イスラムアート紀行

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古都ブハラ、ぶらぶら歩きの昼下がり

ウズベキスタンのオアシス都市・ブハラ。中世の面影を残す旧市街地は世界遺産にもなっています。ウズベク好きの中には、サマルカンドよりもむしろブハラに、求めていた何かを見いだす人が多いのではないでしょうか。

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乾燥地帯にありながら水資源に恵まれたブハラは、紀元前5世紀頃にはすでに城壁を持つ都市が成立していたそうです。古いですね!紀元後は、シルクロードを駆け抜けた商人として名高いソグド人の都市国家が建設され、ブハラ商人たちは東西交易の仲介者として活躍したといいます。

8世紀後半に、土着のイラン系貴族がアッバーズ朝から独立して興したのがサーマーン朝。街は拡大して大都市となり、ペルシア語による文化活動の中心地になりました。当ブログにも何回か登場した「サーマーン廟」(焼成レンガだけで作られた立方体の廟。光が織りなす陰影の繊細な美)が作られたのもこの時代です。

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13世紀前半にモンゴルにより破壊されて街は荒廃。ティムール朝の都となったサマルカンドの繁栄の後じんを拝していましたが、16世紀後半になってウズベク人のシャーバーン朝がブハラを都に。その後の王朝もブハラを首都として「ブハラ・ハーン国」として繁栄しました。

ブハラとは、サンスクリット語で「僧院」という意味だそうです。その名の通り、往事は多くのムスリムが巡礼や学習に訪れ、「聖なるブハラ」と呼ばれるイスラム教学の中心地でした。360のモスク、80のマドラサ、38のキャラバンサライ、45のバザールがあったそうです。どんな様子だったのか、当時の物語の映画でもできないかなあ。映像で見てみたいですね!

さて現在、旧市街を歩くときに起点となるのは、「ラビ・ハウズ」という正方形の池です。見所はこの周囲に集中! さあ、歩いてみましょう〜。

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ハウズの周囲に、「ナディール・ディバンベギ・マドラサ」(1622年、鳥のタイルが有名)、「ウルグベク・マドラサ」(1418年、中央アジア最古の神学校)、「アブドウールアジス・ハーン・マドラサ」(17世紀)。もっと行きましょう。

なんだか土に埋もれている感じの不思議な建物は、「マゴキアッタリ・モスク」(10世紀頃の創建。かな〜り好き!!)。「カリヤン・ミナレット」(1127年、チンギス・ハーンも破壊しなかったブハラのシンボル。レンガ造で巨大です)、「カリヤン・モスク」(1514年)、「ミル・アラブ・マドラサ」(1536年)・・・めくるめくイスラム建築の美意識を、そしてオアシス都市の繁栄を体現する建築物を見て歩くことができます。

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「タキ」(バザール)で、ブハラグッズをチェックするのもいいですね。あ、タキに行く途中には、当ブログでおなじみの陶芸家アリシェルさんが壁面装飾を手がけた「ホテル・アジア」もあります。明るいブルーの陶板に、気持ちも爽やかになりそうです。

*写真は、上から順に、「ブハラの昼下がり(左手のレンガもいいですね〜!)」、「ハウズにあるチャイハネ(チャイ飲んでまったり、がいいです)」、「ホテル・アジアの壁面」、「レーニン??の絨緞?(ブハラは絨緞も有名!でもこれは珍しいパターンだと思います)」
by orientlibrary | 2007-01-30 00:48 | ウズベキスタンのタイルと陶芸

ノリコ学級、子どもたちがいつでも集まれる場所

●リシタンは土壁の家々、庭の花々、杏の木が印象的な、のどかな町でした。通訳のSちゃん(リシタン出身)と歩いていると、「こんにちは」と子どもたちが日本語であいさつしてくれます。リシタンは本当に日本や日本語に関わりの深い町だなあと実感しました。

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(リシタンの民家のリビングルーム。赤が基調)

●Sちゃんが通った「NORIKO学級」にもおじゃましました。こじんまりとして簡素だけれど、居心地の良い温かな空間であることは、すぐに伝わりました。そして、海外での日本語の授業というものを初めて見学しました。

e0063212_20564335.gif●そのとき赴任していらっしゃったW先生は日本語教育の専門家。私もすっかり授業に聞き入ってしまいました。生徒たちも熱心でハキハキしていて、何より表情が明るい。語学もこんなふうに楽しんで勉強できるんだということに、英語ひとつも大変な私は、ちょっとショックを受けました。

