イスラムアート紀行

orientlib.exblog.jp

タグ:タイル ( 165 ) タグの人気記事

レンガとタイルの美 インジェ・ミナーレ・マドラサ

アナトリアのセルジューク朝、コンヤの装飾タイルと建造物。更新は、まだ「クバダバード宮殿」のタイルのみ。今後アップしたいのは、、

*「カラタイ・マドラサ」(セルジュークを象徴するようなモザイクタイルが圧巻。「クバダバード宮殿」のタイルや陶器が展示されている博物館でもある)
*「スルチャル・マドラサ」(屋外で剥離や損傷もかなりあるけれど、カリグラフィーから幾何学模様まで、最も惹かれた多彩なタイル装飾が魅惑)
*「サーヒブ・アタ廟」(濃いターコイズ青、タイル、多彩な装飾が素晴らしい)
*「エシェレフオール・モスク」(圧巻のミヒラーブ、言葉に形容しがたい。コンヤ郊外のベイシェヒール=クバダバード宮殿のあった場所=にある)
*「アラアッディン・モスク」(ミヒラーブは見られなかったけれど棺やミナレットの青を確認)

など、もう、どうしよう!という圧倒的なセルジュークのタイルたちなのです。困ってばかりもいられないので、今回は「インジェ・ミナーレ・マドラサ(THE INCE MINARE MADRASA)」を、写真中心にて。(現場ではひたすら熱中しており、調べたのは後のこと。写真と文章が必ずしも呼応していないかもしれませんが、全体の雰囲気でお願いします)

--------------------------------------------------

e0063212_2346167.jpg


インジェ・ミナーレ・マドラサ、創建は1264〜68年。セルジューク朝の大臣サーヒブ・アタ・ファーレッディン・アリ(サーヒブ・アタ廟のアタさんですね)により、ハディース(ムハンマドの言行録)を教えるために創設されたそうです。インジェ・ミナーレとは「細い尖塔」の意味。

設計はケリュック・ビン・アブドラー。19世紀末まで神学校として機能していましたが、1956年に博物館として開館。セルジューク朝、カラマン候国、オスマン帝国時代に作られた工芸品も展示されています。

e0063212_23464746.jpg


イスラムタイル好きの私、トルコというとタイル、イスラムという連想になるのですが、地中海〜アナトリアあたりは歴史、宗教、文化、すべてが重層的であり、キリスト教、東ローマ帝国、石造建築など、さまざまな表情が織り込まれているように見えてきます。

インジェ・ミナーレ・マドラサは「セルジューク朝の石工芸術の傑作」とも言われており、ファサードは、地中海的な植物文様、幾何学模様、カリグラフィー(「ヤシンとフェティフ」の文字)が彫り込まれています。タイル好きも見入るボリュームと精緻さです。

e0063212_23472296.jpg


一方、ミナレットはレンガ造の中のターコイズブルーのタイルが目を引きます。バルコニーの部分は半ピラミッド形で12の角があり、ターコイズ青のラインが垂直に走ります。ジグザグ模様はターコイズ青とセルジュークの紫で。青と紫とのコンビネーションは、遠目にも鮮やか。青空の下でイキイキした旋律を奏でているかのようです。

e0063212_23475874.jpg


建物に入ると、中庭、サロン、教室、神学生たちのための小さな部屋があります。ドームのあるホールはむしろレンガの印象が強く、タイルはレンガを美しく見せるためにあるかのようです。茶色と青は、強く美しく、響き合うんですよね。最強の組合せ!

e0063212_23494599.jpg


タイルは、カラタイ・マドラサに見られる三角形を組み合わせた天井への持ち上がり部分にラインのみ。が、ラインの中にはモザイクでパルメットのような模様が黒で描かれています。

e0063212_23485668.jpg


ドームは青と紫の組合せ。模様はジグザグと菱形をベースとしたもの。専門書には「キリムのデザインと共通点がある」とも。

e0063212_23493060.jpg


また、ミヒラーブ形の窓の上部などに幾何学模様、そしてカリグラフィーと植物模様の組合せのタイルが。各所でデザインが異なり、リズムがあります。どれも、とてもキレイで、見とれます。

e0063212_23502366.jpg


e0063212_2351790.jpg


インジェ・ミナーレは、日本からのツアーでコンヤに行くコースにも入っているようです。ツアーのコンヤでは、旋回で有名なスーフィー教団「メブラーナ」の博物館がメインで、プラス、こちらのマドラサ。有名な観光地に比べてサラッと通りがちなようです。

元々、日本であまり馴染みのない装飾タイル、その中でもセルジュークの青と黒のタイルは、残念ながら地味なのかも。イスタンブールの華やかな絵付けタイルに人気が集まるのは理解できます。でも、セルジュークのタイル、最高です!私はそう思います。圧巻。圧倒的なのに、愛おしい。1200年代の工人たち、その匠に惹かれます。

e0063212_23512153.jpg


--------------------------------------------------

展覧会など、少々。

魅惑のコスチューム:バレエ・リュス展」(新国立美術館):この分野、まったくわからないけれど、「バレエ・リュス  踊る歓び、生きる歓び」という映画の後で展示を見たので、展示展開についていけました。工芸品としての衣装という視点では世界各地には、より驚愕の手仕事が多数あるけれど、舞台総合芸術として見るとテーマや表現として斬新なコスチュームだと思いました。中央アジアテイストのものが少しあり、やはりそのあたりには惹かれた。映像等で補足しながら見るのがよいかも。バレエ・リュス(ロシア・バレエ)のダンサーたち、重厚で軽やかで芸術的!(入場料1500円、図録3500円、、5000円時代ですか。国立なのだからもう少し抑えた料金にできないのでしょうか。上野の東博、常設はたしか600円くらいですが、超見応えありですしね、、)

超絶技巧!明治工芸の粋」(三井記念美術館/7月13日まで):明治工芸すごし!その精緻さ、チマチマしているのではなく勢いがあると感じます。このジャンル、もっと見たりスタディしたい。明治、日本のタイルや建築も含めて、勉強したい。

フランス印象派の陶磁器 1866-1886―ジャポニスムの成熟―」(汐留ミュージアム/6月22日まで):19世紀後半のフランスが憧れた東洋や日本の美術が色濃く反映されたテーブルウエアや陶芸作品。どちらかというと苦手な分野だけど、陶芸ということで視野を広くと思って見学。滲み出るフランス流のアレンジが興味深い。

--------------------------------------------------

タイル。さまざまなタイルやタイルを愛する人や、タイルのデザインや研究に、最近、リアルでもネットでも、不思議と出会うんですよね。びっくりです。この流れは、どうなっていくのかな。
by orientlibrary | 2014-06-21 23:59 | トルコのタイルと陶器

セルジュークの八角星とクロス、クバダバード宮殿のタイル世界

アナトリア・セルジューク朝、コンヤのタイルについてアップしたいと思いつつ、ずっと「資料がない」と困っていました。が、資料ありました。なんと、本棚と資料ファイルに。ありましたどころじゃない、ずっしり重く内容濃く、これ以上ないほどに完璧な資料。もう〜、何してるんでしょう〜〜!(汗) 

e0063212_2157523.jpg
(『The Art of the Islamic Tile』 =セルジュークようやく読了、でもまだまだわからないと思っていたら、、/『TILES / TREASURES OF ANATOLIAN SOIL/ TILES OF THE SELJUK AND BEYLIK PERIODS』=400ページ以上すべてセルジューク朝&ベイリク時代のアナトリア・タイルの本!歴史、図像、製法、成分までびっしり。大喜びするも、読むのに要する時間を想像して引いた、、でもザッとでも!!/『CERAMICS FROM ISLAMIC LANDS』は陶磁器メインだけど関わりもあり/「イスラム建築における陶製タイル」=著者はギュニョル・オネイ。コピー元は『装飾タイル研究』という専門誌だった記憶。トルコの研究家によるメソポタミアから16世紀頃までのタイル史。50ページ超。とくに11世紀からのイラン、トルキスタン、アナトリアというタイルの主要舞台に詳しい)

「イスラム建築における陶製タイル」、読んだのは一度や二度じゃないはず。でも覚えてない。そんな自分を認識し、何度でも読むしかないです。そして『TILES / TREASURES OF ANATOLIAN SOIL』に圧倒され、どこから手をつけようと、、建造物のタイルに行く前に、発掘のすばらしいタイルを、と思います。クバダバード宮殿(1236年)の星形と十字形のタイル!!

