イスラムアート紀行

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「千の教会がある街」と呼ばれた都、国境の緊張をはらむ「アニ遺跡」

海に囲まれた日本で生まれ育った私にとって、「国境」がはらむ緊張感や独特の空気は、いつまでたってもピンとこないものです。トルコ東部にある「アニ遺跡」は、川をはさんで隣国アルメニアにまたがっています。そのことが強い緊張を生み、数年前までは写真撮影も禁止されていました。私が訪れたのは2004年5月ですが、なぜかその際、突然撮影が許可されたのです。けれども、その後も禁止されることもあったようです。

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観光客が写真を撮ることが、なぜそんなにいけないのか、、空港や軍事施設ではないガランとした遺跡ですよ。野原と朽ちた教会と草と青空があるだけなのに。聞いた話によると、「アルメニアは川のそばで石切工事をしている。観光客が写真を撮ると軍事機密が漏れる可能性がある」、、、石切と軍事って、どんな関係が??((↓)手前がトルコ側、向こうがアルメニア側。茶色のあたりが石切り場?)

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とにもかくにも、国境というのは、そのくらい緊張に満ちたところなんだと思いました。とくにトルコとアルメニアとは実質的に国交がない状態が続いているといいますから、>軍事機密等を「妄想」と笑うのは傲慢なのかもしれません。

紀元前以来、アルメニア王国には、ローマ、アラブ、トルコ、モンゴルなど、西から東から強力な民族が次々に侵攻。1045年にはビザンチン王国に譲渡されますが、ビザンチンはアニをセルジュクに譲ります。12世紀後半にはグルジア人が町を占領。13世紀には交易の要衝として、またシルクロードの中継地点としても栄えたそうです。

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アニ遺跡は10世紀後半、アルメニア王国の都だった都市です。アルメニア教会の総主教庁が置かれて宗教的中心地となり、千を越す教会があったと言われています。しかし今は、ただ荒涼とした廃墟です。緑濃い草が生い茂る中、崩れ落ちたアルメニア様式の教会などが点在します。修復されることもないこれらの建物は、もう自然に同化しているようにも見えます。しかし、ディテールの細工などは見事で、往事の繁栄や技術の高さが伝わってきます。

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この写真(↑)は、ミナレット内部の崩れ落ちた真っ暗な階段を必死でよじのぼって上から撮ったもの。広い!この遺跡は広いです。そして道や建物の痕跡。千年前に人々が往来し会話を交わしていたメインストリート。でも、、、なぜかしみじみ、というより、茫漠と言えるほどの広さのせいか、妙にあっけらかんとした印象です。国境の遺跡は、現実の緊張感をよそに、ひたすら「夢の跡」として存在しているように思えました。
by orientlibrary | 2006-03-29 01:06 | 中東/西アジア

ジーエルケバブ@ディヤルバクル&東トルコの壮大で濃い時空間

トルコ東南部の都市・ディヤルバクルにお住まいのyokocanさんの「ジーエル・ケバブ」を拝見したところ、なんか見覚えのあるケバブでは?ということで、またまた臓物に戻ってきました。

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ディヤルバクルには「ジーエルジ=臓物食堂」というものがあるそうです。ジーエル・ケバブというレバーのケバブの写真が紹介されていました。

それってこれでは?長い串にさした焼き鳥状のものを持って満足そうなおじさん二人。@ディヤルバクルのバザール。薄〜いナンみたいなものに挟んで食べるのが地元流とか。おじさんたち、たしかにそんな様子です。写真の正体がわかってうれし〜♪

東トルコ旅行では、黒海沿岸からアナトリアの遺跡や街々を巡りました。東トルコは、ローマ、ビザンチン、オスマントルコを縦糸として、ペルシア、アラブ、モンゴル等が絡む入り組んだ歴史があります。ユーラシア大陸を舞台に繰り広げられた民族の興亡の歴史が凝縮しているようで、島国日本からの旅行者を圧倒します。

景観もまた多彩。車窓の光景はまるで地球のショーのように劇的に変わります。緑の絨毯のような大草原、雪をまとった連山、荒涼とした岩山、地球の割れ目を思わせる深い亀裂、断崖絶壁の峡谷、5千m超の峰々。まさに自然の造形のショーケース。

