イスラムアート紀行

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おりえんとより おてがみ

ウズベキスタン土の旅に行ってきます。陶芸やタイルの今と建造物の修復を見てきます。
かなり暑そうなので、肌寒い日本との差でびっくりしそうですが、もともと暑さ好き。
元気にいきたいと思います。
6月初旬にブログ再開したいと思っています。ホットなウズベクレポートにしたいです〜!
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by orientlibrary | 2006-05-24 09:38 | ウズベキスタンのタイルと陶芸

移動にも天幕の中にも。遊牧民の袋もの、カッコイイ〜!

遊牧民が移動するときに、財産や穀物、生まれたばかりの子羊などを入れる「袋もの」を集めた展示会が新宿で開催されました。毎回テーマにこだわった展示を続けるtribe(リンクのカフェトライブ)さんの主催です。タダでさえ触れる機会の少ない部族の織物、袋ものだけを一同に集めて見る機会は、さらにとても貴重!tribeさん、いつもありがとうございます〜!以下は、tribeさんが作ってくださった資料からご紹介させて頂きます。

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●私たちが「袋もの」というと、ラブリーなものを連想しますが、遊牧民の袋は大型の頑丈な織物です。山脈や渓谷などを移動する過酷な道のり、大切な家財道具などを運ぶのですから、ヤワなものじゃ間に合いませんよね。下の部分がパイルになっているものもあり、重い荷物にも安心!

●でも、頑丈がウリでも、全然無骨じゃない。それどころか、このうえもなく繊細で美しいのです。それがスゴい。カッコイイです。他の部族に見られる機会も多いことから、織る女性たちも部族と自分の美的センスと技術の見せ所だったのかもしれません。

●代表的なのは、ロバなど動物の背にかけて両側に振り分けて荷物を入れる「サドルバッグ」。有名なのは、1メートルを超えるものを織るイランのロリ/バクチアリ族だそうです。

小麦や衣類を収納する「ジュワル」(大型のもの入れ袋)では、トルクメンやクルド、ユルックなど、各部族の個性豊かな完成度の高い織りを見られるそうです。そのまま天幕の中のインテリアになりますから、力入りますよね。カッコいいなあ。

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●面白いのが「塩入れ袋」↑。食用となる塩を収納するための袋ですが、上部が細くなっているのは、家畜に大事な塩を舐められないようにするためなのだそうです!この狭さでは口を入れられませんね。かわいそうだけど仕方ない。

●この塩袋がきれいなんです!表はぎっしり文様があり、裏はストライプなどちょっと軽いデザイン。両面それぞれ魅力があります。房飾りがたくさんついたものもあります。センスの良さで定評のあるシャーセバンやクルド、カシュガイなどイラン各地の遊牧民が織るそうです。

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立方体の形の「布団袋」はマフラシュと言うそうです。この袋、テントの中では赤ちゃんのゆりかごに変身!汎用性が魅力。私たちの暮らしにもおおいにヒントになる部分があるように思います。シャーセバンのもの、以前から欲しいんですが、、積み立て貯金しないと、、

e0063212_22405883.gif●この他、いろんな袋ものがあり、部族のモチーフや色彩が表現されるそうです。「もっとも部族性が強く表される毛織物が袋もの=トライバルバッグ」と、tribeさんは言います。

●絨緞も深いですが、袋ものも気になりだすと、もっと知りたくなってきます。私にとっては、まだまだこれからの世界です。

●差し入れのデーツをいただきながら、「今の生活の中で塩袋をどうやって使うか」で盛り上がりました。すっごく魅力的なんだけど、いざ買ったら家でどうしようかな、と考えますよね。花を入れる、長い定規を入れる、あたりはまっとうな意見。取りにくさを逆手にとって貯金箱、マネキンに着せてディスプレーに、クッションにして口の部分にホカロンを入れて腰に当てる、、このあたりで居酒屋に流れました。

*写真、一番上は展示会直前に海外から届いたというサドルバッグのサイド部分。惚れ惚れする完成度。クラクラ、、3番目の布団袋はウズベキスタンのもの。華やか!
by orientlibrary | 2006-05-22 23:03 | 絨緞/天幕/布/衣装