これらのタイルが展示されているのは、カラタイ・マドラサ(コンヤ、1251年創設)。陶器とクバダバード宮殿出土品を展示する博物館にもなっています。圧巻のモザイクタイル装飾は次の機会にしっかりご紹介することにして、今回は「イスラム建築における陶製タイル」の文章(及び要旨)を引用しつつ、画像とともにお送りします。

e0063212_22103432.jpg
(カラタイ・マドラサ、The Karatay madrasah/セルジューク朝時代のタイル装飾が圧巻。19世紀末まで神学校として使用。1955年「陶器博物館」として開館/ドキドキして入って行くと、、)

e0063212_21574823.jpg
(カラタイ・マドラサ入口、いきなりこんなタイルを発見。クラクラ、、オリジナルの色、ターコイズやコバルト青も透明感があり惹かれるが、濃紫がまた美しい。セルジュークならでは!)

 「イスラム建築における陶製タイル」より。以下…後同様/ 宮殿の装飾に用いられた一群のタイルは、宗教的な建造物とは異なり、完全な形のまま今日まで残っているものはない。宮殿のタイル装飾については発掘調査を通じてのみ、知ることができる。

 宮殿のタイルは、宗教的な建造物に使われていたものとは、多くの点で異なっている。第1に、形状が異なる。宮殿で好まれたタイル装飾は、いわゆる星形と十字形の組合せである。端から端まで23センチの星形のタイルが、十字形のつなぎタイルとともに用いられている。

 第2に、タイルの種類、または施工の技法が異なっている。最も一般的に用いられた種類は、下絵付けタイルである。ラスタータイルはあまり一般的ではない。

 第3には、タイルの装飾が異なる。これはクバダバードの収集品によって、明らかである。

e0063212_21581998.jpg
(クバダバード蒐集品展示室。星形と十字形!こんなにたくさん集まった状態で見るのは初めて!しかも絵付けの素晴らしさに目眩がしそう。なのに、光がガラスに反射して見にくいし、写真が撮れない!どうがんばっても撮れない。こんなすごいタイルを前に、、残念無念でした)

e0063212_2158405.jpg
(気持ちだけ、反射がなかったら、、、)

e0063212_21585594.jpg
(この色、この模様。右はコンヤのシンボルでもある有名な双頭の鷲、セルジュークの紋章)

 コンヤの南西、ベイシュヒル湖岸のクバダバード宮殿で行われた発掘調査によって、セルジューク朝時代で最も注目に値するタイル装飾が明らかになった。

 クバダバード宮殿は、1236年に完成。セルジューク朝のスルタン、アラエッディン・ケイクバドの夏の別荘として用いられた。タイルのほとんどは、非常に興味深く、人間や動物の、革新的な絵柄で装飾されている。(*Kubadabad Palace was a complex of summer residences built for sultan Kayqubad ruler of the Sultanate of Rum. )

e0063212_2212355.jpg
(『TILES / TREASURES OF ANATOLIAN SOIL』を撮影/クバダバード宮殿址、コンヤ近郊/発掘の様子/タイル、イキイキしている。きれいに撮れていて羨ましい/成分分析から、窯、タイルすべての模様の解説が。すごい本!)

e0063212_2203339.jpg
(こんな宮殿だったんじゃないか、という想像図面。カケラたちにも狂喜!)

e0063212_2205633.jpg
(カケラのアップ。熱狂。この色、この照り、この模様、この土、、、。イスタンブル在住のタイル友二人と私以外、誰もいないマドラサ。もうタイルと陶器に浸りきり、、)

e0063212_21593420.jpg


e0063212_21594416.jpg


 人物像としては、召使いとともに宮殿の高官が描かれている。人物像のほかに、スフィンクス、サイレーン、双頭の鷲、孔雀、生命の樹のまわりの一対の鳥、一対の竜などの魔術的な象徴動物が、タイルを飾っている。一連の実在動物も描かれている。この中では、狩猟動物や狩猟風景が強調されている。猟犬、狼、キツネ、野ウサギ、野山羊、カモシカ、野生ロバ、クマ、馬、ライオン、ヒョウ、鷹、ハヤブサなどが、飛び跳ねたり疾走する姿が優美な動きで表現されている。

 ザクロ、またはケシの枝が、地模様を形づくり、一般的には中央のモチーフを囲んでいる。絵柄は十字形タイルで仕上げられている。

 壁の上段は、普通、魔術的な動物の描かれたタイルで占められ、魔術的な世界や宮殿の高官を表現している。一方、実在する動物は下段に集中している。

 星形タイルでは、文様は通常無色透明の釉薬の下に、ダークブルー、紫、トルコブルー、黒、暗緑色で描かれている。つなぎ十字タイルは、トルコブルーの地に黒いアラベスク模様用が描かれている。素地土は、かすかに黄色味をおび、きめ粗く、くだけやすい。

e0063212_220206.jpg


e0063212_220111.jpg


あ〜、素晴らしい。憧れの八角星とクロスのタイル、大好きな青。コンヤでの幸せなタイル時間に感謝!


---------------------------------------------------

始まる。日本での、タイル・モザイクの、新しい物語。


e0063212_21562477.jpg


さて!タイル、モザイク、日本でも何かが始まるかもしれません。じつは、若干、始まっております!^^

試行錯誤は覚悟の上で、ささやかに、でも情熱とワクワクする気持ちを満載に、先日、「タモガク」がスタートしました。初期メンバー4名、もうテンションがどんどん上がってます。

ところで、タモガクとは!?泣く子も喜ぶ、「日本装飾タイル・モザイク学会」なのです!すごいでしょ。言ったもん勝ち、というより、本当にタイルとモザイクを学びたい、楽しみたい。だから学会。

当面、タイルやモザイクへの熱い思いを心ゆくまで語り合いながら、展開を考えていきます。当ブログでも、少しずつご紹介していきますね。
by orientlibrary | 2014-06-11 22:12 | トルコのタイルと陶器

日本のタイルびとたち&やっぱりタイルが好きだ!

---------------------------------------------

アトリエ「ユークリッド」


「タイルがどのくらい好きか」について語り合う機会が少ない(ほとんどない)と嘆いている私に、先日、あるメッセージが。<タイル好きが集まってバーベキューをします。来てみませんか>。え〜、タイル好きって、日本で??<ほとんどが20代、30代の女性です>。若い女性がタイル好き?ホント??

正直、内心は半信半疑。でも若い女性に好まれそうな「イチゴ、チェリー、赤ワイン」をエコバッグに入れて、イソイソと出かけてみれば、、、わ〜〜っ!ホントだ、、本当に若い女性ばかり!しかも美人ばかり!

e0063212_2303665.jpg
(「ユークリッド」の名付け親はモザイク師の荒木智子さん。
タイルやモザイクは無限なる宇宙であり、
幾何学であるという見解が一致しての命名となった、そうです/青の時計や八角星のチェスなど女性の心鷲摑み系!?)

そこは、タイル職人・白石普(しらいしあまね)さんのアトリエ「ユークリッド」。タイル張りのバーベキュー台には血のしたたるような肉、肉。しかもデカイ。さすが。同年代だと干物、酢の物、梅干し入り焼酎などサッパリ路線なので、すでに軽いカルチャーショック。

美人さんたちに見とれていると、奥にヒゲの男性を発見。この日本で、タイルをデザインし、制作し、施工をおこなうことを生業にしている人。イタリア留学、モロッコの専門校と工房でのモザイクタイル修行。タイルやモザイクが息づく土地で暮らし学んだ経験が素晴らしい。(詳細は、「タイルびと」(チルチンびとWEB連載)で。端的でリアルで臨場感とリズムのある文章。写真や図版も。日本にこのようなタイル人がいることが、うれしい!)

アトリエは、「タイルを愛する人が集えるように団欒スペースを設け、
教室や作品展も開けるタイルサロンとし、「ユークリッド」と名付けた」(タイルびと、より)。開放的な空気、白石さんの明るく率直な人柄。これは人が集まります。

e0063212_231268.jpg
(壁面を飾るのはイランと思われる絵付けタイル!白地で品のいい絵柄、いいですね〜!/モザイクのテーブルなども)

女性が多いのは、女性の方が好奇心と行動力があることも関係している気がします。(美人が多いのは、、なぜ!?)イタリアでモザイクを修行した専門家、自分のデザインでタイルを作りたいという絵描きさん、タイルに関わる人たちのコーディネートをしたいというタイルショップの方、施工にチャレンジしている女性、アラベスク模様のタイルがたまらなく好きという女性。わ〜、すごい。

アトリエに来たきっかけを聞いていると、「タイル」をネットで調べてこちらに辿り着いたという人が多かった。そういう層があり、ニーズがあるということなんでしょうか。その気持ちに応える場が少ないということなのかなあ。

「女性が好きなのは小さくて可愛いもの。女性はタイルが好きなんですよ」(参加した女性)。なるほど。小さなタイルのちょっと盛り上がった風情、釉薬のキラッとする光沢、温かみのある土の質感、星などの「カタチたち」が織りなす幾何学模様の愛しさ、安心感。また白石さんのタイルは青系が多く色がきれい。若い女性たちの琴線に触れること、わかる気がします。

e0063212_2303111.jpg
(「私は23歳の時にタイル職人を目指した。陶芸家の父。イコン画家の母。
そんな両親の影響で留学したイタリアで、幾何学模様の大理石の床、
絨毯のようなガラスモザイクの壁や天井、石積みやレンガ造りの躯体のままの意匠、
数々の魅力的な空間に出会い、こういうものに関係した仕事がしたいと
漠然と思いながら帰国したのが、22 歳のときだった」(タイルびと、より)/右上:青い鳥のモザイクタイル、サンプル作品。素敵!色は本番ではもっとクリアになるとのこと。私の好きな青2色。楽しみ/右下:パーティの様子。次々と訪問があり中に入りきれないほど!)

