イスラムアート紀行

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女性だけが陶芸に従事する村に、古代を思わせる陶器があった

洗練優雅な装飾タイルが建造物の壁面を華麗に彩るイラン。今なお修復などで、タイル製造と緻密なモザイクの技法が受け継がれているようです。イランの建築物の綺麗さというのは、半端ではありません。こと芸術に関しては、イラン人というのは中途半端を好まない人たちなのではないかと思うほど、どこか徹底したところがあるような気がします。

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そんなイランから、日本に陶芸を学びに来ているアーティストがいることを知りました。先日までイラン大使館ホールで、その作家ティムール・サブーリさんの展示会がおこなわれていました。現代イランの陶芸の感性は、ぜひ見てみたかったので出かけてみました。

鳥や動物を大胆に表した作品は、力強く、それでいなから軽やかな遊び心があるものでした。焼きしめの壷などは備前のようで、日本で学びながら様々な陶芸に挑戦している様子が感じられました。その展示の一角に、ふしぎなコーナーがありました。素朴な茶色の地色に黒の幾何学模様。3000年前の皿ですよ、と言われても信じてしまうようなプリミティブな色と模様<。これって何!?

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はじめて出会ったこれらの陶器は、南イラン・バローチスタン州のKALPURKAN 村というところで作られているもの。え〜、このタイプの陶器を今も作っているの?さらに驚くことに、陶器を作るのは女性だけなのだそうです。サブーリさんが興味を持って調査した関係で、展示されたようです。

非売品だったのですが冊子があり、そこには少女からおばあさんまで、女性たちが土をこね、成形し、絵を描いている写真がありました。バローチーの民族衣装を着て、、もう、めちゃカッコイイです。

ティムール・サブーリさんのホームページは、イラン陶芸の歴史などとても充実しています。KALPURKAN 村についても記載がありました。それによると、「KALPURKAN 村の陶芸は、歴史あるイラン陶芸の古代の方法とひな形を不滅のものとするような製造技術が際だっている」 「土はMASHKOTAKというところから村の男たちが運んでくる。そして液状粘土と混ぜ合わせて焼き物のための土を作る」。(写真の右下にある石を顔料に、その下にある細い棒で絵を描く)

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「女性たちはろくろを使わない。手で成形し数千年もの伝統のある独特の幾何学模様を描く」。「筆ではなくマッチ棒のような石で線画を描く。顔料は村の近くの山でとれる特殊な石だ」「絵は、完全な抽象。世代から世代に受け継がれてきた心理的なイメージであり、時には宗教、信仰、作り手の女性の状況を反映する」「これらのシンボルは先史時代や古代のものと類似している」。

いったいどういう経緯で、女性が陶芸にたずさわるようになったのか、イランの土関係の伝統には男性のイメージが強かったので、不思議であり驚きでした。女性たちが作る製品は多様で、鉢や壷、コップ、ピッチャー、容器(VESSEL)から、水パイプ、お盆、乳製品入れなどさまざま。

でも淋しいことに、軽くて丈夫なプラスチックが陶芸製品にすっかり置き換わってしまったようです。需要は減少し、「70人の女性が1971年の時点で陶芸に従事していたが、99年には7人になった。2001年にはわずかひとりの女性が近くの町のクラフトセンターで陶芸を教えていた」。

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(サブーリさんの皿)

「古代の貴重な芸術が滅亡しようとしている」とティムール・サブーリさんは危機感を持っているようです。イランの若い陶芸家がこの村の焼き物に興味を持っていてくれたおかげで、日本にいながらバローチーの香りのする味わいのある陶器を見ることができました。あらためてイランの歴史と文化を思うこの頃です。
by orientlibrary | 2006-11-28 00:03 | 至高の美イランのタイル

西アジア〜中央ユーラシア 赤のトライバル・ラグの世界

東京・お台場のビッグサイトで、ファブリックを中心とするインテリアの見本市「JAPAN TEX」が開催中です(25日まで)。広い会場に関連企業や海外からのブースがズラリと並ぶなか、かなり異色な空間があります。赤い手織り絨毯だけで構成された「日本手織絨毯研究会」の真っ赤な「部屋」。

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どちらがいい悪いではなく、工業製品の空間と手織りのものの空間では、質感が違います。手織りの空間には、泥くささや濃さがあるのですが、同時に今の時代には希少な類いの安心感やなごみ感もまたあります。何かに包まれる感じがします。

