イスラムアート紀行

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ハッダの弥勒菩薩

【アフガニスタン 悠久の歴史展】・東京芸術大学美術館

アフガニスタンには、アレキサンダー東征以来のギリシア、ペルシア、インド、仏教、イスラームなど様々な文化が混じり合い溶け合って独自の文化が生まれた。しかし、他にない文化遺産が多数展示されていたカブール博物館は見る影もなく破壊され、20世紀に発掘されたギリシア都市アイハヌムも、長く続いた内戦で廃墟になってしまった。

豊かな文化遺産の宝庫としてのアフガンが世に知られたのは、タリバンのバーミヤン大仏爆破のとき。多くのものが破壊されてから(されたことがきっかけで)注目されるのというのは、何という皮肉か。大国の地政学に翻弄される小さな国アフガニスタン。人類共通の遺産というなら、人類皆で守らなくてはならないだろう。

アメリカ、というと語弊があるが、少なくともアメリカの政治家というのは、アフガニスタンの文化や歴史を理解する能力や、美しさを感じる感性がないと思う。文化への尊敬がないから、空から好き勝手な横暴ができるのだ。石油や天然ガスの方が数千倍美しいのだろう。

ハッダ出土の弥勒菩薩像の美しさ、神への思いと人間への愛情が矛盾なく一体化した傑作だと思う。
by orientlibrary | 2002-07-31 01:00 | ウイグル/アフガン

せかいいちうつくしいアフガニスタンの村

【絵本原画展 せかいいちうつくしいぼくの村】・世田谷文化情報センター

小林豊さんのアフガニスタンの村を描いた絵本の原画展。旅行中に知り合った少年一家がモデルだそうだ。内線の続くアフガニスタン、収穫したさくらんぼとすももを町の市場に売りに行く父子。売ったお金で羊を買って家路につく一日の様子を描いている。

やわらかい水彩画で描かれる村の光景、果物の花々が咲き乱れる美しい春、果実の香りが満ちる楽しい夏、山に落ちる夕日。少年は町に行くのははじめて。賑やかな町のバザールに目が輝く。

戦争の中にも、自然に抱かれた暮らしがあり、実りがあり、喜びがあった。絵本は「ことしのふゆ、村はせんそうではかいされ、いまはもうありません」という文で終わる。

アメリカの爆撃後、ペシャワールの難民となった子供たちについてのドキュメントをテレビで見た。日干し煉瓦を作るきびしい仕事、幼い子供が稼ぐ収入が頼りの家族、子供の手足は寒い中での土仕事でひび割れていた。哀しみに沈んだ目が忘れられない。

日干し煉瓦にはしゃいでいる自分は、世界でごく一部の恵まれた暮らしを享受しているいい加減な人間だ。日干し煉瓦の質感が大好きだが、子供たちの辛い労働を見るのは複雑な気持ちでいっぱいだ。

日干し煉瓦が暮らしの中で普通に作られ、利用されるような、普通の日々がアフガンにおとずれることを願う。それにしても、普通というのは、何てむつかしいことなのか、そしてありがたいことなのか。
by orientlibrary | 2002-07-31 00:59 | ウイグル/アフガン

ラッチョドローム

【ラッチョドローム】・シアターイメージフォーラム

「ガッジョディーロ」「ベンゴ」など。ジプシーの血を引くトニー・ガトリフ監督、ジプシー3部作最初の作品。

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11世紀頃、インドの砂漠地帯ラジャスターンを出発、中東、バルカン半島、ヨーロッパ、南北アメリカなど、流浪の旅を続けるロマ(エジプトからヨーロッパに来たと考えられたためジプシーと呼ばれるようになった)。そんなロマが辿った壮大な旅を、各地に生きるロマの現実の姿と、多彩な音楽や踊りを通して描く音楽映像詩。

出発点ラジャスターン、褐色の砂漠で踊るカラフルな衣装の美女とアップテンポの音のプロローグから、すでに圧倒的。トルコ、エジプトから中欧へ。ルーマニアの「タラフ・ドゥ・ハイドゥータス」は世界的に有名。ラストはロマの旅のすべての要素を内包したような、スペインのフラメンコ。

いまだに迫害や差別も多いロマ、彼らは何を考えて何を軸として生きているのか。一面的な情報が多い中で、音楽から伝わるのは強烈な生への賛歌。生のなかには苦しみも哀しみもある。それをも含めての、原初的な生との感性の交感が、私の心の中の何かと感応する。
by orientlibrary | 2002-07-31 00:57 | 美術/音楽/映画