ウズベキスタンの工房でも、「あまりに大変でやる人がいない」「値段が高くつき過ぎて現実的に無理」というモザイクタイルの制作と施工。西アジアのタイル産地でも、有名な建造物の修復現場を除き、モザイクタイルは稀少でしょう。それを、この日本で、個人でやっているなんて。しかも美しい。デザインも施工も。自由で緻密。

白石さんの仕事については、きちんと取材してから書きたいです。このブログの「タイル人(たいるじん)」に、ぜひ登場して欲しいな。


---------------------------------------------

タバコ屋のタイル〜日本のタイル


じつは、もうひとつ、タイルがらみのトピックがあります。

ある時、facebookの「おすすめグループページ」という欄を見るでもなく見ていたら、「タイル」という言葉が目に入り、そのページに入ってみてビックリ。タバコ屋のタイルや街角のタイル、日本の近代建築の中のタイル写真をいろんな方々(建築関係の方が多い印象)が投稿。とくに全国くまなくタイルを見て歩いている方(女性)のエネルギーに脱帽しました。

e0063212_2325514.jpg
(このトピックとは直接関係ありません/岐阜県多治見笠原の「モザイク浪漫館」にて)

さっそく仲間に入れていただきましたが、日本のタイル中心の様子なので、イスラームのタイル写真は外れてしまうなあと遠慮。が、次第に自分も参加したい気持ちが高まり、かの地の街角タイルなどを投稿中です。

日本のタイルは、数年前まで全く見ていなかったので新鮮です。レトロで(古いものなので当たり前ですが)温かみがあって誠実な感じがします。グループに関しては、いろんな視点、視線で見ることの面白さを感じています。興味を持つポイントがそれぞれ違う。そのタイルが好きかどうかは別として、触発されます。

e0063212_234965.jpg
(このトピックとは直接関係ありません/瀬戸にて)

コメント欄もあるので、投稿写真についてのやりとりも。つまり結果的に、「タイル話」をしていることになります。ずっと「タイル話」がしたかった。こういう形でできるようになるなんて。


--------------------------------------------------

タイルが動く?


この間、感じていること=不思議さ、感慨、ちょっと微妙な気持ち、それでも前に行こうという思い。

・白石さんのアトリエ、日本のタイルのFBグループ。ネットを通じてタイルに関心のある人が集まっていること。タイルが好きという人が少なからずいること。とくに若い女性。

・個人的には、これまでできなかったタイル話ができそうという感慨。

・ただ、ちょっと微妙なのは、やはり私の好きなタイル、植物文様の圧倒的なモザイク、西アジア〜中央アジアの濃いタイル文化、12〜17世紀前半頃までのイキイキしたタイルは、それでもまだまだ、とってもニッチなのだと気づかざるを得ないこと。

・では、あくまでも好きなタイルだけを見ていくのか、と考える。それではいつまでも浅いタイルファンのままかもしれない。触発され、ときには反発もし、でも良さを認め合い、だから一層自分の好きなタイルが見えてくる、のかも。実際、この間、どんどんタイルが好きになっているのです。

e0063212_2364249.jpg
(ブハラのタイル)

<5月26日8時AM 追記> 「基本構想から約2年半、ようやくその姿を現します。27日、名古屋 でプレス発表。藤森照信流、土でできたモザイクミュージアム」だそうですよ!ついに!タイル、動いていますね☆

<5月28日 追記>  発表になりました。「多治見市モザイクタイルミュージアム」、2016年6月オープン予定!概要はこちら=「タイルのまち」象徴 多治見市がミュージアムの概要発表


* * * * * * *
今回は、「神宮外苑と国立競技場〜解体中止と改修検討」「明治神宮」について、「自由学園明日館」「江戸東京たてもの館」「超絶技巧!明治工芸の粋(三井記念美術館)」「フランス印象派の陶磁器 1866-1886―ジャポニスムの成熟―(汐留ミュージアム)」なども、少し用意していました。回をあらためて、明治工芸、明治建築などについて書いてみたいと思います。今回はタイル特集でした!

<こちらは緊急性もあります。ご関心がありましたら読んでみてください!>
神宮外苑と国立競技場を未来へ手わたす会
新国立競技場の何が問題なのか──中沢新一氏と伊東豊雄氏が問題提起
by orientlibrary | 2014-05-25 23:13 | タイルのデザインと技法

圧巻コンヤ、セルジュークのタイル、大急ぎアップ編

更新少なく、お立ち寄りいただいている皆様、ごめんなさい!大急ぎで、セルジュークタイルをいくつかご紹介。今回はザクザク編、、近いうちに記事にします!


e0063212_1471797.jpg
(The Karatai madrasah/アナトリアのセルジューク朝の首都だったコンヤ、歴史的建造物は街の中心地に点在。ルーム・セルジューク朝時代を代表する傑作カラタイ・マドラサは1251年創設。19世紀末まで神学校として使用されていた。圧巻のモザイクタイル)


e0063212_14746.jpg
(THE INCE MINARE MUSEUM/インジェ ミナーレ神学校 (1267年))


e0063212_1473275.jpg
(THE SIRÇALI MEDRESE/セルジュークのタイル、どの建物のタイルも圧巻だったが、とくにスルチャル神学校(1242年)のタイルには魅了された。技術は年代を重ねるごとに右肩上がりに高まるものではない、それを見せつけられたセルジュークタイルの旅だった)


e0063212_1474422.jpg
(Esrefoglu Mosque, Beysehir/エシェレフオール・モスク(1296〜1299)、ベイシェヒール=コンヤ近郊。ベイシェヒールには、カラタイマドラサに展示されている素晴らしいクロスと八角星のタイル群が壁面を覆っていた「Kubadabad Palace」(夏の宮殿)があった。セルジュークのタイルが花開いた地域)
by orientlibrary | 2014-05-19 01:53 | トルコのタイルと陶器

トルコ・タイル旅 街角編

アナトリアのセルジューク、コンヤのモザイクタイルとの出会いは鮮烈でした。

成田からイスタンブールへ、国内線に乗換えてコンヤ(セルジューク朝の首都だったアナトリアの都市)についたのは早朝。待合せのホテルで無事に、イスタンブール在住のタイル友、KRさんとKUさんの笑顔に会うことができてホッ。チェックインを済ませて、さあ、さっそく動きます!元気元気!

最初に訪れたマドラサ(カラタイ・マドラサ)、入った瞬間から圧倒され、数時間、皆無言。それぞれに、見る、撮る、浸る。他に来場者もなく、タイル好きには至福の時間です。その後、訪れたマドラサやモスクでも同様に、見る、撮る、浸る。

今回、ブルサとイスタンブールでもタイル三昧。写真はバシャバシャ撮りなので、また1500枚を超えています。でも、今回の見学先の数はそれほど多くない。つまり同じタイルを何度も何度も撮っています。中央アジアとはまた違うタイルの良さがありました。

そんなタイルについては回をあらため、まずは写真メインで軽〜い話題、雑談気分でごらんください。気候は、日本が寒い冬であるせいか、それほど寒さを感じず。内陸部のコンヤ、覚悟の防寒準備が、ダウンコートどころか機内用のヤッケでも暑いくらいのポカポカ陽気でした。

e0063212_22152571.jpg
(コンヤはイスラム神秘主義メヴレヴィー教団の聖地。宗教都市のイメージが強く、実際にそういう面も各所で感じましたが、高層ビルもあり目抜き通りは賑やか。各地からの観光客で賑わっています/上段右は、50年前にドイツに移民したトルコ人家族を描く映画『おじいちゃんの里帰り』の看板。各地にあり、関心の高さがうかがえた/下段のクルクルした植栽、さすがセマー(旋回)の都!木も合わせている!と感心していましたが、他の都市でも見かけた。こういうスタイルが流行っているのかも??)


