イスラムアート紀行

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哀悼 野上郁哉さん / 自らの両足で立ち上がる 何度でも

音楽雑誌「Oar」を作っていた野上さん、ウルドゥー語を情感ゆたかに訳していた野上さん、スーフィズムを熱く語った野上さんが、いない。

311のあとも、何も書けなかった。今も、言葉が出てくるけれど、どれも違うように感じる。でも、知っていることは少しだけれど、野上郁哉さんを、少しでも書こうと思う。これからたくさんのことをする人だったのだから。それができるのは彼以外にいない、そんなことをしていく人だったのだから。

野上郁哉さんのブログ。「白山駅のブログ」
音楽が好きで好きで、日々幅広い文献を読み語学を精進し、人と会い語り、バイトで自らの暮らしをまかない、睡眠時間も生活費もギリギリまで押さえながら、自分のテーマ、すべきことにに真っすぐで一心だった日々のこと、思い。自己研鑽とたゆまぬ努力に頭が下がる。

音楽雑誌を、自らの力で立ち上げ、企画し、取材し、原稿を書き、販売をする。そんなこと、誰が考えるだろう。考えたって、誰が実際に作る、いや、誰が作れるだろう。でも、2008年に20歳ほどの学生が本当に立ち上げ、これまでに3号発行していた。

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「なんというか、こう、よーするに、体張ってるんです。命削ってるんです。そうまでしてでも、私にはやらなければならないことがあるんです。」「なんとかなる、というよりも、なんとかするんです!この世の中のことどもというのは、一見不可能に見えることでも、ほとんどのことは、努力次第では実現可能だと思うのです。」(「白山駅のブログ」より引用させて頂きました)

「聖者の宮廷講」で、「パキスターニー・ポップ・ミュージック 〜イスラームとスーフィズムのパースペクティブから見たジュヌーン登場以降の発展とその課題〜」を語った野上さん。(「聖者の宮廷講 イスラーム、スーフィズム、ジュヌーン」

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(uch)

ありがとう。
さまざまなかたちで、スーフィー音楽やパンジャーブの詩の魅力を、全力で伝えてくれて、ありがとう。
映画「神に誓って」を紹介してくれて、本当にありがとう。(「神に誓って(Khuda Kay Liye)」

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上映会で冒頭いきなり「Allah Hoo」を歌った野上さんにみんな驚いた。でも快い驚きだった。

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(Lahore)

7月10日、下北沢「ジプシーを追いかけて」。(「ジプシーを追いかけて バローチスタン&パンジャーブ」)。この日、笑顔で会場にいた野上君。ブログでCoke Studioのこの歌を紹介している。当日の「白山駅のブログ」

「Lambi Judaai HD, Komal Rizvi, Coke Studio, Season 4」






「こういう映像を見ていて、というか、彼らの歌を聴いていてとにかく思うのは、この声の深みと歌の表現力は一体どこから来るのであろうか、とそんなことばかりが気になってしまう。一体彼等はどんな人生を送ってきたのか、どうしたらこんな風に歌が歌えるようになるのか、そんなことばかりがとにかく気になって気になって仕方がないし、そう思えば思うほど、自分自身ももっと様々なことを見聞きし、経験し、学んでいかなければならないなぁと思う今日この頃。」(「白山駅のブログ」より引用させて頂きました)

〜〜
真っ暗な暗闇が私の目の前を塞いでも
大きな空が私の頭の上に降って来ても
どんな重圧が私の背中に重くのしかかっても
自らの両足で立ち上がる
何度でも
自らの意志で  自らの足で
(「白山駅のブログ」より引用させて頂きました/「1013hPa」/2011-07-05)
〜〜

これからの人、この分野でかけがえのない人が、突然理不尽に命を奪われた。
年齢を超えて、彼を知る多くの人が悲しみ、重い思いとともにいる。
その重さは深まるばかりだけれど、それぞれが何かに昇華しなければならないし、きっと皆、そうしていくだろう。

もっと話をしておけばよかった、なんて後悔、もうしたくない。
人と話そう。思ったことは伝えよう。行けるときには行こう。できるときにはしよう。笑えるときには笑おう。
本気で一心に精一杯生きよう。自分のテーマがあるならば全身全霊で追いかけよう。二本の足でしっかり立って。

野上さんが絶賛した「Lambi Judaii」、邦題は「長い別れ」。
野上郁哉さん、24歳。駆け抜けていった。でも、忘れない。
どうぞ、やすらかに。

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(multan)
by orientlibrary | 2011-07-30 23:21 | 社会/文化/人

