イスラムアート紀行

orientlib.exblog.jp

<   2006年 01月 ( 10 )   > この月の画像一覧

15世紀タイル装飾の傑作 タブリーズの「ブルーモスク」

「カラコユンル」、訳して黒羊。イラン北西部からイラクにかけて権力を握ったトルコ系の王朝(1380〜1469年)です。もうひとつアナトリア東部には「アクコユンル(白羊)朝」(1378〜1508年)があって、名前的にはカワイイふたつの王朝ですね。(カラコユンルはその後アクコユンルに滅ぼされます)。そのカラコユンル朝の首都であったタブリーズに、15世紀タイル装飾の傑作「ブルーモスク(マスジド・キャブート)」(1465)があります。

e0063212_23371989.gif


●ブルーモスクは、アゼルバイジャン博物館に隣接した一角にあり、公園では大学生などがくつろいでいました。公園の裏手に回ってモスクの正面へ。そしてファサードのタイルを見た途端、もう息をのみそうでした。優美で高潔なモザイクタイル装飾です。相当な剥離がありますが、それは仕方のないことです。もう550年近くも前の建物なんですから。

●イランも地震の多い土地。「2本のミナレットがあった」と記された17世紀の旅行記があるそうですが、その後の激しい地震で倒壊してしまったと言われています。内部空間では修復が進んでいましたし、英語のパンフレットやペルシア語で書かれた詳細なタイル装飾の解説書もありました。歴史的建造物として保存に力が入っているようです

e0063212_23374459.gif


タイル装飾の特徴は、無釉レンガとタイルの組み合わせや無釉を生かした装飾です。土の味わいを巧みに生かしたデザインに感動します。何度写真を見ても、美しい。アクセント的に混じる黒や黄色が、壁面を引き締め強い印象を与えます。黒が使われている部分は碑文などが書かれており、「慈悲」「憐れみ」などの宗教的な言葉が記されているそうです。

●タイルの専門書籍等でも絶賛しています。「15世紀半ばに西イランとアナトリアの君主となったのは、トルクメン系の黒羊朝の族長であるジャハーン・シャーである。彼のために建てられたこの建築的傑作の壁に施されたファイアンスモザイクは、その芸術性において頂点に達した」。

●「完璧なまでのターコイズブルーやウルトラマリンブルーと白檀のような色合いとの濃淡は、タイル装飾の至高である。タブリーズのブルーモスクは、今では屋根もないうえに損傷もはげしい。しかし今なおペルシア世界の究極であり続けている。華麗な装飾は、タブリーズのトルクメン系君主の唯美的な傾向を映し出しており、同時代のヘラートで流行した抑制的で知的な伝統主義とは相当に異なるものである。」(以上『COLOUR AND SYMBOLIZM IN ISLAMIC ARCHITECTURE 〜 EIGHT CENTURIES OF THE TILE—MAKER‘S ART』より)

絨毯の分野でも突き抜けた美への感性を発現するトルクメン、タイルではこのタブリーズ「ブルーモスク」において、至高の美を表したように思われます。(まだ資料を読み込んでいないので、不足や間違いがあるかも・・。わかり次第修正等していきます)
by orientlibrary | 2006-01-31 23:49 | 至高の美イランのタイル

シンプル&ヘルシー?! インダスの食を垣間みた

●今日は「北パキ会」で、パキスタン(北部)旅行で知り合った面々と旅ばなしで盛り上がってました。イランから帰ってから、ずっとイランとタイルのことをメインにしてきたので、今回は少々趣向を変えて、かる〜い雑談風パキスタン。テーマは食!でございます〜!パキスタンで食、いかなる展開に?!

e0063212_20595952.gif●まずは、この超シンプルな一皿。フンザの雑貨屋のご主人のランチを撮影させていただきました。ヴェジタリアンも納得!ですよね。

●日本のオシャレ系カフェで“インダス・ダイエット”として売り出しても いいかも!?赤いスプーンがポイントです。



e0063212_2164760.gifバザールでは、数々の屋台系メニューの中で、美容食ヨーグルト(多分)を発見。大胆な姿勢で展開中。大人から子供まで、皆さん、アルミの食器を抱えておいしそうに食べてました。

