イスラムアート紀行

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真夏のウズへ

ちょこっと残暑、そして朝晩は肌寒い、今年の夏は最後までよくわからない天候でした。
そんな日本から、パッキリ夏してる(はずの)ウズベキスタンに行ってきます。

ムガルの本、イランの庭の本、読みたい本を入手したものの、そのまま、という日々。
なんだかあわただしく、じっくりスタディできず、せっかく遊びに来ていただいているのに、すいません!
秋は落ち着いて、、と、といくかどうか。どんな秋になるのでしょうか。

またしても写真だけの更新になりますが、ウズベキスタンの雰囲気を味わっていただければと思います。


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(自分では好きな写真。ウズの林檎と赤いチェックがカワイイ☆)


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(ウズの杏の林。ゆりかごが風に揺れる)


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(職人さんの紹介。コーカンドの博物館にて。こういうのを見るとうれしくなる。さすがウズ!)


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(絹織物で有名なマルギランの工房。絣の織り模様のデザイン。先染めしたあと織っていく)


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(リシタンの町のはずれ。廟。コミュニティで守っている)


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(フェルガナに雨が降る。急な雨でも熱心に野菜販売。買う側も雨をものともせず、しっかり交渉。水の少ないフェルガナに雨は恵み)


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(リシタンの路地裏。生活感がしみ出してくるよう)


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(リシタン陶器。青と緑が鮮烈。大胆でおおらかな線が好き、いいですよねえ、、)


1週間ほどですが、行ってきます☆
by orientlibrary | 2009-08-25 17:57 | ウズベキスタンのタイルと陶芸

土色のメルヴ

●昨年、トルクメニスタン旅行から帰ったとき、ブログにこんな報告を書きました。「その印象は、土土土、風風風、日日日」。さらに「風というよりは砂嵐が吹きつけ、行けども行けども土族もびっくりの土づくし」とも。

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(メルヴ出土の15世紀・ティムール朝時代の皿。動物がイキイキと描かれています)

●今、メルヴ遺跡の写真を見ていて、その感覚を思い出しました。土を愛する自称「土族」の私ですが、あまりに広大な土色世界にちょっと食傷気味でした。

●メルヴ遺跡は、広大な沙漠の中にある60平方キロメートルのトルクメニスタン最大規模の遺跡群です。衰退した古い町に隣接して新しい町が作られたため、紀元前6世紀のアケメネス朝ペルシャから16世紀頃までの5つの時代に築かれた町の跡を見ることができます。現存する建造物としては、日干しレンガの城塞跡やアイスハウス(氷の貯蔵庫)、焼成レンガの廟などがあります。

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(大キズカラ)

●最も有名なのは、ササン朝時代に築かれた大キズカラ。パンフレットなどで紹介されることの多いメルヴのシンボル。ササン朝の土の建造物、今も各地に残ってますねえ。日干しレンガの質が違うのかなあ。すごいです。

●セルジューク朝のスルタンの廟「スルタン・サンジャール廟」は、1140年代の建造。当時のメルヴには、セルジューク朝の都が置かれ、イスラム圏ではバグダッドに次ぐほどに栄えたといいます。堅牢な造りなので、モンゴル軍の徹底的な破壊にも耐えたそうです。現在では修復の結果、立派に復元されています。味わいはありませんが、大きさや建築を知るには良いのでしょう。想像力が必要ですね。

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(スルタン・サンジャール廟、1890年の様子)

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(スルタン・サンジャール廟、2001年の様子)

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(スルタン・サンジャール廟、現在)

●タイル好きの私が最も反応したのは、7世紀の聖者廟・アスハーブ遺跡群。アーチ部分は14世紀に建て増しされたとのこと。タイル装飾隆盛期であることから、つじつまが合います。14世紀のタイル(=バンナーイという技法のレンガ装飾)とは感慨深い。いいですね〜!でも、はっきり覚えていませんが、撮影禁止と言われ、こっそりと撮った気がします。(昨年のことですが、もう記憶があいまい。でも撮影禁止の意味がわからないと思った記憶が、、)

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(アスハーブ遺跡群)

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(アスハーブ遺跡群)

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(アスハーブ遺跡群)

●そして、一番好きだったのは、ムハンマド・イブン・サイード廟(ムハンマドから5代目の子孫)の内部装飾。レンガ積みとカリグラフィーに、簡素な美しさ、趣があります。暗いせいもありますが、荘厳な気持ちに。遺跡などで、一瞬ですが、その時代に自分がいるような気になるときがあります。それが私にとって、旅の醍醐味のひとつですが、このカリグラフィーは、そんな瞬間をプレゼントしてくれました。

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(ムハンマド・イブン・サイード廟)

●有名なメルヴ遺跡。シルクロード交易の拠点、オアシス都市、セルジューク朝の都、、私にとって興味津々のところのはずなのですが、どうも盛り上がりきれなかったのは、あまりに広大なせいでしょうか。遺跡を愉しむには、実際のところ、知識が重要、そしてそれを駆動させる柔軟な想像力も不可欠、と思うのでした。

