も使えるほど丈夫にできていた。左肩の飾り布は結婚したときにつけて、未亡人になったときに取り外すのだそうだ」。

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(写真提供:YSさん)(真っ暗な中で見たミラー刺繍の掛け布。幻想的で忘れられません。まるで天の川のようでした。数m×数mという大変に大きな作品。当記事上から4点の写真のミラーワークは、この布を構成するパーツです。このような多彩なパーツが200以上も縫い合わせられています。ひとつひとつに個性があり、本当に圧巻でした/O氏コレクション))


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(長細く、儀式に使う布ではないかと想像しましたが詳しくはわかりません/O氏コレクション)
by orientlibrary | 2009-07-07 22:44 | 絨緞/天幕/布/衣装

タージ・マハル、その工芸美と謎

●この数回、ムガルの建造物を中心に「インド・イスラム」の模様について見てきました。今回もムガル朝の創始者バーブルの故郷である中央アジアの建造物や模様と合わせ、少し見ていきたいと思います。

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(早朝のタージ・マハル廟。「1654年、シャー・ジャハーン帝は22年の歳月と2万人の職工を投じて壮大にして典雅なる白亜の廟を建設。フマユーン廟で形式が確立したムガルの廟建築は頂点を迎える」=『インド建築案内』/神谷武夫さん、より)

●でも私の写真だけではなあ、と本棚を見渡したところ、『ムガル美術の旅』(山田篤美著・朝日新聞社)に目がとまりました。1997年12月の初版。当時、ムガルに熱中しつつあった私にとって待望の書籍でした。山田さんのレクチャーにも数回行きました。新鮮でしたが、基本知識のとぼしい私にはかなりむつかしかった。

●今回、久々に読み返してみると、今だからわかることもありました。ただ、この本をかいつまんで紹介することは私には不可能。迷路のように入り組んでいるのです。なので、、タージ・マハルの部分のみ、少し抜粋(一部要約)させていただくことにしました。

* 「タージ・マハルは相当大きな建物だ。四面どの方向から見ても同じ外観を持つ正方形プラン。遠くからだと平たく見える基壇だって高さ7メートル、一片の長さは95メートル。その上に約58メートルのパビリオンが乗っており、ミナレットの高さだって42メートルに達する」

* 「白大理石の建物と思われているタージ・マハルも、赤砂岩の存在があってはじめてその美しさが際立つことだろう。白大理石の基壇の輪郭がくっきり浮かび上がって見えるのも、基壇の下に赤砂岩の床があってこそ」 

* 「世界でもっとも美しいと言われているこの墓廟には新たな発明とか独創性がない。フマユーン廟、アクバル廟、イティマッド・ウッダウラ廟、ジャハーンギール廟の特徴を組み合わせたのがタージ・マハルだった」。しかし、 「タージ・マハルには、確かに独創性はなかったが、伝統の積み重ねによって、見る者すべてを魅了する優れた建築物を造り上げた」

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(タージ・マハル。廟から門方向を見わたす。四分庭園の緑と赤砂岩で整形された長方形変形と六角星)

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(ティムール時代初期建造物であるアフマド・ヤサヴィー廟。右側の模様、パターンとしては似てる気がします)

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(ブハラ。ファサードを取り巻くデザイン。中にカリグラフィー。すごい)

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(タージ・マハル。基本的なデザインを石造で)

●山田篤美さんの本の眼目は、ウエイン・E・ビーグリー氏による「タージ・マハルは神の玉座」説や、「『メッカ啓示』(13世紀のイスラム神秘主義者イブン・アルアラビーがイスラム社会の宇宙観を記した著)で使われたダイヤグラムとタージ・マハルの配置との類似性」という説に対する検証と見解です。が、最終的には「やはり私は通説どおり最愛の妻のための墓廟だったのではと思うにいたった」とあります。

●あれだけ壮大なタージ・マハルはいったい何のために作られたのか、諸説あるようです。私の感想は、、シャー・ジャハーンは建築オタクだった、ということ。じっくり見るほどに、作りたくて作った、とことん完璧にしたかったという感じがわき上がって見えてきます。

●建築熱中人が建造できる地位にいたならば、既存の廟やペルシア建築を研究しつくし、理想の美を追求しつくすだろうと思うのでした。だから様々な要素が入っているのだと思うし、それが「謎」として好奇心を刺激するのでは?つまり、それほどに完璧なバランス、理想の美が体現されているということなのではないでしょうか。


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(ブハラ。波形の模様。素材は土。優雅ですね〜!)

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(タージ・マハル。波形の模様。素材は石。キリリとしてます)

●今回は、書きながらむつかしかった、、! 読まれた方もわかりにくかったと思います。次回は趣向を変えて、意外に面白かった展覧会「エカテリーナ2世の4大ディナーセット」についていこうと思います(ふ〜っ、、、)。



◆ ヌスラット・ファテ・アリハーン ◆
●話は変わって、、先日、カッワーリの代表的歌手である“ヌスラット・ファテ・アリハーン”を検証する「聖者の宮廷楽聖考—ヌスラットとは何者ぞ?」という会がありました。、、というと行ってきたみたいですが、、残念ながら今回は参加できませんでした(涙)。参加者も多く、大盛り上がりだったようです。

●でも、神様のプレゼントなのか、会の前日にたまたまつけたテレビで、なんとヌスラットの映像を見ることができたのです。テレビでヌスラット、、時代は変わりました。ピーター・バラカンさんの進行による「ワールドミュージック」の番組でした。