●でも。皆さんといっても男性だけですが、、。女性が街にいない〜・・・男性だけの街、、、イスラム圏はけっこうそういうところが多いけど、パキスタンもかなり、でした。(おかげで旅行者の女性は珍獣状態)。

e0063212_2113295.gif


●食といえば、話題の「」でしょう。こんなふうに積んだら鶏インフルエンザなどは、またたく間にうつっちゃいますね。パキスタンはトラックがメチャメチャど派手なトラック野郎系なので、鶏の積み方にもこだわりがあるのかも?!

e0063212_2115227.gif
雄大なインダス川を背景に愛らしい鳩たち。なぜ食の特集に鳩が??・・・そうです。ご想像どおりです。数時間後、鳩さんたちは食卓に登場。人間、生き物の命を頂いております。ありがとうございます。

●というわけで、次回以降<エラム帝国の神殿・チョガザンビルの施釉レンガ><タブリーズ・ブルーモスク・15世紀タイル装飾の美の世界>等を追いかけていきます。雑談で失礼しました〜!
by orientlibrary | 2006-01-29 21:20 | インド/パキスタン

タイル資料に救世主現れる! 出現記念、最古のタイル掲載?!

タイル道修行中、発展途上人の私に、住宅設備の専門家Tさんから電話。「タイルの剥離、修復、施工方法」等についての質問で、あたふたしながらお話していたわけですが、最後に「ブログにどのくらい時間かけてんの?」との世間話。実際、文章書いたり写真アップしたり、はそんなに時間かかりません。結構早いんです、この系統。

e0063212_1285162.gif

時間がかかるのは、なんと言っても資料の読み込み。もともと「タイルが好きと言っているばかりじゃだめ。何かないと勉強しないよな・・」というもくろみもあってブログを始めたわけなので、計画通りとはいえるのですが・・・。

予想以上に大変なのは、英語の本の読み込みで、英語力の弱さはもちろんなのですが、何より陶芸や建築の専門用語が多くて、訳しても何を言っているのか理解できないことが多いのです。また苦労して訳しても、意外と情緒的なことしか書いてなくて、あまり参考にならなかったり・・。

e0063212_1265435.gifそんな修行の身の私に、救世主のような本が現れました。『ペルシアの伝統技術 風土・歴史・職人』(ハンス・E・ヴルフ/平凡社)。ペルシアの、という限定があるものの、技術の基本部分はどの地域にも共通するものがあるので、「建築技術と製陶技術」の章が、クラクラするほどありがたい。

たとえば、「焼成煉瓦作り職人」「煉瓦切り職人及びタイル切り職人」「石灰及び石膏焼き職人」「漆喰職人、スタッコ細工職人」「釉薬作り」「金属の酸化物の準備」等々、これまで知りたかったことが、徹底的なフィールドワークに基づいて、とにかく詳細に記述されているのです。しかも日本語。

イランの伝統工芸技術全体の調査研究書なので、金属工芸、木工から織物、さらには農業や食品加工、たとえば、「パン焼き」「シロップと菓子の製造」「搾油」等々、写真やスケッチ入りで詳細に述べられていて、おもしろい!こういう系統ってフランスやイギリスのものは食文化的に本もいろいろあるけど、ペルシアの方が圧倒的に歴史が長く、現在も受け継がれていて興味深いです。

e0063212_1274720.gifさらに、「資料がない」と一人で騒いでいた<エラム王国の神殿・チョガザンビルの施釉レンガ>についても、資料発見。
岡山市立オリエント美術館の展覧会カタログ『砂漠にもえたつ色彩 中近東5000年のタイル・デザイン』。これ、持ってたのに、チェック不足。

ただ、ここで紹介されている施釉焼成レンガは釘の頭状のもの(写真は同カタログより引用)で、レンガっぽくないんですよ。でも青緑釉の色彩が残っているとのこと。紀元前13世紀にきれいな青や緑で彩られた神殿があったなんて。次回、私が見た施釉レンガ写真をアップします。

e0063212_128126.gif
謎が解明したのを記念して世界最古と言われるエジプトのタイルを、同カタログから引用でご紹介(いちばん上の写真↑)。「青釉ファイアンス・タイル/エジプト(サッカーラ)/前27世紀頃(第3王朝時代)」。(常滑の「世界のタイル博物館」にも同じものがあります)。

ピラミッドの地下回廊壁面に飾られていたものです。空や水のような青、永遠に瑞々しい青が、王を見守っていたのです。
by orientlibrary | 2006-01-27 01:42 | 至高の美イランのタイル