●前回ご紹介したアスロル君は、NORIKO学級の一期生。先日の歓迎会(前回記事)の翌日は、日本語教育関連書籍の出版社でスピーチを披露したそうですが、NORIKO学級を支援するリシタン・ジャパン・センター(以下RJC)のTさんは、「一度も来日せず、リシタンで6年間学んだだけの青年の日本語の素晴らしさに関心が集中しました」と、同会の通信に記しています。

e0063212_20555843.gif●アスロル君が優勝した弁論大会、エントリーしたのは中央アジアを代表する有名大学で日本語を学んでいる学生ばかり。その中でナンバー1になるというのは快挙といっていいでしょう。そしてアスロル君だけでなく、日本人かと思うほどのSちゃんをはじめ、NORIKO学級で学んだ(学んでいる)子どもたちは、私が知っているだけでも本当にレベルが高い。なぜ?その秘訣は?

●RJCのTさんはこう書きます。・・・「実は、 “これ!”と一つに絞りきって答えられないところに、その秘訣はあるのかもしれません。大崎さんご夫妻を皮切りに、ボランテイア講師、フェルガナ大学日本語講師、旅行やビジネスでの訪問者、日本から支え続けたサポーターほか、多くの関係者のご支援の賜物ですから」・・・

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(フェルガナ地方の伝統的なスザニ)

NORIKO学級は99年に大崎重勝さんご夫妻が、その私財を投じて創設されました。設立の経緯や取り組みについては、RJCのホームページをご覧頂くのがよいと思います。小さな種が育っていく、根を生やしていく。背中を押される思いがします。大崎重勝氏は05年にご逝去されました。遺言は次の言葉だったそうです。
・・・
NORIKO学級は、お金のない子供達が本を読み、勉強ができ、心の安らぐ場所である。
決して子供達からお金を集めてはいけない。
NORIKO学級は、大きくしなくてもいい。
綺麗に立派にしなくてもいい。
有名にしなくてもいい。
子供達がいつでも集まれる楽しい場所にしておいてほしい
・・・

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(リシタンの聖者廟。リシタンの陶板を使用している)

●・・・「子供たちは、羊・牛・にわとりなど、家畜の世話やキルギスの山から流れてくる小川で水汲みなどの手伝いを終えると、走って教室にやって来ます。
日本の教科書や絵本を見て喜んでいる子供たちの姿、皆が輪になって学び合っている姿、今や教室は、憩いの場、交流の場の会館にもなっているのです」・・・(リシタン側の代表であるガニシェル氏)

●驚くような日本語レベルの高さは、子どもたちの素直な好奇心、日本に行きたいという目的意識の強さのゆえでしょう。これまでにボランティアで教えた日本人は50数名。「関わると抜けられなくなる何かがある」というのは共通する感覚かもしれません。

●アスロル君の優勝により、NORIKO学級の名前は中央アジアで知られるようになりました。でも、これからも「無理せず等身大で」(RJC)。「等身大」という創設者の初心は、今も具体的で強い指針であり続けているように思えます。
by orientlibrary | 2007-01-25 21:12 | ウズベキスタンのタイルと陶芸

白いカラスになりたい・・・アスロル君(リシタン)からのメッセージ

●暦では大寒、一年で寒さがもっともきびしい時期。今年は暖冬とはいえ、一枚余計に着たくなりますよね。そんななか、心がほんのり温かくなる会がありました。リシタン・ジャパン・センターによる「アスロル君歓迎会」です。
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●私が昨年おじゃましたウズベキスタン・フェルガナの町リシタンには有名なものがふたつあります。ひとつは中世からの伝統を持つ素晴らしい青の陶芸、そしてもうひとつは日本語教育です。リシタンは知る人ぞ知る、日本語の町なのです。


e0063212_20473512.gif●なぜフェルガナの小さな町で日本語が?と思われる方も多いことでしょう。そこには、ある日本人ご夫妻のフェルガナの子どもたちへの思いがありました。そしてその思いに共感した多くの人びとの行動がありました。