手織りということでは、繊細なペルシア絨毯なども同じように手織りであり、その洗練された美しさは圧倒的です。けれども研究会の真っ赤な部屋は、それともまた違う。もっと土くさく、人くさい。ほとんどが「トライバル・ラグ」とも言われる部族のものだからです。

トルクメニスタン、アフガニスタン、バローチー、カシュガイ、クルド、タイマニ、ホータン、ウズベキスタンなど、古来より毛織物が暮らしに欠かせないものであり、また豊かに暮らしを彩ってきた地域の絨毯。それも赤のもの。

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赤の持つ力に焦点を当てた会員のSさんのコンセプトと空間構成。展示された絨毯やテントベルト、クッション、小物などはすべて全国の会員の個人的なコレクショです。別名「マニアの会」メンバーだけあって、思い入れのあるものばかり。絨毯商やバザールでのやりとりが聞こえてきそう。地元の気配を今だ漂わせています。それが集合しているのだから、強烈です。

展示の説明も会員がおこないます。靴を脱いで見るスタイル。絨毯を汚してはいけないので絨毯につきもののチャイは無しですが、絨毯のある地の音楽などを流しながら、絨毯談義が弾みます。みずから絨毯を織るTさん曰く、「モノを売らない空間って、全然違うよね」。そして、この赤い部屋が、演出が優れたブースに贈られる「ディスプレー賞」を獲得したのです。基本的には業界の見本市。そのなかで個人の思い入れの強い空間が評価されるというのは、なにか新鮮な思いがします。おめでとう、Sさん!そして絨毯を愛する皆さん!

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さて、たくさんの魅力的な絨毯のなかで、中央アジア好きの私が気になったのは、ホータンの200年近いアンティーク(S.Tさん所有)。ザクロや花のかわいい模様、赤も青もおだやかないい色合いです。

e0063212_22502366.gif強いインディゴの紺にバラの花模様のものは、ウイグルで購入したそうですが「西トルキスタン(ウズベキスタンなど)のものである可能性は十分ある」と持ち主のS.Tさん。ヨーロッパ風がトレンドだった時代のものでしょうか。赤の染料はケルメスではないか、との見方でした。

赤の染料としては、茜(絨毯の赤色によく使われる)やコチニール(紫貝殻虫の卵に含まれる色素を利用)をはじめ、カネ、紅花、スオウ、ラック、ケルメスなどが古くから使われてきました。けれども天然染料は、大変に稀少なもので高価です。19世紀に合成染料が発見され、その後工業化されると、天然染料は合成染料に変わっていきました。

模様、織り方、染料、用途、歴史等々、絨毯はどれをとっても深いですね。私はいちおうこの熱い会の会員にさせて頂いていますが、ここでも修行中。皆さんのどこまでも行ってしまうマニアな話を聞いているのが好きです。
by orientlibrary | 2006-11-24 22:59 | 絨緞/天幕/布/衣装

shade&stripes 冬木立のおくりもの

miriyunさんの「ペトラ シマ模様の赤い岩」を見ていて、つい最近見た「日本の縞模様」を書こうと思い立ちました。日本の縞模様って?着物の柄?

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何気なく目にしているかもしれない光景です。紅葉も終わり葉が散ってしまった冬枯れの木立。葉が茂っているときとは光景が一変します。見えなかったものが見えてきたり、スコンと抜けるような空を見上げたり。

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そんな冬木立と木漏れ日が織りなす陰影@軽井沢。ふわりと道路に差し込んで、抽象画のような縞模様を描きます。四季のある日本ならではの光景。日本の日差しは、どこかやわらかく、木立もほっそりしているせいか、影もまたやさしい印象です。

** 冬木立木漏れ日と織る縞模様 (orientlibrary)

雪化粧した浅間山。浮世絵師たちは、雪もきちんと描写したんだなあと思います。
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俳句もどきのメモのついでにこの季節の秀句をいくつか。

** 鵞鳥の列は川沿いがちに冬の旅 (寺山修司)
---ガチョウが旅に出る?川沿いを歩くガチョウを「冬の旅」と合わせると、一気に叙情的な光景に感じられてくる。寺山修司10代の作品。イメージのマジック、10代からすでに才気あふれる。

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** 遠い木が見えてくる夕十二月(能村登志郎)
---すでに葉が散ってしまった。すると今まで見えなかった遠くの木が見えてくる。空気も澄んで、聞こえなかった音まで聞こえてきそう。寒い冬ならではの静かでおだやかな時間。あと1週間で12月。

