イスラムアート紀行

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グーグル・イメージ、もっとイスラムアートが増えるといいな

●検索はグーグル(Google)贔屓。旅行気分が楽しめる画期的な「Google Earth」など、新しいことにチャレンジする遊び心も好きです。そんグーグル、「イメージ」というのがあったので、何か資料はないかと「イスラムアート」で検索してみました。すると、、え〜!?大半がこのブログのもの。、、、なんか複雑です。

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●良かったと思う点は、イスラムアートに関心を持つ方のアクセスのきっかけになりうること。もう1点は、自分自身がアルバム感覚で写真を一覧できること、です。

●ただし、単にタイトルが選択基準なのか、「天ぷらそば」や「針供養」なども入っていて、極めつけは「ナマコ」。これ、苦手な人が多いだろうと私は極小で載せたんですが、、、イスラムアート?と思ってクリックした方はショックな写真ですよ、きっと。

●残念なのは、「やっぱり情報が少ないんだ」と再確認したこと。ちなみに「イスラムタイル」で検索してみるとmiriyunさんのきれいな写真が載っていました。一方、「イスラム美術」では、昨年の世田谷美術館の展覧会関係が多く、つまりはイスラム関連、あまり情報がないんだなあ、ということを再認識しました。

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●では「islamic art」では?こちらはドカーンと19,200点!!やはり海外の研究や情報発信が圧倒的に多いようです。いくつか辿っていって参考になりました。念のため、最近エキサイトで広告している「live search」でも「イスラムアート」を見てみましたが、7点しかないうえに(悲)、一体どんな関連が??という内容でした(哀+怒)。

●あと、以前「憂無庵さん」とのやりとりで、書籍等からの写真の転載は、出典元と「引用」を記せば著作権的な問題はない、ということを教えてもらったのですが、さらに「イメージ」に載った場合、これはどうなるのかな??考えるとむつかしいので、考えないことにします。

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●デジタル一眼を入手して、これからはデジタルで撮っていこうと思っている私。いろんなところにドカドカ出かけて行きたいと思います。ティムール朝タイルで必須のマシャド、ヘラート。14世紀のヤズド、セルジューク朝のコンヤ。イスラム文化が花咲いたタブリーズ、優美なイスファハーン、イスラム都市の魅力あふれるブハラ。このあたりのタイルや光景と出会いたいと思っています。

*写真は、上より、イラン・タブリーズのブルーモスク。上から内部壁面のモザイクタイルファサードのタイル(剥離していることで製作過程が垣間見られます)、そして個人的に気に入っている写真=イランのソルタニエでの光景です。
by orientlibrary | 2006-12-28 02:27 | タイルのデザインと技法

お寺で聴くサズ、和の空間で見る部族の絨緞

トルコを代表する民族楽器「サズ」。そのコンサートがお寺であり、しかもお寺には真っ赤な部族の絨緞が敷きつめられている、、そんな珍しくも魅力的な催しが、日野市にある安養寺でおこなわれました。安養寺は築500年とという真言宗の名刹です。
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●演奏者はトルコで修行された大平清さん(↓)。イラクの刺繍布を背に赤い絨毯に囲まれての叙情的な弾き語り。哀愁のある音色に、多くの人が聴き入りました。

e0063212_2336659.gif●サズは長い竿(ネック)が特徴の撥弦楽器(つまびいて弾く)です。

●なんと、古代ヒッタイト遺跡の石刻にサズの原形と考えられる楽器が彫られていたり、イランのスーサ遺跡の9000年前の土器にも長い竿を持って座った楽人の描写があるそうです。え〜!すごく古い歴史を持つ楽器なんですね!

伝統的には吟遊詩人が使う楽器だったそうですが、しだいに大衆の間に広がり、踊りの伴奏や祝いの音楽に欠かすことのできない、とても人気のある楽器になっているそうです。一方、オスマンの宮廷音楽などには使われないとのこと。

●「中央アジア、ペルシャ、アラブと、トルコ人のユーラシア大陸移動の歴史を感じさせてくれる音楽であると言えます」(大平さん)。同地域の土の建築文化に惹かれている私には、共鳴する波長を感じる楽器です。

