イスラムアート紀行

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カテゴリ:トルコのタイルと陶器( 6 )

コンヤ、蒼の旅へ。サヒップ・アタ・モスクとキュリエ

ブログ、間があいてしまいました。装飾タイルなどについて、ほぼ毎日スタディしていたのですが、そしてタイルのことを考える時間も多かったのですが、なかなかアップできなかった。予定していたコンヤの写真は、ずいぶん前から準備していたのですが。

コンヤのタイルについて書くには、もっといろいろ調べて、とくに『TILES / TREASURES OF ANATOLIAN SOIL/ TILES OF THE SELJUK AND BEYLIK PERIODS』をちゃんと読まなくてはアップできないと思っていました。でも、今の時点で一度アップしたいと思います。時間だけが経ってしまうので。。

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(青の旅へ)

そんなわけで、今回は、コンヤの「サヒップ・アタ・モスクとキュリエ(Kulliye、建築複合体)」(1270年:1258年から1283年までの間に建立/Sahip Ata mosque and complex(Kulliye) , Konya)。

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(霊廟入口のアーチ。一面のモザイクタイル。上部壁面は無釉と施釉レンガのバンナーイ)

画像中心に、織り交ぜる文章は「ファイアンスモザイクについて」(「イスラム建築における陶製タイル」/著者:ギョニュル・オネイ、より)というかたちにしようと思います(=***の後の文章)。セルジューク朝のタイルは、ファイアンスモザイク抜きに語れないと思うので。*この文章と写真は直に対応していません。写真の解説ではなく別途のものです。ご注意ください。

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(複雑な幾何学模様、高低差をつけている。植物模様のモザイクタイルを囲むアラベスクのライン)

サヒップ・アタ全体を少しだけ見てみますと、「サヒップ・アタ・モスクとキュリエ」は、セルジューク朝の宰相サヒップ・アタにより1258年から1283年までの間に建立されました。設計者は、アブドルラ・ビン・ケルリュック。

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(アーチ形の圧巻の透しスクリーン。イスラームならでは。細い黒で描くカリグラフィーが繊細)

キュリエ(Kulliye、建築複合体)の構成は、モスク、霊廟、ハナカ(hanigah=ハナカならば修行場のことだと思う。ある解説には“テッケ”とありましたが=ハナカと同義?)、浴場(タイル専門書にはhospiceとあり、コンヤ解説書にはa Turkish bathでその日本語訳としてハマム。浴場〜休息所でよいかと)。ここまで調べるのも、てんやわんや。

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(美しいターコイズブルー。そしてセルジューク独特の紫色、コバルトブルーが模様を織りなす。中心のコバルトブルーの模様もバランスがよくかわいらしい)

今回の画像は主に霊廟のものです。もう目を奪う素晴らしさなのです。霊廟は「1283年にrenovate修理・改修」との記載があり、建造はそれ以前であることは確か。あるいは霊廟への転用が1283年かもしれないとのこと。位置的には、モスクと浴場の間にあります。と、ざっくりで失礼して、ファイアンスモザイクの文章とともに、セルジューク、青のタイル世界への旅へ!

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(アーチ上部部分の細かいモザイクタイル。半球状の盛り上がりがあることで印象が強い)

*** セルジューク朝の小アジアの美術に対する貢献のひとつは、ファイアンスモザイクである。セルジューク人は、ファイアンスモザイクを実験的に用い、やがてそれをさわやかで精気に満ちた内部装飾の要素のひとつにまで発展させた。トルコブルーがやはりその主要な色であり、次いで濃い紫色、コバルトブルー、黒が使われた。

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(霊廟。青にクラクラ。壁面は水のような六角形タイルで覆われている。霊廟やミヒラーブ回りに使われる青の六角形タイルパネルの初期事例では??)

*** ファイアンスモザイクは、その名前が示すように、好みのパターンにそって、思いどおりの形に切断されたタイル片によって構成される。断面がわずかに台形をしたタイル片が、平らな面に裏向けに並べられ、その上から白いモルタルで固められていく。

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(アーチを下から見る。複雑な幾何学模様。センターにコバルトブルーを配す。ドームはレンガで周縁にも細密なモザイクタイル装飾。その下の素朴な三角形もたまらない魅力)

*** このようにして形づくられたプレートは、壁にはめ込まれたり、建築要素として装飾に使われたりする。

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(ターコイズブルー、コバルトブルー、黒、紫、白、レンガ色。古き良きイスラームタイル装飾の趣き。最高)

