イスラムアート紀行

orientlib.exblog.jp

<   2008年 07月 ( 4 )   > この月の画像一覧

中世の街ブハラ、土とタイルと人の景

暑中お見舞い申し上げます。いつも「イスラムアート紀行」を見てくださってありがとうございます。良き夏でありますように、お祈りしております。(今回は、ウズベキスタンの古都ブハラの写真を、人々の姿を中心にご紹介させていただきます。)

e0063212_15334073.jpg


●私自身は、夏生まれのせいか、暑いのは好きです。テンション上がります。今までいちばん暑い経験をしたのは、パキスタンのチョリスターン砂漠での50度くらい。いったい何度だったのか正確にはわかりませんが、ラホールに戻って42度くらいで涼しいと感じたのですから、かなりのものだったと思います。なにしろ5月でしたから、、息を吸い込むと熱気でむせそうでした。

e0063212_1534088.jpg


●ウズベキスタンの夏も暑かったです。50度を超えるという話も聞いたことがあります。冬はマイナス数十度になるといいますから、寒暖差がはげしい〜!内陸気候ですね。

e0063212_15342216.jpg


●そんななかでも、ウズベキスタンの人たち、なんだか機嫌良く暮らしているような印象を受けます。トルクメニスタンから国境を越えてウズベキスタン・ブハラに戻ったときには、本当にホッとしました。旅行者の印象ですが、空気感が違う気がします。

e0063212_15383932.jpg


●そんなブハラはタイル装飾の建築物の宝庫です。とくに世界遺産である旧市街は、やはりワクワクします。サマルカンドの青の煌めきとはまた違い、風情のある古都という感じがします。

e0063212_168132.jpg


●私の好きな「マゴキアッタリモスク」。旧市街のバザール(タキ)の手前、ラビハウズの一角にあります。建立は10世紀頃。

e0063212_1610943.jpg


●ファサードのタイルの年代はわかりませんが、17世紀の傑作が多い他の建造物とは違い、早い年代ではないでしょうか。ターコイズブルーの浮彫りタイルは13~14世紀くらいの感じがするのですが、くわしくはわかりません。でも、いいですよね〜!☆!

e0063212_168468.jpg

 
* * * * * * * * * * * *
 すべてが手作りの実験的な場・「美しい世界の手仕事プロジェクト」。「バングラデシュの宝物 ベンガル女性の心模様・カンタコレクション」展示中。 
by orientlibrary | 2008-07-23 16:03 | ウズベキスタンのタイルと陶芸

バングラデシュの宝物、そして世界のきれいなもの


美しい世界の手仕事や本物にゆったりとひたる。
好みを同じくする人たちと出会う。
触ってみることができる。
規制されずに写真が撮れる。

そんな時空間を求めてきました。


e0063212_9125088.jpg
バングラデシュの宝物「カンタ」(望月真理コレクションより)。カンタは、使い込んで柔らかくなったサリーや腰巻きを再利用した手刺繍の布。赤ちゃんのおくるみなどを作ります。なんともいえないしっとりしたやわらかさに、心がほどけていきそうです。


e0063212_913268.jpg
サリーの端糸を使って自由に心のままにチクチク縫い込んだ模様はベンガルの女性たちの心模様。自由きままで融通無碍、あたたかくやさしい生活の中の布。


e0063212_22173218.jpg
カンタが飾られているのは、もともとは、このような空間でした。SOHOみたいな150坪。とにかく広いです。


e0063212_22183145.jpg
手作りの造作により、空間は変身!刺繍家・望月真理さんが30年の歳月をかけて蒐集したカンタ30点を展示しました。このような古いカンタが一堂に展示されるのは稀です。座ってのんびりした気分で見られるように、床に手織りのキリムを敷き詰めています。


e0063212_913532.jpg
こちらはラジャスターンの透ける布・ブロックプリントによる涼しげな「布の回廊」。


e0063212_2222823.jpg
多彩で華やかなインド・オリッサのサリーによるサリーウオール(壁)が続きます。布は広げて見てこそ楽しく、また発見があります。


すべてが手作りの実験的な場。
「美しい世界の手仕事プロジェクト」
心地いい波長を感じていただければと思います。


e0063212_9281788.jpg

by orientlibrary | 2008-07-16 09:34 | 美術/音楽/映画

ビビハニム、精緻なタイルの模型に感激!