瑞々しいな! 野菜、果物、おしゃべり、、ウズベキスタンのバザール

旅の楽しみのひとつはバザールですよね。日本の商業施設には、なんでもあるし、洗練されているし、トイレも清潔だし、何も不足はありません。

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でもアジアや中東のバザールの活気や猥雑さは、なんとも言えない魅力があります。人も野菜も屋台もイキイキしてます。濃いです。ここでは掲載していませんが、肉類なんかは、もっとも原初的な姿を見せて迫力があります。

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いろんな魅力的バザールがあると思いますが、今回はウズベク訪問記念ウズベク特集。大きく実ったスイカ、旅行者にも「持って行きな」と、わけてくれるような人情がありました。

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上から、シャフリサブス、ブハラ、サマルカンドのバザールです。
by orientlibrary | 2006-05-22 00:23 | ウズベキスタンのタイルと陶芸

サマルカンド・ビューティ

●この週末は、ピカピカの快晴&いい感じの暑さでした。あ〜あ、、なんだかなあ、、がっくりだよなあ、、(これ、通じる人には通じますよね・・)。ま、気を取り直して、いきます。

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●24日からウズベキスタンに行ってきます。リシタンという陶芸の街を訪ねます。サマルカンドとブハラで、じっくりタイルを見ます。修復の状況なども見てきます。

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●写真もいろいろと撮ってくる予定です。ということは、以前の旅行の写真を掲載することも少なくなるかな。というわけで、ウズベク魅力シリーズ、写真メインで! まずは綺麗な人シリーズ。

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いやあ、ウズベキスタンには美女が多いです! &今度のウズベク、とびきり魅力的なSちゃんにアテンドしてもらいます。写真?Sちゃんの許可が出たらブログ掲載ということで。こちらも、お楽しみに〜!?
by orientlibrary | 2006-05-22 00:02 | ウズベキスタンのタイルと陶芸

酒と詩を愛した時代の『ルバイヤート』 with tiles of semnan

●何かと物議をかもす話題ばかりが報道されるイランですが、イラン大使館ではいろんな催しが開催されます。映画の上映やアートの展示、文化関係書籍の販売や無料配布、講演会やセミナー。時々参加しています。日本の大使館も海外でこのように積極的に文化紹介をしていることを期待しながら。

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●今回は、書籍販売と『ルバイヤート』で名高い11世紀の詩人オマル・ハイヤームについての講演、そして『ナグメ』という映画の上映会でした。

●「ルバイヤート」とは、ペルシャ語で「四行詩」を意味する「ルバーイイ」の複数形。訳せばまさに「四行詩集」という題になるそうです。

● オマル・ハイヤームはイスラム史上独特な位置を占める唯物主義の哲学者で、批判的な詩の表現によってイスラム教や宗教的な束縛に対して無神論的な反逆をしたといいます。と、説明を聞いてもよくわからなかったけど、例にあがった詩にびっくり。


●「エデンの国が天女の顔で楽しいのなら/俺の心は葡萄の液で楽しいのだ/現物を取れ/あの世の約束に手を出すな/遠く聞く太鼓の音はすべて音が良いのだ」。

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●葡萄の液とはもちろんワイン。宗教が約束する世界よりも今を楽しく生きようと言い切っています。「一人の人間として抑圧に反対した」と講師の先生。しかし異端者とみなされて他の神秘主義者と同じように処刑される可能性があったため、「詠み人知らず」のように自分の詩であることを隠していたとのこと。

●イランというと原理主義的な国というイメージが強く、全員が宗教的であり、過去から今に至るまで熱心なイスラムの国という印象がありますが、酒と詩を愛した時代もあり、人もいて、国は一色では語れません。