*** ファイアンスモザイクは、ミヒラブの装飾に巧みに使われていた。この種のミヒラブ装飾は、イスラム芸術のなかでは特異なもので、セルジューク朝とエミール諸政権(=君候国/ベイリク/ beylik)時代の建造物にだけ見られる。これらのミヒラブは、トルコブルー、紫、空色のタイル片からなる幾何学模様、植物文、ナスキー体やクーフィー体の碑文によって装飾されている。初期では、単純な幾何学模様とともに、パルメットの全文、2分の1の文様によって形どられたアラベスク模様、蔦の文様、ニ段式の装飾模様、ナスキー体碑文の彫られた縁取りタイルなどが広く利用された。トルコブルーは、空色や紫によって補われている。

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(色別に焼き、切り刻んだタイルを再度集成して貼り込むという大変な手間をかけて作られる)

*** ファイアンスモザイクは、ミヒラブのほかにドームの内側、ドームへの移行部、アーチや壁などを装飾するためにも使われた。陶芸の他の形態と同じように、ファイアンスモザイクの使用は、エミール諸政権(=君候国/ベイリク/ beylik)時代には、やはり限られたものとなった。

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(力強いモザイクタイル。その後の君候国(ベイリク beylik)時代には衰退してしまう。セルジュークの都コンヤの勢いが最高潮だった1200年代初頭より花開き、成熟し、次第に衰え、やがて時代がオスマン朝に変わると手間ひまのかかるモザイクタイルではなく絵付けタイルが主流に。13世紀、アナトリアのセルジューク朝はモザイクタイルを輝かせ、モザイクタイルはアナトリア・セルジューク朝建築装飾を個性的に彩り王朝の力を示した、と思うのです)

*** セルジューク時代には、ファイアンスモザイクが広範囲に使われている建造物が多い。コンヤのアラアッディン・モスク(1220年)、サドレッディン・コネビ・マスジド(1274年)、サヒブ・アタ・モスク(1258年)、スルチャル・マスジド(13世紀末)、ベイヘキム・マスジド(13世紀末)、チャイのタシュ・メドレセ(1278年)、ハルブトのアラジャ・マスジド(1279年)、シヴァのギョク・マドレセ・マスジド(1271年)、アフヨンのムスリ・マスジド(13世紀末)、アンカラのアルスランハネ・モスク(13世紀末)。この最後の建造物はファイアンスモザイクが浮彫りのスタッコ装飾とともに用いられた、特異な例である。


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「サヒップ・アタ・モスクとキュリエ」では、コンヤのキリム展示も充実していました。アナトリアの赤や軽やかな幾何学模様、古い味わいがステキでした。

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蒼のタイル世界に朦朧としつつ、別の目的である草木染めの毛糸を探してバザールへ。絨緞修復をしているファミリーのお店&工房で、たくさんのラグを拝見。修復に使っていた大切な毛糸を少しだけわけてもらいました。感謝。

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by orientlibrary | 2014-08-05 23:45 | トルコのタイルと陶器

スルチャル・マドラサ(コンヤ)、草創期のモザイクタイル

アナトリアのセルジューク朝時代の装飾タイル。コンヤのスルチャル・マドラサ(1242年/THE SIRCALI MADRASA IN KONYA)です。

コンヤへのタイル旅、どのモスクもマドラサも圧巻で、熱狂と感動の連続、至福の時間でした。なので、どこが一番とは言えないのですが、スルチャル・マドラサのタイルには本当に惹かれました。修復があまりされておらず、いにしえの姿のままに出会えたこと、そしてタイルのある場所が屋外(イーワーン=中庭に向けて開いた前方開放式の小ホール)であり、遺跡のような感覚でタイルを味わえたこともあるかもしれせん。(ここもまた誰もおらず、タイル友二人と3人で熱狂)

1242年建造のスルチャル神学校、トルコのセルジューク朝タイルの中でも初期に属すと思います。1242年に、この素晴らしいモザイクタイルが壁面を覆い尽くしていた。タイルの歴史を考えると、なんとも興味深く、その現場に立ってタイルを見られたことは感涙でした。

