イスラムアート紀行

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BIRDS 2017

2017年、皆様にとって良き年となりますように。
どうぞ、健やかに、のびのびと、笑顔で、おすごしください。

そして、どの地でも、誰もが、安全で穏やかな日々を送ることができますように。

西アジア、中央アジアにも、鳥をモチーフとする陶器がたくさんあります。中世から現在にいたるまで。写真もいろいろあり、選べない。なので深く考えず、バババッ!っとセレクトしました。日本の陶磁器やテキスタイルも折り込みながら、鳥たちを少々コラージュしてみました。(詳細なキャプションなしにて、失礼します)



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(セルジュークの青い鳥/カラタイ・マドラサ〜ミュージアム/トルコ・コンヤ)



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(ティムール朝のおおらかな鳥/ティムールミュージアム/ウズベキスタン・タシケント)



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(日本/九谷、東京国立博物館など)



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(リシタンの青い鳥、現代/ウズベキスタン・リシタン)



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(キュタヘヤ、イズニックの青い鳥、現代など/トルコ)



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(テキスタイル、刺繍/バングラデシュ、東欧、日本、カシミールなど)




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今年は、動き始めたい。前を向いて、深呼吸して、歩いて行きたいです。人や景色や美しいものと、たくさん出会いたい。get moving,, 今年もよろしくお願いいたします。
by orientlibrary | 2017-01-03 20:32 | 世界の陶芸、工芸

工芸の秋 〜 日本の美術タイル@旧朝香宮邸、漆藝、割り箸ピアノ、色の景

工芸の秋に背中を押されて、ブログ更新。動こう書こう!、、 写真中心になりますが、アップしていきますので、サクッとお立ち寄りください。

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■トークイベント「昭和の美術タイルと旧朝香宮邸」@東京都庭園美術館

庭園美術館で開催中の展覧会「アール・デコの花弁」。その関連イベントとして、タイルに焦点を当てたトークイベント「ディテールのアール・デコ 旧朝香宮邸の室内空間 〜 昭和の美術タイルと旧朝香宮邸」がおこなわれました。参加予約は、すぐに満員になったようです。リニューアルした庭園美術館の魅力はもちろんでしょうけれど、最近のタイル人気もあるのかな。

トーク内容は、タイルの定義(〜世界のタイルの歴史概略)、昭和のタイル、美術タイル、アールデコの建物にタイルが多用される理由、幾何学模様、旧朝香宮邸のタイル(玄関から便所、テラス、中庭、居間、バルコニー、ガーデンなど各所について、現在の写真と貴重な図面を見ながらの解説)と、全体を網羅しながらディテールに迫るものでした。

同館出版の本の帯、「絶品のタイル、極上の石。絢爛たる意匠を堪能せよ」。え?タイル??、、、 朝香宮邸(1933年=昭和8年竣工)、何度か行っていますが、これまではアールデコという先入観のせいか、正直、土っぽいタイルというイメージはあまり持っていませんでした。絶品?

でも、トークでタイルだけを追って拝見してみると、これは確かにすごいですね。認識あらたにしました。といっても、アールデコの文脈から、ではなく、日本のタイル、という面からです。

朝香宮邸のタイルは、日本の美術タイルの二つの名門、「泰山製陶所」(池田泰山/京都)と「山茶窯」(小森忍/瀬戸)のタイルを採用。「この2大メーカーのタイルを同時に使っている現場はここしかないのでは。それが“絶品”のワケ。タイルのすごさを実感した。職人もすごい」(講師の後藤泰男さん)。

当時の日本の美術タイル独特の重厚さ、やきもの感の強さよりも、こちらでは一片が小さなタイルを幾何学的に組み合わせたり曲線を取り入れたりして、柔らかく軽やかな印象です。そして何と言っても魅力は淡い「色」、その組合せだと感じました。

きれい。何色と言えない仄かな薄い紫、薄い青、薄い茶色、さまざまな色。揺らぐような、たゆたうような釉薬の質感。なんという魅惑でしょう。スライドでタイルの写真をずっと見せてもらっているうちに、テキスタイルを見ているような気がしてきました。日本の絣を見ているような感じ。日本の美の感性。

これだけの色のバランスを作り出せた裏には、色を綿密に指示した設計図があったようです。職人さんも大変です。すごい仕事ですね。

が、残念ながら写真がないのです。トーク日は撮影禁止(平日のみ撮影可能&この展覧会会期中だけでは?詳細はサイトをご参照ください)。また行ってきます。

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(かろうじて撮った写真3枚)

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(妃殿下居間 バルコニー タイル(部分)=庭園美術館ホームページより引用)



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■「三田村有純漆藝展 黄金幻想」@平成記念美術館ギャラリー

三田村有純さん、江戸蒔絵赤塚派十代を継承、東京芸術大学漆芸術科教授(先日退官)、日展作家として活躍。展覧会サイトはこちら

「自ら木を掘り、漆を塗り重ね、その上に漆で絵を描き、金を蒔いた作品」35点の展示。「風景彫刻、レリーフによる壁画、揺れる箱などが漆の概念を超えた魅力を放つ」。「参考出品として、祖父、父、三人の息子の作品も合わせて50点が並ぶこの展覧会は、漆藝を代々受け継ぎ、明治、大正、昭和、平成と発展してきた三田村家の歴史と、漆藝の未来を見せてくれることでしょう」(チラシより)。

漆、蒔絵は、土もの好きの私にとって、少し敷居の高いというか、見るのが難しい印象があったのですが、見始めると、細密な技巧、優美な美しさ、奥に感じる自然の素材感、日本の美意識などに、引き込まれるのを感じます。

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(物語性が印象的。吸い込まれるようです)


平成記念美術ギャラリー、次回の展示は、九谷の作家・武腰一憲さんの「色絵シルクロード行」。「特にウズベキスタン共和国の艶やかさは九谷の色と重なり、それ以降その作風がライフワークとなりました。鮮やかなサマルカンドブルーが力強く優しく語りかけ、悠久の時間が流れる作品たちを、どうぞお楽しみください」。青に会いに行こうと思います。



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■ ”FUTURE AMBIENT feat. Benjamin Skepper and Sami Elu”@WALL&WALL

孤高の音楽家 BENJAMIN SKEPPER&自作の割り箸弦楽器「幻ピアノ」を操る唯一無二のアーティストSAMI ELUによるライブ。内容紹介はこちら

割り箸ピアノのサミエルさんの大ファンです。戸外イベントで聴いて、一目惚れならぬ一耳惚れ?!高価なシンセサイザーとかではなく、本当に割り箸やリサイクルの素材で自作したピアノで奏でる他にない音の世界は、アコースティックの素朴な優しさとエレクトリックなコズミック感があり、私にはずっと聴いていたい音楽なのです。

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***  YouTube  What Does a Chopstick Piano Sound Like?  ***




ベンジャミンさんも初めて聴く音の世界。「常にどこに居るのかわからないほどに、セレブのオーダーで世界中を縦横無尽に飛び回る貴族系?!音楽家」。すごいな〜。「来週はロシア。大学で人間の遺伝子を数学化した音楽をチームで研究中」と流暢な日本語で。いろんな世界があるんですね。


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■「SENSE OF MOTION あたらしい動きの展覧会」@スパイラルガーデン

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写真のみです。エマニュエル・ムホーさん作品の景色、どこから見てもワクワクする色の景色。単体はシンプルな形ですが、集まって、何か自然を思わせます。スパイラルのサイトはこちら



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超駆け足で書いてきました。がんばろう。。
by orientlibrary | 2016-11-13 01:12

「あめつちの日々」とわたし

前回から1年2ヶ月、あまりに久しぶりのブログ更新となりました。去年の今頃は、ウズベキスタン(ホラズム)行きの準備などで、あわただしく過ごしていました。

昨年5月後半、ウズは極暑一歩前。真青な空、ホラズムの紺碧のタイル。イチャンカラ(ヒヴァ)でのミッション、煉瓦や木材の調達、工芸品探し、陶芸工房やアーティスト訪問と再会、中世のようなバザールの活気。遠い昔のようです。

昨年晩夏以降、気持ちも体調も低迷していました。自身の甘さ全開なのですが、大好きな母の急逝という喪失感は大きく、加えて今年に入って4ヶ月以上も続いた体調の悪さには滅入りました。でも、、ようやく気力が沸いてきました。体調が改善してきたタイミングもあったと思いますが、活力のきっかけにこの映画があったことは間違いありません。「あめつちの日々」。


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■ 「あめつちの日々」のはじまり ■


「2011年。私たちが探していたのは「土」でした。風土と人間の暮らし。撮ってみたかったのはその絶対的存在でした」(「あめつちの日々」WEBサイトより)

そして向かったのは、「四名で持つ共同窯「北窯」。沖縄最大といわれる登窯はダイナミックで上へ上へと昇りあがってます」 松田米司氏に話を聞く。「土はなくならないのでしょうか?」「いずれなくなるかもしれないね。自分たちにも責任はある。だから懸命に喜んでもらえるものをつくろうと思っている」

(*北窯(きたがま)=沖縄中部読谷村。宮城正享・與那原正守・松田米司・松田共司の4窯元の共同窯として1992年に開窯。13連房という大きな登り窯で年5回火入れする。)

