イスラムアート紀行

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移動する家、1時間でできる住宅・・・天幕LOVE!

日差しに弱い、乾燥に弱い、肉・脂系食物に弱い。なのに、どうして乾燥地帯、西南アジア、イスラム圏にどっぷり惹かれてしまったんでしょう?? パキスタンのチョリスターン砂漠では、肌がボロボロに。さらにその後、百円玉大のシミにが頬にポッカリ浮かび上がってきたときには、思わず叫びました。・

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そんなにしてまでどうして?ほんとどうしてでしょう。きれいな落ち着いたところが世界にはたくさんあるのに。そんな私の前世からの遺伝子が引き寄せられるのは、タイルやレンガなどの土の建築文化、土色に映える華やかな民族衣装や部族の模様が魅力的なキリム。そしてもうひとつ、興味津々なのが天幕、テントなんです。

マハラジャや王様や族長など、最高権力者だって天幕で暮らすのですから、天幕自体が発達しますよね。インドのムガルテイストのテントは、インテリアがブロックプリントの布で華麗です。移動する住居は、みな凛として美しい!

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そしてモンゴルのゲル。モンゴルの遊牧民一家の生活を描いたド映画『天上の草原のナンサ』でも、次の放牧地に移動するためにゲルを解体していましたが、その手早いこと。ゲルの大きさや人数にもよりますが、解体は約30分、組み立ては1時間ほどでできるそうです。きびしい寒さ暑さにも快適な家が、なんと1時間でできる。ローンの支払いに一生かかる日本とは天と地の違いです。

そのゲルが、どうやって今の形になったか。「半地下式竪穴住居(右)や円錐天幕式住居(左)から、移動式のゲル(下)に発展した過程」を描いた図がありました。

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なるほど。でもさらに、解体して組み立てる可動式になるまでには、長い年月を要したみたいです。その間、どうやって移動していたの??車の上に住居を載せて移動したそうです。元祖トレーラーハウス?エンジンは馬ですけどね。

最近は日本でも、ゲルを室内に配したレストランなどが、円形の空間で親密な雰囲気を楽しめると人気になっています。

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天幕の中のインテリア、意味、機能、モノなど、ノマドの暮らしや考え方についても、これから少しスタディしていくつもりです。天幕、軽やかで潔く、見るほどに深い世界。みなさん、テントはお好きですか?

*写真は、(上)インドのテント・ホテル、ムガル柄のブロックプリントが壁面を飾る。パンフレットより引用 (中)車輪がついた移動式ゲル。モンゴルのゲルキャンプにて。その昔、チンギス・ハーンなどが乗って草原を駆けめぐったという。迫力満点 (下)日本でもゲルが人気に。モンゴル料理店「チンギス・ハン」など(日経流通新聞060118より引用)
*図は、「移動式ゲルへの発展」(「遊牧建築から移動建築へ」より引用/『遊牧民の建築術 ゲルのコスモロジー』/INAX)
by orientlibrary | 2006-02-28 01:11 | 絨緞/天幕/布/衣装

「見る人は楽しむ」と名付けられたイラクの都、サーマッラー 

イラク・サーマッラーのシーア派聖地アスカリ廟が、2月22日爆破されました。その後のスンニ派とシーア派の間の衝突が報道されています。爆破前の黄金のドームの写真と爆破されたあとのがれきにようになった写真を見ました。一瞬にして廃墟になった廟・・・。サーマッラーについて少し調べました。

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(爆破される前のアスカリ廟と廃墟となった同廟/朝日新聞2月23日より引用)

「古代末、9世紀という時代に、サーマッラーはイランからチェニジアに至る広大な世界で、政治的・経済的・文化的に重要な位置を占めた 。宮廷の繁栄は豪奢を極めたという。当時の建造物の跡が今もティグリス川に沿って残る。(中略)都市遺跡の範囲はローマよりも広く、考古学研究上の重要さは他の追随を許さない。」「カリフ・ムスタムは新たな都市に、スーラマンラー(それを見る人は楽しむ)と名付けた」「その賑わいと美しさは旅行者等の絶賛した記録が示すところである」(佐々木達夫/「かりそめの都 サーマッラー/『季刊 文化遺産 華麗なイスラム美の世界』」

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(サーマッラーのカリフ・アル・ムタワキルの尖塔(『季刊 文化遺産 華麗なイスラム美の世界』より引用/財団法人島根県並河萬里写真財団))