寒くなってきました。風邪にはご注意を。そしてよき休日を。
by orientlibrary | 2006-11-23 00:56 | 日本のいいもの・光景

天然釉薬イシクール七変化 魅惑の色の世界

これまですでに何回か、ウズベキスタンの陶芸について書いてきました。千年以上の歴史があり、シルクロードの土の文化を体現するウズベキスタン陶芸。ペルシア系であり、色絵の軟陶が多いのが特徴です。主に、黄色、緑、紫、コバルトを使い、カラフルな抽象画や幾何学模様が描かれます。

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<リシタンの町になにげなくある陶のアート、レンガの色合いとクリアな青のコントラストが鮮烈>

ソ連時代には伝統工芸の伝承がすたれ、また販路もなくなったため打撃を受けたそうですが、現在はアートセンターやギャラリー、ショップなどで、豊富な陶器を見ることができます。また意欲のある陶芸家は海外で展示会をするなど、ウズベキスタン陶芸の紹介に情熱を傾けています。

サマルカンドでもタシケントでも、お店にはたくさんの美しい青の皿や壷がところ狭しと陳列されています。その多くはリシタンのものでしょう。フェルガナ盆地にある陶芸の里・リシタンは千年近い歴史を持ち、陶芸芸術のふるさととも言われています。

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<リシタン陶芸工房での作業光景>

「本物の青い陶器の通(つう)ならば、フェルガナ盆地、リシタンに行くことを切望する」とも言われるリシタン。本物の青、その秘密は天然の釉薬「イシクール」にあります。

砂漠の灌木の灰から作られるイシクールは、ウズベキスタン伝統の釉薬。しかし現在では、工業製品や自家製の鉛の釉薬を使う産地が増えているといいます。こうしたなかでも、リシタンでは今でもイシクールの伝統を守り続けています。

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<砂漠の灌木からイシクールが作られる。現在、灌木自体が減少し、作品も稀少になっている>

陶芸家は、イシクールに錫、コバルト酸化物、銅、鉄を加えます。これらの添加物とイシクールの灰の中の酸化カリウムの組み合わせによって、ウルトラマリン、ターコイズ、白、黒、茶色に変化するのです。

現在イシクールを使いこなせる人は、ウズベキスタンでも数人しかいないとも聞きました。誇りを持って大事に伝承されてきた秘伝の釉薬が、空のようにクリアなリシタンブルーや爽やかなグリーンを生み出しているのです。
by orientlibrary | 2006-11-20 00:51 | ウズベキスタンのタイルと陶芸

南インドのバロック!? ティルマライ・ナーヤカ宮殿

イスラム建築といっても地域や時代によってさまざまです。もともとの宗教建築様式との混合というケースもあります。インド・ムガルでは、ヒンドゥーとの混ざり具合が興味深い。にじみ出してくるヒンドゥーテイストがムガルならではの魅力と個性になっています。

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そんなムガル建築の優美なシンボルであるタージマハルが着工した1632年と同時代である1636年、ある不思議な建物が、パーンディヤ王国時代の都だった南インド・マドゥライにできていました。その名は、「ティルマライ・ナーヤカ宮殿」。当時この地域を統治していたティルマライ・ナーヤカ王が建てた宮殿です。

何が不思議かって、ヒンドゥーとイスラムのミックスどころではない、西洋建築も入り、それが全部がコテコテに主張している感じなのです。なにやらバロック的な匂いもします。このティルマライ・ナーヤカ宮殿、「インド・サラセン様式」の建物なのだそうです。

遠い昔、とりあえず履修した世界史でこの言葉を聞いたような気もしますが、、インド・サラセンって何!?こういうときはインド建築の専門家・神谷武夫さんのサイトを見るに限ります。

「“インド・サラセン様式” という奇妙な名称は、英国の一方的なヨーロッパ文化の押しつけが インド大反乱を招いたという反省から、インドの伝統文化を尊重する気運が高まり、ムガル朝のイスラム建築(当時はサラセン建築と呼ばれた) の要素を取り入れたコロニアル建築を、そう呼ぶようになったのである」(「神谷武夫とインドの建築」より)。基本はコロニアル建築なんですね。