「リシタン・NORIKO学級」、その小さな私塾の第一期生として学んだムミノフ・アスロール君は現在20歳。フェルガナ大学の3年生です。昨年秋におこなわれた「中央アジア日本語弁論大会」で見事優勝。優勝副賞のチケットを使い、念願の来日を果たしました。彼が会いたかった人とは、来日の目的は、そもそもNORIKO学級って?・・・


e0063212_2046268.gif●それを書く前に、順序は逆かもしれませんが、アスロル君が優勝したスピーチをご紹介したいのです。

●彼は歓迎会で弁論会でのスピーチを再現してくれました。落ち着いた正確な日本語に加え、そこに込められた祖国やコミュニティへの思い。会場はシンとして聞き入りました。

●アスロル君はウズベキスタンのことを述べているのですが、正直で簡潔な言葉のなかに、普遍的なものがあるのでは、と思いました。日本に「白いカラス」はいるのでしょうか。


e0063212_2115217.gifウズベキスタン・日本 人材開発センターのサイトに載っている原稿、リンクでご紹介した方がブログ誌面はスッキリするとは思うのですが、できれば多くの方に読んで頂きたく、全文をここに転載させて頂きたいと思います。

●出典は、同センター・ホームページの中の「第10回中央アジア日本語弁論大会 原稿集」です。NORIKO学級、リシタン・ジャパン・センターなどについては次回に!

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e0063212_2045554.gif 「白いカラス」 / リシタン・NORIKO学級 ムミノフ・アスロール

 人間は、ひとりひとり、考え方が違います。考え方は、国や地域によっても、いろいろあります。私は、 ウズベク人の考え方について、お話します。
ウズベクには「マハラ」という、日本の町内会のような、組織があります。「マハラ」が親代わりになっ たり、結婚式、お葬式、など、めでたいことや、困ったことなどを、お互いに助けあいます。ひとつのマハラは、三キロ四方ぐらいの広さで、約2,000人ぐらいの人が、住んでいます。
マハラにもルールがありますが、厳しいものではありません。どこかに、お葬式や、「ハシャール」という、町の共同作業があるとき、手伝いに出なかったことを、恥ずかしいと思って、マハラの仕事があるときは、どの家でも必ず、誰かが手伝いに行きます。 私は、マハラはウズベクの、大事な宝物だと思います。
つぎに、ウズベク人の悪いところをお話します。 まず、時間を守らないことです。仕事中にクロスワード・パズルをしたり、仕事と関係のないことを、何時間も話していることもあります。
日本では、会社の仕事を、家族より大事にして、会社のために、残業までして、がんばるそうです。どうして、ウズベクでは、そうしないのでしょうか。
大学では、学生は、ノートを丸めて持っています。それがカッコいいとされているのです。勉強しているふりをしていますが、実際はあまり勉強していません。しっかり勉強している学生は、少ないと思います。私のクラスの半分ぐらいは、そんな学生です。
もうひとつ、ウズベクでわからないことがあります。それは、国内空港の出発待合室のことです。イス のそばに、灰皿があります。たくさんの人が、タバコを吸っています。それでも、壁には「NO SMOKING」 の、看板があるのです。
そのことを、税関の人に、「禁煙なのにタバコをすっています。また、灰皿があるのも、おかしいですよ」 と、言いました。その人は、「私の仕事は荷物の検査です」と、逃げてしまいました。また、「責任者の人と話したい」と、言っても無視されました。
待合室には、タバコを吸わない人や、子供や、女性もたくさんいますから、禁煙は守るべきだと思います。
いろいろと、ウズベクの悪いところをいいました。皆さん、私の言いたいのは、こんなことを、ウズベクの人々は、どうして問題にしないのか、と言うことです。ウズベクでは、こんなことを言う人を、『白い カラス』と呼びます。
カラスは、ふつうは黒いですが、みんなが傍観している時、一人で問題にするような人を、『白いカラス』 と呼びます。社会を変えるきっかけになる、だいじな存在だと思います。
わたしは、そんな『白いカラス』がたくさん増えることが、ウズベクをよくするのだと思います。
それでは、『白いカラス』を増やすには、どうしたらいいのでしょうか。
とりあえず、幼稚園、小学校、中学校、高校でエチケットの教科書を作って指導したり、テレビで知ら せたりするのが、いいと思います。また、親たちへの協力も必要だと思います。
どんどん『白いカラス』が増えれば、いいと思います。まず、私が『白いカラス』になるつもりです。
私の友達は、「お前は、口先だけでなく、何かやるんだな?」と、言いました。
私は、今、お話した空港待合室の、喫煙問題に、チャレンジするつもりです。だいたいの計画は考えて おります。
もし、来年の今頃、空港の待合室に灰皿がなかったら、「彼は、『白いカラス』になったな」と、思って くだされば、嬉しいです。
どうもありがとうございました。

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by orientlibrary | 2007-01-22 21:23 | ウズベキスタンのタイルと陶芸

キャンドバン村 写真が少ないわけは!?

