イスラムアート紀行

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トルクメニスタンにアハルテケあり!

トルクメニスタン(+カラカルパクスタン)の旅行で、最も感動したのはメインの目的であったホラズムのタイル。そして2番目は、名馬「アハルテケ」の美しさでした。(数々の名だたる遺跡じゃないのか!?という感じですが、、即物的なんでしょうか、私。。)

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(カードにもアハルテケ。「この国が好きだ!」というコピーとともに)

「アハルテケ」は、汗血馬(かんけつば)の子孫ではないかと言われる馬です。汗血馬といえば、『漢書』に「大宛(現在のウズベキスタン・フェルガナ地方)に天馬種あり」と書かれ、「一日に千里を走る」と言われた名馬中の名馬ですよね。

漢の時代の戦闘では、馬の善し悪しは騎馬軍団の能力を決定するもの。また権力の象徴としても、大きな意味があったようです。たしかに、馬に乗っている人って、上から見下ろす感じになり、力強く見えますよね。疾走すれば、さらに!

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中央アジアの馬は、当時の中国の皇帝や将軍たちの憧れ。とくに前漢の武帝はどうしてもこの汗血馬を手に入れようと、大宛に遠征軍を送ったほど。

血のような汗を流して走る」ことから汗血馬と呼ばれるようになったのですが、馬が皮膚の表面に出血するのは、現代では寄生虫によるものとも言われているようです。けれども、吹き出る汗と一体になって流れ落ちる血は、駆け抜ける馬体を赤く濡らし神秘的にも見せたのではないでしょうか。カッコイイですよね〜!

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アハルテケは、1935年に4152㎞(アシュハバードからモスクワまで。うち1000㎞は砂漠)を84日間で走破する記録を作ったそうです。走りますね〜!!乾燥気候に適応し、サラブレッドなど多くの品種を改良する際に利用されているとも聞きました。

見学したアハルテケの飼育場は、首都アシュハバードの郊外にありました。民族ドレスの女性たち(オーナーの娘さんたちのようです)に迎えられ、中へ。最初に目に入ったのは、なんと金色にも見えるアハルテケ!う・つ・く・し・い〜!!足が長く、たてがみが短め。これは汗血馬の特徴とそっくりなんだそうです。

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飼育場の中には、10頭くらいのアハルテケがいました。灰色の馬体のコンテスト優勝馬も。外の一角には子馬たちが。かわいい〜!♪!でも、こちらは柵越しにチラッとしか見られませんでした。宝物状態!?!そうこうしているうちにデモンストレーションが始まりました。

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どの馬もきれい〜!動くと美しさが格段に増します。見とれます。疾走する姿を見てみたい、、。育てるのにさぞや神経を使うのでは、と、オーナーに「アハルテケの飼育でいちばん大変なことはなんですか」と聞いたところ、しばし間をおいて、「金だね」。「・・・」。「金があれば簡単。金がないと大変」。もう少し文学的な答えを想像していましたが、、。たしかに現実はそうなのかも。

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たぶん、ものすごい費用がかかるのではないでしょうか。売れたら1億円とも聞きましたが、、。それにしても、経費は半端な額ではなさそうです。太っ腹そうなこのオーナーは何者?と思っていましたが、、お手洗いを借りるためご自宅に入れてもらうと、 、室内は絨毯の海。本場の、ト、トルクメン絨毯ですね!

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「す、すごいですね〜!」、「オレが作ったんだ」、「・・は!?」。聞けば、絨毯工場を経営しているそうです。なるほどお。納得。馬を飾る毛織物もきっちりときれいだったですよ〜。さすがです!

絨毯とアハルテケ。トルクメニスタンを代表する二つの美しいものに囲まれて(というか、生産して)いるオーナーは、トルクメニスタン一幸せな人ではないでしょうか。堅苦しい印象が強かったトルクメニスタンの旅行のなかで、(唯一?)おおらかな人柄に触れたのも、感動第2位に入った理由かもしれません。(今回は、旅行記風に書いてみました)

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(見とれるような毛並みのお手入れに)
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(人形のアハルテケも脚が長い)
by orientlibrary | 2008-05-27 22:05 | 中央アジア5カ国

トルクメン、ギュルからじゃがいもまで、きっちり整然!

