イスラムアート紀行

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スルチャル・マドラサ(コンヤ)、草創期のモザイクタイル

アナトリアのセルジューク朝時代の装飾タイル。コンヤのスルチャル・マドラサ(1242年/THE SIRCALI MADRASA IN KONYA)です。

コンヤへのタイル旅、どのモスクもマドラサも圧巻で、熱狂と感動の連続、至福の時間でした。なので、どこが一番とは言えないのですが、スルチャル・マドラサのタイルには本当に惹かれました。修復があまりされておらず、いにしえの姿のままに出会えたこと、そしてタイルのある場所が屋外(イーワーン=中庭に向けて開いた前方開放式の小ホール)であり、遺跡のような感覚でタイルを味わえたこともあるかもしれせん。(ここもまた誰もおらず、タイル友二人と3人で熱狂)

1242年建造のスルチャル神学校、トルコのセルジューク朝タイルの中でも初期に属すと思います。1242年に、この素晴らしいモザイクタイルが壁面を覆い尽くしていた。タイルの歴史を考えると、なんとも興味深く、その現場に立ってタイルを見られたことは感涙でした。

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以前ご紹介したセルジュークタイル史の詳細な専門書=『TILES / TREASURES OF ANATOLIAN SOIL/ TILES OF THE SELJUK AND BEYLIK PERIODS』では、スルチャル神学校は写真含めて10ページ。かなりのページを使っており、やはりセルジュークのタイル史の中でも重要であるようです。ざっと読んでみたのですが、タイルの模様の詳細な解説が多く、スルチャルならではの特長や他との比較、歴史的な位置づけなどは、今ひとつピンときませんでした。英語力の問題が大きいと思います。残念。なので、今回はあまり書ける内容がないのです。写真中心です。


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(エントランスのイーワーン。2階建て)


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(エントランスイーワーンのくっきりとしたムカルナス)


スルチャル・マドラサは、1242年にベドレッディン・ムスリフによってイスラム法学校として創設されました。メインのイーワーンのアーチのタイルの銘文には建築家の名前が記されています。


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(メインイーワーンの壁面装飾タイル。当時の優れた職人たちの卓越した仕事のおかげで、幾度ものダメージにも何とか崩壊せず現存している、とのこと。トルコ中で最も優れたタイルの建造物とも。模様は後の時代ほど複雑ではないけれど、カリグラフィー、植物模様、幾何学模様、どれも完成した美しさ。色の組合せ。バランス。強さ。圧巻。現在は茶色になっているけれどモルタルの白地を想像、さらにくっきりとしてくると思う)


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(メインイーワーン、ミヒラーブ形のムカルナス。1242年にこのようなムカルナスのタイル装飾があったなんて。驚きました)


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(小さなミヒラーブ形の中。ターコイズ青、コバルト青、紫、黒、そしてベースのモルタルの白も効果的)


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(主役はこの2色ですね)


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(モザイクタイルのはじまりを感じさせる。古雅の趣き、端正な美。カリグラフィーや組紐模様。このデザインが見たかった!コバルト青とターコイズ青の組合せが力強い。感涙)


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(植物模様、青の円がポイント。角の処理も施釉タイル)


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(日干しレンガ、焼成レンガ、施釉の浮彫り、バンナーイ(施釉と無釉レンガの組み合わせ)、そして施釉のタイルをカットして集成する集成モザイクタイルへ。なんと手間と時間のかかることを。だからこそ美しい。このあたりは、今後じっくりとリサーチ)


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(カリグラフィー、イスラームの装飾タイルならではの美。点ひとつ取っても、バランスが考え尽くされているそうです。美と感性に幾何学的な土台があるのかなと感じます。パルメット模様も、しっかりカットされてくっきりとした模様の列を構成)


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これまでずっと自分の好きなタイルだけを見てきました。それ以外に興味もわかなかったし、日本ではタイルの情報自体が少なかった。それが今では、ネットやfacebookで日常的に世界各地のタイル情報、イスラム建築情報に接することができます。少しずつでも毎日見ていると、発見があり、楽しく、勉強になります。ありがたい。

そしてなんだか、日本でもタイルが動いているように感じます。タイルに関する話題に触れる機会が俄然増えてきました。以前紹介した日本のタイル愛好者のfacebookページ。ますます盛り上がってきています。近代建築の中のタイル、街角のタイル、商店や地蔵祠のタイルなど、いろんな視点、いろんなタイルがあるのですね。発見があります。また、多治見に開館予定の「モザイク・ミュージアム」がらみの話題もあり、楽しみです。

そんなこんなで、日本でのタイル情報、検索などもするようになったのですが、、これがなあ、、

日本で「タイル」というとき、イスラームのタイルが出てくることが非常に少ない(過小評価という以前に認知されていない)、タイルの歴史に誤解がある(ヨーロッパ近代からのスタートと思われている)など、以前からしつこく書いていますが、このことも一層感じるようになりました。

((( ここに、いろいろと残念な事例を書いていたけど、消去! 自分のことをやっていくのみ )))