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以前ご紹介したセルジュークタイル史の詳細な専門書=『TILES / TREASURES OF ANATOLIAN SOIL/ TILES OF THE SELJUK AND BEYLIK PERIODS』では、スルチャル神学校は写真含めて10ページ。かなりのページを使っており、やはりセルジュークのタイル史の中でも重要であるようです。ざっと読んでみたのですが、タイルの模様の詳細な解説が多く、スルチャルならではの特長や他との比較、歴史的な位置づけなどは、今ひとつピンときませんでした。英語力の問題が大きいと思います。残念。なので、今回はあまり書ける内容がないのです。写真中心です。


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(エントランスのイーワーン。2階建て)


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(エントランスイーワーンのくっきりとしたムカルナス)


スルチャル・マドラサは、1242年にベドレッディン・ムスリフによってイスラム法学校として創設されました。メインのイーワーンのアーチのタイルの銘文には建築家の名前が記されています。


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(メインイーワーンの壁面装飾タイル。当時の優れた職人たちの卓越した仕事のおかげで、幾度ものダメージにも何とか崩壊せず現存している、とのこと。トルコ中で最も優れたタイルの建造物とも。模様は後の時代ほど複雑ではないけれど、カリグラフィー、植物模様、幾何学模様、どれも完成した美しさ。色の組合せ。バランス。強さ。圧巻。現在は茶色になっているけれどモルタルの白地を想像、さらにくっきりとしてくると思う)


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(メインイーワーン、ミヒラーブ形のムカルナス。1242年にこのようなムカルナスのタイル装飾があったなんて。驚きました)


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(小さなミヒラーブ形の中。ターコイズ青、コバルト青、紫、黒、そしてベースのモルタルの白も効果的)


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(主役はこの2色ですね)


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(モザイクタイルのはじまりを感じさせる。古雅の趣き、端正な美。カリグラフィーや組紐模様。このデザインが見たかった!コバルト青とターコイズ青の組合せが力強い。感涙)


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(植物模様、青の円がポイント。角の処理も施釉タイル)


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(日干しレンガ、焼成レンガ、施釉の浮彫り、バンナーイ(施釉と無釉レンガの組み合わせ)、そして施釉のタイルをカットして集成する集成モザイクタイルへ。なんと手間と時間のかかることを。だからこそ美しい。このあたりは、今後じっくりとリサーチ)


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(カリグラフィー、イスラームの装飾タイルならではの美。点ひとつ取っても、バランスが考え尽くされているそうです。美と感性に幾何学的な土台があるのかなと感じます。パルメット模様も、しっかりカットされてくっきりとした模様の列を構成)


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これまでずっと自分の好きなタイルだけを見てきました。それ以外に興味もわかなかったし、日本ではタイルの情報自体が少なかった。それが今では、ネットやfacebookで日常的に世界各地のタイル情報、イスラム建築情報に接することができます。少しずつでも毎日見ていると、発見があり、楽しく、勉強になります。ありがたい。

そしてなんだか、日本でもタイルが動いているように感じます。タイルに関する話題に触れる機会が俄然増えてきました。以前紹介した日本のタイル愛好者のfacebookページ。ますます盛り上がってきています。近代建築の中のタイル、街角のタイル、商店や地蔵祠のタイルなど、いろんな視点、いろんなタイルがあるのですね。発見があります。また、多治見に開館予定の「モザイク・ミュージアム」がらみの話題もあり、楽しみです。

そんなこんなで、日本でのタイル情報、検索などもするようになったのですが、、これがなあ、、

日本で「タイル」というとき、イスラームのタイルが出てくることが非常に少ない(過小評価という以前に認知されていない)、タイルの歴史に誤解がある(ヨーロッパ近代からのスタートと思われている)など、以前からしつこく書いていますが、このことも一層感じるようになりました。

((( ここに、いろいろと残念な事例を書いていたけど、消去! 自分のことをやっていくのみ )))

つまり=イスラームのタイルは歴史であり過去であり、現在の産業と結びつかない、だから何らかの媒体を通しての話題にのることが少ないのかと思う昨今です。ハイ。報道などを通じてのイメージの問題もありますしね。

それを前提にして、では何をするか。そんなことを考え始めています。愚痴だけではダメなんでですね。きっと。
by orientlibrary | 2014-07-16 23:44 | トルコのタイルと陶器

