イスラムアート紀行

orientlib.exblog.jp

タグ:中東〜アジアの音楽・映画 ( 44 ) タグの人気記事

モンサント、イラン式料理本、これは映画ではない、スケッチ・オブ・ミャーク

矢継ぎ早に見た映画4本。こうしてみると、観るものはドキュメンタリー(〜的なもの)ばかり。トニー・ガトリフ作品や、「ジプシー・キャラバン」など音楽系ロードムービー、中東やインド・パキスタンの文化や人々を描いた映画等が好きな私。今回も、その路線でした。


① モンサントの不自然な食べもの 〜公式サイト

e0063212_22273269.jpg


*** 公式サイトより ***  
私たちに身近な食品、豆腐や納豆、ポテトチップなどのラベルにかならずある 「遺伝子組み換えでない」という表記。当たり前のように食卓にのぼる遺伝子組み換え作物、「不自然な食べもの」。果たしてそれはどこから来るのだろうか?

世界の胃袋を握ること---それがモンサントのビジネス戦略。アメリカに本社を構えるアグロバイオ企業「モンサント社」、世界の遺伝子組み換え作物市場の90%を誇るグローバル企業の、クリーンなイメージに隠された裏の姿をカメラは追う。
遺伝子組み換え作物から、過去に発売された枯葉剤、農薬、PCB、牛成長ホルモン。1世紀にわたるモンサント社のヴェールに包まれた歴史を、貴重な証言や機密文書によって検証していく。


自然界の遺伝的多様性や食の安全、環境への影響、農業に携わる人々の暮らしを意に介さないモンサント社のビジネス。本作は、生物の根幹である「タネ」を支配し利益ばかりを追求する現在の「食」の経済構造に強い疑問を投げかける。 「世界の食料支配、それはどんな爆弾より脅威である・・・」と作中で語られる、世界の食物市場を独占しようとするモンサントの本当の狙いとは?
***********  





「1ドルたりとも儲けを失ってはならない」という”社訓”から始まり、「種」を通じて世界の食をコントロールしようとするモンサントの容赦ない姿勢が様々な角度から描かれます。世界各地でモンサントに脅かされ苦しむ農を担う人たち。グルメ等々、食の恩恵を受けている日本の私たちにも、重い問いが投げかけられているように感じます。各地で自主的な上映会も広がっています。


② イラン式料理本 〜公式サイト

早く観たいと思っていた「イラン式料理本」、あれからあっという間に3か月も経ってしまいました。

e0063212_22461247.jpg


舞台はキッチンと食卓のみ。7人の女性が料理を作り、家族等に食事を供します。「宝石ピラフ」など素敵なネーミングにワクワク、「おいしそうでした!」という感想を書くだろうと予想して観た映画でしたが、印象はもう少し複雑です。

料理自体が詳しく紹介されないこともありますが、作りながら語る作る女性たちの来し方や状況、服装や発言、そしてできあがった料理を食す家族の様子や発言に、いろいろと考えさせられました。
「缶詰シチュー」が簡単(手抜き)料理代表のように映りますが、夜の10時半に大勢のお客が突然来たという設定でもあり、日本ならばそれほど批判されない光景でしょう。むしろ他のメニューの時間のかかり方の方が、すごい。5〜6時間も昼食や夕食作りにかけるとは、、一日が食事作りですぎてしまいます。

e0063212_2246463.gif


手間をかけた伝統料理、家族の健康や幸せの軸となるお母さん、そのことの幸福、という価値観もあり、それはわかっていても、あまりに理解のない男性の姿との狭間で葛藤する若い世代も。(書き出したらいろいろ書いてしまいそうなので、このへんにしておきます)

台所と料理という見近なテーマ、リアルなドキュメンタリーなのに、どこか不思議で壮大な物語のようでもある、こういう映画を作ってしまうイラン映画の感性は、やはり別格です。


③ これは映画ではない 〜公式サイト

e0063212_23123131.jpg


*** 公式サイトより ***    
映像は、テヘランのとあるアパートメントの一室で始まる。失業中の男の日常? いや、これは軟禁中のパナヒ監督自身の一日を映しているのである。かといって語り口はあくまでユーモラス。限られた空間と時間にも関わらず、見る者を飽きさせない様々な創意工夫に溢れている。ラース・フォン・トリアーの『ドッグヴィル』ばりに絨毯にテープを貼り、そこを舞台にして脚本を再現してみせたり、なぜかタイミングよく上の階の住人が吠えまくる犬を預けに来たり、パナヒが警察に連行された日のことをゴミ回収の青年が知っていたり。どこまでが偶然でどこまでが演出なのか!?
黄金期イラン映画を彷彿させるスリリングなスタイルで周到に組み立てられた映像は、映画のラストでふいに建物のエレベーターを「自由」への逃走の場へと変えてしまう!
観客はパナヒ監督のユーモアにひとしきり笑い、そしてやがてその状況の重さに慄然とするのである。

タイトルの『これは映画ではない』は、20年間の映画製作禁止を申し渡されたパナヒ監督の、映画でなければ何をつくっても違反にならないだろう、という痛烈なブラック・ユーモア。逞しきプロテストが日常をエンターテインメントに変える。数々の映画祭や映画ベストテンで絶賛され、映画レビューサイト“ロッテン・トマト”で驚きの好評価100%を記録したユニークな傑作である。
***********

e0063212_23124582.jpg


キアロスタミ監督の「オリーブの林を抜けて」が、イラン映画との出会いでした。マフマルバフ、ゴバディ、マジディ監督など、強い印象を受けた映画に出会ってきました。
無垢な子どもを主人公にして、役者には素人を使いながら、人生の深淵を描くような、また重い現実をとことん描きながら透明感があり、どこかにユーモアさえ漂わせるような、独特の世界に惹かれてきました。

「これは映画ではない」は、「完成した映像のファイルをUSBメモリーに収め菓子箱に隠したうえで、知人を介して国外に持ち出した」というスパイ映画顔負けのエピソードもあり、軟禁という特殊な状況下にある監督の日々を描く社会性の強い映画では、と思っていましたが、、またしても単純すぎる想像でした。

「これは映画である」、、かなり周到に考えられ練られ作られた映画では?、、製作を禁じられているのに大丈夫?と心配になるくらい、撮っている!ドキュメンタリーのように見えて、かなりシナリオがあるのでは?
すごい。やはりイラン映画はただ者じゃありませんね。


④ スケッチ・オブ・ミャーク Sketches of Myahk 〜公式サイトfacebook

e0063212_083355.jpg


宮古諸島(ミャーク)、重税や理不尽な治世の中で、神とともに、歌とともに生きてきた人々とその暮らし。伝承の危機と今。
美しい海と緑と風、サトウキビを刈るサクサクという音、深い皺、腰が曲がっていても現役の80代、90代、人間味のある宮古のイントネーション、代々の民謡一家の血を継ぐ少年。
歌い継がれてきた神歌、ブルースのような古謡が、どこか血液のような部分に響いて、心がザワザワしながらも、穏やかでずっしりと落ち着くような、根源的なところで何か懐かしい感じにも包まれる。うまく書けませんが、、
原案・監修の久保田麻琴さんや製作陣の集中と熱に共振する。

e0063212_0104293.jpg

e0063212_0123124.jpg


*** 公式サイトより ***  
沖縄県宮古諸島
ここに沖縄民謡と異なる知られざる唄がある。それは、厳しい島での暮らしや神への信仰などから生まれた「アーグ」と「神歌」だ。その唄は宮古諸島に点在する集落の中でひっそりと歌い継がれてきた。特に御嶽での神事で歌われる「神歌」は、やむことのない畏敬の念をもって、数世紀に渡り口承で熱心に伝えられたものである。
ことは音楽家の久保田麻琴が、島でそれら貴重な唄に出会ったことに始まる。
本作は、その唄を生んだ人々の暮らしを追うなかで、失われようとしている根源的な自然への怖れと生きることへの希望を見出したドキュメンタリーだ。監督の大西功一は、秘められた島の神事を追い、生活と信仰と唄がひとつだった時代を記憶する最後の世代である老人達を温かく見守りながら、かつての島の暮らしをスクリーンに鮮やかに浮かび上がらせた。

老婆達が神唄を歌う時、不思議な懐かしさがすべての人々の心を打つ
ミャークには、今まさに失われようとしている大切な「記憶」がある。老婆達は語る。かつて厳しい生活と信仰と唄が切っても切り離せないひとつの時代があったことを。そして今も老婆達の心を映すかのように、この島の御嶽では、神事の火が数百年に渡り人から人へと受け継がれ、神女達が生きる願いとともに「神歌」を神に捧げている・・・。
2009年、九十歳を超えた車椅子の老婆達が島を出て東京へと渡る。コンサートホールの舞台に立ち、禁断の神歌を歌うために。満場の観客を前に彼女らは力を振り絞り、歌う…。ミャークの老婆達が歌い継ぐ神歌に触れられた貴重な機会は、おそらくこれが最初で最後となるであろう…
***********

久保田麻琴さん。「宮古の言葉の中には万葉時代、上古代の日本の言葉の含有率がとても高いんです。するとおそらくその頃のヤマト的、日本的な心が宮古には残っているのではないかと。(中略)きっと色んな漂着なり、混血なりがあったはず。それと同時に古い日本性が残っている。このことに対する驚きというか、切なさというか、サウダージ(郷愁)を感じたんです。(中略)私が宮古にたどり着いたのは、誰も教えてくれない、そういうところに手を突っ込んで自分で触ってみたかったという希求があったからです」(公式サイト内コラムより)

CD、即Amazonで購入です。宮古上布もいいなあ。
by orientlibrary | 2012-09-23 00:21 | 美術/音楽/映画

純なる白磁。青白磁の優美に酔う/ザ・シティ・ダーク/これは映画ではない

イスラムの青い陶器とタイル偏愛系「イスラムアート紀行」です。前回から、あっという間に、もう「残暑お見舞い」の時期に、、早いです。

Facebookから日々繰り出されるイスラムの青のタイル、聖者廟、音楽、染織などの情報の海に、フラフラ中。これまでなかなか辿りつけなかった世界が、向うからどっと押し寄せてきたという感じ。消化吸収どころか、まったく読み切れない。でも、うれしい悩み。ムガル時代の(現在の)パキスタンのタイル、青が鮮やか!