「チグリス川、ユーフラテス川流域は有名なモスクや遺跡が数多くある地域です。まず、バグダード。ここにはサーマッラーのマルウィーヤ(螺旋)のミナレットがあります。この螺旋のミナレットはほんとうにすごい。まさに天へとどかんばかりです。これがれんがでできているわけですから驚きです。またそのとなりの大モスクは城壁だけが残っていますが、これまたれんが造りで、壁の厚さだけでも2メートルはあります。このとなりにグレート・モスク、アスカリ・モスクという黄金のモスクがあります。このモスクでは手で粘土をこねて修復していました」(山本正之・「イスラーム・タイル紀行」/『イスラームのタイル』/INAX)

タイルを愛し世界を訪ね歩いた山本正之さんの「手で粘土をこねて修復していました」に、グッときてしまいました。爆破されたアスカリ廟は米軍のサーマッラー攻撃時にも無事だったのだといいます。

「2004年、アメリカ軍は、バグダッドの北方60マイルにあるサマッラにおいて、イラク政府の要請のもとに作戦を展開すると発表した。(中略)人口25万人と推計されるサマッラ市への攻撃は、真夜中になって始まった。戦車と米軍機が市内を砲・爆撃し、住民は家のなかに身をひそめた。大きな爆発音と自動的な銃撃音が、散発的に午後にも続いた。家は潰され、車は焼かれた。シーア派教徒の聖地であるイマーム・アリ・アル・ハヂ廟とイマーム・ハッサン・アル・アスカリ廟の周囲から煙が立ちのぼり、心配された。だが、廟は損害を受けず、イラク軍特殊部隊がモスクを奪い、25人の武装勢力を捕獲したと第1歩兵師団の広報官オブライエン少佐が発表した」(イラク情勢ニュース/MSNBCニュース2004.10.01)

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(以前のサーマッラーの街 /『季刊 文化遺産 華麗なイスラム美の世界』より引用/財団法人島根県並河萬里写真財団))

イスラムタイルにとっても重要な地であり、ラスター彩が発掘され、中国の影響を受けた美しいイスラム陶器が生まれた土地、サーマッラー。チェニジアのカイラワーンモスクのミフラーブまわりのラスタータイルも、この地を統治していたイラクから運ばれたものと言われています。

「イスラーム建築最古のタイルは、イラクのサーマッラーから発掘された9世紀アッバース朝のもので、正方形や六角形の単色タイルと正方形や八角形のラスタータイルがある」(深見奈緒子/「イスラーム建築とタイル彩タイル」/『砂漠にもえたつ色彩 中近東5000年のタイルデザイン』)

米軍の攻撃にも無事だったのに、聖者廟を爆破するって、、。スンニ派とシーア派について書かれた本もかなりありますが、むつかしくて私にはどうもストンときませんでした。以前に一度ご紹介しましたが、ジャーナリスト田中宇さんのレポート(「イラク日記(5) シーア派の聖地」)が私にはもっとも興味深かったです(アスカリ廟とは別の廟ですが、聖地の雰囲気が伝わる写真も紹介されています)。ただ視点はかなりユニークなので、宗教等の専門の方にはご異論あるかもしれません。
by orientlibrary | 2006-02-25 01:30 | 中東/西アジア

ぷかぷか水タバコ、アラビックなひととき、ちょっとクラクラ

中東を中心にイスラム圏でよく見かけるのが水タバコ。カフェやレストランなどで髭をはやした男性たちがゆっくりと煙をくゆらせている、、、そんないかにもアラビックな嗜好品・水タバコが、どうやら世界的に流行中のよう。そして日本でも水タバコを楽しめる店が増えているというのです。水タバコの魅力から国内外のカフェ情報まで詳しく述べられたサイト同好会まであるようです。

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水タバコについては、まったく詳しくありませんが、あの器具はきれいだなと思います。で、写真を撮ったのですが↑(ヨルダンにて)、瞬間激写!のつもりが完璧なカメラ目線!・・・負けた、、、アラブの目線(メヂカラ)、恐るべし・・

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水タバコ専門店までできているとなると、行かないわけにはまいりませんでしょう!?以前、イランでちょっと体験したんですが、そのときは喉が痛くなって、良さもわからずじまいですから。で、まずは三軒茶屋の商店街の中にある「ロワゾー」というモロッコカフェ←に行ってみました。

商店街の中っていっても、ほんとにほんとに超庶民的な商店街の中なんですよね。でも、中に一歩入るとモロッコの雰囲気。ブルーを基調にした手作りの内装とタイルのテーブル、アラビックな照明器具、アラブ音楽、クスクスなどのモロッカンフード、そして水タバコ。

e0063212_21492810.gif水タバコは香りを楽しむもので、アップル、メロン、ピーチなどフルーツのフレーバーが多彩にあり、コーラ味やカプチーノは最近登場したものらしいです。ロワゾーでは、日本人に人気なのはミント、海外からの方々に人気なのは甘いフルーツ系だそうです。

