イスラムアート紀行

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秋の芋煮&シルクロードじいちゃんズ

◆ 芋煮 ◆

竹林での芋煮&焼き芋会がありました。掘りたてのお芋はほくほくとしておいしかった。インド・ヒマラヤで長く修行した音楽家によるシタールのコンサートも。深まる秋を五感で味わう贅沢な時間でした。

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◆ 最高の老後とは ◆
雑談になりますが、先日、新聞で小さな記事を見つけてびっくりしました。「東京都は、旧グッドウィル・グループ(港区、現・ラディアホールディングス)が開設した有料老人ホーム「バーリントンハウス馬事公苑」で、耐震強度の不足が見つかったと発表した。最も低い部分で建築基準法の耐震基準の68%しか満たしておらず、計900カ所で建築確認を受けた設計図面よりも鉄筋本数などが少なかった」。

唖然としました。「平成18年5月にオープン。高級ホテル並みのサービス提供が売り」のこのホーム、以前知人の見学に同行させてもらい中に入ったことがあるのです。入居時数億円+毎月数十万円〜50万円ほどかかります。見学も経済力や地位のある人優先であることが想像されます。同行見学できてラッキーでした。

内部にはびっくり。たしかにホテルのような豪華風内装。プールや陶芸工房からエステ、ペットケアサロン等々、あらゆるものが揃っており、ケア〜医療も充実。さらに最重要ともいえるレストランは、有名店出身の料理人たちが腕をふるう健康配慮のメニュー。これがおいしかった(ランチ付き見学です)。五目ご飯や煮物など和食でしたが、百貨店に入っているレストランより上ではと思いました。

とにかく全体を通して、驚き、カルチャーショックを受けました。が、帰り道は複雑な気持ちでした。老後の安心としては、たぶん日本で最高クラスなんだろうけど、、でもあれが最高だとしたらなんだか淋しい、そんなものだろうか、と。高額の費用を対価とする笑顔のサービス、それが日常。ホテルみたいな暮らしって安らぐのかな。

と、貧乏人を考えさせた超高級施設が、なに〜、耐震強度不足〜?!構造って一番の基本じゃないですか!鉄筋抜いたのか〜、、クラッとします。「旧グッドウィル・グループ」、、以前、あるリゾート地で、細部の設計やサービスがなんかヘン、と感じた施設がありましたが、元々はこのグループが作ったのだと聞きました。細部に出ちゃうんですよね。見えない構造とかにも。勉強になりました。見かけや甘言にまどわされないよう、地に足のついた感覚を持って生きていきたいです。

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(シルクロードじいちゃんズ/写真提供=YSさん/身長は皆7cmくらいです)


◆ シルクロードじいちゃんズ ◆
気分が重いとき、シルクロードのじいちゃんたちに会いましょう。この地域での「老後」については詳しくわかりませんが、じいちゃんたちはチャイハネで茶を飲み、ばあちゃんたちはバザールで野菜を売ってたりします。

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まだまだ伝統的な暮らし方を大事にしている土地柄、老人の存在感は確かなのではないでしょうか。お人形ひとつとっても、そんな空気が垣間見えませんか。

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いかにも「シルクロード」というお土産の人形です。最近では、観光地にたくさんの土産物、なかでも陶器が豊富に扱われています。編み目が後ろに見えるものは土産物アイテムですが、編み目はむつかしいと聞きます。割らないで持ってくるのも大変なんですよ。

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衣装、表情、仕草も、十人十色。机の前などに置いて、ときどきフッと見ています。私の応援団です。

<リシタン陶器について>

ウズベキスタンの様々な工芸の中でも、陶芸は尊敬されるものです。各地に古代からの伝統を受け継ぐ陶芸の流派があります。リシタンはフェルガナ盆地の南端にある町。土や顔料など陶器制作に必要な良質の素材に恵まれ千年以上前から焼き物が作られてきました。天然釉薬「イシクール」を使った鮮やかな青と、繊細な植物文様の絵付けが特徴。中央アジアだけでなく中東諸国、ヨーロッパ、アメリカなどの市場に輸出されウズベキスタンの有力な貿易品目にもなっています。

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(写真提供=FNさん)
by orientlibrary | 2008-11-20 14:18 | ウズベキスタンのタイルと陶芸

神秘的or土着的宗教歌謡?どちらもナイス!Sufi Soul!