●また、サズを好んで使う「アレヴィー」という人たちのことを、はじめて知りました。アレヴィーは東部アナトリアに多く、シーア派と共通する要素があるためにスンナ派とは相容れない点が多いのだそうです。「その宗教感情を表出するために、サズの調べにのせて詩をうたうのです。アレヴィーにとって、サズは切り離すことのできない関係にあります」(大平さん)。

e0063212_23464349.gif●イスラム教というと歌舞音曲禁止というイメージもありますが、地域的には音楽大好き、踊り大好きというエリア。音楽が信仰の気持ちを表す軸となるスーフィズムなどにも興味がある私にとっては、イスラム圏と音楽は切り離せません。

●コンサートでは、アラブ音楽で「楽器の女王」とも言われる「ウード」の演奏もありました。こちらは繊細な音色です。

●ウードは3世紀から栄えたササン朝ペルシャ時代の弦楽器を起源に持ち、ギターや琵琶、リュートなどの先祖といわれる楽器だそうです。形も卵型でやわらかい印象。胴の装飾の透かし文様が工芸品のようにきれいでした(↑)。

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●さて、絨毯のほうは、、和の空間に乾燥地帯の遊牧民の絨毯がこんなに合うなんて!!お寺の暗い照明だと、赤のトーンが沈み目にやさしい落ち着きのある色に変化するのです。

e0063212_2338170.gif●そう、天幕のなかには電気なんてありません。自然の暗さの中で心身をなごませる色、それでいて活力をもたらしてくれる色、それが部族の赤。そんな赤の秘密を体感した気がします。


●安養寺さんは、8年間もこのようなコンサート(無料)を継続して開催していらっしゃるそうです。

●各所に配された飾りのセンスの良さと和モダンな感覚。そしてお寺を地域に開かれた場にしようという信念にもとづいた住職ご夫妻のきめ細かなホスピタリティに感服しました。安養寺さんのご近所の皆さんがうらやましいなあ!


*「More Day Most Accord」さんのTB記事(↓)にパキスタンのスーフィーのお祭りや音楽のことが紹介されています。どうもありがとうございました。
by orientlibrary | 2006-12-25 00:10 | 美術/音楽/映画

旅の思い出に 遺跡の景色がよみがえる <砂絵>

中東のかわいいスーベニア。技ありの一品!世界30不思議くらいあったら入るかも、、というのが、「砂絵」です。色をつけた砂を瓶に入れながら爪楊枝みたいなもので押したり引いたりしているうちに、みるみる絵が描かれていく。どうしてくずれてこないんだろう。
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●「下手な店のはくずれてくるよ」というのは、ヨルダン・ペトラ遺跡近くに店を構える職人さん。(↑)を買ったところです。「砂絵専門店」、または「砂絵ブティック」(言い過ぎ?)という感じで、おみやげもの屋さんのものとは一線を画すぞ〜!といった気概が感じられました。

e0063212_0311480.gif●アップで見ると(→)さらにクリア。

●上の方の色が違う層は、ペトラの赤い岩のよう。ちなみにサイズは、ラクダの鼻先から尻尾の先までで約2センチ。細かい仕事ですよね!ちょっとバランスがくずれてもラクダにならない。

●蓋もきちんとしているので、確かに言葉通り、振っても転がしても砂が崩れることはありません

●ヨルダンでは果物や野菜のカービング(=最近日本でも流行しつつあるようです)もよく見かけました。日常的なものにも美しさを求める、独特のセンスがあるように思います。


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●砂絵でも、こんな感じのラフなもの(←)も。これはこれでかわいい。なごみますよね。




●なごむといえば、このロバちゃんたち(↓)。どちら(右2匹、左2匹)も双子と言っていた気がしますが、本当でしょうか。

5月の連休頃のペトラ遺跡は、夾竹桃が満開。沙漠の土色の世界に、ピンクがクッキリと映えます。遺跡と花というのは、相性がいいといつも思います。
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by orientlibrary | 2006-12-22 00:35 | 中央ユーラシア暮らしと工芸

かわいいイスラムグッズといえば、これ! <アザーン時計>

●モスクを模したラブリーな「アザーン時計」。イスラム圏を旅行したことのある人なら一度は目にしたことがあるのでは?私はイスラマバードで買ったのですが、もともとはどこで作っているのかな。モロッコあたりでしょうか。でもイスラム諸国どこでも販売できるのですから、すごいグローバルな商品ですよね。