私が今回試したのはグレープ味。タバコの葉に炭を乗せ、頃合いを見て吸ってみます。ブクブクと水の音がして水を通ってきた煙が上がってきます。最初はちょっときつい。でも確かに香りはいいですね。お店のお客さんからも「わあ、いい香り」との声が。ふむふむ、、、しばし水タバコタイムに。

e0063212_21494180.gif外の商店街は「日常」の極みのようなところ。それを見ながら水タバコを吸っていると、なんか不思議な気持ちがします。モロッコのインテリアは海外のカフェにいるよう。でも見えるのは日本の商店街。映画を見ているような、時を彷徨っているような・・うん?なんか、きますね。陶酔感みたいなもの。30分くらい持つみたいですが、私はやっぱり喉が痛くなるので、適当にやめました。

水タバコは、あくまでタバコ。でもタバコを吸わない人にもファンが多いといいます。それはタバコの煙を一度水にくぐらせることでニコチンやタールがほぼ除去されてマイルドになり、香りの煙を吸う感じになるからとか。「くらくらくる脱力感」があると専門のサイトにありましたが、幻覚ではないけれど、確かに何かくら〜っとするものはありました。香りだけでなく水のポコポコ音が心地よく、視覚も敏感になる感じで五感にくる。回し飲みしたりおしゃべりして過ごせば、いいリラクゼーションになりそうですね。

イスラム圏に行ったとき、水タバコを吸う人たちを見たときの印象が変わりそう。なんていっても嗜好品の代表ですもんね。その人たちの趣味嗜好を表すものだし。以前は何がいいんだろうと思っていましたが、こんなゆったりした時間を楽しんでいるんだな、と少しだけその魅力を垣間みた体験でした。

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お値段はロワゾーでは900円。この他、水タバコをサーブしている店は、東京や京都、大阪などにあるみたいですが、どの店も濃そう。いちばん有名な東京・谷中の「カリユン」は絨毯の上でくつろげるようです。下北沢の「シーシャ」は都内最安値の400円(ドリンク付き)だそう。こちらも商店街の中です。

ロワゾーにはオーナーが特注したタイルの壁掛け→があり、とても魅力的でした。アラビア語で「瞑想」という意味のカリグラフィーが書いてあるそうです。
by orientlibrary | 2006-02-21 22:33 | 中東/西アジア

日本男子はキレかわいい? アジアメンズ、粋で伊達なヒストリー

●日経の夕刊って、けっこう面白い記事が多いです。たとえば今日土曜日の3面は、「男もキレかわいい!?」が特集、連載の“世界街めぐり”はニューヨークの「空中ブランコ教室」、“さぶかるウオッチング”は「農系コミック」。どれも興味をひきます。ちょっと見てみませ〜ん?

「フリル付きブラウス・花柄デニム・・・ 男もキレかわいい!? 」 (以下要点)
・ 男性向け衣料品で「キレイ」「かわいい」商品が流行 
・ 男性用補正下着やアクセサリー、ジュエリー、制汗剤なども好調
・ 「職場でも皆カジュアル。今では服の買い物に喜び」(35歳・会社員)
・ 「ニットなどはピンクや黄色などから売り切れていく」
・「大ヒットした美脚パンツに続き上半身をスリムに見せる美軽シャツを発売」
・「フリルや刺繍のついたブラウス=デコレーションシャツが盛夏の主要アイテム」
・ 『LEON』などの雑誌などが “モテたい”男性の自己投資欲を刺激 

「空中ブランコ教室 倉庫街で恐怖感楽しむ」
・ アメリカで人気の「エクストリーム(極限の)スポーツ」のひとつ。2時間45ドル 
・ 「アドレナリンが大量に出るような体験」
・ 「空を飛んでいるような快感のとりこ。週に何回も来る」

「農系コミック  農業や農村の暮らしを描くコミック人気」 
・ 集落の暮らしや家庭料理がテーマの『リトル・フォレスト』
農家の嫁希望の『GREEN』、農大生学園生活『もやしもん』 


e0063212_2230887.gif●農系はなんとなくわかる気も。というのも、以前、「和」がブームになり始めた頃、若い層に和についての情報を何から得るか、という調査をしたことがあります。で、多かったのはなんと、、、TOKIOの『ダッシュ村』(自給自足的な生活をするドキュメント風の番組)だったんですよ、、、あれが若い子の和なのかとびっくりしたことがあります。


●で、メイン記事の「男性のキレイかわいい化」、どう思われますか?キレイファッションしたい(もうしてる)?イヤだ? 女性は歓迎?それともイヤ? また海外の国では若い男の子って、キレかわいいしてるんでしょうか??


