イスラムアート紀行

orientlib.exblog.jp

カテゴリ:日本のタイル、やきもの( 21 )

青淵文庫の和の趣のタイル、ウィーン分離派との関係が?

中東で、日本で、多くのことがありました。どうしてこんなことが起きるのか、ということが連日のように報道され、重く暗く悲しい、やりきれない気持ちを抱えてしまいます。ひとつひとつに思うこと、考えることはありますが、何か書いてみたいと資料を集めていたら、また次の何かが起きる。イスラームに関して言えば、イスラームから「IS」を連想する人は、現時点では少数ではないでしょう。「IS」に最も苦しめられているのはイスラームの人々ですが、さらに誤解や偏見も重なります。また長く続くシリア難民の苦しみや、宗教に名を借りた文化財の破壊冒涜など、言葉がありません。タイルのことばかり書いていていいのかという気持ちもあります。(ブログの更新は少ないのですが、タイルや青のFBはけっこう更新しているので、、)。まとまりませんが、、日々見たもの、西アジアや中央アジアのきれいなもの、これからも書いていければと思います。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

西アジア遊牧民の染織


東京国立博物館東洋館(アジアギャラリー)にて、「アジアの染織 西アジア遊牧民の染織」が展示されています(4月5日まで)。

e0063212_23462412.jpg

「遊牧民研究家、松島清江氏が1960年代から1980年代にかけて現地で収集したコレクションを展示します。インド西北部からパキスタン、アフガニスタ ン、イランからトルコにかけて遊牧を営んだ部族が染め、織り、制作したハンドメイドの衣類や袋物、テント用敷物。家畜の毛をつむいで織り、あるいはフェル トにして作られた、各部族の特色ある色と文様の世界を紹介します」との内容。

e0063212_23463676.jpg

「遊牧民の染織〜トライバルな毛織物」というジャンルも、装飾タイル同様、日本ではあまりメジャーではない、というか、好きな人はものすごく好きだけれどあまり知られていない、広がりが少ないジャンルではないかと思います。でも紋様や技法など、とても魅力があります。古いものは、色もいいですね。引き込まれます。

ただ展示としては、解説がややざっくりしていました。部族名や地域もなく「トルコ」とだけ表示されていたり。「敷物 赤紺緑紫地小花幾何文様刺繍縫合せ」といったタイトルは現物を見ればわかるのでは?作った人たちや特徴的な技法について知りたいです。博物館での稀な展示なので、贅沢は言えませんが!


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ベジタブル・センセーション、カドヤ・ワールド


陶芸家・角谷啓男さんの個展(六本木アクシスSavoir Vivreにて/3月1日まで)。あ、上のタイトルは私が勝手につけたものです。びっくりな野菜や花や葉っぱたちだったので。

e0063212_23481746.jpg

ガラスや磁器土でできているのですが、本物より本物らしい繊細な仕事!すごいな〜。テイストがまったく違うのですが、超絶技巧の明治工芸を思い起こす面もありました。が、もっとオシャレでモダンです!

e0063212_23483248.jpg

角谷先生、陶芸教室行ってなくてスイマセン。。久々に会った角谷さん、野菜たちとの日々でちょっと疲れも見えましたが、逆に内に炎が赤々と灯っているのを感じました。不肖生徒ですが、またよろしくお願いします。

e0063212_23484577.jpg



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

大正タイルの館 青淵文庫


日本のタイルを少しずつ見ていますが、まだまだです。とくに近代建築に使われたタイルは、行くのにモチベーションアップが必要。青淵文庫(せいえんぶんこ/渋沢資料館内/東京・王子)も、じつは大きな期待を持たずに行ったのですが、すんなりと受け止めることができました。

渋沢史料館は、近代日本経済社会の基礎を築いた渋沢栄一の思想と行動を顕彰する「渋沢青淵記念財団竜門社」の付属施設として、1982年に北区飛鳥山公園の一部に設立された博物館。旧邸内に残る大正期の2つの建物「晩香廬」と「青淵文庫」、本館があります。

