イスラムアート紀行

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日本の夏、フォトメモ風

●あっという間に7月も終盤です。なかなか更新できずに日がたってしまいました。ここでぜひビシッと何か書きたいのですが、今回もふらふらっとしたものに、、なんでもありの、日々のメモ少々です。ゆるゆるとごらんください。

●まずは本から。↓『THE MAJESTY OF MUGHAL DECORATION』(Thames&Hudson)。某書店の洋書コーナーで見つけて欲しいなあ〜!と思ったら、値段が12000円ほど。高いし、重いし、あきらめて帰り、いちおうamazonをチェック。するとなんと5400円ほど!(たぶん。はっきり覚えてない)。やった〜!まだよく見ていませんが、充実の内容に喜んでいます。

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●↓こちらは先日開催された「歌の時代は終わったのか?中央ユーラシアおよび近隣における口承文芸の歴史的役割」という研究会の中で紹介された本=中央ユーラシア各地のチュルク諸民族に伝わる物語『アルパミシュ』の表紙です。バローチーのブラーフィー英雄譚、ニヴフ民族の歴史的伝承、ホタン人の殉教歌謡など、魅力的なお話の連続でした。

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●飛んで、お皿と食べ物です。↓は空豆があることからもわかるように2ヶ月くらい前の写真です。お料理上手のTさん、ウズベキスタンのお皿(青のもの)においしいお料理を盛りつけてもてなしてくださいました。Tさん宅は、食器として飾りとして、ウズ工芸品を暮らしの中で使いこなしていらっしゃいます。ウズ工芸活用見本のような、暖かさあふれるお家です。

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●↓はウズベキスタンの大皿使用例。Yさんから送って頂いた写真です。このお皿は直径53㎝。半端じゃない大きさです。ウズでは飾りとして、また結婚式のピラフを盛りつけるなどに使われるようです。Yさんは、青のお皿に笹を敷いて真っ白なおにぎり。お盆風の使い方が新鮮です。

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●皿シリーズ。↓は沖縄・読谷の作家さんの作品(東京での展示会)。コバルトブルーが爽やか。ウズの青を連想しましたが、白の中の青のバランスが日本の青だなあと思いました。

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●飛んで横浜へ。↓違法風俗店などがひしめきあっていたある街が変身しています。それは中区の黄金町。警察の摘発で立ち退きが相次ぎ空き店舗が目立っていましたが、昨年秋にアートフェスティバルが開かれるなどアートの街に。京急の高架下にスタジオや店舗がオープンしています。まだ少し怪しい気配が漂いますが、ステンレスや木の素材感とあまり違和感なく共存。川沿いでもあり、独特の雰囲気です。カフェではライブも。イベントもいろいろあるようです。

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(黄金町。高架下にステンレスのモダンな建物が並びます。雨の日で暗いですが)

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(ウッドとガラスが明るい感じのカフェとイベントスペース)

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(商店街にあるギャラリーでは新感覚の墨絵の展示。扇子に描いたり屏風風だったり、楽しい展示でした。作者は日本画を学んだ若い作家さん)

●日ノ出スタジオという建物の中にある「グリーンクラフト」さん↓で、ウズベキスタンのチャバン(男性の衣装)発見。裏地を見せるディスプレー、好き度が伝わります。日本の着物同様、裏を粋に華やかに。中央アジアのセンス、オシャレです。中央アジア、東南アジア、西アジアまでOさんセレクトの商品は見ていて楽しい!

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(ウズベキスタン、チャバンの裏地)

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(ウズのものもいろいろ)

東京墨田リバー。夜景です。夜景の苦手意識克服だ〜!と調子にノッてきたとき、シャッターが石のように動かなくなりました、、、気まぐれEOSちゃん、、それとも私の使い方に問題が?(たぶん、そうなんでしょう、、)。いずれにしても、2年半でこうなるの?使用頻度very very少ないんですけど。まだ買い換えたくないけど、、私の運命やいかに!?

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(屋形船=右下の赤い光のみ、、=と高層ビル)

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(南国風ですが墨田川沿いです)

●ぶつぶつひとり言のような文と下手な写真におつきあいくださって、どうもありがとうございました☆
by orientlibrary | 2009-07-29 23:02 | 日本のいいもの・光景

ペルシアの庭とヤズドのタイル

●「イランはすごい」、、タイル大好き、絨毯や細密画などの工芸も好きな私、何度そう思ったことでしょう。技術の高さはもちろんのこと、独特の感性が底流にあるように感じます。情熱と叙情、繊細と優美、華麗で誇り高い、陶酔と耽美、そんな言葉が浮かびます。

◆ ペルシアの庭園 ◆
●先日、東京国際ブックフェアで、イランの本に出会いました。そしてまた感じました。イランはすごい。イスラム世界の庭園をイランの庭園から語り尽くすかのような本、『GARDENS OF IRAN Ancient Wisdom,New Visions』(Teheran Museum of Contemporary Art)。

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(『GARDENS OF IRAN Ancient Wisdom,New Visions』。タイトルの下にあるメダリオンに注目!)