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女性も、華やかなスカーフの中央アジアの女性、黒一色のアラブの女性、ジーンズ姿でヨーロッパ顔の女性など地域でがらりと変わりました。は焼きたてパンを持つ女性、早朝のエルズルムで。

建物もさまざま。二階部分が張り出した典型的なトルコ民家、日干し煉瓦の家、石作りの家、ロシア風の家、遊牧民のテント等、見ていて飽きることがありません。

歴史的な遺産として有名なのは、山頂に紀元前の陵墓の跡があるネムルート山、深山幽谷の崖をくり抜いて作られたスメラ僧院、アルメニア王国の首都だったアニ遺跡など。また蟻塚のような形の日干し煉瓦の家が並ぶハランは、旧約聖書にも出てくる村。ノアの方舟伝説で有名な5千mを越えるアララット山は富士山に似た美山です。

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私が最も心惹かれたのはアニ遺跡。10世紀、アルメニア王国の首都だった大都市ですが、今はただ荒涼とした廃墟です。そのあっけらかんと朽ちた風情に惹かれました。長くなるので次回激写!?写真とともにご紹介したいと思います。
by orientlibrary | 2006-03-27 23:48 | 中東/西アジア

アーモンド、ジャカランダ、辛夷・・・春の花の旅

世界一の長寿国日本、ご長寿の方々が元気です。最近、文芸誌などで「長寿俳句、短歌」といった特集も見られます。90歳代、100歳代の方々の作品。みずみずしい感受性で、おおらかに詠み上げます。私の好きな作品をいくつかご紹介します。

   ・ 雨降ればこぞりて自己を主張する庭石よ雨の降るはよろしき(93歳)
   ・ 樹は音に草は姿に春めけり(102歳)
   ・ カーナビにいざなわれゆく恵方かな(94歳)
   ・ 初蝶を前にうしろに嬉しき日(95歳)

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専門家ではない普通の人たちが、周囲の自然や暮らしを言葉にする、それを楽しむ、皆で味わう。定型文芸に対してはきびしい意見もありますが、定型だから文学を専門としない普通の人にも作りやすいのです。

いいことじゃないですか!?私は俳句などの文芸は、日本が誇れるもの、「日本のいいもの」だと思います。花の季節でもありますし、ご長寿文芸の背景として、花の写真をいくつか。

モロッコの2月、“アーモンド”の花が満開でした。一瞬桜かと思うような一面の白の花世界。カスバなどの土色の景色を、淡く彩っていました。

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オーストラリアや南アフリカが有名な “ジャカランダ” 。紫の桜とも言われるそうです。原産地が南アメリカであり、暖かいところが多いのかと思っていましたが、4月のインド北部ヒマーチャル・プラディーシュ州の山間部でも、よく見かけました。「山桜」のような風情。凛とした美しさがありました。

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木の花が好き。白い花が好き。だから“コブシ”や”白木蓮“が好きです。コブシの深い白色とポワンとした質感に惹かれます。韓国李朝の白磁を連想します。とくに日本民芸館(東京・駒場)にあるコブシは、この季節になると一度は見に行きたくなります。今年の民芸館のコブシです。&普通の人の春の感じ。恥ずかしながら、、。

・ 菜の花にそよげる風は海を越え南の国から旅をした息
・ 辛夷咲く李朝白磁の肌の宵  
・ 街ひとつ物語めく朧かな
・ 詩のように聞く異国語や木の芽時  
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by orientlibrary | 2006-03-25 01:34 | 日本のいいもの・光景

蒼いタイルの街ムルタン 「鳥占い」と「バザールごはん」

「写真でイスラーム」のmiriyunさんがイラン・シラーズの小鳥を使った占いについて書いていらっしゃったのを見て、私もどこかで見たことあるなあとアルバムをチェック。パキスタンのムルタンでした。

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写真を見比べてみると、イランの鳥占い(=これ何ていうもの??)は、鳥がカゴの中にいてカードをくちばしでくわえています。これに対してムルタンのものは、鳥(インコ?)がカゴの外にいて、並べたカードを選んでいました。たしかこのとき、私も占ってもらったのですが、詳細はおぼえていません。

