イスラムアート紀行

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「天上草原」にドカンと泣く

天上草原】・中国映画を見る会 


内モンゴル出身の夫婦の監督が撮った作品。通常、モンゴルを題材にしても中国語で作られることが多く、全編モンゴル語の映画は珍しいそうだ。モンゴル語の響きがいいのに。草原に合うのに。

モンゴルの四季の大自然、草原の人々の情の濃さ。粗野だが温かく、表現は無骨だが、人を愛おしいと思う気持ちの深さ大きさが、チマチマした日本人の私には、ものすごくドカンと来る。

動物との共存共生。馬を愛し狼を敬い羊と生きる。ヤギの心臓を手で止めて食事をふるまうシーンや、狼を縄で追いつめるシーンなど、動物愛護団体が文句言いそう。でも、どちらが動物と共に生きているかはあまりに明らかだ。

モンゴル映画にはホント泣かされるよ〜。(「らくだの涙」といい・・・)

【チベットの女 イシの生涯】

50年代からのイシの僧侶(初恋)、荘園の息子(庇護、寵愛)、行商人(激情)との愛憎を通して、チベットの歴史や暮らしや情愛を垣間見るような映画。チベットロケでラサの街や自然がイキイキと描かれていた。

ただ漢民族的視点が出ているのが気になった。そもそも、モンゴルやチベットが「中国映画」として紹介されることに抵抗がある。違う国でしょ!と思う。もちろんウイグルも。
by orientlibrary | 2005-08-31 13:42 | モンゴル

白磁風の素朴な磁州陶器

【中国・磁州窯】・出光美術館 

中国民窯の雄と言われる磁州窯。宋代に発展し多くの名品を残した。その最大の特徴は、鉄分の多い粘土で成形した器を白土で覆い、黒や褐色の装飾を施した素朴で力強い作風。支持したのは中国華南地方の庶民だったという。

白磁風の味わいがありつつ、土の質感がいい。いちばん好きだったのは、北宋時代の「白地黒掻落鴉文枕」。陶器の枕。固いのに大丈夫?でも意外と心地よいかも。「緑釉掻落牡丹唐草文瓶」の唐草も好きだった。
by orientlibrary | 2005-08-30 22:18 | 社会/文化/人

東西南北の文化が融合した時代の中国文化

【中国・美の十字路展】・森美術館

「後漢から盛唐へ」、1世紀から8世紀にわたる時間を縦軸とし、魏晋南北朝に照準を合わせた展覧会。しかし、それだけではなく、東西交流、南北交流という空間的な横軸をかけ合わせたことが、展覧会を見応えあるものにした。

この時代は、従来、漢文明が北の遊牧民族や中央アジアの諸民族に圧迫された受難の時代だったとされてきた。しかし近年の研究では、この時代こそ漢文明が他の民族文化と融合成熟し、中国文明の黄金時代である唐文化のゆりかごとなったという見方がされているという。

正直、唐文明の展示だと私には退屈なのだが、この展覧会は見方を変えればシルクロード十字路展とも言えるほど、多彩だった。初期仏教美術、インドやペルシア、中央アジア、さらにはローマからの文物は国宝級。また展示数の膨大さにも驚く。

特に99年に山東省で発掘された棺を覆っていた間口三間という殿堂型の石槨は、21枚の大理石板からなる。そこに描かれたレリーフはペルシア風の騎馬像や駱駝や象、胡人の舞を見る貴婦人など。墓王は何とソグド人だった。ソグド人が山東省まで・・・。一気にエキゾチック。

しかし、後漢時代の「陶器の楼閣」は陶製とは思えないディテールの細かさで、これはやはりチャイナ!

森美術館、六本木ヒルズの53階。広い。六本木であの広さ。エレベーターやら何やらで、やたらと回遊させられる。スタッフもそこらじゅうにいる。お金がかかってるなあと思う。チラシは日本語より英語比率が高い。展示もセンス良くお洒落。トレンディな名所美術館という感じ。
by orientlibrary | 2005-08-30 22:06 | タイルのデザインと技法

来世への過激な意志、エジプトの美

【古代エジプト展】・大丸ミュージアム

今生は仮のもの、来世でこそ永遠の命を得られるという思想。ゆえに「再生・復活」が生涯かけて追求するテーマとなる。来世への架け橋としての墓作りに、文字通り命をかける権力者。財や美の限りを尽くし、動物までをミイラにして道連れにする。

なぜそこまで過激に来世を求めるのか。死というものを通して、じつは過激なまでに生を肯定しているのではないのか。「今生」が満たされていない時代に、「永遠の生」という発想は生まれにくいと思う。豊かだから、もっとという発想が生まれ得るのではないか。

ひとつに、太陽が沈みまた昇る様を見てこのような思想が生まれたとすると、エジプトの風土の中での太陽の意味や位置がいかに大きかったかと思い知る。ナイルに暮れる夕陽、砂漠から立ち上る朝日、まるで生きているかのように、エジプトの人々は感じたのだろうか。

ドイツ・ヒルデスハイム博物館コレクションより。黄金よりも、小さな青い陶片などにグッとくるタイルファンでした。
by orientlibrary | 2005-08-30 22:04 | 社会/文化/人

インドの絞りにクラクラ・・インドは染織の聖地だ!

