イスラムアート紀行

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ウズの絣、素敵な仕立てで/日本初の移動式メリーゴーラウンド/石とタシケント

まあまあの暑さのこの頃、東へ西へ、小さな訪問旅。

中央アジア・ウズベキスタンの魅力的な絣布「アドラス」(縦糸絹×横糸木綿)「アトラス」(絹)などを使い、手仕事で仕立てた服などの展示会。KANNOTEXTILE「身に纏う色彩と熱」(板橋にて、21日まで)。

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(上左:きれいな水色のアドラスのワンピース。大胆な柄なのにかわいさや安心感がある/上中:スカーフのフリンジ。捻って捻って全部にフリンジ/上右:この色合いがウズ/下中:ミラー刺繍をほどこしたサッシュ、稠密な刺繍を白シャツにオン)

女性が好きなファッションの世界も、実際は男性デザイナーが多いですが、KANNOさんはサクサク仕立ててしまうのがすごい。ラインがきれい。また、別名「刺繍男子」。ミラーワークなど多彩な刺繍をこなす。
「あのあたり偏愛系」としては、アドラスやアトラスの布としてのパワーが、日本になじむかたちで開花しているのを見るのがうれしいです。
布と工芸を巡る旅のなか、今後どちらの方を志向していく人なのかまだわからないけれど、これからも中央アジアをよろしくね!☆!

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横浜本牧、米軍ハウスを改造したというスタジオで、汗だくになって作業している人たちが。作っているのは、、「移動式メリーゴーラウンド」。メリ~ゴーランド研究所というメリーゴーランド研究開発ユニットの皆さん。

メリーゴーランドとは、、「回転する床の上に、床の回転に合わせて上下する座席を備えた遊具。座席は馬に似せて作られ騎乗のような体験ができる。1860年頃、フランスで蒸気機関を動力として作られ、1870年頃にヨーロッパやアメリカ等に広まった」もの。「日本で最初に設置されたメリーゴーランドは、1903年に大阪で開催された勧業博覧会。現在、東京ディズニーランド、ユニバーサルスタジオ等に設置されている」のですが、本格的でアート性の高い「移動式」は初めてではないかということです。

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(日本とイタリア合作のメリゴ。基礎部分、動力部分も苦心したところ。安全第一でしっかりしています。これから電飾も付き、さらにノスタルジックな音楽が流れるそうです。そのエネルギーは太陽光!3頭の馬は画一ではなくそれぞれ個性。手作りならではです。どんな色合いになるんでしょうね。楽しみです/下左:これが「エコデコ」/下右:カフェがあるとHPに書いてあったのでお茶しようと算段していたら、カフェって冷蔵庫だった(^_^;)。冷えた瓶ビール。暑いですからね、いただきます☆ハサミで栓を抜く技を見せるメリケンのケンさん。煙草は「エコー」。「馬にお金がかかりすぎて、、」)

このメリーゴーラウンドには、開発経緯から構造に至るまで、興味深い点がたくさんあるのですが、土族の私が超反応したのが、馬のボディに使っている「エコデコ」という素材の話。質感がよく、耐久性に優れるそうです。
イタリアのトスカーナ州でカーニバルの山車を作っている「ラ・ソシエタ・デッラルテ」というスタジオが開発。石、木、土を原材料にした土に還る新素材、天然素材の粘土。
そして、、元々はチベットに伝わる素材だというのです。それがなぜイタリアで!?チベットの歴史を考えると、世界に(否応無しに)移住した人がいるのですから、各地でチベットの技能が活用されても不思議ではないのかもしれません。
すぐに固まるので、造作が大変みたいです。でも、確かに質感がいい。きっと完成後にジワジワと違いを感じることができるでしょう。素材の力。
通常の木馬はFRP製。今は「木馬」ではなく「プラ馬」なんですね。が、今回は「土馬」または「石馬」って感じです!
9月中旬完成予定。日本各地で見られる(乗って楽しめる)日も近いはずです。