モンゴル系・イル・ハーン朝で萌芽したタイル装飾の美

先日『天上の草原のナンサ』を見たこともあり、モンゴルモードが入っています。『らくだの涙』を撮ったモンゴル出身のビャンバスレン・ダバー監督が、モンゴルで語り継がれる伝説を下敷きに、草原の暮らしや遊牧民の精神世界を臨場感豊かに描いています。

この物語にふさわしい家族を捜し求めて3人の子供のいる若い遊牧民夫婦と出会い、生活をともにしながら撮影。基本は物語なのですが、乳製品作りやゲルの解体など、ドキュメンタリー的な要素もたっぷりで、みずみずしく魅力的な映画でした。

e0063212_041377.gif映画では、邪気のない子供たちの表情や仕草がなんともいえずかわいいんですが、末っ子の男の子は、一見女の子のような髪型。そういえばモンゴル旅行のときに南ゴビでこんな髪型の男の子に会ってびっくりしたな、と思い出しました←。

モンゴルの子供たちは、最初はむっつりして警戒されているのかなとも思いますが、だんだんとほぐれてきたときの笑顔はとびきりいいなと思いました。今時の日本の子供は、みな整ってきれいだな、と思いますが、草原の子供たち、ちょっと前の日本の子供の味のある愛らしい顔立ちに似ていると思いません?↓

e0063212_0415868.gif

イランに行って感じたのは、タイル装飾や土の建築の発展におけるモンゴルの役割の大きさでした。ユーラシアの覇者、モンゴル系の王朝がユーラシアの文化を攪拌し、イスラム建築やタイル装飾を西へ東へと拡大していったことは、なかなか実感としてコクッとこなかったのですが、今回のイル・ハーン朝のタイルで、ああそうか、と体感した気がします。

「この時代、モンゴルと中国の文化交流が盛んで、天文学や絵付けの技法を中国に伝える一方、中国の影響を受けて色タイルなどの製造技術やミニアチュールが高度に発達、ティムール朝の文化に受け継がれていった」(『中央ユーラシアを知る事典』/平凡社)。タイル装飾の萌芽期として、トルコ系のセルジューク朝とともに大変重要なのが、このイル・ハーン朝なのです。

「東西交流の活発化は、イル・ハーン朝の文化にも大きな影響をもたらした。それは中国文化の影響が強く見られるのが特徴であり、陶器の文様などにも中国的な文様が取り入れられた。モンゴル人や中国人のような服装をした人物表現、龍や鳳凰、蓮弁などの中国的な要素が見られる」(『タイルの美 イスラーム編』/TOTO出版)。

あのコバルトブルーと金の龍のタイル(数回前のもの)は象徴的であり、偶然とはいえ、すごいものを間近に見られたことにゾクッとします。タイル好きの執念か?!?

「チンギス・ハーンによってユーラシアに出現した巨大な遊牧帝国は、彼の4人の子供たちに引き継がれる。大元帝国は別として、ほかの3つの国、チャガタイ・ハーン、イル・ハーン、キプチャク・ハーンはイスラム教との関係が色濃い。

中央アジアのオアシス部分を領有したチャガタイ・ハーンの末裔が14世紀末のユーラシアの覇者ティムール、ヤサヴィー廟のパトロンである。西のイランを領有したイル・ハーンはイランの成熟した建築文化を継承し、気前の良いパトロンとして都市や建築を構築した」(『世界のイスラーム建築』/深見奈緒子/講談社現代新書)。

タイル装飾が最も花開いた中央アジアのティムール朝(1370〜1507)もモンゴル系であり、この時代にさまざまに試みられた装飾技法が、やがて洗練されたイラン・サファビー朝(1501~1736)のタイルにつながります。

「本来草原に住んでいるときには、土に根づいた建築文化をもっていたわけではなかったけれど、都市を支配するようになると、建築文化に心酔し、都市に住まう人々のために偉大な建設者へと転身したのである。土の建築文化の根強いイラン世界を制覇したモンゴル族、イル・ハーン朝は決して破壊者であったわけではなく、数多くの遺構を残している」(『世界のイスラーム建築』)。

