イスラムアート紀行

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青い陶の花たち/ミントンタイル展/青の景セレクション

クリスマスシーズン、強い赤と緑と白、どこにいっても流れている同じ曲、強制的テンション揚げ揚げモード後、見渡してみると、やはり青系に目が止まりました。
フィンランドのライフスタイルブランド「マリメッコ」のテキスタイルデザイナーとして世界的に知られる石本藤雄さんの個展「石本藤雄展 布と陶 −冬− スパイラルガーデン」(東京・青山)。

石本さんの「マリメッコ」での作風は、フィンランドの自然を題材にしつつ日本的な感性も感じさせます。また、フィンランドの陶器メーカー「アラビア」にて、自身のライフワークとして想像上の草花や自然の風景をモチーフとした陶芸作品の制作を続けているとのことで、今回は布と陶をともに展示しています。

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(写真撮影とブログでの紹介は、個人のブログでの節度ある内容をということで、OKを頂いています)

スパイラルガーデンの吹抜けの螺旋状空間を贅沢に使った展示。黒や白のもの静かな陶芸作品は、夜の蓮池やその水面に映る月をイメージ。「凍てつく冬景色を想起させる極限まで色彩を押さえた空間がひろがります」。

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ギャラリーの白の壁面には伸びやかで個性的な陶の花が咲きます。造形もイキイキと魅力的なのですが、印象的なのは色合い。同じ青でも、西アジア中央アジア等の明快で強い青とは異なる世界。深みがあり控えめながら芯の強さを感じさせ何か語りかけてくるような青に、共感しました。

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赤や緑も華やかですが強すぎない淡い色合い。モチーフに合わせて土の質感が変化しているのも面白かった。
フィンランドデザインは最近注目されているようです。日本人が世界のデザインや工芸の第一線で存在感を持って活躍しているのはうれしいですね。

「石本藤雄展 布と陶 −冬−」。会場:スパイラルガーデン/会期:〜2013年1月14日(*12月30日~1月4日までは休館)。


↓下のコラージュは、上段3点が引き続き「布と陶」より。石本氏作品のファブリックや生地サンプル展示です。
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中段は、中央アジアの布を使った衣服を作っているカンノテキスタイルの展示会場にて(展示は終了)。ウズベキスタンの絹織物を作る職人さんたちが腕を競って取組んでいる大胆な「復興柄」(一時途絶えた柄のリバイバル)も現地から届いていました。シンプルな新柄もテキスタイルとしての魅力がたっぷり。今後の展開が楽しみです。

下段は、カンノ展示会場にて。トゥバ音楽演奏家・寺田亮平さんのブーツ!皮の模様がカッコ良く、裏にはトナカイの毛皮が張ってありとても暖かいそうです。中央は口琴ケース。模様「オルチェイ」はトゥバでは「幸せ」を意味するそうです。右はトゥバ語の歌詞。寺田さんはトゥバ語の話者でもあります。

寺田さんたちが準備中の「中央アジアの音楽 テュルク・ミュージック・イン・トーキョー」は1月27日開催。詳細はこちらです。なかなかない機会!草原の風を感じるひとときになりそうです。


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イスラームのタイルに熱狂の「イスラムアート紀行」、それ以外のタイルはほとんど登場しませんが、現在東京で開催中の英国タイルの展覧会を見てきました。「ミントンのタイル 千変万化の彩り」。会場:渋谷ヒカリエ 8階 8/CUBE 1,2,3/会期:~2013年1月7日(※1月1日は休館)。

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19世紀イギリスの陶磁器メーカーMINTON(ミントン)の美しいタイルを紹介するもの。ミントンは中世ゴシックの象嵌タイルや、色鮮やかな「マジョリカ釉」開発など、新しい技術の開発に積極的に取り組みました。タイルが人々の暮らしの中に取り入れられたという面では功績大ですよね。