●映画は理解しにくい内容で説明もむつかしいですが、イラン・イラク戦争で受けたマスタードガスの後遺症に苦しむ男性とその妻である大学教授、彼女の生徒である活発な女の子が登場するもの。ハリウッド映画などは、複雑に入り組んで作ってあっても結局は予測可能。でもイランの映画は、バックグラウンドが違うというか、単純な構成なのに意味を読むのが困難。でも、それがいいんです。なんでも安易にわかったらつまらない。 そんなマイナー好みの自分の嗜好性を、ちょっと持て余したり大変な目にあったりもしますが、、仕方ないです、、。

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●今日、どうしても欲しくなって買ってしまった片手で持てないくらい重い本『Iran CRADLE OF CIVILIZATION』より、SEMNANの金曜モスクのタイル装飾の写真をおおくりします。この本、イラン全土を網羅し、建築やタイルもたくさん載っていて、貴重な資料になりそうです。

*写真(上)=ペルシャ文明展が開催されます。上野にある東京都美術館にて8月1日より。アケメネス朝ペルシャがメインで日本美術の源流としてのササン朝も特集。昨年は大英博物館でも大規模な展覧会があったばかり。ペルシア文明への注目が高まっているようです。(中)(下)『Iran ~ CRADLE OF CIVILIZATION』より引用
by orientlibrary | 2006-05-18 00:53 | 至高の美イランのタイル

目黒で岩窟寺院発見! チベット密教の神々を見た!

●先日、たくさんの方々のご協力によって「遊牧民」をテーマにしたイベントを開催することができました。依然としてマイナーなテーマであることを再認識しましたが、参加してくださった方々や出会った方々の善意ややさしさがありがたかった。いろんな面で強烈に勉強になりました。やはり「現場」というのは強いものだと思います。

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●そんなこんなで日が過ぎていましたが、先日申請したビザの受け取り日時が決まっていたので、また出かけてきました。これがホントにものすっごくわかりにくい場所にあって、、、うろうろと彷徨っているうちに、こんな美術館を発見!

●目黒不動の近くにある一見普通のお寺、奥まったところに木彫りの神々が乱舞するドアのある暗い入り口が。なんか怪しい気配? 美術館と書いてありますが鍵がかかってる。で、住職さんを探して開けてもらいました。

●料金800円。靴を脱いで入っていくと、いきなり照明がついて、喜多郎のシンセサイザーが。一人のために、どうもです、、と、始まりました、めくるめく仏の世界! 中はなんと、岩窟だった!

(館内は撮影禁止のため、写真はパンフレットより引用しています)




e0063212_0254250.gif●美術館はなんとチベットの洞窟寺院を模して造られているのでした。

●岩のような壁、水晶の原石、低い天井を埋め尽くす曼荼羅、マニ車、壁中にかかったタンカ、一カ所にこれほど集めると何がなんだかわからない仏像や法具。パンフレットの言葉を借りると「神秘の壮絶とも言える仏尊たち。人間の心の原点『秘密曼荼羅』の世界へ」。

●クラクラしてもう一度入り口に戻ると、古い「JAPAN TIMES」の取材記事コピーを発見。見てみると、前住職が集めたチベット仏教美術のコレクションは8000点に及び、その費用は数億円! 「日本の仏教は世俗的になり原初的な精神性を失ったが、チベット仏教はそれを維持している」というようなコメントが載っていました。


e0063212_0261032.gif●私、曼荼羅やタンカ、仏像、法具を見る目はありません。どのくらい貴重なものかはわからない。床の真っ赤なカーペットが宴会場を思い出させもしました。ネットで調べたら「珍寺院」というレポートの中に入ってました。開館は1991年=バブルのピークです。

●でも、それでも、なんかすごいと思いました。蒐集のエネルギーと見せたいという情熱はわかる面もあるし、本当に作ってしまうマニアの魂を感じました。厳かな気分にはならなかったけど、いろんな人がいるんだと少し元気になれました。

●相当迷って到着したビザの受け取り、外にけっこう人が並んでいて(=中に一人しか入れないので)、「申請書を玄関で書くのには驚いた」とみんな話していました。感じることは同じ。なんか旅行が始まったみたいで楽しくなりました。
by orientlibrary | 2006-05-18 00:35 | インド/パキスタン

