イスラムアート紀行

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「あめつちの日々」とわたし

前回から1年2ヶ月、あまりに久しぶりのブログ更新となりました。去年の今頃は、ウズベキスタン(ホラズム)行きの準備などで、あわただしく過ごしていました。

昨年5月後半、ウズは極暑一歩前。真青な空、ホラズムの紺碧のタイル。イチャンカラ(ヒヴァ)でのミッション、煉瓦や木材の調達、工芸品探し、陶芸工房やアーティスト訪問と再会、中世のようなバザールの活気。遠い昔のようです。

昨年晩夏以降、気持ちも体調も低迷していました。自身の甘さ全開なのですが、大好きな母の急逝という喪失感は大きく、加えて今年に入って4ヶ月以上も続いた体調の悪さには滅入りました。でも、、ようやく気力が沸いてきました。体調が改善してきたタイミングもあったと思いますが、活力のきっかけにこの映画があったことは間違いありません。「あめつちの日々」。


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■ 「あめつちの日々」のはじまり ■


「2011年。私たちが探していたのは「土」でした。風土と人間の暮らし。撮ってみたかったのはその絶対的存在でした」(「あめつちの日々」WEBサイトより)

そして向かったのは、「四名で持つ共同窯「北窯」。沖縄最大といわれる登窯はダイナミックで上へ上へと昇りあがってます」 松田米司氏に話を聞く。「土はなくならないのでしょうか?」「いずれなくなるかもしれないね。自分たちにも責任はある。だから懸命に喜んでもらえるものをつくろうと思っている」

(*北窯(きたがま)=沖縄中部読谷村。宮城正享・與那原正守・松田米司・松田共司の4窯元の共同窯として1992年に開窯。13連房という大きな登り窯で年5回火入れする。)

約4年をかけて、松田米司さんとその工房、北窯を取材・撮影・編集。上映は16年5月7日が初日。現在、渋谷イメージフォーラムで上映中です。(* プロデューサー=高田 明男、監督・撮影=川瀬 美香。敬称略)

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■ 土と笑顔 ■


(じつは、「あめつちの日々」、すでに3回観ました。何度観ても発見があるし、何か書きたいと最初から思ったので、構成や言葉などを記憶したかったのです。が、覚えてません!無理。以下、あくまで私が覚えている範囲、しかも感覚的印象優位です。正確さは、別の何か?でご確認ください。)

映画の冒頭シーン、瓦の上に置かれたたくさんの赤い陶土。健やかなたくましい姿で、読谷の陽射しを浴びています。土の様子を見に来た松田米司さんの、土と呼応するような満面の笑み。その笑顔があまりにも素敵で、、一瞬にして映画に引き込まれました。

瓶のろくろ挽きの長回しもいいですね〜。端的でよくわかる。「土族(つちぞく)」としては、土がどーんとアップで撮られるということに、すでに興奮状態。しかも、その迫り方に土へのただならぬ愛を感じました。土のアップと長回しで、撮っているのは女性かな?と思いました(当たってました。気になるところにグッと、、そのお気持ち、わかる気がするのです)。

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■ キラキラするものを見つけてしまったんです(松田米司さん) ■


沖縄や“やちむん”(沖縄では焼物のことを「やちむん」という)のことを語る米司さんの言葉のきらめきに魅了されました。(繰り返しになりますが、以下、正確な再現ではありません!)

「沖縄が好き。くされ縁というか、面倒ではあるんだけど、その中に、キラキラするものを見つけてしまったんですよ。土に関わることなんだけど。それは自由で魅力的なことなんです」

「伝統というのは、個人が入ってはダメなんですよ。入らないほうがいい。沖縄の、というところに、誰の、が入ると、なんだか、、うるさいでしょう。工芸というのは、それを話題に皆が語り合うような、文化のものだから。沖縄には伝統があり、しっかりと作れる陶工たちがいるのだから」

「(車で出かけた先にて、カゴに何かを拾って入れながら)  これは釉薬に使う鉄分の多いマンガン。沖縄のやちむんは、自然からいろんなものをもらっているんだよ」  (*「この場所は旧日本軍の飛行場で、その後、米軍が占有していたところ」という。その上空を飛ぶのは米軍飛行機か。現在も米軍基地がある。奇しくも今日5月15日は沖縄返還の日。44年経ちました)

陶土を求めてベトナムへも。合間に街で気に入った茶碗や皿を買い求め、とろけるような笑顔。沖縄の白土の成分とほぼ近い白土(カオリン)の工場と原料採掘所へ。  「(土を手に持ち笑顔で) 採掘所っていうのは、ワクワクするね。この広い採掘所の地面の下、全部(土)でしょう。すごいな。なるべく原土のままで精製しないで使いたい。この土は化粧土にしたい。沖縄の土と混ぜて作陶もしたいし、釉薬にも。本当は沖縄の土でやりたい。でも、いろんな方法を考えなくちゃならない」

「琉球人らしく生きるには、沖縄人らしく生きるには。それを考えて職人になった。どこにも属さず、誰にも頼らず、自活していく。自立していく」

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■ 全国から集まる若い陶工さんたち ■


若い陶工さんたちの土づくりも印象深いシーンです。体全体をかけて何ヶ月も土と向き合う姿。陶芸はろくろ挽きや絵付けだけではないこと、大半は土の調子を整えていくような地道な作業であることに気づきます。

皆さん、いい顔。姿勢というか、姿がきれいです。打ち込んでいる人の意気が伝わります。

火入れ、数日の昼夜通しておこなわれる窯焚きも、じっくりと見ることができます。丸太をどーんと入れている、、豪快! 一方で、温度や時間と場所を細密に調整し続ける根気や集中力にも感心しました。

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● 尾久彰三さん(古民芸研究家) ●


「沖縄のやきものには長い伝統があります。そしてスケールが大きいんですよ。小さな島だけど海も含めると大きい。海洋国のスケールがある。そこが本土の陶芸産地との違いでしょうか」

「米司さんは、伝統を深めるほうでやっていかれればいいと思う。今立っている地の奥の方に行く、と言えばいいかな。沖縄にはそれだけの伝統やものづくりの幅があるのだから」

尾久さん、奥ゆかしくて、ほのぼのしてて、いいな。

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● 山内徳信さん(読谷村元村長) ●


強烈な印象です。こういう骨のある人がいたから、今の読谷があるのかなと思いました。

「村長になったとき、何ができるか、経済じゃない、と思った。当時、村の人が皆うつむいて歩いていることに気づいたの。戦後、村の95%が米軍に占有されていた。大人も子どもも、夜空の星を見上げるように胸を張って、自分の村に誇りを持って欲しかった」

「経済じゃない、文化だ。文化村を作ろう。花織りができる場、やちむんができる場を。そういう場を作るんだということで、交渉していった」

1986年の「読谷文化村」構想。詳細な経緯や経過については知らないのですが、現在の北窯も、この文化村構想があってこそのものなのでしょう。米軍占有地も36%まで減少したそうです。

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▼ 健やかで、骨太で、自由 ▼


全編を通じて、土も、人も、やきものも、健やかで、骨太で、自由、その波動が伝わってきました。この健やかさ、生命感が、私がこの映画と出会って受けとった宝物です。

「マカイ(沖縄の椀)は、重ねて焼成する、という制限がある。茶碗の形ではそれができない。そこからマカイの形が決まっていった」。

制限から生み出された形の美。また、重ねて焼成するには正確に中心が取れていないとダメ。基本がきちっとしているから、目に気持ちいいのかなと思いました。

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▼ リシタンやホラズムを重ねたくなる ▼


中世からの陶芸の歴史、今に続く伝統の継承、そして赤土に象牙色の化粧土、地元の植物を使った釉薬。やはりウズベキスタン陶芸と重ねてしまいます。以前から、沖縄とウズベキスタンは似ているという気がしていましたが、陶芸でも重なりを感じました。

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(リシタン)

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(リシタン)

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(ホラズム)

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(ホラズム)


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▼ 感謝します ▼


松田米司さん、工房の皆様、やちむんを生み出してくださってありがとうございます。

映画製作の皆様、熱くて温い、心に響く映画を作ってくださってありがとうございました。(プロデューサーの高田明男さん、監督・撮影の川瀬美香さんは、「紫」を製作された方なのですね。観ました、紫。こちらも迫る映画でした。工芸の次作はなんでしょう!?待ってます!)

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(上映後あいさつ(川瀬監督、松田米司さん)/今回の展示会で入手した茶碗、皿。緑釉は真鍮とガジュマルの灰釉と聞きました。興味深いなあ。これから知っていきたい)

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(「あめつちの日々」公開記念やちむん展示会にて)


とにかく書いてみました。とにかくラフなまま、アップしようと思います。健やかに歩いていきたいです。
by orientlibrary | 2016-05-15 23:01 | 日本のいいもの・光景

「テーブルウェア・フェスティバル 2015」、好きだったものなどレポ

今年も「テーブルウェア・フェスティバル」の季節(東京ドームにて、2月9日まで、詳細はイベントサイトに)。ドームに満載の陶磁器やテーブル回りの品々に会いに、さっそく行ってきました。まとめられず調べきれなくても、「走りながら書く」スタイルに変えようと思っているので、写真中心に、超ザクッとですが速報レポとします。

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(「個性ある250以上の販売ブースが出展し、企業の新商品や提案商品、
産地の窯元や作家の作品などを直接購入することができます」HPより。おもてなし食空間=テーブルセッティングの展示も大きな要素。専門家からコンテスト入賞作品まで多数展示あり。会場は幅広い年代の女性ファン、器選びをするカップルなどで熱気/着物姿の女性は食卓との関係は?だけれど入口に。皆さん写真を撮っていたので、、モデルさんって顔が小さい〜)

今回の特集は「琳派400年の系譜と新時代の京焼・清水焼」。見応えありました。解説までは写真を撮っていないので詳細はわかりません。写真のみです。

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(「伝統的な琳派のデザインを受け継ぐ器や、楽茶碗に代表される茶道具。そして、斬新なデザインさえ感じる
今の新しい京焼・清水焼。古都、京都ならではの奥深さをご紹介いたします」(HPより))

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(器だけでなく、セッティング提案してあると、やはり器の表情が出てきます。揃いも生きるし、組合せも楽しい。日本の器でのセッティングは、ルールが種々ありそうな欧米よりも自由な空気があり、私には楽しい。ひとつひとつの陶磁器に存在感)

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(端正なかたち、絵付けの細やかさ、色彩の優美さ。やはり華があります。粋と雅)

「日本の器を訪ねて」では、今回、和モダンな漆を特集。輪島塗、山中塗、津軽塗など、日本の代表的な産地の逸品、そして斬新な作品がセッティングされていました。

「日本の器を訪ねて」、毎回、大きなブースを展開するのは、日本の有名な陶芸産地。土岐市、瀬戸、多治見、有田、常滑、波佐見、鹿児島の工芸品。伝統的な作品からカジュアルなものまで豊富に揃い、値段も手頃に設定されています。楽しみにしている展示です。

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(土岐市は伝統的な名匠の作品から、現代作家の青白磁など魅せてくれます。さらにカジュアルな食器、今風のどんぶりなどが大人気で朝から行列ズラリ。レジや包装の皆さんも大変そうでした)