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●私は過剰なファッション投資やブランド頼りというのは苦手だし、雑誌に出てくるままの”キレかわいい”やメンズ”モテ”服ってどうも、、、、、、、、(点、多すぎ!)ですが、男性が好きなもの、きれいなものを着るのは、本来すてきなことだと思います。日本の男性もあまり先入観にとらわれずに、ふだんに花柄などを着てもいいのでは、とずっと思っていました。


各地の部族の衣装などを見ても、男性の衣装って女性に負けず手が込んでいて色使いやデザインがオシャレ。日本の戦国武将の豪華な衣装だって、まさに“伊達”です。インドのマハラジャの衣装は繊細な花柄の透けるモスリン。トルコやイランのミニアチュールに描かれるスルタンなども優美な花柄の服をまとっています。


e0063212_22304329.gif●インドネシアのバティックなんかも自由で華があるし、もともとアジアの男性のファッション感覚って、ヨーロッパなどより繊細で粋なのでは(だったのでは?)。だから、きれいな柄、ぜったい似合いますよ〜!!


*写真 (上)優雅な透ける花柄の服を着て武器を持つムガル・インドのマハラジャ・ミニアチュール。服の色合わせが繊細!ジュエリーたくさん、頭の飾りも凝る。インド伊達?! (『Mughal India 〜Splendours of the Peacock Throne』/NEW HORIZONS)、(左)木版捺染(ブロックプリント)の花柄を着る男性。木綿の普段着でさりげないけど赤がよく似合ってます。拡大すると柄がもう少しわかります。地元サンガネールの伝統的な模様。サンガネールは、かつて上のようなマハラジャのためのブロックプリントの生産地でした。インド・ラジャスターンにて、(右)バティックが粋! これは王宮の模様。インドネシア・中部ジャワにて
by orientlibrary | 2006-02-18 23:13 | 中央ユーラシア暮らしと工芸

イラク現代演劇4本&トークで4時間 濃い〜・・・

ときはバレンタインデー、ところは新宿の小劇場。挫折中のアラビア語クラスの課外授業編でイラクの現代演劇を見てきました。イラクは古代メソポタミア文明の地。サーマッラー(アッバース朝の都城址)も見たいし、行きたい国のひとつですが、タイル・建築も含めてあまり知識なし。おまけに演劇自体に疎いので、まったく予備知識なし。そんな私の見たまま感じたままの観劇メモですが、イラクの演劇公演自体が稀少でもあり、思うこともあったので、書いてみることにしました。(以下、少し長いので適当に、お好みで?・・

e0063212_23223973.gif●劇場は満員。床に座る形式のため、一番前の席に座った私の目の前に役者さん。構成は、イラク人劇作家のドラマを日本人役者が読むドラマリーディング(朗読)3本、イラク人の構成・演出・出演によるパントマイム、イラクと日本の関係者によるシンポジウム

● “ゴドーを待ちながら”のイラク受容だという抽象的な作品、国境線での逃走劇を描いた作品は、内容が理解できないわりには、日本人の役者さんたちの熱演のせいで最後まで目が離せませんでした。

●ドラマ朗読の『戦争時代のお父さん』は、誘拐され乞食として商売道具にされた年老いたお父さんを子供たちが奪い返すお話。なんと現実にあった出来事。大きなニュースにもなったそう。無法がまかり通り、人間さえ商品にされる社会、家族の裏切りや愛情。戦時下のイラクの話なんだけど、日本にもつながるような普遍性も。観客の反応も良。

●そしてパントマイム『バグダッドのオテロー僕たちには時間がない』は、正直、不可解(もとのヴェルディの「オテロ」自体を知らないし)。彫りの深い役者さんの真摯な表情がライティングで陰影を増し、鏡を手で割って血も出たりして・・。隣の女性はチラシで顔を隠してしまって泣きそう。その隣の人は役者さんが口から吹き上げた水を浴びてました。あの席でなくてよかったわ〜・・。

●シンポジウム(というより会場からの質疑応答が主)では、演劇関係者が多かったのか、イラクでの劇団運営をめぐる具体的な(生々しい)展開に。ただしイラクからの皆さんは、政治、宗教、社会の話は、慎重かつ断固として基本的に拒否。芸術の話のみ。

●たしかに、演劇という専門分野で来ているのに、どこへ行っても政治のことばかり聞かれるのもうんざでしょう。でも、あまりの素っ気なさに、いろいろ事情もあるのではないかと思いましたが・・。以下に、そのスケッチを少し。