アレクサンダーは東西文明をつないだ英雄としても語られますが、モンゴルは文化を破壊しつくしたという逸話が強烈であり、文化とは対極にあるイメージがあると思います。私もタイルを知るまではそう思っていました。そして知っていくにつれて、モンゴルの存在の大きさに驚いているのです。

e0063212_0421431.gif

素人の推測ですが、アレクサンダーは日本人に馴染み深いガンダーラ仏像に関与していることや、遠い土地の出来事なので歴史的ロマンとしてとらえられるのかも?これに対して、モンゴルは「元寇」というのが尾を引いているのでは? では、イル・ハーン朝期の墓廟「ソルタニエ・ドーム」(1307〜13)のタイル装飾(↑)をひとつ、どうぞ↑。
by orientlibrary | 2006-01-23 00:01 | 至高の美イランのタイル

謎の白い粒、急展開で判明したその正体とは?!

タイル道の険しさにうなだれている私に、サプライジングな情報が飛び込んできました。先日の謎の、恐るべき匂いの、苦くて、固くて、白い粒、煮ても焼いても食えない、やつ。その正体は・・・なんと、甘く、やさしく、貴重な、ロマンを誘う、香気高い、あるもの、だったのです!!

e0063212_0132127.gif

教えてくださったのは、”ラヴァシャキ” でも快答してくださったaidaさん。<食べた→苦くて固かった>→<お湯に溶かした→溶けずに塗料のような匂いがした>→<煮た→エバミルク状になりゴムを焼いたような恐ろしい匂いがした>、、、という結果に呆然としてた私。だいたいが物質として一体何なのか謎。穀物なのか鉱物なのかさえ不明。・・・<答>「樹脂」でした。

なんと「乳香」だったんです。乳香ってアラビアのイメージ。アラビア半島に行ったことのない私、まさか北西イランの山奥で乳香に出会うとは思ってもみませんでした。イランとつながりにくいうえに、私の支離滅裂な文章と見にくい写真、なのにaidaさん、すごい!イランクイズがあったら優勝ですね!「確かに、イランでは食べる習慣があるようです。ただし、一度にはほんの数量を服用です」とのことです。

私もネットなどで調べ、さまざまの特徴から乳香であるという確信を持ちました。そして「もし乳香なら、焚いて香りを愉しむほうが無難かもしれませんね…」というaidaさんのリコメンドに触発され、速攻、焚いてみました。すると、、なんとあんなに恐ろしい匂いがしていたものが、甘くやさしい魅惑の香りに変身したではありませんか!・・・人生を学びました。「煮ても焼いてもダメなら焚いてみろ」。

いずれにしても「金よりも高価だった」と言われる乳香、現代の価格をチェックすると10グラムで315円などとなっていました。けっこう高価です。キャンドバン村でも貴重なものだったのかもしれません。旅行者が買ってしまって申し訳ないです。香りは、なごみ感のあるまったりした香り。「樹脂を焚くと、テトラヒドロカンナビノールが発生。これは、大麻の幻覚作用を起こす成分と同じ」とネット情報。

e0063212_0134825.gif

幻覚ついでに、今回のイラン旅行でいちばんおいしかったメニューをご紹介。毎回同じような煮込み料理なんですが、地方ごとに少しづつ味が変わっていきました。私はこのスーサのトマトベースで杏入りの丸みのある味が好きでした。ヨーグルトを加えると、さらにまろやか。サフランライスにかけていただきます。ナンは薄くて軽い味。麦がいいんですね、イランは。麦と葡萄が良かったら、、多分おいしい何かができるはずなんですけど!

*写真は、(上)右が乳香の粒、左で焚いている、魅惑の香り、(下)煮込み料理杏入り、など
by orientlibrary | 2006-01-18 00:26 | 至高の美イランのタイル

タイル道は険し?! ソルタニエドームの物語・・・

大変、大変!資料読み込み不足でした。ソルタニエドームで「ラスター彩」と書いてきたタイルは「ラージュバルディーナ手」という種類のタイルで、「ラスター彩の色彩感覚を豊かに発展させたもの」でした。訂正します 。すいませ〜ん!

e0063212_325452.jpg

「ラージュバルディーナ手」は、「コバルトを呈色剤として発色させた藍色の釉薬の上に、赤や白、そしてさらに金彩を加えた上絵付けの陶器やタイル”」(『タイルの美 イスラーム編』/TOTO出版)。イルハン朝という時代のイラン、星形と十字形の組み合わせ、表面の煌めきから、こういうのも含めてラスター彩としていいんだろう、と推測で決めつけてました。上記の本は読んでいたんですが、、、不覚!!文面で読んだものと実際が合致しなかった・・・反省です〜!