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(東海中部の産地。多治見、瀬戸、信楽、常滑。中部の土もの、いいですね〜)

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(九州。波佐見焼はブースも大きく、加えて窯元も個別に出展するなど、目立ちます。商品ラインが豊富。青中心の三河内は複数の窯元さんが出展。かごしまは工芸品全般。白薩摩は本当に美しい。有田のブースは大きくてモダンなものが多いのですが撮影禁止なので写真なし)

気に入ったもの、気になったものは、いろいろあるのですが、、ザクッとの範囲で、こちらをご紹介。オリエンタルなテイストを感じたもの。

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(左の上下:あれ?トルコタイルの模様、、と思ったら、やはりテーマが「トルコの花」なのだそうです。いい感じにあがっていますね。落着いたトーンの色合いでまとめてあったのが和風でおもしろかった。皿だけでなく商品ラインも豊富。ただ、食卓提案にトルコテイストがほとんどなかったのが残念。少しトルコものを入れてパンチを効かせたほうが良かったのでは?/右上:きれいですよね!!京焼の深鉢。ムガルの花模様を思い起こします。このようなブタ(花模様)が傾いでいってペイズリー模様になった、そのあたりも感じさせる動きのあるデザイン。色も青でいいですね/右下:カタール国大使夫人によるテーブルセッティング。キラキラ。ヒョウ柄とは意表をつかれました)

有田で写真を撮ってもいいですよ、と言ってくださった窯元さん。去年から注目していましたよ。「メデタイ」の窯元さん。今年はさらにパワーアップ。人も集まり注目の展示になっていました。明治時代の版木を使って成形し、すべて手描きで仕上げています。

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(有田の窯元による明治の鯛「メデタイ」鯛皿は、明治10年頃の型を使い再現した手造り物。現在の魚の置き方は頭が左ですが、当時「左前」は悪いイメージ。新しい日本の未来を祝うため、頭が右を向くように作られたのだとか。右向きの鯉皿は明治初期に限定されますが多数生産されたそうです。現在の鯛皿は華やかな絵付けが施され豪華。小さな魚皿も可愛い)

小さいものは可愛いですね〜。そこにびっしりと描き込んであるのですから、グッと惹き付けられます。

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(左上:こちらは陶器ではなくビーズ!「テーブルセッティングによる食空間提案」で、ビーズ刺繍デザイナーの田川啓二さんのテーブルにあった屏風=「葵祭」をモチーフにしたもの。これらはすべて、ビーズ、スパンコール、金モール、糸など、様々な種類と色の材料で一針一針手で刺繍したものです。人物は、最も難しい糸のテクニックであるレシャムワークでつくり、この糸刺繍のあとに縁取りをツイストワイヤーでまつっていきます。これは私の作品の中で、一番長い期間を費やして制作されたものです」(田川さんコメント)/右の上下:こちらは本当に綺麗でした!京焼の箸置き。やっぱり、日本の陶磁器はすごいわ、、)

あれ、、洋食器ブランド、見逃してました。でも、日本のブランドの洋食器はしっかり見ました。大倉陶園、こちらはちょっと別格。重厚というか格調というか、、美術品のようです。

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(呉須草花紋のカップ&ソーサー。瑠璃色と金色の大型陶板。図柄は正直好みではないけれど青には惹かれる。深い青「アジュール」の四角い皿。『婦人画報』の写真には、有名レストランのシェフによるお料理が。こんなふうに盛りつけてこそ映えるお皿ですね、ハイ!)

テーブルセッティングもさまざまなテーマで、展示されています。

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(左上:かなり作り込んだ野外のテーブルセッティング提案。細長い絨緞あり。このイベントで絨緞を見ることは少ない。床までいかないですね、だいたい/右上:カタール大使夫人のテーブル全体はこのような豪華な感じ/左下:たぶんスイーツガーデンというテーマのセッティング/右下:女性好みの世界。植物もいっぱい)

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(左上:花に負けない器の存在感/右上:先ほどの田川啓二さんのテーブル。後ろの屏風にビーズが施されています/左下:たしか昨年のコンテスト優秀作のコラボ/右下:今年の「テーブルウェア大賞」入賞作品より。華やかなセッティングが多いなかで意表をつくエコなテーブル。紙や洗濯バサミ、ヘチマなどで。オシャレです)

写真はたくさんあるのですが、長くなってしまうので、このくらいにしておきます。陶磁器見学、次はどこに行こうかな!? 北九州も行きたいな。

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気持ちが重い。いい方向に世の中が向かっているとは思えない。大好きな地域(人々)が、ますます辛い状況になっている。日本もモヤモヤ。世界、社会、すべてが加速度的に複雑になっていて、こじれていく。正直、今日は気を紛らわせて何かに向かいたかったこともあり、ブログを書きました。とにかく、自分の小さなことだけを考えていては、それさえも危うくなるのだと思う。というところまでしか、、うまく表せません。。
by orientlibrary | 2015-02-01 23:55 | 世界の陶芸、工芸

優美洗練!九谷焼美術館、超絶豪奢!横浜真葛焼

伝統ある産地、洗練の美意識と匠を伝える 「石川県九谷焼美術館」

イスラームの装飾タイル偏愛紀行ではありますが、日本の陶芸、工芸も、とても好きです。年々惹かれています。日本の陶芸産地には地元の陶芸をテーマにした博物館、美術館も多くあり、総合的かつ深く見られてありがたい存在。先日は、絵付けで有名な九谷焼を専門に展示紹介する「石川県九谷焼美術館」を訪ねました。

石川県九谷焼美術館は2002年開館。加賀市「古九谷の杜親水公園」内にあり、周囲の自然と一体化した心地よい美術館でした。設計は富田玲子さん(象設計集団)。公園と一体になったくつろぎ感、細部まで心配りされた素材使いや色使いなど、建築というものに久々に感動しました。行ってよかった。

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(小雨模様の天気でしたが、緑がしっとりとして気持ちも落着きます。やきものもまた雨に一層映えますから、雨もまた良しです)

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(公園内のなんらかの施設。何かはわからなくても、青をめざとく見つけ近寄ります。濃淡がやさしい日本の青。イスラームの紺碧の青を求めて旅をしていますが、こういう青も本当に好きなのです。九谷五彩、それぞれに何て魅惑なのでしょう)

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(公園内からも、次々と現れる五彩のやきもの。床に柱に壁面に。大きさを変えたり、表情を付けたり、見て歩くのが楽しい)

館内の常設展示は、
* 青手  (緑・黄・紺青・紫の4色を使い大胆な筆づかいで独自の世界を築きあげた青手古九谷、そして青手の伝統を受け継ついだ吉田屋窯、松山窯などの名品を紹介)
* 色絵・五彩  (「九谷五彩」と呼ばれる緑・黄・紺青・紫・赤の色絵の具で、山水や花鳥風月、人物などのモチーフを、大胆に繊細に描き出した色絵の名品を紹介)
* 赤絵・金襴  (宮本屋窯の飯田屋八郎右衛門によってスタイルが確立した赤絵細描の作品や、京都の名工永楽和全が伝えた金襴手の技法による九谷焼など、赤と金のコントラストで表現された作品を紹介)
など。見応えありました。

そして企画展示は現代作家の作品を多数展示。九谷と聞くと、ちょっと作風が古いのでは?というイメージの方もあるのでは?が、この現代作品が作風も多彩で、細密かつ力強く、圧倒的に素晴らしかったです。産地の底力!!!(展示作品が撮影不可なのは仕方ないことですが、アップできないことが非常に残念)

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(館内。直線曲線の変化、見え隠れする九谷カラー、ガラスだったり陶だったり。床や柱も陶の魅力をさまざまに伝える)

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(中庭には水琴窟。写真左上の青い椅子、なぜ斜めに置いてあるのかと思って座ってみると、ここから中庭がちょうど良く見えるのです。視線が低く、落着きます。展示室外の目立たないところに石のモザイクが。九谷カラーも使いシックです。右下は陶器破片を利用した飾り。大きな美術館ではないけれど、視線や素材の変化があるので飽きさせません)

2階の喫茶室も、作家さんの作品を使ってのセッティングが、とても洒落てました。庭を見ながら外のテラスで風に吹かれて、がおすすめです。

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(喫茶室にて。右下は青が美しい陶板)


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横浜のやきもの・真葛焼 「宮川香山真葛ミュージアム」


数年前からでしょうか、「横浜のやきもの」ということと、「明治工芸の超絶技巧」という2点から、ずっと気になっていた横浜真葛焼と、その専門博物館である「宮川香山真葛ミュージアム」。今回、横浜のアートイベントの一環として館でもイベントがあることを知り、良い機会と出かけてきました。

豪奢な細工や幽玄の色彩が特色の真葛焼、九谷焼とはかなり趣きが異なりますが、圧巻の匠の技で見る者を魅了するのは同じ。明治を代表する陶芸家、宮川香山の世界に浸りました。

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(横浜駅から徒歩でも10分かからない立地。ビルの1階。HPを見るとお菓子の会社がスポンサーのようなのですが、地元の真葛焼を紹介しようとするエネルギーと意思がすごい。施設の維持は大変なことでしょう。拍手/館内の展示。広くはないけれど作品がきちんと見えるように気配り/下の中と右=イベントの「真葛焼鑑定会」の様子)

まず真葛焼について。あまり情報が見当たらないこともあり、館のチラシから引用します。

「世界を驚愕させた横浜真葛焼 〜 1842年、初代宮川香山は、京都真葛が原の代々やきものを生業とする家庭に生まれました。29歳のとき、輸出向けの陶磁器を製造するため、横浜大田村字富士山下に真葛焼を開窯します。1876年(明治9年)、フィラデルフィア万国博覧会に出品された真葛焼は絶賛され、その名は世界に知れ渡ります。その後、フランス、アメリカ、イギリスなど各地の万国博覧会で輝かしい受賞を重ねました。真葛焼は初代から、二代、三代へと引き継がれますが、1945年横浜大空襲で壊滅的な被害を受け、閉窯。四代目香山の復興努力もむなしく、その歴史は閉じられ、今では「幻のやきもの」と言われています」

19世紀の万博と日本の明治工芸については、薩摩焼の細工や漆の超絶技巧で関心を持つようになりました。真葛焼も「高浮彫」という精緻な彫刻を施した技法が特徴です。じつは好みとしては、豪華絢爛で派手なものは、いくら美しくても苦手。真葛焼の「高浮彫」も引いてしまう面もあります。今回もトークなどで熱の入ったお話を聞かなければ、派手だったなあ、と帰ったかもしれません。が、エピソードなども聞き、あらためてじっくり見ると、やはりすごい!と見入ります。

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(初代香山の作品。右上=蟹が施されている作品は遺作だそうです。土で作られた蟹、生きているようです/右下の彫刻=TV番組の「鑑定団」に出た作品で、「いい仕事してますね〜」の絶賛賛辞が。傷がなければ1千万円の価値とか。縁あってこちらに寄贈されたとのことです)

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(香山は当初薩摩焼を研究していくつもの作品を制作、輸出していましたが、金を多量に使うため多額の資金が必要。そこで金のかわりに、身近な動物や植物を精密な彫刻で彫りり込む「高浮彫」を生み出します。より細密な表現のために、庭に鷹や熊を飼うまでしたそうです。鳥の表情がすごい。細かい!)