* イラクには現在、伝統劇から現代劇まで合わせて25ほどの劇団がある。劇団員数は5名から20名など、いろいろ
* 劇団員には国から給料が支払われる(会場=「全員に?!」、、ため息)
* 劇場のキャパシティは500-600名。入場料はすべて無料(会場=「おお・・」)
* 概して善悪のはっきりした伝統劇の方が人気。現代劇を見る層はまだ少ない。しかし観客が一人でも意に介さない。メッセージを伝えたい
公演期間は観客数次第。人気があれば何ヶ月も続くし人が入らなければ3日で終わることもある。しかし終了を決定するのは監督で国ではない
* フセインの時代は検閲などもあったが、現在では自由に作ることができる
* 劇団員がどの宗派だろうと関係ない。実際、ここに座っているもの同士もスンニかシーアかとか互いに知らない

●会場に一人、「今日は観てないんだけどさあ」と言いながら、やたらと「需要」だとか「観客数」ばかり聞くオヤジがいて、「結局、市場は小さいんだな」とわかったようなことを言っているので、、、キレた。小さいから、どうなのさ。尊大な態度で浅薄なことを言う、すごいイヤだ。ずっと戦争や経済制裁が続いてきてさ、今も強い緊張状態なのに、演劇の市場の大小もないでしょうよ。何が言いたいの?!単に見下したいの?

●「今のイラクでは盛んではなくても、アラブ世界全体では演劇の歴史がありますよ」「イラクは芸術文化の長い歴史のあるところですよ」「この脚本は層が厚くないと書けないレベルのものですよ」・・・会場や役者さんからも声が出始めて、オヤジは「アフリカの演劇なんかも観てみたいね」と引っ込んだ。行ってこい、アフリカに。で、終了したのが23時でした(疲)。

●私には内容はよくわからなかったけど、人間について何か表現したい人たちが真摯にやっていることは伝わった。イラクの人を間近で初めて見て、話すのを初めて聞いた。アラビア語がきれいだった。ホームシックになったり喜怒哀楽を表わしたり、同じ人間なんだなあ、それがコクッとわかってよかった。全体はゴツゴツとした違和感があったけど、体験型の私にはいい機会だった。

e0063212_2326129.jpg●イラクの作家や俳優さんが伝えたかったのは、「イラクだからではなく、普遍的なこと」。ただし、チラシなどを見たら「バグダッドからの証言者、来たる。イラクで何が起きているのか」とか「未曾有の史的体験を伝えにやってくる」などと書かれており、そのへんについて質問し拒否された人たちの気持ちも複雑ではないか、とは思いました。  

*写真は(上)「タイニイアリス・イラクNOW・プロジェクト」チラシ、(下)東トルコの老夫婦
by orientlibrary | 2006-02-15 23:40 | 美術/音楽/映画

イスラムタイルのある場所 初の地図掲載!

『イスラムアート紀行』では、アトランダムにタイルに関係する土地が登場しています。最初にコンテンツを立てて書いているのではなく、興味の向くまま彷徨っています。

これまでほんの少しでも登場したことがあるタイル関連の土地は・・・ 「ムルターン〜ウッチュ:パキスタン」「フェズ:モロッコ」「シーラーズ:イラン」「ダマスカス:シリア」「サマルカンド:ウズベキスタン」「ブハラ:ウズベキスタン」「カシュガル:ウイグル」「イスタンブール:トルコ」「ソルタニエ・イラン」「タブリーズ:イラン」など。東はウイグルから西はモロッコまで、カメラとタイルや土を入れるビニール袋を持ってのタイル旅の途中です。

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で、思ったのです。土地が飛んでいるので、「それって、どのあたり?」と思われている方もあるのでは?と。そこで今日は、タイル関連の主な土地とその場所をご紹介したいと思います。ところが、1枚で全部を記している地図が意外になくてペンで書き足していますが、これが一番見やすいかなと思います。(地図は多少ですが拡大可能。青でマークしたのがこれまで掲載した土地です)

タイルを見るとき、自分でいちばん注意しているのが、「現在の国境で考えるクセをやめよう!」ということです。タイルのある地、中央ユーラシアは大陸のど真ん中で、民族や文化が興亡を繰り返し、入り組んだ歴史を持っています。それなのに、ついイラン、イラク、ウズベキスタン等々と考えてしまいます。少なくともタイルを見るときには、イル・ハーン朝であったりティムール朝であったり、当時の判図で理解する感覚を持ちたいと思います。

装飾タイルの歴史は、11世紀のセルジューク朝あたりから始まり、14世紀後半からのティムール朝で最盛期の輝きを放ち、サファビー朝、オスマン朝で熟成期を迎えます。個人的には草創期からティムール朝のイキイキしたタイル、手仕事の力強さがあるタイルが大好きです。

ティムール時代のタイルの最盛期、西洋ではルネッサンスが花咲きます。日本では、南北朝から室町。安土桃山も含め、私が好きな工芸や美術も、このあたりのものが多いのです。同時代性、世界レベルでの気分の共振性というものが、あるのかもしれません。そんなことから、10〜11世紀と15世紀の中央ユーラシアの地図をご紹介したいと思います。

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地図を見ていると、東欧世界もかなり近い位置にいることを感じます。ブログお仲間『La CLUJ 』さんや『気まぐれMagyar ~From Hungary~』さんに親しみを感じるのも、そういう面があるのかな。ハンガリーには「ジョルナイ工房」という建築陶器の工房があって日本でも紹介されました。東欧は近い!?