「青」を濃密に、けれども涼しげに

これまで、いくつかのことをひとつの更新時にまとめて書いていましたが、カテゴリ分けもしにくいので、短く一つ一つ分けてアップしてみようかなと思います。まずはひとつ。青の話題を。

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(透ける青が涼しげ。白と植物の緑と相まって爽やか。色って大事だなあ)

手仕事仲間たちが横浜で「colors of asia2 Blue & White」という展示&販売イベントを開催中。「アジアの様々な地域に伝わる最もベーシックな色である青​と白の色に着目し、衣料やアンティークのテキスタイルを​幅広く紹介」しようというもの。

インドの更紗、刺繍、アップリケ、織物、中国の藍染、少数民族の刺繍&織り、ラオスのブランケット、インドネシアの手紡ぎ布、タイのオーガニックコットン、イラン遊牧民のジャジム、ソフレ、アフリカの藍染布など。

統一した色合いで揃えることで、青の魅力に幅と奥行きが出て、見応えがありました。ディスプレーも爽やかで素敵だったので、写真もたくさんご紹介。

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(印花布の手づくり子供服からアジアンな衣装まで)

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(東南アジアの湿度と風を感じるインディゴの大人服)

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(中国の山岳部族「苗族」の手仕事、かな?)

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(印度の型染め布とアクセサリーなど)

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(アフシャール ナンソフレ。木綿をヨコ糸素材にした綴れ織り。常識を超えた木綿、まして生成り=白を使った極めてレアーなキリム。詳しくはこちら

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(薄藍の小さなウズ茶碗を一つ持参。入り口あたりにあります)

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(夕暮れの青)
by orientlibrary | 2011-07-30 14:12 | 絨緞/天幕/布/衣装

パレスチナの天旗、青い茶碗で抹茶、古代イラン風丼

ペースは戻ってきましたが、なんだかめまぐるしい毎日です。ガッカリすること、考え込むこともあれば、時々はうれしいことも。ブログに書きたいのは、もちろんうれしいことです。

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これまで何度かご紹介してきた気仙沼の天旗
なんと、パレスチナ支援のNGOの方のご縁で、パレスチナ難民キャンプの子どもたちに届けていただけることになりました!それを知って、すごく感動しました。

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潮風にはためく天旗、のびのびとした勢いのある天旗、気仙沼のKさん手描きの天旗。
パレスチナの空に高くあがって!真っ赤な太陽のような元気な模様で子どもたちに笑顔を!

天旗と5月に出会ってから、このような展開になるなんて、、SKさん、事務局の皆様、本当にありがとうございました。
どんなに微力でも、成果が見えなくても、自分ができることを淡々とおこなっていくこと。いつか何かのつながりやかたちになるのかもしれない、、力づけられました。

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青のリシタン陶器。惚れ惚れと眺めてしまいます。

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ちょっとオタクに、サイドの模様をご紹介。

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可愛いなあ。。そして、この子たちも旅立っていきました。美しいところへ。
それで良かった。そう、それがいちばんですね!

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私ではできないこと、美しさの可能性を引き出して、暮らしの中で息づかせていただけること。
お抹茶だって、こんなに似合ってる!緑と青がこんなに合うなんて思わなかった。私ではわからなかった。布や金属とも自然に溶け込んでいる。

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青の茶碗でお抹茶をいただきながら、思わず感涙。ヘンですよね。でも、泣けてきてしまいました。美しいところで愛されて大事にしてもらう。最高のモノ冥利ですね!
出会いをつくってくださった皆様に感謝しております。ありがとうございました。

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楽しんだのは、これ。

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(スタンプ丼にしようと思っていたけれど時間がたって乾いてしまった轆轤成形の丼、何か面白いことをしてみたいと、古代イラン風に挑戦!さぶ先生に最初の線を描いてもらいました)

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(模様のイメージ、お手本はこちら!この色合いになる予定。あくまで予定!)