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(ここまでゴテゴテすると(失礼!)、苦手を通り越して興味が。細工に気を取られるけれど絵付け部分の描き込み密度もすごい。もちろん元々の成形や焼成も。しかし高浮彫は完成まで何年もの時間が必要なため、香山は後に作風を一変し清朝磁器を元に釉薬の研究したり釉下彩の研究に没頭。美しい作品を残しており館内にも展示されています)

精緻な細工を特色としていた初期真葛焼も、写実的な作品がしだいに減少。二代目香山はのちに、「外国人が濃厚な作風に飽き、日本本来の趣味である清楚淡白なものを好むようになってきたからであった」と語っているそうです。マーケティング!

また二代目による初代への、次のような回想も。「故人は西洋向けのけばけばしいものよりも、日本向けの沈んだ雅致に富んだ物の方が得手のようでした」。実際、晩年の作品は滋味あふれ、伝統的な情緒あふれる作品が多いとのこと。
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(植物も細工と絵付けを重ね、独特の世界。ときはアールヌーヴォーの時代。時代の気分、共時性というのもあるのかも? 館内での解説などによると、窯には200名もの職人がいたこともあり、誰がどの部分をおこなったというのはわからないそうです。香山作品であり真葛焼窯全体の作品でもあるのでしょう)

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(今回の企画展示は、稀少で貴重な高浮彫を展示室に満載。多彩な作品を見られる貴重な機会だったようです。こちらの虫の表現、花や鳥に気を取られて最初は目につきませんでしたが、長時間見ているうちに、ささやかな表現もすごいなあと気づきました)

京都の腕の良い職人が、海外との交易盛んな時代に輸出に都合が良い横浜で窯を開き、薩摩焼に彫刻的要素を加えた華やかな作風をもって流行の世界万博で一世を風靡、そのために渾身の努力をする。けれども晩年は滋味あふれる雅な作品を制作。しかしその後、窯は、横浜の大空襲により三代香山が亡くなり、多くの資料も失われ、閉窯に。

美しい陶磁器群のなかに、時代が刻々と流れている。ときには華やかに、ときには辛く悲しく。さまざまに思いが巡ると同時に、超絶技巧と淡白な美を両立し得る日本陶芸の深さに、あらためて感慨をおぼえました。


* * * * * *
これからも、たくさんの陶芸を見ていきたいと思います。今回ご紹介できなかった「河井寛次郎記念館」、機会があれば何かとまとめて書きたいと思います。

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(京都五条坂の河井寛次郎記念館。大好きな世界。河井さんの文章がまたいいですよね〜。。)


* * * * * *
&このところ、日本のタイルの動きがすごいです。ほんとにびっくり。個人ができる範囲ですが、取材などもおこないつつ、こちらも書きたいと思っています。
by orientlibrary | 2014-10-13 21:22 | 日本のタイル、やきもの

日本のタイルびとたち&やっぱりタイルが好きだ!

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アトリエ「ユークリッド」


「タイルがどのくらい好きか」について語り合う機会が少ない(ほとんどない)と嘆いている私に、先日、あるメッセージが。<タイル好きが集まってバーベキューをします。来てみませんか>。え〜、タイル好きって、日本で??<ほとんどが20代、30代の女性です>。若い女性がタイル好き?ホント??

正直、内心は半信半疑。でも若い女性に好まれそうな「イチゴ、チェリー、赤ワイン」をエコバッグに入れて、イソイソと出かけてみれば、、、わ〜〜っ!ホントだ、、本当に若い女性ばかり!しかも美人ばかり!

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(「ユークリッド」の名付け親はモザイク師の荒木智子さん。
タイルやモザイクは無限なる宇宙であり、
幾何学であるという見解が一致しての命名となった、そうです/青の時計や八角星のチェスなど女性の心鷲摑み系!?)

そこは、タイル職人・白石普(しらいしあまね)さんのアトリエ「ユークリッド」。タイル張りのバーベキュー台には血のしたたるような肉、肉。しかもデカイ。さすが。同年代だと干物、酢の物、梅干し入り焼酎などサッパリ路線なので、すでに軽いカルチャーショック。

美人さんたちに見とれていると、奥にヒゲの男性を発見。この日本で、タイルをデザインし、制作し、施工をおこなうことを生業にしている人。イタリア留学、モロッコの専門校と工房でのモザイクタイル修行。タイルやモザイクが息づく土地で暮らし学んだ経験が素晴らしい。(詳細は、「タイルびと」(チルチンびとWEB連載)で。端的でリアルで臨場感とリズムのある文章。写真や図版も。日本にこのようなタイル人がいることが、うれしい!)

アトリエは、「タイルを愛する人が集えるように団欒スペースを設け、
教室や作品展も開けるタイルサロンとし、「ユークリッド」と名付けた」(タイルびと、より)。開放的な空気、白石さんの明るく率直な人柄。これは人が集まります。

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(壁面を飾るのはイランと思われる絵付けタイル!白地で品のいい絵柄、いいですね〜!/モザイクのテーブルなども)

女性が多いのは、女性の方が好奇心と行動力があることも関係している気がします。(美人が多いのは、、なぜ!?)イタリアでモザイクを修行した専門家、自分のデザインでタイルを作りたいという絵描きさん、タイルに関わる人たちのコーディネートをしたいというタイルショップの方、施工にチャレンジしている女性、アラベスク模様のタイルがたまらなく好きという女性。わ〜、すごい。

アトリエに来たきっかけを聞いていると、「タイル」をネットで調べてこちらに辿り着いたという人が多かった。そういう層があり、ニーズがあるということなんでしょうか。その気持ちに応える場が少ないということなのかなあ。

「女性が好きなのは小さくて可愛いもの。女性はタイルが好きなんですよ」(参加した女性)。なるほど。小さなタイルのちょっと盛り上がった風情、釉薬のキラッとする光沢、温かみのある土の質感、星などの「カタチたち」が織りなす幾何学模様の愛しさ、安心感。また白石さんのタイルは青系が多く色がきれい。若い女性たちの琴線に触れること、わかる気がします。

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(「私は23歳の時にタイル職人を目指した。陶芸家の父。イコン画家の母。
そんな両親の影響で留学したイタリアで、幾何学模様の大理石の床、
絨毯のようなガラスモザイクの壁や天井、石積みやレンガ造りの躯体のままの意匠、
数々の魅力的な空間に出会い、こういうものに関係した仕事がしたいと
漠然と思いながら帰国したのが、22 歳のときだった」(タイルびと、より)/右上:青い鳥のモザイクタイル、サンプル作品。素敵!色は本番ではもっとクリアになるとのこと。私の好きな青2色。楽しみ/右下:パーティの様子。次々と訪問があり中に入りきれないほど!)

ウズベキスタンの工房でも、「あまりに大変でやる人がいない」「値段が高くつき過ぎて現実的に無理」というモザイクタイルの制作と施工。西アジアのタイル産地でも、有名な建造物の修復現場を除き、モザイクタイルは稀少でしょう。それを、この日本で、個人でやっているなんて。しかも美しい。デザインも施工も。自由で緻密。

白石さんの仕事については、きちんと取材してから書きたいです。このブログの「タイル人(たいるじん)」に、ぜひ登場して欲しいな。


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タバコ屋のタイル〜日本のタイル


じつは、もうひとつ、タイルがらみのトピックがあります。

ある時、facebookの「おすすめグループページ」という欄を見るでもなく見ていたら、「タイル」という言葉が目に入り、そのページに入ってみてビックリ。タバコ屋のタイルや街角のタイル、日本の近代建築の中のタイル写真をいろんな方々(建築関係の方が多い印象)が投稿。とくに全国くまなくタイルを見て歩いている方(女性)のエネルギーに脱帽しました。

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(このトピックとは直接関係ありません/岐阜県多治見笠原の「モザイク浪漫館」にて)

さっそく仲間に入れていただきましたが、日本のタイル中心の様子なので、イスラームのタイル写真は外れてしまうなあと遠慮。が、次第に自分も参加したい気持ちが高まり、かの地の街角タイルなどを投稿中です。

日本のタイルは、数年前まで全く見ていなかったので新鮮です。レトロで(古いものなので当たり前ですが)温かみがあって誠実な感じがします。グループに関しては、いろんな視点、視線で見ることの面白さを感じています。興味を持つポイントがそれぞれ違う。そのタイルが好きかどうかは別として、触発されます。

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(このトピックとは直接関係ありません/瀬戸にて)

コメント欄もあるので、投稿写真についてのやりとりも。つまり結果的に、「タイル話」をしていることになります。ずっと「タイル話」がしたかった。こういう形でできるようになるなんて。


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タイルが動く?


この間、感じていること=不思議さ、感慨、ちょっと微妙な気持ち、それでも前に行こうという思い。

・白石さんのアトリエ、日本のタイルのFBグループ。ネットを通じてタイルに関心のある人が集まっていること。タイルが好きという人が少なからずいること。とくに若い女性。

・個人的には、これまでできなかったタイル話ができそうという感慨。

・ただ、ちょっと微妙なのは、やはり私の好きなタイル、植物文様の圧倒的なモザイク、西アジア〜中央アジアの濃いタイル文化、12〜17世紀前半頃までのイキイキしたタイルは、それでもまだまだ、とってもニッチなのだと気づかざるを得ないこと。

・では、あくまでも好きなタイルだけを見ていくのか、と考える。それではいつまでも浅いタイルファンのままかもしれない。触発され、ときには反発もし、でも良さを認め合い、だから一層自分の好きなタイルが見えてくる、のかも。実際、この間、どんどんタイルが好きになっているのです。

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(ブハラのタイル)

<5月26日8時AM 追記> 「基本構想から約2年半、ようやくその姿を現します。27日、名古屋 でプレス発表。藤森照信流、土でできたモザイクミュージアム」だそうですよ!ついに!タイル、動いていますね☆

<5月28日 追記>  発表になりました。「多治見市モザイクタイルミュージアム」、2016年6月オープン予定!概要はこちら=「タイルのまち」象徴 多治見市がミュージアムの概要発表


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今回は、「神宮外苑と国立競技場〜解体中止と改修検討」「明治神宮」について、「自由学園明日館」「江戸東京たてもの館」「超絶技巧!明治工芸の粋(三井記念美術館)」「フランス印象派の陶磁器 1866-1886―ジャポニスムの成熟―(汐留ミュージアム)」なども、少し用意していました。回をあらためて、明治工芸、明治建築などについて書いてみたいと思います。今回はタイル特集でした!