ステンドグラスやタイルががあるのは青淵文庫。設計は田辺淳吉。1920(大正9)年に設計開始、1925(大正14)年竣工。完成目前の1923年に関東大震災にあい工事は一時中断。震災の経験を生かして再工事。栄一の書庫として、また接客の場としても使用されたそうです。

e0063212_23502820.jpg

明治〜大正の西洋館、苦手なものもあるので心して出かけましたが、箱形の端正な佇まいに安心。そして予想以上に多用されていたタイルが、色合いも模様も組合せもテクスチャーも和な感じでスッキリ。けっこう好きだなあ。

紋様は渋沢家の家紋「丸に違い柏」に因んで柏の葉とドングリの実をデザインしたもの。石膏型成形。色は青磁釉の青緑と白、金を使用。オリジナルと修復時作成(200個ほど)が混在。けれどもあまり違和感がない。質実感あり好み。館内部にも、窓回り、柱回りなどにタイルが使われていました。

e0063212_23522358.jpg

洋館建築にはとんと疎いので、この感じはなんなんだろう、他の洋館と何か違うなあ、と思いながら、置いてあった館紹介の掲載雑誌を後で読もうと写真に撮りました。で、撮ったままにしていたものを、先ほど読みました。面白かった。藤森照信さんの「タイル多芸」というシリーズの読み物のようです。(そんな連載があったんだ、、今、タイルの連載ってどこかにあるのかな??) 雑誌名は今わかりません。が、そこから引用を!(< >内はorientlibraryが補足追記)

——— 「タイル多芸4 大正期の掌品 青淵文庫と晩香廬」(藤森照信)———

<第一印象は正体不明の建築。タイルもよくわからない>
「(大学院生時代はじめて訪れたとき)、にぎやかな明治の西洋館に慣れた目には、全体を箱形とし、一部に角柱を並べるだけの外観はあまりに無口すぎるし、一歩なかに入ったときのインテリアの印象も、それまで見慣れたイギリス風フランス風などといったヨーロッパの歴史様式とも違うし、かといってアールヌーヴォー以後のモダンデザインじゃないし、正体不明、見所不詳の感を否めない」

「ステンドグラス以上のとまどいはタイルだった。箱形の単純な外観の唯一の見せ場は開口部回りにグルリと使われているタイルだが、そのタイルがどうもよくわからない。まず、色がいけない。緑色をベースとしているが、建物に緑色を使う例はきわめてまれで、なんだか落着かない。加えて、タイルの面に刻まれた装飾も、幾何学紋様のようでもあり、植物風でもあり、ステンドグラス同様もっと伸びやかにならないのか。国籍不明、デザイン原理不詳の建物、と学生の私の目には映ったのだった」

e0063212_075640.jpg


<優れたデザインだった。中国風が溶け込んでいる>
「それから20余年。明治の西洋館だけでなく、大正・昭和初期の西洋館、さらに20世紀のモダンデザイン、またモダンデザインの影響を受けた歴史様式、といったさまざまな日本の近代建築の形と思想についてその後勉強を重ね、今は、また別の目でこの建築を見ることがでいるようになり、たいへん優れたデザインであると考えるようになっている」

「まず、国籍不明の件、結論から述べると、中国風なのである。中国の感覚を取り込んだヨーロッパ系のデザイン。ステンドグラスの装飾は殷の青銅器などでおなじみのゴニョゴニョ紋様だし、そこここに竜に由来するようなモチーフも潜んでいる。ステンドグラスとタイルが一般よりずっとグリーンがかっているのも、中国の緑と朱を好む伝統とふまえているといえよう」