●「イスラムの庭園」は、細密画や絨毯の模様にも好んで描かれるテーマです。私は実際に多くの庭園をを訪ねているわけではありませんが、端正な空間でありながら、植物を愛好する気持ちや水への憧れが溢れるようで、とても魅力を感じ、庭のこと、もっと知りたいと思っていました。

●この本では、豊富な写真、詳細な解説、図面から、植物やタイルなどのディテールまで紹介されています。さらに歴史的な工芸品に描かれた庭園モチーフ事例、現代の作品に描かれた庭園など、多彩な切り口。そして、タイル好きにはしみじみと嬉しいことが。タイルのモチーフが本のシンボル的に使用されているのです!

●それは、ヤズドの金曜モスク(1325-34)のタイルです。『GARDENS OF IRAN』の本文にも書かれているように、サファビー朝の華やかなタイルと比較すると、この年代のタイルはあまり有名ではありません。しかし、「過去と現在の芸術の潮流をつなぐものとして、サファビー朝のタイルよりも興味深い」として、このタイルを例示することを選択しているのです。(この感性に感涙!)

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(ヤズド・金曜モスクのタイル/『GARDENS OF IRAN Ancient Wisdom,New Visions』より引用。中心のメダリオンが、上の本のタイトル内などでシンボル的なビジュアルとして見られる。タイルが主役になってうれしい!)

●ヤズドのタイルは、4色の縁飾りのある長方形のパネルを、六角形のターコイズブルー(微妙に色合いが異なる)のタイルが埋め、中心に緻密なモザイクのメダリオンがあります。メダリオンは12角の太陽のパターン。縁と同じ4色が使われています。

●でも、なぜこのタイルが庭の本に?「このタイルのターコイズブルーは、深い青から薄い青までバリエーションがあり、波のような水の動きを感じさせる。モスクの中にある水の存在の比喩のようだ。見る者の心を平和にし、神秘的な詩のように心を癒し、私たちを想像の世界へと誘う。まるで細密画のように」。水と庭との関連からタイルを語っているのですね。専門書の文章ですが、詩的ですね〜。

◆ 子ども向けの工芸本 ◆
●もうひとつの出会いは、子ども向けの美術解説本。タイル、ペインティング、ミラーワーク、漆喰装飾など、シリーズで10種類くらい揃っていました。30ページほどの薄手の本ですが、本の装丁やデザインが何ともいえず魅力的で、引き込まれました。

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(タイルの本は、イスファハーンの「ロトフォッラーモスク」の天井のタイルがテーマです)

●日本や欧米以外で制作された雑誌や本を見る機会は、あまりありません。タイルの本も欧米の研究者が執筆し、ロンドンやアメリカで作られているものを見ることが多いのです。イランの人がイランのタイルをどう見るかにも興味があります。ペルシア語なので何が書いてあるかわからないのが残念ですが、、でも、デザインだけでも、うっとり!!!

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(ペインティングの本は、HAFT-TANNAN MONUMENT(1ST IRANIAN GALLERY)がテーマ。絵の切り取り方がなんとも鮮烈)

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(ペインティングの本の中面。センスいいですね〜)

●おもしろいのは、このシリーズが制作された意図。このシリーズのタイトルは、「なぜ私たちはこれらを無視したのか」「どうしてこれらを見てこなかったのか」。「伝統あるイランの芸術作品であるにもかかわらず長年目を向けてこられなかったものを、しっかり見ていこう」と子どもたちを啓蒙しています。イランでも古い工芸を見ないようになっているのでしょうか。でも、こんなシリーズを作ってしまうこと、それ自体が、イランの芸術の底力かもしれません。

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(ミラーワークの本は、NARENJESTAN MANSION IN SHIRAZの主ホールの天井がテーマ。本の中面より。イラストやカリグラフィーがたまらなくすてきです)
by orientlibrary | 2009-07-15 12:15 | 至高の美イランのタイル

陽のように輝き、星のように優雅に。ミラー刺繍の美

イスラムタイルといえば、青。緻密この上ないモザイクの美だけでなく、乾燥地帯の紺碧の空を映すようなラピスラズリ色、トルコ石色など、鮮烈な青色が大きな魅力です。イスラムタイルを愛する当ブログも、トーンはブルーが多くなります。

今回は趣向を変えて、赤の世界でいきたいと思います。赤といえば、トルクメンの絨毯などが有名ですが、今日は赤の中でもキラキラした世界に飛んでみたいです。ミラー刺繍です。 