イスラムタイル偏愛を公言しているオリエント・ライブラリー、くすみと濁りのある色、過剰装飾のヴィクトリアンタイルは最も苦手で見ることができません。でもミントンくらいになると、一巡して見ることができ、勉強になりました。手描きタイルの一枚は、とても好きで見とれました。転写タイルと手描きタイルは違うもの。それぞれに良いということでしょう。

以上は個人的感想であり、存在感の強いイスラムタイルよりむしろ、このようなきれいなタイルを好まれる方が日本では多いと思います。歴史有るタイルの本物が一堂に揃い、系統だった説明があり見やすいです。東京での開催は貴重ですよ!ヒカリエは渋谷駅直結の便利な場所。オシャレなお店も集結しています。お正月休みにいかがですか!?


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スタートして10日間くらいたった青のfacebook「青の陶器とタイル好き* blue ceramic museum」。勉強を兼ねて、一日1題にチャレンジ中。どんなフォーマットがいいかも試しています。投稿も系統だっていません。そうすると、逆に、反応の強弱が見えてきて興味深いです!

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(10日間にアップした主な青=タブリーズのブルーモスク/トルコ・イズニックの水場/サマルカンドのシャーヒズインダ廟/ブルーモスク本の青/青の魅惑展(facebookはこの写真じゃなかった、、アップしたのはメフメットさんのコーナー。こちらはアディルジャンさんコーナー)/シャーヒズインダ廟浮彫り/リシタン陶器/シャーヒズインダ廟雫型モザイク)

今のところ、人気No.1はサマルカンドのコバルトブルーの壁面タイル。続いてタブリーズ・ブルーモスクのコバルトブルーの壁面モザイクタイル。
どうもコバルト青に惹かれる方が多いようです。暮らしの中にある藍染めや染付、このあたりが日本人の青の好みの底流にあるのではという気がしてなりません。トルコ石青は、むしろエキゾチックな色なのかもという気がしています。

来年も引き続き青道邁進です!
今年一年、ご訪問どうもありがとうございました。お礼申し上げます。
年末年始、お元気でお過ごしくださいね。
どうぞ良いお年をお迎えください。
by orientlibrary | 2012-12-28 15:42 | 日本のタイル、やきもの

イランのパーカッション「ダフ」と多彩なイラン絵本に酔う&青の本ご紹介

イランのタイルや細密画の優美さ、緻密さ、奥行きには、いつもうっとり。さすがの伝統とアートセンスです。先日はうれしいイラン日和。イラン絵本とイラン音楽(打楽器の魅力)を堪能しました。まずは音楽から。

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イランの打楽器トーク&ライブ。「イランの打楽器にまつわる逸話や映像を交えつつ、日本ではなかなか聴くことのできないイランのパーカッション演奏をお楽しみください。当日はイラン在住のセタール奏者、北川修一氏をゲストにお迎えします」というイベント。これはもう行くしかないイベントです!

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(真ん中写真、3人が演奏している楽器が「ダフ」。円形の木枠にプラスチックあるいは皮を張った片面タイコ/上左がトンバク/弦楽器のタール、タンブールとのセッション、ヴォーカルもあり、堪能!/会場はイラン料理店。やさしい味の煮込み料理や好物のひよこ豆ペースト・モホス、ザクロジュースとワインのカクテルなども食にも満足)

イランのパーカッション、こんなにたっぷりじっくり聴いたのは初めて。そして、その豊穣の音世界に感動しました。

* ダフ *
いわゆるフレームドラムの一種。直径60センチから70センチほどの円形の木枠にプラスチックあるいは皮を張った片面タイコ。両手の手のひらで支えながら叩いて音を出す。枠の裏には無数の金属製の輪がつけられており、縦に振ることでジャラッという金属音を出すことができる。同系統の打楽器は世界各地に存在し、タンバリンなどはその最も有名なものとしてあげられる。
ダフは音楽演奏というより、もともと地方の神秘主義的な集会や儀式の為に使用される楽器で、ゼクルと呼ばれる詠唱とともに特定のリズムを打ち鳴らすためのもので、他の楽器が絡むことはなかった。ダフ奏者がイラン音楽のアンサンブルに参加するようになったのはごく近年の革命後になってから。革命後のイラン伝統音楽シーンは、ダフの参加により大きく変化。イラン伝統音楽はこれまでになかったグルーヴ感やスピード感を持たせることに成功した。
(「iran japanese radio」のHPより引用)