最後に、輝くティムール朝のタイルを1点どうぞ!
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(orientlibrary)


* 地図出典(上):『砂漠にもえたつ色彩 中近東5000年のタイルデザイン』(展覧会カタログ・岡山市立オリエント美術館・2001年) (中)(下)『中央ユーラシアを知る事典』(平凡社・2005年) 
by orientlibrary | 2006-02-14 00:51 | タイルのデザインと技法

日本、道教、シルクロード・・・泥は世界をつなぐ!?

チープなアルミの皿に乗ってますが、これって、すごいんです。とってもレアな玉(ぎょく)で、中国の西の方で入手しました。オレンジ系の玉って稀少なんです!

あれ?エイプリルフールってまだでしたか!?ご存じの方も多いと思います。これは「泥玉」「土玉」「泥団子」などと呼ばれる土を固めたものです。写真のものは、昨夏、ある土関係のイベントで、丸める、磨くあたりから自分でやってみたものです。

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当日の師匠は、左官界の巨匠榎本新吉さんです。でも師匠直々に指導してもらえるのは3人まで。私はじゃんけんに負けたので、横で見ていましたが、生徒になったラッキーな人たちもそれなりに大変そうでした。

「オメエは、ほんとに何回言ったらわかんだ」「だからよ、人の話を聞けってんだよ」「そうじゃないだろうよ、ほんとにオメエは何やってんだ」等々、怒鳴られまくり。しかも、な〜んか不条理。「(小声)泥玉作ろうと思って来ただけなのに、大人になってここまで叱られるって、、」、外野の面々は笑いをかみころしています。

しかし、さすがです。巨匠はすごいです。榎本さん指導の(ほとんど巨匠が作ってしまった)泥玉は、本当に宝石よりも綺麗と思うほどの輝きで、ずっしりとした存在感がありました。土と石灰でここまでできるとは。見惚れてしまいました。しかも考案したのも、広めたのも日本人。土や日本の土文化の可能性を、またひとつ感じた体験でした。

昨夏の体験をなぜ今書いているかというと、昨晩の太極拳教室で、基本の「歩く」が全然ダメだあ!と自習していたら、先生が「道教では脳の松果体のあたりに“泥玉”というものがあって、そこに蓮の種が入っていると考える」と話されたからです。

「ど、泥ですかあ?!」即反応した私。うろ覚えですが、そこから蓮が生えて頭から気を放出する、というようなお話だった気が(違ったらすいません!)。丹田や正中線を意識しなくては、ということかなと思いましたが、深い意味合いはまだまだわかりません。が、太極拳で「泥玉」が出てくるとは。泥つながり?!

泥の建築文化の香り高いイランや中央アジア。大好きな泥に敬意を表して、土のある光景を、中世の雰囲気を残すシルクロードのオアシス都市、ウズベキスタンの古都ブハラから。

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(乾燥した気候、土の色合いの街、女性の衣装はカラフルで大胆な花柄が映えます)

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(魅惑に満ちたブハラの路地。レンガなどを使った家々。親しみやすくすてきな笑顔をたくさん見ました。女の子が着ているのはウズベクの絣(アトラス)です)
by orientlibrary | 2006-02-11 22:14 | タイルのデザインと技法

ふんわり豆腐の上にあるものは?? 和な行事を見学!

彷徨ってJAPAN。今日は偶然、JAPANな行事に遭遇しましたので、イスラムアートしばし休憩、めずらしく「和」でいきたいと思います。通りがかり、何か気配を感じて、ふらふらと入っていったのが、世田谷・代沢の「淡島神社」かつ「森厳寺」。大銀杏のあるいい感じのお寺です。小さなお堂では、護摩供がおこなわれていました。


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●独特の衣装に身を包んだお坊さんが集まり、護摩の火もあがって、集まった皆さん、熱心にお参りしています。そしてその奥、本堂の前、かわいいものがあったのです。針がたくさん刺さった大きな豆腐。そう、今日は「針供養」の日だったんです