ユーラシアの楽器 ユーラシアの本

●2回続いたアルメニア、石造建築や独特の文様、絨毯など、まだまだ追いかけたいことがあります。テーマが見えてきたということで、ここはいったんお休みして、今回は雑談的な話題にしたいと思います。(写真はユーラシアの楽器です。記事との関係はなく、、バックグラウンドという感じです)

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●今日はある国の大使館にビザの申請に行ってきました。すこしカルチャーショックでした。暗い玄関の下駄箱の上みたいなところで、領事館のスタッフに教えてもらいながら申請書を書いている女性がいて、なんでここで?と思っていましたが、どうやらそこで書くのが通常のようでした。その次に私もそこで書きました。普通は旅行社の人が記入したものを持参して渡すだけだから?

●「利用者にとってどうか」を反射的に考えてしまう習性から、「コーナーを作って机ひとつでも置けばいいのでは?」と思ってしまいましたが、、でも、スタッフの方は明るく親切でした。



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●世界中で観光の振興に熱心な国が多いと思います。日本も「ようこそ!JAPAN」キャンペーンをやっています。旅行の場合、ビザの時点からもうその国との関係は始まっている気がします。そういうのも意外と大事なんですよね、旅行者には!


●帰り道、渋谷の書店で「アジアの本」特集をしており、ストレス解消もあって、ついつい何冊か買ってしまいました。アマゾンに慣れたこの頃、、「本って重い、、」。


●そのなかの一冊、『シルクロード いくつもの夜を越えて』(西東社)はフランス人男性がマルセイユからカシュガルまで1万キロを2年がかりで歩いた体験記です。
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●イタリア、バルカン半島、トルコ、小アジア、コーカサス、イラン、中東、中央アジア、アフガニスタン、パキスタン、中国へ。西から東へのシルクロードとそこに暮らす人の生活が描かれています。厚い本ですが、写真もイキイキしていて、読むのが楽しみ。


e0063212_23125230.gif『ユーラシアの神秘思想』(岡田明憲・学研)は、古代ローマの審儀、イスラム教のスーフィズム、ユダヤ教のカバラ、仏教の密教など、ユーラシアに展開されるさまざまな神秘思想が「人類の原思想」ともいうべきひとつの起源から発しているとして、その共通性を探っているものです。ゾロアスター教に関する著書の多い方だけに、こちらも楽しみ。


『素顔のアジア』(三井昌志)。お友達ブログでも、三井さんの写真のファンが多いことがわかってきましたが、この人のアジアの写真、子どもたちの表情がほんとにいいんですよ。まっすぐな瞳を探しての副題のように、迷いのない生命力のあるまっすぐな目が魅力的です。&アジアファンにはおなじみ『新アジア赤貧旅行』(下川裕治)も、さくさく読める中に何か考えさせるものもあって、ついつい手に取ってしまいます。


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●今回の楽器編、本来なら楽器について説明があるべきなのでしょうが、この分野は知識がありません。(どなたかコメントで教えてください〜!)。でも、ユーラシアの音の世界は好きです。楽器は土地の材料で作られ、音質はその土地の空気の中で冴えるような気がします。


*写真上から、◆シリア・ダマスカスの街角で。隣のおじさんは写真屋さん。人なつこい人たちでした ◆ウズベキスタン・ブハラで。多分有名な音楽家だと思います ◆パキスタン・北部辺境州の山の中で。バグパイプなど賑やかに突然現れた! ◆インド・ダラムサラで。チベットオペラの演奏です ◆モンゴルのナーダム(競技会)で馬頭琴。草原の響きですね〜。
by orientlibrary | 2006-05-11 23:38 | 中央ユーラシア暮らしと工芸

イスラムの地のアルメニア建築 独特の美の世界

●イスラムの美を堪能できるイランやトルコに、イスラム建築ではないけれど、何か気になる建物があります。アルメニア教会です。この不思議さはなんだろう、という疑問から、前回から少し書き始めています。

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●日本アルメニア友好教会のホームページには、アルメニアについての詳細でわかりやすい情報が満載です。歴史については次のような文章から始まります。「アルメニアの故地は,チグリス・ユーフラテス川源流域です」。