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(写真提供:YSさん)

インドのグジャラート地方などで有名な刺繍技法。写真は、すべてO氏のコレクションよりご紹介させていただきました。Oさんはパキスタン赴任中にミラー刺繍に惹かれるようになり、買い集められたそうです。そのコレクションを一堂に見せていただく機会がありましたが、濃い空気が立ち上がってくる気配に圧倒されました。一見同じように見えるのですが、よく見ると模様も技法も多彩です。

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(写真提供:YSさん)

このミラー刺繍、私の手持ちの本には解説を見つけることができませんでした。頼みのWEBにもなし、、。仕方なく英語のサイトを参照しました。怪しい訳だと思いますが、素人のざっくりのご紹介ということでお願いします。

WEB「India Crafts」/WEB「MIRROR WORK AND EMBROIDERRY GUJARAT」IN「INDIAN HOLIDAY PVT.LTD」などを参照し、まとめました。

・インドでは、“shisya”(この言葉の意味が?ミラーと同意?)、または、“mirror”は、インドの刺繍の伝統の最も魅力的で特徴的なもののひとつとして知られています。
・とくに、グジャラート、ラジャスターン、ハリヤナ、デリーなどの乾燥した灼熱の沙漠地方では、強い色彩で施されたミラー刺繍が、彼らの衣服や装飾品、室内調度品の中に見られます。
・ミラー刺繍は、「Garari Jat community」(ジャーティ〜職業集団名?)によって、白や赤やオレンジや青や緑色など色とりどりの縫い糸で刺繍されます。
・グジャラートのカッチ地方では、ミラーは鳥の目や花の中心として使われます。グジャラートだけでなく、ラジャスターン、ハリヤナ、さらにはオリッサでまで、“shisya”は同様の情熱で美しい装飾として使われます。
・ミラーワークの技法は、13世紀頃のペルシアに起源があると推測されています。元々は、ミラーではなく雲母で作られたと言われています。
・ミラーワークは、模様をより高度なものにする努力がなされ、テキスタイルや他の装飾品やアクセサリーの上に刺繍されたり描かれたりしてきました。
・通常、ミラーワークは、黒っぽい地の上に、花びらや花、鳥などのモチーフを刺繍します。これらの主要なモチーフは、古代の信仰、儀式や日々の暮らしから触発されたものです。しかし模様は地域によって、また時代によって異なります。
・ミラーの形は、円形、四角形、三角形、多角形など多彩です。サイズも豊富で大きなものから小さなものまであります。
・ 今日では、いくつかのタイプのミラーがあります。手で吹いて作ったガラスのもの、アンティークのもの、まだ雲母が使われているものなどです。ミラーワークは、優雅で豪華で印象的です。

*コメント欄より、私のわからなかった部分を補足してくださる情報をいただきました。(090708)
・“shisya”=より大雑把には「ガラス(製の物)」を指すので、必ずしも「鏡」とは限らないが、この場合は鏡の意味と考えてよい。「shisha」と綴られることが多く、「ミラーワーク(の~)」の場合は「shishedar」。
・「Garari Jat community」=この”Jat” は「ジャート」という、インド北西部を中心とする有力なジャーティ集団の一つ。ただ、一括りにするにはかなり無理がある巨大な集団なので、元々の居住地域や生業などによってさらに細かい集団に分かれる。分派の名称が”Garari”。通常はこちらが日本での苗字的に使用される。
*ブログを続けていてうれしいのは、このような情報をいただけることです。ek-japaniさん、シェアして頂き、本当にありがとうございました!!感謝しています。

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(写真提供:YSさん)(緻密な刺繍。サイズは畳1畳分の大きさを軽く超えていたと思います。飾り布として迫力がすごい!/O氏コレクション)

「ミラーワークの婚礼衣装」(『インド 大地の布』より)。「輝くミラー刺繍を好んで使うのは、森で暮らしていた頃、野獣を追い払うために用いた名残だという。ミラーで埋め尽くした婚礼衣装は、素材は木綿だが、豪華で何代も使えるほど丈夫にできていた。左肩の飾り布は結婚したときにつけて、未亡人になったときに取り外すのだそうだ」。

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(写真提供:YSさん)(真っ暗な中で見たミラー刺繍の掛け布。幻想的で忘れられません。まるで天の川のようでした。数m×数mという大変に大きな作品。当記事上から4点の写真のミラーワークは、この布を構成するパーツです。このような多彩なパーツが200以上も縫い合わせられています。ひとつひとつに個性があり、本当に圧巻でした/O氏コレクション))


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(長細く、儀式に使う布ではないかと想像しましたが詳しくはわかりません/O氏コレクション)
by orientlibrary | 2009-07-07 22:44 | 絨緞/天幕/布/衣装