e0063212_2225276.jpg
(トルコのタイルにチューリップとともに描かれることの多いヒアシンス。トルコの人たちの好きな花のようだ。春が待ち遠しい時期、アーモンドや木蓮の淡いピンクが、心をほっこりさせる)


e0063212_2229936.jpg
(コンヤで宿泊したHich Hotel Konya 。booking.comの評価が9.6〜9.8という高さ。それも納得の大満足の宿だった。メブラーナの向かい側という立地、安らげる適度な規模、古い建物や調度を再利用し今風な快適さと両立させた空間、細部までこだわったカジュアルなデザイン、ゴテゴテしていないおいしい朝食、なのにリーズナブルなお値段。歴史のあるホテルをリニューアル開業して1年。若いセンスだけでなく地元の伝統へのリスペクトが随所から伝わり感心した)


e0063212_22391686.jpg
(お約束のようなバザール編。どの国でも街でも、バザールは楽しい。こちらはイスタンブールの庶民のバザール。グランドバザールやエジプシャンバザールとはまた違い、観光客はほとんど来ないところ。ジモティKさんに連れて行ってもらった。日用品や日用衣料、生鮮食品がメインだが、グランドバザールはなんだったんだろうと思う価格帯。安い!こういうところで買物すれば、物価の高い印象のあるイスタンブールでも暮らしていけるかなと感じた。写真は閉場ちょっと前の場面なので静かだが、人であふれかえる活気がすごかった)


e0063212_22444088.jpg
(とくに何というわけではない写真だけど、トルコらしいなと思った。町中に野良ちゃんの大型犬がリースなしで歩き回っているのがすごい。狂犬病予防はしているらしいけど、ちょっとコワイ。日本はプチサイズのあくまでペットのワンコが多いので、大型犬にちょっと驚く。そして猫。トルコではなく「トネコ」かと思うくらい、猫が多いと思う。そういえばイスタンブールの猫のテレビ番組があったな。あまりに多すぎると憤慨している人もいたけど、基本的には受け入れられている感じ。気ままに街を闊歩する猫の多さが、土地の自由でのんびりした印象につながっているのかな)


e0063212_22562883.jpg
(こちらも町中エピソード集。柿がこの時期もツヤツヤして売られていた。傘がさしかけられた店頭。イスタンブールは毎日雨だったけど、それもまた良し。どんな気候でも絵になる街。すごい。海あり高台あり、美観に裏付けられた歴史遺産とそれらが織りなすスカイライン、財産。世界中から観光客がワサワサと訪れる。観光を打ち出す日本、見習う点が多いと思った/上段右:ブルサにて。こういう建物も多い。地震を考えたくない建物が非常に多いと思う/下段左:イスタンブールの骨董街にて。自由な感性が満ちて楽しい一角。この店は「ガラクタ度」が高く微妙すぎたが見るには楽しかった/下段右:今も恐ろしくなる、、肉や油物に弱いので後半だんだん食べるものがなくなってくるのが常。何かスイーツでもと思って入ったカフェ。ムースかプリンにしておけばよかったのに、、、みんなが食べている大きなケーキを食べてみたくて、写真のメニューを見て選んだのはフルーツ系ケーキ。が、来たのはこれ!上のビザンチンのモザイクみたいな小石状の一粒を口に入れると、、超激甘爆弾が炸裂!チョコに砂糖がコーティングされている。大量に乗っているばかりかスポンジの中まで!白いチョコ柵も激甘。早々撤退したが今見ても恐ろしい、、)


e0063212_2372666.jpg
(町中にタイル装飾が多い。伝統的な水場などだけでなく、駅の壁面の陶の装飾が目を引く。それぞれ工夫があり、楽しい。タシケントの地下鉄駅も素晴らしいタイル装飾が各駅を彩るが写真禁止。トルコは写真もOK。この自由さがうれしかった。ホントにその点がハッピーだった。トルコ旅、全体にとてもスムーズで快適だった)


最後のタイル写真の流れで、、町の中のタイル装飾、タイルで美しく飾った建物や民家、そういう場面は、なにもヨーロッパだけじゃない、というか、むしろ中東、中央アジア、マグレブなどの地域が圧倒的に「本場」です。が、「タイルのある街角」みたいな記事をたまに見ると、ほとんどヨーロッパ。理解に苦しむ。多彩でゆたかなタイル文化があるエリアを、なぜ取材紹介しないのかわからない。ヨーロッパの方が取材に行きやすいから??「産業タイル」ではヨーロッパが先進だから??それが理由??

テレビを見ると、中央アジアの大都市でも「秘境」になっている。秘境って、パミールの山岳地帯など非常に行きにくい場所を言うのかと思っていたが、今どきは、聞いたことがない、行ったことのない地域のことを秘境と言うようだ。

ブログを始めた9年ほど前とは状況も少しずつ変わり、タイルが好きという人にもけっこう出会うようになった。この点は、とてもうれしい。でも、「タイルをめぐる環境」みたいなものは、あまり変容していないと感じる。このちっぽけなブログ、微力でもやはり続けていくつもりです。

たぶんなら、次回からご紹介予定のセルジュークのモザイクタイルは、あまり反応がないと予想しています。華やかさに欠ける。印象が地味で重く、無骨といえるかもしれない。青のfacebookでも、12、13世紀頃のタイルはあまり人気がないのです。それでも、アップしちゃいます!自分がいいと思ったものを。タイルの歴史からみても、とても大切な時期のものを。中世の匠たちの手技と幾何学の凄みを。

後半、叫んでしまってますが、これからも楽しくやっていきます^^また遊びにお立ち寄りくださいね。
by orientlibrary | 2014-03-07 23:34 | トルコのタイルと陶器

セルジュークへ

セルジュークへ。時の旅へ。

e0063212_22443270.jpg


ルーム・セルジューク朝(1077年 - 1308年)。セルジューク朝(テュルク系遊牧民オグズの指導者セルジュークおよび、彼を始祖とする一族に率いられた遊牧集団(トゥルクマーン)により建国)の地方政権として分裂して誕生。アナトリア地方を中心に支配したテュルク人の王朝。当初、首都はニカイア(現在のイズニク)。1097年にニカイアが占領されたため、再びコンヤを都とした。「ルーム」とは「ローマ」の意味。ビザンツ帝国(東ローマ帝国)領であったアナトリアの地を指す言葉としてイスラム教徒の間で用いられ、アナトリアを拠点としたことからルーム・セルジューク朝という。

e0063212_2245592.jpg


13世紀に入ると、ルーム・セルジューク朝は最盛期を迎え、東はアルメニアから南北は地中海、黒海両岸に至るまでのアナトリアを征服し、対岸のクリミア半島にまで勢力を延ばすに至り、コンヤはその中心として繁栄を極めた。

e0063212_2246178.jpg


ルーム・セルジュークの治下ではアナトリアの都市にモスク、マドラサ(学院)が多く建設され、この時代にはアナトリアのイスラーム化が進んだ。コンヤには、カイクバード1世の建立したアラエッディン・モスクやセリム2世のセリミエ・モスクなど多くのモスクがあり、アナトリア随一の宗教都市として繁栄したかつての姿を現在に伝えている。

e0063212_22515263.jpg


1228年には中央アジアのバルフ(現在のアフガニスタン北部)に生まれたイスラム神秘主義者、ルーミー(メヴラーナ)がカイクバード1世の招請によってコンヤに定住、1273年に亡くなるまでコンヤで活動し、トルコを代表する神秘主義教団であるメヴレヴィー教団を開いた。

e0063212_22474199.jpg


中央アジアの香りのするアナトリアのタイルの世界へ。
そして華やかなオスマンとも触れ合って。
タイルに会いに行ってきます。Gidiyorum!

e0063212_22483865.jpg
(キュタヘヤ旧市街 青の館にて)

*参照:wikipedia、その他コンヤ関連資料より。
*写真上から5点は、チニリキヨシュク、キュタヘヤ博物館で撮影したもの、orientlibrary。
by orientlibrary | 2014-02-19 22:53

青のタイルとやきもの 2014

あっという間に20日になっていました。タイルの歴史や建造物についてコツコツと調べて少しずつ入力していたExcelのファイルが壊れ、気を失っていましたが、Mac神Sさんのおかげで本日、Excelも本人も回復。準備していたタイルセレクト12、カレンダーっぽく(日がないカレンダー!?)アップしてみます。インタビュー編である「中央アジア人」の「カザフ装飾文化」、原稿終了していますので、近日中にアップ予定です☆