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(花模様のレリーフ)
by orientlibrary | 2009-08-19 00:45 | 中央アジア5カ国

旅の色

●暑中お見舞い申し上げます。更新頻度のあやうい当ブログにもかかわらず、いつも遊びに来ていただいて、ありがとうございます。毎度のことながら、なかなか更新ができず、書いても中身の薄いものになってしまいます。

●この「イスラムアート紀行」、始めたのが05年の9月1日。飽きっぽい私が、ほぼ丸4年続けていることになります。自分でもびっくり。何もないとスタディしないのは目に見えていたので、ブログという形式で書いていくのは、自分にはあっていたと思います。そして皆様のコメントや訪問が励みになったのは、言うまでもありません。心から感謝しています。

●今回も何を書こうか迷ったのですが、あまり時間がありません。写真を見ているうちに、色編でいきたいと思いました。キャプションもなしですが、、。マリーゴールド色編、青編です。

◆ インド亜大陸、マリーゴールド色の世界 ◆

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(インド・ハリドワール)


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(インド・リシケシ)


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(インド・ハリドワール)


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(インド・リシケシ)


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(インド・ラジャスターン)

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(インド・ラジャスターン)


◆ ユーラシア、空と水の青の世界 ◆


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(イラン・タブリーズ・ブルーモスク)


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(イラン・タブリーズ博物館)


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(イラン・タブリーズ博物館)


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(イラン・タブリーズ博物館)


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(白釉色絵草花文皿〜トルコ・イズニク窯〜/オスマン朝・17世紀/東京国立博博物館)


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(ウズベキスタン・リシタン陶器/現代)


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(中央アジアでおなじみの青のティーポット。カザフスタンにて)
by orientlibrary | 2009-08-11 00:24 | 中央ユーラシア暮らしと工芸

インド・ラジャスターンに咲く サンガネールの優雅なブロックプリント

●相当久しぶりに北インド音楽のライブへ。シタール、タブラ、声楽、そしてカタックダンス。やはり北インドの旋律が好きだなあ。演奏者や踊り、歌の皆さん、すべて私が以前聴いていた時代よりひと回りもふた回りも世代的に若い。そして客層もそれに合わせて若い。クラシックなインド音楽を好きな層というのは、今もちゃんとあるようです。出演の皆さんはインドで勉強をしている人ばかりで、技術も高く、内容的にも浸れました。

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●さて今日はインドにちなんで、インドの布です。私の好きな布、木版捺染(ブロックプリント)のあるラジャスターン地方は古代から様々な民族が行き交い、移り住んできた土地です。東方と西方、北方と南方の文化の起点として多彩な歴史を育んできました。木版捺染の模様もラジャスターンの歴史とともに息づいてきた文化のひとつです。

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●ラジャスターンに栄えたイスラム系の王朝ムガル朝期には、ペルシアの影響を受けた独特の文化が形成されました。インドの綿織物は古代から優れた技術を誇り、インド更紗も古くから作られていましたが、より繊細なものに洗練したのは、この時期権力と富を手にしたマハラジャ(藩王)たちです。マハラジャは贅を尽くして身を飾り、腕の立つ職人を保護して、華やかで洗練された様々な布を競って作らせました

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大航海時代、インドの染織文化はポルトガルによってアジアの国々や日本へ伝えられ、そのエキゾチズムで人々を魅了しました。18世紀にはインド原綿はヨーロッパを席巻し、ムガルのデザインはその後のヨーロッパの服飾や室内装飾にも大きな影響を与えたのです。

●しかし、インド染織をめぐる状況は、イギリスの統治や独立後の社会変化によって激動しました。私がサンガネールという町の工房を訪ねた頃(95年)も、まだ厳しい状況が続いているようでした。デリーから400キロ、ラジャスターンの州都であるジャイプール、その近郊にあるサンガネールやバグルーには木版捺染の工房が集積しています。その中のひとつに「サンガネール様式」を復元した工房がありました。小さな工房でしたが、その作品は私を圧倒しました。

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「サンガネール様式」は、自然主義とペルシア風の気品あふれた花柄が特徴です。花柄の繊細な色を生かすために地色は白のものが多く、清涼感があります。木綿は透けるくらいに薄いものです。縦糸か横糸に絹が入っているものもありますが、暑いインドでは絹よりも風を通す上質な木綿が贅沢なのです。布の「透け感」を見てください。ミニアチュールに描かれたマハラジャの透ける花模様の衣装、こんな感じだったのではないでしょうか。(製法や模様の意味等については次回に続きます)
by orientlibrary | 2009-08-06 01:33 | インド/パキスタン

いろいろあるからおもしろい、ブハラの不思議建築

●ウズベキスタン・ブハラといえば中世の風情漂う旧市街の街並が魅力。そんななかで異色なのが、ブハラ・ハーン国の離宮として1911年に建てられた「スィトライ・マヒ・ホサ宮殿」。ネット等で見てみると、「ロシア文化に心酔していたハーンの趣味で建物はブハラ・ロシア折衷方式で建てられています」とあります。