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新宿で、手仕事やパキスタンの話など。そのとき見せてもらったチベット等の石。パキスタンに詳しいTYさん所有のもの。ちょこっとチベットづいてた2日間。
石は赤の印象が強いですね。パワーがビシビシ。

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(居酒屋のテーブルの上で写真撮り。ストールが便利。ともちゃん、ありがとう/石の名前はわからないので、記載なしです〜^^。ちなみにTYさんにパキスタンの短編集の訳本コピーをいただきました。TYさんの訳、素晴らしい!ミステリアスな短編、ラクナウやペシャワールの光景と一体となって心に残ります。パキスタン、興味高まる一方です)

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春の「青の余韻」から、もう4か月。早いなあ。桜からツツジの季節だった。その時の写真です。魅惑の青。ウズベキスタン・リシタンの青の皿や茶碗たちです。

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(ウズじいちゃんが持ってるのはメロン。極暑にたいして神様が与えてくれたと思えるような瑞々しい甘さ。甘露)

ユーラシア各地の青が依然気になるけれど、やはりこの青が好き。リシタンの青。
また会いに行ってきます。今回はタシケントも歩いてみようかなと。ちゃんと歩いたことがない首都なのでした。(あれ?上の内容との関連が、、タシケントってテュルク語で「石の町」っていう意味ですよね^^)

アトラス産地のマルギランやフェルガナの濃い町コカンドも行きたいけれど、どうなることか。日本みたいに、スラスラサクサクいかない面があるし。ご縁次第と思っています。
とにかく、無事でいきたいと思います。

そんなわけで、次のブログ更新は9月初旬になりそうです。皆さん、お元気でおすごしくださいね!!
by orientlibrary | 2012-08-20 02:34 | 日々のこと

純なる白磁。青白磁の優美に酔う/ザ・シティ・ダーク/これは映画ではない

イスラムの青い陶器とタイル偏愛系「イスラムアート紀行」です。前回から、あっという間に、もう「残暑お見舞い」の時期に、、早いです。

Facebookから日々繰り出されるイスラムの青のタイル、聖者廟、音楽、染織などの情報の海に、フラフラ中。これまでなかなか辿りつけなかった世界が、向うからどっと押し寄せてきたという感じ。消化吸収どころか、まったく読み切れない。でも、うれしい悩み。ムガル時代の(現在の)パキスタンのタイル、青が鮮やか!

そんな“偏愛系”ブログですが、やはり陶磁器の歴史において中国の存在は偉大であり、イスラム陶器とも響き合っています。

「陶磁史の展開を世界的に見渡した場合、二つの源流がおのずから浮かびあがる。一は東方の東アジアの中国であり、他は西方の中東地域である。世界の陶磁器は、この二つの極をそれぞれ源泉として流れだし、さまざまの展開を見せるが、二つの流路とも、発展の過程においてたがいに影響を与え、刺激を受けあい、さらに新しい展開を続ける」 (三上次男/『世界陶磁全集21』)

中国陶磁器の花形のひとつ“白磁”、その中国白磁を中心とする白いやきものの展覧会『東洋のやきもの 純なる世界』が出光美術館で開催中です(10月21日まで)。

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(中央:青白磁獅子蓋水差、中国北宋時代、景徳鎮窯/左:青白磁刻花牡丹唐草文瓶、北宋時代、景徳鎮窯/右:白磁祭器、朝鮮王朝時代/展覧会図録表紙に青白磁が2点。出光所蔵品の中でも青白磁は逸品揃い)

展示は見やすく、わかりやすかったです。白磁は高度にしようと思えば、どこまでもできる世界だと思いますが、簡潔でテーマの焦点を絞った展示は、強い印象が残りました。(写真少なくすいません。HPから引用できないので、、)