約4年をかけて、松田米司さんとその工房、北窯を取材・撮影・編集。上映は16年5月7日が初日。現在、渋谷イメージフォーラムで上映中です。(* プロデューサー=高田 明男、監督・撮影=川瀬 美香。敬称略)

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■ 土と笑顔 ■


(じつは、「あめつちの日々」、すでに3回観ました。何度観ても発見があるし、何か書きたいと最初から思ったので、構成や言葉などを記憶したかったのです。が、覚えてません!無理。以下、あくまで私が覚えている範囲、しかも感覚的印象優位です。正確さは、別の何か?でご確認ください。)

映画の冒頭シーン、瓦の上に置かれたたくさんの赤い陶土。健やかなたくましい姿で、読谷の陽射しを浴びています。土の様子を見に来た松田米司さんの、土と呼応するような満面の笑み。その笑顔があまりにも素敵で、、一瞬にして映画に引き込まれました。

瓶のろくろ挽きの長回しもいいですね〜。端的でよくわかる。「土族(つちぞく)」としては、土がどーんとアップで撮られるということに、すでに興奮状態。しかも、その迫り方に土へのただならぬ愛を感じました。土のアップと長回しで、撮っているのは女性かな?と思いました(当たってました。気になるところにグッと、、そのお気持ち、わかる気がするのです)。

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■ キラキラするものを見つけてしまったんです(松田米司さん) ■


沖縄や“やちむん”(沖縄では焼物のことを「やちむん」という)のことを語る米司さんの言葉のきらめきに魅了されました。(繰り返しになりますが、以下、正確な再現ではありません!)

「沖縄が好き。くされ縁というか、面倒ではあるんだけど、その中に、キラキラするものを見つけてしまったんですよ。土に関わることなんだけど。それは自由で魅力的なことなんです」

「伝統というのは、個人が入ってはダメなんですよ。入らないほうがいい。沖縄の、というところに、誰の、が入ると、なんだか、、うるさいでしょう。工芸というのは、それを話題に皆が語り合うような、文化のものだから。沖縄には伝統があり、しっかりと作れる陶工たちがいるのだから」

「(車で出かけた先にて、カゴに何かを拾って入れながら)  これは釉薬に使う鉄分の多いマンガン。沖縄のやちむんは、自然からいろんなものをもらっているんだよ」  (*「この場所は旧日本軍の飛行場で、その後、米軍が占有していたところ」という。その上空を飛ぶのは米軍飛行機か。現在も米軍基地がある。奇しくも今日5月15日は沖縄返還の日。44年経ちました)

陶土を求めてベトナムへも。合間に街で気に入った茶碗や皿を買い求め、とろけるような笑顔。沖縄の白土の成分とほぼ近い白土(カオリン)の工場と原料採掘所へ。  「(土を手に持ち笑顔で) 採掘所っていうのは、ワクワクするね。この広い採掘所の地面の下、全部(土)でしょう。すごいな。なるべく原土のままで精製しないで使いたい。この土は化粧土にしたい。沖縄の土と混ぜて作陶もしたいし、釉薬にも。本当は沖縄の土でやりたい。でも、いろんな方法を考えなくちゃならない」

「琉球人らしく生きるには、沖縄人らしく生きるには。それを考えて職人になった。どこにも属さず、誰にも頼らず、自活していく。自立していく」

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■ 全国から集まる若い陶工さんたち ■


若い陶工さんたちの土づくりも印象深いシーンです。体全体をかけて何ヶ月も土と向き合う姿。陶芸はろくろ挽きや絵付けだけではないこと、大半は土の調子を整えていくような地道な作業であることに気づきます。

皆さん、いい顔。姿勢というか、姿がきれいです。打ち込んでいる人の意気が伝わります。

火入れ、数日の昼夜通しておこなわれる窯焚きも、じっくりと見ることができます。丸太をどーんと入れている、、豪快! 一方で、温度や時間と場所を細密に調整し続ける根気や集中力にも感心しました。

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● 尾久彰三さん(古民芸研究家) ●


「沖縄のやきものには長い伝統があります。そしてスケールが大きいんですよ。小さな島だけど海も含めると大きい。海洋国のスケールがある。そこが本土の陶芸産地との違いでしょうか」

「米司さんは、伝統を深めるほうでやっていかれればいいと思う。今立っている地の奥の方に行く、と言えばいいかな。沖縄にはそれだけの伝統やものづくりの幅があるのだから」

尾久さん、奥ゆかしくて、ほのぼのしてて、いいな。

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● 山内徳信さん(読谷村元村長) ●


強烈な印象です。こういう骨のある人がいたから、今の読谷があるのかなと思いました。

「村長になったとき、何ができるか、経済じゃない、と思った。当時、村の人が皆うつむいて歩いていることに気づいたの。戦後、村の95%が米軍に占有されていた。大人も子どもも、夜空の星を見上げるように胸を張って、自分の村に誇りを持って欲しかった」

「経済じゃない、文化だ。文化村を作ろう。花織りができる場、やちむんができる場を。そういう場を作るんだということで、交渉していった」

1986年の「読谷文化村」構想。詳細な経緯や経過については知らないのですが、現在の北窯も、この文化村構想があってこそのものなのでしょう。米軍占有地も36%まで減少したそうです。

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▼ 健やかで、骨太で、自由 ▼


全編を通じて、土も、人も、やきものも、健やかで、骨太で、自由、その波動が伝わってきました。この健やかさ、生命感が、私がこの映画と出会って受けとった宝物です。

「マカイ(沖縄の椀)は、重ねて焼成する、という制限がある。茶碗の形ではそれができない。そこからマカイの形が決まっていった」。

制限から生み出された形の美。また、重ねて焼成するには正確に中心が取れていないとダメ。基本がきちっとしているから、目に気持ちいいのかなと思いました。

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▼ リシタンやホラズムを重ねたくなる ▼


中世からの陶芸の歴史、今に続く伝統の継承、そして赤土に象牙色の化粧土、地元の植物を使った釉薬。やはりウズベキスタン陶芸と重ねてしまいます。以前から、沖縄とウズベキスタンは似ているという気がしていましたが、陶芸でも重なりを感じました。

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(リシタン)

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(リシタン)

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(ホラズム)

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(ホラズム)


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▼ 感謝します ▼


松田米司さん、工房の皆様、やちむんを生み出してくださってありがとうございます。

映画製作の皆様、熱くて温い、心に響く映画を作ってくださってありがとうございました。(プロデューサーの高田明男さん、監督・撮影の川瀬美香さんは、「紫」を製作された方なのですね。観ました、紫。こちらも迫る映画でした。工芸の次作はなんでしょう!?待ってます!)

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(上映後あいさつ(川瀬監督、松田米司さん)/今回の展示会で入手した茶碗、皿。緑釉は真鍮とガジュマルの灰釉と聞きました。興味深いなあ。これから知っていきたい)

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(「あめつちの日々」公開記念やちむん展示会にて)


とにかく書いてみました。とにかくラフなまま、アップしようと思います。健やかに歩いていきたいです。
by orientlibrary | 2016-05-15 23:01 | 日本のいいもの・光景

青淵文庫の和の趣のタイル、ウィーン分離派との関係が?

中東で、日本で、多くのことがありました。どうしてこんなことが起きるのか、ということが連日のように報道され、重く暗く悲しい、やりきれない気持ちを抱えてしまいます。ひとつひとつに思うこと、考えることはありますが、何か書いてみたいと資料を集めていたら、また次の何かが起きる。イスラームに関して言えば、イスラームから「IS」を連想する人は、現時点では少数ではないでしょう。「IS」に最も苦しめられているのはイスラームの人々ですが、さらに誤解や偏見も重なります。また長く続くシリア難民の苦しみや、宗教に名を借りた文化財の破壊冒涜など、言葉がありません。タイルのことばかり書いていていいのかという気持ちもあります。(ブログの更新は少ないのですが、タイルや青のFBはけっこう更新しているので、、)。まとまりませんが、、日々見たもの、西アジアや中央アジアのきれいなもの、これからも書いていければと思います。

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西アジア遊牧民の染織


東京国立博物館東洋館(アジアギャラリー)にて、「アジアの染織 西アジア遊牧民の染織」が展示されています(4月5日まで)。

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「遊牧民研究家、松島清江氏が1960年代から1980年代にかけて現地で収集したコレクションを展示します。インド西北部からパキスタン、アフガニスタ ン、イランからトルコにかけて遊牧を営んだ部族が染め、織り、制作したハンドメイドの衣類や袋物、テント用敷物。家畜の毛をつむいで織り、あるいはフェル トにして作られた、各部族の特色ある色と文様の世界を紹介します」との内容。

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「遊牧民の染織〜トライバルな毛織物」というジャンルも、装飾タイル同様、日本ではあまりメジャーではない、というか、好きな人はものすごく好きだけれどあまり知られていない、広がりが少ないジャンルではないかと思います。でも紋様や技法など、とても魅力があります。古いものは、色もいいですね。引き込まれます。

ただ展示としては、解説がややざっくりしていました。部族名や地域もなく「トルコ」とだけ表示されていたり。「敷物 赤紺緑紫地小花幾何文様刺繍縫合せ」といったタイトルは現物を見ればわかるのでは?作った人たちや特徴的な技法について知りたいです。博物館での稀な展示なので、贅沢は言えませんが!