●イラン北西部・東アゼルバイジャン州の州都タブリーズ近郊に「キャンドバン」という村があります。標高2200メートルの山岳地に奇岩が林立。「イランのカッパドキア」とも言われ、岩穴の住居には今も人びとが住んでいます。

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●昨冬訪れたのですが、なぜか写真が少ないのです。大変な寒さで岩を登る道が凍りついていて、滑って転げ落ちたら大変!と、写真どころではなかったんだと思います。天気が良かったら、「童話のような村」「かわいい家々」等々、甘いことを書いていたかもしれませんが、そうは書けないというのが正直なところです。

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●でも、岩をくり抜いて作られた家は、意外にも暖かく住み心地がよさそうでした。壁をうまく使っての飾り物もアクセントになっています。住んでいる人たちは「アゼリー」(アゼルバイジャン語)を話し、顔立ちもイランの南の人たちとは少し違う感じがしました。

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●このあたり知識がないので、「Wikipedia」で見てみると、、、
・ 東アーザルバーイジャーン州はイランでも非常に古い歴史を持つ地域で、エラムの当初の首都であり、ハカーマニシュ朝中核の地でもある
・ 東アーザルバーイジャーン州の文化的に際だった特徴は言語と民俗にあり、人びとはテュルク諸語に属するアザリー(アゼルバイジャン語)を話す
・ この地域が輩出した学者、神秘主義者、詩人は数多く(中略)現在のイランの最高指導者であるアリー・ハーメネイーもこの地の家系出身である

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●学者や詩人を多く輩出する土地、、なんとなくわかる気がします。一方で工業、工芸も盛んな地域だそうです。
・ 東アーザルバーイジャーン州は産業の中心地である。州内に5000以上の製造業事業所があり、このうち少なくとも800が工業で、これは全国総数の6%を占める
・ タブリーズは手工業でも卓越した地位にあり、東アーザルバーイジャーン州の輸出の大きな部分を手工業品が占める
タブリーズの絨毯は力強いデザインと鮮やかな色合いで世界市場に名をとどろかせている。ペルシャ絨毯の名声は、東アーザルバーイジャーンのデザイナーの創造力と織工の腕に負っているといっても決して過言ではない
・ 現在、絨毯織機は州内に66,000、20万人を雇用している。年間の絨毯生産は約792,000m、イラン全体の絨毯生産の35%、輸出の70%の量にあたる

●古都タブリーズはタイル好きにも絨毯好きにも魅力的な街。いつか心ゆくまでタイルや工芸品を見たいなあ!

*写真、上から3点はキャンドバン村。一番下はアゼルバイジャン州のレストランにて。男性の顔立ちが濃い感じがします。
by orientlibrary | 2007-01-21 01:39 | 中東/西アジア

きらめくタイルが映す天空への憧れ 聖なる青

イスラム圏の装飾タイル、とくに西アジアから中央アジアのタイルは、輝くような青い色が特徴です。イスファハーン、イスタンブール、サマルカンドからパキスタンのムルターンまで、建築物の壁面を彩る青が人びとを魅了します。

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(orientlibrary)

とりわけティムール期のタイルは青の割合が多く、しかも最高度の発色を実現した、まさにきらめきの青。「聖なる青」ともいわれ、ティムールが首都としたサマルカンドは数々の建造物を覆うタイルの色から「青の都」として有名です。

イスラム美術の泰斗・杉村棟さんは、「ティムールとその時代の美意識をうかがわせるのは、当時のタイルの基調をなす青色で、それもコバルトとトルクワーズの二種の組み合わせが絶妙に調和のとれたものである」と評価します。

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(シャーヒズインダ墓廟のモザイクタイル/orientlibrary)

焼き物の色は、生産地の土質、成分、焼成温度の違いなどに左右されます。これまでに何度か記しているように、西アジアあたりは高い温度で焼くことのできる粘土や、高火度焼成に必要な油の多い木材に恵まれませんでした。釉薬も低い温度で焼ける種類を利用することになり、青、黄、緑が多くなったようです。

加えて、釉薬の原料として、濃い青に必要なコバルト酸化物が豊富に入手できたことも、青の多用につながりました。また淡青色に使われる銅系の釉薬に鉄分が加わると呈色は青緑色になりますが、これも原料が豊富だった、、というように、青のタイルは土や釉薬などに限定された側面があることは確かなようです。