<展示構成概略>
序=白いやきものは、白色粘土を1,100℃程度で焼き固めた土器が始まり

1:白いやきもののはじまり 陶器質の“白磁”=6世紀以降唐時代まで、白い粘土等に白土を塗った上に、透明な釉薬をかけて白い器が焼き上げられた。ガラス器などの西方の文物を白磁で再現しているところに、白いやきものの役割が反映されている

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(白磁胡人、唐時代)

2:本格白磁の発展 磁器質の白磁=白色の素地に透明釉をかけ、1,300℃前後で焼き上げる本格的な中国の白磁の流れ。器面に施す彫文様(刻花)や型押し文様(印花)も登場

3:白磁と青白磁=宋・元時代の景徳鎮で青味がかった透明釉の特色を逆に生かした青白磁(白磁の一種)が発展。透明釉にどうしても鉄分が残り、酸素を奪って焼く還元焔焼成で青味が出てしまう。しかしそれが美しい。薄胎・軽量で制作技術の高さを物語っており、中国陶磁の最高峰とされる“宋磁”の峻厳な風格を示している。白磁の粋

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(青白磁獅子蓋水注・承盤、北宋時代/今回いちばん好きだった作品。写真では伝わりにくいですが、水色!水色なんです。澄んだ明るい水色。釉薬下の土味もあり、獅子もとぼけていて。「一つあげると言われたらこれです!」と言おうと、ずっとこの前に陣取っていましたが、館の人、聞いてくれなかった。妄想)

4:皇帝の白磁=元代に青磁に代わって景徳鎮白磁が官窯の御用器に。元朝の支配者モンゴル族は、白(純)を最も尊び、宮廷の祭器は白磁に変更された。「純(白)を尚(たっと)ぶ」王朝の出現が白磁のさらなる発展の契機となった

5−1:白土がけの庶民の白磁=素地の表面に白土を塗ることによって、安価で大量に焼造された白い器が人気に
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5−2:明末、輸出で飛躍した白磁=ヨーロッパでも高く評価され、“中国の白”を意味する“ブラン・シーヌ”は、徳化窯製品を指す言葉であった

6:朝鮮王朝の白磁=中国陶磁の強い影響下にあった朝鮮では、白色は聖なる色として尊ばれた。ゆったりとした器形と、やわらかみのある釉色
7:日本の白いやきもの=志野、肥前、京焼、重要文化財「白天目」も

(展示構成と内容は美術館ホームページのこちらに。写真も少々あります)

とくに感動したのは、1〜4のあたり。
 西方の文物を白磁で再現している!
 青白磁の優美さ!青の透明感にクラクラ♥ 
 そして、白を純とするモンゴル系王朝の存在!!(タイルでもモンゴル系王朝の役割は大!)
 朝鮮白磁の温かみも好き

関連して、イスラムの白釉陶器を。

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(「<白釉陶器> 9世紀頃から用いられた技法でまず注目される点は、鉛釉に酸化錫を混ぜることによって乳白色の陶器が焼成されたことである。良質の白色陶土を産しない西アジアでは、この技法は画期的といえよう。白色陶器の上に金属塩(ラスター彩陶器)やコバルト(白釉藍緑彩陶器)で効果的に絵付けをすることを可能にした点できわめて重要である。白釉陶器のなかには器形や低い高台に明らかに唐の影響を示すものがあり、輸入された唐末、五代、あるいは後の宋磁がイスラーム陶工の心をとらえて離さなかったことは、近世に至るまで白磁や青磁の倣製品が作られたことによっても明らかである」(杉村棟/『世界陶磁全集21』)

土味と青の絵付けがいい感じですね。


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久々更新なので、一気いきます。

『ザ・シティ・ダーク – 眠らない惑星の夜を探して』(The City Dark/アメリカ/2011年)。アメリカで問題になっている「光害」と「消えた星空」についてのドキュメンタリー映画。8/11(土)〜17(金)渋谷アップリンクにて1週間限定公開中。