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ベジタブル・センセーション、カドヤ・ワールド


陶芸家・角谷啓男さんの個展(六本木アクシスSavoir Vivreにて/3月1日まで)。あ、上のタイトルは私が勝手につけたものです。びっくりな野菜や花や葉っぱたちだったので。

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ガラスや磁器土でできているのですが、本物より本物らしい繊細な仕事!すごいな〜。テイストがまったく違うのですが、超絶技巧の明治工芸を思い起こす面もありました。が、もっとオシャレでモダンです!

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角谷先生、陶芸教室行ってなくてスイマセン。。久々に会った角谷さん、野菜たちとの日々でちょっと疲れも見えましたが、逆に内に炎が赤々と灯っているのを感じました。不肖生徒ですが、またよろしくお願いします。

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大正タイルの館 青淵文庫


日本のタイルを少しずつ見ていますが、まだまだです。とくに近代建築に使われたタイルは、行くのにモチベーションアップが必要。青淵文庫(せいえんぶんこ/渋沢資料館内/東京・王子)も、じつは大きな期待を持たずに行ったのですが、すんなりと受け止めることができました。

渋沢史料館は、近代日本経済社会の基礎を築いた渋沢栄一の思想と行動を顕彰する「渋沢青淵記念財団竜門社」の付属施設として、1982年に北区飛鳥山公園の一部に設立された博物館。旧邸内に残る大正期の2つの建物「晩香廬」と「青淵文庫」、本館があります。

ステンドグラスやタイルががあるのは青淵文庫。設計は田辺淳吉。1920(大正9)年に設計開始、1925(大正14)年竣工。完成目前の1923年に関東大震災にあい工事は一時中断。震災の経験を生かして再工事。栄一の書庫として、また接客の場としても使用されたそうです。

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明治〜大正の西洋館、苦手なものもあるので心して出かけましたが、箱形の端正な佇まいに安心。そして予想以上に多用されていたタイルが、色合いも模様も組合せもテクスチャーも和な感じでスッキリ。けっこう好きだなあ。

紋様は渋沢家の家紋「丸に違い柏」に因んで柏の葉とドングリの実をデザインしたもの。石膏型成形。色は青磁釉の青緑と白、金を使用。オリジナルと修復時作成(200個ほど)が混在。けれどもあまり違和感がない。質実感あり好み。館内部にも、窓回り、柱回りなどにタイルが使われていました。

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洋館建築にはとんと疎いので、この感じはなんなんだろう、他の洋館と何か違うなあ、と思いながら、置いてあった館紹介の掲載雑誌を後で読もうと写真に撮りました。で、撮ったままにしていたものを、先ほど読みました。面白かった。藤森照信さんの「タイル多芸」というシリーズの読み物のようです。(そんな連載があったんだ、、今、タイルの連載ってどこかにあるのかな??) 雑誌名は今わかりません。が、そこから引用を!(< >内はorientlibraryが補足追記)

——— 「タイル多芸4 大正期の掌品 青淵文庫と晩香廬」(藤森照信)———

<第一印象は正体不明の建築。タイルもよくわからない>
「(大学院生時代はじめて訪れたとき)、にぎやかな明治の西洋館に慣れた目には、全体を箱形とし、一部に角柱を並べるだけの外観はあまりに無口すぎるし、一歩なかに入ったときのインテリアの印象も、それまで見慣れたイギリス風フランス風などといったヨーロッパの歴史様式とも違うし、かといってアールヌーヴォー以後のモダンデザインじゃないし、正体不明、見所不詳の感を否めない」

「ステンドグラス以上のとまどいはタイルだった。箱形の単純な外観の唯一の見せ場は開口部回りにグルリと使われているタイルだが、そのタイルがどうもよくわからない。まず、色がいけない。緑色をベースとしているが、建物に緑色を使う例はきわめてまれで、なんだか落着かない。加えて、タイルの面に刻まれた装飾も、幾何学紋様のようでもあり、植物風でもあり、ステンドグラス同様もっと伸びやかにならないのか。国籍不明、デザイン原理不詳の建物、と学生の私の目には映ったのだった」

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<優れたデザインだった。中国風が溶け込んでいる>
「それから20余年。明治の西洋館だけでなく、大正・昭和初期の西洋館、さらに20世紀のモダンデザイン、またモダンデザインの影響を受けた歴史様式、といったさまざまな日本の近代建築の形と思想についてその後勉強を重ね、今は、また別の目でこの建築を見ることがでいるようになり、たいへん優れたデザインであると考えるようになっている」

「まず、国籍不明の件、結論から述べると、中国風なのである。中国の感覚を取り込んだヨーロッパ系のデザイン。ステンドグラスの装飾は殷の青銅器などでおなじみのゴニョゴニョ紋様だし、そこここに竜に由来するようなモチーフも潜んでいる。ステンドグラスとタイルが一般よりずっとグリーンがかっているのも、中国の緑と朱を好む伝統とふまえているといえよう」

「中国風のデザインセンスを加えた理由は、この文庫の蔵書の性格にある。論語関連の和漢の古典籍を収蔵し、それを使って論語研究をする研究図書館というのが青淵文庫の設立目的であった。渋沢栄一は資本主義の経済活動にも論理が不可欠と確信し、その根本を孔子の教えに置こうと考えていた。こうした渋沢の思想を踏まえ、設計者は中国を感じさせるセンスを巧みに取り込んだわけである。あまりに巧みに溶かし込んでいるから、中国風はムキ出しにならず、逆に一見しただけでは国籍不明に見えてしまうのである」

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<じつはヨーゼフ・ホフマンの影響を受けたデザインだ>
「外観は凹凸が少なく、アッサリと仕上げられ、ひとつの箱に化すような兆しが観察されるし、インテリアでもあれこれ付加された装飾のバックにひとつのマッスが感じられよう」

「実はこの建物のデザインは、かのヨーゼフ・ホフマン設計のモダンデザインの記念碑的作品、ストックレー邸の影響を受けているのである。設計者の田辺淳吉の自ら記した文によると、彼は大正のはじめにヨーロッパに出かけたとき、それまで習得してきた歴史様式に喰い足りないものを覚え、むしろウイーンで巻き起こっていたセセッションのデザイン運動に関心を持ち、リーダーのホフマンの仕事に強く魅せられた、という」

「ストックレー邸とのつながりにマサカと思われる読者のためにひとつ証拠を挙げるならば、外観の開口部のタイルの縁取りはどうか。初期の案だと、2階まで窓が伸び、その回りをタイルが縁取っているからもっとわかりやすかったが、こうした幾何学化したファサードをタイルで縁取って飾るというのはストックレー邸のやり方にほかならない」

<平明なうえでの装飾性というタイルの得意技を理解>
「当時の記録によるとタイルは“泰平タペストリータイル”ということになっているが、泰平は京都のタイルメーカー辻製作所のブランド名で、タペストリーというのは装飾織物を指す。建築部材というより、織物で壁面に帯状のアクセントをつけるというところにウイーンのセセッションへの共鳴が感じられよう」

「晩香廬も設計は田辺淳吉で、完成は大正6年。イギリスのチューダー様式をベースとしているが、暖炉の上部の「喜」の字の飾りに象徴されるように、そこはかとなく中国感覚が溶かし込まれている」

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(洋風茶室・晩香廬。内部撮影禁止なので写真なし。「1917(大正6)年の竣工で、丈夫な栗材を用いて丹念に作られ、暖炉・薪入れ・火鉢などの調度品、机・椅子などの家具にも、設計者の細やかな心遣いが見られます」=HPより)

「しかし、チューダー様式、中国感覚の背後で、青淵文庫と同じように、設計者はインテリアをひとつのマッスとしてとらえているし、壁面の処理も、暖炉回りの壁で明らかなようにより平明にしたうえで、タイルと木部によって装飾性を生み出そうとしている」

「平明なうえでの装飾性。イスラム建築の装飾タイルを引くまでもなく、たしかにこれはタイルの得意技のひとつといわなければならない」

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さらに、こういう見方も。(同じく雑誌を撮影したものより)。今度はオットー・ワーグナー。

「青淵文庫の設計は田辺淳吉。オーストラリアの建築家でウイーン分離派のオットー・ワーグナーに傾倒し、青淵文庫もワーグナーの代表作「郵便貯金局」に似ている部分が多いと言われている」「窓の枠と柱のタイル、そして窓上部のステンドグラスには渋沢家の家紋にちなんだ柏の模様が施されている。細部へのこだわりは田辺がワーグナーから影響を受けていることを表しているのではないだろうか」(月間建築仕上技術/2008年9月号)

え、、論語、孔子、中国、資本主義、ウイーン分離派、、

そんなにいろいろな要素があったんですね。う〜ん、すごいな。そして、渋沢栄一さん、資本主義にも論理が不可欠、さすが明治の実業家は骨太。

タイルオタクには、「平明なうえでの装飾性」という見立てが、すんなり入りました。イスラームの建築や工芸は優美繊細だけれど爛熟じゃないんです。華麗だけどゴテゴテしていない。そこが好きなのです。そんなこともあり、青淵文庫、予想していたより共鳴できました。