●みどころの多いウズベキスタンにあって、首都のタシケントは私にはあまりピンとこない街。煌めくような青のタイルが美しいサマルカンドや古都ブハラに比べると、タイル的にもグッと引き寄せられるような感じがありません。

●けれども、タシケントにあるウズベキスタン歴史博物館にある「あるもの」は、タイルおたくの私を釘付けにします。それは、模型です。サマルカンドにある「ビビハニム・モスク」(1399-1406)を丸ごと、精密正確に再現しています。

e0063212_23442068.jpg
(ウズベキスタン歴史博物館内の模型。「ビビハニム・モスク」を丸ごと、精密正確に再現)

●ビビハニムは、ティムール朝を代表する巨大建築のひとつ。昔の写真を見ると形もないほどに崩壊していますが、近年見違えるほど立派に修復され、壁面やドーム屋根を埋め尽くす美しいタイルが見られます。

e0063212_23443284.jpg
(ウズベキスタン歴史博物館内の模型。「ビビハニム・モスク」を丸ごと、精密正確に再現)

●模型で驚くのは、タイルのデザインが完璧に表現されていることです。見ると一片はで作られているようでした。それに色を塗り組み合わせてタイル装飾の模様を再現しているのです。

●模型を見ると、タイルのデザインがどのようになされたかが、垣間みられます。そしてまた、このような完璧な模型があって初めて修復ができたのだと感じ入りました。

e0063212_23445659.jpg
(ウズベキスタン歴史博物館内の模型。「ビビハニム・モスク」を丸ごと、精密正確に再現)

●ビビハニムについては、イスラム美術の泰斗である杉村棟先生が「中央アジアにおけるティムール時代の建築遺構と装飾タイル」(『シルクロード学研究7』)で、詳細に記述されています。これによると、ビビハニムの特徴は次の通り。

・ 四方を中庭で囲み、イーワーンを配置したイランの伝統的な4イーワーン形式をとる
・ 新しい試みは、(1)ポータルが建物正面の特異な位置を占めている (2)すべてのイーワーンの背後にドームが架けられていること、イーワーンの間の全域に約400本の柱が建てられたこと、ミナレットが建物の主要部分に設けられた(美的効果) (3)建物の主要部分は外観が記念碑的な様相を呈している
・ 無釉の浮彫タイルは、主門と角柱に見られ浅浮彫の五角形と星形タイルが使用されている
・ ポータルの上には単彩の六角形と星形タイルが使われている
・ 礼拝ホールへ続く入り口上方には銘文帯が人目を引く
・ 釉下彩タイルはスパンドル上で花文を表し、また銘文帯として壁面に嵌め込まれている
・ 色彩は(ティムール朝の)他の遺構に共通した青の濃淡、白、黄土色の組み合わせである
モザイクタイルはスパンドルに使われている
・ 残存するかなりの部分は施釉レンガで覆われており、いわゆるハザルバフの技法により、方形クーフィー体でアリーなど聖なる名前が表されている
・ ポータルとその脇のミナレットもそれが3色で装飾されている

e0063212_23444250.jpg
(ウズベキスタン歴史博物館内の模型。「ビビハニム・モスク」を丸ごと、精密正確に再現)


●ホラズムやトルケスタン、タブリーズなど、見れば見るほど、知れば知るほど、14世紀初期から15世紀にかけての装飾タイルは、イキイキとして美しいと思います。ティムール朝でそれが爆発的に花開いたという感じです。

e0063212_23453621.jpg


●博物館には、サマルカンドをはじめブハラやヒワの古いタイルも展示しています。厚みや色が間近に見られてうれしいですが、タイルの本場の博物館であることを考えると数はそれほど多くありません。古いタイルがいかに貴重かということでしょう。

e0063212_2345581.jpg


●ウズベキスタンといっても、「どこにあるの?」と聞かれることが多かった以前に比べると、観光地、目的地としても存在感が強まってきた感のあるウズベク。ミリ単位の木片の模型を見て、あらためてこの国のタイルへの愛好や緻密な工芸の力を強く感じました。現代の職人さんたちの意欲と高い技術によって、これからもいい形で歴史的な建造物の修復が進んでいくといいなと思います。

e0063212_23451584.jpg

by orientlibrary | 2008-07-11 23:51 | ウズベキスタンのタイルと陶芸

ブルー&ホワイトの魅力、ポルトガルのアズレージョ

ある日のこと、ホラズムのタイルを惚れ惚れと眺めている私に、メールが到着しました。世界各地の街や建築を調査しているmikiさんからです。写真も添付されていました。青がきれいだ〜!!なになに、このタイルは!?ポルトガルの「アズレージョ」と呼ばれるタイルなのだそうです。

ポルトガルに調査に行くことになったという「Miki Korenagaさん」、「ポルトガルのタイルは“アズレージョ”といってカラフルなのですが、特に青いタイルがとても素敵で、教会などの壁面にも装飾的に使用されていたりします」と教えてくれました。(写真はすべてMiki Korenagaさんに掲載許可していただいたものです)

e0063212_20372144.jpg


◆ アズレージョって何!? ◆

ポルトガルのタイルは、タイル史の面からの調査研究事例はあるのでしょうか。日本では私は知らないのです。そんなわけで予備知識ゼロだったのですが、ネット等で見てみると、現代のポルトガルのアズレージョは商品として日本に輸入され、インテリア装飾などの提案がされているんですね。トルコをはじめ、ヨーロッパのタイル、メキシカンタイルなどは、商品としてしっかり流通しているなあと思います。

e0063212_20373592.jpg


また歴史の面では、ポルトガル公式観光ウエブサイトのなかの「ポルトガルのアズレージョ」(注:現在リンクできません)に、かなり詳しい説明がありました。(以下、同サイトより引用)

・・・ 「ポルトガル語のアズレージョは、アラビア語のAl-zuleiqueに由来しています。この言葉は、中世の時代にイスラム教徒が使用していた「なめらかで光沢のある小石」を意味しています」  (アラビア語由来!)