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●さて、この時計、なぜ「アザーン時計」なのかというと、イスラムの礼拝への呼びかけである「アザーン」が時計から聞こえてくるからです。ところが、これがハンパじゃありません。「アッラー〜アクバル!」(=フォント数72、想定ホーン数100)のあまりの大音量に、各地で衝撃(ひんしゅく?)の嵐を巻き起こしているという噂も、、。

●私もあまりの音量に恐れおののいて(しかもあわてて音を止めようとして、ボタンを押す代わりに「尖塔」を押して痛いのなんの、、)、いつしか目に触れないところにしまいこんでいましたが、今回久しぶりに出してみました。やはりかたちはかわいいですよね〜。日本でのネット通販の値段を調べてみると1980円でした。

●これを調べているときに、おもしろいサイトを発見。東京外国語大学アラビア語専攻のサイトです。マニアックな楽しさとアカデミックさが両方ある不思議なサイト。そのなかの「リンク集」には、「ショッピング・通販」も。アラブの雑貨、書籍、衣服などいろいろなサイトが紹介されていました。学術オンリーではない、若い人たちの「おもしろがり方」がいいです。

●食品だけでも、アラブ菓子、チョコレート、なつめやし、ナッツなど、細かく分類されているのにびっくり。さらに「アラブ菓子には油がたっぷりと含まれています。時間のかかる配送手段を選ぶと輸送中に劣化するので、予算に問題が無い限りDHLを指定することをお勧めします」、「なつめやしのシーズンは夏となっています。実には虫がつきやすいので、保管にはくれぐれも注意してください。長期保存を希望される方でまとめ買いをされる場合は、真空パック入りのものを買ったほうが無難です」など、街中のショップも顔負けの親切なコメントが、とってもいい感じでした。


e0063212_2264275.gif●さて、実際にはアザーン時計が使えない私が考えだしたのは、CDをタイマーセットしてアザーンで起きようということ。以前はパキスタンのCDをかけていましたが、これがちょっと重かった。

●で、先日、渋谷にある個性的なCDショップ「エルスール」で「アザーンが入ったCDないですか」と聞いてみたところ、シリアの「Sulayman Dawud & his sons」のCD(ダマスカスのウマイヤドモスクでの朗唱)をリコメンドしてくれました。

●これがよかったですね〜。Sulayman Dawud はダマスカス旧市街の生まれ。ライナーノーツでは彼の人柄の素晴らしさが讃えられていました。朗唱に参加している二人の息子は、薬剤師と菓子職人。これもいいですね〜。

●とにかく楽器なしの朗唱というスタイルなのに、すっかり聴き入ってしまいました。タイマーもセットです。イスラムの街ならではの五感の世界、この冬はアザーンで気持ちよく起きられそう〜♪
by orientlibrary | 2006-12-18 22:21 | 中央ユーラシア暮らしと工芸

新カテゴリー! 「西〜中央アジアのかわいいもの」

●美しいものがたくさんある西アジア、中央アジア、東南アジアには、愛らしいもの、ほっとするものもたくさんあると感じます。そんなアジアのかわいいものを味わっていきたいなと思います。でも「アジアのかわいいもの」だと広すぎて、ちょっと雑誌的な印象もあるので、西アジアや中央アジアをメインにしたいと思っています。

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●青山のペルシア・キリム屋さんに、絨緞を織る光景を描いたタイルが飾ってありました。タイルと毛織物、両方好きな私には、うれしい飾り物。キャンドル立てには「とても捨てられない」とオーナーが言う毛糸が盛られていました。
by orientlibrary | 2006-12-17 01:00 | 中央ユーラシア暮らしと工芸

最も熟練した職人がおこなう、モザイク作りのプロセスを見たい!

『ペルシアの伝統技術 風土・歴史・職人』は、すごい本。なかでもタイル製作の詳細な記述は感動ものです。タイル好きにとっての核心部分「建築技術と製陶技術」の「煉瓦切り職人およびタイル切り職人」より、イランのタイル職人の仕事を、本から引用しながらご紹介!流麗なモザイク装飾を支える「現場」です。(*写真は、『ペルシアの伝統技術 風土・歴史・職人』(平凡社)のものが白黒でクリアではないため、同様の工程をモロッコの『TRADITIONAL ISLAMIC CRAFT IN MOROCCAN ARCHITECTURE』より引用しました)

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(ウズベキスタン・ビビハニムにて/orientlibrary)