●「アルメニア高地は,中国,インド方面からの通商路がアラクス川流域を緩やかに溯り,コーカサス山脈と黒海のあいだを北上して欧州ロシアにいたるルートや,ユーフラテス源流域を西進してアナトリア高地を抜け地中海に出るルートなどが合流するところで、重要な交易ルート上にありました」。教会建築が花開いた「アルメニア高地」とは、このエリアをいうのですね。


●しかし内陸の交易ルートというのは、多くの民族にとって魅力的な場所でもあるのでしょう。「このように,通商路,戦略的要衝に位置し、多くの資源にも恵まれたアルメニアは、大勢力の野望を誘ったため、国家を建設・維持できたのは断続的でした」。

●9世紀のバグラット王朝の繁栄と絶頂期を迎えた教会建築については、前回ご紹介しました。しかし10世紀末からはビザンチン帝国やセルジュク族が侵攻。さらにモンゴル帝国,ティムールなども侵入し国土は荒廃。多くのアルメニア人が他所に移住しました。

16世紀以降は、オスマン帝国とサファビー朝ペルシアの間で争奪戦となり,両国に分割され「トルコ領アルメニア」「ペルシア領アルメニア」に。ペルシア側は後にロシアに割譲された結果「ロシア領アルメニア」に。そしてソ連崩壊によって独立国となるという、なんとも複雑な歴史です。

●現在、私たちがイランやトルコで見るアルメニア教会は、バグラット王朝期のもの(アクダマール島の教会)〜両国に分割された時のもののようです。文様や造形について手持ちの写真で見比べてみたいと思います。(建築全体については写真がないものもあり省略します。あくまでディテールです)。


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サファビー朝期、1655年に建てられたイスファハーン・ジョルファのヴァーンク教会(→)。<イスラム/ペルシア>と<キリスト教/ヨーロッパ>が混合しています。

●大聖堂の入口にはタイル装飾があり、内部天井には幾何学文が、内壁にはキリストと聖グレゴリの生涯が描かれています(↑上の写真)。

●「カフェトライブ」さんの記事にもあったように、入り口のアーチにイスラム建築の特徴である「ムカルナス(鍾乳石飾り)」が施されています。タイル装飾といい、イスラムとの混交が明らかです。

●ムカルナスやタイル装飾は、同時代のイスファハーンのモスクの美の極致のような世界とは比べるべくもありませんが、静かで深く、何か訴えかけてくるものがある教会だと思います。


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●北西イランをひたすらトルコ国境へ。国境まで50キロというあたりの山の中に突然尖塔が見えてきます。アルメニア正教の聖地カレ・カリサー、聖ダディオス教会(黒の教会)です(←)。


●現在の建物は17世紀に再建されたものです。外壁にはレリーフがあります。精緻で綺麗ですが、アクダマール島の教会のような簡素な温かさは感じられず、じつはここでは写真をほとんと撮っていません。






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●こちらはトルコ東部、イランとの国境に近いドゥバヤジットの山腹に建つ宮殿「イサクパシャ」(→)。

●17世紀にクルド系の王朝が100年近い年月をかけて建立したもので、セルジュク、オスマン、ペルシャ、アルメニア様式が混在しています。

●外壁のレリーフが見事。生命の樹など立体的で複雑なものがたくさんありました。レリーフは権力を示すものだったのではないかと思えてきます。



●今回こそは特徴を考えようと思っていましたが、またまた記事が長くなってしまいました。世界の宗教建築に造詣の深い神谷武夫さんの言葉で、次の機会につなぎたいと思います。「アルメニアが中東にありながら、ビザンチン様式に組み込まれず、独自の建築スタイルを発展させえたのは、コンスタンチノープルの支配に屈せず、独立した教会を維持し続けたせいだったかもしれない」。

*写真一番上は「ジョルファのヴァーンク教会」。現在は内部撮影禁止らしいですね。15年前はフラッシュ禁止でしたが撮影はできました。
by orientlibrary | 2006-05-07 23:57 | 中東/西アジア