ホラズムの12〜14世紀のタイル(現在のトルクメニスタン、クニャ・ウルゲンチにあります)見たさに、はるかトルクメニスタンにまで行った私。でもトルクメニスタンといえば有名なのは絨毯。トルクメン絨毯(古いもの)は、欧米に熱狂的なコレクターが多く、価格も数百万円もするものが少なくないようです。

●トルクメン絨毯、、、絨毯好きの集まりに時々参加させていただいていることもあり、その奥深い世界を垣間見せていただく機会もありましたが、じつは、どうも今ひとつピンとこない、というのが本音です。カッチリと整った端正な美は完璧で、反面、その奥にひそむ熱情のようなものも感じて、がさつな私には敷居が高い感じがするのです。

●熱狂的なトルクメン絨毯のファンは、専門職などに従事する知的な男性が多いと聞きます。日本でお会いするトルクメンコレクターも、まさにそんな感じ。トルクメン絨毯のなかにある、奥深いもの、情報ともいえるものを感受し読み取る力のある方々なんだと思います。感性と同時に、知性で読み取る絨毯、それがトルクメンという気がしています。

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(トルクメン絨毯・テケ/『oriental carpets』より引用)

●今回はニサやマルグシュ、メルブなどの遺跡見学が主だったため、絨毯に出会うことはほとんどありませんでした。唯一、アハル・テケ牧場のオーナーが絨毯工場のオーナーでもあったため、偶然現在の絨毯を少し見ることができました。また博物館で、あまり趣味の良くない絨毯をチラッと見ました。残念ですが、そのくらいです。

●けれども、街の中で、バザールで、トルクメン絨毯の「要素」を、たっぷりと見ました。それは、、、「きっちり感覚」です。

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●あれ〜、この木の植え方、、、これって「ギュル」(トルクメン絨毯の核となる紋章のような文様、上の絨緞参照)では〜!?木のまわりに石を並べる必然性は??間隔もきっちりだ〜!こんな植林(?)があちこちにありました。立体絨緞!?  *追記1*(「真っ直ぐを期待されながら斜めに成長する木々も、たいしたもの」とYさんよりメール。たしかに(笑)。どこ原産の木かな〜♪) *追記2*(いやいや、、この木の様子、よく見たら、ギュルの中の模様を模したように斜めになってませんか!?、、恐るべしトルクメンの木!!)


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バザールの陳列、、、活気ある売り買いがバザールの魅力。陳列なども時間がたつにつれてくずれてくるものですが、、、ナッツに、干しアンズ、、なんですか、このきっちりは〜!?(撮影時間は夕方)


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干しぶどうって、積むのがむつかしいと思うんですけど、、角度がシャープ!粒単位!


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果物が整然と並び、きっちりと円錐型に積み上げられています。静物画か〜??左上のバナナとパインの落ち着きもすごい、、(こちらは閉店間際、午後7時頃のバザール。ラストでこの状態、、)


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じゃがいもって、ゴロゴロが似合う気がしますが、、これもきっちり整然と整列状態、、


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日用品売り場に行くと、、、ここでもきっちりサイズ、色、角度まで揃ってます。たぶん日本のようなアイテム別ではなく、色やサイズで決めていると思う。機能性、合理性よりもきっちり=見かけ、視覚が優先されるような気がします。

恐るべしトルクメン、、装飾タイルでもクラクラするような装飾センスを発揮したトルクメン。その遺伝子に組み込まれた「きっちり感覚」を、今回の旅行で思い知ったのでした。

●さらに、、<アシュハバードの大理石ビル群の謎>に新説登場!!トルクメン絨毯をこよなく愛するMさんやSさんによると、発光する大理石のビルは「宇宙と交信するため」なのだそうです。(私がビルを生き物のような発光体と感じたのは、意外と当たっていたりして、、!?)。独裁政権云々は表の顔にすぎない!?その奥には、凡人には理解不可能なトルクメンの宇宙的感性が脈々と息づいているのかもしれません。