●私がイスラム文化に興味を持ったきっかけのひとつに、「カッワーリー」(イスラム神秘主義と関わりのある宗教音楽)があります。92年、来日したパキスタンのヌスラット・ファテ・アリ・ハーン(1948〜1997)のコンサート、よくわからないまま、「とにかくいいから」と友人に誘われ行ってみて、衝撃を受けました。いわゆる洋楽(ロックやブルース)を主に聴いていた私が初めて触れた世界。これは何!?この音楽の背景は何!?

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(パキスタン・ムルタンの聖者廟。ムルタンの青のタイルが見えます)

●それから月日がたちました。この間、イスラム圏にも旅行し、ヌスラットの出身地パキスタンにも行きました。でも現地でカッワーリーを聴きたいという願いはかないませんでした。やはり遠いものだったのです。

●ところが、このところ風向きが変わってきました。「ファイズ・アリー・ファイズ」などカッワーリー・ミュージシャンが来日。生のカッワーリー(〜スーフィー音楽)に触れる機会もできてきました。

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●それだけではありません。彼らと交流のあるる村山和之さん(西南アジアの音楽や舞踊の研究者)が、「南アジア、西アジア、中央アジアで見られる諸宗教の神秘主義的芸能(音楽・舞踊・演劇)を、老若男女の大衆に愛されてきた聖者と聖者の宮廷こと聖者廟ダルガーにおける諸パフォーマンスに視点を置いて考え考察し楽しむ。同行者と自由に広く交流する場」=「聖者の宮廷講」という勉強会をシリーズで開催。私も参加させてもらうようになったのです。

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●参加している皆さんは超熱心。ディープな雰囲気が充満しています。先日(「宮廷楽士考・2」)も魅力的な内容でしたので、ご紹介したくなりました。村山さん、サラーム海上さん(よろずエキゾ風物ライター&DJ)、勝手にすいません〜!

●まずサラームさんが、発売されたばかりの『SUFI SOUL 〜the mystic music of islam〜』(2005/UK)を上映&紹介してくれました。スコットランド人の歴史家が各地のスーフィーを訪ね歩くドキュメンタリーです。

●いきなりシリアのキリスト教会でスーフィーが祈っている場面でびっくり。融合しているところもあるんですね。続いてトルコのコンヤへ。メフレヴィー教団の旋回舞踊が有名。教団の人は言います。「これはダンスではなく祈りだ。銀河系など、すべてのものは回転する。旋回は誰でもできること。世界の祈りに参加することだ」。

●おもしろかったのは、バザールの鍛冶屋が鍋を叩く音と旋回のリズムの合致。同じなんです!このあたりがスーフィーの好ましいところだなあ。ところがスーフィー音楽は現在のトルコでは非合法。観光客用の名目での許可だけという状況。(その中でもしっかり息づいている様子も紹介されて一安心しましたが)。

●悲しかったのは、JAMAAL-ISLAMという組織の指導者が「音楽は悪い人間のすること、罪(sin)だ」と明言したこと。残念でなりません。どのような原理から出ているのかは知らないけれど、踊りや歌を禁止するのは人にとって不自然だと言いたい。女性ジャーナリストの「ムッラー(指導者)は人間の弱さを知らない。スーフィーはゆるす。人間の弱さを知っているから」との言葉にとても共感しました。(英語ヒアリングあやしいかも、、間違ってたらすいません)

●パキスタン、インドへ移り、さすが本場。ホッとする映像です。スーフィーロックの創始者ジェヌーンも登場。さらにモロッコへ。フェズの「聖なる音楽祭」も紹介されました。「自由で寛容なイスラムを音楽を通して見せていきたい」。いいですね〜!