見るほどに味わいが深まる アルメニア教会のレリーフ 

●イスラムのタイルと建築ファンの私にとって、アルメニア建築というのはピントの合わないものでした。キリスト教自体をほとんど知らないし、教会建築への興味も低いというのが正直なところです。しかし、トルコやイランで見たアルメニア教会(遺跡含む)の中に、イスラムに近い求心力を感じたものがありました。簡素ながら、とても力強く、リズム感があり、そして何か突き抜けたものがあるのです。

●そして最近、「写真でイスラーム」さん、「カフェトライブ」さんが、アルメニアの教会建築や模様について書いていらっしゃるのを見て、もう一度自分の写真を見返してみました。すると、皆さんが指摘されている模様や特徴が、たしかにあるのです。アルメニアの建築やデザインは、イスラム建築以上にマイナー。意識して追いかけないと、現地で見る機会があっても、ぼんやりやりすごしてしまうなあと思いました。そんなわけで、少し調べてみることにしました。
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●すると、、、アルメニア建築って、深いです。おもしろい。まず、押さえる必要があるのは、世界で最初にキリスト教を国教にした(301年)のがアルメニア王国だったということです。そしてその数十年後から、教会建築がアルメニア高地全域で花開きはじめます。

●アルメニア正教は、アルメニア教会を確立した聖グレゴリウスにちなんで「東方キリスト教の中のグレゴリウス派」と呼ばれることもあるそうです。またアルメニア教会は,キリストの神性を重視するキリスト単性論に属する東方教会のひとつであり、現在も世界に独自の教会組織をもっています。
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●この点について、アルメニアの女性が語っている言葉が印象的です。「アルメニア文化には、ウラルトゥ、ペルシャ、ギリシャなどの精神文化が吸収されている。アルメニアが誇る歴史の一つに、世界初のキリスト教の国教化がある。宗教会派上の独自性ゆえに、ローマ、ピザンチン教会派などとは対立した。この国教化のためにアルメニア教会は民族の中軸的存在として、1500年以上にわたって結束を強める役割を果たした」(吉祥寺村立雑学大学通信「アルメニアの文化と日本文化」より)。

●4世紀末、アルメニアは,ローマとゾロアスター教を強制するササン朝ペルシャ間に分割支配されることになります。この厳しい時代に人々の心の支えになったのが、メスロプ・マシュトツが創始したアルメニア文字でした。聖書のアルメニア語訳もなされ,文学が興隆し,教会建築もその基礎様式を固めるなど,5〜6世紀は文学と建築が花開いた時期だったといいます。

●その後、7世紀にアラブの支配下に入りましたが、9世紀半ばにバグラット王朝(885-1045年)が興り,国際交易における重要な位置を回復。ヴァン湖周辺をはじめとして多くの都市が勃興し,アルメニアは教会建築上の絶頂期、そして中世の一大繁栄期を迎えました。「千と一の教会がある都市」と言われたアニ(遺跡自体の記事はこちらアニ建築細部デザインの記事はこちら)もその頃に栄えた都市です。アニの教会建築は,アルメニア建築の最良の典型様式の代表と言えるのだそうです。

e0063212_22373740.gif●そして同じ頃、現在のトルコのヴァン湖に浮かぶアクダマール島に、「聖なる十字架の教会」が建てられました(921年)。


●赤茶色の石造りの教会はドームを持ち、外壁には旧約聖書に登場するアダムとイヴ、ダヴィデとゴリアーテの物語や装飾的な十字架、さらに植物、動物、鳥などのレリーフが施されています。簡素ながら豊かな味わいがあり、イスラム美術ファンの私もすっと引き込まれる魅力があります。
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●という感じで、その後のアルメニアの歴史と建築を書いていこうと思いましたが、ちょっと調べた範囲でも膨大で、とても一度に書けません。最後にユーラシア学の泰斗・加藤九祚さんの言葉を紹介して、次回に続けたいと思います。「アルメニアを旅行して、人々は全体として建築、それも石造建築の天分にめぐまれているように見受けられた。石材が豊かであることも大きな要因であろうが、それを立体的、美的に構成する能力はまた別ではなかろうか」。