* オフィシャルサイト
* アップリンク
* 予告編

最初は「星が見えなくなった」という情緒的な映画かと思いましたが、生まれたばかりのウミガメが海に帰れず街の方に彷徨って行ってしまう姿(本来は水面に反射する光を頼りに海へと向かうが、現代は街の方が明るくなってしまった)、赤々と輝く高層ビルに激突する何十億もの(!)渡り鳥あたりから、ドキュメンタリーの訴求力がビシビシ。人間の健康への光の影響も考えられるとのこと。

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あまりに当たり前で意識していないけれど、電気による照明が登場してから、まだ百数十年しか経っていない。自然や人間の営みにとっては、まさに激変なのですね。昨今、節電意識が高まっていますが、電気のある暮らしは、いろんな意味で、行き過ぎには問題があるのかも、と感じました。


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先ほど、知りました。

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昨年のカンヌ国際映画祭、すべての観客が拍手を惜しまなかった。世界中の映画監督が支持した話題作が日本公開決定!! 9月「シアター・イメージフォーラム」他、全国順次。

『これは映画ではない』(英語題:This is not a film ペルシャ語題:In Film Nist /イラン /2011/ 監督:ジャファル・パナヒ(2009年の逮捕以来、現在も自宅軟禁がつづく国際的なイラン人映画監督)
* アメリカ公式サイト
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【作品解説】
本作は、逮捕から1年を経た2011年3月、パナヒ監督の自宅において撮影された。映画の前半は共同監督のモジタバ・ミルタマスブの撮影によりパナヒの日常が活写され、彼が現在置かれている厳しい立場がユーモアとともに浮き彫りに。やがてパナヒは「脚本を読むのは映画製作ではないだろう」と、脚本を読みながら構想中の映画を再現して行く…。一見するとドキュメンタリーの形はとっているが、見る者を飽きさせない様々な創意工夫に溢れ、イラン映画黄金期の傑作を思いおこさせる虚実の間のスリルをも感じさせる映画的興奮溢れるエンターテインメント。どんな状況にあっても映画を撮り続ける、という宣言ともとれる感動的な傑作である。

【ジャファル・パナヒ】
アッバス・キアロスタミ監督の助監督を経て、1995年『白い風船』でデビューし、カンヌ映画祭かメラドール賞を受賞。2000年『チャドルと生きる』ではヴェネチア映画祭金獅子賞、2006年には『オフサイド・ガールズ』でベルリン映画祭審査員グランプリを受賞し、3大映画祭を制したイランの名匠。

本作は、自宅軟禁中の2011年3月にパナヒ監督が友人のミルタマスブ監督の協力のもと、自らの生活を自宅で撮影。限られた空間と時間の中にも関わらず、卓越したユーモアと、黄金期イラン映画を彷彿させる自由でスリリングな映画スタイルで、自らのプロテストをエンターテインメントに昇華した鮮やかな傑作です。
パナヒ監督は完成したその映像をUSBファイルに収め、お菓子の箱に入れ、ある知人のルートで密かに国外へ。そして、昨年2011年5月のカンヌ国際映画祭でプレミア上映されて大絶賛され、その後も数々の映画祭に招待され、英国の映画専門誌サイト&サウンドのベスト10、米国のフィルム・コメント誌の「まだ公開されていない映画」ベスト1に輝くなど高く評価されました。
タイトルの『これは映画ではない』は、20年間の映画製作禁止を申し渡されたパナヒ監督の、映画でなければ何を作ろうと違反にならないだろう、という痛烈なブラック・ユーモアを感じさせるアイディア。どんな状況であろうともアーティストは作品づくりをつづけていく、というパナヒ監督の覚悟と逞しさに拍手と喝采を贈りたくなる「プロテスト・エンターテインメント」。
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2011年東京フィルメックス特別招待作品として上映されたようです。『イラン式料理本』とともに、見逃せません。
by orientlibrary | 2012-08-13 19:23 | タイルのデザインと技法