この鳥占い、どのあたりに分布しているものなんでしょう。イランからパキスタン。インドは?中東は?こんなときには何でも調べられるインターネットが便利。さっそく「鳥占い」で検索してみました。出てきたのは、全然関係ない動物占いの鳥バージョンばっかりで残念でした。

美しい青のタイルで飾られた聖者廟のある街ムルタン、「ムルタンは食べ物が美味しい」とパキスタンのガイドさんは楽しみにしていました。

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一人旅転じて4人の女性旅となった極暑のパキスタン。好奇心全開系4人、「え、ムルタンて、ごはん美味しいんだあ」。夜ごはんも「外の方がいい!」と喜んで街へ繰り出しました。着いたのはバザールの一角。・・・濃いです。あたり一面、内臓また内臓でした。ディスプレイは華やか(?)で色彩も考えられているんですが、、。

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ライブな鶏さんなども、たくさんいました。で、屋台のメニューはこんな感じ。5月にチョリスターン砂漠に行くような面々も、暑さもあってさすがに食が進まず。

それでも、ホテルのご飯より外がいい!全然食べられなくても、街の雰囲気を味わう方が私はいい!。旅行社さん、もっと自由を!個人旅行とツアーの間くらいのものって、ないのかな〜。
by orientlibrary | 2006-03-21 22:37 | インド/パキスタン

大人になる速度・・・戦国時代、草原、アフガニスタン

時代や地域が違えば、平均寿命も自立年齢も違ってきます。堺屋太一さんが年齢観について面白い考えを書いています。常々、現代の読者が歴史を実感できるような年齢換算が必要と考えていた堺屋さん、16世紀後半の日本戦国時代について、次のような換算をするようになったそうです。「当時の年齢を1.2倍して3を足したぐらいが、現代の私たちの年齢観にふさわしい」。

たとえば、織田信長は49歳で死去しましたが、堺屋流で換算すると62歳。長寿国日本の現在の49歳で考えると若すぎてピンときませんが、62歳ならば「現役社長バリバリの年齢での無念の死」と実感がわいてきます。

またチンギス・ハンが生きた12世紀の草原を今の日本に置き換えると「当時の年齢×1.25+5」。たとえば15歳のテムジンは24歳ちょっとで、海外留学から帰ってきたくらい、とのこと。何回か前に書いた13歳の少年の早熟についても「ああ、20歳過ぎか」と考える方が、「中学1年生がそんなこと言うの!?」と驚いているより近いかも!?

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歴史をさかのぼらなくても、現代でもところ違えば、平均寿命が50歳代の国も、子供たちがチンギス・ハン並みに大人びている国もあります。以前、「アフガニスタン、明日へつなぐアーティストたち」という展覧会を見たことがあります(国際交流基金、2003年)。そして、その絵画の“成熟度”に息をのみました。

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絵を描いたのは、アフガニスタンの路上で働く10代の少年少女(2002年当時、以下同様)。彼らは靴磨きをしたり鉄くずを拾い集めて駄賃を稼いでいました。当時のカブールでは6万人もの子供たちが、こうして働いていたそうです。


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そんな彼らに読み書きなどを教えるNGO「アシアナ」は、絵画や工芸などの職業訓練もおこなっていました。

街角や大自然、文化遺産など、テーマは様々ですが、構成、観察力、表現力など、とても10代なかばの子供たちの作品とは思えない。描く環境も描く道具も、ぞんぶんに豊かとは言えないでしょう。にもかかわらず、“老成”とも言えるような作品世界。驚きました。

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アフガニスタンの人たちは、もともとの美的センスがいいんだ!と感心しましたが、反面、子供たちがこれまでに見てきたものの濃さ、深さに思いが及び、すこし重い気持ちになりました。

ある16歳の少年は、習得した技術を生かして夜は看板職人として働いているそうです。16歳にして収入に結びつく技術を持てるのはえらい!!と思うと同時に、16歳・・のびのびと好きなものも描きたいのでは?などと、ぬるま湯日本の発想をしてしまいました、、。