奏者の方々のトーク&映像にも引込まれました。各人がイラン音楽に関わるようになったきっかけやエピソードが、写真や音像を通して紹介されます。イラン音楽や楽器への敬意がベースに感じられ、その魅力を伝えたいという熱い想いが伝わってきました。こういう想いに感応するんですよね。イラン、相変わらず驚かせてくれる。芸術の国ですね。


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「誰も知らないイランの絵本展」など、気になるタイトルが魅力的なsalamx2さん。今回は「小さな部屋の絵本展」。どのくらい小さいかというと、「ギャラリー」の高さが1m。定員1名。こちらも行くしかないでしょう。

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(種を明かせば階段下のスペース利用ギャラリー。湯島の輸入雑貨店「NICO」内/大人になっても秘密の小部屋みたいな空間はみんな結構好き。靴を脱いで順番に入ってゆっくり絵本と戯れました。待ち時間の人はaikoさんとチャイを飲みながらのおしゃべり!)

「小さな小さな空間で今回展示するのは、初版が2000年までのイランの絵本たち。最近の絵本には見られないようなユニークかつ「濃い」表現の絵本が並ぶ予定です。革命(1979年)以前のもありますからね。どうぞお楽しみに!」(「salamx2の雑談」)。

aikoさん、コレクション持ってますね〜。さすが。なかなか見られないものを見せて頂きました。個人的には、薄いペラペラの紙質のささやかな絵本に惹かれます。


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この秋は、展覧会も充実、イベントや映画祭が多く、いい作品やモノとの出会いがたくさんありました。冬に入っても、展示会やイベントが多数。ネット等を通して情報に触れやすくなったことも一因でしょうね。いつどこに行こうか、迷ってしまうほどです。

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こちらは絨毯・キリム・テキスタイル系の展示。左半分がtribeさんの展示で見つけたウズベクもの。ブーツやスザニ、アトラス。ミラーワークのブーツがかわいい。履きこなされている古いものですが、愛らしさで鮮度感抜群。
右半分は、kannotextileさんの展示。こちらは夏の展示の写真なのですが、左とテイストを合わせてみました。ラカイ族(独自の刺繍で有名)のカラフルなブーツが目を引きます。

ウズベキスタンの伝統的な絣アトラスやアドラスによるモノづくりに取組むカンノさん。スキッとしながら主張のある衣服たち。センスの良さと確かな技術。このような若い層の登場が本当にうれしいです。
夏の旅で出会った布で作った衣服、現地からのバッグや小物、スザニなどを展示販売する「果て無き大陸と巡り廻る布」、現在川口市にて開催中(23日まで)。


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思うところあって、青のfacebookページを始めました。正確に言えば、2011年2月1日にちょこっと投稿して以来、放置していたページ。再開のきっかけは、週明けに判明した選挙結果。青をまじめにやろう、、、この思考回路、ヘンですが、自分のできることをコツコツしていかなくては、それって何?? タイルや陶器や青へとグルグル回ってきました。ヘンですが、やっていきます。

「青の陶器とタイル好き * blue ceramic museum」というそのまんまのページ名です。ご興味もって頂ける方は、どうぞごらんください。
facebookは、テーマを青に絞っての短い1トピック(1枚の写真と短いコメント)でデイリー(平日?)。内容は、<西・中央アジアの青の陶器とタイル><日本の陶芸><世界の青の工芸、染織、光景>予定。
ブログはやや長めで、装飾タイルやテキスタイル、イベントから日々の思いまでいろいろ。週1回更新(めざしてます)。