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宮殿についてはネットで情報を探しましたが、本当に少ない。でも次の記載がありました。「孫によりほとんどを壊されてしまった。19世紀後半に修復されたが、残っているのはヒンドゥー建築とムガル建築が混合したインド・サラセン様式のメインホールと、博物館になっているダンスホールだけである」〜「植民地時代のコロニアル調の建築様式にムガル帝国のイスラム様式を加味した、インド・サラセン様式の宮殿。舞踏ホールの柱には美しい彫刻がほどこされている」。

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美しい彫刻?、、まあ、神業のようなインド石造彫刻の技術をもってすれば、漆喰はより自在でしょうけれど、、う〜ん、、、。ただし、私この宮殿の中にいるときは、かなり感動していたんです。この不思議さに、、。頼んでいたガイドさんも外にいたので(=熱心なヒンドゥー教徒なので興味なし)、廃墟の気配もあるこの建物の中にいたのは私一人。

しのびよるヨーロッパ列強、北にはペルシア文化の薫り高いムガル帝国。ヒンドゥー文化があふれんばかりに豊かな南インドに、異なる価値観や美観を持つ勢力が入ってきた、そんな中で精一杯立派な宮殿を造ったこの王や時代の、哀しみと気負いのようなものを感じていたのかもしれません。

e0063212_1132253.gifだから、テイストは好みではないけれど、とても気になる建造物として、今も記憶に残っています。イスラム建築と言われるものの多様性を感じます。

マドゥライはなんと言っても、神々の彫刻が乱舞する典型的なドラヴィダ建築の「ミナークシ寺院」の街。その圧倒的な存在感のなかに、ひっそりと建つ宮殿の静けさにもまた、インドの奥行きを感じるのです。
by orientlibrary | 2006-11-17 01:16 | インド/パキスタン

絵付けタイル華やかなトルコ、「拡大EUのフロンティア」?

トルコってアジア?ヨーロッパ?よく「東西文明の接点」などと言われますが、いったいどちらの要素が強いんでしょう。数年前にトルコに行ったとき、ユーロで示された値段の高さにびっくり。十数年前に行ったときは物価が安いイメージがあったのに、ユーロではとんでもなく高かった。雰囲気的に、国としてはヨーロッパに入りたいんだなあ、と感じるものがありました。

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ノーベル文学賞を受賞したイスタンブール生まれのオルハン・パムク氏は、そのあたりの心性を小説に驚くべきスケールとディテールで描きますが、パムク氏自身、アルメニア問題に言及した件で「国家侮辱罪」に問われています。

イスラム美術好きの私としては、トルコにヨーロッパのイメージはありません。ヨーロッパで加盟に反対している人が多いということを新聞などで見ると、なんとなくそれもわかるなあという気がしていました。でもEUとトルコの関係については、ほとんど知識がありません。

トルコの人は、本当にEUに入りたいの?どうして?、、心の隅で疑問に思ってきましたが、先日「拡大EUのフロンティア トルコとの対話」という催しを発見。行ってみることにしました。2時間弱にもかかわらず、3人の専門家による濃い内容のセミナーでした。

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アートではないのですが、トルコはヨーロッパ?という素朴な疑問について少しだけ見えてきたので、長くなりますが聞き書きしたものからまとめてみたいと思います。政治の話、う〜ん、ちょっと、、という方、どうぞトルコのタイル写真でくつろいでいって下さい。


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<EUからの視点>
・ トルコがEU加盟候補国になるまでの経緯、それを可能にしたものは何だったのか。98年と99年の変化から見る
・ 87年にトルコが加盟申請したが、97年のルクセンブルグ欧州理事会では加盟はeligibleである(資格がある)という中途半端な結論に
・ 98年は加盟論議停滞とトルコがこれに抵抗した年、しかし99年は一転してトルコを加盟候補国と見なす転換点となった
・ 背景には、「ギリシアとトルコの関係が改善した」「議長国となったドイツがトルコ加盟に前向きな政権に交代した」「NATOによるコソボ空爆がありヨーロッパに分裂への危機意識が生まれた〜ユーゴ内紛になすすべがないヨーロッパ。トルコを外に置いておくのはよくないという意識」これらの雰囲気が「イズミール大地震」という自然災害によって急速に加盟候補国へと収れん、全会一致の結論に達した
・ しかし、問題はヨーロッパにトルコ加盟に対しての明確なビジョンや政策がないまま、決定に動いていったこと。これが後まで尾を引いている。いまだにアルメニア虐殺問題、反イスラーム感情、キプロス問題などでくすぶっている
・ また、一般的な正直な意見は、「トルコはヨーロッパではない」というものだ。トルコの人口が増加し最大国になるという危惧もある
・ 講演者(八谷まち子さん)の見解は、トルコの加盟はEUにとって大きなメリットになる、存在感が飛躍的に大きくなる、というもの。理由は、「トルコの豊富な天然資源」「高齢化いちじるしいヨーロッパにトルコの若年労働力は魅力」「NATOとは違う軍隊ができる」など