*写真はすべて、「アフガニスタン、明日へつなぐアーティストたち」(国際交流基金)パンフレットより引用させていただきました(作者が作品を持つ写真3枚は、内藤たけしさん撮影です)。
by orientlibrary | 2006-03-18 22:04 | ウイグル/アフガン

ソルタニエ 土の建築なかの一点の木の美

土の建築の国イラン、メソポタミアからのその建築伝統を継承し、数多くの建造物が作られたのはモンゴル系の王朝イル・ハーン朝(1256〜1336)の時代です。なかでもオルジャイトの治世は、王朝の黄金時代でした。

墓廟「ソルタニエ・ドーム」(1307〜13)は八角形の広壮な建物です。そして現存するイル・ハーン朝のモニュメントの中で最も美しいものと言われています。直径25.5メートルもの大ドームは、「フィレンツエのブルネルスキの偉大な仕事を先取りするもの」と言われるほどです。

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タイルについて言えば、現在、目にすることのできるタイルワークはわずかです。けれども、ファサードのアーチ上部(↑)や内部壁面にしっかりと残るタイルの、コバルトブルーとトルコブルーの「青」の美しさ、シンプルながら自由で力強いデザインは、古雅の香りに満ちてタイルファンを魅了します。(内部のタイルワークは次の機会にご紹介します)

ソルタニエの装飾の素晴らしさは、<装飾的なレンガ積み>と<浮き彫りを施した埋め木>にも見られます。イランで「ハザールバーフ」(千の交織)として知られる装飾的なレンガ積み、なかでも地模様積みは明暗の効果を生み出します。土の建築ならではの美の表現でしょう。

地模様積みには、セルジューク朝時代には漆喰の継ぎ材が用いられるようになりました。そしてさらに、豊かな装飾が好まれたため、これらの漆喰の継ぎ材にも浮き彫りが施されるようになりました。この継ぎ材の装飾化は、その後ますます進化!レンガとレンガの間に浮き彫りを施した埋め木が嵌め込まれるようになります。これがソルタニエの壁面にあるのです。

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現地で見たときも、帰って写真を現像してからも、ずっとこれは漆喰の装飾と思っていました。ところが、以前ご紹介したすごい本『ペルシアの伝統技術』に、なんとこれが「煉瓦と煉瓦の間に嵌め込まれた浮き彫りが施された埋め木」として紹介されていてびっくりしました。

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そして最終的には、豊かな浮き彫りが全面に施された漆喰の壁↑が用いられるようになったそうです。「この技法はソルタニエのオルジャイト廟のドームやヴォールトの建築において頂点に達した」と前述の本にあります。すごいぞ!ソルタニエ!!
by orientlibrary | 2006-03-15 23:21 | 至高の美イランのタイル

食(だけ)はユーラシアを駈ける!今日この頃

ゴビの馬頭琴弾きネルグイさんのライブ&宴会@「大蒙古」(亀戸)。5回目の来日というネルグイさん。小学校などを中心に4月中旬まで2ヶ月間、日本各地をツアーしています。専門教育を受けずに習得した独自の奏法は聴くものを魅了します。


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ネルグイという名前はモンゴル語で「名前がない」という意味だそうです。

●モンゴルではあまりいい名前だと悪霊などにねたまれるので、という説明だった気が・・(この時点で牛乳酒が入っていたのでうろ覚え、、)。姓名判断などを駆使して良い名前を考える日本とはずいぶん違いますが、子を思う気持ちは同じ。


e0063212_22531560.gif●同行したKさんが感心していたのは「名前がないという名前」と、「世界中どこでも、おじさんは若い子が好き」ということ。「みんな同じなんだと思った」と、深く深く納得していました。

●デール(民族衣装)も、集まった皆さん大喜びで試着していました。共通点と違いを発見し認める、多様性の受容・・・。どんな小さなところからでもいいと思う。生の体験は大事だと思います。宴会は牛乳酒や茹で羊肉など



e0063212_22533510.gif能登の冬の味覚、蟹、牡蠣、鱈など。高級なのは蟹ですが、実際のところ甘みと旨みのある鱈が絶品。鍋でいただきます。少しレアめが最高。おすすめです。その他、海藻系のもので珍味いろいろ。