<こちらは緊急性もあります。ご関心がありましたら読んでみてください!>
神宮外苑と国立競技場を未来へ手わたす会
新国立競技場の何が問題なのか──中沢新一氏と伊東豊雄氏が問題提起
by orientlibrary | 2014-05-25 23:13 | タイルのデザインと技法

”みかわち焼”、やわらかな白と淡い呉須、超絶技巧が織りなす優美な陶世界

前回更新から時間が経ちました。時間の早さについていけてません。。こんなブログですが、どうぞよろしくお願いします。

この間、いろいろ見たものはあるのですが、今回は記憶の新しいところで、「江戸の美、明治の技、現代の匠  長崎 みかわち焼展」(渋谷ヒカリエ8階にて/1月20日まで)について。ライブトーク「みかわち焼めぐり」(講師:荒川正明さん)のお話を軸に、展示会場を巡るイメージで、ご紹介したいと思います。

* みかわち焼 * 400年の歴史をもつみかわち焼。江戸時代には平戸藩の藩主のための器や献上品をつくる「御用窯」として、篤い保護のもと採算を度外視したような繊細なやきものを残しています。幕末から明治・大正・昭和初期には、ヨーロッパへの輸出のための洋食器や宮内庁御用達の食器など、一時代の工芸を象徴した存在でした。こうして培われた職人技は、いまでもDNAとなり受け継がれ、うつわづくりが続けられています。(チラシより)

*「 」内=トークより、荒川さん、みかわちの作家の方、コーディネーターの坂井さんの言葉/写真の説明及び情報部分は、会場の展示解説、冊子「みかわち焼の見どころ・勘どころ」、チラシ等を基にしています。

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(会場光景。江戸〜幕末、明治、大正、昭和初期のものから現代の作品まで貴重な名品揃い!「美術館や博物館に展示されているほどの逸品が、オープンな場で見られる。あり得ない。照明もいいし見やすい」と荒川さん。ガラスケースの中のものは撮影も可で嬉しい。下段左はライブトークの様子。熱心なオーディエンスがたくさん。作品を見ながらお話を聞けるので臨場感がありました)

16世紀末から現代に続くみかわち焼ですが、その歴史や功績がきちんと認識されたのは、この10年くらいのことなのだそうです。

「みかわち焼は、江戸時代、幕末明治は細工物で有名だった。平成10年以降の研究でわかってきたのは、これまで柿右衛門と言われてきたものの中にみかわち焼が入っていたこと。平戸藩三川内皿山代官所跡の発掘調査では柿右衛門と同じようなもの、余白を持ったものが出てきた。浅草の松浦家の屋敷の調査でも、ものすごくきれいな元禄前後の染付がたくさん出てきた。これまで肥前や有田として報告されていたものも、再度見直したらみかわちということが多い。みかわちを見逃していた。研究者の間で、やっとみかわちの本当に歴史が認識されてきた」

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(染付草花文輪花皿/江戸時代/高級食器としてつくられたものと考えられ、皿の中央〜見込み〜部分は無地に二重の線、その外側にはボカシ濃みによって地面と大胡石と草花が描かれている)

「有田では18世紀には量産が始まり雑器生産に向かうが、みかわちはこの(高い)レベルを維持し、18世紀になっても16世紀と同じ仕事している。余白があり繊細なタッチで秋草などを描いている。鍋島の藩窯と同じような松浦藩の藩窯。江戸中期にもレベルの高い仕事、いい仕事をしている」

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(白磁水差/江戸時代後期/蓋の表面には、原料に含まれる鉄分がホツとなって現れている。本来、磁器製品としては白い肌を損なうマイナス点になるが、長石分が多かったと推されるマット調の釉と調和し、むしろやわらかい印象を生み出した)

「白磁水差しは、やややわらかい感じ。なにかあか抜けた白磁の美しさ、破綻のない造形の美しさ。ヨーロッパでは磁器の時代、白磁が流行した時代。そういう世界の流れにしっかり沿いながら磁器の仕事を九州でやっていた。海外に近い、世界に開かれた造形感覚がここにあったと感じる。日本の磁器の中では異質な世界、真行草の真につながる造形を感じる」

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(献上手唐子絵銘々皿/江戸時代末期/器の中央部分に二重線が引かれたものを「献上手」と呼ぶ。七人唐子、松、蝶など)

「唐子絵銘々皿は典型的な唐子。18世紀の後半から作られた有田より先んじて中国モチーフを取り込んだ」

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(染付雀竹文大皿/江戸時代/雀の躍動感と中央部の二重線、内部の大胆な余白で見る人にサイズ以上に大きな印象を与える)

「雀竹皿。周辺のものを自然に使う。色合いも自然。土を作るにしても今は精製する。鉄分を抜くので白い。これを抜ききらない侘び寂び的なものは当時の特徴。みかわちでは、天草の土を先端的に取り込んできたが、地元の土を混ぜながら発展した。地元の土を入れることで細工しやすくなった」

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(上2点は大正時代のもの/染付透彫香炉〜透し彫りは器面の一部をくり抜いて模様を施す/染付菊文献上徳利〜淡い呉須の色や底に近い部分の唐草の線がみかわち焼ならではのもの)

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(上部に龍の細工、染付で唐獅子の絵、下部に剣先模様)

「(↑上写真)、繊細な技法を駆使した細工物。龍に唐獅子の絵。有名な狩野永徳の獅子には渦巻きがあり大きな気を宿している感じがするが、この獅子にはものすごい細かい渦巻きが全体にある。勢いがあり素晴らしい」

「狩野派の絵師がみかわちに来た。絵師が原画を描き、やきもの職人が描写していく。日本画をベースにしている。染付の濃みでぼかしていく。筆跡がでなくて日本画のようなぼかしがでる。その効果がこの染付の特徴」

「文様は剣先が多い。武士の心。失敗を恐れず挑戦する。変なものを世の中に出さない(心意気がある)」

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(左:白磁毛彫虎置物、江戸時代後期、髭や眉毛も彫られているのが釉のたまりによってわかるが、口の中の細かい歯や瞳には釉をかけないことでリアルな表情になっている/右:菊彫文鎮、明治15年、菊花飾細工、一枚ずつ切り起こして生まれる花びら)

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(染付秋草文椀/江戸時代/江戸時代末期以降のみかわち焼は「薄づくり」が特徴のひとつになるが、その100年ほど前に、この当時としては薄く精巧につくられた高級食器。淡い呉須で、野菊などの秋草が繊細に描かれている)

「江戸中期の蓋椀。有田や波佐見がくらわんか茶碗のようなものを作っている時に、みかわちでは量産だと思うが緻密な絵付けをしている。余白を持っており、いい仕事。18世紀にこういうものがあったことに驚く」

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(染付鯉陽刻花瓶/江戸時代後期〜末期/藍色の鯉に重なるように動いた白い鯉は、「置き上げ」の技法で描かれている。器本体と同じ土を水に溶いたものを何度も塗り重ねるようにして描き立体感をつくる)

「鯉が二匹。白い泥を塗って盛り上げる置き上げという技法。浮世絵でも広重に盛り上げる表現がある。時代の流行を取入れ、やきもので重要な部分を浮き上げたのだろうか。魅力がある」

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(染付菊文角形水滴/明治時代初期/一枚一枚の細かい筋に至るまで描き、曲線が強調された花びらは、菊の流麗な魅力を引き出す。細密な描写とみかわち焼特有のボカシ濃みによって、絵画的な立体感をつくり出した)

「水滴。文房具、李朝が有名。菊水の意匠、永遠の命、吉祥。みかわちには菊の模様が多い」

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(中里陽山/昭和時代に名を馳せた陶工。卓越した絵付け技術。形のバランスやその薄さはみかわち焼の伝統。近代のみかわち焼の技術を体現/左はデミタスカップ、右は菊紋章入椀皿。薄づくりの皇室用食器としてつくられた。江戸時代以来のみかわち焼の特徴である淡い呉須が使われており繊細)

「品がいい。白磁の薄さは透けて向うが見えるくらいだ。ハレというか日常でも使いたい。欲しい」

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(現代の2点/虫籠鈴虫、嘉久房窯/白龍、嘉久房窯)

会場で頂いた『みかわち焼 散策ガイド 見方、買い方、歩き方』という冊子が充実!染付、唐子、透かし彫り、手捻り、菊花飾細工、置き上げ、薄づくりといった技法から、歴史、やきもの用語集、古写真、散策マップまで。ハンディサイズのこの冊子を持って歩けば、初めてでもスムーズに窯巡りができそうです。

昨年1月に引き続いての展覧会拝見。みかわち焼の端正・優美で品のいい佇まい、超絶技法を駆使した細密な表現、やわらかい白地、淡い青、薄づくり。美しいものに出会う、触れる幸せに存分に浸ることができました。作家の皆様、協同組合の皆様、開催準備をしてくださった皆様にお礼申し上げます。ありがとうございました。


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次回は、こちらも陶酔の陶芸美、板谷波山(現在、出光美術館で「板谷波山の夢みたもの」開催中)について、日本の陶芸超ビギナーが素人目線で、素直に感じたことを書いてみたいと思っています。

&青の釉薬づくりも最終局面に入ってきました(と期待!)。

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(透明釉レシピは決定。3種類比率替え呈色剤を加えた下段左の6つのピースの中から一つ、望みの青が輝きますように。青の名前は「リシタンブルー OLK(オルカ)」=orientlibraryとカドヤ先生のイニシャルで=にしようかなとかイメージ先行、どんどん広がってます。青ができたら、いろいろ作ってみたいな〜)
by orientlibrary | 2014-01-20 00:47 | 日本のタイル、やきもの

かたち・きもち、民藝のうつわ、カンタ刺し

瀬戸から戻って1週間。この1週間、たくさんの「民藝のうつわ」に触れました。民藝のうつわ自体は、これまで見ていなかったわけではありません。が、この1週間、若い人たちの「民藝のうつわのある暮らし、空間、食」とでもいうようなテイストに出会いました。出会ったというよりも、興味が高まり、どうなっているのかな、どうしてなのかなと、どんどん出かけて行ったのです。

先週日曜日、瀬戸本業窯、民藝とのつながりの深い窯でギャラリーや資料館を見せていただきました。三彩、黄瀬戸、緑釉など、とても魅力的で使いやすそう。時間がなく、大急ぎで分けてもらった皿、やさしい色合いで軽くてサイズも程よくて使いやすい。手抜き料理も美味しく感じられて、とても満足です。

このようなうつわは、どこで買えるものなのか、ネットを見てみると、カジュアルなテイストの民藝の器や雑貨を販売するサイト、実店舗、けっこうありました。30代くらいの人がやっているみたい。え、そうなんだ、、民藝って今こうなってるんだ、人気の窯元があり、セレクトされ、程よい品揃えと価格で販売されているんだ、、この時点で、かなりの驚きがありました。

 注釈です。「民藝」と「民芸」。その違いはよくわかりません。後述の『日々、うつわ』によると、「柳らが「民藝」の言葉を使い始めた当時は、「藝」には「草木を植えること、修練によって得た技能」という意味があり、「草を刈る。香草の名」を意味する「芸」とはまったく異なるものであった。現在の使い分けとしては、元来の民藝の考えを踏襲するものは「民藝」、郷土色の強いもの、和風のものなどは「民芸」があてはめられることが多いようだ」とありました。わかりやすい説明です。今回の内容は、展覧会名や書籍での使用が「民藝」。個人的には旧漢字はあまり使いません。が、本文でだけ民芸と書くのもごちゃごちゃしてしまうので、民藝で統一しようと思います。今後はまた考えます)

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「日々、うつわ展 〜民藝のうつわのある、おいしい日常〜」

たまたま、東京ジャーミー(代々木上原)のすぐ近くの「CASE gallery」で、「日々、うつわ展〜民藝のうつわのある、おいしい日常〜」という展示が開催中であることを知りました。またしても土砂降りの雨でしたが、行ってきました。びっくりでした。

白い壁のシンプルな空間、木の展示台に各地のうつわ、壁にそのうつわに料理を盛った写真パネル。ギャラリーの方(坂元さん)とギャラリーが醸し出す、ナチュラルでデザイン感の高い雰囲気、なんだか「北欧」を感じていましたが、やはりというか、北欧と縁のあるスペースなのだそうです。厚かましくいろいろ聞く私に、坂元さんが親切に、そして端的に答えてくださってありがたかった。いまどきの「民藝のうつわ」、その感触をつかむことができました。

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(沖縄読谷北窯、小鹿田、小石原、石見など全国14の産地のうつわ/各産地のうつわのかたちや色にあった料理の写真と説明/お気に入りの小石原焼・飛び鉋皿を持つ坂元さん)

民藝のうつわが最近とみに好きになったという坂元さん、使いやすくて価格も手頃なのがよい、と。こういうセンスのいい人たちが手仕事のやきものを取り入れるようになる。うれしいですね。

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(やっぱり魅力的、一堂に揃ったうつわたち。北欧と和は重なり合うものがありますね。4枚のなかでひとつ、北欧の器集合写真があります。どれでしょうか?!)