そんな“偏愛系”ブログですが、やはり陶磁器の歴史において中国の存在は偉大であり、イスラム陶器とも響き合っています。

「陶磁史の展開を世界的に見渡した場合、二つの源流がおのずから浮かびあがる。一は東方の東アジアの中国であり、他は西方の中東地域である。世界の陶磁器は、この二つの極をそれぞれ源泉として流れだし、さまざまの展開を見せるが、二つの流路とも、発展の過程においてたがいに影響を与え、刺激を受けあい、さらに新しい展開を続ける」 (三上次男/『世界陶磁全集21』)

中国陶磁器の花形のひとつ“白磁”、その中国白磁を中心とする白いやきものの展覧会『東洋のやきもの 純なる世界』が出光美術館で開催中です(10月21日まで)。

e0063212_18533748.jpg
(中央:青白磁獅子蓋水差、中国北宋時代、景徳鎮窯/左:青白磁刻花牡丹唐草文瓶、北宋時代、景徳鎮窯/右:白磁祭器、朝鮮王朝時代/展覧会図録表紙に青白磁が2点。出光所蔵品の中でも青白磁は逸品揃い)

展示は見やすく、わかりやすかったです。白磁は高度にしようと思えば、どこまでもできる世界だと思いますが、簡潔でテーマの焦点を絞った展示は、強い印象が残りました。(写真少なくすいません。HPから引用できないので、、)

<展示構成概略>
序=白いやきものは、白色粘土を1,100℃程度で焼き固めた土器が始まり

1:白いやきもののはじまり 陶器質の“白磁”=6世紀以降唐時代まで、白い粘土等に白土を塗った上に、透明な釉薬をかけて白い器が焼き上げられた。ガラス器などの西方の文物を白磁で再現しているところに、白いやきものの役割が反映されている

e0063212_1933496.jpg
(白磁胡人、唐時代)

2:本格白磁の発展 磁器質の白磁=白色の素地に透明釉をかけ、1,300℃前後で焼き上げる本格的な中国の白磁の流れ。器面に施す彫文様(刻花)や型押し文様(印花)も登場

3:白磁と青白磁=宋・元時代の景徳鎮で青味がかった透明釉の特色を逆に生かした青白磁(白磁の一種)が発展。透明釉にどうしても鉄分が残り、酸素を奪って焼く還元焔焼成で青味が出てしまう。しかしそれが美しい。薄胎・軽量で制作技術の高さを物語っており、中国陶磁の最高峰とされる“宋磁”の峻厳な風格を示している。白磁の粋

e0063212_1913299.jpg
(青白磁獅子蓋水注・承盤、北宋時代/今回いちばん好きだった作品。写真では伝わりにくいですが、水色!水色なんです。澄んだ明るい水色。釉薬下の土味もあり、獅子もとぼけていて。「一つあげると言われたらこれです!」と言おうと、ずっとこの前に陣取っていましたが、館の人、聞いてくれなかった。妄想)

4:皇帝の白磁=元代に青磁に代わって景徳鎮白磁が官窯の御用器に。元朝の支配者モンゴル族は、白(純)を最も尊び、宮廷の祭器は白磁に変更された。「純(白)を尚(たっと)ぶ」王朝の出現が白磁のさらなる発展の契機となった

5−1:白土がけの庶民の白磁=素地の表面に白土を塗ることによって、安価で大量に焼造された白い器が人気に
e0063212_19435249.jpg

5−2:明末、輸出で飛躍した白磁=ヨーロッパでも高く評価され、“中国の白”を意味する“ブラン・シーヌ”は、徳化窯製品を指す言葉であった

6:朝鮮王朝の白磁=中国陶磁の強い影響下にあった朝鮮では、白色は聖なる色として尊ばれた。ゆったりとした器形と、やわらかみのある釉色
7:日本の白いやきもの=志野、肥前、京焼、重要文化財「白天目」も

(展示構成と内容は美術館ホームページのこちらに。写真も少々あります)

とくに感動したのは、1〜4のあたり。
 西方の文物を白磁で再現している!
 青白磁の優美さ!青の透明感にクラクラ♥ 
 そして、白を純とするモンゴル系王朝の存在!!(タイルでもモンゴル系王朝の役割は大!)
 朝鮮白磁の温かみも好き

関連して、イスラムの白釉陶器を。

e0063212_194435.jpg
(「<白釉陶器> 9世紀頃から用いられた技法でまず注目される点は、鉛釉に酸化錫を混ぜることによって乳白色の陶器が焼成されたことである。良質の白色陶土を産しない西アジアでは、この技法は画期的といえよう。白色陶器の上に金属塩(ラスター彩陶器)やコバルト(白釉藍緑彩陶器)で効果的に絵付けをすることを可能にした点できわめて重要である。白釉陶器のなかには器形や低い高台に明らかに唐の影響を示すものがあり、輸入された唐末、五代、あるいは後の宋磁がイスラーム陶工の心をとらえて離さなかったことは、近世に至るまで白磁や青磁の倣製品が作られたことによっても明らかである」(杉村棟/『世界陶磁全集21』)

土味と青の絵付けがいい感じですね。


* … * … * …* … * … * … * …* … * … * … * … * * … * … * …* … * … * … * …* … * … *

久々更新なので、一気いきます。

『ザ・シティ・ダーク – 眠らない惑星の夜を探して』(The City Dark/アメリカ/2011年)。アメリカで問題になっている「光害」と「消えた星空」についてのドキュメンタリー映画。8/11(土)〜17(金)渋谷アップリンクにて1週間限定公開中。

* オフィシャルサイト
* アップリンク
* 予告編

最初は「星が見えなくなった」という情緒的な映画かと思いましたが、生まれたばかりのウミガメが海に帰れず街の方に彷徨って行ってしまう姿(本来は水面に反射する光を頼りに海へと向かうが、現代は街の方が明るくなってしまった)、赤々と輝く高層ビルに激突する何十億もの(!)渡り鳥あたりから、ドキュメンタリーの訴求力がビシビシ。人間の健康への光の影響も考えられるとのこと。

e0063212_1975029.jpg


あまりに当たり前で意識していないけれど、電気による照明が登場してから、まだ百数十年しか経っていない。自然や人間の営みにとっては、まさに激変なのですね。昨今、節電意識が高まっていますが、電気のある暮らしは、いろんな意味で、行き過ぎには問題があるのかも、と感じました。


* … * … * …* … * … * … * …* … * … * … * … * * … * … * …* … * … * … * …* … * …*

先ほど、知りました。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
昨年のカンヌ国際映画祭、すべての観客が拍手を惜しまなかった。世界中の映画監督が支持した話題作が日本公開決定!! 9月「シアター・イメージフォーラム」他、全国順次。

『これは映画ではない』(英語題:This is not a film ペルシャ語題:In Film Nist /イラン /2011/ 監督:ジャファル・パナヒ(2009年の逮捕以来、現在も自宅軟禁がつづく国際的なイラン人映画監督)
* アメリカ公式サイト
e0063212_1991577.jpg


【作品解説】
本作は、逮捕から1年を経た2011年3月、パナヒ監督の自宅において撮影された。映画の前半は共同監督のモジタバ・ミルタマスブの撮影によりパナヒの日常が活写され、彼が現在置かれている厳しい立場がユーモアとともに浮き彫りに。やがてパナヒは「脚本を読むのは映画製作ではないだろう」と、脚本を読みながら構想中の映画を再現して行く…。一見するとドキュメンタリーの形はとっているが、見る者を飽きさせない様々な創意工夫に溢れ、イラン映画黄金期の傑作を思いおこさせる虚実の間のスリルをも感じさせる映画的興奮溢れるエンターテインメント。どんな状況にあっても映画を撮り続ける、という宣言ともとれる感動的な傑作である。

【ジャファル・パナヒ】
アッバス・キアロスタミ監督の助監督を経て、1995年『白い風船』でデビューし、カンヌ映画祭かメラドール賞を受賞。2000年『チャドルと生きる』ではヴェネチア映画祭金獅子賞、2006年には『オフサイド・ガールズ』でベルリン映画祭審査員グランプリを受賞し、3大映画祭を制したイランの名匠。