●牡蠣と蟹は炭火で焼いて。蟹はもちろん蟹味噌に日本酒を入れてあっためて。日本だなあ・・


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●ある集まり@イラン大使館。ランチを兼ねて。メニューは、サラダ、焼きトマト、ケバブ、サフランライス、豆の煮込み、フルーツ、バラの花びら入りヨーグルト、紅茶

●大使公邸のシェフの味つけは、どれも品がよく美味。もちろんノンアルコール。私は「イランクイズ」で高得点となり、更紗のテーブルクロスとブレスレットをゲット!



e0063212_2255423.gif●今年は梅が遅くて桜が早いとか。まだ蕾の梅を見た後の蕎麦。手打ちの二八。JAPANです。体調万全でなくノンアルコール。季節の変わり目だからか、どうも今日はいけません、、。まとまらない記事で失礼!
by orientlibrary | 2006-03-12 23:24 | 中央ユーラシア暮らしと工芸

タンジェリン・ドリームの衝撃と東アジアの国際情勢?!

今回はまったくイスラムアートと関連のない記事です。イスラムアートを見に遊びに来てくださったかた、今回はこんな感じです。ごめんなさい〜!でも、ある種、アートです。日本のアートです。多分、そう言えます。題して “タンジェリン・トライアングル 透明な夢の果てに” 。
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このかたが作者。アーティスト?あれ??海辺?これって、もしかして、干してる??何を、、おおっ!これはマニア好みの<クチコ>では!?

e0063212_2247025.gifナマコは口から産卵するので、その卵巣は「クチコ」と呼ばれます。北大路魯山人が「酒に適する、また、美食家の気に入る美味いものの酒一品はくちこの生であろう」と記した<生クチコ>=ナマコの卵巣を薄い塩につけたもの。

そして、写真のようにして細い卵巣を三角形に形作って干したものが<ヒグチコ>。カラスミ、ウニとともに日本3大珍味のひとつ、幻の酒の肴です。卵巣はナマコ10キロから100グラムしか取れない貴重品。写真のもので1枚5千円ほどとのこと。2〜3月がシーズン。かるく火にあぶって食べます。

かの『美味しんぼ ナマコの真髄』にも登場。その描写がすごいので、少し引用させていただきます。

「コノワタは塩辛だから柔らかい。クチコはちょっと固そうだけど、口の中に入れておくと柔らかくなって食べやすい」という山岡。「私が求めているのはナマコの酢の物がもつ鮮烈で目のさめる風味なんだ」とがっかりする二木の祖父。そこで山岡はナマコの卵巣をすすめます。食した仁木、「ウニの濃厚さとナマコ独自の強烈で鮮やかな風味が相まって鮮烈」「これは海の幸の最高峰の一つだ」等々、大絶賛!「複雑玄妙で高貴な味」と表現しています。

e0063212_22481474.gifそんなナマコさん、元の元気なお姿。苦手なかたが多いと思いますので小さく掲載(クリックで大。苦手なかたは見ない方がいいですよ)。

私も少し、いただいてみました。うん、自然な塩味ながら深みのある味。微妙な味わいを大事にする日本人ならではの珍味ではないでしょうか。ところが、、そんなナマコが、これからは日本人の口に入りにくくなるという噂が。なぜって、チャイナ。そう、中国の方々が日本のナマコに注目し始めたというのです。

ナマコで有名な能登半島には中国の企業が進出。工場をつくり生産されるのは<干しナマコ>。かの国では、不老長寿の薬的に珍重されていて、経済発展で潤うなか、飲食店のテーブルにのぼることも増えてきたようなのです。中国では、この干しナマコは甘辛く煮て、切らずにそのまま提供すると聞きました。迫力です。中国の経済発展が、世界の食事情をジワジワと変えていくのでしょうか?

e0063212_22491589.gif干すと元の3%にまで小さくなるそう。そんな干しナマコさんのお姿。苦手なかたも多いと思いますので、またまた小さく掲載(クリックで大。苦手なかたは見ない方がいいですよ)。