そんなこともあり、青の本なども紹介していこうかと、本をスキャン始めました。Amazonのリンクでももちろんいいのですが、表紙写真も大きいとやはりインパクトあります。
最近はネットばかりで本を見なくなっていたので、本を重く感じました。重いんですよね、この系統の本。それがキツくなってきてますが、久々に見るとなんか愛おしいですね。汚れ具合も。いくつかのコラージュをご紹介。

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(私の大事な大事なテキスト2冊。それぞれに特徴があり写真も美しい/「the art of the islamic tile」/「colour and symbolism in islamic architecture」)


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(青について詳細に書かれている(はず)、読み込んでいないです、、「and diverse are their hues color in islamic art and culture」/イスラム建築や装飾の草創期、魅力にあふれる時代、「islamic art and architecture 650-1250」)


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(アイユーブ朝シリアの陶器、青が魅力の表紙、「raqqa revisited ceramics of ayyubid syria」/表紙はシャーヒズインダの浮彫りタイルですね。美しい写真とともに技法やモチーフ、事例などについて詳細な解説。「splenders of islam」)


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(表紙がきれいなトルコタイル中心の2冊。ソフトカバーで軽め。写真中心/「turkish tile and ceramic art」/「islamic tiles」)


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(青の表紙の本を元々スキャン予定だったので惜しいと思って裏も取りました。裏表紙がすっごい青のタイル!セルジューク朝からベイリク朝のアナトリアのタイル。読もうと思っていてまだ全然です、、ネットに走ってます、完全に、、/「tiles treasures of anatorian soil tiles of the seljuk and beylik periods」)

この他もスキャンしたのですが、今回はこのくらいにしておきますね。facebookの方でもじょじょにご紹介予定☆♪
by orientlibrary | 2012-12-21 22:08 | 中央ユーラシア暮らしと工芸

へラート、青のタイルの廟。1965年の映像から

「The University of Pennsylvania Museum of Archaeology and Anthropology」による映像記録がすごいです。1960年代のイラン、トルコ、アフガニスタンはじめ、世界各地の記録映像(無音)が800本以上YouTubeで公開されています。





(1965: Reel 39: Afghanistan. June 22-23. Herat. アフガニスタンのヘラート 1965年6月/公開日: 2012/09/18) (内容=煙の立ち上る窯/石を重りにした手動の織り機/糸繰り機、縦糸/ヘラートの遺跡、塔、モザイクが少し残る壁、市場/中世の暮らしを描いたGhory Taymanの絵画/刺繍3点/16世紀ムガル時代の挿絵本等/石のコレクション/ミナレットのパン撮り、帯の部分は小さなレンガ、Goharshadの墓廟、遠景、装飾、ドームを廟周辺から見る、畝状のタイル装飾ディテール、塔の球面のタイル装飾、廟内部の装飾)

画質は粗く手ぶれで酔いそうですが、逆にナマの迫力がある。ホント卒倒しそうです。こんな記録があるなんて。そして気軽にいつでも見られるなんて。ほんの少し前まで、数少ないタイル本の写真を眺めているだけだったのに。

色はクリアとは言えませんが、アナログの味わいがあり、青の爽快さ、白の可憐さに熱狂します。また、モザイクの模様、どの模様が1パーツなのか等が垣間みられます。

このような記録映像の魅力のひとつは、美しいだけではなく、施工やモザイクの製作過程を想像できることです。昨今の完璧に修復された建造物は、鮮やかで圧倒的に美しいけれど、時を遡ったり、関わった無数の工人の匠や息づかいを感じにくい。崩れ落ちているからこそ、逆に恐ろしくなるほどの手間ひまが見えてくる。

ヘラートGoharshadのタイル、詳しくはわかりませんが、たぶん1447年ティムール朝期の建造物。携わった職人たちの矜持、とてつもない時間が伝わってきます。タイル装飾ってすごい。素晴らしい。中央アジアの土塊から、当時の土の匠たちはなんていう美を創造したのでしょうか。

