イスラムアート紀行

orientlib.exblog.jp

<   2009年 03月 ( 4 )   > この月の画像一覧

早春の奈良、瓦と土塀と花と絨緞

前々回、瓦の記事で書いた飛鳥寺の瓦(588年)、その瓦が現存し、しかも実際に屋根の瓦として使われている寺があります。奈良市にある元興寺です。早春の奈良が好きな私、瓦見たさ&所用もあり、出かけてきました。

訪れたのは、法隆寺(瓦と土塀)、白毫寺(落椿)、元興寺(瓦)、薬師寺(平山郁夫さんのシルクロードの壁画)などがメインの趣味的セレクト。ちょうど開催されていた奈良在住で絨毯仲間Fさんの展示会も見ることができ、ラッキーでした。

楽しく充実した小旅行でしたが、残念ながら天候は悪く、写真はまったく冴えません。また、最近のコンパクトデジカメは大丈夫との甘い考えで充電器を持っていかなかったことも敗因で、写真は総崩れ。肝心の瓦の写真も数枚しかありません、、、

瓦については次の機会に。今回は冴えない写真のみというパッとしない更新ですが、早春の奈良の空気を少しでも感じていただけたらうれしく思います。(空の色が暗いですが、、こんな日もありますよね!)

e0063212_204244.jpg
(奈良の土壁。土族感涙!いいですねえ)

e0063212_2031935.jpg
(法隆寺土塀。以前、左官の記事で少し書いたことがあります)

e0063212_2062666.jpg
(法隆寺は一日かけてゆっくり見たいです。今回は瓦屋根と土塀中心)

e0063212_2052040.jpg
(寒さのなか、桜もほころびかけて迷い中?)

e0063212_206038.jpg
(やっぱりあった、夢殿を模した野菜直売所。周辺にどんどんいろんなものを作っているご主人を発見。いい感じです。斑鳩の里の思い出。〜夢殿の近くの景色なので勘違い。写真をよく見たら六角堂でした。ご主人、失礼!〜)

e0063212_2062273.jpg
(Fさんの絨毯コレクションの展示会@奈良市内のギャラリー。今回はバローチがテーマ。さすが、良いセンスです)

e0063212_2063917.jpg
(私が好きだったバローチ絨毯模様アップ。色合いがいいです。家の模様?、、そんなわけないですね!ボテ〜花模様だそうです。遊牧民はこういう家に住んでないし、、。でも私だけでなく、お客さんたちも「家だと思った」と語ってました)

e0063212_207969.jpg
(白毫寺。高台にある小さなお寺ながら花の寺として有名。とくに萩。この時期は落椿。大椿や白木蓮も見事で旅気分を満喫しました)

e0063212_2085440.jpg
(落椿の存在感)

e0063212_2095014.jpg
(元興寺にて。蓮の手入れだと思います。きちんとした並べ方が日本だなあ)

e0063212_2084030.jpg
(早朝、興福寺にて。瑞々しさに目が覚めるようでした)

憧れの古代瓦へ春の旅
斑鳩や鶯一声澄みわたる
ひたひたと古代回廊春の暮
白木蓮飛鳥の土塀のその奥に
落椿紅き曼荼羅描きおり
春の雨子鹿の睫毛濡らしおり
大和路は色まだ淡き初桜
by orientlibrary | 2009-03-28 20:18 | 日本のいいもの・光景

ノウルーズ、ハフトスィーンとペルシア伝統音楽を堪能!

イスラムタイルのある地域に惹かれると、その地の文化や暮らしにも興味を持つようになります。メドレセ、マザール、ラマダンなどの単語にも自然に親しむようになり、同じ好みの仲間で話すときには普通に使っています。「ノウルーズ」も、そんな言葉のひとつです。

ペルシア語で「ノウ」は「新しい」、「ルーズ」は「日」。ですからノウルーズは「元旦」。起源は、遡ること3000年の古代ペルシアにあり、ゾロアスター教と関連の深い行事と言われます。昼と夜の時間が同じになる春分の日がノウルーズ。イランだけでなく中央アジアなど広い地域で祝われるそうです。

以前から「ハフトスィーン」(7つのS=頭文字がSで始まる7つのものを飾る。それぞれに意味がある)という独特の習慣に興味があったのですが、今回、イラン大使館でその美しい飾り付けを見ることができました。さらにペルシア伝統音楽の素晴らしいコンサートに感動!古典音楽、いいですね〜!!イランは深いなあ。

写真をメインにご紹介させていただきます。核となった行事「ペルシア絨毯と文化展」開催者の皆様、また様々なプログラムを提供して下さったイラン大使館の皆様に感謝いたします。私もおめでたい新年の気分を味わわせていただきました。皆様にとって良き一年となりますように!