写真は、奥能登にあるクチコ製造の商店にて。嵐山光三郎のエッセイにも載った名物店。ナマコに雰囲気の似たアートなお父さん、素朴であったかいお母さん二人のお店。お茶から酒まで出してくれる人情が嬉しい。複雑な味わい、伝統の製造方法、アートな形、仕事への誇りと人情、ということで、日本の手仕事・いいもののカテゴリーに入れたいと思います。
by orientlibrary | 2006-03-09 23:21 | 日本のいいもの・光景

紀元前13世紀の施釉レンガ、チョガ・ザンビル

カフェトライブさんの「ハムセ(khamuse)連合『楽園の絨毯』」で、「エラム文化」の魅力あふれる絨毯が紹介されていました。想いは1月に旅行したイラン・アフワーズに飛びます。古代イラン世界、紀元前13世紀頃、エラム王国の時代にエラム人が建設した神殿都市チョガ・ザンビル。

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その中心となるジッグラトは、内側が日干しレンガで、外側は焼成レンガでできています。石を積み上げるエジプトとは対照的な粘土文化の地、メソポタミアらしい土の建築の白眉です。

インド・ヨーロッパ語族の一派であるイラン人が、現在のイランと呼ばれる地域に登場するのは紀元前2千年紀以降のことですが、その前にイラン高原に勢力を持っていたのがエラム人です。エラム人は、イランの南西部、スシアナ高原にあるスーサ(シューシュ)を拠点としていました。スシアナ高原は鉱物資源やザクロス山脈からの水資源を利用した大規模な灌漑農耕により古くから繁栄していたそうです。

ジッグラトは、基壇を高く作った上に至高の神に捧げる建物を置いた古代メソポタミア特有の宗教施設。もともと「高きこと」を意味するアッカド語に由来し、その神聖さと高さから「聖なる塔」と訳されることもあるといいます。メソポタミアの各地で発達し、紀元前2000年頃には一定の様式が確立し、整った建築美を誇るようになりました。

そのなかでも、エラム人が作ったチョガ・ザンビルのジッグラトは、バビロニアやアッシリアなどのどの遺跡をもしのぐ規模を誇ります。すごいです!
チョガ・ザンビル遺跡は1935年にフランス隊が発掘し、保存の方法を工夫することで、発掘時の姿をとどめているそうです。そうしないと、日干しレンガも泥の山になってしまいますよね!

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また、復元部分をそれとわかるようにしているのもうれしい。新しいものと古いものを分けて見たいですから、、。日干しレンガがむきだしになる遺構の上面には、刻んだ麦藁を混ぜた泥を塗って守っていました。そんな努力もあって、遺跡は風雨の中でも形状をよくとどめ、1979年には世界遺産になりました。

蒼穹の空にそびえ立つ神殿にも圧倒されましたが、やはり土族にはレンガの質感が魅力です。そしてワクワクして見学していたとき、見たのです!!レンガの一部に残った釉薬を!今もくっきりとした発色を保つ蒼、緑。小さな面積にもかかわらず、そこから輝く神殿を想像させるような存在感を持った釉薬を・・・

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古代イラン世界の施釉レンガとの感激の対面でした。どうしてこの施釉レンガがもっと大々的に、タイル界にデビューしないのか不思議です。けれども、「イラン高原の建築装飾 紀元前1千年紀からサーサーン朝ペルシア時代」(山内和也・『砂漠にもえたつ色彩 中近東5000年のタイルデザイン』)では、釘頭状の施釉レンガについてきちんと紹介されていました。

「その壁面は釘頭状の突起がある方形の施釉レンガで装飾されていた。青緑色の色彩や特異な形状は焼成レンガの平板な壁に豊かな彩りや変化を加えていたことであろう。こうした施釉技術や建築装飾意匠はエラム新王国そして新バビロニア王国(バビロンのイシュタール門)に受け継がれ、アケメネス朝の時代に再び花開くことになる」

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多くの歴史ファンや美術ファンを魅了してやまないイシュタール門の堂々たる青の施釉レンガ。日干しレンガのジッグラトで名高い世界遺産チョガ・ザンビルでは、イシュタール門の原点ともいうべき施釉レンガとも出会うことができます。土族必見!タイルファン感激!