本作は、自宅軟禁中の2011年3月にパナヒ監督が友人のミルタマスブ監督の協力のもと、自らの生活を自宅で撮影。限られた空間と時間の中にも関わらず、卓越したユーモアと、黄金期イラン映画を彷彿させる自由でスリリングな映画スタイルで、自らのプロテストをエンターテインメントに昇華した鮮やかな傑作です。
パナヒ監督は完成したその映像をUSBファイルに収め、お菓子の箱に入れ、ある知人のルートで密かに国外へ。そして、昨年2011年5月のカンヌ国際映画祭でプレミア上映されて大絶賛され、その後も数々の映画祭に招待され、英国の映画専門誌サイト&サウンドのベスト10、米国のフィルム・コメント誌の「まだ公開されていない映画」ベスト1に輝くなど高く評価されました。
タイトルの『これは映画ではない』は、20年間の映画製作禁止を申し渡されたパナヒ監督の、映画でなければ何を作ろうと違反にならないだろう、という痛烈なブラック・ユーモアを感じさせるアイディア。どんな状況であろうともアーティストは作品づくりをつづけていく、というパナヒ監督の覚悟と逞しさに拍手と喝采を贈りたくなる「プロテスト・エンターテインメント」。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
e0063212_1992811.jpg


2011年東京フィルメックス特別招待作品として上映されたようです。『イラン式料理本』とともに、見逃せません。
by orientlibrary | 2012-08-13 19:23 | タイルのデザインと技法

暑中お見舞いの青の魚たち/THE SKETCHES &Akber Khamiso Khan

暑中お見舞い申し上げます。

e0063212_1154295.jpg

(涼しげな、青の魚たち。ウズベキスタン・リシタン生まれの青の魚皿をコラージュしてみました)

今年はいろんな面で暑い(熱い)夏。連日の暑さ、脱原発ムーブメント、オリンピック等々。
イスラム諸国では、20日頃からラマダンも始まり、日本のムスリムの方々もラマダンをされています。日本の蒸し暑さは身体にこたえます。水も飲んではいけないと聞いていますが、脱水症状にならないように、どうぞご注意くださいね。
また暑い中、外仕事の皆様も大変だと思います。熱中症にお気をつけください。体をいたわる休憩時間がとれますように。


* … * … * …* … * … * … * …* … * … * … * … * * … * … * …* … * … * … * …* … *

先日の「東京無形文化祭」、「パキスタンの歌姫サナム・マールヴィー スーフィー・ソングを歌う」に共演し、見事なアルゴーザー(二本組のたて笛)演奏を披露してくれたアクバル・ハミースー・ハーンさん、どこかで見た人だと思っていたら、、お気に入りのパキスタンのデュオ「THE SKETCHES 」のビデオ!

THE SKETCHES - RANO - Featuring Akber Khamiso Khan






パキスタン、シンドSindh地方の集落でしょうか。ジャラジャラと派手なデコレーションからは想像できないような繊細な笛の音。恰幅のいいアクバルさん、ヘッドスカーフやベストとストールが独特の存在感。
透明な音世界が魅力的なSKETCHES 、シンドの自然や人々の営みの中でのビデオ作りも、彼らのまじめさ、若々しさが垣間見えて、好きです。
ヴォーカルのSaif Samejo、アジュラクの巻き方が毎回違う。今回はカジュアル。ギターのNaeem Shahは、知的な雰囲気。

パキスタンで人気沸騰中というアクバル・ハミースー・ハーンさんについては、東京無形文化祭資料が詳しいです。引用させていただきます。

<アクバル・ハミースー・ハーン(アルゴーザー)について/東京無形文化祭資料より>
アルゴーザー奏者。1976年生まれ。彼がアルゴーザーに目覚めた当時、現役のアルゴーザー奏者はわずかアッラー・バチャーヨー・コーソーだけであった。アクバルは、アルゴーザー界の巨匠であった父ハミースー・ハーン(1983年没)とミスリー・ハーン・ジャマーリーの残した録音で研鑽を積み、アルゴーザー奏法の下地を築く。ここ毎年のように、インドのラージャースターンからスィンド州にかけての砂漠地帯の民俗音楽の伝統を継承する芸能集団マンガンハール(インドではマンガニヤール)の焦点を当てたマンガンハール音楽祭で活躍し、現在はアルゴーザー奏者として、パキスタン国内の音楽祭においては欠くことのできない存在となっている。

こちらは来日時の、パキスタン大使館でのミニライブの模様から。左2枚がアクバルさん。

e0063212_1327895.jpg


今回の来日では、ドーリー(両面太鼓)のファイブスター・ミュージカル・グループも素晴らしかった。
ドーンの一発で、別世界。すごい。さらに、同グループで火箸みたいなチムターという楽器を担当するムハンマド・アスガルのヴォーカル(パンジャービー語の伝統民謡)と、サギール・アフマドによるシャーナイー(オーボエ状の笛)独奏が、すごかった。個人的には、今回のベスト3に入ってます。また、バーバル・アリー(サナム・マールヴィーとの演奏)のバンスリー(笛)の素晴らしさも、一言書かずにはいられません。

<ドール(dhol)について/東京無形文化祭資料より>
インド亜大陸に広く普及している大型の両面太鼓のことで、その起源は15世紀にも遡る。ドールは民俗音楽の伴奏楽器として使用されるが、パンジャーブ地方では重低音を大きく震わせるために特に大型のドールが好まれている。

<チムター(Chimta)について/東京無形文化祭資料より>
南アジアで親しまれるこの楽器は、パンジャーブ地方では民俗音楽、民謡歌手の弾き語り、そしてスーフィー音楽等で頻繁に使用されている。チムターとは「火箸」を意味し、小さなベルが付けられた平たく長い二枚の金属板からできている。冠婚葬祭では、しばしばドールやシェヘナーイー(二枚リードを持つ笛)と共に演奏される。

今回、日本のアジュラク専門家からグジャラート(インド)産のアジュラクがパキスタンの楽士たちにプレゼントされたこと、書いてもよいですよね。
インドとパキスタンは分離独立という経緯がありますが、パンジャーブ、グジャラート、シンドのあたりは、分離と一言で片付けられない一帯。
パキスタンの楽士たち、グジャラートのアジュラクを纏い、うれしそうでした。とても素敵な光景だと思いました。

わ、時間切れです、、  元々、アジュラクをテーマにした苦心のフォトコラージュがあった(以前作っておいた)のですが、、なぜかPCのどこを探してもない、、もうクラクラして、ザクッとしたものしか書けませんでした。出てきたら追記します。m(_ _)m
by orientlibrary | 2012-07-29 13:45 | 美術/音楽/映画

ウイグルのゆりかご/イラン式料理本/青の大壺さま

今回は、「書かなくちゃ〜」と思っていた話題3題、トリプル、です!

Facebook、いろんな見方はあるでしょうし、これからはどうなるかわかりませんが、現在いろんな面で重宝しています。
当初は、知人友人の輪、的なものだったのかもしれませんが、ある時点から、テーマを明確にしたコミュニティやグループなどが、非常に増えました。これが私にとって、最大の魅力です。WEBサイトを持っていても、facebookも同時に展開しているため、WEBへの入り口として出会うことができます。

世界の素晴しいイスラム美術、イスラム建築、細密画、青の陶器やタイル、南アジア・西アジア・中央アジアのテキスタイルや模様、デザイン、芸能、マーチャンダイズなど。これまでは、書籍を探したり、ネットで検索したりしていましたが、「途上人が検索できること」、それ自体が限られているということが、よくわかりました。

さらに、日本のメディアに登場することはまずないと思われる、今どきのイスラムファッションや化粧法、スカーフの巻き方やヘアスタイル、イスラム模様のかわいい小物なども知ることができます。パキスタン・ムルタンの陶芸工房の写真を見たときには、狂喜しました!青がまた独特なんですよね〜。。

難点は、スピードが速すぎて、とてもついていけないこと、情報が豊富すぎて、ほとんど消化できないこと。それでも、興味のあるテーマの話題、その10%に触れられるだけでも、私はありがたいこと、うれしいことだと思っています。

気に入っているのが、書籍の図版についての詳しい解説がある
「Rare Book Society of India」(リンクを見るにはfacebook登録が必要なのかも??不明です)
パキスタン・ラホールの建築物や暮らしを垣間みることのできる
「Lahore - The City of Gardens」など。

* … * … * …* … * … * … * …* … * … * … * … * * … * … * …* … * … * … * …* … * … *

日本の「現代イスラム研究センター」も、豊富な写真とともにイスラムの様々な側面を紹介。熱心な更新に頭が下がります。

なかには「ユーザーからの投稿」も。「ウイグル人の生老病死について簡単な紹介」(Halqigül Pattarさんより)という記事、接する機会の少ない情報が詳しく紹介されていて、興味深く読みました。
すべてが貴重で興味深い内容なのですが、赤ちゃん誕生から名付けまでのみを引用させていただきます。(了解をいただいています)(本文では、割礼、伝統的な治療方法、長生きする人々、お葬式、と続きます)

 

赤ちゃんが生まれる
  女性は結婚して妊娠して9月9日9時間9分9秒経って赤ちゃんが生まれる。赤ちゃんが男でも女でも「アッラーの召使(banda)」と見られて、同じく大事にされる。 
赤ちゃんが生まれてからへそが切られて、体が丈夫な人になるために、塩を入れた暖かい水(厚い地区では塩を入れない。例、トルファン)で洗ってから、おしろいを塗ってから、おくるみでしっかり包む。 
赤ちゃんが生まれて7~9日の間 揺(ゆ)り篭(böxük)に入れる。

e0063212_2315575.jpg
(左:ウイグルのゆりかご/右:ウズベキスタンのゆりかごを持つお母さん人形。じいちゃん人形が主で、女性の人形は少ない。リシタンの陶芸家さんが作ったこの人形、好きです/ウイグルとウズベク、とくにリシタンのあるフェルガナ地方とは共通するものがあるようですね)