レンガ切り職人 ---「装飾的なレンガ積み(hazaerh,hazar-bafi,parceh)やファイアンスモザイク細工に携わる職人は、通常、ふつうのレンガ積み職人としてスタートする」「壁の表面のレンガ積みに熟練した職人がこの仕事を専門にするようになり、レンガ切り職人(ajur-taras) と自称するようになる」。

タイル切り職人 ---「最も熟練したレンガ切り職人にタイルやファイアンスモザイクの仕事が任されるようになった時点で、よりいっそうの専門性が生じ、この専門職人がカーディータラーシュ(kasi-taras)、つまり“タイル切り職人”と呼ばれる」「タイル切り職人(kasi-taras)は、ふつうのタイル仕上げのみならず、かなり「複雑なファイアンスモザイク細工もおこなう」 」

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タイルをカットして整形する ---「正方形のタイルを使ったタイル貼りの壁の場合は、まず徒弟がタイルの一辺を研ぎ、余分な油を取り除いて平らにする」「次に親方がそのタイルの上に型タイルを載せ、ペースト状の赤いアルメニア膠灰粘土に木製の筆(qalam)を浸し、残りの3辺に印をつける」「そして石の上のタイルを載せ、鋭い刃がついた石工用のハンマーを小さく2,3度振り下ろして、印をつけた3辺を整形する」「最後に木製の直角定規で仕上がりを確認する」「これでタイルの準備は整い、あとは焼石膏で壁に接着するだけである」。

ファイアンスモザイク。いわゆるモザイクも同様の工程で作られます。 ---「これと同じ種類の単色タイルがファイアンスタイルモザイクにも用いられる。図柄に必要な十分な量の単色タイルが陶工によって作られる」「色はトルコ石ブルー、コバルトブルー、ラピスラズリブルー、明るいエメラルドグリーン、淡い色合いからサフラン色までの数種類の黄色、そして白色、黒色、まれには赤色、ときには溶解して箔状になった金や釉薬の中でコロイド状を保っている金などの金色、というようにさまざまである」。

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図案に従って切断する ---「モスクや公共の建物のような重要な仕事の場合には、図案職人(naqqas)はモザイクの異なる形(moarak)すべてについて型紙を用意し、それをタイル職人に渡して指定した色のタイルで作らせる」「タイル切り職人は植物性の糊(serest)で型紙をタイルに貼り付け、輪郭線にそって正確にタイルを切断する」「刃のついたハンマーで切断したあとは、タイルの縁をヤスリで滑らかにしたうえで、裏側を手鍬で先細りにする」。

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パネルにする ---「職人は整形のすんだタイルを表を下にして並べる」「部分部分にわけて図柄を整え、装飾レンガ細工の場合と同じようにして焼石膏を流し込む」「レンガとレンガの間が狭いため、表側では明るく光沢のあるタイルの色彩が鈍い淡黄色の漆喰によって、うまく分離されている」「パネルの一区画は持ち上げるときに自重で壊れないような大きさに作られる」「壁やドーム、アーチのパネルの接着は装飾レンガパネルの場合と同じようにしておこなわれる」「パネルは異なる区画を通して熟練した技術で作られるため、完成した区画の切れ目は見えない」。

接着する ---こうしてできたタイルのパネルを焼石膏で建築物の壁に接着して完成です。


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(サマルカンドのティラカリマドラサ/orientlibrary)
by orientlibrary | 2006-12-13 01:44 | タイルのデザインと技法

Tri・color / Japan / December 2006

●イスラムの青から少し日本へ。今の日本の光景のなかにあった、こんな青。そして黄色、赤色へ、12月のトリコロールカラー
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◆イルミネーションの青の海。話題という情報の海をたくさんの人が泳ぐ。@汐留◆

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◆ビル街の銀杏。今年も青空に負けない黄色の存在感。@日比谷◆

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キリッと一本の赤、空中に浮かぶ。ミキモトビル。@銀座4丁目◆
by orientlibrary | 2006-12-10 23:43 | 日本のいいもの・光景

装飾タイルの施釉 輝く青はこうして作られる

紀元前2650年のエジプト、ステップピラミッドの地下廊下で使用された世界最古のタイル、その色はきれいな青でした。すでに釉薬をかけて焼成されていました。青色釉薬の使用は、さらにさかのぼっておこなわれていたようです。紀元前3000年頃の青の釉薬がかけられた陶片も発見されています。