ウィーン分離派からの影響、建築史としてはそうなのかもしれませんが、タイルについて言えば、幾何学紋様と植物紋様の組合せや青緑の使用などは、私にはイスタムタイルと、また一部のヴィクトリアンタイルとの共通項として感じられました。そしてまた、「やきものとしての日本のタイル」の美しさも宿っていると感じました。「泰平タペストリータイル」の底力!日本のタイルも、もっと見て歩きたいと思います。
by orientlibrary | 2015-03-01 23:58 | 日本のタイル、やきもの

「テーブルウェア・フェスティバル 2015」、好きだったものなどレポ

今年も「テーブルウェア・フェスティバル」の季節(東京ドームにて、2月9日まで、詳細はイベントサイトに)。ドームに満載の陶磁器やテーブル回りの品々に会いに、さっそく行ってきました。まとめられず調べきれなくても、「走りながら書く」スタイルに変えようと思っているので、写真中心に、超ザクッとですが速報レポとします。

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(「個性ある250以上の販売ブースが出展し、企業の新商品や提案商品、
産地の窯元や作家の作品などを直接購入することができます」HPより。おもてなし食空間=テーブルセッティングの展示も大きな要素。専門家からコンテスト入賞作品まで多数展示あり。会場は幅広い年代の女性ファン、器選びをするカップルなどで熱気/着物姿の女性は食卓との関係は?だけれど入口に。皆さん写真を撮っていたので、、モデルさんって顔が小さい〜)

今回の特集は「琳派400年の系譜と新時代の京焼・清水焼」。見応えありました。解説までは写真を撮っていないので詳細はわかりません。写真のみです。

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(「伝統的な琳派のデザインを受け継ぐ器や、楽茶碗に代表される茶道具。そして、斬新なデザインさえ感じる
今の新しい京焼・清水焼。古都、京都ならではの奥深さをご紹介いたします」(HPより))

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(器だけでなく、セッティング提案してあると、やはり器の表情が出てきます。揃いも生きるし、組合せも楽しい。日本の器でのセッティングは、ルールが種々ありそうな欧米よりも自由な空気があり、私には楽しい。ひとつひとつの陶磁器に存在感)

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(端正なかたち、絵付けの細やかさ、色彩の優美さ。やはり華があります。粋と雅)

「日本の器を訪ねて」では、今回、和モダンな漆を特集。輪島塗、山中塗、津軽塗など、日本の代表的な産地の逸品、そして斬新な作品がセッティングされていました。

「日本の器を訪ねて」、毎回、大きなブースを展開するのは、日本の有名な陶芸産地。土岐市、瀬戸、多治見、有田、常滑、波佐見、鹿児島の工芸品。伝統的な作品からカジュアルなものまで豊富に揃い、値段も手頃に設定されています。楽しみにしている展示です。

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(土岐市は伝統的な名匠の作品から、現代作家の青白磁など魅せてくれます。さらにカジュアルな食器、今風のどんぶりなどが大人気で朝から行列ズラリ。レジや包装の皆さんも大変そうでした)

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(東海中部の産地。多治見、瀬戸、信楽、常滑。中部の土もの、いいですね〜)

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(九州。波佐見焼はブースも大きく、加えて窯元も個別に出展するなど、目立ちます。商品ラインが豊富。青中心の三河内は複数の窯元さんが出展。かごしまは工芸品全般。白薩摩は本当に美しい。有田のブースは大きくてモダンなものが多いのですが撮影禁止なので写真なし)

気に入ったもの、気になったものは、いろいろあるのですが、、ザクッとの範囲で、こちらをご紹介。オリエンタルなテイストを感じたもの。

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(左の上下:あれ?トルコタイルの模様、、と思ったら、やはりテーマが「トルコの花」なのだそうです。いい感じにあがっていますね。落着いたトーンの色合いでまとめてあったのが和風でおもしろかった。皿だけでなく商品ラインも豊富。ただ、食卓提案にトルコテイストがほとんどなかったのが残念。少しトルコものを入れてパンチを効かせたほうが良かったのでは?/右上:きれいですよね!!京焼の深鉢。ムガルの花模様を思い起こします。このようなブタ(花模様)が傾いでいってペイズリー模様になった、そのあたりも感じさせる動きのあるデザイン。色も青でいいですね/右下:カタール国大使夫人によるテーブルセッティング。キラキラ。ヒョウ柄とは意表をつかれました)

有田で写真を撮ってもいいですよ、と言ってくださった窯元さん。去年から注目していましたよ。「メデタイ」の窯元さん。今年はさらにパワーアップ。人も集まり注目の展示になっていました。明治時代の版木を使って成形し、すべて手描きで仕上げています。

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(有田の窯元による明治の鯛「メデタイ」鯛皿は、明治10年頃の型を使い再現した手造り物。現在の魚の置き方は頭が左ですが、当時「左前」は悪いイメージ。新しい日本の未来を祝うため、頭が右を向くように作られたのだとか。右向きの鯉皿は明治初期に限定されますが多数生産されたそうです。現在の鯛皿は華やかな絵付けが施され豪華。小さな魚皿も可愛い)

小さいものは可愛いですね〜。そこにびっしりと描き込んであるのですから、グッと惹き付けられます。

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(左上:こちらは陶器ではなくビーズ!「テーブルセッティングによる食空間提案」で、ビーズ刺繍デザイナーの田川啓二さんのテーブルにあった屏風=「葵祭」をモチーフにしたもの。これらはすべて、ビーズ、スパンコール、金モール、糸など、様々な種類と色の材料で一針一針手で刺繍したものです。人物は、最も難しい糸のテクニックであるレシャムワークでつくり、この糸刺繍のあとに縁取りをツイストワイヤーでまつっていきます。これは私の作品の中で、一番長い期間を費やして制作されたものです」(田川さんコメント)/右の上下:こちらは本当に綺麗でした!京焼の箸置き。やっぱり、日本の陶磁器はすごいわ、、)

あれ、、洋食器ブランド、見逃してました。でも、日本のブランドの洋食器はしっかり見ました。大倉陶園、こちらはちょっと別格。重厚というか格調というか、、美術品のようです。

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(呉須草花紋のカップ&ソーサー。瑠璃色と金色の大型陶板。図柄は正直好みではないけれど青には惹かれる。深い青「アジュール」の四角い皿。『婦人画報』の写真には、有名レストランのシェフによるお料理が。こんなふうに盛りつけてこそ映えるお皿ですね、ハイ!)

テーブルセッティングもさまざまなテーマで、展示されています。

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(左上:かなり作り込んだ野外のテーブルセッティング提案。細長い絨緞あり。このイベントで絨緞を見ることは少ない。床までいかないですね、だいたい/右上:カタール大使夫人のテーブル全体はこのような豪華な感じ/左下:たぶんスイーツガーデンというテーマのセッティング/右下:女性好みの世界。植物もいっぱい)

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(左上:花に負けない器の存在感/右上:先ほどの田川啓二さんのテーブル。後ろの屏風にビーズが施されています/左下:たしか昨年のコンテスト優秀作のコラボ/右下:今年の「テーブルウェア大賞」入賞作品より。華やかなセッティングが多いなかで意表をつくエコなテーブル。紙や洗濯バサミ、ヘチマなどで。オシャレです)

写真はたくさんあるのですが、長くなってしまうので、このくらいにしておきます。陶磁器見学、次はどこに行こうかな!? 北九州も行きたいな。

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気持ちが重い。いい方向に世の中が向かっているとは思えない。大好きな地域(人々)が、ますます辛い状況になっている。日本もモヤモヤ。世界、社会、すべてが加速度的に複雑になっていて、こじれていく。正直、今日は気を紛らわせて何かに向かいたかったこともあり、ブログを書きました。とにかく、自分の小さなことだけを考えていては、それさえも危うくなるのだと思う。というところまでしか、、うまく表せません。。
by orientlibrary | 2015-02-01 23:55 | 世界の陶芸、工芸

アイユーブ朝の青い陶器 〜「ラッカ」の地層にあるもの

戦略的かつ直裁的に「イスラム」を名乗られてしまったこと。世界の穏健なムスリム、ムスリマにとって大きな不幸であり、イスラームの地や人々や工芸やたくさんのことを愛する人々にとっても辛いことが多い日々であると思います。私もまた憤懣やるかたない気持ちになることがあります。

ラッカ(Raqqa)に行ったことはありません。でも、書籍を通してではありますが、憧れの地名でした。アイユーブ朝時代、青の陶器で一世を風靡した街。青釉黒彩、白釉藍彩、ラスター彩。描かれるのは、のびやかな植物や動物、力強いカリグラフィー。

ISが首都にしたという「ラッカ」とは、このラッカですよね??