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(ドームの青。遠くからも目を引く/orientlibrary)

けれども、中央アジアや西アジアを旅行すると、やはり青というのは、何か特別な色であることを感じます。そして、何よりも青が似合う土地だと思うのです。紺碧の空の下に広がる土色の世界、土の家々。「アナトリアやイラン高原で好まれた古来の伝統、イスラーム的世界観、そして色彩感に乏しい乾燥地帯の自然環境や景観が強かな感性を育み、それが独特の美意識を形成した」(杉村棟さん)。

さらに杉村さんは、民間信仰で青が邪視など悪霊を排除する力を持っていると考えられていたことを、青の多用の最大の背景としてあげています。

またタイル装飾に詳しい深見奈緒子さんの次の一文には、共感し触発されました。「イスラーム建築の中でタイルに求められたものは何だったのだろうか。彼らは時代を超えて青の彩色を好んだ」「無論、比較的低温で青が発色するという製作上の理由もあろうが、青色にはおそらく空の色の魅力、ひいては天国への憧憬が潜んでいたと考えたい」「多くの宗教建築においてムハンマドの色とされる緑よりはるかに青が多いのはこのためではないか」。

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(サマルカンド/シャーヒズインダ墓廟群/orientlibrary)

土を焼成したレンガを被膜材とした乾燥地域の建造物。凹凸の陰影で繊細な美を表現した時代から、より美しい被膜をめざして色の時代へ。壁面を彩るレンガに釉薬をかけたとき、選ばれたのは天空の色である青。さらにレンガからより優美なタイルへの展開。輝く青のタイルには、当時の人びとの美意識や思いが凝縮しているように思えます。
by orientlibrary | 2007-01-17 01:55 | ウズベキスタンのタイルと陶芸

イスタンブールに飛びたくなる! 熱くてクールな音楽シーン

e0063212_1265717.gif●トルコの音楽ドキュメンタリー映画『クロッシング・ザ・ブリッジ』は、こんな言葉で始まります。

●・・・「儒教ではこう言われている。---“音楽は訪れた土地の文化の奥深さを語る”---。音楽というのは、それほどに雄弁なんだ」「イスタンブールは72の民族が行き交う、大きな橋みたいな街だ。対極のものが隣り合っている。伝統と革新、富と貧困。すべてが混在している」・・・

●アップで迫るボスポラス大橋、海峡を渡る船に乗り、西洋的なベイオール地区、そして伝統的なアジア側のエリアへ。クラブシーン、ヒップホップ、ロック、伝統音楽、民謡、大衆音楽まで、息つく間もない音の波。イスタンブールの音楽がこれほど多彩だったとは。そしてカッコいいとは。。


●タイル好きにとってのトルコ、、セルジューク朝の古雅の趣あふれる青のタイル、オスマン朝イズニークの赤、ブルー&ホワイトの陶器など、古いものばかりに目がいきます。でも、トルコ、とくにイスタンブールは、クラブカルチャーの最先端の地なんだそうです。一方でサズなど伝統的な音楽も、深く根づき、息づいています。

●音楽映像詩的な映画が大好きな私(たとえば『ラッチョ・ドローム』!!)、正直言ってこの映画、どうかなあ、と半信半疑でした。というのも、「トルコ版『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』」という謳い文句だったので。『ブエナ〜』、すごくヒットしましたよね。でも私はかなり退屈でした。あのヒット、タイトルの魔力もあったのでは?

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●ご安心ください!?『クロッシング〜』、もっとクールでカッコよく、熱くて、土着で、ボーダーレスで、しかも音楽シーンを通して時代や社会に強くメッセージしています。

●登場するミュージシャンは多彩。スーフィー音楽とDJを融合し千年以上の伝統を持つ縦笛「ネイ」をふくメルジャン・デデは昨年「ラマダンの夜」コンサートで来日。哀感あふれるクルド民謡の歌姫アイヌール、以前は禁止されていたクルド語で歌うことの困難を超えてきました。トルコ語ロックの先駆者エルキン・コライは60代の今もロックしてます。

●早口言葉かと思うトルコ語ラップ路上には社会的なメッセージを骨太に歌うバンドやブレイクダンサーたちがいます。そのレベルの高さ。単に何でも反対、社会が悪いというのではなく、自分の考えをしっかり持っている印象がありました。日本の音楽は私的内面的なものが多いので、とても新鮮に映ります。