**********************

e0063212_22355277.jpg
(↑ハフトスィーン演出。7つのS=↓上より7点の他、さらに素晴らしくなるという様々なものが飾られています)
e0063212_22373349.jpg
(サブゼ/小麦/再生の象徴)
e0063212_22363467.jpg
(サマヌ/小麦の新芽で作った甘いプリン/豊かさ)
e0063212_2237084.jpg
(センジェド/干したグミの実/愛)
e0063212_22372587.jpg
(スィール/にんにく/医学・薬)
e0063212_2238060.jpg
(スィーブ/りんご/美と健康)
e0063212_22394152.jpg
(ソマーグ/薬味の一種/夜明けの空の色)
e0063212_22384140.jpg
(セルケ/酢/長寿と忍耐/7つのSはここまで)
e0063212_124534.jpg
(マヒダル/金魚/生命)
e0063212_2239325.jpg
(ポルトガルダルアーブ/水に浮かぶオレンジ/宇宙の中の地球)
e0063212_22402336.jpg
(セッケ/コイン/繁栄と富)
e0063212_22525127.jpg
(サブゼ/レンズ豆/再生)
e0063212_22395534.jpg
(シャム/ロウソク/啓蒙と幸福)
e0063212_22413694.jpg
(アーイネ/鏡/光りと創造)(ソンボル/ヒヤシンス/春)
e0063212_22405117.jpg
(サーアト/時計/時)
e0063212_22423328.jpg
(トフメモーグ/色づけした卵/子孫繁栄)
e0063212_22412896.jpg
(コーラン)
e0063212_2243974.jpg
(ディバネ・ハフェズ/ハフェズの詩集)


**********************

e0063212_22421360.jpg
(ペルシア伝統音楽の演奏と歌唱「Golrizan」。圧倒的なレベルの音楽を堪能。素晴らしい!最高!)
e0063212_2244334.jpg
(楽器=ネイ)
e0063212_1554067.jpg
(カマンチェ)
e0063212_22432385.jpg
(サントゥール)
e0063212_2245624.jpg
(タール)
e0063212_2244016.jpg
(ダフ)


<ブログ内関連記事>
 「ラマダンの夜に聴く ペルシア音楽の超絶」
by orientlibrary | 2009-03-20 22:51 | 社会/文化/人

軒先からの情報発信、「軒丸瓦」(写真=高句麗、新羅編)

今日の新聞に、小さな記事がありました。「平安時代の瓦が出土」。土族orientlibrary、反応!です。平安時代後半(11―12世紀)の瓦が大量に出土したのは、奈良県吉野町の金峯山寺。創建時の瓦とみられるそうです。「平瓦や軒瓦の破片が中心。唐草文付きの軒平瓦が1点あった。同研究所は製作技法から年代を推定した」。唐草文付きの軒平瓦、、きゃ〜、かっこいい!

専門家のコメントもあります。「当時、瓦葺きの屋根は格式の高い建物。こんな山中に建てた努力を考えれば、時の有力者の信仰をいかに集めていたかがわかる」。ということで、「山岳宗教の研究上、重要な資料」なんだそうです。

e0063212_22464684.jpg
(蓮花文軒丸瓦。三国時代、高句麗。6〜7世紀/東京国立博物館) 

e0063212_22455953.jpg
(渦文軒丸瓦。三国時代、高句麗。6〜7世紀/東京国立博物館) 

でも若い頃には、自分がこういう記事に反応するようになろうとは夢にも思っていませんでした。日本の歴史や日本の美術には、あまり興味がなかったのです。欧米から始まり、南アジアから西アジア、中央アジア、という旅行経験の変遷。イスラムの装飾タイルや土ものへの熱中。布や細密画への興味。そこから振り返るように見た日本のもの、、その多様さと魅力に年々関心が強くなっています。

日本のタイルについては、旧岩崎邸のヴィクトリアンタイルについて少し書きました。でも、その歴史的な意義は理解しますが、テイスト的に好みではないので、本当はあまり書きたいというものではありませんでした。やはりタイルの話題は、イスラムのものが多くなります。

でも、土の話題ならば、日本はスゴイです。日本の陶芸の多彩さと暮らしへの浸透度は世界一だと思うし、土壁や日本の左官技術も素晴らしい。木と水と、そして土の国だと思います。そして、今回のテーマである「瓦」は日本の「タイルのルーツ」と言われています。