*写真はいずれも、アクダマール島「聖なる十字架の教会」
by orientlibrary | 2006-05-04 22:51 | 中東/西アジア

ラスター彩タイルの縁に書かれた銘文 

12〜14世紀頃、タイルの華は、やはりラスター彩でしょう。ラスター彩タイルは、9世紀にはすでにイラク、とくにバグダッドやサーマッラーで用いられていましたが、その後エジプトや北アフリカ、スペイン、イランなどに広まりました。12世紀頃にイランに登場したラスター彩は、陶都カーシャーンなどで製作され中近東にも輸出されたそうです。

ラスター彩タイルは、上絵付け(釉薬を施して一度焼成しその上にエナメルやその他の絵の具で図柄を描く)で着彩され、低温度還元焔で焼成されます。還元状態のなかで釉薬中のある種の金属の酸化物が金属の形で表面にとどまり、金属的光沢を持つラスター彩が生み出されるのです。

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(13世紀カーシャーンのラスター彩星形壁面タイル(415×1060)/『イスラームのタイル』(INAX)より引用)

ラスター彩タイルは、ミヒラーブなどモスクの中でも重要な場所の装飾に使われ、華麗な空間を演出しました。星形と十字形、六角形などを組み合わせて、壁面を埋め、星形の周縁部にはアラビア語やペルシア語の銘文(クルアーンや預言者のハディースなど)を含む枠が施されることもありました。

でも、直径20数センチのタイルの縁に書かれたアラビア語のカリグラフィーは、模様にしか見えません。内容や意味を知ることもできないだろうと思っていました。そこに現れたのが、書籍『夢の花園』。あったんですよ〜、日本語訳が!

*『夢の花園』の写真はモノクロで見にくいため、『イスラームのタイル』(INAX)から同種のタイルをイメージ的に掲載します。ゆえに銘文の内容は写真のものとは異なります。訳文は『夢の花園』より引用。

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(13世紀カーシャーンのラスター彩星形壁面タイル(205×210×14)/『イスラームのタイル』(INAX)より引用)

銘文の例であげるのは『夢の花園』に紹介されているゴムのアリー・エブネ・ジャイフルのイマームザーデ廟の柱脚の一部を飾っていたタイル(カーシャーン、14世紀)のもの。複数のタイルに連続するかたちでフェルドウスイーの「王の書」、「ロスタムとソフラープ」の物語からの数行がナスフ体で書かれているそうです。

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「思考がその上に出ることのない叡智あり、生ける神の御名において。
神名を持ち、高みにいます神。日々の糧を与え、導き下さる神。
神は人間の持つ言葉や賞賛や思惟を超越しており、気高い本質を持つ創造主である。
目で創造主を見ることは出来ない。無駄な努力をして両目に負担をかけるな。
現世と来世いずれも世界でも幸運は神の恵み。
正常な知性を持たない者は、あたかも足かせを嵌められているようなもの。
知識は力であり、知識によって老いた心は若返る。
あるだけ食べてしまえ。明日のために残すな。明日になれば明日の風が吹こう。
人間の思考は神に到達する道を見いだすことはない。
というのは、人間の言葉を超えており、陣地の及ばないところにいるから。
土星の運行を司り、天空を回転させる者。月、金星、太陽を輝かせる者。」
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ミヒラーブを飾る小さなタイルの縁にこんなにたくさんのことが書かれているとは・・・!至高の神への求心力の強さに圧倒されます。そしてその内容、深淵でありつつ、合理的、現実的な印象を受けます。なんというか、、あいまいなところがないと思いませんか!?強いです。

さらに銘文の最後に製作年や陶工名、画工名、製作地が書かれているそうです。例えば、「738年第2ラビーウ月10日(1337年11月5日)、カーシャーン在、セイエドッサーデ・ロクノッヂーン・モハンマドの工房にて、絵師ジャマール作」など。タイル職人の誇りが垣間見られます。
by orientlibrary | 2006-05-02 02:39 | 至高の美イランのタイル