アラブ風のサズがイケてるトルコの大スターオルハン・ゲンジェバイ。国民的歌手セゼン・アクスはラストに登場して存在感を見せました。等々、まだまだ多くのミュージシャンが出演し、音楽の種類も多様なら、年代も若者から重鎮まで幅広い
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●そのなかで私がいちばん好きだったのは、トラキア出身のジプシー(ロマ)でクラリネット演奏家のセリム・セスレルです。ロマの音楽というのは、技術は言うまでもないことで、もうそんなことはどうでもよくて、旋律やリズムが、ふだん意識しない心の奥の方に響いてきます。日本人の私にも響く、この音の魂みたいなもの、何か聴覚や体感の普遍的根源的なものかもしれない。

●、、でも、映画や音楽を書くことってむつかしいですね。映画は今回は試写で、3月から劇場公開されます。万人向けではないけれど、イスタンブールや民族系の音楽の好きな方にはリコメンドしたい映画でした。

*写真は、上から「映画チラシより引用」、「多彩釉モスクランプ/イズニーク/1570年/mosque of the grand vizier so-kollu mehmet pasa in istanbul」、「多彩釉皿/イズニーク/1585年/中心部=カリグラフィーの雲の中に鳥が見えます。鳥は頭を尾の方に入れ春の花を運んでいます。まわりには赤や緑の波、岩、雲などが配されています」(陶器2点は『turkish tiles and ceramics』より引用)
by orientlibrary | 2007-01-13 12:24 | 中東/西アジア

コンビニもショッピンンセンターも、、変わるインドの買物光景

●人口11億人というインドは、1990年代に規制緩和や外資の積極導入などを柱とした改革を進めました。「社会や文化を縛るカースト制度を残しつつも、中国に次ぐ巨大市場が産声を上げようとしている」(『日経MJ』/1月5日)。ムガルテイスト大好きの当ブログも、気になります。インドの人々の暮らしや気持ち、小売業の変化から見てみたいと思います。(以下、出典は同紙。言葉使いなどを一部書き換え。1ルピーは約2.8円)

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●特集のなかで、インドの大財閥タタ・グループの小売り部門インフィニティリテールのCEOは、インド人の消費についてこう語っています。
・ 日本メーカーがシェアを伸ばすにはインド市場の特性をよく理解する必要があります
・ 例えば、インドでは白っぽいテレビはあまり売れません。窓を開けたときほこりがついて汚れが目立つからです
・ こうしたインドならではの事情を理解しているのは韓国メーカーです
・確かに日本製品は高性能ですが、技術革新が進む家電の分野ではソニーの製品を10年使うより“ソニー風”の韓国製品を5年で買い替えた方が得だと考えるのもインド人の特徴なのです
・ 乗用車でも同じこどが言えます。誰もがホンダの車やソニーのテレビが欲しいけれど、それが買えるのはほんの一握り。急激に拡大している中間層を取り込まなければ、インドでの成功は難しいでしょう

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●この発言に呼応するかのように、韓国の家電企業の社長は語ります。
・ 確かにインドの生活環境は異国の人間にとっては住みにくいものです。日本企業の現地駐在の役員が家族を連れてこないのもそのためでしょう
・しかし韓国人はほとんどが家族と一緒に来ます。これは単に仕事の励みになるというだけではなく、必ずこの地で成功してやるという我々の決意表明でもあるのです
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●アメリカのウオルマートストアーズが進出を決めるなど海外大手も注目するインド。個人消費の伸びは、自動車や家電製品の販売データに顕著に表れます。
・ 06年4〜12月の乗用車の販売台数は前年比21%増のペース
カラーテレビの販売台数は06年度に1000万台を突破する見通し
携帯電話累積加入件数は昨年5月に1億件を超え現在も月間500万件のペースで増加
***ん!?インドの3C(car,colortv,cellphone)ですね!
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●消費や流通が急速に変化・変化した要因を同紙はこう分析しています。
・ 特に米国との関係が深まりIT産業の急成長につながった
・ IT産業の急成長などを背景に、最近では年収が30万ルピーから100万ルピーという中間所得層が急速に広がっている。05年でも人口の8.8%を占めるが10年度には14.5%程度まで拡大するとの予測もある
***中間層、もうすでに日本の人口と同じくらい、、?
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●昔ながらの家族経営の零細な商店が大半だったインド。私は屋台も小さな雑貨店も大好きですが、インド滞在や旅行の際には、大都市ニューデリーでさえスーパーマーケットがなくて、不便に思うこともありました。けれども昨今、小売業の変化は急速なようです。以下、同紙のレポートよりご紹介します。