●第2部は村山さんが今年2月、ラホールで撮った映像紹介聖者アリー・フジュウエリー(ダーター・ガンジ・パフシュ)の963回忌命日祭の模様。聖者の命日祭りはウルス(結婚)の名前で祝われ、祝典は二日間続くのだそうです。すごい!貴重!こういう映像を日本で見られるなんて!ありがたいです〜♪

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(村山和之さん撮影の映像を撮影/聖者廟地下音楽堂でのパフォーマンス)

●出演は、メヘル・アリー&シェール・アリー、ファイズ・アリー・ファイズ、モウルヴィー・アフマド・フセイン、リズワーン・ムアッザム&ムジャーヒド・アリー・ハーン(ヌスラットの甥の楽団)、スーフィー・カウワーリー・パーティ(アメリカの楽団)。

●「カウワーリー(村山さんの表記)は宗教儀礼に用いられるとはいえ、実質上、究極の恋愛歌謡である」というのが村山説。たしかに映像を見ていると、強烈な「愛」を感じます。神様への。

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(村山和之さん撮影の映像を撮影/ヌスラットの甥。熱唱!)

●<曲の種類>は次の3つがあるそうです。ハムド=神アッラー賛歌、ナアト=ムハンマド賛歌、マンカバト=聖者賛歌。基本的にはこの順番で演奏されます。今回は「ダーター」の名前が聞き取れる聖者賛歌が中心だったそうです。

●<曲の流れ>は、ナグマ=器楽演奏部、アーラープ=無拍子の前奏部(歌手の聴かせどころ)、バンディッシュ=曲の中心部分へ。各楽団が競い合うように歌い上げ、すごい熱気です。

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(村山和之さん撮影の映像を撮影/サンフランシスコのカッワーリー楽団。女性もいます)

●会場のド派手な電飾や花は地主で電気店主の寄付だとか。ステージ前では男たちがお札をばらまき、やたらにうろうろと歩き回り、ハグで挨拶し、青年がバラ水を撒布して回る。濃〜い男たちの世界でした。

●世界的に有名なヌスラットだけ聴いていると、ジャズ的な感じ、知的現代的な感じも漂うけれど、聖者廟でのコンサートは、あくまで土着的で身体的な歌謡の世界に見えました。3時間、貴重な映像に浸り、スーフィーへの関心がますます高まった会でした。村山さん、サラーム海上さん、どうもありがとうございました☆

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by orientlibrary | 2008-11-13 00:00 | インド/パキスタン

ホラズムの国・カラカルパクの刺繍と女性の暮らし

◆ 答えは、オバマ大統領 ◆
アジアやイスラム圏にハマる前は、私も欧米文化に興味を持っていました。80年代までは欧米以外の情報はとても少なく、自然な流れとして欧米のものがカッコイイと思っていたのです。とくに音楽をとおして、アメリカは好きでした。

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(イスラム圏への興味のもとになった青いタイル/タブリーズの博物館にて撮影)

90年代以降、旅行などをきっかけにアジア、さらには中東や中央アジアへ関心が移りました。歴史の奥行き、文化の多様性と厚み、親しみやすさなど、知るほどに見るほどに好きになり、とりわけイスラム建築のタイル装飾に惹かれて現在にいたっています。

アメリカには興味を失い、とくに911以降の傲慢な一国行動主義、優越思想、ものごとの単純な図式化には、幻滅し、怒り、辟易していました。そのことについてはここではあまり書きませんが、、。そして今回の大統領選。本当にオバマ氏が大統領になったんですね。感慨があります。なんだか本当に感慨があります。私などでもそう感じるのですから、オバマ氏を支持してきた人たちの感慨はいかほどかと思います。

テレビではほんの一部しか紹介されなかった勝利演説の日本語訳がネットにありました。とてもいい演説だったんですね。読みながらドキドキしました。アメリカが、世界が、どのように変化していくのか、私にはわかりませんが、希望、変革という言葉が生きている言葉だということを感じさせてくれるこの演説のことを、私も忘れないと思います。


◆ カラカルパクの刺繍文化  ◆
話題はガラリと変わって、カラカルパクスタンです。ウズベキスタンの西部にある共和国。縮小が問題になっているアラル海に面した国です。