---------------------------------------------

e0063212_206114.jpg
1月:ブルーモスク(マスジト・キャブード)/タブリーズ、イラン/カラコユンル朝、1465年/「カラコユンル」、訳して黒羊。イラン北西部からイラクにかけて権力を握ったトルコ系の王朝時代の建造物。カリグラフィー、植物文様のモザイクが圧倒的なまでに繊細優美なタイル装飾の傑作/Blue Mosque (masjed-e kabud)


e0063212_2061256.jpg
2月:シャーヒズインダ墓廟群/サマルカンド、ウズベキスタン/ティムール朝、14世紀後半(写真の廟はたぶん15世紀前半建造)/シャーヒズインダ墓廟はタイル装飾の博物館とも言われタイル技法の宝庫。幾何学文様、アラビア文字による銘文、様式化した小花文様が多い。サマルカンドの青い空と呼応する青の世界がたまらない魅力/Shah-i Zinda funerary complex


e0063212_2081718.jpg
3月:アイシャビビ廟/タラス、カザフスタン/カラハーン朝、12世紀/焼成レンガだけで作る風雅。レースのように軽やかな土色の美。ブハラの「サーマーン廟」(10世紀)など多彩な模様の焼成レンガのみで作られた建造物もまた、西アジア中央アジアの土の魅力を発現して美しい/Aisha-Bibi


e0063212_2091059.jpg
4月:ナディール・ディヴァン・ベギ・マドラサ/ブハラ、ウズベキスタン/ブハラハーン国、1622年/ファサードの二羽の不死鳥と太陽の顔を描いたタイル装飾で有名。ファサードだけでなく外壁、中庭、渡り廊下に至るまでタイルの魅力が満載。多彩なデザインと技法で描き尽くす。かの地で14世紀頃から愛され発展してきたタイル装飾が成熟した時代の美しさを堪能できる/Nadir Divan-Beghi Madrasah


e0063212_20101524.jpg
5月:アリシェル工房/リシタン、ウズベキスタン/フェルガナ盆地の東にある中世からの陶芸産地リシタン。伝統の色、技法、図柄を守る工房が、現代のデザインにもチャレンジしながら腕を競う。アリシェル工房は自由闊達な筆使いが魅力。師匠と弟子学校の場でもあり若い弟子たちがウストから伝統を受け継ぐ/Alisher Nazirov studio


e0063212_2010245.jpg
6月:トゥラベク・ハーヌム廟/クニャ・ウルゲンチ、トルクメニスタン/ホレズム・シャー朝、1370/イルハーン朝のタイルの影響を受け、流麗な文様を描く廟。ドーム天井の装飾はタイルの宇宙。タイル装飾の至高。14世紀にこのようなタイル世界に到達していたこと、土から作る至高の美を尊敬する/Mausoleum of Tughabeg Khanum


e0063212_20121437.jpg
7月:ティラカリ・マドラサ/サマルカンド、ウズベキスタン/1646〜1660年/レギスタン広場正面にあり、ファサードから中庭までタイル装飾が美しい。金箔を施した内部装飾が有名。写真は中庭の壁面ディテール。修復されていないモザイクタイル装飾、製作過程が垣間見え興味深い。埋め尽くすイスラームの美学に熱中するなか、このような偶然の余白を見ると、こちらもまた好ましく映る/Tilya-Kori Madrasah


e0063212_20101021.jpg
8月:ザンギアタ廟/タシケント、ウズベキスタン/オリジナルはティムール朝の15世紀か/地元ムスリムに愛されている聖所。通えば願いごとがかなうという。老若男女が集い公園のような賑わい。礼拝の場は敬虔な空気が満ちる。青いタイルはどっしりとして趣きがある/Zangiata Mausoleum


e0063212_20104411.jpg
9月:ウスマノフ工房/リシタン、ウズベキスタン/陶芸産地リシタン、細密な絵付けが魅力的なウスマノフ工房。二羽の鳥の図柄は伝統的。「陶器の青は砂漠のなかの水のようなもの。心が安らぐ」。職人さんたちの遅い昼食、和気あいあいと/Rustam Usmanov studio


e0063212_20112232.jpg
10月:「青の魅惑 イラン・トルコ・ウズベキスタンのやきもの」展/INAXライブミュージアム、2011年/中東、中央アジアの建造物の青の輝き。その「青の遺伝子」は今も受け継がれている。日本で紹介されることの少ないイラン・トルコ・ウズベキスタンの現代のやきものを、現地の代表的な作家作品を通して紹介。写真はトルコ・キュタヘヤのメフメット・コチェル氏作品/The Allure of Blue -The Ceramics of Iran, Turkey and Uzbekistan


e0063212_20103087.jpg
11月:ブハラ旧市街モスク(名称不明)/ブハラ、ウズベキスタン/16世紀?/旧市街の観光名所ではない場所にある古いモスク。オリジナルと言われるタイルが残っており独特の濃い空気に包まれる。モザイクタイルは様式美に走らない力強さや親しさがある/ Bukhara, old mosque


e0063212_20115768.jpg
12月:ホジェ・アハマド・ヤサヴィー廟/トルケスタン、カザフスタン/ティムール朝、1370〜1405/壮大な廟建築。聖地として今も巡礼が盛ん。彩釉レンガとタイルを駆使した外壁の壮麗な装飾はティムール朝初期の優れた事例。青のタイル、色合いが深い/Mausoleum of Khodja Ahmad Yasawi
by orientlibrary | 2013-12-20 20:24 | タイルのデザインと技法

タイルと中央アジア話を中心に、ゲストハウスや民藝なども

中央アジア、タイルを中心に、街歩きトピックをまじえ、ダダダと行きます。

---------------------------------------------

ゲストハウス、バーラウンジのタイル

最初の話題、東京蔵前のゲストハウス「Nui.(ヌイ)」のタイルです。まず、「ゲストハウス」という業態(?)、日本でどのような状況か、動きか、ピンとくる方いらっしゃいますか。ゲストハウスという言葉自体、旅好きの若い層には馴染みのある言葉かもしれませんが、一般的には、「え、シェアハウス?」「あぁ、ユースホステルね!」というような言葉が立ち上がってくるのでは?

私もたまたま見つけたのですが、なんだか今どきのゲストハウス、ものすごくカッコいいことになってるんです。そして値段も手頃。いい立地。カフェ等を併設し、海外からの旅行者だけでなく、日本の若者や近所の方々にも親しまれています。

その先駆け的な存在が、3年前に開業した「東京の古民家ゲストハウス toco.(トコ)」(東京入谷)。築90年の古民家を改装しバックパッカー宿に。宿泊客を含め様々な人が交流出来るリビング&バーラウンジを併設。「宿泊は一泊2600円より。ゲストハウス泊が初めての方や、東京都内から週末の息抜きに来られる方まで、広く多くの方にご利用頂いております」。これは体験しなくては!と連絡した時は満室で泊まれず。まだ訪問もできていないのが残念。

そして同じチームが、蔵前に昨年11月にオープンさせたのがNui。6階建ての倉庫だったビルを大工さん、職人さん、仲間、ボランティアたちが、3ヶ月かけて手作りでリノベーション。隅田川に近く浅草寺も徒歩圏の立地で1泊2700円から。100人も宿泊できる規模でありながら、抜群の稼働率の高さが評判。

e0063212_2223036.jpg
(東京蔵前のゲストハウス「Nui.(ヌイ)。全国から集まったたくさんの人の手で作られた。1階のバーラウンジ、カフェタイムは9時から23時、誰でも利用可)

こちらも宿泊はまだなので感想は言えませんが、1階にあるバーラウンジがいい感じなんですよ。木や鉄や漆喰等の異素材ミックス。その中で、一列の青いタイルがアクセント、アイキャッチになっている。うれしいじゃないですか。

e0063212_2223115.jpg
(モロッコのタイル、土の味わい。キッチンも部分的にタイル貼り)

タイルはキッチンの壁面にも。すべてモロッコのものだそうです。さすが世界有数のタイルの国モロッコ。きちんとした中に味わいもあり、製品としての安心感があります。個人的には、これが日本の若手の手作りタイルだったらなあと想像してしまう。何枚かでもいいけど、ユーズドのジーンズのような手作りの青タイルだったら、空気がまた変わるだろうなあと。

---------------------------------------------

タイル愛好家・山本正之さん〜クリスチャン・ラクロワ&釉薬作り

INAXライブミュージアムのニュースレター、今号の特集は「世界のタイル〜山本コレクションにみるタイルへのまなざし」。

中東や中央アジアなどの旅先で出会ったタイルに魅せられて20年以上。けれども、装飾タイルの情報が少ない日本にあって、世界のタイル博物館や『イスラームのタイル』など、INAXのタイル関連の書籍がなかったら、関心が続いていたかどうかわからない。世界のタイルを蒐集した山本さんのコレクション。その展示と文章があっての私のタイル愛好。あらためて感謝の気持ちがわいてきます。山本正之さんの言葉です。