e0063212_326384.jpg

そんなこともあって、ソルタニエドームのタイル装飾についてはきちんと調べようと、『the art of the islamic tile』 と現地でゲットした秘蔵?パンフレットを読んだんですが、両方とも歴史や構造について書かれており、結局タイル装飾についての記述はあまり、というかほとんどありませんでした。

この建物は現存するイルハン朝のモニュメントの中で最も美しいものとして、そしてドームの高さと大きさが有名なんですよね。タイルもいいのに、、、がっくり・・・。しいて書くとすると、ソルタニエドームでは漆喰装飾とフレスコ(特にオルジャイトと彼の息子のアブサイードの時代のもの)が知られており、またレンガ装飾とタイル装飾、またこれがミックスしたものの美しさは歴史家に絶賛されている、といったところ。

特にメインエントランスのアーチのモザイクタイルの美しさについて記載されています。模様的にユニークなものが多いと思ったのですが、そのあたりの歴史や背景や特徴などはわかりません。がっくり・・・。現地に少し腰を落ち着けて調べないと、なかなかむつかしそう・・・。

e0063212_3264731.jpg

世界遺産になったソルタニエドームは修復が進んでいます。最も適した色を選ぶために、いろんな青が焼かれて試されているようです。その光景自体がきれいです。当然かけらを拾ってきました。楽しうれし、そしてむつかし、タイルの道?!はあ〜・・・ 

ただ、レンガ造の八角形のプラン、大きなドーム、タイル装飾とレンガ装飾の組み合わせ、8本のミナレットという構成は、ウッチュの「ビービーシャビンディー」と共通しており、中央アジアやイランの影響を受けているとされるムルタンの聖者廟建築との関連に興味があります。コツコツいくしかないですね!・・

*写真は、(上)「ラージュバルディーナ手」タイル、(中)ソルタニエドーム外観、(下)修復のために焼かれたタイル
by orientlibrary | 2006-01-17 03:53 | 至高の美イランのタイル

土の国の、ふしぎな食べ物、そして古代のミステリー?

先日の「イランでささやかお買い物」の謎のお菓子、aidaさまからの情報により、乾すももを水で戻して薄く延ばしてもう一度干した”ラヴァシャキ” と判明!「イランの家庭でも作れるおやつです。味は”ねり梅”(キオスクとかで売ってるようなやつ)に近いです」とのことで、さっそく食べてみました。ほのかに甘く酸味があって、不思議な食感でした。でも、何かがわかってスッキリ!↓

e0063212_033314.gif

but・・・深淵なメソポタミア文明の国・イランはふか〜くミステリアス。じつはもうひとつ、正体の知れないものがあるのです・・・白い粒状のもの、最初は塩だと思って買ったんですが、「違う。薬草をミックスしたものだ」と言われ、「妊娠している女性によい」+「子供の頭が良くなる」(どういう関係が?)ものだとのことで、頭が少しでもよくなればいいか、と思って買ってきましたが・・ 

e0063212_03575.gif

そのまま食べてみたら苦くて固くて食べられない。砂糖のように使うのかとお湯に溶いてみましたが溶けない→。全体に化学塗料のような匂いが・・ そこで、おかゆのようにするのかと煮てみたら、やさしいエバミルクのような色と形状の仕上がりに。ふふ。ばーっと!!、、、これが漢方薬の千倍も苦い!舌がしびれる!薬だとしたら効くでしょうね〜・・。ちなみに買ったのはキャンドバン村。ああ恐るべし、伝承の知恵?!

おっと、謎の物体の話ばかりでは・・。西イラン、すごく寒かったんですが、雪の後の快晴で、さらさらの雪がダイヤモンドのように光って、それはそれはきれいでした。日本だと海と山の間が狭いので連山は屹立した印象ですが、ユーラシアはあくまで広々とした平原の遠くに山が連なり、雄大です。そして土。写真↓の下の方、雪をかぶった日干しレンガ、土作りの家々。やはりイランは土の文化の国、土の建築の国でした。

e0063212_04323.gif


今後、ソルタニエドーム、ブルーモスク(タブリーズ)を中心に、イラン・イスラム文化/12世紀から15世紀くらいのペルシア・中央アジア〜西南アジアに至るタイルと建築を探っていきたい、というのが、私のテーマです。中央アジアとパキスタンのタイルを語るのに、やはりこの時代のイランは重要だとあらためて感じました。