つまり=イスラームのタイルは歴史であり過去であり、現在の産業と結びつかない、だから何らかの媒体を通しての話題にのることが少ないのかと思う昨今です。ハイ。報道などを通じてのイメージの問題もありますしね。

それを前提にして、では何をするか。そんなことを考え始めています。愚痴だけではダメなんでですね。きっと。
by orientlibrary | 2014-07-16 23:44 | トルコのタイルと陶器

柳宗悦が選ばなかったもの、インドTarabooksの本づくり、そしてモザイクタイル

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(スルチャル・マドラサ/コンヤ)

セルジュークの装飾タイル、そしてモザイクタイルへの道、少しずつ進めています。でも、連続だと、ブログの見た目にも、気持ち的にもちょっと重そうなので、今回は軽めの話題をいくつか。

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中央アジア積み&盛りコレクション


まずは、「中央アジア積み&盛りコレクション」。Facebookのページで、流れで始まった特集。以前から、面白いなあと思っていたんですよね、バザールなどで見かける、てんこ盛りみたいな、とことんやる積み上げ方。各地での採集投稿もいただき、楽しいです。

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(キッチリの「トルクメン積み」はアートの域/缶にまで及ぶ「トルクメ積み」/各所で見られる「ウズ積み」、クルト(チーズの一種)も積みます/トルコのバザール、こだわりの「トルコ積み」。とことん/総菜もすごい、「ウズ盛り」ラッシュ/ニンジンサラダの「ウズ盛り」)


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青の陶器とタイル、好き


青のfacebookも続いています。1年半かけて、「いいね」=400。とくに宣伝してはいないので自然に。青好き、タイル好きの方の存在を感じられて(これまで、なかなか実感が持てなかったので)、心強い気持ちになります。

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(青facebookより、いくつか//ティラカリ・マドラサのモザイクタイル〜サマルカンド/中国風図柄のフランス製ファイアンス花入れ。19世紀後半〜20世紀前半。ブハラのシトライ・モヒ・ホサ宮殿に展示されていた。中国の模様のフランスの錫釉陶磁器がブハラに。献上品だと思うが興味深い/ウズベキスタン、リシタン、ウスマノフ工房間の絵付けタイル。この写真をずっと見ていて、あらためて自分はタイルが好きなのだと気づいた。おおらかなタイルの世界/トルコの骨董屋で購入したキュタヘヤの青い小壷。調味料入れのようだ。タイルだけでなく陶磁器、青のテキスタイルなども時々アップしています)


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柳宗悦が選ばなかったもの


たった4日間の展示会、「柳宗悦が選ばなかったもの VOL3 茶わん 1900—1970」(倉日用品商店 企画展)@べにや民芸店(東京港区南青山/7月1日まで)。

「日本の雑器の7割を生産しながら、民藝という視点では必ずしも光が当たらなかった瀬戸や有田の茶わん。しかし、明治以降全国の家庭に、食卓に、旅館に使われ続けているそれらには窯屋の主人が頭をひねって生み出した、様々なデザインが施されていた。伝統の文様をベースにしつつも次第に珍奇になっていく、誰も記録していなかった「ふつうの飯茶碗」のデザインを、明治から戦後まで一挙公開!」

とても面白かったです。しかも全品即売。しかも1個数百円が大半、最高でも1000円ほどという値段。古いものの値段は私にはわかりませんが、見る人が見たら、かなりの値段がつくものもあるのでは。へたウマイラスト系のもの、昭和モダン系のものなど、お宝もありそう。倉日用品商店Facebookには「さすがに初日はプロに類する方が素早く「特にいいもの」を買っていかれまして、目利きの仕事の鮮やかさを目の当たりにした次第です」とありました。

本業ではないのですが、流れとご縁で、陶器の仕入れと販売をさせていただいた経験、少々あります。ひとつずつすべてが違う手作り品の梱包や値段つけは、素人には大変な作業でした。(とくに中央アジアからは、物流が大変すぎました。値段も前例がないので難しかった)。今回の茶碗は、脆くはないですが、やはり一つ一つのパッキングは手間だと思います。倉日用品商店さんのある京都から持ってきて、開梱して並べる、青山の老舗民芸品店のギャラリーで。思わず、数百円×個数で、かけ算してしまいました。

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(冊子が作成販売されていたので購入。「柳宗悦は、なぜ瀬戸と有田の雑器を選ばなかったのか」の考察、すべての出品茶わんの画像、解説付き。貴重な資料!/べにやギャラリーの様子/下左:初期の茶碗は模様で埋められていることに価値があると考えられたのか、染付印判での全面彩色が流行したのだそうです。その後、ハンコを全面に押す手間より手描きのほうがスピードが出たのか、理由は不明ですが突然姿を消したのだとか/小津映画に出てきそうな小ぶりな茶碗たち/下右:購入品。チャイ茶碗的なぽったりしたものと湯呑み。白地に絵付けをやはり選ぶ傾向。さっそく使っていますが、適度に重くていい感じ。もっと欲しい!)