「多くの国でタイルの破片は、遠い日本から来た私に拾われたがって呼んでくれる。何気なく足元を見ると、不思議なことに、必ずといっていいほど落ちている。嬉しくて嬉しくて、まず掌にのせて重みを感じ、やがてじっと見つめると、その土地の土・砂・水などの環境もわかってくる。タイルがどんなふうに使われるのか、どんな人が施工に携わっているのかも。旅に出ると、いっぱい教えられる」

e0063212_22254564.jpg
(上段:「世界のタイル〜山本コレクションにみるタイルへのまなざし」特集/釉薬実験中、皿の青が理想/下段:インテリアライフスタイル展にて、「クリスチャン ラクロワ メゾン フォー デザイナーズ ギルド」、壁紙新柄は青いタイル模様)

* * * * * *
同じタイルでも、話がガラリと変わります。先日、ビッグサイトで開催された「インテリア・ライフスタイル」展で目についたのは、タイルの壁紙。「クリスチャン ラクロワ メゾン フォー デザイナーズ ギルド」の壁紙の新柄です。「アンダルシア地方からインスパイア」。なるほど。同じ柄のテキスタイルもありカーテンが紹介されていました。青だけでなく、いろんな模様を加えてデザイナーブランドらしい華やかさでした。

---------------------------------------------

ウズベキスタンに3年間住んだ漆作家、中村真さん

漆作品に触れる機会が少ない私。中村真さんの展覧会で拝見した漆の質感と色には、新鮮な驚きがありました。漆黒の夜にほの見える森の土のような黒、生命力を持つ植物のような緑、仏さまの手のような奥行のある質感。葉のかたちと合わせ、深く美しい世界を見せていただきました。

中村さんは、元々漆芸専攻でしたが、中央アジアの民芸に興味を持ち、タシケント暮らし3年。楽器工房で楽器を作ったり修理したりしながら、中央アジアの民族造形をテーマに研究をなさっていたそうです。日本に戻り、漆芸を再開。

e0063212_22263379.jpg
(六本木アクシス内サボア・ヴィーブルにて個展。〜器の原点とも思われる『葉っぱ』がモティーフ。「フォルムを追求できるので乾漆という技法で作っています。物作りの上での原点でもある『自然』を少しでも消化したいと思っています」〜)

「工房から早足15分で帰宅。旧市街の向こうの積乱雲は膨張を続け、空の色は明らかに黄色味を帯びてくる。洗濯物を急いで取り込み、家中の窓を締め切り、施錠の再確認をしてようやくお茶をひとすすりしながら西の窓を見張る。束の間の静けさは新緑のポプラ並木のざわめきで破られる」。タシケント時代の日記、抒情と温かみのある文章、いいですね!

---------------------------------------------

セレクトする眼、工芸喜頓

前々回アップした、突然の「いまどきの民藝」(若い人たちが愛好する「民藝のうつわのある暮らし、空間、食」とでもいうようなテイスト)への熱中。続いております。東京世田谷、世田谷通り沿いにある「工芸喜頓」さん。こちらのセレクトが、またいいんですよね〜!!若過ぎず、若々しく、絶妙。しびれます。

オーナーの石原さん、グレーのTシャツに黒のストール、気負わずにこなれたオシャレ上級。カッコいいです。以前はファッション関係の仕事をする一方、アジアやアフリカの工芸が好きだったそうです。日本の民藝に出会ったのは、当時住んでいたパリで。美術館で日本の民藝を紹介する展覧会があり感銘を受けた。そういう出会いもあるんですね。

オンラインの「日々の暮らし」を見れば、センスの良さが伝わりますよね。ショップはこの春から。天井が高く、スッキリ。一つ一つのうつわが、個性ゆたかに、きれいに見える。引き出しの中にもうつわがびっしり。豊富!価格も押さえてある印象です。

e0063212_2228780.jpg
(この日は小鹿田焼の柳瀬朝夫さんの作品が並んでいた。なんだかアフリカっぽさも感じる。オーナーがアフリカ好きと聞き、一人納得。出西窯、小鹿焼、瀬戸本業窯など、とにかく眼がいいなと感じる。それを表すセンスも)

---------------------------------------------

小伝馬町で、ほのぼの中東気分 「DALIA」&「DARVISH SHOP」

気になっていた「DALIA ダリア食堂」(東京小伝馬町)に。ロフトスペースもあるプチサイズの店内、工夫とセンスで独特の魅力。食事は次回のお楽しみに。クスクス、ハリラ、タジン、美味しそうすぎる!!

e0063212_22291040.jpg
(モロッコなど世界各地の手作り感あふれる雑貨が可愛くディスプレイ。マトリョーシカのウオッカかわいい。モロッコと思われるタイルも)

DARVISH SHOP」は、「DALIA」から歩いて10分もかからないご近所。以前、お店のハサンおじさんのこと、そしてスーフィー音楽で踊る文鳥の初代アンジュジェの旅立ちについて書きました。そのとき、二代めのアンジュジェはもの静かで恥ずかしがり屋さんでしたが、、見違えるように活動的に。飛び歌い踊っていました。良かった。

それもそのはず。立派なマイホームがあり、かわいいパートナーも。お隣は金魚。幸せな文鳥です。

e0063212_22295357.jpg
(小伝馬町では2009年から。イランの食材を中心とした輸入食品を販売。ハサンおじさんとのおしゃべりを楽しみに来店する人多し。私はこちらで、イランのアールグレー紅茶、干し葡萄などドライフルーツ、イラン菓子などを仕入れます。イランの方は缶詰やレトルト食品、香辛料など食品まとめ買い)

---------------------------------------------

今回、『風をたべた日々』(渡邊義孝さん著)とサマルカンドについて書こうと思い、写真も用意していましたが、もうすでに長文。次回に。今回はこれでアップします。写真が少ないので、青のFBから。

e0063212_22302070.jpg
(ブハラのモザイクタイル/青磁透彫唐草文箱、高麗時代、12世紀/ウスマノフ工房の扉)
by orientlibrary | 2013-11-11 22:35 | 日々のこと

<タイル人 ・1> タイルは華。イスタンブルで暮らし描き発信するトルコタイルの魅力

タイルがご縁をつないでくれた鬼頭さんは、トルコのイスタンブル在住のタイル絵付け作家。タイル、なかでもイスラムの装飾タイルへの熱い思いを共有できる貴重で大切なタイル友です。

日本ではタイルが工芸文化の面から語られることが少ないだけでなく、残念なのはイスラムのタイルの存在感があまりにも薄いことです。タイルはヨーロッパで生まれたと書かれたタイル関連サイトを見たときは驚愕しました。日本にもタイルの書籍はあるし、英語に広げればインターネット時代の今では膨大な情報に触れることが可能です。

このブログは2005年9月スタート。中央アジアを主体に、イスラム圏のタイルについて素人の実感で書いてきました。が、あまりに非力。けれども、心強くうれしく頼もしいのは、ネットや生産地で出会ったタイルに関わる人たち、そしてタイルを愛する人たちの存在です。以前とは違う!<タイル人>、始めます。

e0063212_211705.jpg
(「青の魅惑」展@INAXライブミュージアム、2011年11月〜12年3月。鬼頭さんにトルコ作家のコーディネートと情報監修をお願いしました/左:アディル・ジャン・ギュヴェン氏展示と作品/右:メフメット・コチェル氏展示とタイル作品部分=後半に出てくる「サズ様式」)

* * * * * * * * * * * * * * * * * *

<タイル人 ・1> 
「いつまでも色褪せない艶やかさがタイルの魅力」鬼頭立子さん(アトリエ・チニチニ)


e0063212_21271979.jpg
(チニリ・キョシュキュ。トルコ装飾タイル博物館にて)

—— タイルの絵付けをトルコで専門的に学んだ、そのきっかけ、経緯を教えてください。
日本の大学では、アジア・オセアニア文化コースでインド思想哲学を専攻していました。中でもイスラム神秘主義哲学に興味を持つようになりました。そして、文献の挿絵として使われていたテズヒップ(書や写本の彩飾)や細密画に深く魅せられ、細密画を学びたいという気持ちが高まりました。細密画を大学で学べる国としては、トルコ、インド、イランなどがありましたが、自分にとって暮らしやすいところ、という面でトルコを選んだのです。