●やっぱり、、トルクメニスタンのキーワードは「不思議」ですね。もう、それしか思い浮かびません、、ふう〜。。


** ブログ内関連記事(トルクメン系王朝のタイル) **
  15世紀タイル装飾の傑作 タブリーズの「ブルーモスク」
  ”蒼の宝石箱”ブルーモスク&黒羊さんのヒミツ?!
by orientlibrary | 2008-05-20 00:00 | 中央アジア5カ国

ノルブリンカ・インスティチュート(ダラムサラ)

インド・ヒマーチャルプラディーシュ州・ダラムサラにある、ノルブリンカ・インスティチュート

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チベット独自の芸能・工芸の保存と継承を主眼とした施設です。広い敷地に、寺院、職業訓練をおこなう工房、ゲストハウス、製作した工芸品を販売するショップなどが点在し、緑と花があふれるサンクチュアリのようなところでした。ゲストハウスの窓から庭を見ると、緑のなかに白馬の親子がいました。夢のような光景でした。

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けれども、現実は過酷です。平和的に行進しただけで投獄されて拷問され、家族と離ればなれになり命からがらダラムサラに逃れてきたというスタッフの男性は、弾圧の様子や家族への思いを話してくれました。チベット仏教の僧侶のお話も聞きました。(以上は、2005年春滞在時。現在の様子はネット等で調べてみましたが、よくわかりませんでした)

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中国・四川大地震の震源地、四川州アバ・チベット族チャン族自治州。救援、そして今後の復興に政治的な事情、意図などが紛れ込まないことを願うばかりです。
by orientlibrary | 2008-05-16 23:34 | 社会/文化/人

不思議都市アシュハバードにて

ホラズムからトルクメニスタンの首都アシュハバードへ。着陸体制に入った飛行機の窓から外を見た私の目に入ったのは、SF映画のワンシーンのような不思議な光景でした。

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(これはモスクのライトアップ。国民の9割がイスラム教スンニ派と言われています。あまり宗教的雰囲気は感じませんでしたが、、)

暗闇に浮かび上がる数十もの四角い発光体が、生き物のように空に向かって伸びているのです。発光体はクラゲかなにかのように、透明で、内部から光を発していました。ふっと現実にかえり、そこはアシュハバードの街で、発光体はビルらしいと理解するまで、実際は何秒かのことだったのかもしれませんが、あの光景の不思議さ(美しくもあり不気味でもある)は忘れることがないと思います。

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機内なので撮影しておらず写真がありません。前回の夜景写真や上の写真からイメージが少し伝わるといいのですが、、。大理石というものが内部から光るように見えるとは知りませんでした。

日中の光景もこれはこれで、不思議でした。政治や行政に関する建物から大学、マンション(高級なもの)まで大理石造なのです。ヨーロッパの歴史的な建造物で目にすることが多い大理石、都心のビルの外観としてはどうも違和感があります。作りもちょっと粗いように感じました。

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ガイドさんによると、「大理石は産出するけれど加工技術がないのでイタリアから輸入している」とのこと(ガイドさんは経済学部を卒業し英語も流暢で信頼できるタイプの人)。「え〜!?すごい金額では!?ホント??」と思いますが、そういう不思議があってもおかしくないような気もします。

朝、ホテルの近くを少しだけ歩いてみましたが、いたるところに警官が立っていて鋭い目で周囲を見回しています。撮影禁止の建物が多いと聞いており注意していましたが、ホテルの前の建物は政治的な建物にも思えなかったので写真を撮ってみました。すると警官が近づいてきて止められました。没収とかではなかったのですが、ちょっと緊張しました。あとでガイドさんに聞いてみると大学とのこと。撮ってもいい建物だということでした。

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でも、街の様子や建物の撮影禁止、今の時代、意味があるのでしょうか。Google Earthがあるのにな、と思ってしまいました。トルクメニスタンはGoogle Earthを拒否しているのかとも思いましたが、遺跡の説明でガイドさんがGoogle Earthの写真を見せてくれて、「うちの庭も見えるよ」と言っていました。帰ってから私もチェックしてみましたが、アシュハバードの街、しっかり見えましたよ。

整然とビルが建ち並び、緑と花があふれる清潔な首都アシュハバード。そこここに前大統領ニヤゾフの像が立ち、なかには24時間回転している金色のニヤゾフ像もあります。像、ビル、マンション、公園、花など撮れるものは写真を撮りましたが、ブログに載せるのは躊躇します。問題があるわけではないし公園などはきれいなのですが、やはり自分の好きな光景ではないものは、なるべく載せたくないと思ってしまいます。