レンガとタイルの美 インジェ・ミナーレ・マドラサ

アナトリアのセルジューク朝、コンヤの装飾タイルと建造物。更新は、まだ「クバダバード宮殿」のタイルのみ。今後アップしたいのは、、

*「カラタイ・マドラサ」(セルジュークを象徴するようなモザイクタイルが圧巻。「クバダバード宮殿」のタイルや陶器が展示されている博物館でもある)
*「スルチャル・マドラサ」(屋外で剥離や損傷もかなりあるけれど、カリグラフィーから幾何学模様まで、最も惹かれた多彩なタイル装飾が魅惑)
*「サーヒブ・アタ廟」(濃いターコイズ青、タイル、多彩な装飾が素晴らしい)
*「エシェレフオール・モスク」(圧巻のミヒラーブ、言葉に形容しがたい。コンヤ郊外のベイシェヒール=クバダバード宮殿のあった場所=にある)
*「アラアッディン・モスク」(ミヒラーブは見られなかったけれど棺やミナレットの青を確認)

など、もう、どうしよう!という圧倒的なセルジュークのタイルたちなのです。困ってばかりもいられないので、今回は「インジェ・ミナーレ・マドラサ(THE INCE MINARE MADRASA)」を、写真中心にて。(現場ではひたすら熱中しており、調べたのは後のこと。写真と文章が必ずしも呼応していないかもしれませんが、全体の雰囲気でお願いします)

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インジェ・ミナーレ・マドラサ、創建は1264〜68年。セルジューク朝の大臣サーヒブ・アタ・ファーレッディン・アリ(サーヒブ・アタ廟のアタさんですね)により、ハディース(ムハンマドの言行録)を教えるために創設されたそうです。インジェ・ミナーレとは「細い尖塔」の意味。

設計はケリュック・ビン・アブドラー。19世紀末まで神学校として機能していましたが、1956年に博物館として開館。セルジューク朝、カラマン候国、オスマン帝国時代に作られた工芸品も展示されています。

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イスラムタイル好きの私、トルコというとタイル、イスラムという連想になるのですが、地中海〜アナトリアあたりは歴史、宗教、文化、すべてが重層的であり、キリスト教、東ローマ帝国、石造建築など、さまざまな表情が織り込まれているように見えてきます。

インジェ・ミナーレ・マドラサは「セルジューク朝の石工芸術の傑作」とも言われており、ファサードは、地中海的な植物文様、幾何学模様、カリグラフィー(「ヤシンとフェティフ」の文字)が彫り込まれています。タイル好きも見入るボリュームと精緻さです。

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一方、ミナレットはレンガ造の中のターコイズブルーのタイルが目を引きます。バルコニーの部分は半ピラミッド形で12の角があり、ターコイズ青のラインが垂直に走ります。ジグザグ模様はターコイズ青とセルジュークの紫で。青と紫とのコンビネーションは、遠目にも鮮やか。青空の下でイキイキした旋律を奏でているかのようです。

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建物に入ると、中庭、サロン、教室、神学生たちのための小さな部屋があります。ドームのあるホールはむしろレンガの印象が強く、タイルはレンガを美しく見せるためにあるかのようです。茶色と青は、強く美しく、響き合うんですよね。最強の組合せ!

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タイルは、カラタイ・マドラサに見られる三角形を組み合わせた天井への持ち上がり部分にラインのみ。が、ラインの中にはモザイクでパルメットのような模様が黒で描かれています。

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ドームは青と紫の組合せ。模様はジグザグと菱形をベースとしたもの。専門書には「キリムのデザインと共通点がある」とも。

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また、ミヒラーブ形の窓の上部などに幾何学模様、そしてカリグラフィーと植物模様の組合せのタイルが。各所でデザインが異なり、リズムがあります。どれも、とてもキレイで、見とれます。

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インジェ・ミナーレは、日本からのツアーでコンヤに行くコースにも入っているようです。ツアーのコンヤでは、旋回で有名なスーフィー教団「メブラーナ」の博物館がメインで、プラス、こちらのマドラサ。有名な観光地に比べてサラッと通りがちなようです。

元々、日本であまり馴染みのない装飾タイル、その中でもセルジュークの青と黒のタイルは、残念ながら地味なのかも。イスタンブールの華やかな絵付けタイルに人気が集まるのは理解できます。でも、セルジュークのタイル、最高です!私はそう思います。圧巻。圧倒的なのに、愛おしい。1200年代の工人たち、その匠に惹かれます。