e0063212_165291.gif上記の記事については、わかる範囲で調べましたが、施釉レンガのあたり、まだ自分でスッキリしていません。資料が少ないなか、遺跡現場で購入したDVD、「タイルのことも説明している」ということで、期待&楽しみにしていましたが・・・イランらしく幻想的で美しい仕上がり。音声=ガアガア割れてほとんど聞こえない・・・結局よくわからないまま。

*次の資料を参考にしました。 ◇「イラン高原の建築装飾 紀元前1千年紀からサーサーン朝ペルシア時代」(山内和也)(『砂漠にもえたつ色彩 中近東5000年のタイルデザイン』展覧会カタログ・岡山市立オリエント美術館・2001) ◇「チョガー・ザンビール遺跡保存をめぐる国際協力」(岡田保良)(『季刊文化遺産 古代イラン世界』) ◇「古代オリエント建築の壁面装飾 タイル誕生前史」(岡田保良)(『タイルの源流を探って オリエントのやきもの』・INAX)
by orientlibrary | 2006-03-07 00:53 | 至高の美イランのタイル

ハッサン・13歳 「呼ばれんでも行きとうなる人におなりなはれ」

●最近、新聞からのネタが多くなってますが、なんか気になるものが多くて、というか、ブログを始めてから、いろんなものを意識して見るようになった感じです。最近気になっているのは、日経の連載小説『世界を創った男 チンギス・ハン』。著者は堺屋太一さん。才能ある人は、いろんな能力がありますね。
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●私は歴史に興味があるわりには「歴史もの」というのが苦手なんですが、この小説は最初から面白く読んでます。この何日かは、西の方からの人々の話になってきて、ホラズムやウイグル好きの私には、たまりませ〜ん!

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現在、チンギス・ハンは13、14歳くらい。まだテムジンという名前です。お母さんの故郷の部族長の家に預けられ、というか、族長の娘と結婚して(早い!)滞在しているところです。


●そこに西のホラズムから隊商がやってきて湖畔で商売開始。テムジンはタタル人の大男相手にタフな商売をしている12、13歳の少年と出会い、互いに駆け引きに熱中します。

●テムジンが集めてきたなめし皮や毛糸を見て「南のキタイ本国やウイグルの都会へ持っていったら並のものですよってに」。よってに?

●で、交渉が終わったあと、少年が言ったことば、「お宅、この辺の人としてはなかなかですな」。お宅?ですな?・・・さらに自己紹介して、「私は、この隊商を率いるモハメド・アリの養子でハッサンでんね」。でんね?

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●ホラズムは関西弁?・・ま、モンゴルより西ですけどね。でも、さすが関西出身の堺屋さん、濃い関西弁使ってます。

●テムジンはこの少年の才覚に感心して言います。「将来、モンゴルのテムジンが呼んだら来てくれ」。

●少年「呼ばれんでも行きとうなるような人におなりなはれ」

●13歳、エライぞ〜!この少年ハッサン(阿三)は、これ以降45年間チンギス・ハンと親交を持つようになる重要人物のようです。




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●今度は厳しい寒さのなか、旅芸人がやってきます。よくたどり着けたなと言われて、「私もそない思います」。出た!また関西弁。

●「生きて来れたのは御仏のお導き。泊めて頂けるのは族長様のお情けや」・・・ウイグル族の仏教徒だそうです。西はみんな関西弁!?

ここに日本人が登場したら、何弁で表現されるのかな?東だから、東北弁?いや千葉あたり?、、なんて考えて面白い。

ユーラシアの大草原、いろんな民族や宗教や職業の人が行き来していて、そこから実践で学ぶ子供たち。13歳って中1ですよ。

●テムジンがこれからどんなふうにユーラシアの覇者となり、「世界を創った男」になっていくのか、ちょっと楽しみ。やっぱり新聞小説はこういう方がいい。(渡辺淳一さんの終了した通称『アイルケ』、、朝の日経にはちょっとなあ、、、どういう基準で決めてるの?!)

●今日は、マイフォトより写真を劇風に配してみました。出演はモンゴルの少年、ホラズムの少年、ウイグルのおじさん、です。上の絵はモンゴルで買ったカードの絵。
by orientlibrary | 2006-03-03 02:18 | モンゴル