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<トルコからの視点>
・ EU加盟に向かうトルコの内政と外交の変化について見る
・EUは加盟候補国の政治を変えていく。コペンハーゲン基準があり、加盟国は準備協約をし、法整備や政策を実施する
・内政では民主化改革の枠組みができ、これまでで最大の効果があった
 (1)市民社会と政党の活動の自由が拡大した 
 (2)個人の基本的人権、少数派の権利が拡大した
 (3)軍隊のパワーが縮小(軍部は放送、出版、教育も監視していたが04年~廃止)
・ 改革の成果として、国民の意識が変化した
 (1)加盟による経済的利益を重視→民主化の進展が利益という意識へ変化した
 (2)思想信条の自由があり、イスラム派が支持に回った
・ しかし限界がある
 (1)国軍は国家体制を維持する任務であり首相直属である
 (2)トルコ侮辱罪は残る
 (3)クルド語による教育はまだおこなわれていない
・ 外交ではキプロス問題での譲歩があった。統合を進める方向へ
・ EU加盟への国内の支持率は「熱烈支持」から「幻滅」へ。EUシフトを取ったが見返りが見えない。しかしEU的な価値を重視する人が増えてきた。経済よりも政治的な利益が大きかった
・ 加盟に反対している人は、EUがトルコを疎外しているという印象がある。EU諸国のなかで反トルコの世論が一番高い。加盟賛成は最も低い38%ほどである

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<ドイツからの視点>
・ ドイツ社会とトルコ系移民がこの60年でどう変化したかを見る
・ 戦後ドイツ=「ガストアルバイター(労働者としてのトルコ人)」、50年代半ばからの西ドイツ奇跡の経済復興を支えた
・ 1973年以後のトルコ人=第1世代の労働者が家族を呼び寄せ
・ 83年は帰国手当法で祖国に帰す政策
・ トルコ内の政情不安があり難民、不法滞在者としてのトルコ人のイメージに
・ 冷戦後の移民急増、旧ソ連や東欧から年間40万人も入ってくる。 庇護申請者の出身国の2位がトルコ=どうしてこんなに迫害された人が来るんだという印象に。ケルンでイスラム王国を運営した一種のカルト集団の悪いイメージも
・ ドイツの外国人数=人口8300万人の7%、そのうちの36%がトルコ人(トルコから来た人+ドイツ生まれのトルコ人という大きな集団も)
・ 国籍法の改正とドイツ社会の変容、05年の移民法で社会統合を進める=市場が求める必要な移民は容易に入れるがそれ以外はきびしくなる
・ ドイツ社会におけるトルコ系住民の現在=「エルンストロイターイニシアチブ」により双方の社会がお互いの理解を促進するプログラム


e0063212_23441693.gif*おつかれさまでした。写真は『TURKISH TILE AND CERAMIC ART』 より引用しました。
by orientlibrary | 2006-11-14 00:00 | 中東/西アジア

うっとり、、本で巡るイスラムタイルの旅

タイル発展途上人、まだまだまだまだ修行中のorientlibraryです。旅行で出かけたイスラムの国々で見た建造物の壁面を彩るタイルの蒼の世界に惹かれて、この美しさはいったいなんだろう、と本を探し始めました。でも日本では、装飾タイル〜イスラムタイルの本はあまり種類がありませんでした。

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でも何冊か、とても素敵な本があります。先日コメント欄でLAPISさんから「お勧めの美しいイスラムタイルの本は」というご質問をいただき、これらの日本の本をご紹介しました。私の道しるべであり、今も友である本を、今回は記事としてご紹介したいと思います。