「日本書紀」には、飛鳥時代に朝鮮半島の百済から仏舎利とともに僧、寺工、画工、瓦博士が送られたことが記されています。その際に一緒にもたらされたのが「墫(せん、煉瓦の意味)」や瓦でした。当時の都であった飛鳥の地に、日本で初めての本格的な寺院である飛鳥寺が建てられ、その屋根瓦が近くに築いた窯で制作されたそうです。その後、瓦は日本各地に建立された国分寺をはじめ、寺院や城の屋根に使われていきます。

e0063212_2341771.jpg
(蓮花軒丸瓦。統一新羅時代。7〜8世紀/東京国立博物館) 

e0063212_22483434.jpg
(獅子文軒丸瓦。統一新羅時代。8世紀/東京国立博物館) 

瓦の原料は、粘土に1割ほどの砂を混ぜたもの。板状にした粘土を円筒状木型に巻き付けて成形します。瓦自体も美しいものですが、瓦界の花形といえば、やはり軒先を飾る「軒丸瓦」「軒平瓦」でしょう。(以前、モンゴルの軒丸瓦の文様の謎について書きました=関連記事として文末に紹介)。

前回ご紹介した東京国立博物館。膨大な収蔵品の中から、このようなマイナーな品目も、がっつり紹介してくれています。同館の平成館・考古展示室には、なんと全国各地の「軒丸瓦」と「軒平瓦」がペアで、大きな壁面いっぱいに展示されているのです(涙)。

e0063212_2251451.jpg
(瓦ばかりでは地味!? 東京国立博物館・法隆寺宝物館。エントランスより外を見る。もうすぐ桜が見られそう。ホテルオークラのレストラン&喫茶もあり、そこから外を見るのも気持ちいいです。館の設計は谷口吉生)

奈良時代には蓮華文、唐草文が多く見られ、時代が新しくなると巴文や寺院名を入れるなど個性的なデザインも登場します。全国各地で模様や雰囲気が少しずつ違うのが、とても興味深いです。全部写真を撮ってきました。

で、それをアップしようとしましたが、あまりにも点数が多すぎ。でも全部見比べるからおもしろいのに、、と迷っているうちに、東洋館で撮った朝鮮半島の同時期の軒丸瓦の写真に見入ってしまいました。焼き物などでも、朝鮮半島のものって、繊細でほわんと柔らかい感じがして、なんとも魅力的。瓦も、日本のものと見比べてみると、どこか温かでやさしい印象です。

e0063212_2362378.jpg
(花文軒丸瓦。統一新羅時代。8世紀/東京国立博物館) 

e0063212_22473943.jpg
(鬼面文軒丸瓦。統一新羅時代。8〜9世紀/東京国立博物館) 

e0063212_22494121.jpg
(双鳥文軒丸瓦。統一新羅時代。8〜9世紀/東京国立博物館)

百済、高句麗、新羅は、日本の瓦の先輩。その影響を受けて、日本は独自の発達を遂げたと言われます。長い前置きでしたが、今回の写真は、日本の瓦の大先輩である朝鮮半島、6〜9世紀頃の軒丸瓦です。蓮花文、渦、双鳥など、時代的、地域的に模様をどう見ていくかにも興味があります。もっといろんなこと知りたいです!


ブログ内関連記事
 「タイル4兄弟。タイル、レンガ、テラコッタ、そして瓦!」
 「土の建築、左官の仕事、その深くて熱い世界」
 「草原のエルデニ・ゾー 草原色の笑う瓦」・・モンゴルの軒丸瓦
 「ヴィクトリアンタイル〜イスラム〜日本、、疑問です@旧岩崎邸」
 「洋館のヴィクトリアンタイルから もういちどムガルへ」
by orientlibrary | 2009-03-14 22:54 | タイルのデザインと技法

光のかたち、水のかたち、豊穣のかたち

上野の東京国立博物館は、好奇心を満たしてくれるワクワクな場所。企画展を見に行くだけじゃ、もったいない!狙いは常設です。展示館が5つもあって、各館でそのときどきの特集陳列を楽しめます。たとえば今なら、東洋館で「インド細密画」、「ペルーの土壷」、「名物裂〜幾何学文と縞」、本館で「おひなさまと人形」、「仏像の道」などなど。

各館の建築も見応えあるし、シンボルの大きなユリノキを眺めればおおらかな気分に。長蛇の列を見ると帰りたくなる人、混雑が嫌いな人、デジカメを持って常設にゴー!(一部を除いて写真も可。ただしフラッシュや三脚は不可)

e0063212_2351957.jpg
(光背。銅製鍍金。飛鳥または三国(朝鮮)時代。6〜7世紀/東京国立博物館・法隆寺宝物館・展示品目解説を撮影)

博物館については、また書いてみたいと思いますが、今日の話題は、展示館のひとつである法隆寺宝物館にズラリと展示されている「光背」についてです。仏様の後光を表した光背、それだけを一堂にして見ると、デザインの多彩さと個性に驚きます。

e0063212_23513371.jpg
(光背。銅製鍍金。飛鳥時代。7世紀/東京国立博物館・法隆寺宝物館・展示品目解説を撮影)