●「針供養」は、折れた縫い針を供養し、近くの淡島神社に収める行事。地方によっておこなう時期が異なりますが、関東地方は2月8日が一般的なようです。なぜ豆腐に刺すかというと、ふだん固いものばかり刺しているから。やわらかいコンニャクや豆腐に刺して休ませてあげるのだそうです。「長い間ありがとうございました」と、子供たちが針を刺していました。このお寺には幼稚園もあるんです。 

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●護摩供のあと、お坊さんたちは篳篥などを演奏しながら「針塚」へ。みんなで針を供養しました。境内の梅もほころんで、春ももうすぐそこに。ちょっとピースなひとときでした。帰りに神社の掲示板を見ると、淡島神社は「女性救済の神社」とのこと。えっ!!と、さらに欲深く、何度も手を合わせる私・・・。


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●神社にお寺に針供養に幼稚園に閻魔様に弁天様に梅に提灯に現世利益等々、一つの場にいろんな要素がごった煮で、ほのぼのした宗教のある光景。求心力の強いイスラムとは雰囲気が違いますね。


●雑談ついでに、今日はヴィレッジ・バンガード」というハチャメチャな本屋で本と雑誌を購入。以前は「本を雑貨の中で売るな〜!」と思っていましたが(本も雑貨的に売っている)、セレクトや紹介の仕方が面白いので、たまにのぞきます。旅行の本も大型書店とひと味違うセレクト。 『旅行人』のバックナンバーもあります。


e0063212_23355799.gif●で、『NEUTRAL』という旅行雑誌の発刊1号(04年7月)、「美しきイスラムという場所」を(遅まきながら)買ってみました。一般雑誌が特集してくれるというのは嬉しいことで、しかも発刊1号と力が入ってる!若い人たちが編集しているようだし、どういう切り口で見せるのかな〜と期待!でも、、どのテーマもオシャレ風だけど食い足りないです〜・・・。エキサイトブログの皆さんの記事は、すごく好きで、伝えたい、という「気」があって、リアルで、惹きつけられますが、、。雑誌、だから(私)買わなくなるんだよなあ・・。

●もう1冊、『シルクロードおもしろ商人スクラップ』(浜井幸子・情報センター出版)。イラストと写真満載で、ウイグルの人たちのことをすごく好きなことがビシビシ伝わってくるし、バザールの不思議な食べ物や商人たちの正体がわかったりして面白い。路上商人の本は『インドの大道商人』(山田和・平凡社)も好き。・・・次回は流麗イスラミック・ワールドに戻ります〜!
by orientlibrary | 2006-02-09 00:02 | 日本のいいもの・光景

白いドーム屋根の下のペルシアの王女 &タイル!

●旅行好きな私ですが、『イスラムアート紀行』自体も、時代や地域を、ぶ〜らぶ〜らと彷徨っております。そこで、立春にもなったことだし、1465年のイラン・タブリーズ・ブルーモスクから、①一度、装飾タイル西端のモロッコに飛んで12〜13世紀頃の綺麗なタイルを見ようかなと思ったり、②いやいや、同時代、1450年前後のトルコやイランや中央アジアのタイルを並べて違いや共通点をみようかと考えたり、③やっぱり、なんと言ってもティムール朝なんだ! 14世紀後半からきちんと追いかけようか、と思ったり・・・。

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●そんなとき、このミニアチュールが目にとまりました。「白いドーム屋根の下のペルシアの王女」(1505年頃)。白いドームにタイルの模様。壁面や腰壁にもタイルが律儀に描かれています。そう、ミニアチュール(細密画)は、タイル好きにとっても楽しく、参考になるものなのです。

ミニアチュールは、写本の挿絵や装飾として細密に描かれた絵。ペルシアの写本では、歴史書、叙事詩、恋愛詩、寓話など、ほとんどすべての分野のものに挿絵が挿入されたといわれます。写本は各王朝直属の宮廷書画院で製作されました。まずは書家がインクで本文を書き写し、その後画家が腕をふるいます。

●ミニアチュールは、まさに細密で独特の世界があり、私は最初は「濃い」と引いていました。でも、描かれたタイルや衣装(布・模様)、植物に惹かれて見るうちに、ミニアチュール自体にも興味を持つようになりました。インテリアからファッション、ガーデニング、恋愛や政治のかけひきまで、まるで図鑑のように当時の様子が伝わってきます。(上のミニアチュールでは王が足のマッサージを受けています。”royal foot massage"と解説=下記↓=に書いてあります)