 揺り篭結婚式(böxük toy)
 ウイグル人の伝統では結婚した女性は一番目の子供を実家で産んで、40日まで実家で育てる。40日満になってから、女性側の親は家で「böxük toy」を行う。böxük toyに男性側や親族、実家の近所、親族などを誘って、招待する。男性側は赤ちゃんやお母さんに必要な物、また自分の経済によって、お母さんに服装や飾り物を持ってきて祝って、女性側の重要な家族にもプレゼントを持ってきて、赤ちゃんやお母さんを良く育ててもらったことに感謝する。お客さんを送ってから、お嫁さんと赤ちゃん, böxükに香をたいて,男性の家に連れて行く。böxük toyの本質は無事に産んだお嫁さんを自分の家に戻してくる儀式です。


 名前をつける 赤ちゃんが生まれて何日間経ってから赤ちゃんに名前を付ける準備をし、敬虔な人を誘って、名前をつけてもらう。名前を付ける人は赤ちゃんを持って、キブラに向かって、クルアーンの部分やアザーンを言って、「お名前がAになります」と言い出す。その場にいた人々は赤ちゃんを祝って、名前をつけてくれた人を招待する。


 名前を付ける習慣は基本的に3時代に分けられる

1)イスラーム化前:基本的にウイグル語の単語を使って、名前をつけた。Baytamir,Iltamir,Bag buka,Karabuka etc
また場所、町の名前を自分の名前をとしてつける伝統があった。
チンギスハンの重要な顧問の1人であるKariyagaqはKariyagaqと言う場所の名前をつけた。


2)イスラーム化以降:ウイグル人はイスラームを受け入れてから、イスラームはウイグル人の名前にも影響を与えた。それから、アラビア語やペルシャ語の名前が増えてきた。
例、Abdullah(Allahの奴隷)、Habibullah(Allahの友達)、Mutiullah(Allahの従順な奴隷)etc.

イスラーム信仰が強くなればなるほど、昔のきれいな(純粋な)ウイグル語の名前の代わりにアラビア語の名前が占めてきた。ウイグルムスリムは自分のアッラーに、天使達、預言者、カリフ達、お母さん達に対して恋し さを表すために、それらの名前を自分に名前としてつけた。

アッラーの特徴を現す名前、Halik(生命を創造者)、Kadir(すべてできる、すべてに力がある)、Gopur(寛容者)、Israpil,Mikail(天使名)、Muhammad,Dawut,musa,Eysa,Ismayil,Yakup(預言者名前)、Ababekri, ömar,Osman,Ali(カリフ達の名前)、Hawa,Maryam,Aixa,Hadija,Fatima(偉大なお母さん達の名前)、Islam,Imam,Jannat(イスラームに関する名前)、Madina,Kuddusイスラームの聖地
イスラーム化以降ウイグル語の名前は完全になくなったわけではない。Ay,Supurga,Palta,Samsak etc.


3)中華人民共和国に属してから:アラビア語の中から意味が良くて、イスラーム色が強くない名前を選んで付けた。例、Adalet(公平、公正),Adil(公平)、Alim(学者),Pazilat(人格)。それから、ウイグル語独特の言葉を作る方法で時代に合う、時代を表す名前をつけることは普及してきた。例、Arkin(自由),Yalkun, örkax(波),Kutluk(おめでたい) etc.

自分の子供の大きくなってから知識人で裕福になるようにお父さん、お母さん達は子供にSultan,Dölat,Malika,Geniなどの名前を付けた。

思い出すため、懐かしいから自分の子供に亡くなったお父さん、お母さん、近い親族の名前を付ける親もいれば、逆にそうすれば子供が長生きできなくなると心配して亡くなった親族の名前をつけない親もいる。

子供の生まれた時期と関係する名前も多い。例、Jüma,Noruz,Sapar,Rozi,Kurban,Barat,Rajap etc

空の物体や自然現象に関する名前、例、Qolpan,Yultuz,Sayyare

ある植物、木、果物の名前、Anar,Alma,Zaytu,Rayhan

ある鳥や動物の名前、Yolwas,Maymun,Kunduz,Tuti

有る鉱山物の名前、Altun,Tömür,Almas,Zumrat

ウイグル人の名前を地方性が強いと言える。ある名前を聞いて、どこの人か分かることができる。男性名Matから始まればホータン出身、Almarahan,Maysihan,Aznihanトルファン出身の女性。



e0063212_23211251.jpg
(左:リシタンの人形、バリエーション。衣装や表情が違う/右:ウイグルの光景。女の子の三つ編みもウズと同じ。美人が多い!じいちゃんが絵になる!)


「日本で新しい揺り篭(böxük)も誕生。 
足利工業大学機電学系一年生機械専攻アハト・アブドラさんが発明」とのこと。すごい、、、揺れてますね〜☆





* … * … * …* … * … * … * …* … * … * … * … * * … * … * …* … * … * … * …* … * … *

イラン映画「イラン式料理本(IRANIAN COOKBOOK)」(2010年)は、2012年9月15日〜、岩波ホールほかで上映です。

e0063212_2328387.jpg

チラシを見て、これ絶対見よう!と思いました。(デザインとコピーが最高!ベースとなるイランの青に黄色、地模様の青と大胆な散らし方、フォントの選択、イラスト、料理名の和訳、、このセンス好き!!!)。YouTubeに予告編もアップされています。




e0063212_23243513.jpge0063212_23305424.jpg内容は、、、イラン人家庭のキッチンで女性たちが料理をする姿を撮影し、その様子から浮かび上がるイラン社会を映し出すドキュメンタリー。100歳目前の女性、主婦歴40年の女性、現代の若い女性など、台所で料理をする7人の女性たちは、監督の家族や親戚。イランの料理を作り、食べ、片付けるまでの間に、それぞれのキッチンでのドラマが繰り広げられる。料理、年齢や男女間のギャップなど、食文化や家庭観といった興味深いイランの社会や文化が凝縮されている、、、そうです。イラン映画独特のユーモアと哀愁、リアルかつファンタジックな世界が見られるかなと、楽しみにしています。


* … * … * …* … * … * … * …* … * … * … * … * * … * … * …* … * … * … * …* … * … *

トルコ・キュタヘヤの絵付け作家メフメット・コチェルさんの作品、タシュチニ大壺。

<タシュ・チニとは> オスマントルコ時代、中国染付に恋いこがれたスルタンや職人たちが作り出した陶器。石英の比率を高めた石のように固い素地が特徴。長く製法が不明でしたが1990年代より研究が進み、再現が試みられています。粘り気のほとんどない石英の粉を、少量の粘土を用いて成形するには高度な技術を要します。タイルなら厚くしないと折れてしまい、ましてや壷などの立体物を作ることは非常に困難。「しかし、それだけの労力を費やすだけの価値はあります。潤んだような白色の地肌、水面下で泳ぐような青の発色、質感は、一見して秀でています」(コチェル氏)。

e0063212_23264467.jpg


昨年11月から半年間「INAXライブミュージアム」にて展示、その後「エスニカ(横浜)」で約1か月ご紹介。
その後、あるところ(日本でこの壺が似合う最高の場所)に贈呈できれば、とお話をしていましたが、ご縁が薄かったようです。

この大壺、同じくメフメット作品の美しい大皿、繊細な形の扁平壺とも、現在、orientlibraryの元に。今後どうするか、大壺さまの「神の声」を待っています。(冗談ではなく、結局、大壺さまの意のままに動いてきた私ですから、、)。どうなることでしょう!?、、、
by orientlibrary | 2012-07-21 23:41 | ウイグル/アフガン

青のフォトコン/スーフィー音楽&人形/ユーラシアチャリ旅会

先月来、ブログ頻度上げよう〜!と意気込んでいましたが、結局なんだかんだと間があいてしまいます。

以前より憧れの左官屋さん、そして左官仕事ファンの方々のWEB「左官的塾〜塗り壁の文化を伝える」にて、当ブログをご紹介いただきました。ありがとうございます。温かい紹介のお言葉もいただき気が引き締まる、と思っているのに、時間の方が気持ちよりも早く駈けていきます。残念。でも、一歩ずつ行きますので、これからもよろしくお願いいたします。

* … * … * …* … * … * … * …* … * … * … * … * * … * … * …* … * … * … * …* … * …

横浜での「青の余韻」展示、14日に無事終了しました。11月3日のINAXライブミュージアム「青の魅惑」展開始から横浜の1か月を合わせ約半年。トラブルもなくすべてが終了し、ホッとしています。