陶芸が楽しい。時々しか行っていないけれど楽しいです。でもけっこう腰にきますね。

こうして書き出してみると、、しみじみとうれしいこと、熱中できることが、こんなにある。書くことって大事だな。日記みたいなブログになりましたが、ペース回復をめざしていきます☆

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<ユーラシア横断近況報告/4月にロカ岬をスタートし、ユーラシア大陸を自転車で横断中のCoCの加藤君、田澤君、ついにトルコに到着/(メールより引用させて頂きます。了承済み)>

「現在トルコのイスタンブールです。

いよいよヨーロッパとアジアの架け橋となる地にたどり着くことができました。ヨーロッパのキリスト圏を抜け出し、すっかりイスラムの文化の中です。すでにモスクでお祈りに参加するという貴重な体験もしました。人も文化も町並みもこれまでの国々と大きく異なります。

今はポルトガルを出発してちょうど3ヶ月になります。これまで駆け抜けてきたヨーロッパでの6000キロの道のりは山あり谷あり嵐ありでけっして簡単なものではありませんでしたが、大きな事故もなく今まで無事に進んでくることができました。これもいつも日本で僕らを応援してくださっているたくさんの方々のおかげです。ありがとうございます。

そして、この6000キロの間に僕たち自身も予想もしていなかったような現地の人々との素敵な出会いがたくさんがあったことに驚き、感動し、感謝をしております。あらためて人々とのつながりの温かさや大切さを実感しております。」

自転車で大陸を進むことは、若いとはいえ生半可ではできないことだと思います。でも、だからこそかもしれないけれど、彼らの文章で毎回感じるのは感謝のことば。自然ににじみ出てくる感謝の思い。いろんな人や出会いや無事に走れていることに、常に感謝している。たくさんの体験と出会いのなかで、人間として大きくなっていっているんだなあ。次は中央アジアゾーン。嫌な思いをなるべくしないで、もし何かあったとしても笑い飛ばして、体験を楽しんで欲しいなと思います。(自分自身は「笑い飛ばす」ことができないでいる昨今ではありますが、、、(^_^;))

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(酷暑の中のギリシャの広大な平原、だそうです。暑そう、、)

ウズとキルギスの国境で大きな地震。リシタンもかなり揺れたようです。地震が多いなあ。工房は大丈夫かな、、8月に陶器をたずねて、行ってきます☆


*facebookがなぜか表示されませんね〜、、どうしてかなあ。。
by orientlibrary | 2011-07-22 23:11 | 社会/文化/人

濱田庄司スタイルにワクワク、夏の休日

連休最後の日、陶芸や工芸に浸るプラン。「濱田庄司スタイル展」(パナソニック汐留ミュージアム)、「明・清 陶磁の名品」(出光美術館)、「不滅のシンボル 鳳凰と獅子」(サントリー美術館)の予定でした。

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(展覧会チラシ/イームズのラウンジ・チェアに座る濱田庄司/1970年頃)

まずは、「濱田庄司スタイル展」へ。濱田庄司さんといえば、私にとっても「民芸」の印象が強く、益子での作陶光景、作務衣とホームスパンのベスト姿などが思い浮かびます。
けれども、今回の展覧会の面白さは、「モダニスト」としての暮らしぶりに焦点を当てていることにありました。

この切り口はとても興味深く、「良いもの」「良き人々」とともに「良き時間」をおおらかに過ごしたた濵田さんの暮らし方、懐の広さ、まさに器の大きい生き方に、触発され、惹かれました。

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(ウインザーチェア/濱田庄司デザインの装飾電燈傘〜アールデコを彷彿とさせる直線模様と温かみのある木製枠/スーツ〜外出時はホームスパンのスーツ着用が常だった/帯留/赤絵角皿〜赤絵と丸窓を使用)

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(絹の手織りネクタイ。部族ストールのノリに近い。ネクタイ的威圧感がないのがいいな)

濱田さんは幼少期の一時期を、神奈川県の溝ノ口で過ごします。この田舎暮らし体験により田舎の魅力に惹かれるようになりました。

同時に、少年の頃から西洋文化に興味を持ち、洋画を習い画家を志した時期も。実家の文具店には洋物の文房具や香水や石けんなどが並び、ハイカラな雰囲気が漂っていたそうです。そんななか、10代後半でルノワールの言葉と出会います。

「”フランスには、大変多くの美術志望者がいるはずであるが、なぜそのほとんどが絵だけを描きたがるのだろう。半分でも三分の一でも工芸の道に入ってくれれば、工芸の質も大きく向上するだろう”。この言葉との出会いが、庄司を画家から陶芸家に変えた訳である。ルノワールの言葉から得た着想は「生活に役に立つ工芸」。すでに、この時に庄司の理念の青写真は出来上がっていたようである」(「濱田庄司 プラスの生活 人・モノ・思考が交わるプラスの人生」/濵田友緒 より)