京都西陣の堀川商店街にある「倉日用品商店」、荒物などを扱い、コーヒーも飲める。なんだか面白そう!今度行ってみよう。三井美術館の明治工芸展で興味津々の幕末、明治の工芸を展示している「清水三年坂美術館」も!&facebookのタイルの会で知った、すてきな京都のタイルも見たい。大好きな河井寛次郎も。


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インドTarabooksのゆかいな本づくり


「インドTarabooksのゆかいな本づくり」スライドトーク、というイベントがありました。案内人は矢萩多聞さん(装丁家) 。

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(以上3点、http://kokyuu.org/tara/?cat=13 より)

「手漉きの紙に、手刷りのシルクスクリーン、手製本で本を綴じ、なにもかも手づくりで絵本をつくっているインドの出版社Tarabooks。彼らの絵本に魅せられ、南インド・チェンナイの印刷工房へ見学にいった矢萩多聞が、現地の写真をたっぷりおみせつつ、彼らのゆかいな本づくりについてお話しします。ぼくはこの出版社に出版の原点、明るい未来を感じています。本好きはもちろん、多くの日本人にこのすばらしい出版社、美しい絵本のことを知ってもらいたいです」

素晴らしい絵本たちを画像で紹介できないのが残念ですが、リンク先に写真がたくさんあります。矢萩さんのHPは、詳細でわかりやすいです。ぜひ、ゆっくりとごらんください。

● Tarabooks とは  (1994年から美しい絵本を数多くつくり、
世界中の本好きたちを魅力しつづける、奇跡の出版社だ。本文用紙は手漉き紙。印刷はすべてシルクスクリーンで刷られている。造本は手製本。通し番号がふられ、工芸品のように美しい絵本たちはまるで宝物のようだ。絵本の挿絵の多くは、インド各地の少数民族たちが描いたもの、、など詳細な説明が。写真も、Tarabooksのオフィスや職人さんたち、制作行程など!)

● ニュース (「Drawing from the city」(街を描く)
作者は西インド、ラジャスターンの門付け芸人を夫にもつテージュベハム。
彼女がペンと紙で書きつづった自伝的絵本。ペンでかかれた世界は、絵の教育をうけた絵描きにはぜったいにかけないような
生き生きとした線にあふれています。ほとんど絵の描いたことのない人、絵本なんて作ったことのない人の絵で
こんな大判の絵本を作ってしまったTarabooksはすごいと思います。
まさに「誰もがもっている宝物を引き出す」仕事/インドから本が届きました!、、など)

● Tarabooks

矢萩多聞さん。矢萩さんと村山和之さんのトークイベント『「A.R.ラフマーンを語る」vol.3 イスラームとラフマーン』で、ラフマーンの音楽に出会いました。このときも矢萩さんは、ラフマーンを訪ねたときのことを、楽しそうに話してくれました。

出会って、好きになって、気になって、調べて、ある日出かけて行く、話を聞く、ますます好きになる。それを分かちたい、紹介したい。そんな自然なテンションや温かい感情が伝わります。

かといって、Tarabooksの代理店になってビジネスを、ということでもなく(すでに日本でもいくつかの代理店がありブックフェアなどにも出ています)、淡々と熱く、できることをする、そんな姿勢に共感しました。

たまたまなのかもしれませんが、倉日用品商店さんも、矢萩多聞さんも、あまり商売っ気がない感じ。でも、熱を感じます。そして行動しています。できることをしています。派手でなくても、大規模ではなくても。費用的にマイナスにはならないように工夫して、他のことでがんばって補いながら、気持ちのいい人たちと出会い、熱を持って思いをシェアしていく、自分も楽しみながら。それがいいのではないかと思うこのごろです。そういうふうに自分もなりたい。

矢萩さんは、20年くらい前からお名前を知っていました。パソコンでネットを見始めた頃、インドでの暮らしを描いた「メールマガジン」を読んでいました。どうも若い人のようだなとは思っていましたが、その頃はなんと10代半ばだったようです。14歳でドロップアウトして、インドで一人暮らし、街や村で生活の中の美を学んでいたのです。なので、20年くらい経っても、まだ34歳くらい。インドや日本の、心に響くものを、これからも伝えて欲しいなと思います。


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モザイクタイルへのみち


タイルについて、ずっと知りたかったこと。大きなテーマであった「なぜ青なのか」は、少し得心できました。もう一つのテーマ、「モザイクタイル(集成モザイク)は、いつ頃、なぜ、どのような背景の中で生まれたのか」。

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(集成モザイク的な要素/アフマドヤサヴィー廟)

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(圧倒的な集成モザイク/シャーヒズインダ墓廟)

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(ブハラの古いモスク。1400年代か?本物の凄みと包容力。素晴らしい)

そこに向かって歩いています。セルジュークのタイルの中に、大きなものを感じています。
by orientlibrary | 2014-07-01 00:03 | 日本のいいもの・光景