自由に見ていただける良さを生かしての「青の余韻フォトコンテスト」も楽しかった。ネットでの投票に主催者票を加えて賞も設定。見る人によって視点が異なり、それを美しく表現していただいて、青の陶器好き冥利でした。
入賞作品を中心にご紹介します。青の陶器の世界に旅してみてください。^^

e0063212_2220954.jpg
(エスニカ賞/Mさん/ウズベキスタン絵付け皿/「迷いのない伸びやかな円弧、清涼感のあるブルーとグリーンの調和を接写で切り取った構図は、とても印象的で、そのまま絵葉書にしたいと思わせる作品でした〜by エスニカ」)


e0063212_22213361.jpg
(オリエント賞+人気投票賞/T・Jさん/トルコ絵付け大皿/「昨年からの「青の魅惑」「青の余韻」展示の主眼であった、ユーラシアの青を巡る歴史、各地の青の共通項、違い。それを象徴的に物語るものとして、オスマン朝時代の中国染付への憧れを再現したメフメット・コチェル氏の作品がありました。乳白色の地に、伝統的な装飾模様をコバルト青で絵付け。植物や動物が、まるで生きているように描かれています。優美で細密な陶の質感の感受と表現に感謝致します〜by orient)」)


e0063212_22233492.jpg
(じつはこちらが当初のオリエント賞/T・Jさん/タシュチニ大壺/オスマン朝の染付への憧れを再現した「タシュチニ」は、磁器のような真白な地に伝統的な装飾模様がコバルト青で潤むように描かれます。大壺はオスマン朝芸術を再現したような肌を見せ、作家の強い思いから筆は生きているように走っています。その質感を感受して頂き、表して頂いたことを感謝致します〜by orient)」)


e0063212_22265020.jpg
(コバルトブルー賞/Nさん/ウズ盃+ウズ人形/「じいちゃん人形が、本当に「一杯飲もう」と言っているように見えてくるのが楽しいです。盃の青は、中央アジアの空のような爽快で明るいリシタンの青。コバルト青とターコイズブルーの対比もイキイキしていて、画面から飛び出してきそうです)


e0063212_2228146.jpg
(ターコイズブルー賞/Aさん/新緑の季節の穏やかな日差しのもと、トルコのユニークな図柄の皿、向こうに見える小皿に中国の格子といった構図も絵になります〜by e)


e0063212_22285069.jpg
(青のハーモニー賞/T・Tさん/「青の余韻」展示は、中国家具やアジアの布と、西アジア、中央アジアの青の陶器との組合せが一つのトライアルでした。そしてそれは、驚くほどに新鮮な魅力になっていたと思います。家具の茶色とユーズドの質感、布の風合い、中国の不思議な形の水差しと、ウズベキスタンのおちょこと青のタイル。5月の光の中で、ゆったりと調和し、幸せな空気が漂います)


e0063212_22304363.jpg
(青の空間賞/Oさん/ブルーのフィルタリングで、まるで深海に沈んだ宝物満載の帆船を見つけたダイバーにでもなったかのような作品。青の余韻展にぴったりなブルーに染まった一枚でした〜by e)


e0063212_22324765.jpg
(orientlibraryの写真/イランの伝統的青色の装飾タイル)


* … * … * …* … * … * … * …* … * … * … * … * * … * … * …* … * … * … * …* … * …

トライバルラグと布の「tribe」さんの展示会にて。今回は、動物モチーフの毛織物が特徴でした。絨毯は赤だなあと、なんだか新鮮です。

e0063212_22363540.jpg
(表情がおもしろい。構図も不思議)

e0063212_22372427.jpg
(他にもたくさんの興味深いラグや布があったのですが、なんか可愛くて目を引きました。ウールの盛り上がり方が何ともいえない)


* … * … * …* … * … * … * …* … * … * … * … * * … * … * …* … * … * … * …* … * …

サブ先生の教室の作品展がありました。↓はサブーリさんの作品。

e0063212_22391864.jpg
(「色じゃない」と私が言って物議をかもした!?青色。独特のサブ青です)

↓タイル絵付けを習っているOさんの作品。

e0063212_2241595.jpg
(素焼きの地で日本のタイルの温かみ。絵付けが上手です!)


* … * … * …* … * … * … * …* … * … * … * … * * … * … * …* … * … * … * …* … * …

iPod導入以来、若い頃の音楽好きが再来したようなハマり方。聴くのは、パキスタンや北インドのスーフィー音楽、フォーク、宗教音楽がほとんど。

e0063212_22424159.jpg
(Mさんより借りた音源。ありがたや〜^^)

Abida Parveen、ハマってます。

<Nigah-e-Darwaishaan, Abida Parveen, Coke Studio, Season 3>






e0063212_2250030.jpg
(Abidaの「Ishq」、解説冊子も素晴しいですね〜。ラホールあたりかなあ、、細密画がいろいろあってステキなんですよ)

音楽の流れで、こちらも!!え〜〜〜、、これって何!?

e0063212_22504623.jpg
(作者は、もちろん、、手仕事クイーンTM。今回は動くんです、、)

わかったかたは素晴しい、というか、かなりキテますね。^^

e0063212_22535741.jpg
Pakistani Sufi singer Sain Zahoor


* … * … * …* … * … * … * …* … * … * … * … * * … * … * …* … * … * … * …* … * …

「ユーラシア横断自転車旅 帰国報告会〜31カ国、走って、話して、つないだユーラシア& NORIKO学級実感レポ〜CoC(トーク&スライド)&Anya(ウズベキスタンダンス)」も無事終了。こちらもホッとしています。

e0063212_22554042.jpg
(CoCの道筋マップ。中央アジア中心のトーク。「砂漠の玉葱」「午前中100キロの神風」「ウズベキスタンの走れメロス」など、笑いあり、涙あり)

「トーク感動した!「人の営み自体が奇跡だと思う」、と言ってたのが印象的。日本ではモノに溢れて気づきにくいだけで、奇跡は自分がアンテナを広げればいつもそこらじゅうにあるもので、見つけられるかどうかは自分次第。胸が熱くなりました」(参加者コメント)

e0063212_1115558.jpg
(5月25日には、早くもが発売に)

Anyaさんのウズベクダンスワークショップ、みんなで振付け練習して、とっても楽しかったです。各地のダンスの違いもおしえてもらって、印象が変わりました。アトラスの衣装もきれいでした!

多数のご参加をいただき、スペースがちょっと窮屈だったかと思いますが、20代から80代まで、世代を超えた交流ができて、よかったです。
CoC&Anya、参加者の皆様、どうもありがとうございました。

e0063212_233255.jpg
(差し入れでいただいたかりんとう。ウズの器に入れ、青の会場でいただきました。甘さよりも胡麻の風味がきいていて、ハマりました)


またしても、まとまりがなく、カテゴリーやタグに困ります。。こんなブログですが、またぶらりとお立ち寄りくださいませ。
by orientlibrary | 2012-05-16 23:16 | 日々のこと

春のイラン・トピック 〜映画「別離」、ポロック展作品貸出〜

連休ノープラン、、ウロウロヨロヨロしているうちにゴールデンウイークになってしまいました。日がたつスピードが年々早くなり、行動がついていけていません。トルコに行く計画もありましたが、またの機会に落ち着いて行こうと思いました。塞翁が馬。それはそれで良し。一日一日大事にすごしたいなと思います。

e0063212_23341745.jpg
(イラン香炉/12世紀/gorgan/「CERAMIK OF JORJAN 」GLASSWARE AND CERAMICS MUSEUM OF IRANより)

先日観たのは、話題のイラン映画「別離」。第61回ベルリン国際映画祭では最高賞である金熊賞、女優賞、男優賞の2つの銀熊賞の計3部門で受賞。第84回アカデミー賞では外国語映画賞を受賞し、脚本賞にもノミネート!イラン映画がアメリカ文化の象徴的なアカデミーの賞、、いいですね〜!せめて文化では仲良くいきましょう!

映画について書くのは難しい。ストーリーなど、どこまで書いていいか迷います。公開されている範囲を意識しつつ、印象を書いてみたいと思います。

まず、今回のアカデミー賞受賞は非常に納得できました。イラン映画といいうと、キアロスタミやマフマルバフのイメージが強くあります。子どもや素人を起用し、重厚さや透明感を打ち出す独特の手法や展開。そこが魅力。なので、アカデミー賞受賞作品ってどうなの?という思いも正直ありました。

印象は、ローカルでありながらユニバーサル。イランの事情、現実を描き込みながら、どの国にも共通する問いを投げかけています。そこに新しさを感じました。
介護、失業、教育、格差など、どの国、地域でも見られる社会問題。そこに、イランの宗教、女性の問題も絡み、展開はサスペンスのようです。

e0063212_23354626.jpg
(イラン/12世紀の青/gorgan/同)

登場人物はそれぞれに人間味があり強さも温かさもある人たちなのですが、様々な事情から嘘や保身が幾重にも渦巻き、状況は複雑に絡み合って展開。が、ストーリー展開についていけるように脚本はよく練られていると思いました。

わかりにくかったイランの事情は、帰宅後にこれを見て解決! →公式サイトには、映画『別離』を理解するためのワンポイントがあり、よく理解できました。

話の発端である、主人公の父親の介護問題。自宅では無理では?施設は?と思いますが、「イランでは老人介護の施設が非常に少ない。それは、介護は家族の役割であり、施設に入れられた老人は大変不幸であるという社会通念が強いためであるという」との説明がありました。

介護費用やお給料の感覚も、解説で掴むことができました。痴呆症のお父さんがなぜ外に出て行くかも。
解説のトップが「スカーフ」であるのも、納得です。映画、スカーフの印象が強烈です。とくに信心深いラジエー、家事にはキツいですよ、、いろんな考えがあるでしょうが、着用が義務ではなく選択、あるいはTPO次第だったら、と思ってしまいます。

失業や結婚契約、結婚資金など、男性も大変。裁判所での審議や進め方も、もう少しなんとかならないかと気をもみました。

画面に入り込み、ハラハラしたり戸惑ったり、自分ならどうするか考えたり、そして映像からいろんなことを学んだり、、映画らしい映画を観ることができたと思います。


* … * … * …* … * … * … * …* … * … * … * … * * … * … * …* … * … * … * …* … * … * … * … *