『タイルの源流を探って オリエントのやきもの』(INAX)の、「土・神話と歴史(座談会)」は興味深い知見に満ちています。そのなかに次のようなお話があります。

■「イランの人たちの土に対する感情は私たちとは随分違う。人間は土から作られたということは聖書にもクルアーンにもイランの神話にも出ているが、それを本当に実感している。イランでは人の一生はレンガからレンガまでと言う。土やレンガの中には自分たちの祖先の肉体も霊魂もすべて入っていると考えている」

■「日本人も土から生まれて土に帰るというけれど、どちらかというと抽象的な観念で実感しているわけではない。しかしイランでは生活感覚として定着している」

■「土の質の違いもある。イランの土は細くて乾燥しており、赤茶けていて血の通ったような色をしている。水を加えて干せばカチカチに固まる。神様はこれをこねて人間を作ったと言われると納得してしまうように思う」

■「建築材料としての日干しレンガ、記録媒体としての粘度板、どちらも足もとを見れば無尽蔵にある土から容易に作れる。これを活用したというのは、じつに巧妙な発明だ」

メソポタミア、古代オリエント、、歴史を知らない私には膨大で気が遠くなりそうですが、イスラムタイルを追いかけていくと、このような縦軸もとても重要です。でもイラン旅行後、ひとつの疑問点が。チョガザンビルでたしかに見た彩釉レンガ(数色が、かすかだけどしっかり残っています。後日掲載します)、これについて言及、あるいは触れられた資料を見たことがないのですが、、どうして???これってひとつのミステリーかも・・・??(資料を発見しましたので近々にアップします。06.01.25)

*写真は、(上)アートしている”ラヴァシャキ”?!薄くて透けるということを表現したかったわけです、(中)謎の白い粒(後ろの袋に入っていた)をお茶的にしてみた(バラは飾り、意味はなし)。この後、おかゆ的に煮詰めて大変なことに、(下)雪山と土の家と日干しレンガ、雄大なイランの自然
by orientlibrary | 2006-01-15 00:16 | 至高の美イランのタイル

13世紀イラン、聖なる蒼と青、そしてラスター彩(修正有り、下記)

「土族、イランへ行く」、第1次の「なんちゃって写真」があがってきました。全部いちおう焼いてみて、マシなものをちゃんと現像しようといういつもの作戦。写真の出来自体は満足できるものは少ないですが、やはりイルハーン朝期の墓廟「ソルタニエ・ドーム」(1307〜13)と、「ブルーモスク(タブリーズ)」(1465)のタイルの素晴らしさには惚れ惚れします。

でも、書籍やパンフレット等を見ると、撮れていないものがたくさんあるようで残念。学術調査ではないので仕方ないですね。タイル好きの素人の限界があります。

e0063212_0502829.jpg

今回の旅行では、博物館もいろいろ見ることができました。あくまでタイル好きの私にとってですが、テヘランの「国立博物館」のイスラム美術展示の充実には、ヴィクトリア&アルバートの蒐集(昨秋の「宮殿とモスクの至宝展」)も遠くに霞みました。同じくテヘランの「ガラス・陶芸博物館」もイランの土の美術の粋を堪能できます。

また、タブリーズにある「アゼルバイジャン博物館」2階にはすごいタイルやラスター彩が、何気なく展示されていてびっくりです。しかもいずれの博物館も、なんと写真撮影が自由なのです(フラッシュは禁止)。本当に一日じっくり見てみたいです。(ただし、図録やカタログ類がないことが多く、これにはすご〜く困ってます・・・)そんななかから1点、アゼルバイジャン博物館にあったターコイズ釉の十字形タイル(13世紀)。

十字形タイルは星形や六角形のラスター彩と組み合わされて、モスクのミヒラーブ(メッカにあるカーバ神殿の方向を示す)を飾りました。ミヒラーブは偶像を持たないイスラム教の祈りの場にあって、もっとも荘厳な装置です。各地のモスクで、精魂込めて作られたタイルが宝石のように輝いていたことでしょう。

e0063212_0504558.gif

このターコイズ十字タイルを見ながら、私はこれと兄弟のようなコバルトブルーの十字タイルのことを思い出していました。常滑にある「世界のタイル博物館」、山本正之コレクションの1点(13世紀、カシャーン)。『イスラームのタイル 聖なる青』(INAX)の表紙にもなっている青のタイルです。私にとってのイスラムタイルの原点。きれいだなあ、と飽きずに眺めていたタイルです。ターコイズの輝きを見ながら、「あれから、ここまで来たんだな・・」と、少し感傷に浸っていました。