『聖なる青 イスラームのタイル』(INAX出版/1996・11/¥1,890)・・・とても影響を受けた本です。表紙のコバルトブルーのタイルに魅せられて今まで来た感じがします。著者はタイルを求めて世界を旅された山本正之さん。山本さんが生涯をかけて集められたコレクションは、常滑市にある「世界のタイル博物館」に展示されています。

『タイルの源流を探って オリエントのやきもの』(INAX出版/1997・11¥1,575)・・・古代オリエント全般の土の文化について専門的に紹介した本です。こういう情報にはなかなか触れる機会がないので、とても勉強になりました。

『タイルの美 イスラーム編』 (TOTO出版/1994・08/¥3,059)・・・イラン、トルコのタイルについての学術的なアプローチ。写真はあまり多くありませんが、要所要所にきれいな写真が入っています。著者のお二人は中近東文化センターで研究されている専門家です。

これ以外のタイルやイスラム建築の本は、旅行に行ったときなど現地で少し買っていましたが、時間に余裕があるわけでもなく、じっくり探す機会もありませんでした。洋書が入手しやすくなったのは、やはりネット通販とブロードバンドのおかげ。Amazonはますます検索しやすくなっているし、届くのも早いし、重宝しています。タイルの本も、多くはないけれど、大型サイズで写真が豊富な美しい本が何冊かあり、今や座右の書になっています。

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『The Art of the Islamic Tile』 (Gerard Degeorge (著), Yves Porter (著) / Flammarion /2002・10/¥8,148 )・・・Islam、Tileなどで検索すると最もヒットするのではないかと思います。地域別に編集されていて、写真はもちろん、フォントやエディトリアルデザインもきれい。イスラムタイルの基本的かつ専門的な一冊ではないかと思います(300ページ近くある大型本でまだ全部読めていないし、まだ時間がかかりそう)。

『Colour and Symbolism in Islamic Architecture: Eight Centuries of the Tile-Maker's Art』 (Roland Michaud (著, 写真), Michael Barry (著), Sabrina Michaud (著, 写真)/Thames and Hudson)・・・イスラマバードで確か99年に70ドル台で買ったもの。とてもとても好きな本です。ミニアチュールを軸に各地のタイルが紹介されています。好きなのは写真です。タイル単体だけでなく、タイルのある光景の数々が、心がふるえるくらいに素敵なのです。とくにアフガニスタン。タイルのクローズアップの仕方も独特です。そこで今回LAPISさんにご紹介するにあたって再度確認しようとしたら、、なんと、衝撃の事実が、、

◆同じものが『Design and Color in Islamic Architecture: Eight Centuries of the Tile-Maker's Art』(Roland Michaud (著, 写真), Michael Barry (著), Sabrina Michaud (著, 写真) (Vendome Pr/1996・09)となっていてタイトルは少し違い出版社も違うのですが、問題は値段。在庫がなくユーズド価格が、なんと「121.440円より」となっていました。じゅ、じゅ、じゅうにまんえん!?!?、、あんまりですよ。残念です。再販して欲しい。そしてたくさんの人に見て欲しいです。

◆そしてLAPISさんが見つけてくださった『Splendors of Islam: Architecture, Decoration and Design』 (Dominique Clevenot (著), Gerard Degeorge (著, 写真/The Vendome Press/2000・11/ ¥ 7,458 )。速攻注文してゲットしました。これもすごいいい本でした!!LAPISさんに感謝です!タイルだけではなく、漆喰や木・金属など他の素材の装飾について、モチーフについて、建築理論、表面芸術としてのイスラムの美など、視点が斬新で、統合的かつ細部からイスラムの美を学ぶことができそうです。写真は『The Art of the Islamic Tile』と同じ人ですが、版がさらに大きく25×33センチくらいあるのですごい迫力です。表紙がウズベキスタン・シャーヒズインダの浮彫施釉タイルですから、クラクラしてしまいます。

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◆ウズベキスタンに集中すると『Samarkand・ Bukhara・ Khiva』(Pierre Chuvin (著), Gerard Degeorge (写真)/Flammarion/2003・09/¥6,392 )がありますが、これも写真が同じ人。印刷のせいか少しおとなしく感じられますが、もうこの存在だけでうれしいです。