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●この「ワールドミュージック」という言葉、由来をごぞんじでしたか?バラカンさんによると、1987年に音楽プロデューサーやジャーナリストが、ロンドンのパブに集まり話し合ってつけたんだそうです。背景は、それまでの欧米のポピュラー音楽とは異なるタイプの音楽が増えてきたから。そのジャンルのものをレコード店でどこに置いていいかわからなくなり、名前が必要になったんだそうです。

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●それから20年、「欧米以外」の音楽、ファッション、食など、日本でもずいぶん浸透してきました。ヌスラットの会に若い人たちが大勢集まるんですからスゴイです。若い層にはミドル以上の世代が持つアメリカ信仰(〜反感)のようなものはあまりなく、ボリウッド映画やベリーダンスなども人気。次はイスラムタイルにも興味を持ってね〜!


◆ カッワーリ、ヌスラット・ファテ・アリハーンについての過去記事 ◆
 「神秘的or土着的宗教歌謡?どちらもナイス!Sufi Soul!」
 「扉とカッワーリー イスラムの街を五感で感じるとき」
by orientlibrary | 2009-06-17 18:45 | タイルのデザインと技法

インド・イスラム、模様調査隊が行く(パルメット編)

前回は、ティムール朝とそのインドでの継承王朝の側面もあるムガル朝の模様について書いてみました。今回は、デリー・サルタナット朝(13-16世紀にかけてデリーを本拠として北インド一帯を支配したトルコ系及びアフガン系ムスリムの諸王朝)とムガル朝の模様について、少し見てみたいと思います。

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(ファテプル・シークリー/アグラ/インド/16世紀後半/ターコイズブルーのタイルの屋根。その下にあるパルメット風模様)

◆ パルメット見て歩記 ◆
といっても、専門ではない私に、むつかしいことはわかりません。「あ、同じ模様がある〜!」と喜んでいるレベルなんです。単純!その模様とは、これ、パルメット模様。インド・イスラーム文化の基礎を作ったといわれるトゥグルク朝 (1320年~1413年/トルコ系/タイル装飾が素晴らしいのは、ムルタンの「シャー・ルクネ・アーラム」など)や、アフガン系のローディ朝 (1451年~1526年)/ウッチュの「ビー・ビー・シャビンディー」などがある)で目立つこの模様。

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(シャー・ルクネ・アーラム(廟)/ムルタン/パキスタン/1320-24/ファサード上部。テラコッタとモザイクタイル。パルメット風の多様なモチーフ。これを見ると好まれた模様なのだと感じます)

これらのタイルがあるのは、インドというよりも現在のパキスタンではありますが、、。少なくともムガル朝初期まで、このあたりの地域でとても好まれたのかなと感じます。

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(バハルディンハリム(廟)/ウッチュ/パキスタン/15世紀末/埋葬ホールの内部空間。煉瓦造。蒼の施釉タイル装飾が印象的。パルメット風も)

だって、こんなにあるんですよ!それも目立つポイントに。中東や中央アジアにもパルメット模様はありますが、この宇宙人みたいな、キノコみたいなカタチ、ちょっと珍しいと思うのですが、どうなんでしょう。ご専門の方に教えて欲しいな!

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(ビー・ビー・シャビンディー(廟)/ウッチュ/パキスタン/1493/目立つキノコ形はパルメット?アッラーの文字や花模様を組み合わせて)

インドのタイルについて、タイル専門書&写真集『THE ART OF ISLAMIC TILE』には、こう書かれています。「インドの建築物にはほとんどタイルが使われていない。特にイランや中央アジアと比較して、その少なさが際だつ」「この分野に関しては、これまでほとんど専門的な研究がされてこなかった。また、インドのタイルについての体系的な目録も上梓されていない」。知りたいけど、ふれることがないのも、仕方のないことですね。

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(シカンドラ〜アクバル廟/アグラ近郊/インド/1613/くっきりとあります)

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(シカンドラ〜アクバル廟/アグラ近郊/インド/1613/四角形でもかたくなにパルメットにしている印象)

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(シカンドラ〜アクバル廟/アグラ近郊/インド/1613/タイルですよ〜!この黄色がインドだなあ)

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(タージ・マハル(廟)/アグラ/インド/1654/凝った模様です。あまり惹かれない)

インドでタイルが使われなかった理由として、同書には、「石造を好む」点に加え、「ヒンドゥーの伝統ではテラコッタは不浄なものと考えられてきた。陶器類は一度しか使われず、金属が食器として利用されている」とあります。この点は、どうなんでしょうか。なんとなくピンとこない私です。

◆ イカ風イアリング ◆
パルメットの他に、もうひとつ気になっていた模様がありました。 心の中で「イカ」と呼んでいた左下の模様。これって何!?

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(たぶんウッチュ)

近いものを見つけました。地味ですけど。「イアリング」なんだそうです。

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(ファテプル・シークリー/アグラ/インド/16世紀後半)

意識して模様を見てみると、デリーサルタナット〜ムガルの模様のパターンが少し見えてきます。パルメット、ミヒラーブ、壷、花模様、六角星、八角星、波形、蓮、糸杉。名前を知らないけど多数あるモチーフ、いろいろ。模様の中にまた模様、模様同志の組み合わせなど、無限のパターンが楽しい、インド・イスラム。まだまだ知りたいことたくさん!
by orientlibrary | 2009-06-04 00:51 | タイルのデザインと技法