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(スィトライ・マヒ・ホサ宮殿)

●ティムール朝の装飾タイルやムガルの模様、イスラム建築の洗練された精緻な美しさが好きな私、この宮殿にはグッと惹かれるものはありません。でも興味は持ちます。どうしてこうなったのかな、という興味ですが。

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(スィトライ・マヒ・ホサ宮殿)

●ロシアの様式は疎くてわかりませんが、外観はそんな感じの部分もあります。またシャンデリアのある謁見の間はゴテゴテとしてロココ風の匂いもあります。でも、バロック、ロココ大の苦手の私ですが、そんなに拒否反応も出ませんでした。たぶん、模様のせいではないかと思います。

●この時代のロシアはヨーロッパ志向真っ盛りでしょうから、ロシア様式の中にはヨーロッパ趣味が入っているはず。しかし、そのヨーロッパ趣味の中にはヨーロッパ人が影響を受けたインドや中国などアジアのテイストが入っているはず。つまり回り回って、ブハラのこの宮殿は、アジアが色濃くあるのでは、と思いました。だから私も意外と大丈夫だったのでしょう。

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(スィトライ・マヒ・ホサ宮殿。ミヒラーブ形の上部はイスラム装飾の代表である「ムカルナス」(鍾乳石飾り)が)

●そして、具体的に言えば、そのアジアとは、、インド・ムガル朝(〜ムガルが影響を受けたペルシア)です。スィトライ・マヒ・ホサ宮殿の模様の中に、かなりムガル的なものを感じます。代表的なモチーフとしての花瓶に入った花、ミヒラーブ、パルメット、幾何学模様などです。ムガルの創始者バーブルはフェルガナ生まれ。インドに遠征し、ムガル帝国を建国しました。しかし生涯、中央アジアの地を懐かしんだと言われます。こういう形で影響を与えているとは、バーブルも意外かも。

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(スィトライ・マヒ・ホサ宮殿)」

●スィトライ・マヒ・ホサ宮殿の壁面には、イスラム建築に見られる漆喰装飾(ガンチ)の浮彫り、ニッチになったミヒラーブ形の装飾、花瓶に入った花束の絵などを見ることができます。最盛期ムガルのものと比較するからなのでしょうが、少し粗いと感じるのは仕方ないかも。

●おもしろいのは、花束の模様です。↓こんなの見たことありません。が、連想するものはあります。インド・カシミールのペーズリー模様です。ペーズリーはペルシアのボタ(花模様)から、次第に花が傾ぎ、まとまって塊になり、勾玉状に変化していったという見方があります。ヨーロッパで人気を博し、後の生産地であるイギリスの地名がつけられました。この模様、花の密度からいうと、強いて言えばカシミール風!?でも、赤と緑が多用され描き方は中国風な印象も。それともロシアのモチーフに、これに近いものがあるんでしょうか?謎です。

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(スィトライ・マヒ・ホサ宮殿)

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(ペーズリー〜花模様。カシミールショールのボーダー部分、18世紀/『MUGHAL DECORATION 』 より引用)


●ムガル的といえば、石のスクリーン「ジャーリー」(シンプルな模様ですが)もあります。

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(スィトライ・マヒ・ホサ宮殿)

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(itimid-ad daulas’s tomb。これぞムガルの美!壷や花瓶、花、糸杉のモチーフ、象嵌装飾、細やかな幾何学模様の石のスクリーン、繊細優美!/『MUGHAL DECORATION 』 より引用)

●また、八角星を中心においた幾何学模様もティムール朝やムガル朝をはじめイスラムの装飾でよく見られるものです。

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(スィトライ・マヒ・ホサ宮殿。ハーンの写真。重厚なカオスとでもというのか、、全体になんとも言えない空気感)

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(ラホールフォート、八角星と幾何学模様。ラホールフォートの黄色のタイルは独特。テラコッタに映えます/『MUGHAL DECORATION 』 より引用)

●結局、、この建物、わかりません。以前、南インドのマドゥライにあるパーンディヤ王国時代のティルマライ・ナーヤカ宮殿について書いたことがあります。「インド・サラセン様式」(ムガルのイスラム建築の要素を取り入れたコロニアル建築)の建物だそうなのですが、壮大かつコテコテとした不思議な、退廃的匂いの漂う宮殿でした。

●スィトライ・マヒ・ホサ宮殿は、もっとカラッとおおらかな感じ。深く考えず、好きなものをいろいろと取り入れてみた感じがします。そこがおもしろいし、興味の持てる点でした。

●しかし、ブハラも9世紀の端正なサーマーン廟から、中世建築物のタイル装飾の豊穣、そして20世紀初頭の不思議建築まで、いろいろあります。気候のいいときに、ゆっくりと滞在したい街です。


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(サマルカンド、グルエミル、天井の華麗な装飾。絢爛豪華だけどゴテゴテ感はない。洗練ってこういうものではないかなと思います)
by orientlibrary | 2009-08-05 14:14 | ウズベキスタンのタイルと陶芸