工芸の 道に進むことを決めた濵田さんは、板谷波山の指導を請うべく東京高等工業学校へ進学。卒業後は河井寬次郎が勤める京都市陶磁器試験場に入所。そしてイギリスへ。(以下、展覧会資料より引用)

「ディッチリングの工芸家村は、ロンドンから決して遠くない距離でありながらゆっくりとした時間が流れる穏やかな村で、ここではデザイナーたちが、生活も芸術活動もすべて身の回りの物事を自分の意思でデザインするという、健康で自由な生活が営まれていました」

「そうしたなかで、濱田はデザイナーたちを「確固たる信念と落着きを彼らの仕事と生活に持っていた。確固たる信念は頭によって得られるが、しかし落着きは良き生活の支えがなければ得られるものではない。」と評し、「良き生活」についての重要性を学び、帰国後益子での生活を選択したのでした」

「「健康」あるいは「健康な美」を追求した濱田の益子での生活は全て自然に基づくもので、現在でいうところのスローライフを先駆けて実践していたといえるでしょう」

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(「濵田庄治スタイル」より引用/濵田家母屋/第2次世界大戦前と思われる/ていねいで温かい。居心地良さそう。ミュージアムはショールームのビルの中にあり最先端のキッチンやリビング提案が多数展開されているけれど、、やはりこの写真の空間にいちばんの魅力を感じてしまいました)


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(「濵田庄治スタイル」より引用/益子にて、1968年/「濱田屋旅館のように毎日人が集まった」と息子さんが回想。濵田作品でごちそうをいただくんですから、、。本物の器と世界の工芸家たちが語り合う時間。それぞれが触発され様々な作品が生まれていったことでしょう)

展示もとても見やすく、家具や建築と工芸の心地よい調和が魅力的でした。とくに大勢のゲストや仲間でいつも賑わっていた濵田家の食卓の再現は、陶器のうえにある料理まで見えてくるよう。話声が聞こえるようで楽しい展示でした。(「濱田庄司スタイル」本にこの写真がなかった、、悲)

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この展覧会ですっかりテンションが上がってしまい、「明・清 陶磁の名品」に行っても、まったく魅力を感じず、、10分くらいで出てしまいました。勉強のために見ておこうと思っていましたが、簡潔で温かい美の世界の対極にあるような華美な世界に、身体的波長が合いませんでした。色あいにもよりますが、陶器の「赤」が苦手です。それで龍なんかが描いてあると、、そんなわけで「不滅のシンボル 鳳凰と獅子」は、とても見る気がしなくなり、、

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日本民芸館の「芹沢銈介と柳悦孝」に変更。

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(夏のしつらえの民芸館)

二人がその美しさに感動し、二人の仕事の基礎となった沖縄の染と織。紅型と絣、縞、花織などの衣装。そして幅広い二人の仕事が展示されていました。

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同時に「東北地方の工芸」も2つの展示室で紹介されていました。仙台堤焼、秀衛椀、浄法寺塗り、こぎん刺し、蓑、背当など、6月の「東北の手仕事」で知ったり触れたりした工芸を見ることができて良かったです。(こぎん刺しは、6月の「東北の手仕事」での山崎道弘さんのコレクションの素晴らしさをあらためて感じました。山崎コレクション、良かったですよ〜!)

ショップで「民芸」のバックナンバー655「特集 柳宗悦と東北の民芸」を購入。

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(表紙の写真は「背当」宮城県)

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(「民芸」655より/左=蓑、秋田県横手/右=蓑、山形県金山町/蓑は素晴しいです。西アフリカはマリのミュージシャンMさん、蓑を見て「コワイ」。日本の蓑の威力はすごいですね)

いいもの、好きなものを見るのは、楽しい。いい夏の休日でした。感謝。
by orientlibrary | 2011-07-18 23:22 | 日本のいいもの・光景

ジプシーを追いかけて。バローチスタン&パンジャーブ

311からほぼ4ヶ月たった7月10日、久々にあるモードのスイッチが入りました。しばらく封印していたというか、別の回路で必死だったというか。とにかく、久しぶりに懐かしいところに帰って来たという気持ちになりました。

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(ラホール/Lahore Fortの幾何学模様タイル。黄色とターコイズブルーの八角星。ジャハンギールが好きだったデザインか/『THE MAJESTY OF MUGHAL DECORATION』より引用)

パンジャーブ、ムルタン、ラホールという地名に心が熱くなり、カッワーリーやバローチーのフォーク音楽、ジプシーたちの歌声に心が揺れました。

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(ラホール/Lahore Fort/黄色をセンターに青が印象的な六角星/『THE MAJESTY OF MUGHAL DECORATION』より引用)