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展覧会など、少々。

魅惑のコスチューム:バレエ・リュス展」(新国立美術館):この分野、まったくわからないけれど、「バレエ・リュス  踊る歓び、生きる歓び」という映画の後で展示を見たので、展示展開についていけました。工芸品としての衣装という視点では世界各地には、より驚愕の手仕事が多数あるけれど、舞台総合芸術として見るとテーマや表現として斬新なコスチュームだと思いました。中央アジアテイストのものが少しあり、やはりそのあたりには惹かれた。映像等で補足しながら見るのがよいかも。バレエ・リュス(ロシア・バレエ)のダンサーたち、重厚で軽やかで芸術的!(入場料1500円、図録3500円、、5000円時代ですか。国立なのだからもう少し抑えた料金にできないのでしょうか。上野の東博、常設はたしか600円くらいですが、超見応えありですしね、、)

超絶技巧!明治工芸の粋」(三井記念美術館/7月13日まで):明治工芸すごし!その精緻さ、チマチマしているのではなく勢いがあると感じます。このジャンル、もっと見たりスタディしたい。明治、日本のタイルや建築も含めて、勉強したい。

フランス印象派の陶磁器 1866-1886―ジャポニスムの成熟―」(汐留ミュージアム/6月22日まで):19世紀後半のフランスが憧れた東洋や日本の美術が色濃く反映されたテーブルウエアや陶芸作品。どちらかというと苦手な分野だけど、陶芸ということで視野を広くと思って見学。滲み出るフランス流のアレンジが興味深い。

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タイル。さまざまなタイルやタイルを愛する人や、タイルのデザインや研究に、最近、リアルでもネットでも、不思議と出会うんですよね。びっくりです。この流れは、どうなっていくのかな。
by orientlibrary | 2014-06-21 23:59 | トルコのタイルと陶器

セルジュークの八角星とクロス、クバダバード宮殿のタイル世界

アナトリア・セルジューク朝、コンヤのタイルについてアップしたいと思いつつ、ずっと「資料がない」と困っていました。が、資料ありました。なんと、本棚と資料ファイルに。ありましたどころじゃない、ずっしり重く内容濃く、これ以上ないほどに完璧な資料。もう〜、何してるんでしょう〜〜!(汗) 

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(『The Art of the Islamic Tile』 =セルジュークようやく読了、でもまだまだわからないと思っていたら、、/『TILES / TREASURES OF ANATOLIAN SOIL/ TILES OF THE SELJUK AND BEYLIK PERIODS』=400ページ以上すべてセルジューク朝&ベイリク時代のアナトリア・タイルの本!歴史、図像、製法、成分までびっしり。大喜びするも、読むのに要する時間を想像して引いた、、でもザッとでも!!/『CERAMICS FROM ISLAMIC LANDS』は陶磁器メインだけど関わりもあり/「イスラム建築における陶製タイル」=著者はギュニョル・オネイ。コピー元は『装飾タイル研究』という専門誌だった記憶。トルコの研究家によるメソポタミアから16世紀頃までのタイル史。50ページ超。とくに11世紀からのイラン、トルキスタン、アナトリアというタイルの主要舞台に詳しい)

「イスラム建築における陶製タイル」、読んだのは一度や二度じゃないはず。でも覚えてない。そんな自分を認識し、何度でも読むしかないです。そして『TILES / TREASURES OF ANATOLIAN SOIL』に圧倒され、どこから手をつけようと、、建造物のタイルに行く前に、発掘のすばらしいタイルを、と思います。クバダバード宮殿(1236年)の星形と十字形のタイル!!

これらのタイルが展示されているのは、カラタイ・マドラサ(コンヤ、1251年創設)。陶器とクバダバード宮殿出土品を展示する博物館にもなっています。圧巻のモザイクタイル装飾は次の機会にしっかりご紹介することにして、今回は「イスラム建築における陶製タイル」の文章(及び要旨)を引用しつつ、画像とともにお送りします。

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(カラタイ・マドラサ、The Karatay madrasah/セルジューク朝時代のタイル装飾が圧巻。19世紀末まで神学校として使用。1955年「陶器博物館」として開館/ドキドキして入って行くと、、)

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(カラタイ・マドラサ入口、いきなりこんなタイルを発見。クラクラ、、オリジナルの色、ターコイズやコバルト青も透明感があり惹かれるが、濃紫がまた美しい。セルジュークならでは!)