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紀元前16〜14世紀は陶芸も最高水準で、様々な色彩の釉薬が開発され、色彩に富んだ陶器が作られました。神殿や宮殿の壁や柱などの装飾に、色タイルを使用したモザイクが大規模に使われたと言われます。想像しただけでも、うっとりします。

その後、建築装飾としての使用機会がなくなり姿を消していたタイルは、9世紀頃のイスラム世界に再登場するのですが、当初は色が、ブルー、白など数種類しかありませんでした。しかも1枚のタイルは一つの色でした。

しかし、セルジューク朝時代になると、施釉タイルによる装飾が見られるようになり、イルハン朝、ティムール朝、サファビー朝へ、施釉タイルはモスクや宮殿などを飾る建築装飾の重要な素材として発展。聖なる青と言われるコバルトブルーやターコイズブルーを中心に、白、黄、赤、黒、茶など、鮮やかな色で見る人を魅了しました。

東アジアは、高温で陶磁器を焼くのが可能な粘土を手に入れやすい、高火度で焼ける釉薬が利用できた、など、白磁や青磁など単色釉の陶磁器を作る条件に恵まれていました。

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そんな東アジアに対して、西アジアは高い温度で焼くことのできる粘土が少なく、また高い温度に必要な脂の多い松などの燃料もなく、低い温度でしか焼けない土地。ゆえに、釉薬も低い温度で焼ける種類を利用しました。しかしそのことで、あの輝くような青や黄や緑が可能になったのです。 

久々に、イランの伝統工芸の技法について詳細に記した『ペルシアの伝統技術 風土・歴史・職人』(平凡社)を見てみました。「製陶技術」の「施釉」、なかでも装飾タイルのあたりをご紹介します。

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--- 「ほとんどの陶器は焼成は1度だけであるが、2度、3度焼成をするものもある」「たとえば装飾タイルは、まず最初に素焼きし、次に白色不透明の錫釉をかけて8時間焼き、2日間窯の中で冷ます」。詳細な記述が続きます。

--- 「そして絵付けのために絵付け職人(monaqes、naqqas)に渡す」「図柄の転写は目穴の開いた型紙と細かい石灰の粉が入っている小さな袋が用いられる」「型紙の目穴を通った石灰の粉がタイルに付着し、図柄が転写される」

--- 「絵付け職人は転写された図柄に沿って、細い毛筆で顔料を含んだ釉薬を施す」。そして「同じ釜で3度目の焼成をおこなうことによって、これらのいわゆる上絵が定着する」。

施釉の部分だけでこれだけの丹念な流れがあります。「釉薬作り」の説明もとても興味深いものです。先回のウズベキスタンの天然釉「イシクール」、聞いてもなかなか理解しにくかった作り方が整理されています。が、長くなるので次の機会に。

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(アフマド・ヤサヴィー廟、トルケスタン、建造は14世紀後半)

土の準備からタイル型作り、釉薬作り、完璧な発色で焼成し、デザインに合わせてミリ単位でカットして貼り合わせていくモザイク、、、装飾タイルで壁面を覆い尽くした建造物を考えると、その手間の膨大さに呆然としてきます。本当にすごいなあ。

*写真は、上から「世界最古のタイル〜エジプト」(『オリエントのやきもの』 INAX出版より引用)、「釉で装飾的な文様を描く」(『ペルシアの伝統技術』より引用)、「施釉タイル釜による焼成」(同)
by orientlibrary | 2006-12-08 01:10 | タイルのデザインと技法

水槽のメジナのことなど

そのむかし、「テレビ・チャンピオン」という番組で、高校生くらいの男の子が魚についての驚異的な知識で優勝したことがありました。その少年「さかなクン」は現在、東京海洋大学助教授。でも相変わらずさかなの帽子をかぶって「永遠のさかな大好き少年」の雰囲気を漂わせています。「変わり者」かもしれないけど、私はなんとなく好きです。

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(「チューリップの原種」、東トルコにて)

この「さかなクン」が朝日新聞の「いじめられている君へ」で語っていたこと、なんだか気になりました。---「中学校のときあったいじめは、さかなの世界と似ていました」。