「ジプシーを追いかけて」という映像イベント、2005年からスタートして、今回で26回目だそうです。長く続けるってすごいことです。主催者でありイベントの進行役でもある関口義人さんの「熱」に拍手です。

パンジャーブとは「5つの河」の意味。州都はラホール。イスラム王朝の都として千年の歴史があります。

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(ムルタンのタイル。どの青も強い色合い。コバルトというより濃紺といったイメージの青も)

ムルタンやウッチュなど、私の好きなタイルのある地でもあります。デリーサルタナット王朝、トウグルグ朝、ローディ朝などのタイルは、独特の青色とインド的なテイストを感じさせる濃いデザインが最高です。

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(この空の青があるからより映える強い青ですね。文様もおおらかで強い感じです)

「ジプシーを追いかけて」、関口さんは1985年にパリでジプシーに会って興味を持って以来、98年から世界のジプシーに会いに行っているそうです。
ジプシーは、現在世界60カ国に1300万人くらい。決まった住所がない人たちなので、出会うまでが大変とのこと。
世界にジプシー研究者は500名ほどいるとも言われており、その拠点はイギリスのリバプール(リバプール大学)なんだそうです。

ジプシーはどこから来たのか、その「原郷」は諸説ありましたが、最近では遺伝子研究(ヒトゲノム計画)などの成果もあり、北インドとの説が有力なようです。「染色体から考えて、北インドのグループに所属していたことがはっきりした」と関口さん。
トニー・ガトロフのジプシーフィルムを愛する私には、もちろんその説がもっともすんなりきます。

今回は、その原郷に近いエリアである、バローチスタンやパンジャーブの楽士(職能音楽家)に焦点を当てた企画でした。
そしてこの地域といえば、「バローチの恋人」村山和之さん。ブラーフィー語などを現地の言葉を学び、地域を歩いている人ならではの視点に、いつも大変触発されます。
今回も、バローチスタンの説明として「学生を客人としてもてなしながら連れ回した」(数年前に報道された大学生誘拐事件)など、いかに彼らが節度と義侠心のある人たちかを強調。その言葉、待ってました!

今回、圧巻だったのはバローチスタンの楽士の映像。Azim Jahnさん、聴き入りました。

そして村山さんや音楽好き大絶賛の「Coke Studio」からの音像。パキスタンの音楽番組「Coke Studio」は、とにかくすごい。ローカルで土着的な歌を取り上げても、ものすごく洗練されています。

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("Nar Bait "/ Akhtar Chanal Zahri/Coke Studio, Season 4)

超土着なゲスト、とくにフォークの歌い手は「聖者廟にすくう歌うたい、あるいは乞食とも」。一方、バックをつとめるミュージシャンたちは、まさに「バークレー出た感じ」。このミックスがたまらない。フュージョンってこういうものなんだね。中途半端にならず、互いに高め合って新たな世界を創っている。誰もがいい顔で演奏し歌っている。

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("Nar Bait "/ Akhtar Chanal Zahri/Coke Studio, Season 4/Zahriさんのアジュラック〜ストールがいいですね〜!ターバンの巻き方もナイス!)

元々ロック好きなところに北インド音楽が最も波長の合う私には、心地よく、かつ血が騒ぐような音楽世界なのでした。

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("Nar Bait "/ Akhtar Chanal Zahri/Coke Studio, Season 4/黒のベストの模様が気になりました。バローチ男子、粋ですな〜☆)

音楽に興味のある方は、こちら↓をどうぞ。「セバ(美しい)、バローチスターン」という言葉が聞こえます。YouTubeより、"Nar Bait "/ Akhtar Chanal Zahri(Coke Studio, Season 4)







トークは2部に分かれ、途中、アフガン音楽ユニット「ちゃるぱーさ」さんとバンスリの寺原太郎さんのライブもあり、盛りだくさんで大満足でした。
こうなると、アフガンのタイルも見たいですよね。

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(ヘラート/MAUSORLEUM OF GOHAR SHAD 1447/「太陽が輝くように光るタイル」/『COLOUR AND SYMBOLISM IN ISLAMIC ARCHITECTURE』より引用 )

マザリシャリフのモスク(1480)↓。手前の茶碗の青色が気になります。

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(『COLOUR AND SYMBOLISM IN ISLAMIC ARCHITECTURE』より引用 )

好きな夏、いろんなテーマを私も追いかけてみたい。当面はやはり、「青のタイルを追いかけて」かな!?
by orientlibrary | 2011-07-12 22:37 | 美術/音楽/映画

太陽、天旗、カツオ、スザニ、その共通項は?