●「白いドーム屋根の下のペルシアの王女」は、ブルーモスクからだいたい50年後のペルシア。解説(『COLOUR AND SYMBOLIZM IN ISLAMIC ARCHITECTURE』)を見ると、、、
◆「最初のサファビー朝の統治者イスマイリーが、白羊(アクコユンル)朝を滅ぼしてタブリーズで権力を奪取した1501年、未完の写本の続きに、バフラーム・グールの後継者としてペルシアの新しい最高権力者になったイスマイリー自身を描いた」
◆「これを描いた画家のムハンマドはタブリーズ派の最も優れた作家の一人だったが、この新しいパトロンのために、以前のトルクメンのスルタンが好んだ幻想的な描き方をさらに不朽のものとした。たとえば、ゆがんで描かれた中国風の岩や雲、風に吹かれる春の植物、大胆に渦巻く池などである」
東洋が入ってきています

e0063212_1144455.gif●イルハーン朝などモンゴルの王朝は、ミニアチュールにおける「タブリーズ派」(13世紀後半〜14世紀)形成のきっかけとなりました。

宋元画の強い影響を受けた写実的な作品は、イスラム様式を一変させます。そして以降、シラーズ派、ティムール朝、サファビー朝などにおいて、ペルシアのミニアチュールは最盛期を迎えます。中国様式の影響を脱却し、ペルシア独自の様式が形成されていったのです。

●イルハーン朝のタイルでも龍や鳳凰の文様などに、モンゴル〜中国の影響がありました。様々な分野で東西の文化が融合し、職人や画家は切磋琢磨して、時代の求める美を作り出していったんだな、と、あらためて思いました。
(ミニアチュールについては、『絢爛たるミクロの世界 ペルシアの細密画』/桝屋友子〜『文化遺産 華麗なイスラム美の世界』〜などを参照しました)

*(上)ミニアチュール「白いドーム屋根の下のペルシアの王女」は、『COLOUR AND SYMBOLIZM IN ISLAMIC ARCHITECTURE EIGHT CENTURIES OF THE TILE—MAKER‘S ART』より引用。(下)ミニアチュール「黄色の離宮のバフラーム・グール」(1481年/シーラーズ及びタブリーズ)。『絢爛たるミクロの世界 ペルシアの細密画』より引用。
by orientlibrary | 2006-02-07 01:20 | 至高の美イランのタイル

”蒼の宝石箱”ブルーモスク&黒羊さんのヒミツ?! 

●黒羊朝、白羊朝という王朝としてはカワイイ名前のふたつの王朝。「彼らはともに遊牧トルクメン(オグーズ)の一つで、それぞれがトーテムとして黒羊と白羊を持っていた可能性がある」。

●「貨幣や墓にも、初期から黒羊、白羊の文字があり、お互いが相手からの識別を強く意識していたことも確かだ」(以上、「」内は『三日月の世紀 「大航海時代」のトルコ、イラン、インド』/那谷敏郎・新潮選書)とのこと。

●絨毯の勉強会で、遊牧民の生活の基盤と言ってもいい羊の重要性を知りました。だから、遊牧民の王朝が羊をシンボルとしたのも、わかる気がしてきました。

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(『BLUE MOSQUE OF TABRIZ』より引用)


『The Art of the Islamic Tile』で“蒼の宝石箱”と書かれたトルクメン治世下のイラン、タブリーズの「ブルーモスク」(1465)。モスクに名前も書かれている当時の君主ジャハーン・シャー。建築や工芸が好きな人、と勝手にいいイメージを描いていましたが、前掲書によると、、

●「彼は葡萄酒と阿片を愛し、その私生活は放縦きわまるものだった」。え〜〜?!「だから、同時代のオスマン宮廷からは“コウモリ”のあだ名で呼ばれていた」・・・コウモリ、ですか。宗教的には「正当スンニ派に懐疑的で、シーア派的だった」「黒羊朝宮廷全体の傾向がシーア派的だったようだ」(同上)。

●イランはシーア派の国ですが、その基盤はすでに黒羊朝期に存在したという見解も、はじめて知りました。

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●今回は、ブルーモスクの内部空間、礼拝ホールなどの天井や壁面のタイル装飾です。レンガとタイルの組み合わせのバランスが粋!またタイルの青(コバルトブルー、ターコイズブルー)の発色のきれいなこと!最高のコンディションで焼かれたのでしょう。「完璧な青」と言われる所以です。黒や黄、白、緑なども使われています。モチーフのデザインにも凝っています。

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●モスクで買ったタイルの本はペルシア語ですが、ページ数も多く、文様などについて、かなり詳細な説明があるようです(想像)。たとえば次の2点は、<アラビア語の碑文の地模様の花模様デザイン画><花模様に見えるアラビア語装飾>などを説明していると思います。(写真下の2点、『BLUE MOSQUE Turquoise of Islam』より引用=モノクロ印刷&ページの裏がスキャンで透けてしまうなど、問題ありますが、いい本です・・・)

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by orientlibrary | 2006-02-04 02:11 | 至高の美イランのタイル