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(herat(afganistan)/mauseleum of gohar-shad 1447,state of the before 1984/『COLOUR AND SYMBOLISM IN ISLAMIC ARCHITECTURE』より引用)

けれども、このヘラートの廟は、今はどうなっているのでしょう。Pennのアフガニスタンのリールは1965年撮影。(写真を引用している『COLOUR AND SYMBOLISM IN ISLAMIC ARCHITECTURE』も、たぶん同時期の撮影ではと思われます)。

1965年のアフガニスタンを見てみると、、1964年=新憲法制定。女性に参政権、教育の権利、就労の自由などが認められる/1965年=初の普通選挙実施。アフガニスタンの歴史は難しいけれど、とにかくこの頃は比較的自由で活気があったような印象です。
その後のソ連侵攻、内戦、タリバンによる支配等のなかで、この廟、このタイルはどうなったのでしょう。人がいる限り、また作ることができます。美しい青のタイルの建造物が蒼い空に輝く日々でありますように。そう願うばかりです。

(参考:「1953年に首相となったムハマド=ダウード=ハーンは、アフガニスタンを近代国家とするために積極的な改革を進めました。他方、パシュトゥーン人重視の姿勢からパキスタン政府と対立し、陸上輸送が生命線であるアフガン経済の生死を決する国境封鎖、さらには国交断絶の事態が生じるまでになった末、その打開のために辞任に追い込まれました。その後も王制のもと改革は進められましたが、カブール大学の教師、学生を中心とした中産知識階級はそれには満足せず、新たな動きが出始めました。1965年には社会主義を目指すアフガン人民民主党が結成され、他方、1990年代以降のムジャヒディン各派の中心となる、カブール大学の教官、学生であったラバニ、マスード、へクマティアルらがイスラームに基づく国家建設を目指す運動を開始しました。1973年PDPAの助けも借りてダウード元首相によるクーデタが起こり、「アフガニスタン共和国」が誕生し王制は廃止されました。」(JICAホームページより))

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(jam(afganistan)/minaret, late12th century/ジャムのミナレット、12世紀後半/右は左写真塔の真ん中部分青の帯のディテール。1100年代にターコイズブルーで施釉したレンガがこのような山奥の峡谷のミナレットに使用されていた/『COLOUR AND SYMBOLISM IN ISLAMIC ARCHITECTURE』より引用))

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(上右、ペシャワール会報の表表紙の画を楽しみにしています。「チャイハナにて 画:甲斐大策さん」/下左はペシャワール会による取水堰の建設で潤される地域(耕地)/下右は「ラピスラズリの壺」

『ペシャワール会報』(113)、代表の中村哲さんの巻頭文「目的と精神は変わらず 「生命」が主題です 時流に乗らない心有る人々の思いに支えられ」。灌漑用水路の工事を進める「緑の大地計画」10年めの状況と現地活動29年の決意です。

 「 内戦は激しくなる一方で、政情は混乱の一途をたどっています。しかし、殆どの人々の深情—戦(いくさ)と外国人の干渉は、もうたくさんだ。故郷で家族と三度の食事がとれさえすれば、それ以上のものは要らないーという、無欲な願いが、誤りのない普遍的な人の営みでしょう。そして、これこそが、活動の基盤である、活力の源泉であり、ゆるぎない平和につながるでしょう」

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『人は愛するに足り、真心は信ずるに足る アフガンとの約束』(中村哲、澤地久枝)。書名に惹かれて買いましたが、対談形式というのは読みやすいけど、ちょっとまだるっこしい。でも、さすがに澤地さん引き出し上手で、中村さんは人生を語っています。

「死の危険に幾度も直面し、しかもその瞬間、これで楽になれるという思いがひらめいたという。それだけ、生きていれば逃れられない重い荷物を背負っているのだ。アフガンとの約束は容易ならない」(澤地さん)。