 「イスラム建築における陶製タイル」より。以下…後同様/ 宮殿の装飾に用いられた一群のタイルは、宗教的な建造物とは異なり、完全な形のまま今日まで残っているものはない。宮殿のタイル装飾については発掘調査を通じてのみ、知ることができる。

 宮殿のタイルは、宗教的な建造物に使われていたものとは、多くの点で異なっている。第1に、形状が異なる。宮殿で好まれたタイル装飾は、いわゆる星形と十字形の組合せである。端から端まで23センチの星形のタイルが、十字形のつなぎタイルとともに用いられている。

 第2に、タイルの種類、または施工の技法が異なっている。最も一般的に用いられた種類は、下絵付けタイルである。ラスタータイルはあまり一般的ではない。

 第3には、タイルの装飾が異なる。これはクバダバードの収集品によって、明らかである。

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(クバダバード蒐集品展示室。星形と十字形!こんなにたくさん集まった状態で見るのは初めて!しかも絵付けの素晴らしさに目眩がしそう。なのに、光がガラスに反射して見にくいし、写真が撮れない!どうがんばっても撮れない。こんなすごいタイルを前に、、残念無念でした)

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(気持ちだけ、反射がなかったら、、、)

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(この色、この模様。右はコンヤのシンボルでもある有名な双頭の鷲、セルジュークの紋章)

 コンヤの南西、ベイシュヒル湖岸のクバダバード宮殿で行われた発掘調査によって、セルジューク朝時代で最も注目に値するタイル装飾が明らかになった。

 クバダバード宮殿は、1236年に完成。セルジューク朝のスルタン、アラエッディン・ケイクバドの夏の別荘として用いられた。タイルのほとんどは、非常に興味深く、人間や動物の、革新的な絵柄で装飾されている。(*Kubadabad Palace was a complex of summer residences built for sultan Kayqubad ruler of the Sultanate of Rum. )

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(『TILES / TREASURES OF ANATOLIAN SOIL』を撮影/クバダバード宮殿址、コンヤ近郊/発掘の様子/タイル、イキイキしている。きれいに撮れていて羨ましい/成分分析から、窯、タイルすべての模様の解説が。すごい本!)

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(こんな宮殿だったんじゃないか、という想像図面。カケラたちにも狂喜!)

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(カケラのアップ。熱狂。この色、この照り、この模様、この土、、、。イスタンブル在住のタイル友二人と私以外、誰もいないマドラサ。もうタイルと陶器に浸りきり、、)

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 人物像としては、召使いとともに宮殿の高官が描かれている。人物像のほかに、スフィンクス、サイレーン、双頭の鷲、孔雀、生命の樹のまわりの一対の鳥、一対の竜などの魔術的な象徴動物が、タイルを飾っている。一連の実在動物も描かれている。この中では、狩猟動物や狩猟風景が強調されている。猟犬、狼、キツネ、野ウサギ、野山羊、カモシカ、野生ロバ、クマ、馬、ライオン、ヒョウ、鷹、ハヤブサなどが、飛び跳ねたり疾走する姿が優美な動きで表現されている。

 ザクロ、またはケシの枝が、地模様を形づくり、一般的には中央のモチーフを囲んでいる。絵柄は十字形タイルで仕上げられている。

 壁の上段は、普通、魔術的な動物の描かれたタイルで占められ、魔術的な世界や宮殿の高官を表現している。一方、実在する動物は下段に集中している。

 星形タイルでは、文様は通常無色透明の釉薬の下に、ダークブルー、紫、トルコブルー、黒、暗緑色で描かれている。つなぎ十字タイルは、トルコブルーの地に黒いアラベスク模様用が描かれている。素地土は、かすかに黄色味をおび、きめ粗く、くだけやすい。

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あ〜、素晴らしい。憧れの八角星とクロスのタイル、大好きな青。コンヤでの幸せなタイル時間に感謝!


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始まる。日本での、タイル・モザイクの、新しい物語。


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さて!タイル、モザイク、日本でも何かが始まるかもしれません。じつは、若干、始まっております!^^

試行錯誤は覚悟の上で、ささやかに、でも情熱とワクワクする気持ちを満載に、先日、「タモガク」がスタートしました。初期メンバー4名、もうテンションがどんどん上がってます。

ところで、タモガクとは!?泣く子も喜ぶ、「日本装飾タイル・モザイク学会」なのです!すごいでしょ。言ったもん勝ち、というより、本当にタイルとモザイクを学びたい、楽しみたい。だから学会。

当面、タイルやモザイクへの熱い思いを心ゆくまで語り合いながら、展開を考えていきます。当ブログでも、少しずつご紹介していきますね。
by orientlibrary | 2014-06-11 22:12 | トルコのタイルと陶器

圧巻コンヤ、セルジュークのタイル、大急ぎアップ編

更新少なく、お立ち寄りいただいている皆様、ごめんなさい!大急ぎで、セルジュークタイルをいくつかご紹介。今回はザクザク編、、近いうちに記事にします!