もうひとつ、イラン関連のトピック。

絵画より工芸好きなので、あまり絵画を見に行かないのですが、ジャクソン・ポロック(アメリカ/アクション・ペインティングの代表的な画家)は見たことがあります。
いま、東京国立近代美術館でジャクソン・ポロック展(〜5月6日)開催中ですが、展示の目玉は、「インディアンレッドの地の壁画」。「ポロックの最高傑作で、約200億円の評価額を得ている絵」。この持ち主が、テヘラン現代美術館。

e0063212_23441355.jpg
(インディアンレッドの地の壁画/1950年/テヘラン現代美術館、Tehran Museum of Contemporary Art)

「76年にイランのパーレビ国王のファラ王妃が購入、テヘラン現代美術館の所蔵に。79年、イラン革命で国王一族は国外に脱出。王妃が収集した絵画類は「米欧の腐敗した文化」として一時期、倉庫にしまわれたままになった。世界の美術界にとっては垂涎の的。もちろん「インディアンレッドの地の壁画」が国外に出るのは初めて」(饗宴外交の舞台裏/西川恵さん より引用)

イラン側は国立近代美術館に借用料無料で貸し出してくれたばかりか、貸出しに際しては一貫して協力的だったとか。

「展覧会に合わせ来日したテヘラン現代美術館のシャルエイ館長は「イランと日本とは長い信頼関係があり、日本には作品保全の高い技術もあるので大事な作品をお貸しした。欧米でも作品保全の保証があれば出品します」と語った。核開発問題での強硬姿勢とは異なり文化交流ではイランは柔軟だ。核開発の原則は譲れないが、それ以外では国際社会と協力するとのシグナルでもあった」(饗宴外交の舞台裏)

e0063212_23565178.jpg
(ラスター彩皿/12世紀後半〜13世紀前半/同)

先日、海外送金の書類を書いていたとき、但し書きに「北朝鮮とイランには送らない」ような一項目があり、チェックを入れましたが、この二つの国が同じ線上ですかね、、??核開発が問題なら、他にも「制裁」の対象となる国はあるのでは?
「別離」の登場人物も靴屋を解雇され、借金に苦しんでいましたが、経済制裁は生活に影響しているのではと思いました。

また、「イランは美術品を外に出した経験がほとんどないため、梱包や通関手続きをする代行業者がおらず手間取りましたが、イラン文化省は予定通り絵の国外搬出にOKを出してくれ、ホッとしました」(饗宴外交の舞台裏)という国立近代美術館担当者のコメントを読んで、この点も、しみじみと安堵しました。

e0063212_074415.jpg
(イランのアーティストはセンスがいいです。絵本「ネシャーニー」(絵:シャラーレ・ホスラヴァニーさん)表紙より部分)

* … * … * …* … * … * … * …* … * … * … * … * * … * … * …* … * … * … * …* … * … * … * … *

*「別離」上映時の予告編で、アキ・カウリスマキの新作上映(「ル・アーヴルの靴みがき」/2011)があるのを知りました!^^「街のあかり」以来、5年ぶり。
もちろん、いつもの面々がいました!年を取ったけど、いい感じ。ますます個性に深みが出た感じです。これは観ます!楽しみです。

「心をみがけば、奇跡はおこる」、映画のキャッチフレーズ。そうなのかもしれませんね。精進しなくては、、「イスラムアート紀行」もペースを少しアップしていこうと思っています。

楽しい連休をお過ごしください。

e0063212_0224100.jpg
(GLASSWARE AND CERAMICS MUSEUM OF IRANにて)
by orientlibrary | 2012-04-28 00:32 | 美術/音楽/映画

Coke Studio、心地良い衝撃と波動。捨てよ学問、Aik Alif アリフの一文字

「Coke Studio tokyo 世界が熱狂したパキスタン発音楽TVショウ」、待ってました!

e0063212_23353844.jpg


パキスタンの音楽番組「Coke Studio」(2008年〜2011年)を紹介するイベント(「 Coke Studio tokyo」公式サイト)。大きな画面で見て、ライブハウスのいい音響で聴けるという、うれしい企画。うちでYouTubeで見て(聴いて)はいても、もっと聴きたい、知りたいという気持ちが募ります。

イベントは、パキスタンの芸能や音楽に詳しく「Coke Studio」を早くから紹介してくれていた村山和之さんと、インドのA.R.ラフマーンはじめインド全般に詳しい矢萩多聞さんがナビゲーター。これはもう本当にワクワクです。

「パキスタン人が自ら企画し、パキスタン人ミュージシャンたちが伝統(古典・地域)音楽と現代音楽をコラボレーションさせる。新しいパキスタン音楽の創造を目指したこの番組は、昨今、彼らが世界に向けて発信したもののなかでも、最高の無形文化輸出良品である」(『Coke Studioの歩き方』より/村山和之さん)

「しかも、この輸出品、無料かつ無税というところが、彼らの心意気だ。従来の市場原理とは異なり、ダウンロードされて流通することを前提に制作されている」(同)。パキスタンのCDショップには、正規ディスクはないにも関わらず、たくさんのDVDやCDーRが販売されているそうです。日本にいても、YouTubeでいつでも見たいだけ見られます。まだ見ていませんが、メイキング映像もfacebookにアップされているそうです。今度見てみよう。

「Coke Studio」、見ながら、聴きながら、いろいろ感じ、考えた。

* … * … * …* … * … * … * …* … * … * … * … * * … * … * …* … * … * … * …* … *

今回のイベント、最初の曲にふさわしい一曲「Aik Alif(アリフの一文字)」から。ガツン!

"Aik Alif, Noori & Saieen Zahoor, Coke Studio, Season 2"






↑ *村山和之さん和訳字幕入りバージョンに変更!!*「コークスタジオ第二季より、サーイーン・ザフールとヌーリー(バンド)。パンジャービー語とウルドゥー語の歌詞。パンジャービーはバーバー・ブッレー・シャーの詩片」だそうです。

この曲が一番良かったという観客(知り合い)が多かった。
「莫迦たれ。捨てよ学問。アリフ一字でこと足る」。すごい歌詞、すばらしい歌詞。素晴しい歌唱、堂々たる朗唱。村山さんの和訳が字幕としてつき、合わせて聞くと、この歌のすごさがゾクゾクと伝わります。
数分の間に走馬灯のように、人生を、来し方を、今を、これからを考えていました。音楽とは、そのようなものなのだと思います。脳の中の何かに作用して、時を、自分を旅するのです。


e0063212_1511425.jpg


* … * … * …* … * … * … * …* … * … * … * … * * … * … * …* … * … * … * …* … *

"Nar Bait HD, Akhtar Chanal Zahri, Coke Studio, Season 4"







アフタル・チャナールの「バローチ族のバラード」。「Coke Studio」とYouTubeがなかったら、知り得なかっただろう世界。バローチ族の誇りを歌いあげている。「アジュラック」(肩にかけている木版捺染の布)も、いいですね〜。

「生きよ永遠に!/先駆け自慢の我が友、山の猛き息子よ/狂い酔うさま愛ゆえに、熱く誰にも止められぬ/生きるも死ぬも構いなし、この世に恐るものはなし/一人ゆく鷹、ハヤブサか、高き山の尊き人よ(後略)・・・」(村山和之さん和訳)

e0063212_1531677.jpg


* … * … * …* … * … * … * …* … * … * … * … * * … * … * …* … * … * … * …* … *

"Daanah Pah Daanah HD, Akhtar Chanal Zahri & Komal Rizvi, Coke Studio, Season 4"







アフタル・チャナールがクマル・リズヴィとバローチスタンを高らかに唄う。地名や名所が出てくるのが親しみやすい。バローチスタンに行きたくなる!
歌というより朗詠(ラップ?!)のような部分が多いけれど、声だけで存分に聴かせるのは叙事詩語りの伝統から?コーランの朗唱など、朗唱が自然に体に入っているのかな。美声というわけではないけれど、魅力がある声、谷間に響き山肌に沁み入るような声。

e0063212_1513372.jpg


* … * … * …* … * … * … * …* … * … * … * … * * … * … * …* … * … * … * …* … *

"Rona Chod Diya, Zeb & Haniya and Javed Bashir, Coke Studio"






重量級の歌が多い中で、女性が入るせいか、軽快さもあり、楽しめる。北インドの音階の連写のような表現がすごい。この組み合わせ、、プロデューサー、素晴しい。

e0063212_1521528.jpg


* … * … * …* … * … * … * …* … * … * … * … * * … * … * …* … * … * … * …* … *

これは、イベントでは紹介されなかった曲。Noori(「Aik Alif」の後半を歌っている)があまりにいいので、ブログでアップ。ロックと北インド音楽が好き、なので、、ものすごく好み。YouTubeで、この原曲らしき曲を発見。相当に土着的、民謡的。それもいいけど、ここまでの曲に作り込む、歌い込む、そのことにさらに驚きました。

"Hor Vi Neevan Ho, Noori, Coke Studio, Season 3"







ロックバンドNooriは、公式サイトなどを見ると、ポップで、なんだかアイドル的な感じ。が、この上手さ、魂のヴォーカル、素晴しい。

ちなみに、英訳詩のサイトにこの歌がありました。

Bow your head even further down (in humility) (Repeat。畏みて頭を深く垂れよ。これが何度も何度も繰り返されている)
Fakir, bow your even head further down (in humility)
There is great pleasure in holding the head high in arrogance
But, that pleasure will never be fulfilling
One day you will be bestowed with His presence
Lord, if only someone could understand the deliberations of my heart
I am a seeker who seeks nothing
I am a wanderer, roaming from one land to another
No one can unravel the secrets within me
I am a wanderer
Come along, come with me