この他にもまだ少しあるのですが、自分自身まだまだ目を通していないので、いつかまた機会をみてご紹介したいと思います。

*写真は、ウズベキスタン・シャーヒズインダ墓廟群のタイル。一番上は「マスター・アリ・オフ・ナサフによって建てられた廟」のファサード、2番目は「ジャディ・ムルク・アカー建築群」(1371-83)のファサード、3番目は不明。いずれもOrientlibrary 
by orientlibrary | 2006-11-10 00:20 | タイルのデザインと技法

ウズベキスタン 陶芸の里を巡る旅

やきもののくに日本、、瀬戸、有田、九谷、益子など、日本にはたくさんの歴史ある陶芸の町があり、それぞれに異なる産地の個性を楽しむことができます。また現在も各地に熱心な陶芸家が窯をかまえ、腕を競っています。やきものと料理や花との組み合わせなども、大きな楽しみです。

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(ウルグットの陶芸工房にて。土のある光景)

ウズベキスタンの装飾タイルに惹かれている私、でもウズベキスタンのやきものについては、ほとんどイメージがありませんでした。ところが今年、ウズベキスタンの陶芸家であるAさんと一緒にウズベキスタンの陶芸の町を訪ねるという幸運な機会を得て、ウズベキスタン各地に陶芸の産地があり、それぞれに歴史と特徴があるということを知りました。

古代からウズベキスタンの人びとは、水と大地を聖なるものと考えてきました。日干しレンガや焼成レンガは建造物に使われ、食器や皿も土で作られます。そして各地に、古代からの伝統を受け継ぐ陶芸の流派があるのです。

さかのぼると、8〜9世紀には、マワラーアンナフルに釉薬を施した陶器が出現し広く用いられていました。11〜12世紀になると高度な技術が確立。陶器文化の主要な中心地が各地に形成されました。最大の中心地はサマルカンド。シャシ、フェルガナ、チャガニアなどの陶器も有名でした。

ティムールの時代には、都市建設、建築、芸術、文芸、工芸が勃興します。陶器制作では中国陶磁(染付)の影響を受け、まったく新しいスタイルが形成されました。土着の陶土を素材として、ブハラ、シャフリサブス、ウルゲンチなどで陶器が制作されました。中心はやはりサマルカンド。サマルカンドの碧青釉鉢はティムール朝陶器を代表するものです。

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(ウルグットの工房にて。三彩風で土の味わいがある)

18-19世紀には各地に施釉陶芸の主要な流派が形成されました。その流派とは、、
フェルガナ流派==碧青釉陶。中心地はリシタン、グルムサラエなど。
ブハラ・サマルカンド流派==黄釉陶。キジュドゥヴァン、ウバ、ブハラ、ウルゲンチ、サマルカンド、シャフリサブスなど。
ホラズム流派==碧青釉陶。ヒヴァ、カッタバグ、ハナカ村など。

これらの流派はその伝統を20世紀まで残しましたが、その後秘伝の多くが失われたそうです。(歴史については「中央アジア美術の至宝(陶芸)」『偉大なるシルクロードの遺産』展カタログなどを参考にしました)

けれども、Aさんと訪問したアトリエでは、陶芸家の皆さんが熱心に情熱を傾けて作品を作っていました。陶芸家さんと工房でお話していると、なにか日本にいるようで、遠い国とは思えず、とても親しみを感じました。

写真でご紹介しているのは、「ウルグット」「キジュドゥヴァン」「ヒヴァ」「リシタン」のものです。ウルグットでは1600年頃から陶芸が始まり、今回取材したノモン氏は9代目)。釉薬は手で流しかけします。唐三彩のような深い緑と黄土色で、暖かみと味わいがあります。

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(ギジュドゥバンの陶のテーブル。工房にて)

ギジュドゥバンはブハラの近郊にある町。緑や黄土色の色使いと星や太陽の大胆な文様が特徴です。テーブル、なごみ系でいい感じですよね。ブハラからサマルカンドへの途中にあるため、観光客の休憩スポットにもなっているようです。私設博物館が充実しており、各産地の特徴を確認できるのがうれしい!