ラッカは、今のラッカだけではない。それだけを書きたくて、急遽投稿します。歴史にはさまざまな変遷があり、もちろん栄枯盛衰もあるけれど、でもイスラム陶器生産の中心地であり、交易によって栄えた時代もある。そのことを書きたかった。予備知識はありません。wikipediaなどから抜粋、引用(「  」内)しました。

写真は、『Raqqa Revisited: Ceramics of Ayyubid Syria』(Jenkins-Madina, Marilyn / 2006)より。青い陶器を眺めていた本でした。

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(『Raqqa Revisited: Ceramics of Ayyubid Syria』(Jenkins-Madina, Marilyn, 2006))

『Raqqa Revisited: Ceramics of Ayyubid Syria』はメトロポリタンミュージアム所蔵のラッカウエアについての書籍であり、同館のサイトを見ると、多数の写真がありました。表紙を含め5点はスキャンしたもの。1点はサイトからの引用です。


 「ラッカは、シリア(シリア・アラブ共和国)北部の都市で、アレッポの160km東にあり、ユーフラテス川中流域の北岸に位置する。ラッカ県の県都。人口は190,000人から200,000人と推計されており、シリア第6位の都市」

  「ラッカはアレッポとデリゾールを結ぶ道路や鉄道が通り、ユーフラテス中流の農産物を集散する農業都市である。ラッカ西方にはユーフラテス川をせき止めたダム湖・アサド湖が広がる。ラッカのすぐ東で北からユーフラテスに合流する支流バリフ川があり二つの川沿いに農地が広がる。バリフ川を北へ遡るとトルコ領に入り、ハッラーンやウルファの平原に至る」

 「12世紀半ばのザンギー支配下(ザンギー朝)から13世紀前半のアイユーブ朝初期にかけての時代、ラッカは農業と手工業の生産力をもとに第二の繁栄期を迎える。この時期、ラッカの名を世界に轟かせたのはラッカ・ウェア(Raqqa ware)と呼ばれる青い釉薬をかけた陶器であり、イスラム陶芸の中心地のひとつであった

  「アイユーブ朝は、12世紀から13世紀にかけてエジプト、シリア、イエメンなどの地域を支配した スンナ派のイスラーム王朝。アイユーブ朝の政治体制は安定していなかったものの、エジプト・シリアの経済は順調に成長を遂げていく」

 「アイユーブ朝では農産物の生産量を増やす様々な政策が実施され、農地の灌漑を容易に行うために運河の開削が行われた。アイユーブ朝時代のエジプトではナイル川を利用した農業が経済の基盤をなし、小麦、綿花、サトウキビの栽培が盛んになった」

  「十字軍勢力との抗争がアイユーブ朝とヨーロッパ諸国の経済関係の発展を妨げる事はなく、二つの異なる文化の接触は経済活動、農業をはじめとする様々な分野において双方に良い影響をもたらした」

  「アイユーブ朝の領土内にはヴェネツィア人の居住区が設置され、領事館の開設が認められる。ショウガ、アロエ、ミョウバン、そしてアラビア半島とインドからもたらされた香料、香水、香油がヨーロッパに輸出され、グラス、陶器、金銀細工などのイスラーム世界で製造された工芸品はヨーロッパで珍重された。アイユーブ朝と十字軍の間に生まれた交流を通して中東・中央アジアで生産された絨毯、カーペット、タペストリーが西方に紹介され、ヨーロッパ世界の衣服や家具の様式に新しい風を吹き込んだ。また、アイユーブ朝およびザンギー朝との交易によって、ゴマ、キャロブ、キビ、コメ、レモン、メロン、アンズ、エシャロットといった植物がヨーロッパにもたらされた」

ラッカ陶器の画像です。

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(ランタン/13世紀初期/推定ラッカ/土と石英によるフリットウエア、コバルト青下絵付け、ラスター彩/四角形にドームが乗っている。四隅は柱、その上に梨の形状の装飾)

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(水差し/13世紀初頭/ラッカ/ラスター彩/クーフィー体で「al-izz」(栄光)の銘文が描かれている。植物模様、格子状のシルエット。茶色の中にラスター彩、コバルトブルー、薄い緑)

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(青釉黒彩鉢/12世紀/ラッカ/黒彩、花飾りのある「alif-lam」モチーフ)

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(青釉黒彩平縁鉢/12世紀項半から13世紀前半/ラッカ/反転した二羽の孔雀が描かれている。黒で彩画し青釉をかけている。口縁が平縁をなしている)

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(白釉藍彩鉢/13世紀/シリア/下絵付け/中心に八葉のロゼット模様、刀剣形の植物モチーフ、放射状のアラベスクのメダリオン)

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(瓶/12世紀/ラッカ/ラスター彩/円筒状首と反った縁、反転した梨のかたちの瓶 〜同館のサイトより)

 Sotheby's サイトでのRAQQA WARE  こちらにも画像あります。

地域の人々の安定と平和を祈っています。現在起きていることについて思うことはありますが、現時点では留めておきます。
by orientlibrary | 2015-01-21 22:40 | 世界の陶芸、工芸

2014冬・ホラズム紀行(1) タイル、陶芸、人、暮らしへ

ホラズム(中央アジア西部、アムダリア川下流域)、いつか行かねば、行きたいと思う地でした。ずっと昔に観光旅行でヒヴァに一度、そしてカラカルパクのカラ巡りとクフナ・ウルゲンチの超絶装飾タイル見学はツアーで行きました。

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(Wikipediaより)

クフナ・ウルゲンチのタイルは独特で、土と宇宙の狭間にあるような不思議さに満ちています。そしてホラズムに16世紀初頭、勃興したヒヴァ・ハン国。(ウズベキスタンの)西のタイルを見たい、可能ならばホラズムの陶芸家やタイル職人とお話したい、と思いつつも、自分が行けそうな時期は極暑(50℃になる時も)か厳寒(マイナス30℃にも)。いずれもきびしいです。

今回は厳寒期の12月でしたが、ご縁もあり、きっと今がタイミングなんだ、行こう!と思いました。現地情報から「マイナス30℃」を覚悟しましたが、幸運にも到着日くらいから寒さが弛んだようで、歩き回って元気にすごすことができました。そして、すべての日程、すべての時間、とても楽しく、充実していました。

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(クフナ・アルクにて。一面の青。植物模様絵付けタイル。特徴などは後日)

さらに、ありがたいことに、ホラズムを代表する陶芸、タイルの名匠たちとも出会えました。温かく受け入れていただき、たくさんのリアルなお話を聞くことができました。気持ちがMAX高まりながら、穏やかで和やかな空気に満ちた一日でした。タイルとやきものの神様が微笑んでくれました。皆様、本当にありがとうございました。

ホラズムのヒヴァ、ウルゲンチ、シャワット、そして短時間でしたがカラカルパクスタンのスルタンの聖地も訪れることができました。後半はタシケントで、しっかりたっぷり「今の手工芸」を見て回りました。こちらも堪能しました。

乾燥地帯好き、西アジア中央アジア好きでありながら、弱点のある私。とくに外食で肉がほぼ食べられない。脂っこいものも苦手。ホラズムの気候から考えて脂度高そうと覚悟、カロリーメートなど持参。ところがどのレストランでも、さっぱりとして素材の味が生きて美味しい〜。正直、ウズ外食で美味しいと思ったのは初めてでした。

どの面から見ても、本当にラッキーでうれしい旅。これから何かに生かしていかなくては。ブログも、と思うのですが、情報量が多すぎて、まだ整理がつきません。ヒヴァのタイルも独特で知りたい、調べたいのですが、これはという資料にまだ出会えません。

前置き長過ぎですね。まとまらないけれど、書けないまま、また日がたってしまう。今回は、インデックス的な回にしたいと思います。これだけでも、迷いそう。でも、とにかくアップ!それが大事!(と開き直ります。。)


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ウルゲンチ空港、細部の工芸パワー!


まずはタシケントから国内線でウルゲンチ空港へ。規模が大きいとか豪華とかではありませんが、ここでもうテンションアップ!何これ〜!?このタイル、この手仕事!でも、あ〜、誰も見ていない。残念だ〜。

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(空港にて。柱回りにタイル!!!しかもクエルダセカ!輪郭を描いた中に顔料を盛り上げるように入れる。濃紺と落着いたターコイズ青と白。ヒヴァ、ウルゲンチのタイルでは、この3色の組合せをたっぷりと見ることになります)


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(空港にて。写真がボケていますが、壁面の通気孔のようなもの?機能としては装飾する必要はないし、小窓の中はさらに小さくて見えないというか、それ以前にこれを見る人は誰もいない。が、木と思われる素材が複雑に組み合わされている。ホラズム凄し、テンション上がりました)


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(空港にて。壁面の目立たない部分だったと思う。誰も見ないで通り過ぎて行く。漆喰のレリーフ。幾何学模様と花模様が組合せられている。このパターンも、その後たっぷりと見ることになります。花びらの中など細密)


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ヒヴァ、イチャンカラ! 結婚シーズンのホラズム


ウルゲンチからヒヴァへ。ヒヴァ市街地は1990年にユネスコの世界遺産に。イチャンカラ(城壁の内側)は観光シーズンには人で溢れます。ホテルやレストランも休業する冬季ですが、それでも地元客や、この時期に多い(=出稼ぎなどから帰り親族が揃うため)という地元カップルの結婚練り歩き(〜聖なる場への礼拝)の人並みで賑わっていました。


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(ヒヴァの典型的なイメージはこちらでは!西門を入り陶の案内看板と26mの高さのカルタ・ミナル)


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(イチャンカラにて。一日に何十組?次から次へ。カップルを先頭に親族や友人たちが賑やかに。花嫁は白のウエディングドレス、新郎は黒のスーツ。マイナスの気温の中で根性!温かそうなケープを纏う新婦も。それもまた可愛かったです)


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(ウズの結婚式に欠かせない映像記録担当。その後、何度もビデオを見て愉しむことに。参列者のファッションはフォーマルもあれば普段着的な人も。寒いので女性はブーツなどで防寒)


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(上段左:5000スム札!これがあって便利でしたがウズではお札を数えるのに疲れてうんざり→100ドルでもそう言ってみたい/上段右:開いてて良かったレストラン。ラグマンは見た目よりさっぱり。ナンは薄くて食べやすい/下段左:木工も素晴らしい!/下段右:毛糸の靴下など。女性たちはつねに手を動かして何かを制作!)