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(The Karatai madrasah/アナトリアのセルジューク朝の首都だったコンヤ、歴史的建造物は街の中心地に点在。ルーム・セルジューク朝時代を代表する傑作カラタイ・マドラサは1251年創設。19世紀末まで神学校として使用されていた。圧巻のモザイクタイル)


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(THE INCE MINARE MUSEUM/インジェ ミナーレ神学校 (1267年))


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(THE SIRÇALI MEDRESE/セルジュークのタイル、どの建物のタイルも圧巻だったが、とくにスルチャル神学校(1242年)のタイルには魅了された。技術は年代を重ねるごとに右肩上がりに高まるものではない、それを見せつけられたセルジュークタイルの旅だった)


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(Esrefoglu Mosque, Beysehir/エシェレフオール・モスク(1296〜1299)、ベイシェヒール=コンヤ近郊。ベイシェヒールには、カラタイマドラサに展示されている素晴らしいクロスと八角星のタイル群が壁面を覆っていた「Kubadabad Palace」(夏の宮殿)があった。セルジュークのタイルが花開いた地域)
by orientlibrary | 2014-05-19 01:53 | トルコのタイルと陶器

トルコ・タイル旅 街角編

アナトリアのセルジューク、コンヤのモザイクタイルとの出会いは鮮烈でした。

成田からイスタンブールへ、国内線に乗換えてコンヤ(セルジューク朝の首都だったアナトリアの都市)についたのは早朝。待合せのホテルで無事に、イスタンブール在住のタイル友、KRさんとKUさんの笑顔に会うことができてホッ。チェックインを済ませて、さあ、さっそく動きます!元気元気!

最初に訪れたマドラサ(カラタイ・マドラサ)、入った瞬間から圧倒され、数時間、皆無言。それぞれに、見る、撮る、浸る。他に来場者もなく、タイル好きには至福の時間です。その後、訪れたマドラサやモスクでも同様に、見る、撮る、浸る。

今回、ブルサとイスタンブールでもタイル三昧。写真はバシャバシャ撮りなので、また1500枚を超えています。でも、今回の見学先の数はそれほど多くない。つまり同じタイルを何度も何度も撮っています。中央アジアとはまた違うタイルの良さがありました。

そんなタイルについては回をあらため、まずは写真メインで軽〜い話題、雑談気分でごらんください。気候は、日本が寒い冬であるせいか、それほど寒さを感じず。内陸部のコンヤ、覚悟の防寒準備が、ダウンコートどころか機内用のヤッケでも暑いくらいのポカポカ陽気でした。

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(コンヤはイスラム神秘主義メヴレヴィー教団の聖地。宗教都市のイメージが強く、実際にそういう面も各所で感じましたが、高層ビルもあり目抜き通りは賑やか。各地からの観光客で賑わっています/上段右は、50年前にドイツに移民したトルコ人家族を描く映画『おじいちゃんの里帰り』の看板。各地にあり、関心の高さがうかがえた/下段のクルクルした植栽、さすがセマー(旋回)の都!木も合わせている!と感心していましたが、他の都市でも見かけた。こういうスタイルが流行っているのかも??)


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(トルコのタイルにチューリップとともに描かれることの多いヒアシンス。トルコの人たちの好きな花のようだ。春が待ち遠しい時期、アーモンドや木蓮の淡いピンクが、心をほっこりさせる)


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(コンヤで宿泊したHich Hotel Konya 。booking.comの評価が9.6〜9.8という高さ。それも納得の大満足の宿だった。メブラーナの向かい側という立地、安らげる適度な規模、古い建物や調度を再利用し今風な快適さと両立させた空間、細部までこだわったカジュアルなデザイン、ゴテゴテしていないおいしい朝食、なのにリーズナブルなお値段。歴史のあるホテルをリニューアル開業して1年。若いセンスだけでなく地元の伝統へのリスペクトが随所から伝わり感心した)


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(お約束のようなバザール編。どの国でも街でも、バザールは楽しい。こちらはイスタンブールの庶民のバザール。グランドバザールやエジプシャンバザールとはまた違い、観光客はほとんど来ないところ。ジモティKさんに連れて行ってもらった。日用品や日用衣料、生鮮食品がメインだが、グランドバザールはなんだったんだろうと思う価格帯。安い!こういうところで買物すれば、物価の高い印象のあるイスタンブールでも暮らしていけるかなと感じた。写真は閉場ちょっと前の場面なので静かだが、人であふれかえる活気がすごかった)