*さらにYouTubeコメントより発見。(ちなみにYouTubeコメントは絶賛&絶賛。とくにインドからのメッセージが多い)
”very deep message share in this video . this is poetry or Kalam of Baba Bully Shah in Punjabi Language. he says. u should become more humble if u want to get some thing in this world. if you have some knowlege u will represent it with ur attitude . trees with full of fruit branches always down”

e0063212_1523059.jpg


* … * … * …* … * … * … * …* … * … * … * … * * … * … * …* … * … * … * …* … *

総合プロデューサーは、ロハイル・ハヤートとアンバール夫人。

「映像の中では輝いている音楽家たちも、日々の生活は貧しく、社会的地位も低い。ロハイルは愛と情熱で最高の作品をつくり、その立役者である音楽家の再評価をも社会に促そうと必死に走っている。Coke Studioは単なる娯楽的文化祭ではないのだ」(『Coke Studioの歩き方』より/村山和之さん)

小さなスタジオで生まれた番組は、テレビやインターネットを通して、パキスタンだけでなく世界の音楽ファンから熱狂的な支持を受けました。中には600万回もアクセスがある曲もあるそうです。

「この番組が、南アジアのフュージョン音楽発信大国としてのパキスタンを、全世界の音楽ファンに知らしめた功績は限りなく大きい。(略)イスラーム原理主義、テロの温床、インド側の先入観や知識で固まったまま、パキスタンを見ぬように。莫迦になって、愛のまなざしで、ありのままに向き合ってごらん。音楽を受け入れてごらん。そこではじめてわたしたちは対等の地平に立つのです」(『Coke Studioの歩き方』より/村山和之さん)

音楽を聴き、映像を見ながら、感じたこと、考えたことは、たくさんあって、書ききれない。
伝統と新しさというテーマは、音楽だけでなく、工芸、私の好きなやきものや染織にも共通するテーマ。そして、宗教を持つ人生・生き方と、生産と消費を基軸とした価値観のこと。

音楽は、触発する。五感に届く。音楽や舞踊を禁じている人たちは、そのすごさをわかりすぎているから?それとも、そのような経験をする前に聴くことをやめたから?

この番組の視覚、演出もすごい。パキスタンの激ハデな車のデコや聖者廟の電飾を連想させつつ、より洗練されている。70年代のサイケデリックも彷彿とさせるが、よりデジタルで広がりがある。パキスタン、すごい、、

この革新的な番組が、映画大国であり音楽でも有名なインド発ではなく(インド版のCoke Studioもありますが)、音楽的にはあまり知られていないパキスタン発であったこと。プロデューサーや周辺の人たちの熱が、数倍高かったということでしょうか。「思い」は状況を超えて行く。
国境を軽々と越えるインターネットの浸透力もすごい。

そして、このようなイベントを企画し実現してくれた村山さん、矢萩さん、その熱い思いと行動力に、心からのお礼を。ありがとうございました。村山さんの訳詩が映像にあったことで、歌の入り方が全然違いました。要所要所で入るトークも楽しかった。感謝します。

e0063212_1542483.jpg


** イスラムアート紀行・過去記事より **
 去年秋、矢萩さんと村山さんのトークイベント『「A.R.ラフマーンを語る」vol.3 イスラームとラフマーン』「インド、イラン、ギリシア、秋に響く詩の響宴」

 今年夏、「Coke Studio」から数曲紹介。ハマりました。「ジプシーを追いかけて。バローチスタン&パンジャーブ」

 こういう場には、いつも野上君がいるような気がする。きっといるんだと思う。「哀悼 野上郁哉さん / 自らの両足で立ち上がる 何度でも」
by orientlibrary | 2011-12-21 02:10 | 美術/音楽/映画

哀悼 野上郁哉さん / 自らの両足で立ち上がる 何度でも

音楽雑誌「Oar」を作っていた野上さん、ウルドゥー語を情感ゆたかに訳していた野上さん、スーフィズムを熱く語った野上さんが、いない。

311のあとも、何も書けなかった。今も、言葉が出てくるけれど、どれも違うように感じる。でも、知っていることは少しだけれど、野上郁哉さんを、少しでも書こうと思う。これからたくさんのことをする人だったのだから。それができるのは彼以外にいない、そんなことをしていく人だったのだから。

野上郁哉さんのブログ。「白山駅のブログ」
音楽が好きで好きで、日々幅広い文献を読み語学を精進し、人と会い語り、バイトで自らの暮らしをまかない、睡眠時間も生活費もギリギリまで押さえながら、自分のテーマ、すべきことにに真っすぐで一心だった日々のこと、思い。自己研鑽とたゆまぬ努力に頭が下がる。

音楽雑誌を、自らの力で立ち上げ、企画し、取材し、原稿を書き、販売をする。そんなこと、誰が考えるだろう。考えたって、誰が実際に作る、いや、誰が作れるだろう。でも、2008年に20歳ほどの学生が本当に立ち上げ、これまでに3号発行していた。

e0063212_22144131.jpg


「なんというか、こう、よーするに、体張ってるんです。命削ってるんです。そうまでしてでも、私にはやらなければならないことがあるんです。」「なんとかなる、というよりも、なんとかするんです!この世の中のことどもというのは、一見不可能に見えることでも、ほとんどのことは、努力次第では実現可能だと思うのです。」(「白山駅のブログ」より引用させて頂きました)

「聖者の宮廷講」で、「パキスターニー・ポップ・ミュージック 〜イスラームとスーフィズムのパースペクティブから見たジュヌーン登場以降の発展とその課題〜」を語った野上さん。(「聖者の宮廷講 イスラーム、スーフィズム、ジュヌーン」

e0063212_2334122.gif
(uch)

ありがとう。
さまざまなかたちで、スーフィー音楽やパンジャーブの詩の魅力を、全力で伝えてくれて、ありがとう。
映画「神に誓って」を紹介してくれて、本当にありがとう。(「神に誓って(Khuda Kay Liye)」

e0063212_221415100.jpg


上映会で冒頭いきなり「Allah Hoo」を歌った野上さんにみんな驚いた。でも快い驚きだった。

e0063212_2345745.gif
(Lahore)

7月10日、下北沢「ジプシーを追いかけて」。(「ジプシーを追いかけて バローチスタン&パンジャーブ」)。この日、笑顔で会場にいた野上君。ブログでCoke Studioのこの歌を紹介している。当日の「白山駅のブログ」

「Lambi Judaai HD, Komal Rizvi, Coke Studio, Season 4」






「こういう映像を見ていて、というか、彼らの歌を聴いていてとにかく思うのは、この声の深みと歌の表現力は一体どこから来るのであろうか、とそんなことばかりが気になってしまう。一体彼等はどんな人生を送ってきたのか、どうしたらこんな風に歌が歌えるようになるのか、そんなことばかりがとにかく気になって気になって仕方がないし、そう思えば思うほど、自分自身ももっと様々なことを見聞きし、経験し、学んでいかなければならないなぁと思う今日この頃。」(「白山駅のブログ」より引用させて頂きました)

〜〜
真っ暗な暗闇が私の目の前を塞いでも
大きな空が私の頭の上に降って来ても
どんな重圧が私の背中に重くのしかかっても
自らの両足で立ち上がる
何度でも
自らの意志で  自らの足で
(「白山駅のブログ」より引用させて頂きました/「1013hPa」/2011-07-05)
〜〜

これからの人、この分野でかけがえのない人が、突然理不尽に命を奪われた。
年齢を超えて、彼を知る多くの人が悲しみ、重い思いとともにいる。
その重さは深まるばかりだけれど、それぞれが何かに昇華しなければならないし、きっと皆、そうしていくだろう。

もっと話をしておけばよかった、なんて後悔、もうしたくない。
人と話そう。思ったことは伝えよう。行けるときには行こう。できるときにはしよう。笑えるときには笑おう。
本気で一心に精一杯生きよう。自分のテーマがあるならば全身全霊で追いかけよう。二本の足でしっかり立って。

野上さんが絶賛した「Lambi Judaii」、邦題は「長い別れ」。
野上郁哉さん、24歳。駆け抜けていった。でも、忘れない。
どうぞ、やすらかに。

e0063212_2355532.jpg


e0063212_10562750.jpg
(multan)
by orientlibrary | 2011-07-30 23:21 | 社会/文化/人

ジプシーを追いかけて。バローチスタン&パンジャーブ

311からほぼ4ヶ月たった7月10日、久々にあるモードのスイッチが入りました。しばらく封印していたというか、別の回路で必死だったというか。とにかく、久しぶりに懐かしいところに帰って来たという気持ちになりました。

e0063212_21491820.jpg
(ラホール/Lahore Fortの幾何学模様タイル。黄色とターコイズブルーの八角星。ジャハンギールが好きだったデザインか/『THE MAJESTY OF MUGHAL DECORATION』より引用)

パンジャーブ、ムルタン、ラホールという地名に心が熱くなり、カッワーリーやバローチーのフォーク音楽、ジプシーたちの歌声に心が揺れました。

e0063212_21525386.jpg
(ラホール/Lahore Fort/黄色をセンターに青が印象的な六角星/『THE MAJESTY OF MUGHAL DECORATION』より引用)

「ジプシーを追いかけて」という映像イベント、2005年からスタートして、今回で26回目だそうです。長く続けるってすごいことです。主催者でありイベントの進行役でもある関口義人さんの「熱」に拍手です。