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(パフラバン・マホモッド霊廟にて。今回イチャンカラでもっとも長くいた聖所。3日間通って、ひたすらタイルを見ていました。結婚式のカップルも礼拝に続々と。青いタイルと花嫁の白いドレスの対比が鮮やか)


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装飾タイル、陶芸


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(パフラバン・マホモッド霊廟にて。タイル!ヒヴァの建造物の魅力は、土色のレンガと青いタイルの組合せ。サマルカンドなどの青一色の世界とはまた違う乾燥地帯ならではの味わい、中世的な空気を感じます)


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(パフラバン・マホモッド霊廟にて。ドームのある小部屋。パフラバンでは図柄のデザインを見続けたけれど、謎)


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(ヒヴァのタイルにヒミツあり。後日ゆっくり)


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(陶芸工房訪問にて。写真はほんのさわりです。回をあらためて、しっかり書いてみたい。その前に要レコーダー起こし!(*_*;;;))


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工芸、暮らし、人、食、たくさんの出会いと発見!


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(イチャンカラの路地で出会ったカップル。え?中世??いくらなんでも、出来過ぎでしょう!?聞けば、何かの撮影だったようですが、コンデジ写真にも気さくに応じてくれました)


写真コラージュも今回用にたくさん用意したけれど、いつものように長くなりすぎ。このあたりで締めます。旅行全体で写真は1600枚ほど、それほど多くないのですが、出会った内容が濃くて、インデックスにするのも1回では無理でした。。ゆるゆる行きます!
by orientlibrary | 2014-12-24 23:41 | 中央ユーラシア暮らしと工芸

音楽、美術、料理、そして多治見からヒヴァへ。

こんなに間があいて、、しかも大急ぎ、、。遊びに来てくださっている皆様、ごめんなさい!いろいろなところに行ったり、見たりはしていたんですが、アップできていませんでした、、。今回は久々なのにざっくりです。本当にこれではいけません、、次回にご期待ください!!

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モザイクタイルのまち笠原で工場見学!


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(多治見笠原タイルの製造工場とタイルの原料工場を見学会に参加。なかなかできない体験です。関係者の皆様に感謝!工場内は安全面から写真撮影は禁止で、写真がないのが残念ですが、たしかに集中して見学することが必要と感じました)

工場見学なんて、めったにできないことです。見学して感じたのは、タイルは人が作っているということ。これまでイスラーム装飾タイルオタクとしては、製品のタイルはもっと「工業製品」だと思っていました。けれども、冬でも暑さを感じる工場、多治見の暑い夏はどんなに大変かと思いました。多くの行程で人の手がかかっていました。本当に発見でした。原料工場も興味津々。「土からできるタイル」を実感しました。

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(多治見の晩秋。いいなあ、多治見!)

多治見、笠原、意識して見ていると、街の各所にあるタイルが目に入ります。レトロなショーウインドウの中、製作中のモザイク作品、モザイクの工房などなど。今回の工場見学や、このところの活発なタイル談論に触発され、タイルを見る視点が少し変わってきました。

モザイクタイルの生産量では日本一を誇る多治見市笠原町。町は建設中の「モザイクミュージアム」オープンに向けて、モザイクやタイル愛で盛り上がっている様子。いいですね〜。

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ウズベク料理教室で、ナン、ソムサ、ショルヴァづくり!


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(ウズベク料理教室です!主催するのはSATVALDIEVA香織さん。3回目(ナンとコゴルマショルヴァ)と、4回目(トイショルヴァとかぼちゃソムサ)に参加しました。トイショルヴァは結婚式の日、朝ごはんとして来客をもてなす重要な料理だそうです。)

ショルヴァはスープ。コゴルマショルヴァもトイショルヴァも、やさしい味わいでおいしかった!化学調味料などはまったく使わないのに、旨味があるのに驚きました。とにかく玉ねぎをよく炒めること、長時間ゆっくり煮込むことがコツのようです。

そして、、ナンのおいしいこと!お持ち帰り分を冷凍して、温めて食べれば、ウズだ〜!!上に乗せるゴマ状のもの=セドナのちからがすごい。一気にウズです。ソムサも中央アジアならでは。野菜好きなので安心して食べられてうれしい。編み込み包みがうまくできなかったけど、焼き上がればどんなかたちでも許される感じで、ほんと楽しい!ハマります。

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イラン音楽、幽玄のなかのパッション、虹色の不死鳥


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(クーフザード・シューレシュ・ラアナーイー( Koohzad Shooresh Ranaei)さん。1986年生。10代前半期より数々の音楽フェスティバルで優勝し、2010年のイラン若者音楽フェスティバルでは、イラン古典音楽、地方伝統音楽、西洋音楽を合わせた全部門より最優秀の座を獲得。ケルマーンシャー州出身秀才リストに名が掲げられる)


「25年間音楽をやっている28歳」「16の楽器をプロフェッショナルに演奏できる」音楽家。間近にその演奏に触れ、感動!!初めての楽器でも数分で把握し、演奏がなめらなにかたちになっていく。音楽が何よりも好きだという、その心持ち、魂が熱く伝わってきました。

シューレシュさん、機会を作ってくださったチェシュメさん、セッションの音楽家の皆さん、すばらしい音楽体験を、どうもありがとうございました!イランの音楽状況が変化し、素晴らしい音楽を国内外の多くの人々に届けられますように。

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ユーラシア・トラディショナル・ミュージック


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(トゥバ音楽演奏家寺田亮平さんが企画実施する「ユーラシア・トラディショナル・ミュージック」。4回目を迎えた今回は、「イラン・トゥバ・南インド  ~ユーラシア・トラディショナル・ミュージック」と題して、中東・インド・シベリア - ユーラシア大陸各地に伝わる伝統音楽の歌唱と演奏を愉しむことができました。寺田さん、出演者の皆さん、ありがとうございました)

寺田さんのホーメイ、イギルなどの演奏から始まり、南インド、イランへ。世界の音楽好きにはうれしい時間です。個人的には、南インドのガダムという壷のようなパーカッションを用いた演奏が衝撃でした。パーカッション系が好きな上に、土族には壷というのがたまらない。口琴モールシンもエレクトリック。カルターナカ音楽、食わず嫌いでした。すごいです、この世界。

イラン音楽でゲスト参加したKEIKUさんのセタール、その間、私、息をしていなかったかも。スピリットが伝わってきました。これが音楽を聴く真髄のような気がします。

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「曖昧な景色」の眼差し


インドネシアの蒼い空の下での時間、経験。その濃厚な土地の息吹を芳醇な表現に昇華し続け、鋳造彫刻で追求する梶浦聖子さん。中央アジア、烈風のオアシスで、民族造形の息吹を求めて楽器職人として過ごした日々を糧に、土地の特性と文化。その背景への考察を漆芸で試みる中村真さん。お二人の展覧会「曖昧な景色」がありました。

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(展覧会にて。自作の!ドゥタールを弾く中村さん)

人を、時間を、経験を、大事に、温かく、やさしく、包容する世界。独特な空気でした。そして、心地よいものでした。そのことを私はうまく表現できません。中村さんがブログの中で語ってくださっています。「Ambiguous Horizon、記憶の記録:」。ことばも深いです。

中村さん、昨年ウズベキスタンでの貴重な経験のお話をうかがいながら、原稿化が遅れていて本当にごめんなさい!今回の展覧会、オープニングの時間の質、深いのです。私のチャチャチャとやってしまうやり方というかクセというか、そういうものと違う深さがあるのです。でも、きっといつか書けると思います!