 (マドラサ〜神学校の建設の時、村の長老たちが集まって皆でお祈りを始めた。「これで解放された」「自由だ」と言って本当に大変な喜び方だったと紹介し)「私も意外だったのは、まず皆が生存していくために必要なのは水で、マドラッサはその次くらいだろうと思っていたら、彼らにとってそういった精神生活というのは、生きていく上での水と同じように比重が重たいのだということを知らされました」

 (灌漑用水、農業復興支援について)「なぜ水が欲しいのか。ペットボトルに入っている水ではなくて、それで耕作ができて、動物が棲み、子どもたちの栄養失調が減ったり、そこで生きていく命の源とでもいうもの、そういうものが必要なんだということを(住民は)口を揃えていいますね。アフガニスタンというのは、いわゆる近代化に取り残れた国で、自分たちの伝統を頑なに守る民族が住んでいたわけですね。そういうところでは、かえって鮮明に水のありがたさ、自然と人間の共生の仕方といったものが、言葉もいらないぐらい、皆、自然に生きている」

  「地元の人は、「これは神様のご意思ですから」と言う。それは諦めというよりも、一種の謙虚な気持ちのような気がしますね。洪水が来たとしても、向うの人は国家そのものをあてにしていないので、自分たちの意のままにならないことがあるんだ、それはそれで甘受しようじゃないかというのが、どこかにあるんですね」

中村さんの言葉は、いつも全部引用したくなるほどに、本質的で具体的で熱くて人間の誠の心が滲み出ています。同じ日本人であることが、嬉しくなる、誇りに思えます。多くのボランティアの皆様も、ありがとうございます。

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『ラピスラズリの壺』。こちらは江藤セデカさん監訳と絵によるアフガニスタンの民話(アフサーナ)集です。(NPOイーグルアフガン復興協会/2012年5月発行/非売品)。

まえがき(2008年、ネダー・ファルハトさん)によると、
・ 情報文化省は古いアフサーナを収集し始めた
・ アフガニスタンにおける民衆文学も非常に長い歴史を持っている
・ 民衆文学から集団が持つ道徳や文化や行動基準を解明することができる
・ 5つに分類=劇/説教/妖精/英雄/神話
・ テレビやラジオの出現以前は、特に冬に家族が集まり物語を聞いた。しかし物語を話す文化は過去のものになった

物語だからこそ、独特の心性、価値基準が、臨場感を持って伝わってくる気がします。貴重な本、労作です。

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(左:herat(afuganisutan) gazor-gah,1426/『COLOUR AND SYMBOLISM IN ISLAMIC ARCHITECTURE』より引用)/右:イラン)

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<アフガン、パキスタンつながりで...ザフ様特集>
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パキスタンのスーフィー楽士、Sain Zahoor Ahmadさんを信奉し、ザフ様をモチーフ&テーマとした様々なモノの製作を続行している手仕事クイーンTさん。コラージュ左がサイン・ザフールさん。右上がMD入れ(織から刺繍まですべて)。MDの中身もすべてザフ様。右下は操り人形!動くのがすごい!ザフさまの動きになります。楽器トゥンバは派手な飾りですがとても繊細な音で魅力的です。

(* YouTubeが真っ黒画面で見られない件、ひとまず見られるようになりました。アドバイスやご連絡どうもありがとうございました!m(_ _)m 解決法を探していて、この現象、少なくない人が体験していることがわかりました。皆さんもYouTubeが突然真っ黒画面(真白画面バージョンもあるらしい)になった時、焦らずにネットで調べてみて下さい。いろんな方法が紹介されていますが、各人のネット環境と時系列にて。私の場合は「safariの環境設定でYouTubeのクッキーを削除する」で、現在は何とかなっています。)
by orientlibrary | 2012-12-15 00:07 | ウイグル/アフガン

謎の皿を巡る旅 〜 シンド(パキスタン)とリシタン(ウズベキスタン)

やきものの国日本だけれど、装飾タイルの歴史が浅いこともあり、タイルのイメージは限定的。装飾タイル=イラン、イスタンブル、アルハンブラ、がんばってサマルカンドあたりが、日本でのタイルのイメージではないかと思います。