【世界の絞り】・文化学園服飾博物館

絞りは模様染めの最も素朴な技法とされ、糸で括る、縫い絞る、型で圧縮するなどの様々なやり方で世界各地で作られてきた。正倉院にも、括り絞りや縫い絞りを施した裂がある。

日本、インド、インドネシア、アフリカ、案ですなど世界の絞りを展示。日本は鹿子絞りやつまみ巻き上げ絞りなど世界に例を見ないほど多様な絞り方があり、展示の多くを占めていた。アフリカの藍染めの絞りも素朴でいい。インドネシアも。

でも何と言っても、圧巻はインド。ラジャスターンやグジャラートの華やかな絞り。圧倒的な手仕事の細かさと高い美意識が発現する大胆な色使いなど、やはりインドは染織文化の聖地。美しい。
by orientlibrary | 2005-08-30 22:03 | インド/パキスタン

大胆かつ華がある ブハラのスザニ・コレクション

【シルクロード 装いの美】・大倉集古館

このところ、「シルクロード」とつくタイトルの展覧会が多い。大倉集古館、今回の構成は、スザニ、ヒワのシルク絨毯、コシノヒロコの作品、ポーラのトルクメニスタン宝飾コレクション、現代的なフェルトアート、合間に仏像などもあったりして、空間時間ともポンポン飛ぶ。

スザニは、NHKの番組にも出ていたマイケル・フランシスの18世紀ブハラの「ラージメダリオン」コレクションが10点弱あり、見応えがあった。

ヒワの絨毯は2004年の新しい作品にも関わらず、伝統の技法を重視しており、古いものかと勘違いするくらい。紺色がしっくりと美しく、でも柄はモダンで、私は結構好き。うれしかったのは、この絨毯の製作者たち(イギリス人)が細密画の絨毯から発想を得たり、何とタイルの柄を再現していると解説されていたこと。

やっぱり、、、タイルと絨毯は関係があるんだと、土(ツチ)族の私はおおいに納得。絨毯が好き、細密画が好き、タイルが好き、という感じって、すごくわかるし、嬉しいんですよ〜!
by orientlibrary | 2005-08-30 22:01 | ウズベキスタンのタイルと陶芸

建築と植物、それでひとつの”生き物”

【アンコールと生きる クメール文明の今】・東京都写真美術館

写真家のBAKU斉藤さんの写真展。8世紀から15世紀にかけてインドシナ半島で 繁栄したアンコール王朝。ヒンドウー、仏教を背景にした独特の文化が栄え、宗教建築群が建立された。それから4百年後の19世紀半ばに密林の巨大樹に覆い尽くされていたアンコール遺跡群が発見された。

建築を覆いからみつき吸い取るかのような生命力豊かな熱帯雨林の巨樹。しかし、一見「侵略」に見えるこの光景も、視点を変えれば、しっかり根を張り幹を伸ばすことで建築を崩壊から守っているのだ。樹がなくなるとアンコール遺跡群はスッキリと解放されるが、同時に支えるものがなくなって崩れ落ちてしまう。

写真を見ていると、石と樹で一体のひとつの造形物のようにも見えてくる。尊顔を覆う樹はまるで衣装のようだ。写真から感じる光と風。どんな巨大な偉大な建造物も、出来たときが完成ではないのかもしれない。年月とともに満ちてくるもの、部分的な剥落や崩壊も含めた味わい。それが建造物の魅力であり、だから遺跡は美しい。

石造のデコボコしたアンコール遺跡群のフォルムは、もともとは好みではなかった。でも現地で見た時、あのフォルムが熱帯の密林の中で完璧な美をなしていることを驚きとともに発見した。どの角度から見ても美しくやさしく威厳がある。朝に夕に表情を変えてみせてくれる。写真でも表現されていたが、薄茶色の建造物と密林の濃い緑に、オレンジ色の僧侶の法衣が映える。美は風土とともにある。
by orientlibrary | 2005-08-12 23:59 | 社会/文化/人