猛暑&節電の7月です。そんな時節に怒られそうですが、真っ赤な燃えるような太陽、嫌いじゃないです。「月」にも惹かれますが、どちらかというと「太陽派」かも!?

このところ、本当に更新ができず、でした。段取りが悪いのか、集中力がないのか、時間の使い方が下手なのか、、残念です。
そんな日々が続いた先日、夜の宅急便の最終で発泡スチロールの大箱が。重さずっしり、ジャラジャラと重く響く氷の音、、開けてみると、、 
その後の騒動?(大きくてさばけません〜、、カツオパニック!)と、感謝の宴の模様は、「カツオと浦霞で、、ほろ酔いレポート」に。(facebookの「Like」が1日で18になったのはビックリです。食べ物強し!そして頂いたのは気仙沼で震災後初水揚げという記念すべきカツオなのでした。本当に感謝致します)

そのカツオくんの写真の「眼」を見ているうちに、不思議な連想が。

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(気仙沼の凧「天旗」、日の出凧)

日の出凧は気仙沼の天旗の伝統的なデザイン。明治時代に創作された「日の出」の絵です。気迫に満ち伸びやかな太陽の図柄。同時に、、こちらとも似てません?!

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(カツオの真ん丸な眼。きれいな二重円!)

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(メダイの眼も真ん丸/「市場魚類図鑑」より引用させて頂きました)

魚の町、見慣れている魚の眼が重なったのかも!なんて連想してしまいました。^^

この天旗(日の出凧)、今年5月に仙台で初めてその写真を見せてもらい、手仕事仲間で「ゾロアスターだ!」と騒いでいたものです。そのあたりを、Sさんがついにアップ!待ってました〜☆

Sさん、大量の引用失礼します!!!

「このデザインを見て驚いたのは、なんとオリエント~中央アジアへの広がりゾロアスター的な繋がりを直感させるものでした。中央アジア手仕事の名品スザニとして知られる、刺繍布にも共通する何かを感じます」

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(Sさん、写真までお借りします。すいません!/tribeさんサイトより引用させていただきましたm(_ _)m)

「同時にイランから中央アジアにかけての宗教的象徴に翼をもった円盤のモチーフがあります。エジプト、アッシリア、ヒッタイト、古代イランにも良く見られるものです」

「ゾロアスターの象徴『アフラ・マズダー』も翼を持つ神官像がシンボライズされ、アケメネス朝時代の遺跡にはあちこちで円もしくは円環(二重円)の造形が存在し、魂の元型とも考えられています」

「研究者によればササン朝イラン時代を代表する連珠文も2重の円の繋がりと見ることも出来るかも知れません。これは本来108つの珠で形成されていて、無数の守護霊や、祖霊とも考えられているようです」

「ササン朝の王家では王権のよりどころと権威を天空との結びつきにもとめたようで、天空のシンボルはササン朝時代に最も豊かな発展を遂げ多様化したようです。天空との関わりの深い2重円構造の連珠文と、天空にはためく『天旗』の2重円文様に、どこか共通した繋がりを感じてしまいました」

「東北の太平洋岸には、かつて中心であった地域から最も時間をかけてたどり着いた文化や風習が元型に近い形で残っているのではないかという、思いがありました。澄んだ泉に石を投げて出来る波紋が時間をかけて周辺にたどり着き、中心よりさらに増幅されて伝わるような・・・」(引用ここまで)

東北と中央ユーラシア、これまでまったく関連を考えたことがなかったのですが、なんだかこの頃気になります。

例にのぼっている二重円のスザニの他にも、円、太陽的なデザインを中心に広がる構図のスザニがとても多いと思います。一気にいきますよ〜。

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スザニだけじゃないですよね。シンド地方のミラーワークもいっちゃいましょ〜!

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バングラのカンタです。

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太陽や火、強く偉大な存在。圧倒的な力、根源。強烈な日射しを忌避しながらも、畏敬の念や憧れがあるのでしょうか。

暑さがやわらいだ頃に、インドかウズに旅ができればなあ。あ、日本の方が暑いかも。
そんなわけで、、これからはもう少し更新頻度アップしていきたいと思ってます☆
by orientlibrary | 2011-07-04 22:08 | 中央ユーラシア暮らしと工芸