パキスタンのタイル、、ムルタンやウッチュ(いずれもパンジャーブ州)の聖者廟の独特の濃い青と模様が強く印象に残っています。繊細とはいえませんが濃厚な世界があり、とても惹かれるタイルです。個人的にはデリー・サルタナット朝時代のものが好き!!(ムガル朝時代にもラホールやデリー、シンド州のハイデラバードでタイル装飾の建造物が作られました)。ペルシアの影響を受けつつインド的なテイストが強いという感じでしょうか。が、私が見ていたのはそこまで。

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(ムルタン、ウッチュ、ラホールの装飾タイル)

現地からのナマの情報が溢れるように発信されるインターネット(facebook、WEBサイト、flicker等)。すごいですね〜!夏に、ムルタンのアートギャラリー「Craft Galleria」のfacebookページを見つけて大喜び。現代の青の陶器の写真が豊富、興味津々で見ていました。(その後、同じ写真の繰り返しになってしまい残念)

インダス河流域の建築(青いタイルや日干しレンガ!)、伝統的服飾、自然が満載の「INDUS VALLEY CIVILIZATION」facebookページもカッコいいです。たくさんの建造物(遺跡化しているものも多いけれど)が素晴らしい!!

最近、知人経由で知った「Tradtional Sindh Kashi Tiles」。パキスタン・シンド(Sindh)州の「Nasarpur」(インダス文明の中でも最も古くから人が住みついた町のひとつ)にある陶芸ファミリーのfacebookページです。現地建造物のタイルのアップ写真(タイル模様をクローズアップした写真は書籍でもWEBでも少ない)や現代のタイル写真、タイル製作の様子など、興味深いです。

そんな日々、アップされた一枚の写真に目が止まりました。説明には、「Traditional Sindh Kashi Tiles pottery product round plate surface design with traditional kashi kari motives 」(伝統的なシンドの陶芸製品。現地の伝統的なモチーフが描かれている丸皿/「kashi kari」はインド・パキスタンで「施釉陶器〜タイル」)。

え?!ホント!?シンドの皿??あまりに似ている、ウズベキスタン(リシタン)の陶器に、、。こんなことってあるの!? (↓)コラージュ写真1段め左「これが問題のお皿」。他の皿(1段めの3点)と、これだけが違う気がしてなりません。でも「シンドの陶器」と明記してあります。

驚いて、コメント欄から、「ウズベキスタンの陶器とそっくりなことに驚きました。とくにボーダーの部分の模様とコバルト青の色が」と書いてみたところ、(英語の意味がよくわからないのですが)「働いている人々がいることは知っている。でも自分はパキスタンのシンドに属している/yes i know their is people working on but i do belong from Pakistan Sindh」とのコメントが。

これを読んで、さらに驚愕。ということは(Peopleが何を指すか不明ではあるけれど)、ウズベキスタンからパキスタンの陶芸産地に働きに行っているの!?これは自分的には、かなりの大ニュースです!

想像できないことではない。イスラム教が根づいた国同士だし、距離もそれほど遠くないし、中央アジア(とくに陶芸産地リシタンのあるフェルガナ地方)と北インド世界はムガル朝という縁があるし。ロシアや韓国に働きに行くと同様、パキスタンに行くこともあるのかなと。ウズベキスタンの社会状況等も考え合わせ、あり得るのかなと思いつつ、現代の工人の移動にワクワクドキドキ、思いを巡らせていました。

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(写真1段め左「これが問題のお皿」。謎解き遊びは、下記文章にて/コラージュで写真が小さくなってしまったかなあ、、/1段めの写真4点は「Tradtional Sindh Kashi Tiles」より引用)

でも、「問題のお皿」を見ていると、、、どうしても「よく見た模様、知っている色」と思ってしまうのです。
そこで、気になる点、色と模様を独断で検証してみました! 1段めの左から2,3,4はシンドのもの。この緑と青をよくごらん下さい。また模様もじっくりと。