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益子でリシタン&銀座の中東キッチン


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(上=益子陶器市でのリシタン陶器/下=銀座ミシュミシュ)

益子です。秋の益子陶器市。ウズベキスタン・リシタンの陶芸家ディヨルさんが来日して出品しているとのことで、バスで出かけてきました。秋葉原から益子への高速バス、早朝から長蛇の列。人気ですね。

土色の陶器市の中に、青。ディヨル君とお父さんのバフティヨルさんの作品。なつかしいな。左上の鉢が好きで入手。バフティヨルさんの絵付けが好きなんです。ディヨル君は構図のセンスが抜群です。

下の写真は、銀座にこの夏オープンした中東キッチン「MishMish」。アンズですね!シェフが一人で調理や接客。志の店づくり。日本人に食べやすい味付けになっていて、リーズナブルなお値段。女性客で満員でした。

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オスマン朝陶器とタイル&19世紀のタイル


青のfacebookで、オスマン朝タイルの花模様から始まり、オスマン朝シリーズをちょこっとやっていました。

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(ブルー&ターコイズの皿、イズニック、1535〜1540/縁のない皿、イズニック、16世紀中頃。白地にコバルト青とターコイズ青の絵付け、透明釉。センターに三房の枝付き葡萄、大きな葉と蔓/円筒形多彩大型ジョッキ、イズニック、16世紀後半/イズニックのタイル、多彩下絵付け・白地に透明釉、オスマン朝16世紀後半/トプカプ宮殿壁面タイル。五弁花と比べると自然派的で落着いた印象/オスマン朝、16世紀半ば、初期のブルー&ホワイト様式から多彩色の時代への過渡期で「ダマスカス手」と呼ばれるグループに属する)

その後、リンクがきっかけで19世紀のタイルに。こちらはコーカンド。

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(19世紀ウズベキスタンのタイル一例。当時のウズベク3ハン国のひとつ、北東部のコーカンド・ハン国。南進するロシア帝国に押され、1868年ついにロシアの属国に。コーカンドの君主となったフダーヤール・ハンは、1863年、コーカンド市内にロシア様式を取り入れた新たな宮殿を造営。多色で独特な色彩感覚、大振りなデザイン)

そしてブハラ。

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(19世紀後半、ブハラ郊外にあるシトライモヒホサ宮殿のタイル。ブハラ伝統様式にヨーロッパ様式を加えた建築と装飾)

ヒヴァ!

そんなわけで、19世紀、ロシアやヨーロッパに押され、その影響を受けたタイル、ということで書いていたのですが、、ウズベキスタンらしい発展をしたもうひとつのハン国があります。ヒヴァ・ハン国。17世紀前半からヒヴァに遷都し、遷都後の首都の名前に由来する「ヒヴァ・ハン国」の名称で呼ばれます。

と、ここまですごいスピードで書いてきましたが、、行ってきます! ヒヴァ、ウルゲンチに。MAXマイナス30℃。寒がりなのでドキドキですが、ここまできたら覚悟をきめました。人生最寒。青いタイル、ホラズム陶芸、ウズベキスタン工芸に会いに。行ってきます!
by orientlibrary | 2014-12-07 22:22 | 世界の陶芸、工芸

タイル愛溢れる『装飾タイル研究』&圧巻・タイルのような?絨緞

『装飾タイル研究』、20年のときを経て再会!

ブログ更新がなかなかできません。書きたいトピックはたくさんあるのですが、、どんどん溜まっていっています(汗)。けれども、今日は古いタイル研究誌に刺激をもらい、レッツ更新!

『装飾タイル研究 The World of Tiles』(発行:志野陶石出版部)、全6巻、入手できました。感慨があります。日本では数少ない装飾タイルの研究書。第1巻の発行は1977年、第6巻は1982年。第1巻から、なんと37年も経っています。

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(幻の書だった『装飾タイル研究』、全6巻、ゲット!/第1巻:タイルとイスラム建築/第2巻:アール・ヌーヴォーとタイル/第3巻:陶壁造型の世界/第4巻:戦後建築に現れたタイル/第5巻:東洋が生んだタイル“塼(せん)”/第6巻:オランダタイルの流れと影響)

第6巻のあとがきには、こう書かれています。「本シリーズは全10巻から成るわが国唯一のタイル研究書です。次回の第7巻では、“日本のタイルのあけぼの”をテーマに特集いたします」。けれども、7巻は出なかったようです。背景はわかりません。

この研究書を見たのは、たぶん1990年代前半。タイルに興味を持ち始めた頃だったと思います。場所は、乃木坂にあったTOTOのライブラリーだったと思う。その頃から、興味はひたすらイスラムのタイルだったので、第1巻の「タイルとイスラム建築」のコピーを大量に取ったのは覚えています。

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(イスラームのタイル、イメージ写真。サマルカンド。ミナレット、れんがとタイルで文字を描く、ムカルナス装飾、幾何学模様、植物文様など)

たった一度、出会っただけの書。でも、INAXブックレットのタイル本(『聖なる青 イスラームのタイル』など)、TOTO出版の『タイルの美』と並んで、私のイスラムタイル入門のバイブルであり、いつかまた出会えたらと思っていました。

が、日本の(日本語の)タイル関連の書籍は限定されており、タイル本を集めている図書館でも、本の顔ぶれはだいたい同じです。『装飾タイル研究』は、いわば「幻の書」。その後、目にする機会はありませんでした。それが、たまたまネットの古書で全巻揃って購入できたのです。

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(イスラームのタイル、イメージ写真。サマルカンド。浮彫り、青、円柱形)

時は流れましたが、日本の装飾タイル事情、変化もあるでしょう(この数年、タイルの動きが様々にあると感じています)が、変わらない状況もある。最初の文章から、ガツンです。

第1巻「タイルとイスラム建築」、「出版の意図 タイルの興味によせて」(芝辻政彦)より、要旨。
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< “やきもの”というおなじ序列のなかで、“タイル”は継子である。したがって“認識改め”がしたい。 >
(日本は世界に冠たるやきものの国といわれており、日本人のやきもの愛はとどまるところをしらないが)、タイルの興味はとなると、まるで台なしだ。タイルの魅惑と言っても一向に通じない。トイレなど不浄な印象しかもつことができないのではないか。それはタイルの面白さ、教養、知識について知られておらず、これに関係したインフォメーションが欠落しているからなのである。残念至極だ。とりあえず急いでタイルの“認識改め”の作業に挑戦する。これが出版の理由だ。タイルがやきものとおなじように、面白く興味ある愛され方がされるように祈りながら。

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惚れ惚れします。3ページ半に及ぶタイルへの強い思い。全文書き写したいほどです。感銘を受けると同時に、40年近く経って“認識改め”の状況はどうなのだろうという気持ちも。最近本当に、タイルに興味があるという若い層がいるんですよ。いろんな動きもあるんです。ただ、“認識”となった場合、どうだろう。

「どうかわたくしどもの出版物がこの後のタイル研究の礎となり、やきものとおなじように、タイルが広い範囲のひとびとから親しまれ、愛される対象になればと、ささやかなこの出版を通じてひたすら願っています」

泣けてきます。さらに、巻頭座談会のタイトルが「タイルはイスラムを抜きにしては考えられない」ですから。

そして第1巻あとがき=「タイルに限らず、イスラム世界の全貌は、今日まだ隠されたままだ。幾多の都市群が沙漠に埋もれているように。本書がその方面の専門の方はもとより、一般の方々にも、少しでも手がかりとなることを願ってやまない」。号泣ですよ、もう。また落着いた頃に、、。

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(イメージ写真。イスラームのタイル。ブハラにてモスク渡り廊下天井。宇宙のよう)

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トーハク、謎のサファヴィー朝絨緞!


いろいろとトピックがあるのですが、勢いでコレにします。東博で出会った、超インパクトの絨緞。常設のなかで、何か展示替えのものはないかなと東洋館の地下1階に寄ったところ、ドカーンとあったのです、「サファヴィー朝、17世紀、個人蔵」とだけ書いてあったこのどでかい絨緞が。

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(展示ケースいっぱいの迫力絨緞!)

写真だとわかりにくいですが、大きいです。展示ケースいっぱいというか、入りきらず下が巻いてありました。なんだ、これは!?テンションが上がり、写真撮りまくり。(トーハクは一部を除き撮影OK。常設は人が少なく、東洋館の地下はさらに少なめ)。

最初は自分が何にドキドキワクワクしているのか、よくわかりませんでした。そのうちに、この文様、どこかで見たことあるんだなあ、だから親しみがあるような気がする、でも絨緞で見たのではないかも。何だろう、あれ?タイル??

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(自由奔放。右の花模様、オスマン朝絵付けタイルで見るものと似ている気が、、)

まだわかりません。絨緞ファンに聞いてみると、「いわゆるシャーアッバース、パロメットのデザイン。でもなんとなくトルコ的」とのこと。

絨緞を見るときは、だいたいトライバル系のもの。ペルシア絨緞はあまり知らず、宮廷系ではないグループ(都市工房系)はさらに知りません。どうも、そのあたりのもののようなんですが、すっごく生き生きしてる。構図が大胆で、植物文様が飛び出しそうに元気。

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花びらなどを組み合わせた大きな文様、隙間を埋める花や草、これ、タイルでも同じような構成のものを見たような、、とくにオスマン朝の絵付けタイル。ハターイ、イスリミ(ルーミー、アラベスク)などの古典装飾様式。文様としては中央アジアやイランもあるのだと思うけれど、オスマン朝タイルは絵付けなので、この絨緞の図柄とよけいに近く感じるのかな。

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(オスマン朝タイル。イスタンブルのリュステムパシャモスクなどにて。イズニックで製作されたものがほとんど。花や葉がうねるように伸び上がり、複雑な構成の大きな花模様が印象強く主役を演ずる。青のなかにトマト赤が盛り上がる)

当時のタイルや絨緞、デザイナーが共通していたのでしょうね。流行もあったのかも。私にとっては、まだまだ謎ですが、今まで見た絨緞のなかでも、相当に好みでした。また見に行きたい。(展示替えがありそうだし、、)。

しつこいようですが、トピックはいろいろあったんですが、、ひとまず、この(私にとっては)ヘビーな情報で今回は一区切りにしたいと思います。あ〜、まだまだ知らないことばかり。20年もタイル好きなのに、この速度では、、、。加速しなくては、、。
by orientlibrary | 2014-10-30 22:15 | タイルのデザインと技法