そのうちに、なんだかどこかで見たような既視感がわいてきました。光背の形状は、光や舟形、宝珠、火焔などに分類されるようですが、全体的に上部が細くなった、滴のような、アーモンドのようなかたち。 どこかで見たことあるなあ。土族の私ですから、あのあたり?と思いめぐらしてみると、、やはりタイル!

e0063212_2352140.jpg
(アフマドヤサヴィー廟(1374)・内部壁面タイル/内部撮影禁止のためパンフレットより引用)

e0063212_2352222.jpg
(アフマドヤサヴィー廟(1374)・内部壁面タイル/内部撮影禁止のためパンフレットより引用)

イスラムタイルといえば、幾何学模様や花模様が多いのですが、あの滴みたいなかたちのものもときどきポイント的に使われているように思います。真っ先に思い出したのが、上↑のアフマドヤサヴィー廟のふっくらとしたタイル。ティムール時代のタイルは華美すぎず、力強く、でも可愛らしさもあって、とても好きなのです。

e0063212_23524877.jpg
(タブリースのブルーモスク(1465)・ファサード壁面/文末関連記事からの写真のほうがメダリオンがはっきりしていますが、、なぜかその写真が見つからないので、、)

タブリースのブルーモスクのファサード壁面の、メダリオンのような図柄も見事です。(↑)最高ですね!

時代が新しいもの、タイル装飾が華麗に花開いたイラン・サファヴィー朝やトルコ・オスマン朝の埋め尽くすようなデザインの中にも、丸みを帯びた凝った模様があります。ただし、上下にサブの円があるなど、滴形とは少し違います。タイル専門書のキャプションを見ると、これらは「マンダラ形(mandarla like shape)」となっています。マンダラというネーミングがよくわかりませんが、、

私は、どうもティムール時代〜カラコユンル朝あたりの滴のようなかたちに惹かれるようです。華麗なイランやトルコよりも、遊牧民的な匂いのする時代のもの。どっしりしていて、おおらかな感じのもの。光背も7世紀頃の素朴なものが好きです。

e0063212_23535725.jpg
(インド・サンガネールのブロックプリント。ムガルの花模様を復興した工房の作品)

でも、、光背は光だけど、タイルの滴のようなかたちはどこからきたんだろう? かたちを追いかけ始めたら大変なことになりそうだし、専門でもない私には無理。だから自由に想像を楽しみたいと思います。浮かんだのは、、滴(重要な水からの発想?)、壷、花瓶、ボタ(西アジアの花模様)、花模様の集合体(まとまりのかたち)、アーモンド、絨毯などのメダリオン。、、というよりも、洗練された花模様集合体やメダリオンの方が、古くからのデザインだった滴形を模したようにも思えます。

e0063212_23531810.jpg
(リシタンの陶器。豊穣のシンボル・ざくろは人気のある模様。リシタンは青で有名ですが茶や緑も使います)

ウズベキスタンのタイルに見られる滴形は、陶器やスザニでもおなじみのざくろ、唐辛子、太陽などにも見えてきます。光から太陽へ、想像は一巡り!仏教美術とイスラム美術が重なりあって見えてきたことにワクワクしました。

e0063212_235335.jpg
(ウズベキスタン・フェルガナの聖者廟の壁面タイル。2004年頃完成)

リシタンの作家Aさんが手がけたフェルガナの聖者廟にも、滴的なデザイン(↑)があって、私好み。よく見ると、中に魚が泳いでいるようにも、唐辛子が踊っているようにも見えます。この自由さが好き!(魚や唐辛子のモチーフはよく使われます)

e0063212_23533714.jpg
(ウズベキスタンの刺繍布・スザニ。現代のもの。花をデザイン化。太陽にも見えます。大胆で明るい図柄。右下は唐辛子?唐辛子には魔除けの意味)

上野の光背から想像が広がり楽しかったです。ほんとにどこからきた模様なのかな。ご存じのかたは教えてくださいね!
博物館関係では軒丸瓦の話題も書いてみたいです。そして、滴形のタイルの写真におおいに触発された「ユーラシア大陸お仕事日記」さんの「シャーヒズインダの小宇宙」記事(Yさん、古い写真発見しましたよ!)と、もともとの青の話題。青はずっと気になっているテーマ。大きいテーマだけど、少しずつ調べてみようかなと思っています。

■ブログ内関連記事
 「巡礼地アフマド・ヤサヴィー廟 待望の訪問」
 「15世紀タイル装飾の傑作 タブリーズのブルーモスク」(メダリオンがきれいな1番上の写真がなぜかないので、、こちらでどうぞ)
by orientlibrary | 2009-03-07 00:04 | タイルのデザインと技法