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バザールのぶらぶら歩きはどこでも楽しいものですが、アシュハバードのバザールは賑わってはいるものの、どこか沈んだ気分を感じました。笑顔が少ないからかな。外国人への警戒感からなのかもしれません。(絶品のドライフルーツや野菜、きっちりした陳列など、バザールの様子は、またご紹介したいと思います)

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ホラズムシャー朝のタイル(やはり素晴らしかった!)から書こうか、遺跡からにしようか、と、本や資料を読んでいたのですが、少し時間がかかりそうなので、街の印象から書き始めることにしました。上はあくまで私の主観であり、快適で美しいと感じる人もいるかもしれませんし、様々な事情があるのかもしれません。そのあたりご理解のほど、お願いいたします。

これから、タイル、アハル・テケ(美しい駿馬)、メルブ、マルグッシュ、食事、トルクメンの造形感覚などについて書いていきたいと思います。
by orientlibrary | 2008-05-11 00:56 | 中央アジア5カ国

ホラズムからトルクメニスタンへ、土の旅

中央アジア好きには憧れのアムダリア川、その下流域・ホラズム(ウズベキスタンのホラズム州、カラカルパキスタン、トルクメニスタンにまたがる)の都城跡やイスラム建築群から、イラン国境にある古代オアシス都市アシュハバードへ、中央アジア最大の遺跡メルブへ、さらに世界最古とも言われるマルグッシュ遺跡へ。

旅行の日々、その印象は、土土土、風風風、日日日。「中央アジアの風を感じに行ってきます」と書きましたが、実際は風というよりは砂嵐が吹きつけ、行けども行けども土族もびっくりの土づくし。強烈な日差しに夜の稲妻。「中央アジアの北朝鮮」という比喩を実感した白い摩天楼の不思議都市。でも、これがリアルな「中央アジアの風」なのかもしれません。

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(クズルクム沙漠に点在する古代ホラズム王国の遺跡「カラ(都城跡)」。大小規模取り混ぜて50ほどもあると言われているそうです。当時の繁栄、すごいですね〜!)

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(時間のかかるウズベキスタンからの陸路の国境越えや、手配車の遅れ〜ガソリンスタンドが開くのを待っていたとか、、〜などが重なって、ホラズムシャー朝の都だったクニャ・ウルゲンチに着いたのは、すでに夕暮れ。憧れのタイルに浸る時間はなく写真で押さえるだけで精一杯、、。写真を見ながら、これから少しずつ浸りたいです、、)

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(紀元前7000年頃から人が住みついたと言われるマルグッシュ。古代バビロニアやアッシリアに引けを取らない大規模な城砦やシュメール文明の遺物も出土。今後調査が進めば、その豊穣さがますます明らかになっていきそうです。瓶や壷、陶片が多く、窯のあとには自然釉の緑がはっきり残っていました(感涙)。素晴らしい〜!)

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(オリエント風の古代都市であったアシュハバードは、現在のトルクメニスタンの首都。なんと街の建物の大半が大理石でできていて、暗闇の中でまるで発光体のように白く浮かび上がります。天然資源で潤う経済力、国力の誇示なのでしょうが、街全体に温かみがなく無機的で息苦しい重苦しさを感じました。私の嫌いなタイプの街です)

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(トルクメニスタンの町々、たしかにあちこちに花壇がきっちりと作られ、緑の木々が植えられ、噴水が水しぶきをあげていました。色とりどりの花が満開で、本来は幸せな気分になるはずなのですが、どこか寒々とするものがあります。「人気(ひとけ)」がないのです。人々の表情も硬く、笑顔もあまりないように感じました。ウズベキスタンに戻ったとき、老若男女、人々のくったくのない笑顔に心からホッとしました)

9000年にも及ぶ時空が、歴史が、土と日差しの中にありました。まだぼんやりと不思議の中にいます。これから資料を読みながらスタディをしていきたいと思います。
by orientlibrary | 2008-05-07 22:57 | 中央アジア5カ国