書籍『日々、うつわ〜民藝のうつわのある、おいしい日常〜』(萩原健太郎著/誠文堂新光社)。9月末の発行。著者は1972年生まれ。簡潔な温かい文章で伝えたいことがよくわかります。

「全国の民窯をめぐるうちに、日本にはこれほど多くのうつわがあること、それぞれに地域に根ざした伝統や技術があることを知る。しかし、それらは価格も手頃なのにもかかわらず、日常のなかで見かける機会は多くない。(中略) うつわそのものを紹介するのではなく、うつわは使ってこそ輝きを放つことを証明したかった。料理のチカラを借りて、うつわの素晴らしさを伝えたいと思った」

料理がまた、いい。見かけだけのこじゃれたレシピじゃない、骨太な料理。筑前煮、かぼちゃのスープ、たまごサンド、ハンバーグ、親子どんぶりなど。これがおいしそうだし、器と合ってる。うつわが欲しくなる。これこそ、うつわと料理のしあわせなレシピ。

展覧会はすでに終了していますが、会期中にはトークイベントも。「民藝から北欧のデザインまで」「山陰のうつわ、料理、旅について」「調理から盛りつけまでの実演」も。「いま」を感じます。

このようなうつわを扱っている店がありますよ。え、それはどちらですか!?ということで、CASE galleryで教えてもらった「SML」(エスエムエル、ショップ、恵比寿)と「SMg」(エスエムジー、展示主体、目黒)に向かいます。

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「最高に美しいうつわ tableware as life」

目黒川沿いの道から少し入ったところにあるSMg。「因州 中井窯の仕事」展を開催中でした。黒いジャケットの眼鏡男子がじっくりセレクト中で、6点ほどまとめ買い。

因州中井窯は、緑、黒、白の染め分けが特徴。前述の『日々、うつわ』によると、「柳親子に愛された山陰を代表するモダン民藝」。和の力強さと感性が伝わります。インパクトがありますね。

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(SMg。「因州 中井窯の仕事」展。スッキリした店内、ユーズドの木の什器が陶器の味わいを引き立てています)

こちらでSML監修の書籍、『最高に美しいうつわ』(エクスナレッジ/2013年4月発行)を購入。安西水丸氏の推選の言葉=「うつわ、陶芸家、店、すべてがセンス良くまとまったこんな本ができたことがうれしい」。同感。作家、うつわを扱う店舗やカフェのオーナーなど、様々な角度から、うつわ、思い、伝統を受け継いできた土地、風土、人々を見つめます。「今」が伝わる。写真がとてもいい。深い魅力を引き出しています。

徒歩でSMLへ。恵比寿らしいかわいいお店ですが、小鹿田焼、砥部焼など、上の2冊の本に登場する民藝のうつわたちが並んでいます。値段も数千円台が多い。民藝の店というと、敷居が高く独特の雰囲気、知識がないと恥ずかしいというイメージもありましたが、今の民藝のお店は気さくでカジュアル。暮らしのなかで使って欲しいという思いが伝わります。

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(SML。手作り風の店内。人気は「やちむん」や「スリップウエア」。スリップウエアはファンが増えていてイベントなどもあるそうです)

SML、SMg、ともにこの数年内のオープン。話を聞いたスタッフの方々も、出会ったのはこの数年内とのお話。書籍も今年2冊。それ以前には、『Discover Japan TRAVEL 民藝のうつわをめぐる旅』(2010年)、『民藝の教科書1 うつわ』(2012年)も。今回は、「行ってきました!」だけで、とてもまとめられません。いつかまた書きたいと思います。

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(左2点:瀬戸本業窯にて。上はクバの草ビロードと黄瀬戸の経年変化/右3点:本文でご紹介した書籍2冊。料理が美味しそう。写真もいい)

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カンタ、ラリーキルト

うつわから刺繍に話題は飛びます。民藝のうつわで感じた、伝統、継承、時代性、実用など。どの手工芸でも同じ課題や取組みや試みがあるように思います。

ブログでも何度かご紹介している刺繍家の望月真理さんの展覧会。真理さんは、インド東部のウエストベンガル地方などで盛んなカンタ(古い布のサリーをはぎあわせ刺し子を施し丈夫で美しい布に仕上げる)を現地で知り、調査と研究を続けています。「この文化の途絶えるのを惜しみ、シルクロードの終点である日本で受け継いでいきたいと願っております」。

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(ベンガルのカンタ)

真理さんは、カンタを日本人の眼と手と心で刺します。細密な手仕事、遊び心が魅力。ベンガルの大胆で明るい構図や色使いから学び、真理さんのカンタを、87歳の今も、日々、時間を惜しんで作り続けています。

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(真理さんのカンタ)
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(真理さんのカンタ)

そのカンタ、この数年、「ラリーキルト」として、とりわけクオリティの高い手仕事のストールなどが紹介され、人気となっています。先日、横浜「エスニカ」の「染まるインディア」という展示とイベントで、コカリさんの展示を拝見。いつもながらセンスいい。

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(ラリーキルトのストール。インドの手仕事はすごい)

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(展示とイベント「染まるインディア」@エスニカ。陽射しが差し込む居心地良い展示空間)

ラリーキルト、初めて見たときから、どんどん洗練度が高まっている気がします。カンタ、ラリーキルト、時代や人々の思いのなかで、どのように変わらない芯の部分と変化する姿を見せてくれるでしょうか。

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最後に、今日、たまたま発見!北欧の雑貨のオンラインショップ(北欧、暮らしの道具店)で、九谷の器の販売を開始と。「石川県の九谷焼の器の販売を
開始しました。当店でご紹介させていただく、
初めての和食器となります。『北欧の器』と『日本の器』。このふたつが絶妙にマッチしてくれることは、
これまでの特集やスタイリング写真などで、
何度となくご提案させていただきました。様々なものを組み合わせ編集する
楽しさをご提案できたらという想いで、
初めて和食器を仲間入りさせることにしました」だそうです。

北欧と和は重なり合うものが多い。まだまだいろんな動きがありそうです。

相変わらず長文ブログです。今の「民藝のうつわ」に興味を持って1週間、まとまりませんが、その時しか書けないものがあると思い、書いてみました。ふぅ〜〜(汗)
by orientlibrary | 2013-10-30 00:17 | 日本のタイル、やきもの

秋の瀬戸で本業タイルと出会う

瀬戸への小さな旅。
日本のやきもの産地を少しずつでも見て歩きたい。そして最近見始めた日本のタイル。瀬戸本業タイルは、やはりもう少し知りたい。「河井寛次郎の陶芸」展(瀬戸市美術館)も開催中。行ける時にはどんどん行こう!土砂降りに見舞われましたが、土味はたっぷり。今回は写真中心に、ざくっとご紹介。だんだん調べていきたいと思います。

雨自体は、けっして嫌いじゃありません。雨の日に本を読むのが好き。小雨なら散歩も好き。雨上がりの植物や景色も瑞々しくて好き。でも朝から丸一日土砂降りの散策、スニーカーはずぶ濡れ、地図はヨレヨレで見えなくなるし、寒い。

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ぼやきたくもなるけれど、やきものは雨の中で、ますますツヤツヤときれいなんですよね。いいなあ。見とれます。「窯垣の小径」はやきもの散歩道。塀や壁に埋め込まれた古い窯道具などが様々な模様を描きます。使い込まれたものは美しい。味わいがある。四季それぞれいいと思いますが、落葉の秋は色が合います。常滑の土管を積んだ散策路もいいし、土と土のものは相性がいい。茶系、緑系は落ち着きます。

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窯垣の小径の道沿いにある「窯垣の小径ギャラリー」。雨の中、行く場所もなく途方にくれていたら、ギャラリーの方が小走りで来て早めに館を開けてくださいました。助かった〜。ギャラリーは、江戸時代の旧窯元のお屋敷を利用。地元作家の作品を展示販売しています。スタッフの皆さん(出展作家さん)が親切で、ほっこり和みます。

ギャラリーから少し歩いたところにあるのが「窯垣の小径資料館」。「建物はもと「本業焼」の窯元であった寺田邸を、そのままいかす形で改修したもの」だそうです。こちらに本業タイルが20点ほど展示されていました。資料館パンフレットより、「本業タイル」についての説明を引用させて頂きます。

——— 明治時代の日本における洋風建築の流行と共に「敷瓦」を前身とする「本業タイル」がさかんに使われるようになりました。これは「転写」技術の向上により、同一図柄で量産されたわが国の近代タイルの第1号ともいうべきものでした。本業タイルは、本業(陶器)の伝統的な調合による土を使い、土の表面の粗さを覆うために磁器の土を使って表面が化粧してあり、銅板転写による図柄の美しさとも相まって陶器でありながらあたかも磁器のように繊細で硬質感と近代感を兼ね備えたものとなっています。 ———

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(写真は青のものばかりですが、茶系緑系もあります。本物をこんなにたくさん見るのは初めて。左右対象、幾何学と植物文様を合わせたもの等、このデザインの出自がピンと来ませんでしたが、ヴィクトリアンタイルの影響だと気づきました。けれども日本らしさが滲み出したようなものもあり、その混合が興味深いです)

資料館では、本業タイルが貼られた浴室及び便所も当時のままの姿で紹介。一枚で見るタイルとはまた違った印象です。当時はとてもモダンな空間だったのでしょうね。

時間は前後しますが、「瀬戸蔵ミュージアム」の展示タイルはこちら。

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(瀬戸蔵ミュージアム。タイル生産の道具展示。代表的なデザインのパネル等)

名鉄尾張瀬戸駅から数分の複合施設「瀬戸蔵」(店舗、飲食、ホール等)、その2階と3階が瀬戸蔵ミュージアムです。吹抜けになっていて広い。陶房の再現ややきものの歴史等、日本のやきものビギナーの私にはとても有益で楽しいミュージアム。熱中しました。

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(瀬戸蔵ミュージアム。モロ(陶房)の再現。すごい!)