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(とくに何というわけではない写真だけど、トルコらしいなと思った。町中に野良ちゃんの大型犬がリースなしで歩き回っているのがすごい。狂犬病予防はしているらしいけど、ちょっとコワイ。日本はプチサイズのあくまでペットのワンコが多いので、大型犬にちょっと驚く。そして猫。トルコではなく「トネコ」かと思うくらい、猫が多いと思う。そういえばイスタンブールの猫のテレビ番組があったな。あまりに多すぎると憤慨している人もいたけど、基本的には受け入れられている感じ。気ままに街を闊歩する猫の多さが、土地の自由でのんびりした印象につながっているのかな)


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(こちらも町中エピソード集。柿がこの時期もツヤツヤして売られていた。傘がさしかけられた店頭。イスタンブールは毎日雨だったけど、それもまた良し。どんな気候でも絵になる街。すごい。海あり高台あり、美観に裏付けられた歴史遺産とそれらが織りなすスカイライン、財産。世界中から観光客がワサワサと訪れる。観光を打ち出す日本、見習う点が多いと思った/上段右:ブルサにて。こういう建物も多い。地震を考えたくない建物が非常に多いと思う/下段左:イスタンブールの骨董街にて。自由な感性が満ちて楽しい一角。この店は「ガラクタ度」が高く微妙すぎたが見るには楽しかった/下段右:今も恐ろしくなる、、肉や油物に弱いので後半だんだん食べるものがなくなってくるのが常。何かスイーツでもと思って入ったカフェ。ムースかプリンにしておけばよかったのに、、、みんなが食べている大きなケーキを食べてみたくて、写真のメニューを見て選んだのはフルーツ系ケーキ。が、来たのはこれ!上のビザンチンのモザイクみたいな小石状の一粒を口に入れると、、超激甘爆弾が炸裂!チョコに砂糖がコーティングされている。大量に乗っているばかりかスポンジの中まで!白いチョコ柵も激甘。早々撤退したが今見ても恐ろしい、、)


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(町中にタイル装飾が多い。伝統的な水場などだけでなく、駅の壁面の陶の装飾が目を引く。それぞれ工夫があり、楽しい。タシケントの地下鉄駅も素晴らしいタイル装飾が各駅を彩るが写真禁止。トルコは写真もOK。この自由さがうれしかった。ホントにその点がハッピーだった。トルコ旅、全体にとてもスムーズで快適だった)


最後のタイル写真の流れで、、町の中のタイル装飾、タイルで美しく飾った建物や民家、そういう場面は、なにもヨーロッパだけじゃない、というか、むしろ中東、中央アジア、マグレブなどの地域が圧倒的に「本場」です。が、「タイルのある街角」みたいな記事をたまに見ると、ほとんどヨーロッパ。理解に苦しむ。多彩でゆたかなタイル文化があるエリアを、なぜ取材紹介しないのかわからない。ヨーロッパの方が取材に行きやすいから??「産業タイル」ではヨーロッパが先進だから??それが理由??

テレビを見ると、中央アジアの大都市でも「秘境」になっている。秘境って、パミールの山岳地帯など非常に行きにくい場所を言うのかと思っていたが、今どきは、聞いたことがない、行ったことのない地域のことを秘境と言うようだ。

ブログを始めた9年ほど前とは状況も少しずつ変わり、タイルが好きという人にもけっこう出会うようになった。この点は、とてもうれしい。でも、「タイルをめぐる環境」みたいなものは、あまり変容していないと感じる。このちっぽけなブログ、微力でもやはり続けていくつもりです。

たぶんなら、次回からご紹介予定のセルジュークのモザイクタイルは、あまり反応がないと予想しています。華やかさに欠ける。印象が地味で重く、無骨といえるかもしれない。青のfacebookでも、12、13世紀頃のタイルはあまり人気がないのです。それでも、アップしちゃいます!自分がいいと思ったものを。タイルの歴史からみても、とても大切な時期のものを。中世の匠たちの手技と幾何学の凄みを。

後半、叫んでしまってますが、これからも楽しくやっていきます^^また遊びにお立ち寄りくださいね。
by orientlibrary | 2014-03-07 23:34 | トルコのタイルと陶器