パンジャーブとは「5つの河」の意味。州都はラホール。イスラム王朝の都として千年の歴史があります。

e0063212_21172351.jpg
(ムルタンのタイル。どの青も強い色合い。コバルトというより濃紺といったイメージの青も)

ムルタンやウッチュなど、私の好きなタイルのある地でもあります。デリーサルタナット王朝、トウグルグ朝、ローディ朝などのタイルは、独特の青色とインド的なテイストを感じさせる濃いデザインが最高です。

e0063212_2119759.jpg
(この空の青があるからより映える強い青ですね。文様もおおらかで強い感じです)

「ジプシーを追いかけて」、関口さんは1985年にパリでジプシーに会って興味を持って以来、98年から世界のジプシーに会いに行っているそうです。
ジプシーは、現在世界60カ国に1300万人くらい。決まった住所がない人たちなので、出会うまでが大変とのこと。
世界にジプシー研究者は500名ほどいるとも言われており、その拠点はイギリスのリバプール(リバプール大学)なんだそうです。

ジプシーはどこから来たのか、その「原郷」は諸説ありましたが、最近では遺伝子研究(ヒトゲノム計画)などの成果もあり、北インドとの説が有力なようです。「染色体から考えて、北インドのグループに所属していたことがはっきりした」と関口さん。
トニー・ガトロフのジプシーフィルムを愛する私には、もちろんその説がもっともすんなりきます。

今回は、その原郷に近いエリアである、バローチスタンやパンジャーブの楽士(職能音楽家)に焦点を当てた企画でした。
そしてこの地域といえば、「バローチの恋人」村山和之さん。ブラーフィー語などを現地の言葉を学び、地域を歩いている人ならではの視点に、いつも大変触発されます。
今回も、バローチスタンの説明として「学生を客人としてもてなしながら連れ回した」(数年前に報道された大学生誘拐事件)など、いかに彼らが節度と義侠心のある人たちかを強調。その言葉、待ってました!

今回、圧巻だったのはバローチスタンの楽士の映像。Azim Jahnさん、聴き入りました。

そして村山さんや音楽好き大絶賛の「Coke Studio」からの音像。パキスタンの音楽番組「Coke Studio」は、とにかくすごい。ローカルで土着的な歌を取り上げても、ものすごく洗練されています。

e0063212_2291417.jpg
("Nar Bait "/ Akhtar Chanal Zahri/Coke Studio, Season 4)

超土着なゲスト、とくにフォークの歌い手は「聖者廟にすくう歌うたい、あるいは乞食とも」。一方、バックをつとめるミュージシャンたちは、まさに「バークレー出た感じ」。このミックスがたまらない。フュージョンってこういうものなんだね。中途半端にならず、互いに高め合って新たな世界を創っている。誰もがいい顔で演奏し歌っている。

e0063212_22103622.jpg
("Nar Bait "/ Akhtar Chanal Zahri/Coke Studio, Season 4/Zahriさんのアジュラック〜ストールがいいですね〜!ターバンの巻き方もナイス!)

元々ロック好きなところに北インド音楽が最も波長の合う私には、心地よく、かつ血が騒ぐような音楽世界なのでした。

e0063212_22115478.jpg
("Nar Bait "/ Akhtar Chanal Zahri/Coke Studio, Season 4/黒のベストの模様が気になりました。バローチ男子、粋ですな〜☆)

音楽に興味のある方は、こちら↓をどうぞ。「セバ(美しい)、バローチスターン」という言葉が聞こえます。YouTubeより、"Nar Bait "/ Akhtar Chanal Zahri(Coke Studio, Season 4)







トークは2部に分かれ、途中、アフガン音楽ユニット「ちゃるぱーさ」さんとバンスリの寺原太郎さんのライブもあり、盛りだくさんで大満足でした。
こうなると、アフガンのタイルも見たいですよね。

e0063212_22151386.jpg
(ヘラート/MAUSORLEUM OF GOHAR SHAD 1447/「太陽が輝くように光るタイル」/『COLOUR AND SYMBOLISM IN ISLAMIC ARCHITECTURE』より引用 )

マザリシャリフのモスク(1480)↓。手前の茶碗の青色が気になります。

e0063212_2221551.jpg
(『COLOUR AND SYMBOLISM IN ISLAMIC ARCHITECTURE』より引用 )

好きな夏、いろんなテーマを私も追いかけてみたい。当面はやはり、「青のタイルを追いかけて」かな!?
by orientlibrary | 2011-07-12 22:37 | 美術/音楽/映画

100年単位で熟成していくアフガンの楽器「ラバーブ」を聴く (@rabab gig)

音楽との出会いから、新しい扉が開くことがあります。
イスラムタイルに熱中する伏線としては(何度か書いていますが)、<カッワーリー>(スーフィズムの宗教儀礼で歌われる陶酔の音楽)とその代表的歌い手である<ヌスラット・ファテ・アリ・ハーン>のコンサートがあります。

また、「世界の手仕事プロジェクト」のきっかけは、アフガニスタンの民族楽器ラバーブ奏者<アミール・ジャン>のコンサートと、<メヘル・アーリー&シェール・アーリーのカッワーリー>コンサートが伏線にありました。

元々はハードロック、その後はいわゆるワールドミュージック、なかでも北インド音楽の系譜が好きなのですが、ライフワークや関心ジャンルにおいては、アフガニスタン、パキスタンなどの音楽に影響を受けているようです。

e0063212_2049921.jpg
(アフガニスタンの民族衣装、刺繍布が飾られたラバーブ演奏会会場。華やかで奥深い。このような演出があるとないとでは印象がずいぶん違います。感謝)

今もなお強い印象が残るアミール・ジャン。その名が記されたラバーブを持つ演奏家の演奏とお話の会がありました。「前世はアフガン人」と語る鈴木ひろしさん、アフガンの衣装でにこやかにたたずむその姿は、本当にアフガンのハザラ族(モンゴル系)のよう?!

e0063212_20515884.jpg


手に持つラバーブにはアミール・ジャンのサインと、元の持ち主であるショカットさん(ジャンと一緒に来日したラバーブ奏者)のサインが。とても美しいラバーブ、アミール・ジャンやショカットの来日時に入手したそうです。
高円寺のライブ、私も行きましたが、まさかその後、演奏使用のラバーブが日本人の手に渡っていたなんて!好きのエネルギーは通じるものですね。ホントに好きなことは、ホントに好きな人には伝わる、そう思います。

e0063212_2051433.jpg
(アミール・ジャンのサイン。わお!)

ラバーブは、「アフガニスタンを代表するリュート属の撥弦(はつげん)楽器。3本の旋律弦、3~5本のドローン(持続音)を演奏する弦、および15本ほどの共鳴弦が、クワ製の胴に張られている。声楽の伴奏をする器楽合奏で用いられるだけでなく、独奏楽器としても演奏される。北インドの古典音楽で演奏されるサロッドは、このラバーブが原型」(国立民俗学博物館サイトより)。

e0063212_20525473.jpg
(胴部分の象嵌装飾。工芸品のようです。装飾がある楽器にはみとれます。視覚も大事ですよね〜)

鈴木さんの演奏、とても良かったです!哀愁と激しさのある撥弦楽器の音色、独特の音階とリズムに引込まれます。卓越した技術はもちろんのこと、全体に温かい印象。人柄なのかな。
「男性の深い勘違い(女性への片思いなど)の歌を男たちが涙を流しながら聴いている。それがアフガン音楽の真骨頂」なのだそうです。

e0063212_2174028.jpg
(胴裏部分の装飾)

加えてナイスなのは、ほのぼのとした笑いを誘いつつ高速で進行する語り。「ラバーブ漫談」という言葉が頭に浮かんだほどです。
穏やかに炸裂する語りの合間も、じつは楽器をケアし、様子を見ています。「湿気に弱い。音が全然違ってきます。会場の温度や湿度の変化に合わせて微妙に調弦します」。ラバーブ、デリケートな楽器なのです。

e0063212_20541081.jpg
(かわいい花のようなナット?で調弦)

「ラバーブは一本の桑の木をくり抜いて作ります。中は空洞。職人が手彫りのみですべてを5ミリの厚さに揃えます。彫るだけで半年かかるんですよ」。
しかも、その前の準備期間が長い!「良さそうな木を見つけてきて、8年間雨ざらしにする。倉庫で1年半乾燥。半年かけて削る」。
さらに、「白木のものが飴色になるまでに30年、黒くなるのにその後50年。代々家に伝わり使い続けるスパンの長い楽器です。元々中世の楽器で今も形が変わっていない。古楽器だが現役。アフガニスタンにあったために生き残ったのかもしれません」

e0063212_20572158.jpg
(ネックにかけられた鈴が哀愁のリズムを刻む)

基本的に時間の感覚が違う。また譜面とか規格とかはなくて、なんとなくいい加減のようでありながら、全体は絶妙にうまく合う。「熟成」という言葉が浮かびました。
若さ、新しさ、スピード、変化、このような日々とは対極にあるような趣きや態度。昨今の価値観や感覚とはかなり異なる世界ですが、だからこそ、ときには浸りたくなるのだと思いました。

企画してくださったアフガン研究会の皆様、貴重な経験をどうもありがとうございました。

e0063212_20563573.jpg
(民族衣装胸当て刺繍部分)
by orientlibrary | 2011-01-30 21:13 | 美術/音楽/映画