---「メジナは海の中で仲良く群れて泳いでいます」。ところが、「せまい水槽に一緒に入れたら、1匹を仲間はずれにして攻撃しはじめたのです」。「けがをしてかわいそうなので、そのさかなを別の水槽に入れました。すると残ったメジナは別の1匹をいじめ始めました」。

---「助け出しても、また次のいじめられっ子が出てきます」。しかも、「いじめっ子を水槽から出しても新たないじめっ子があらわれます」。「広い海の中ならこんなことはないのに、小さな世界の閉じこめると、なぜかいじめが始まるのです」。「同じ場所にすみ、同じエサを食べる、同じ種類同士です」。さかなクンは、「広い空の下、広い海に出てみましょう」と結んでいました。

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(「恋する少女たち」、ウイグルの祭りにて、男たちの踊りを見る)

気軽に喋る雰囲気の英会話にときどき行っています。「先生」のネイティブを中心にいろいろ話をします。先日、「元ジャナーリスト」という年配の日系アメリカ人男性が、「イスラムの国では大学進学率が5%しかないんだ」「一日5回祈るから仕事がはかどらない。日本でも経営者もそれを嫌がって雇わないのだ」「1日5回も祈っているから彼らはだめ。遅れていく。でもそう書いてある(聖典にという意味と推測)からしょうがない」等々、さも見てきたかのように話していました。

本当にうんざりです。でもまじめに聞いている人もいたので、やはり何か言うべきかと思い、「進学率5%とはどの国のことを指しているんですか」「日本では何人のムスリムと話したんですか」を聞いたら、「私の話を批判する。イヤなら来なければよい」とのこと。いちおう有料の「授業」なんですけどね。

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(「西域のおじいさん」、ウイグルのモスクにて)、

冬に心身がパワーダウンする私、なんか滅入りました。私はこんなうんざりする場所に行かなければすむ話だけど、ムスリムの人たちは「言われっぱなし」のことが多いのではないでしょうか。何年何十年と耐えて、あまりの不条理さに意義を申し立てたら、「テロリスト」と一言で片づけられる。

もしも不条理が我がもの顔でまかりとおる地に暮らしていたら、自分や家族の尊厳が日常的に踏みにじられていたら、希望がまったく持てなくなったら、絶望したら、、、私も自分のできる最大のことをするかもしれません。先日パレスチナで、これまでに何人もの家族を失い住居も破壊された57歳の女性が「自爆テロ」をしたという報道がありました。これまでで「最高齢」との記載でした。

世界の経済は、国境を感じさせないほど「ひとつ」になってきているようです。「(アメリカの)ウォルマートは衣料や家電などで中国の国内総生産の1.5%を輸入している」という記事を先日読みました。 ひとつのスーパーマーケットが世界の工場中国の国内総生産の1.5%!? わずか2週間で流行が変わる渋谷のストリートファッションを、アジアの工場で徹夜で生産しているドキュメントも見たことがあります。

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(「丘の兄弟」、東トルコにて)

経済が「ひとつ」になる、「ひとつ」の中での地位争いや生存競争、水槽のなかの「いじめられっ子」、、。考えてみても何もまとまらないのですが、、、少なくとも一日5回祈る人もいるし、形式はそうしなくても信仰の篤い人もいるし、、ムスリムも同じ人間!>偏見だけで見ないで欲しいと、今それだけは言いたいです。ぜんたいに稚拙な文で恐縮です。

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<参考資料> 下記にイスラム諸国の大学進学率をわかる範囲でご紹介します。
出典: 外務省「諸外国の教育事情」(2006・3 更新情報より)

イラン==大学へは約15パーセント。

トルコ==大学進学率(1997年現在)は22.4%となっている。

カタール==義務教育終了後、ほとんどの学生は大学(カタール大学)へ進学している。また、当国では、米国、英国等から多数の大学や研究機関等を誘致しており、義務教育を修了した学生の一部は、それらの大学等へ進学する他、外国へ留学する者もいる。

バーレーン==中学校卒業者の約80パーセントが高校(さまざまな分野のものがある)へ進学し、その約25パーセントが大学(海外を含む)へ進学する。成績優秀者は奨学金や特別研究費の補助を受けて外国の大学教育を受けることもできる。

レバノン==進学率や進学状況の正確な数字は不明だが、他の中東諸国と比べ非常に高いと見られる。(国際私立校では、95%以上の生徒が大学へ進学する。)