—— 最初は細密画だったのですか?それがタイルに変わったのは、なぜ?
トルコへ渡り、イスタンブルで細密画を学び始めました。ミマルシナン芸術大学へ入学してからも細密画を続けていましたが、次第に細密画のスケールが自分に合っていないことに気がつきました。細密画は小さすぎる。ものすごく細かい。やってみて初めてわかりました。そして、タイルの迫力とスケール感が自分にぴったりだと気づきました。ルールに基づきながら構図を考えたり、モチーフを描き込んでゆくのが自分に合っていると思ったのです。細密画に比べてタイル画では、モチーフ一つ一つが大きい分、そのモチーフの中に色々模様を盛り込み描くことが可能です。それが楽しくて、魅力です。

e0063212_21285228.jpg
(鬼頭さんとトルコのタイル作家を訪ねる旅、イズニックへ。歴史的建造物と湖のある静かで心地良い街)
e0063212_21304443.jpg
(アディル・ジャンさんのアトリエにて。家族全員がタイル作家。形成、絵付け、焼成をこなす。トルコタイル談義。右下はイズニック湖の夕暮れ)

—— ミマルシナン芸術大学は国立の芸術大学ですね。どのようなことを学ぶのですか?
私が入ったのは、トルコ伝統芸術学科です。装飾タイル、アラビア書道、製本、写本装飾、絨毯織やキリム織などを学びます。1年生はすべての工芸に共通するデザインを学びます。デザインを起こすのです。2年生から専攻を選択します。私はチニ(タイル)を選びました。チニ専攻の同級生は3人でした。

—— チニ専攻では、どのようなことを学ぶのか興味津々です。
テュルク系(トルコ民族)全体の美術史から、トルコ(現在のアナトリア)におけるチニの歴史〜セルジューク朝、ベイリク(君候国)、オスマン帝国〜を学びます。その中で、圧倒的に時間が多いのは、16世紀(オスマン朝古典期)のタイルについてでした。オスマン帝国のシリアやエジプトまで広範囲に渡る技法や色彩の特徴なども丹念に学びました。実技では、主にデザイン画を描きます。土を練ったり、形成したりはせず、デザインのみです。ナッカシュ(デザイナー)としてのデザイン起こしを、しっかりと学ぶのです。

—— 日本だと土から始まるような気がしますが、デザインが主なのですね。
伝統工芸学科のチニ専攻は仰る通り、デザインが主で、材料、土捏ねからの工程は知識として学ぶのみで、実技はセラミック学科で学ばれます。オスマン朝の職種で言い置けば、チニ学科=デザインを描くナッカシュを養成、セラミック学科=土から絵付けまでの実技を学ぶ学科になります。ただ、これはミマルシナン芸術大学だけに当てはまることで、他の大学ではチニ学科でも実技を学んでいるところもあります。

—— 授業はきびしかったですか。
単位を取るために課題は多かったですね。週に数日は徹夜していました。4年で卒業するには、そのくらいしないとダメ。学費が安いこともあり、7〜8年かけて卒業する人が多いのです。トプカプ宮殿やアヤソフィアのタイル、ステンドグラスの修復や天井部の金箔張りもやらせてもらいました。炎天下で大汗かいて、もう修行でしたね。でも楽しい経験でした。昔のタイルは違います。

e0063212_21332639.jpg
(イズニック。タイルと陶のある光景。上段は陶芸の職業訓練を終えた女性たち専門のショッピングセンターにて。多彩な商品作りに感心。「自信」で突き進むパワーを感じました。下段:トルコは食も魅力)

—— トルコの学生気質について印象は。日本人の学生気質と違いや共通点はありますか。
トルコの学生は完璧を求めます。まずは完璧さの印象が強いです。集中力はすばらしい。また自己表現欲求が強い。そのぶん自信も強い。伸びる原動力は自信だと感じました。でも、時間は守らない、ルーズというかいい加減。日本だと、課題は必ず締め切りに間に合うように仕上げますよね。トルコの学生は締め切りを延ばす。でも良いものを作ってくるんです。こちらは締め切りを守っていますから、そんなあ、と思いました。が、期限を守ると小さくまとまるのかも、とも思ったり。日本人学生との共通点はない、ですねえ。

—— 自信と集中力。熱いですね。
自信を持って突き進む。トルコではそれが一番大事と考えられている。表情にも出てくるような気がします。

—— チニを学んで、その後はどのような活動をする人が多いのですか。
就職先として多いのは、講師でしょうか。絨毯のデザインをする人もいるし、グラフィック方面や美術系に行く人もいますね。基本的にお金持ちの人が多いので、ゆとりがある感じ。私は2010年2月に卒業。ミマルシナン芸術大学大学院でトルコタイルを専門に学んだ窪田さんといっしょにイスタンブルの新市街に工房を開き、タイル画を制作しています。絵付け教室もやっていますが、日本人の生徒さんが多く、皆さんとても上手ですよ。

e0063212_21342744.jpg
(トルコのタイル作家を訪ねる旅、キュタヘヤへ。メフメット・コチェルさんのデザイン室と工房にて。宝物のようなデザイン帳を見せて頂き、タイル製造工程を見学)
e0063212_21525892.jpg
(キュタヘヤの博物館にて。タイルと陶器の展示)

—— 個人的な好みでは、どんなタイルがお好きですか。
サズ様式が好きです。サズ様式タイルの傑作と言えばトプカプ宮殿にある5枚のパネル。宮殿の一番奥にある割礼の間前壁にある、麒麟が描かれた4枚のパネルと、花瓶から溢れ出す植物が描かれた1枚。素晴らしいです。

—— トルコのタイル、ここは見たほうがいいという場所を教えてください。
セルジューク朝のタイルはコンヤ。コンヤではすべて見て欲しいですね。ベイリック時代とオスマン朝はブルサ。エディルネは、ムラディエモスクの他、すべておすすめです。イスタンブルは、まずトプカプ宮殿を押さえて、次はリステムパシャでしょうか。

—— トルコの工芸で、おすすめのものは。
細密画、オヤ(刺繍)、絨毯やキリムですね。

e0063212_21354774.jpg
(キュタヘヤにて。青の館と青の陶芸家。下段はハーブティー、キョフテ、お家訪問での手作りお菓子とチャイ)

—— おいしいものがたくさんありそう。
まずエフェスビール!食べ物は絞れませんが、、ビールやラクを飲みながらの、メロンとチーズ、トピック(玉ねぎを炒めたものをゴマ+ひよこ豆のペーストで包んだもの)。マントゥ(ラビオリに似たもの)、クルファスリエ(白インゲン豆の煮込み)といったトルコのお母さんの味がおすすめです。

—— 今後の活動、イメージを教えてください。
しばらく大きなタイルを作っていなかったので、大きなパネルを数枚描きたいです。目標として、イスタンブルで作品展を開きたいと思っています。

—— 鬼頭さんにとってタイルの魅力、存在とは。
着物で言えば振り袖のような美しさ、いつまでも色褪せない艶やかさ。それが好き。華やかさ。花ですね、タイルは、やっぱり。

* * * * * * * * * * * * * * * * * *

この夏、多治見旅をご一緒した鬼頭さん。二人で多治見の熱い方々にお会いしてお話を聞き、たくさんの美しいタイルとやきものに出会いました。さらに鬼頭さんには、朝の喫茶店、夜の居酒屋でもノートPCを開いて、お話を聞いてメモ(それがこの「タイル人」)。無粋でゴメンナサイ。

鬼頭さんは、ミマルシナン芸術大学チニ専攻を主席で卒業。2010年には「サークップ・サバンジュ芸術賞」(サバンジュ財団による芸術賞。1994年より毎年ミマルシナン芸術大学の絵画、彫刻、伝統トルコ芸術、3学科の卒業生上位3名に授与)を受賞。タイルの本場で日本女性が、技術と感性を発揮して活躍。なんてうれしいことでしょう。温かく謙虚でちょっとお茶目な人柄も大好きです。どうぞこれからも、タイルの魅力を伝えてくださいね!