2段め。リシタンの緑色と青です。緑色はリシタンの方がクリアでしっかりしている。シンドの緑色は黄色みがあります。青(コバルト青、ターコイズ青ともに)もリシタンの方がクリアで、シンドの青は黒みがあるように思います。

3段めは模様。「問題皿」のボーダーの蔓草のようなくるんくるんした模様は、リシタンのボーダーと共通していると思います。緑のライン(例:魚皿)も時々見られるパターンです。「問題皿」の見込みの模様は、知っている工房の作品よりやさしいタッチなので少し惑わされました。でも花びらを見ると、筆を先端から奥に押し付けながら花びらを描いていく描き方(リシタンの特徴)が同じ。模様も全体にシンドの方がざっくりした描き方。

4段め。わりと細密で白地の多いデザイン。花びらを全面に散らし細いラインで花模様の合間を埋めるデザイン、曲線で描く細いラインが似ている。さらに、今年の夏、「今年は白地を多くしたデザインを増やしている」と聞きました。実際、4段め右の2点は、今夏購入してきたものです。

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(NEW! ! 上の比較コラージュ写真が小さくて見えにくいため、4枚版を作りました!)

職人さん自身が移動してパキスタンで製作しているという考えは??独断ですが、皿は元々の産地(リシタン)で作られたと思います。職人さんは移動しても、土や釉薬や窯ごと持って行けない。模様は移動先で描けても、色は持って行けない

「問題皿」の化粧土の方が白くてクリア、シンドの白はクリームがかっているように見えます。
そして緑色。今回最大のポイントはこの緑色でした。緑色も明度や色味が微妙に違う。これはリシタンの緑だと思う。万が一、土や釉薬など、すべて持参したとしても、焼成温度や窯の特徴が違うのでは?
さらに、余計なことですが、シンドの皿は黒い紙の上で撮影されており、「問題皿」はコンクリ床。なんだかリシタンの工房の床を想像してしまいました。

そういえば、昨年の夏もリシタンの工房で、「ヒンドゥスタンから大量の注文があって」と一生懸命製作していました。行き来が活発になり、様々に交流もあるのでしょうね。購入されたり、サンプルとして運ばれたという線もあり??なんらかの経緯で、シンドの陶芸一家の手元に写真が、あるいは実物があったのでは??

上より、独断による結論=「(シンドの皿としてアップされた)問題皿」は、リシタンで、リシタンの職人が作った、リシタンのお皿。( (^_^;)))専門家の方、素人の推測なので、お遊びと思って見逃してください!)

すべて妄想かもしれません!!ホントにシンドの皿かもしれない。リシタンの職人さんがシンドできれいなお皿を作っていたらゴメンナサイ!それはそれで、すごく興味のあることで、マジでその点を調べたいんです。だからこそ、気になってしまったんです。大好きなウズベキスタンとパキスタンの「交差」を見て、とてもワクワクしている私です。

そんなわけで、、妄想につきあっていただいた皆様に、リシタンの青や模様をプレゼント 。(ね、やはり、「問題皿」と近いでしょう??)↓↓↓↓↓↓


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(リシタンの青の茶碗。クリアな青の発色。模様も多彩です。直径10cm程度)


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(リシタンの青の魚皿。青といっても多様です。個性的でのびのびした図柄が魅力。魚は幸福の象徴)


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(リシタンのタイル。「問題皿」の模様や色の参考になりそうなものを選びました。パキスタンの現代のタイルにも、ぜひともこれから注目していきたいと思います!興味津々です)


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(フェルガナの廟。リシタンの工房が装飾タイルを製作しました。緑色にご注目ください。この緑色なんです。だからお皿がどうしてもリシタンのものだと思ってしまうのです)

今回もご訪問ありがとうございました。年末近し。ちょっと慌ただしいですね。風邪などひかれませんように。
by orientlibrary | 2012-12-07 18:48 | ウズベキスタンのタイルと陶芸