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<ムンバイのハイパーシティ、清潔な店内が魅力!>
・ ムンバイに1万5千平米のスーパー「ハイパーシティ」が昨年5月オープンした
・ 生鮮野菜は泥を落とし袋詰めされて売られる。価格はキャベツが一玉6ルピー(約17円)、ジャガイモが1キロ15ルピー(約42円)と街なかの露店とほぼ同水準。サラダ用のカット野菜や店のプライベートブランド(自主企画)商品もある
清潔で明るい店内はこれまでのインドの小売業とかけ離れたもの
・ 建設会社に勤める夫の年収が150万ルピーという主婦は週に2回は来るという
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<デリーのコンビニ、夜型消費者増えてます!>
・ ニューデリーには1日24時間365日営業するコンビニがオープンした
・ 弁当から薬まで8000品目を販売している
・ 売上げの5割近くを午後9時以降の夜間に稼ぐ
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<バンガロールの百貨店、ブランド人気ここでも、、>
・ バンガロールでは04年開業の百貨店「バンガロール・セントラル」が人気
・ 国内外のブランド店が入居し、週末は3万人以上の来店客で賑わう
・ クリスマス商戦では大型テレビや電子レンジが当たるキャンペーンが人気を集めた
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<おっと、、強気の定価販売!>
・ インドに誕生したこれらの小売業の形態は、欧米や日本のものとほぼ変わらない
・ 異なるのは、店舗間の競争が少ないため、定価販売が主流だという点
***定価で家電品を買うって、今や想像できないなあ。、
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<カバンは入り口で預けてね!>
・ セルフ販売の店でも、日本の同規模の店と比べて2〜3倍の人員を配置。万引き対策など防犯上の意味がある
・ 同じ理由から来店客はかばんや袋類を店に預ける必要がある
・ 入り口に必ず「チェッキダール」と呼ぶ門番がいるのも特徴
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<インド小売業、最大の課題は物流!>
・ 旧式のトラックにはエアコンがなく、夏場は夜間にしか物を運べない
・ 凹凸の多い道路はスピードが出せず、ニューデリー〜ムンバイ間のトラック輸送は「運が良くて5日かかる
冷凍物流を全国規模で手がける企業は三菱商事が出資するスノーマンのみで、外資系ファストフードなどから注文が集中する
***キャラバンっぽい!?
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●また同紙は「日本とインドの関係は滞っている」と指摘。インドと中国の貿易は日印を大きく上回り、韓国も同規模になりつつあります。中国も韓国も(アメリカも)本当に行動が迅速ですね。
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●世界に展開する大規模小売業や高級ブランド、ファストフードやカフェチェーン、、大都市はどの国も同じ光景を持つようになりそうです。でも、グローバルのなかにも、どうしてもにじみでるローカルなものがあります。私はそのことに興味があります。インドは、それが濃いのでは、という思いがあります。見ていきたい点です。

* 写真は、上から順に、「椰子ジュース売り/タミルナードゥ州/これ飲みました。美味!」、「ヨーグルト売り/パキスタン・ギルギットのバザール/これは食べてません、残念!」、横長で挿入したタイルはパキスタン・ウッチュのもの
by orientlibrary | 2007-01-09 00:24 | インド/パキスタン

ビザリー?ノビータ? インドの衣食住遊、ムクムク動く!?  

「インド 11億人が買う」という特集が、『日経MJ』というマーケティング専門紙(1月5日)に載りました。中国旋風も一息ついて、もうひとつの巨大市場としてインドに注目が集まっているようです。最近の流行から小売り事情まで、なかなか面白かったのでご紹介したくなりました。今回は(え、続くの!?)ハヤリものをピックアップしました。(以下、出典は同紙。1ルピーは約2.8円)

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(1) 踊るボリウッド、製作本数世界一!
・ インド市民の最大の娯楽が映画。ハリウッドにちなんでボリウッドと呼ばれる
・ ムンバイを中心に米国をしのぐ年間約800本が制作される
・ インド映画の基本はドタバタのコメディーやハッピーエンドの恋愛もの。歌や踊りを取り入れた3-4時間の長編が多い
・ 映画館の料金は席によって4種類に分かれ最高のプレミアムクラスが120ルピー、スクリーンの前は50ルピー 
***スクリーン前の席が好み。日本でも導入して欲しい制度!?