<鬼頭さんのブログ> 「—イスタンブル発— トルコタイル通信
e0063212_21375177.jpg

by orientlibrary | 2013-11-05 22:13 | タイル人

秋の瀬戸で本業タイルと出会う

瀬戸への小さな旅。
日本のやきもの産地を少しずつでも見て歩きたい。そして最近見始めた日本のタイル。瀬戸本業タイルは、やはりもう少し知りたい。「河井寛次郎の陶芸」展(瀬戸市美術館)も開催中。行ける時にはどんどん行こう!土砂降りに見舞われましたが、土味はたっぷり。今回は写真中心に、ざくっとご紹介。だんだん調べていきたいと思います。

雨自体は、けっして嫌いじゃありません。雨の日に本を読むのが好き。小雨なら散歩も好き。雨上がりの植物や景色も瑞々しくて好き。でも朝から丸一日土砂降りの散策、スニーカーはずぶ濡れ、地図はヨレヨレで見えなくなるし、寒い。

e0063212_0464792.jpg

ぼやきたくもなるけれど、やきものは雨の中で、ますますツヤツヤときれいなんですよね。いいなあ。見とれます。「窯垣の小径」はやきもの散歩道。塀や壁に埋め込まれた古い窯道具などが様々な模様を描きます。使い込まれたものは美しい。味わいがある。四季それぞれいいと思いますが、落葉の秋は色が合います。常滑の土管を積んだ散策路もいいし、土と土のものは相性がいい。茶系、緑系は落ち着きます。

e0063212_047082.jpg

窯垣の小径の道沿いにある「窯垣の小径ギャラリー」。雨の中、行く場所もなく途方にくれていたら、ギャラリーの方が小走りで来て早めに館を開けてくださいました。助かった〜。ギャラリーは、江戸時代の旧窯元のお屋敷を利用。地元作家の作品を展示販売しています。スタッフの皆さん(出展作家さん)が親切で、ほっこり和みます。

ギャラリーから少し歩いたところにあるのが「窯垣の小径資料館」。「建物はもと「本業焼」の窯元であった寺田邸を、そのままいかす形で改修したもの」だそうです。こちらに本業タイルが20点ほど展示されていました。資料館パンフレットより、「本業タイル」についての説明を引用させて頂きます。

——— 明治時代の日本における洋風建築の流行と共に「敷瓦」を前身とする「本業タイル」がさかんに使われるようになりました。これは「転写」技術の向上により、同一図柄で量産されたわが国の近代タイルの第1号ともいうべきものでした。本業タイルは、本業(陶器)の伝統的な調合による土を使い、土の表面の粗さを覆うために磁器の土を使って表面が化粧してあり、銅板転写による図柄の美しさとも相まって陶器でありながらあたかも磁器のように繊細で硬質感と近代感を兼ね備えたものとなっています。 ———

e0063212_048667.jpg
(写真は青のものばかりですが、茶系緑系もあります。本物をこんなにたくさん見るのは初めて。左右対象、幾何学と植物文様を合わせたもの等、このデザインの出自がピンと来ませんでしたが、ヴィクトリアンタイルの影響だと気づきました。けれども日本らしさが滲み出したようなものもあり、その混合が興味深いです)

資料館では、本業タイルが貼られた浴室及び便所も当時のままの姿で紹介。一枚で見るタイルとはまた違った印象です。当時はとてもモダンな空間だったのでしょうね。

時間は前後しますが、「瀬戸蔵ミュージアム」の展示タイルはこちら。

e0063212_049060.jpg
(瀬戸蔵ミュージアム。タイル生産の道具展示。代表的なデザインのパネル等)

名鉄尾張瀬戸駅から数分の複合施設「瀬戸蔵」(店舗、飲食、ホール等)、その2階と3階が瀬戸蔵ミュージアムです。吹抜けになっていて広い。陶房の再現ややきものの歴史等、日本のやきものビギナーの私にはとても有益で楽しいミュージアム。熱中しました。

e0063212_0492512.jpg
(瀬戸蔵ミュージアム。モロ(陶房)の再現。すごい!)

モロ(陶房)の再現がすごい。地元の人には見慣れた光景かもしれないけれど、小物など細部まで凝った展示は感動ものでした。かつ、陶器生産の行程や設備、道具を知ることができる。やはり、実物があるとわかりやすいです。一つのモーターを動力にして、ロクロなどいくつもの機械が動く。モーターという言葉の当時の輝きに思いを馳せました。

生活道具展示室では生産工程が具体的に見えてきて、とても勉強になりました。ビデオも全部見ました。3階の「瀬戸3万年の歴史」もわかりやすい。時系列、品目別に実物をひたすら見せる。アートな展示方法もあるでしょうけれど、ここではこのやり方がわかりやすいのでは。私は好みでした。

製品を出荷〜輸出する光景の再現も興味深かった。陶器の梱包ではエピソードもある私、箱詰めの輸出用陶器に見入りました。もっと詰め物はするだろうけど、基本、こんな感じだったの!?割れないのかな。紙と藁みたいなものでも、とにかくやきものが動かなければいい。ウズベキスタンのウスマノフ工房のパーフェクトパッキングを思い出す。工夫と技。最近は大量のエアパッキンに頼り過ぎなのかもしれない。

e0063212_050494.jpg
(瀬戸蔵ミュージアム。製品を出荷、輸出する光景の再現。右下2点は1970年代の輸出用との記載。「Occupied Japan」(連合国軍占領下の日本、1947-52年の5年間に日本で生産し輸出したもの)と図柄が同じなことに驚いた。でもどこかおとなしい。いつか両者の比較写真をアップしたいと思います)

さて、また土砂降りの窯垣の小径に戻ります。迷いながらも、ようやく登り窯に辿り着きました。が、土砂降りの中を歩いていたのは私だけではありませんでした。写真愛好家と思われる団体ご一行が、雨具の中にカメラを入れながら熱心に撮影旅。登り窯も、妙に満員な感じになってしまいました。寒さもあって、もう帰ろうかな、、と弱気になったところに、なぜかカフェらしきものを発見。登り窯の上部の横にカフェ?その名も「窯横カフェ」。入ってみます。

広過ぎず狭過ぎず、白い壁に木の床。ジャズっぽい音。雑誌やグリーン。若いお二人がオーナーのご様子。とにかくまずコーヒーを頂きます。やがて石油ストーブも登場し、体も暖まってきました。お店の方と少しおしゃべり。絵を描いている方々、瀬戸に移住し、セルフビルドでカフェ作り。今年2月のオープンだとか。感じいいカフェです。器もいいな。目の前には薪ストーブも。気になるのはその下に敷かれたタイルなんですよね。

e0063212_051942.jpg

相当好きなタイル。青の色味がいいな。ラスティックな質感も。このタイル、どうしたんですか?すると、登り窯の窯(瀬戸本業窯)の八代目に作ってもらった、と。注文で作ってもらえるんですか?さあ、どうかなあ。もうすぐ八代目が用事で来るので話してみたら、ということでiPadしながら八代目を待ちます。

やってきた八代目、カジュアルなファッションが似合ってます。資料館やギャラリーを見せて頂けることになり、ラッキー!資料館には、本業タイルが。「うちで作ってきたものです」。え〜、そうなの!?こちらだったんですか!

e0063212_0512822.jpg
(ペルシアにも輸出していたというタイル/六代目水野半次郎氏と民藝運動の方々/八代目/陶器の染付魚藻文。陶器の染付は珍しい。でもウズベキスタンやイラン、トルコは基本的に磁器ではないブルー&ホワイトなので私にとっては親しみある質感と化粧土の白/ギャラリーも見応えあり。こういうのが見たかった)

聞けば、民藝との関わりのある窯元。六代目が柳宗悦さん等と交流があり、昭和30〜40年代の大量生産の時代も手仕事を大事にしてきたのだそうです。黄瀬戸(これがまた、最近大好きなんですよ)と緑釉が特徴。いい色です。

瀬戸に行くからには本業タイルに触れたいと思っていた。でも、どうやってそこに辿り着けるのかわからなかった、というか、詳細を調べなかった。最初はあまり調べ込まずに先入観を持たずに行き、とにかく歩いて手がかりを探す。いつもそんなふうにしています。今回は土砂降りのおかげでカフェに入り、いつもなら短時間で出て歩き回るのに雨と寒さで出られず、そのおかげでタイルを見つけ、たまたまタイルを作った八代目が用事でカフェに。日本のタイルの現場と会えました。感謝。

河井寛次郎の陶芸−科学者の眼と詩人の心−」展も良かった。鍛錬の賜物である圧倒的な技術が支える自由な個性の表現が、やわらかいあたたかい造形と色に結晶している。やきものは人柄なのかと感じました。釉薬の研究で定評があった寛次郎さんが最後に作り出した「碧釉」。深くどこまでも引き込まれる、かつ屹立するような、魅惑の青。最高でした。

最後に瀬戸で出会った青。

e0063212_052342.jpg
(窯垣の小径ギャラリーの庭2点/染付壷。瀬戸染付の特徴は没骨(もっこつ)技法。主に付立筆を用いて一気に描く/本業タイル)

今回はひとまず、ここまでに。今後も、産地シリーズ、「タイル人」も書いていきたいと思います。

* 「窯横カフェ」のfacebook、発見しました。ごはんやお菓子がおいしそうです!
* たくさんの「FBいいね!」ありがとうございました☆
by orientlibrary | 2013-10-22 01:04 | 日本のタイル、やきもの