モロ(陶房)の再現がすごい。地元の人には見慣れた光景かもしれないけれど、小物など細部まで凝った展示は感動ものでした。かつ、陶器生産の行程や設備、道具を知ることができる。やはり、実物があるとわかりやすいです。一つのモーターを動力にして、ロクロなどいくつもの機械が動く。モーターという言葉の当時の輝きに思いを馳せました。

生活道具展示室では生産工程が具体的に見えてきて、とても勉強になりました。ビデオも全部見ました。3階の「瀬戸3万年の歴史」もわかりやすい。時系列、品目別に実物をひたすら見せる。アートな展示方法もあるでしょうけれど、ここではこのやり方がわかりやすいのでは。私は好みでした。

製品を出荷〜輸出する光景の再現も興味深かった。陶器の梱包ではエピソードもある私、箱詰めの輸出用陶器に見入りました。もっと詰め物はするだろうけど、基本、こんな感じだったの!?割れないのかな。紙と藁みたいなものでも、とにかくやきものが動かなければいい。ウズベキスタンのウスマノフ工房のパーフェクトパッキングを思い出す。工夫と技。最近は大量のエアパッキンに頼り過ぎなのかもしれない。

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(瀬戸蔵ミュージアム。製品を出荷、輸出する光景の再現。右下2点は1970年代の輸出用との記載。「Occupied Japan」(連合国軍占領下の日本、1947-52年の5年間に日本で生産し輸出したもの)と図柄が同じなことに驚いた。でもどこかおとなしい。いつか両者の比較写真をアップしたいと思います)

さて、また土砂降りの窯垣の小径に戻ります。迷いながらも、ようやく登り窯に辿り着きました。が、土砂降りの中を歩いていたのは私だけではありませんでした。写真愛好家と思われる団体ご一行が、雨具の中にカメラを入れながら熱心に撮影旅。登り窯も、妙に満員な感じになってしまいました。寒さもあって、もう帰ろうかな、、と弱気になったところに、なぜかカフェらしきものを発見。登り窯の上部の横にカフェ?その名も「窯横カフェ」。入ってみます。

広過ぎず狭過ぎず、白い壁に木の床。ジャズっぽい音。雑誌やグリーン。若いお二人がオーナーのご様子。とにかくまずコーヒーを頂きます。やがて石油ストーブも登場し、体も暖まってきました。お店の方と少しおしゃべり。絵を描いている方々、瀬戸に移住し、セルフビルドでカフェ作り。今年2月のオープンだとか。感じいいカフェです。器もいいな。目の前には薪ストーブも。気になるのはその下に敷かれたタイルなんですよね。

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相当好きなタイル。青の色味がいいな。ラスティックな質感も。このタイル、どうしたんですか?すると、登り窯の窯(瀬戸本業窯)の八代目に作ってもらった、と。注文で作ってもらえるんですか?さあ、どうかなあ。もうすぐ八代目が用事で来るので話してみたら、ということでiPadしながら八代目を待ちます。

やってきた八代目、カジュアルなファッションが似合ってます。資料館やギャラリーを見せて頂けることになり、ラッキー!資料館には、本業タイルが。「うちで作ってきたものです」。え〜、そうなの!?こちらだったんですか!

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(ペルシアにも輸出していたというタイル/六代目水野半次郎氏と民藝運動の方々/八代目/陶器の染付魚藻文。陶器の染付は珍しい。でもウズベキスタンやイラン、トルコは基本的に磁器ではないブルー&ホワイトなので私にとっては親しみある質感と化粧土の白/ギャラリーも見応えあり。こういうのが見たかった)

聞けば、民藝との関わりのある窯元。六代目が柳宗悦さん等と交流があり、昭和30〜40年代の大量生産の時代も手仕事を大事にしてきたのだそうです。黄瀬戸(これがまた、最近大好きなんですよ)と緑釉が特徴。いい色です。

瀬戸に行くからには本業タイルに触れたいと思っていた。でも、どうやってそこに辿り着けるのかわからなかった、というか、詳細を調べなかった。最初はあまり調べ込まずに先入観を持たずに行き、とにかく歩いて手がかりを探す。いつもそんなふうにしています。今回は土砂降りのおかげでカフェに入り、いつもなら短時間で出て歩き回るのに雨と寒さで出られず、そのおかげでタイルを見つけ、たまたまタイルを作った八代目が用事でカフェに。日本のタイルの現場と会えました。感謝。

河井寛次郎の陶芸−科学者の眼と詩人の心−」展も良かった。鍛錬の賜物である圧倒的な技術が支える自由な個性の表現が、やわらかいあたたかい造形と色に結晶している。やきものは人柄なのかと感じました。釉薬の研究で定評があった寛次郎さんが最後に作り出した「碧釉」。深くどこまでも引き込まれる、かつ屹立するような、魅惑の青。最高でした。

最後に瀬戸で出会った青。

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(窯垣の小径ギャラリーの庭2点/染付壷。瀬戸染付の特徴は没骨(もっこつ)技法。主に付立筆を用いて一気に描く/本業タイル)

今回はひとまず、ここまでに。今後も、産地シリーズ、「タイル人」も書いていきたいと思います。

* 「窯横カフェ」のfacebook、発見しました。ごはんやお菓子がおいしそうです!
* たくさんの「FBいいね!」ありがとうございました☆
by orientlibrary | 2013-10-22 01:04 | 日本のタイル、やきもの

ラスター彩、やきもの嫡伝、旅するポット、アジア染織、日本タイル

ラスター彩イラン里帰り展

大型台風ということで、外出を控えた方がいいのか、出ても大丈夫なのか、迷いますね。敬老の日前後は台風の確率が高い気がします。雨上がりを見計らい、やはり見たい!と出かけてきました。

まず、「七代 加藤幸兵衛茶陶展 <併催> ラスター彩イラン里帰り展」(新宿京王百貨店・京王ギャラリー/9月18日まで。最終日16時閉場)。(ラスター彩について、さらに加藤幸兵衛さんのラスター彩製作については、「ラスター彩と日本人-現代によみがえる虹色の輝き-1」「同-2」(iran Japanese Radio)に、わかりやすくまとめられています。イランでの展覧会の様子も垣間みられます。関心のある方は参照されることをおすすめします)

京王ギャラリー、ラスター彩も茶陶展も、存分に好きな陶器に浸れて幸せな時間でした。もちろん、例えば古民家や博物館の凝った展示で見られたらすごいと思います。でも都心で交通至便の百貨店が、これだけ充実の展示を企画して、誰にでも見られるようにしてくださったこと(無料)、その姿勢がうれしいです。

ペルシア陶器だけでなく、イスラームの文化や芸術は、一部博物館で触れることができますが、より多くの人の目に触れる機会は多くないように思います。また、百貨店ではどうしても「シルクロード」の冠がつきがちです。今回は、「イラン」がタイトルに入っており、イラン国立博物館出品作品40点が見られるのです。イスラーム陶器に親しみを感じている私には、そのこと自体が喜びでした。

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(上段左:左=展覧会図録、右=イランでの展覧会カタログ〔*次からの写真5点はこちらから引用〕/上段中と右:イラン人出展作家作品/下段左:ラスター彩壷、イラン・グルガン、9〜10世紀/下段中:ラスター彩十字タイル、タフテソレイマーン、13世紀/下段右:ラスター彩星形タイル、イラン・グルガン、14世紀/金色、玉虫色のなかの青が熱狂的に好きです)

ラスター彩展示の核は、加藤卓男氏と七代幸兵衛氏の作品展示。緻密、繊細、美しい光り、ペルシアのモチーフと和の感性の融合。あらためて圧巻と感じました。ペルシアの古陶も少しですがありました。鮮やかなコバルト青と羊の図柄の壷など、本当にできるものなら手に入れたい、、美しいものを手に入れるために権力を行使した王様の気持ちが理解できました。。

イランの現代作家によるラスター彩は、イラン陶芸家のfacebookページに今年春頃から随時アップされていたので、見ていました。オブジェが多く、幽玄な美意識は伝わりますが、細密さは追求されていない印象。ラスター彩ならではの発色を含め、イランでの今後の展開にも興味があります。

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美山三代展 “嫡伝展”

瀬戸・美山陶房、寺田美山氏、寺田康雄氏、寺田鉄平氏、三代の陶芸家による「美山三代展 “嫡伝展”」(アートスペース煌翔〜東京・阿佐ヶ谷〜にて9月21日まで。休み9月17日)。

「瀬戸の窯元では代々嫡子に築窯技法、釉薬調合等、製陶技術を秘伝として伝えてきました(嫡伝)」。そして「代々伝えられる技法だけでなかう個の制作意欲」も併せて見て欲しいとの趣旨の展覧会。現代はもちろん職業選択は自由。そうしたなかでも代々続くこと、その強さ、確かさ、律動を感じました。

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(三代それぞれの個性と多彩な作風/下段:織部三代三様。左:美山氏、中:康雄氏、右:鉄平氏)

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Asian textiles

Asian textiles <アジアの染織>」(ギャラリー囲織庵/世田谷区久我山/~17日まで。最終日17時まで)。トライバルラグを扱うTRIBEさんの展示会。ラグも質量ともにすごいですが、いつもいい布、持ってますね〜。グジャラートの「パトラ」、クメールの「ピダン」、ベンガルの「カンタ」やジャワ島の「カイン=更紗」、スマトラの霊船布「タンパン」、バリ島の儀礼布「ブバリ」など、アジア各地の染織品が見られます(&購入できます)。

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(濃い展示。逸品が目の前に。下段のお菓子はお客さんの差入れ。ココナッツパウダーを練乳で練り上げプルーンに挟んだスイーツ。やさしい甘さでした)

ギャラリー囲織庵、住宅地の中、竹や様々な緑に囲まれた趣きある民家ギャラリー。台風のニュースの中、うかがった側にはラッキーな静けさで、すっかり長居しておしゃべりを楽しませていただきました。素敵なオーナーとトライブさんに感謝。

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Occupied Japan

こちらは雨の連休ではなく、ちょっと前なのですが、「Occupied Japan」(連合国軍占領下の日本、1947-52年の5年間に日本から輸出したもの)の陶磁器と思われるものを、偶然拝見できました。以前「日本ーアフガニスタンークエッタ、旅した陶器たち」でご紹介したものと同じタイプのティーポットのようです。

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(上段左:品の良い絵付け。趣きあるポットで惹かれました/葡萄モチーフは輸出先の名産を意識したものでしょうか)

全体にザクッとしてかわいらしく、欲しかったけど、、値段が自分にはやや高かった(涙)。でもパキスタンから持ってくる手間や現地価格から考えると、妥当な価格でしょう。陶器を運ぶって、本当に大変ですから(しみじみ)。でも、じつは、、青地に花模様のティーポット、大事に飾っているものがあります。アフガニスタンを愛するcharsuqさんからいただいたもの。旅で運んだ大事な陶器、charsuqさん、本当にありがとうございます!!