(2) もうサリーだけじゃない!ジーンズがインド女性の定番に!?
e0063212_022263.gif・ ニューデリーやムンバイなどの都市部では20代の女性は大半がジーンズ姿
スカートには抵抗がある女性が多いようで、ほとんど見かけない
・ ショッピングセンターの衣料品店では国産ブランドのジーンズは1000ルピー、リーバイスなどのブランドもので1200-1800ルピー、細身のデザインが人気
・ 街の露店では300-400ルピー、Tシャツは100ルピー前後
・ 大学で流行しているのはクラブファッションの「ビザリー」。「マークス&スペンサー」も人気
***民族衣装にはどんな体型もきれいに見せるマジックがある。ジーンズはスタイルだけでなくライフスタイルを変える

(3) スタバ風カフェでカプチーノ!
・ 都市部でコーヒーチェーンが増加
・ 大手「バリスタコーヒー」はエスプレッソが37ルピー、カプチーノは50ルピー
・ 屋台のチャイは1杯3-5ルピーでその10倍の値段だが、20-30代の男女で賑わう
・ 本家「スターバックス」も近くインドに進出
***逆に日本ではチャイを出すカフェにオシャレ感

(4) 収入の1割が携帯代の若者、、あれ、日本と同じかも!
・ 携帯電話の累積加入件数は昨年5月に1億件を超えた
・ 現在も月間500万件のペースで増えている
・ インドの携帯電話通話料は世界一安いといわれる
・ 市内は1通話につき1ルピー、同じ携帯会社なら0.5ルピー
・ 事前に1000ルピー程度払えばあとは生涯無料という契約まである
・ 本体価格は2千ルピーから4万ルピーまで様々
・ 富裕層は毎年のように高級機種を買い替える一方、安価な中古市場も充実
***生涯無料って、、

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(5) 日本のアニメ、ここでも人気!ノビータやジャンって誰?
・ 全世帯の4割に普及しているCATVには日本アニメの専門チャンネルがある
・ ポケモンの他、「こち亀」「幽霊白書」などが放映されている
・ 「ドラえもん」の平均視聴率2.5%、チャンネル数が100以上あるインドでは人気番組
流ちょうなヒンディー語を話す「ノビータ(のび太)」や「ジャン(ジャイアン)」
***警察官がかなりコワモテなインド、こち亀の印象が気になる。なお「ヒンディー語」という記載は原文のまま(japaniさん、あえてこのまま載せてみました〜!)


(6) ツケもききます、庶民のコンビニ健在!
e0063212_032227.gif・町中至る所で見かけるのが「キラナ」と呼ぶ雑貨店。日本のコンビニのような役割
・ 3度通えばツケが利くといわれ、まとめ買いすれば気前よく値引きしてくれる
インドには500万も小売業者が存在するといわれるが、大半がこうした家族経営による零細業者
・ 近代スーパーに客を奪われる店も出ているが常連客も多く庶民の生活に根付いている
***500万って、、、そのくらいの人口の国も多いですよ。。

●特集の基本は中間所得層の拡大と小売業の変化。大型ショッピングセンターが都市部に続々できています。人気商品やインド人の買い方物流の問題点などからも、インドの文化的な特性を垣間見ることができ興味深いです。引き続きご紹介したいと思います。
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* 写真は、上から、「ヒマーチャルプラディーシュ州の若い女性。このあたりではまだサリーやパンジャービードレス」、「ジーンズの女性」(=日経MJより引用)、「公園内ショップ」、「コンビニ・キラナ」(=日経MJより引用)、「こういうのも入れて500万!?・・タミルナードウにて」
by orientlibrary | 2007-01-06 00:39 | インド/パキスタン

陶器やお花といっしょに、新年のごあいさつ

明けましておめでとうございます。

新年のごあいさつに、<西アジア×日本>のシーンをささやかですがいくつかアップしたいと思います。

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<イランの花瓶+寒椿+蝋梅(ろうばい)>

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<トルコの茶碗+うさぎ+チョコレート>

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<イランの容器+インドのミラーワーク>

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<イランの皿+赤唐辛子>

赤唐辛子には魔よけの意味があるそうです。

皆様にとって、2007年が素晴らしい年になりますように。

今年もブログを通してのおつきあい、どうぞよろしくお願いいたします。
by orientlibrary | 2007-01-02 18:52 | 中央ユーラシア暮らしと工芸