パキスタン==試験の結果に基づいて学校の選択が行われる。経済的な理由から、大学へ進学する者は少ない。医学部、薬学部、工学部などは非常に難関で、進学率はかなり低い。 一方、幼少より私立校で英国のカリキュラムに従いO level ・A level 等を終了し、欧米諸国の大学に進学する者もかなり増えてきた。

バングラディシュ==大学への進学率は18パーセント程度。

インドネシア==大学進学率は30パーセント程度。
by orientlibrary | 2006-12-04 16:15 | 社会/文化/人

中央アジアの映画や演劇、独特の世界が魅力

先日、アジアの新進映画監督の作品を集めた映画祭「第7回>東京フィルメックス」で、「天国に行くにはまず死すべし」(タジキスタン/ジャムシェド・ウスモノフ監督)が最優秀作品賞になりました。受賞理由は、「その映画的な知性。登場人物と環境の流動的でダイナミックな関係性を捉える話法。監督自身の人間性に対する真摯で力強い視点を高く評価します」とのこと(同映画祭HP)。

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映画を見ていないので、新聞記事(日経)の表現を借りると「舞台は中央アジアのある都市だが、どこの国でも起こりうる普遍性のある作品」「男と女の不安、心の揺れが鮮明に伝わってくる」「現代人の目覚めを描く」などとあります。

以前見たタジク映画「ルナ・パパ」は、笑いや哀愁もある不思議系のストーリーで私は結構好きでした。キルギスの「あの娘と自転車に乗って」は青春映画という感じで中央アジアの景色を楽しみました。また、私は見ていないけど、ウズベキスタンの「UFO少年アブドラジャン」は、ある種有名ですよね。

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10月に、中央アジアの現代演劇事情についてのお話を聞く機会がありました。来年日本で「コーランに倣(なら)いて」という演劇を上演するマーク・ヴァイル氏を中心とするワークショップです。

タシケントにあるイルホム劇場の演出家であるヴァイル氏の活動は、とても興味深いものでした。日本ではなかなか聞けない内容であり、はじめて聞くことばかりで面白かったのですが、書きだすと長くなってしまうので、ほんのさわりだけご紹介したいと思います。

イルホムとはインスピレーションの意味。劇団はソ連における初の独立劇団として76年に開設されました。当時のソ連はブレジネフの「停滞の時代」。厳しい検閲があり、ソルジェニーツインなどの多くの優れた作家が追放されたり亡命が相次いだ時期でした。そうしたなかでの独立劇団の誕生は事件だったそうです。

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タイル好きの私にとって、タシケントはあまり惹かれる街ではありません。ロシア風の都会という印象です。けれども、70年代当時、タシケントは、モスクワ、レニングラード、キーロフに次ぐソ連邦第4の都市でモスクワと並ぶ演劇の中心地だったそうです。

ヴァイル氏は語ります。「70年代は興味深い時代でした。重要な文化はモスクワが中心でしたが、新しい動きはリトアニアやタシケントなど周縁からおきてきたのです。モスクワでは新しいものへの締めつけがありましたが、遠く離れているせいで大丈夫だったのです」。

政府お仕着せの演劇に飽き足らない俳優たちが、国営劇場の公演後、イルホム劇場に集まって自分たちの芝居を演じ、多くの観客が集まったそうです。俳優たちは10年間ほどは、まったく無給だったとか。

こうして、イルホムの名はタシケントのみならずソ連全土で知られるように。しかし初のモスクワ公演に千人もの観客が集まり警官が取り囲むなどの騒ぎになったあと、ウズベキスタン政府の締め付けがきびしくなり上演禁止なども。

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その後、ペレストロイカからウズベキスタンの独立へ。演劇も新しい国のアイデンティティを模索します。この数年は、イスラム原理主義など寛容さを失いつつある宗教に問題意識を持っているというヴァイル氏、新作のテーマは「コーランは各人の心の中にある、ということがメッセージ」と教えてくれました。

ビデオで見せてもらったいくつかの演劇作品は、どれも実験的でシュール。どういうわけか、中央アジアの映画や演劇って、私の知る限り、すっごい<超現実不思議系土着モダン難解もの>というか、、純朴という中央アジアのイメージをあっさり裏切られるもの、多いです。

*写真は、タシケント光景。
by orientlibrary | 2006-12-01 23:28 | 美術/音楽/映画