・・・ 「ポルトガルの歴代国王がアズレージョを使って床や壁を装飾することを好んだことから、15世紀終盤からはポルトガル国内でアズレージョが生産されるようになりました。そしてそれが何世紀にもわたってポルトガルの建築様式の重要な特徴となったわけですが、これは他の欧州諸国のいずれにも見られないポルトガル特有のスタイルになっていると言うことができます」  (15世紀=中央アジア、西アジアでタイル装飾が盛んな時代)

e0063212_20374944.jpg


・・・ 「18世紀になると、アズレージョは教会や修道院、宮殿、一般家屋、庭園、噴水、そして階段にまで「進出」しました。そして聖者の生活の様子を物語る幾何学模様や、ラ・フォンテーヌの寓話のような世俗的テーマや昔の物語の劇画のような役割で、アズレージョはポルトガルの建造物装飾の主要な特徴の1つになりました」   (18世紀=ヨーロッパの時代ですね。絵画中心なのもヨーロッパ的)

・・・ 「アズレージョは大量生産が可能で、耐久性に富み、加工が簡単なため、家々のファサードはさまざまな色やパターンのアズレージョで一面に覆われるようになりました。さらに時代が進むと、その店で何を商っているのかを宣伝するためのものまで登場しました。こうした例は、ポルトガルの町や村でごく普通に見られます」  (タイルを何百枚も使ったタイル絵が壁の装飾の定番に)

e0063212_2038186.jpg



◆ マジョリカタイル〜デルフトタイル ◆

15世紀までのあたりが、どうもまだすっきりしません。『イベリアのきらめき マジョリカ・タイル』(INAX)の中の「マジョリカ・タイルとはなにか」(山本正之さん)から、関連する文章を抜き出してみます(一部略している部分あります)。

・・・ 「イベリア半島では、8世紀になってイスラム教徒のムーア人が侵入し、15世紀末のスペイン王国独立まで約700年のあいだその支配下にありました。ムーア人は、モスクに代表されるイスラム建築をイベリア半島に持ち込みました。イスラム建築に欠かすことのできないタイルも同時に海を渡ったのです。スペインでは、イスラムのアラベスク模様、サラセン模様の入った白いタイルをアレスポと呼んでいますが、これが現在言われるマジョリカタイルの原型になります」

・・・ 「(スペイン、ポルトガルからなるイベリア半島は)ムーア人=イスラムの支配は長期に及びましたから、その影響は現在に強く残っています。マジョリカタイルもイスラムの影響の産物であり、その影響の下に発達していったのです」

・・・ 「(モザイクがあまりに手間がかかりすぎるため新技法が考えられたが)、古くから表面に直接絵を描くという手描き手法はありました。これをタイルに応用したのがスパニッシュ・マジョリカです。油絵などの影響もあるのでしょうが、紋章とか動物とか植物が盛んに描かれました。タイルでいうとデルフトの影響もあるだろうと思います。たぶんマジョリカタイルがマヨルカ島からジェノバへ渡りアルプスを越えてライン川を下りオランダへ入り、デルフト地方を通って再びピレネー山脈を越えてスペインに逆輸入したのだろうと考えられます」

e0063212_20381321.jpg



◆ 青と白の世界、染付との関係は?  ◆

「アズレージョ=デルフト由来説」に納得しきれなかった私、これなら納得。さらにいえば、青と白といえば「染付(青花磁器)」でしょう。染付とマジョルカ(さらにアズレージョ)との関連は不勉強でわかりませんが、この時代、中国の染付は圧倒的な憧れだったはず。オスマン朝シリアのタイルのブルー&ホワイトもきれいです。

今も昔も、世界的に人気のあるものには「共時性」があると思いますし、とくにポルトガルの人たちの感性には海や空を思わせる爽やかな青の世界がフィットしたのかな、などと想像をふくらませています。

e0063212_20382587.jpg


一面の青の世界、そして全体として素朴でのびのびとした健やかな感じの雰囲気がいいなあと思いました。それにしてもKorenagaさん、写真うまい!Korenagaさん、アズレージョに触れるきっかけをくれてどうもありがとう!どうぞ良き滞在&調査になりますように!
by orientlibrary | 2008-07-04 20:41 | タイルのデザインと技法