優美洗練!九谷焼美術館、超絶豪奢!横浜真葛焼

伝統ある産地、洗練の美意識と匠を伝える 「石川県九谷焼美術館」

イスラームの装飾タイル偏愛紀行ではありますが、日本の陶芸、工芸も、とても好きです。年々惹かれています。日本の陶芸産地には地元の陶芸をテーマにした博物館、美術館も多くあり、総合的かつ深く見られてありがたい存在。先日は、絵付けで有名な九谷焼を専門に展示紹介する「石川県九谷焼美術館」を訪ねました。

石川県九谷焼美術館は2002年開館。加賀市「古九谷の杜親水公園」内にあり、周囲の自然と一体化した心地よい美術館でした。設計は富田玲子さん(象設計集団)。公園と一体になったくつろぎ感、細部まで心配りされた素材使いや色使いなど、建築というものに久々に感動しました。行ってよかった。

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(小雨模様の天気でしたが、緑がしっとりとして気持ちも落着きます。やきものもまた雨に一層映えますから、雨もまた良しです)

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(公園内のなんらかの施設。何かはわからなくても、青をめざとく見つけ近寄ります。濃淡がやさしい日本の青。イスラームの紺碧の青を求めて旅をしていますが、こういう青も本当に好きなのです。九谷五彩、それぞれに何て魅惑なのでしょう)

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(公園内からも、次々と現れる五彩のやきもの。床に柱に壁面に。大きさを変えたり、表情を付けたり、見て歩くのが楽しい)

館内の常設展示は、
* 青手  (緑・黄・紺青・紫の4色を使い大胆な筆づかいで独自の世界を築きあげた青手古九谷、そして青手の伝統を受け継ついだ吉田屋窯、松山窯などの名品を紹介)
* 色絵・五彩  (「九谷五彩」と呼ばれる緑・黄・紺青・紫・赤の色絵の具で、山水や花鳥風月、人物などのモチーフを、大胆に繊細に描き出した色絵の名品を紹介)
* 赤絵・金襴  (宮本屋窯の飯田屋八郎右衛門によってスタイルが確立した赤絵細描の作品や、京都の名工永楽和全が伝えた金襴手の技法による九谷焼など、赤と金のコントラストで表現された作品を紹介)
など。見応えありました。

そして企画展示は現代作家の作品を多数展示。九谷と聞くと、ちょっと作風が古いのでは?というイメージの方もあるのでは?が、この現代作品が作風も多彩で、細密かつ力強く、圧倒的に素晴らしかったです。産地の底力!!!(展示作品が撮影不可なのは仕方ないことですが、アップできないことが非常に残念)

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(館内。直線曲線の変化、見え隠れする九谷カラー、ガラスだったり陶だったり。床や柱も陶の魅力をさまざまに伝える)

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(中庭には水琴窟。写真左上の青い椅子、なぜ斜めに置いてあるのかと思って座ってみると、ここから中庭がちょうど良く見えるのです。視線が低く、落着きます。展示室外の目立たないところに石のモザイクが。九谷カラーも使いシックです。右下は陶器破片を利用した飾り。大きな美術館ではないけれど、視線や素材の変化があるので飽きさせません)

2階の喫茶室も、作家さんの作品を使ってのセッティングが、とても洒落てました。庭を見ながら外のテラスで風に吹かれて、がおすすめです。

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(喫茶室にて。右下は青が美しい陶板)


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横浜のやきもの・真葛焼 「宮川香山真葛ミュージアム」


数年前からでしょうか、「横浜のやきもの」ということと、「明治工芸の超絶技巧」という2点から、ずっと気になっていた横浜真葛焼と、その専門博物館である「宮川香山真葛ミュージアム」。今回、横浜のアートイベントの一環として館でもイベントがあることを知り、良い機会と出かけてきました。

豪奢な細工や幽玄の色彩が特色の真葛焼、九谷焼とはかなり趣きが異なりますが、圧巻の匠の技で見る者を魅了するのは同じ。明治を代表する陶芸家、宮川香山の世界に浸りました。

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(横浜駅から徒歩でも10分かからない立地。ビルの1階。HPを見るとお菓子の会社がスポンサーのようなのですが、地元の真葛焼を紹介しようとするエネルギーと意思がすごい。施設の維持は大変なことでしょう。拍手/館内の展示。広くはないけれど作品がきちんと見えるように気配り/下の中と右=イベントの「真葛焼鑑定会」の様子)

まず真葛焼について。あまり情報が見当たらないこともあり、館のチラシから引用します。

「世界を驚愕させた横浜真葛焼 〜 1842年、初代宮川香山は、京都真葛が原の代々やきものを生業とする家庭に生まれました。29歳のとき、輸出向けの陶磁器を製造するため、横浜大田村字富士山下に真葛焼を開窯します。1876年(明治9年)、フィラデルフィア万国博覧会に出品された真葛焼は絶賛され、その名は世界に知れ渡ります。その後、フランス、アメリカ、イギリスなど各地の万国博覧会で輝かしい受賞を重ねました。真葛焼は初代から、二代、三代へと引き継がれますが、1945年横浜大空襲で壊滅的な被害を受け、閉窯。四代目香山の復興努力もむなしく、その歴史は閉じられ、今では「幻のやきもの」と言われています」

19世紀の万博と日本の明治工芸については、薩摩焼の細工や漆の超絶技巧で関心を持つようになりました。真葛焼も「高浮彫」という精緻な彫刻を施した技法が特徴です。じつは好みとしては、豪華絢爛で派手なものは、いくら美しくても苦手。真葛焼の「高浮彫」も引いてしまう面もあります。今回もトークなどで熱の入ったお話を聞かなければ、派手だったなあ、と帰ったかもしれません。が、エピソードなども聞き、あらためてじっくり見ると、やはりすごい!と見入ります。

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(初代香山の作品。右上=蟹が施されている作品は遺作だそうです。土で作られた蟹、生きているようです/右下の彫刻=TV番組の「鑑定団」に出た作品で、「いい仕事してますね〜」の絶賛賛辞が。傷がなければ1千万円の価値とか。縁あってこちらに寄贈されたとのことです)

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(香山は当初薩摩焼を研究していくつもの作品を制作、輸出していましたが、金を多量に使うため多額の資金が必要。そこで金のかわりに、身近な動物や植物を精密な彫刻で彫りり込む「高浮彫」を生み出します。より細密な表現のために、庭に鷹や熊を飼うまでしたそうです。鳥の表情がすごい。細かい!)

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(ここまでゴテゴテすると(失礼!)、苦手を通り越して興味が。細工に気を取られるけれど絵付け部分の描き込み密度もすごい。もちろん元々の成形や焼成も。しかし高浮彫は完成まで何年もの時間が必要なため、香山は後に作風を一変し清朝磁器を元に釉薬の研究したり釉下彩の研究に没頭。美しい作品を残しており館内にも展示されています)

精緻な細工を特色としていた初期真葛焼も、写実的な作品がしだいに減少。二代目香山はのちに、「外国人が濃厚な作風に飽き、日本本来の趣味である清楚淡白なものを好むようになってきたからであった」と語っているそうです。マーケティング!

また二代目による初代への、次のような回想も。「故人は西洋向けのけばけばしいものよりも、日本向けの沈んだ雅致に富んだ物の方が得手のようでした」。実際、晩年の作品は滋味あふれ、伝統的な情緒あふれる作品が多いとのこと。
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(植物も細工と絵付けを重ね、独特の世界。ときはアールヌーヴォーの時代。時代の気分、共時性というのもあるのかも? 館内での解説などによると、窯には200名もの職人がいたこともあり、誰がどの部分をおこなったというのはわからないそうです。香山作品であり真葛焼窯全体の作品でもあるのでしょう)

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(今回の企画展示は、稀少で貴重な高浮彫を展示室に満載。多彩な作品を見られる貴重な機会だったようです。こちらの虫の表現、花や鳥に気を取られて最初は目につきませんでしたが、長時間見ているうちに、ささやかな表現もすごいなあと気づきました)

京都の腕の良い職人が、海外との交易盛んな時代に輸出に都合が良い横浜で窯を開き、薩摩焼に彫刻的要素を加えた華やかな作風をもって流行の世界万博で一世を風靡、そのために渾身の努力をする。けれども晩年は滋味あふれる雅な作品を制作。しかしその後、窯は、横浜の大空襲により三代香山が亡くなり、多くの資料も失われ、閉窯に。

美しい陶磁器群のなかに、時代が刻々と流れている。ときには華やかに、ときには辛く悲しく。さまざまに思いが巡ると同時に、超絶技巧と淡白な美を両立し得る日本陶芸の深さに、あらためて感慨をおぼえました。


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これからも、たくさんの陶芸を見ていきたいと思います。今回ご紹介できなかった「河井寛次郎記念館」、機会があれば何かとまとめて書きたいと思います。

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(京都五条坂の河井寛次郎記念館。大好きな世界。河井さんの文章がまたいいですよね〜。。)


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&このところ、日本のタイルの動きがすごいです。ほんとにびっくり。個人ができる範囲ですが、取材などもおこないつつ、こちらも書きたいと思っています。
by orientlibrary | 2014-10-13 21:22 | 日本のタイル、やきもの