この時期のイランではラスター彩が盛んに作られています。ラスター彩は、釉薬や金属酸化物により金や虹のような光彩ができる幻想的な焼き物で、高い製陶技術が必要です。9世紀から16世紀に中東地域で生産され、12、13世紀頃が最盛期。15世紀頃から次第に衰退、長く技法がとだえた後、陶芸家の加藤卓男さんが復元に取り組まれたことでも有名です。

e0063212_0511595.jpg

そのラスター彩の輝きを間近に見ることができました。@ソルタニエドーム。私がラスター彩のレプリカ(前回の下の写真)に大騒ぎしていたら、おじさんがどこからか出してきてくれました。コバルトブルーに金色の龍(クリックして拡大して頂くと勢いある龍の表情が伝わると思います)。モンゴル〜中国趣味を感じさせる絵柄が、西イランの小さな町のささやかな博物館で、冬の陽光を受けて光っていました。

↑訂正:資料読み込み不足でした。このタイルは「ラージュバルディーナ手」という種類のタイルで、ラスター彩の色彩感覚を豊かに発展させたもの。「コバルトを呈色剤として発色させた藍色の釉薬の上に、赤や白、そしてさらに金彩を加えた上絵付けの陶器やタイル」(『タイルの美 イスラーム編』 TOTO出版)だそうです。時代、星形と十字形の組み合わせと表面の煌めきから、こういうのも含めてラスター彩としていいんだろう、決めつけてました。この本は読んでいたんですが、反省です。再度書きます。
by orientlibrary | 2006-01-12 01:02 | 至高の美イランのタイル

「土族、イランに行く」(予告編2) イランでささやかお買い物

サラーム!イランのタイル写真、現像中です。それにしても、ほんと今回見たような13〜15世紀頃のタイルがいいです。ウズベクもイランもパキスタンも。個人的な好みですが、17世紀くらいになるとなんだかバロック的になって苦手なんですよね。そんなわけで、今日は雑談的ミニネタ、買い物編です。

e0063212_312890.gif

イランのおいしい蜂蜜。今、入っていたプラスチック容器をペンチでバッキンバッキン割って開けたところですが(ありえないくらい堅い容器)、重くて強くて甘い野生の匂いが飛び出してきました。(これが本当の蜂蜜だとすると、市販のものは別のものですね・・)。これで400円ほど。安い!

e0063212_32043.gif
イランといえばピスタチオが有名。でも北のタブリーズではクルミが多かった。おなじみのヌガーも、タブリーズのものはクルミ入りでした。これがやわらかく上品な甘さでおいしい。日本人が好きな味ではないかと思います。左がタブリーズのもの、右がテヘランのもの。

e0063212_33193.gif

バザールも大好きだけど、スーパーマーケットをぶらぶらするもの好き。商品のパッケージなんかにもお国柄を感じます。いろんな面で女性が出にくいせいか、イラン映画には子供が主役のものが多いけど、お菓子のパッケージの子供も印象強いです。なんかリアル。&女性の髪が書かれていないけど・・

e0063212_34094.gif

ドライフルーツも豊富です。(右下ののり状のもの、いったい何?謎=aidaさまのコメントにより、すももを材料とした”ラヴァシャキ”と判明! aidaさま、情報ありがとうございました)。干していないソフトなデーツ(なつめやし)もありました。印象としては物価は円の感覚では、かなり安かった。街の人たちが買って帰るナンも一抱え何十円レベル、ミネラルウオーターもインドより安いような気が・・。

e0063212_333784.gif

本物のタイルは買えないけど、タイルのレプリカ、ソルタニエで売ってました。のんびりと「開けるかなあ」ってな感じで博物館(的なもの)を開け、その隅に販売スペースみたいなところがあり、売ってました。世界遺産になったソルタニエ、そのうちに商売商売してくるのかなあ。のんびりしている今の感じがいいなあ。  
by orientlibrary | 2006-01-09 03:16 | 至高の美イランのタイル