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(カラカルパク光景)

今年トルクメニスタンに旅行したとき、カラカルパクに立ち寄り、古代ホラズム王国の都城址遺跡カラにも行きました。1泊ですがユルタに泊まり、沙漠の植物や動物に親しみました。

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(アヤズカラ1号)

そんなカラカルパクのこと、飛行機(たしかウズベキスタン航空)の機内誌で紹介されていて、インパクトの強い写真が気になっていました。紹介されていたのはカラカルパクの民族衣装や刺繍。トルクメニスタンも刺繍で有名ですが、赤の使用など似た雰囲気もありつつ、でも強くおおらかで少しウズベキスタンテイストを感じさせる刺繍の写真。本文を読まなくてはと思いつつ、のびのびになっていました。

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(機内誌より引用)

ようやく読みましたので、部分的に抜粋しながら少しご紹介したいと思います。筆者はElmira ALENIKOVA-TSOIさんという人です。訳がかなり怪しいですが、雰囲気ということで、、。なお刺繍関連の写真はすべて機内誌からの引用です。

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(機内誌より引用)

・「カラカルパク女性が彼女たちの心の中の世界を表現すると同時に、生活費を稼ぐことを可能にする刺繍は大事な存在でした。20世紀初頭には刺繍芸術は広範に浸透していました。「彼女の指には小穴が開いている」と尊敬をこめて語られました。刺繍の能力は女性にとって最も重要と考えられる長所のひとつとして評価されてきたのです」

・「カラカルパクの装飾(模様)は研究者がおおまかに4つのグループに分類しています。植物、動物、幾何学、図案模様です」

・「植物模様は植物の型に沿った描写です。葉のある花、茎や枝などです。模様は多様です。杏の花「rrik gul」、プラムの花「kareli gul」、綿花「kauash gul」などです」

・「動物模様は、動物の世界と関連しています。主要なモチーフである巧みに曲がった羊の角「muyizi」には多彩な展開例があります。また、蟻の腰「kumyrska bel」、カラスの爪「garga tyrnak」、サソリの尻尾「shayan kuirik」、蛙「kubaka」などいろいろな模様があります」

・「かってカラカルパクの女性たちは刺繍について特別に教えられるということはありませんでした。彼女たちはユルタを飾るための模様編みを教えられました。それは日々の暮らしにとって、より重要なものだったのです。そして少女たちは、冬に開かれる集まりで刺繍を習ったのでした」

・「その集まりには、技能の優れた工芸家女性から初心者までが一堂に集まっていました。彼女たちは自作の刺繍を持ち寄り、年長の少女や大人の女性は膝の上にそれを広げていました。それらのサンプルを見て、若い少女たちは模様を写し、色の組み合わせを変えるなどして新しいバリエーションを工夫しました」

・「色はカラカルパクの刺繍にとってとても重要な役割を果たします。違う色は同じ模様に異なる意味合いを持たせます。たとえば年配の女性はかって白い服に赤、黄、緑の絹糸で刺繍をしていました。なかでも赤の占める割合が高いものでした。花嫁の衣装では、赤の地色に緑を多く使い、赤や黄や白の模様の刺繍がほどこされました。黒の地色には赤や黄や白の絹糸で刺繍されました。模様の位置は衣料の色やタイプによっても異なりました」

・「刺繍はメンバーの誰かの家の庭や日よけの下に座っておこなわれていました。これらの集まりは競争心に満ちていました。少女たちはいかに刺繍するか、そしていかに他の少女より巧みに刺繍ができるようになるか、熱心に学びました。そして多くの少女が国中に名前を知られる巧みな手工芸家になりました。このような刺繍家は結婚式で着る花嫁の衣装を作るために隣の村まで呼ばれました。刺繍で装飾された衣装は高い価値を持つようになり、作り手に多額の収入をもたらしました」

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(機内誌より引用)

伝統的な手工芸で生計が立つ、女性が収入を得られる、大事なことだと思います。ホラズムももっと知りたい地域です。また行きたいな。
by orientlibrary | 2008-11-07 23:09 | 中央アジア5カ国