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(ヒヴァの皿。タシケントの工芸博物館展示品を撮影)

ヒヴァは、古代から栄えた世界遺産の町。陶芸もホラズム派の中心地として発展してきました。鮮やかな色と幾何学模様が特徴。ヒヴァのタイルとも共通したクリアさとシャープさがありモダンな印象です。

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(リシタンの皿)

当ブログでは何度も登場しているリシタン。フェルガナ盆地の南端にある町です。土や顔料など陶器制作に必要な良質の素材に恵まれ、千年以上前から焼き物が作られてきました。天然釉薬「イシクール」を使った鮮やかな青と、繊細な植物文様の絵付けが特徴です。

ただし、これらの皿は飾り皿としての利用が多く、そこが日本と違うと感じました。食卓では既製品の青い陶器のセットが、家庭でもレストランでも、どこに行っても出てくるので、ちょっと驚いてしまいました。陶器が使われる場所が違うということでしょうか。私はウズベキスタンの陶器、ぜひ使いたいと思いますが、今のところ大事に飾ってますね、やっぱり、、。
by orientlibrary | 2006-11-07 00:07 | ウズベキスタンのタイルと陶芸

レア化する「銀塩カメラ」写真!? @レギスタンの建造物

●旅友と近況報告ランチ会。タジキスタン(パミール高原〜ワハン回廊)、ザンスカール(西チベット文化圏)、ウユニ塩湖(ボリビア〜チリ)等々、また皆さん、かなり濃いところに行ってます。ブータンやコスタリカやラオスなどが、おとなしく感じられます。

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●そんなマニアックな人たちが言うには、「この頃、ブログがマニアックになってる」。え〜!?、、この人たちに言われたくない〜と思いつつ、、、たしかにテーマを追うあまり、読みにくくなっているという自覚もあり。少し軌道修正して、あまり重くならないようにしようと思った次第です。

●そしてもうひとつ、え〜!?と思ったのは、写真です。5〜6年前のこういう集まりでは、だいたいアルバムやファイルに写真を貼ったり入れたりというのが主流でした。3〜4年前になると、パソコンに入れた写真を見せてもらったり、ポストカードにした写真やCD-ROMをもらったり、という形式が増えてきました。

●今回、あいも変わらずフィルムで撮った写真の紙のアルバムを持参したのは私一人。持って行くの、重いんですよね。皆、きれいにプリントアウトしたもので軽装備。そして、アナログの私も気になっていた写真の製本サービス、これがとてもいい仕上がり。まるでプロの写真集のようでした。自分が撮った写真の本が、気軽な値段で、しかも1週間くらいでできてしまう。

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もうアルバムを自分で作ることもなくなるのかな、と思いました。フィルムを買う→撮影する→現像する→選んでアルバム作り、という工程より、デジタルで撮影して自分のパソコンから好きなものを業者さんに送って製本してもらった方が、多分価格的にも安い。

●フィルムも現像も最近は劇的に安くなりましたが、それでも本数があって、私の場合は拡大したりするので、けっこうな費用がかかります。フィルムやアルバムを保管するのも場所を取ります。私はブログ用の写真は、アルバムから選んで取り出し、スキャニングして取り込んでいるのですが、デジタル化すればもっと早いですよね。

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●写真がうまくなりたいという願いを持ちつつ、パシャパシャとオートで撮っているだけの私。でもささやかな願いがあります。それは「空を青く撮りたい」ということなんです。私の好きなタイルのある国々、空が青くて、青いタイルがその空の中で輝いて、本当に綺麗なのです。

●ビッグカメラでそう言ったら、レンズみたいのを教えてくれたので購入して、ウズベキスタンで使ってみましたが、使い方が悪かったのか、かえって白っぽくなってガッカリでした。つけたりはずしたりも面倒。これまで当たり前と思っていた銀塩カメラ、じつは私にはむつかしいものなのかも。質感など、デジタルにすることのデメリットもなくなってきて、、さすがの私も決めました、デジタル一眼

●今回は、これからレアな存在になるかもしれない「銀塩で撮った写真」のなかから、ウズベキスタンのタイルを3点。サマルカンドのレギスタン広場の建造物です。早起きは三文の得。どこから撮ったかは、内緒です〜。なかなかない角度のものもあります。服がドロドロになったり、いろいろありましたが、タイルを求めて三千里ですから!めげません。

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●そう、さらに昔はこんな白黒写真(↑)でした。かってのレギスタンの光景。現地で買った写真です。これはこれで雰囲気ありますね!建物が修復されて今の姿になっているのが、よくわかります。人々の様子も興味深いです。
by orientlibrary | 2006-11-01 00:21 | ウズベキスタンのタイルと陶芸