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日本のタイル

8月の多治見・笠原旅で、その魅力に触れた「日本のタイル」、まだ資料などを読めていません。多治見旅では、タイル熱中人との出会いはもちろん、岐阜県現代陶芸美術館で「日根野作三と薫陶をうけた7人」を見て、日根野作三さんのことをもっと知りたくなって少し調べ始めたり、伊藤慶二さんも素晴らしく、、ますます興味やテーマの拡散傾向が強まっているのに、動きが遅くて、はかどりません。少しずつ進みます、、、

そう、日本のタイル。まず少しでも画像アップします。好きなタイルから!!青系ばかりなのは青好きゆえ、ご容赦を。とくに矢印模様のタイル、欲しかったですね〜、、、「手描150角 昭和45年頃製作 有限会社桝文製陶所」。ほんとステキです。フレームに入れて飾りたいです。

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(多治見市笠原の「モザイク浪漫館」所蔵品)

日本のタイル、外壁内壁に使われているものが多いですね。

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(多治見市、タイルの景/上段左と中:銀行の壁面で発見!色や形状が多彩。日本の四季を表すパターンが好まれるのでしょうか/上段右と下段中と右:多治見市の長江陶業にて。いまの建物や暮らしの中でのタイルの魅力を追求し提案。青好きゆえに青や白ばかり撮っていますが、もちろん色は多彩/下段左:このタイルに6月の「インテリアライフスタイル」(ビッグサイト)で出会い、日本のタイルに興味が高まったのでした。日本にも味わいある青いタイルがあるんだ、と)

マリンタイル」、多治見の長江陶業さんでも話題にのぼっていました。そのときは「え、そんなのあるんですか」と、相当ボケていた私。私の好きなR不動産の「tool box」、タイルのコーナーでも紹介されていたのに(見ていたのに)、、、これまで日本のタイルをいかにちゃんと、真剣に見ていなかったかということですね。深みのある青、海のようです。多治見には、モザイクタイルの流し台を作っている工房も。お話聞きたい工房が増えてます!!遠くないうちにうかがえれば、、。皆様、どうぞよろしくお願いいたします!

* * * * *
ブログ更新が遅れがちです。自分のスピードが落ちているのでしょう。いかんいかんと思っているのですが、こんなペースになってしまいます。ゆっくりすぎるブログですが、どうぞまたお立ち寄りください。

今回もコラージュ写真とトピック、いろいろ用意しました(まず写真の準備から入るので)。が、話の流れがますますバラバラになってしまうので、風景の一枚を今回のラストにします。信州駒ヶ根、初秋の空気と光り苔です。

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(ヒカリゴケは光前寺(長野県駒ヶ根市)にて。ヒカリゴケ(wikipediaより)=ヒカリゴケは自力で発光しているのではなく、原糸体にレンズ状細胞が暗所に入ってくる僅かな光を反射することによる。またレンズ状細胞には葉緑体が多量にあるため反射光は金緑色(エメラルド色)になる)/日本の緑の幸。心洗われる)
by orientlibrary | 2013-09-16 16:38 | 日本のタイル、やきもの

日本のタイル〜文京の銭湯「おとめ湯」&笠原タイル予告少々

多治見・笠原 土の旅

土(つち)の東濃、多治見旅、今回もたくさんのやきものやタイルに触れ、ステキな方々と出会い、語り、歩き、吞みました。日本一暑い町の座を一時的に四万十に譲った多治見ではありますが、もちろん熱暑覚悟で参上。ところが連日の20℃台。涼しくて動きやすく、夜などは肌寒いくらいでした。

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(サワリのみですが、、多治見市陶磁器意匠研究所、幸兵衛窯、セラミックパークMINO)

でも、気持ちは熱波!会った方々の熱いこと。いやはや、ハンパないです。そして、なんと今回は、一時帰国中のイスタンブル在住絵付け作家チニチニさんと一緒だったんですよ〜!
「青の魅惑」展でお世話になったチニチニさん。あの時は重い壷や皿をかついでイズニックやキュタヘヤを歩きましたが、日本のタイルの町を一緒に歩ける日がくるなんて、、本当にうれしかったです。

ですが、多治見のお話は次回に。今はあまりに未消化。日本のタイルについては、まったくスタディしてこなかったので、呆然としています。が、これはおもしろくなりそう、という予感。日本のタイル、和なんですよ!色やかたちが。これから少しずつ書いていきますね。

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(笠原にある「モザイク浪漫館」。今回はチラリと姿のみ。これから少しずつ調べて書いていきます)

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今日の話題に行く前に、お知らせを二つ。多治見の宝石「幸兵衛窯」、今回もうかがって夏のしつらえを堪能しました。幸兵衛窯といえば「ラスター彩」で有名。7月にはテヘランで「里帰り展」も。そのラスター彩の展示と、数ヶ月密着というテレビ番組の放映です。やきもの好き、ペルシア陶器ファン、ラスター彩マニア、いえいえ、皆さん、この美しいやきもの&その製作の現場やテヘランでの模様を見ましょう!

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(左上:「七代加藤幸兵衛茶陶展」カタログ表紙/他の3点は幸兵衛窯展示品)

(1)「七代加藤幸兵衛茶陶展」<併催>「ラスター彩イラン里帰り展」
*日時:2013年9月12日(木)〜18日(水) 午前10時〜午後8時(最終日は午後4時まで)
*場所:京王百貨店新宿店 6階 京王ギャラリー
*内容:七代幸兵衛さんの新作茶陶百余点の展観。ラスター彩を中心としたペルシャ陶技をはじめ、今回は美濃桃山陶も。また京王ギャラリー前特設会場にて「ラスター彩イラン里帰り展」として、イラン国立博物館での出品作40点を帰国後初めて展示。

(2)「ラスター彩、故郷に還る 〜 陶芸家・七代 加藤幸兵衛の熱き思い」
*日時:2013年9月21日(土)16:00〜17:15(75分)
*放送局:テレビ東京系ネットワーク(全国放送/テレビ愛知開局30周年特別番組)

<当ブログ内 関連記事>
□ 眼福の幸兵衛窯。新緑眩しい美濃を訪ねて
□ セミラックパークMINOと美濃のやきもの


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おとめ湯 見学会

今回は、銭湯です。「おとめ湯 見学会」(主催: 文京建築会ユース)に行ってきました。本日36℃超え、あふれるほどの見学者、銭湯内はサウナ状態。すごい熱気でした。

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本年6月30日をもって惜しまれながらも60年の長い歴史に幕を閉じた文京区千石の ”おとめ湯” 。

都内で残り少ない中庭のある豪華な造りで、富士山の溶岩石に、大きな1本ツツジ、その下を泳ぐ立派な鯉は入浴しながらも覗き窓から見ることが出来ます。丁寧なコテ装飾のツルがいたる所を舞う様子はまるで極楽浄土。可愛らしいピンクの漆喰壁に唐破風、格天井…古典的な銭湯のモチーフは勿論、銭湯全盛の華やかさを残す特有の仕掛けにあふれた、極上の癒し空間です。

近日中に解体の可能性が極めて高いこの建物を、この度、おとめ湯さんのご理解の元、大変貴重な公開の機会を頂きました。この機会を通し、移築、部分的移設、保存をご検討頂ける方を急募しております。

徹底された清掃により、タイル絵やコテ絵などが美しい状態で保存されています。

この地域を育んだ銭湯文化、地域の遺産を実際にご覧になれる最初で最後の機会となります。是非ご覧下さい。(以上、「おとめ湯 見学会」案内より)
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銭湯への興味の元は、やはりタイル、そして鏝絵です。おとめ湯には中庭もあり、ちょっとしたリゾート!見学会では、建築家や学生でつくる文京建築会ユースの皆さんによる資料、図面も紹介されており、銭湯文化を垣間みることができました。資料の詳しさはさすが!以下、情報はユースさんの資料を引用、参照させて頂いています。

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(1954年創業。当時の銭湯経営者たちが華やかさを競った名残で正面入口の唐破風(からはふ)には千鳥が舞い、つがいの鶴が鏝絵で描かれています。文京区で営業する11の銭湯(おとめ湯廃業で現在は10)の冊子も。写真がきれい。ユースさんではネット販売も考えているそうです)

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(湯ぶねのタイル絵。章仙絵付けの号。創業時のまま。九谷のタイル製造者のもの。昭和30〜40年代には九谷焼タイルは高級ブランド。贅沢さを競う銭湯経営者がこぞって飾った。このような良好な状態で残っている章仙絵付けは珍しいそうです/中庭が見える洗い場/白のタイルも清潔感/昭和な感じの方形タイル。落着いた印象。体重計も)

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(銭湯の舞台裏、初めて見ました。薪をくべて炊く窯。大きな箱状のもののなかを通っていく。煙突までは距離がある。地下を煙が通っていく仕組み?右上は覗き穴。最後の客が出たのを確認するのだそうです/下は銭湯研究で有名な町田忍さんのトークの模様。下真ん中の黒いTシャツの方がおとめ湯オーナー。おとめ湯は徹底清掃で良好な状態を長く保ってきました/右下、「ゆすり、たかり、押売 御断り」。昭和)

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(煙突掃除の箒。さすがに長い/唐破風アップ。粋だ〜。/脱衣所も縁側があり、ゆったりした感じ。格調高い折上げ天井はあまりの暑さで写真撮り忘れ。残念!銭湯に折上げ格(ごう)天井はビックリ/うちわも昭和。全体に懐かしい。レトロ。こういう見学会に多くの人が集まる、そういう時代なのかな)

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(文京建築会ユース制作の冊子より。好みの3冊を購入/歌舞伎湯=このモザイクタイル、冊子で見ても質感の良さが伝わる。図柄はノイシュバンシュタイン城。浴槽の青いタイルも素敵/右下:白山浴場=これまたオシャレ!旅行好きのオーナー母がインドに行き帰国後に現地のイメージをスケッチして作成したというモザイク画。色合いも好き/真ん中=文京の銭湯のタイル。シック/右上:おとめ湯でポイントで使われていた花模様のタイルもかわいい)

寺社仏閣を模した「宮造り銭湯」は、東京特有の形式だそうです。最初の宮造り銭湯は大正12年、関東大震災のあと、焼け野原になった墨田区の土地で、銭湯建設の依頼を受けた宮大工の技術を持つ棟梁・津村享右氏が、多くのお客さんを呼ぶために今までにない銭湯を建ててみようと考えて作ったのが最初。たちまち評判となり、次々と同じ造りの銭湯ができていったのだそうです。

タイルと鏝絵を見に行ったのですが、銭湯そのものの魅力にも浸ることができました。いい汗でした。文京建築会ユースの皆様、ありがとうございました。千石(〜周辺)、かわいい雑貨店、不思議なカフェもあり、楽しかったです。
by orientlibrary | 2013-09-01 22:37 | 日本のタイル、やきもの

絨毯織り体験、生命の樹、発色銅器、太陽、農パワー!