「土族、イランに行く」(予告編1)、ノンアルコールビールに酔う

サラーム!06年も『イスラムアート紀行』をどうぞよろしく〜!さてさて、しばらく留守にしていた間、イランの北西部に位置する東・西アゼルバイジャン州とペルシャ湾岸のアフワーズに行ってきました。土を求めて三千里。氷点下の世界から汗ばむ陽気へ、アゼルバイジャン的世界から、エラム王国の古代世界へ。ジェットコースターのような旅でした。

e0063212_3374381.jpg

今回の眼目は・・・東アゼルバイジャンの州都・タブリーズにある15世紀イスラムタイルの傑作「ブルーモスク(マスジド・キャブート)」、そして紀元前14〜12世紀に栄えたエラム王国のレンガ造の神殿「チョガー・ザンビール」、さらにイル・ハーン朝の墓廟でタイル装飾やレンガ装飾が見事な「ソルタニエ・ドーム」、う〜〜ん、必見でしょう!!

日本も寒いですが、この冬は厳冬という地域が多かったようです。イランも寒波で寒かった。でも雪の後の快晴という最高のパターン。ササン朝時代の神殿「タフテ・ソーレイマーン」では、スコーンと抜けるような真っ青な空、ダイヤモンドのように煌めく純白の雪、大地の色・土色の遺跡という、願ってもない光景を目にすることができました。

ブルーモスクやソルタニエでは、タイル、タイルで、狂喜乱舞の写真撮影。時間が全然たりなかったなあ・・。そしてソルタニエでは、本物のラスター彩を手に取って見ることができ感激!あーんど、チョガー・ザンビールでは焼成レンガの表面に残るブルーや緑の釉薬を発見!!!アケメネス朝のスーサ遺跡では色釉陶片をゲット(内緒)!

e0063212_3222817.gif

土(ツチ)族としては嬉し楽し&感激の時間でした。早くご紹介したい・・気は焦りますが、なにしろ写真現像もまだ。写真整理やスタディにもけっこう時間がかかりそう。そこで今回はプレ編として、記憶に新しいところで雑談など。

まずはイランでの服装ですが、女性は観光客であっても「髪や耳を隠すスカーフ」+「体型を隠すロングコート」が決まり。スカーフは防寒効果もあったので、まあガマンするにしても、一日中コートを着てるのはきついですよ〜。動きにくいし。だいだい、最近はロングのものって流行らないので持ってなくて、1着を着回しすることに。テヘランのおしゃれな女性たちは、薄手で膝丈のスカートのようなものをジーンズの上にまとって、トップはジャケットで軽やか。あんなのでもよかったんだ・・・。

そして苦痛の第2弾は、ノンアルコールの掟。最初に強調しておきますが、私、けっして酒飲みじゃありませんです。でも、旅行中で会話も弾む夕食、土地の食べ物、とくれば、やはりお酒で談笑でしょう。それがいきなりごはんじゃ、味気なさすぎ。宴会にいきなり、ごはんとみそ汁が出てくるようなもんですよ〜。

以前のイラン旅行では、成田のX線検査で日本酒が見つかり、処分しろと言われて搭乗待ち合い室で友だちと全部飲んだ記憶が。今回は持ち込みなしですから。で、仕方なく、ありえない、許せない「ノンアルコールビール」のお世話になることに。泡は出るけどさ、色はビールとおんなじだけどさ、めちゃ落ちぶれた気分です。

e0063212_3201847.gif

ところが、回を重ねるに連れ、不思議なことに、これでほんわかと酔い心地になってくるんですよ。アルコールへの感度が敏感になるのかも??後半はすっかり気に入って、おいしく飲んで酔ってました(缶で140円ほど)。なかでもオランダ産の「アムステルダム」がイケました。
「土(ツチ)族、イランへ行く」、ご期待ください。

*写真は、デジカメのもの掲載で、(上)タブリースのブルーモスクを描いた絨毯の一部。絵ではなく絨毯です。すごい!(テヘランの絨毯博物館蔵)、(中)車活用ショップ。おじさんが車の中から接客。左手前にあるのはゴミではありません。商品。寒いのでペットボトルの飲料はまるごと凍ってた、(下)イランの食卓の応援団「ノンアルコールビール」(今はもう飲みたくない。順応派だから〜)
by orientlibrary | 2006-01-08 03:15 | 至高の美イランのタイル