またまた時間が経ってしまいました。訪問してくださった皆さん、ごめんなさい。こんなペースのブログですが、どうぞよろしくお願いします。今回は前回の「6」に続き「8」、、のつもりでしたが、その前に、トピック的なものを一気にまとめようと思います。話がいろいろ飛びますが、おつきあいくださいね。

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ミニ絨緞織り体験

まずは、絨緞織り体験のこと。以前、「ミニ絨緞作り」の様子をご紹介したことがあります。織り機はザルそばの容器の枠!しかも100円ショップのもの。手仕事クイーンTさんの工夫魂が冴えまくり!が、そのときは見ているだけ。今回ひょんなことから開催となった体験会、私も挑戦してみました。

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(先生はクイーンTさん。上段左がザルそば容器時代、真ん中が進化した新型織り機。Tさん手作り!最適なサイズを工夫し木材をカットして金具などで組み立てています。ホントにすごい人です。右下が3人の完成形、コースターサイズです。iPhone置きにもピッタリ!サソリ文様2名、ニワトリ文様1名)

先生が縦糸を張り下部のキリム織りまで準備してくださるという恵まれた環境。生徒はまず毛糸を選びます。深く考えず即決で選んだ縁の色=茶色、地色=白、文様の色=青。結び方はトルコ結び(対称結び)。必死で一段結び終え、横糸を通して固定。この程合いが難しい。固すぎてもダメ、緩すぎてもダメ。なんと数センチ編み上がるのにに4〜5時間かかりました、、、

さらに驚愕したのは、私が図面(マス目)を読めないということでした。というより、私以外の人が何の問題もなく読めるということを人生で初めて知りました。めげてもしょうがないので、マス目の色を文字情報に直しノートに記載。これでスピードアップ。最後にキリム部分を作り、縦糸を結んで終了。時間はなんと、、7時間半ほどもかかっていました。その間、生徒3名、お茶やおやつもそこそこにトイレも行かず。この熱中は自分でも意外。

生徒のうち一人は男子。日本初の「絨緞男子」誕生です。「嫌いじゃないです」って、上手いよ、、(画像右下の真ん中緑色の作品)。先生も感心。絨毯織りが趣味とかになったら、かなりすごいよ、S君!オリエントは左の白地のもの。これって染付、、無意識に色を選んでこうなるって、、頭が青。

バローチ絨緞女王mzさん作品は、バローチ愛の鳥文様がイキイキ!mzさんのブログにも「絨毯織りのおけいこ」として画像とともに、プロセスや織り方が詳しく紹介されています。T先生、同期の?皆さん、ありがとうございました☆

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イラン 生命の樹

絨緞の故郷イラン。イランのテキスタイル、ファッション、カリグラフィー等の展示がありました。「sarv サルブ 生命の樹」(青山グランピエにて/展示は6月30日で終了)。

「イランで活躍するクリエイターが作り出す、生命の樹や庭園をテーマにした作品は、古代アート先進国ペルシアへのオマージュ。神戸ファッションミュージアムと、京都グランピエ丁字屋に続く三度めの展示会です」

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(更紗、カリグラフィーなど。稠密!カリグラフィーにも感嘆〜実物は数m縦横の大きな作品です。服は写真がないんですが、更紗ロング丈や長い袖口が優美でした)

デザイナーであり、テヘラン芸術大学テキスタイル科で教えるモジュガンさんとも、いろんなお話ができました。イランの伝統工芸やアートへの敬意、自らのミッションとテーマへの邁進。包容力のある人柄とともに、その熱情が多くの人を巻込み、風を生み出しているのだなと感じました。

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(グランピエにて。チャイグラスと丸いカーブの小皿、インド更紗のコースターが素敵でハマった。同行の数人も、それぞれたくさんのコースターをゲット。小さいものってかわいくて数が欲しくなる、、上段右2点はイランの布だったと思う)

イランとインドがコラボしたかたちの展示。ムガルのテイスト。私がムガルが好きなのは、ペルシア(文化的影響が大きい)×中央アジア(初代皇帝バーブルはフェルガナに出自)×ヒンドゥスタン(独特の濃い感性と超絶手技)を感じるから。インドとペルシアが融合したテイストに目がない私にとって、うれしい展示会でした。(*7月6日からは、「abr アブル ウズベクの雲」と題して、kannotextileの作品と中央アジアの布の展示販売がスタート。19日まで)

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高岡銅器の青銅色

日本の工芸、こちらもまた最高です。
銅像、梵鐘、仏具等の銅器生産で歴史と伝統のある高岡市(富山県)は、日本における銅器生産額の95%程も占めるとか。ここでも新たな技法や取組みが生まれています。創業以来、銅器の「着色」を手がけ(銅器生産の行程は分業化されている)、昨今はその発色技法をインテリア用品やクラフトなどに生かして話題を呼んでいるのが「モメンタムファクトリー・Orii」。その展示と活動紹介が東京のギャラリーでありました。

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(「青銅色・煮色・宣徳色・鍋長色・朱銅色・焼青銅色・鉄漿色(オハグロ)等。いろいろな技法・薬品の組み合わせで数十種類もの色のバリエーションを作り上げております。これらの色の発し方(出し方)は先人方が試行錯誤を繰り返しながら研究し、開発してきた大切な財産であると思います。これら着色技法は、実に利に適った手法で、自然に背を向けず、ブロンズ・真鍮といった、銅合金に自然調和した着色法です」(OriiHより引用))

富山生まれの私ですが、正直言って銅器にはこれまであまり興味がありませんでした。なのに知って速攻出かけた理由、この青。深みのあるトルコ青と銅が織りなす色合いと表情。実物の質感が写真で出ないのが残念です。

「青銅色は、銅素材の自然腐食・錆色を人為的に発色させる技法です。緑青(銅錆)を短時間で俄かに発生するには様々な薬品、技法を使います。丹礬酢・硫酸銅・酢酸銅・塩化アンモンといった薬品を調合し、時には加熱しながら、時には日光の下で塗布し、何度も何度も繰り返し塗布、ふきあげを行うことによって自然に形成された緑青に近い酸化被膜を表面に発生させております」(Orii HPより引用)

ニューヨークでの見本市にも出展したOrii 。新しい工芸の世界をどんどん開いていってくださいね。応援してます!

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ソーラークッキング

話は変わって、太陽です。独立型ソーラーシステムを作る会に行ってきました。この分野、ほとんど接したことがない&理科系苦手の私、無心に参加。でもシンプルな作りで、ホームセンターで買ったもので作れることや、どのくらいの電気をまかなえるかも教えてもらい、苦手意識減になったのが良かったです。

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(あっと驚いた干しエノキの旨み。サツマイモもしっとりした仕上がり)

そして、非常に気になった&気に入ったのが、お楽しみ編のソーラークッキング。干しエノキはTVでも紹介されたらしいですね。初体験の私、見た目がひからびた糸みたいなエノキなのに、「スルメ要らずです」と言われ半信半疑でしたが、、本当に旨い!お酒にも合いそう。太陽の下2時間くらいでこんなになるのなら、高価なおつまみ?も不要。サツマイモはしっとりして甘い。

このときはガス台のアルミシートと市販のソーラークッカー使用。ソーラークッカーっていろんなものがあるんですね。びっくり。

これはウズベキスタンに持って行かねば!肉類苦手の私は外食で苦労します。食べるものがない。野菜をボイルしたりゆで卵を作ってナンでサンドにすればいいんじゃないの!?すっかりイメージが広がっていました。が、風での転倒や、光が集まりスクーターの車体が溶けた例などが報告されているサイトを見て、移動中の車内で燃えたらどうしようと心配に。ウズの陽射し、ハンパないですから、、しっかり検討しなくては。。

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日本の若き帰農家たち

このところ、「世界が食べられなくなる日」「フードインク」「よみがえりのレシピ(山形県の在来作物と種を守り継ぐ人々のドキュメンタリー映画。若い監督による素直でしなやかな作品。印象が深く残る)」など、食(食糧〜安全)関連の映画を観て、衝撃を受け、また地道な取組みも知り、いろいろ考えさせられました。野菜作りなどにも興味があります。
そんななか、「これからの農業 日本の若き帰農家たちと語り合う」というトークイベント、興味を持ちました。テクノロジーやカルチャーの雑誌&WEBサイト『WIRED』の主催です。「みんなが農業をやる時代が来る!」というパワー炸裂の90分でした。

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(植物工場のやさい。色が濃くて瑞々しい。有機のキャベツ、やわらかくて甘みがある/満員御礼、若い人中心に150名以上かな?/植物工場のアイスプラントとバジルをリシタン皿に。シャキシャキして味もしっかり。アイスプラントは「海水と同程度の塩化ナトリウム水溶液中でも水耕栽培が可能」とか。塩味があるのでドレッシングも何も要らない。ハマる食感)

登壇者4名は、いずれも大学院の研究者から転身。日本の人工光型植物工場の普及を目指す/世界中の最先端農業技術をリサーチしさまざまな企業に提供する/研究者から有機農家へと転身して無農薬野菜の栽培を行う/この秋からインド・バンガロールで日本の農業技術を広めようとする/とアプローチは異なるものの、農業はビジネスとしても有望とのスタンスで世界の市場をターゲットとし、フットワーク軽く、プレゼン力高く、世界を飛び回り、朝3時半から畑に出ています。

いくつかのコトバを抜粋。
「農業への参入は、すごくハードルが低いのに、誰も行かない。参加させないオーラがある。農家は超大変という罠。大多数の人が何となくダメかもと思っている日本独特の空気。若い人が関係ねえよと言って入っていけばいい」
「小さく細かく作る人たちが出てくれば変わる。庭先でちょっとずつ野菜作り。みんな物々交換するようになる」
「(千葉で農業をやっているが)農家に補助金出すのやめろよ。放っておいてくれれば、やろうと思ている人たちはやる。(イヤという人がいれば)集約して生産力のある農家がやればいい」
「(インドに行くが)農業はどこでやってもいい。どうせやるなら食糧が足りていないところでやろうと思った。ボーダーを超えて行くのは若い人間しかいない」
「インドでは日本が誇るイチゴ「あまおう」を甘くないと言う。シロップやコンデンスミルクをつけてしまう。繊細な甘さが通じない。日本で考えているモデルが通用しない。場に合わせて、高価ではないイチゴに変え、シロップをつける売り方にした」
「オーガニックフードからローカルフードへ。有機が普通に普通のスーパーに並ぶのが理想」
「旅行に行くときに、農場に行ってみようとかスーパーの野菜売場を見るとか、目的を持つと景色が違ってくる。そんなところから始めてみては」
等々、絶好調。が、最後の質問で出た「遺伝子組み換え」には、全員歯切れが悪くなってしまいました。「科学的には問題ない」は全員一致。高まる消費者の不安感や、風で飛んでいく花粉が引き起こしている問題などもあり、弁の立つ人たちをもってしても、短時間では語りきれない問題なのでしょうね。う〜ん、謎は深まる、、

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けっこう長くなりました。最後に農業つながり的なコラージュです。次回テーマは「8」の予定です。

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(ウズのフルーツ、メロン食べたい!/フェルガナのハーブ園/ベリー系?/庭でドライフルーツ作り。小規模でもそれぞれが少しずつ作るというのが大事なのかも/キルギスの畑作、かなたには天山山脈)
by orientlibrary | 2013-07-03 20:56 | 日々のこと