「中国風のデザインセンスを加えた理由は、この文庫の蔵書の性格にある。論語関連の和漢の古典籍を収蔵し、それを使って論語研究をする研究図書館というのが青淵文庫の設立目的であった。渋沢栄一は資本主義の経済活動にも論理が不可欠と確信し、その根本を孔子の教えに置こうと考えていた。こうした渋沢の思想を踏まえ、設計者は中国を感じさせるセンスを巧みに取り込んだわけである。あまりに巧みに溶かし込んでいるから、中国風はムキ出しにならず、逆に一見しただけでは国籍不明に見えてしまうのである」

e0063212_235240100.jpg

<じつはヨーゼフ・ホフマンの影響を受けたデザインだ>
「外観は凹凸が少なく、アッサリと仕上げられ、ひとつの箱に化すような兆しが観察されるし、インテリアでもあれこれ付加された装飾のバックにひとつのマッスが感じられよう」

「実はこの建物のデザインは、かのヨーゼフ・ホフマン設計のモダンデザインの記念碑的作品、ストックレー邸の影響を受けているのである。設計者の田辺淳吉の自ら記した文によると、彼は大正のはじめにヨーロッパに出かけたとき、それまで習得してきた歴史様式に喰い足りないものを覚え、むしろウイーンで巻き起こっていたセセッションのデザイン運動に関心を持ち、リーダーのホフマンの仕事に強く魅せられた、という」

「ストックレー邸とのつながりにマサカと思われる読者のためにひとつ証拠を挙げるならば、外観の開口部のタイルの縁取りはどうか。初期の案だと、2階まで窓が伸び、その回りをタイルが縁取っているからもっとわかりやすかったが、こうした幾何学化したファサードをタイルで縁取って飾るというのはストックレー邸のやり方にほかならない」

<平明なうえでの装飾性というタイルの得意技を理解>
「当時の記録によるとタイルは“泰平タペストリータイル”ということになっているが、泰平は京都のタイルメーカー辻製作所のブランド名で、タペストリーというのは装飾織物を指す。建築部材というより、織物で壁面に帯状のアクセントをつけるというところにウイーンのセセッションへの共鳴が感じられよう」

「晩香廬も設計は田辺淳吉で、完成は大正6年。イギリスのチューダー様式をベースとしているが、暖炉の上部の「喜」の字の飾りに象徴されるように、そこはかとなく中国感覚が溶かし込まれている」

e0063212_23525778.jpg
(洋風茶室・晩香廬。内部撮影禁止なので写真なし。「1917(大正6)年の竣工で、丈夫な栗材を用いて丹念に作られ、暖炉・薪入れ・火鉢などの調度品、机・椅子などの家具にも、設計者の細やかな心遣いが見られます」=HPより)

「しかし、チューダー様式、中国感覚の背後で、青淵文庫と同じように、設計者はインテリアをひとつのマッスとしてとらえているし、壁面の処理も、暖炉回りの壁で明らかなようにより平明にしたうえで、タイルと木部によって装飾性を生み出そうとしている」

「平明なうえでの装飾性。イスラム建築の装飾タイルを引くまでもなく、たしかにこれはタイルの得意技のひとつといわなければならない」

ーーーーーーーー

さらに、こういう見方も。(同じく雑誌を撮影したものより)。今度はオットー・ワーグナー。

「青淵文庫の設計は田辺淳吉。オーストラリアの建築家でウイーン分離派のオットー・ワーグナーに傾倒し、青淵文庫もワーグナーの代表作「郵便貯金局」に似ている部分が多いと言われている」「窓の枠と柱のタイル、そして窓上部のステンドグラスには渋沢家の家紋にちなんだ柏の模様が施されている。細部へのこだわりは田辺がワーグナーから影響を受けていることを表しているのではないだろうか」(月間建築仕上技術/2008年9月号)

え、、論語、孔子、中国、資本主義、ウイーン分離派、、

そんなにいろいろな要素があったんですね。う〜ん、すごいな。そして、渋沢栄一さん、資本主義にも論理が不可欠、さすが明治の実業家は骨太。

タイルオタクには、「平明なうえでの装飾性」という見立てが、すんなり入りました。イスラームの建築や工芸は優美繊細だけれど爛熟じゃないんです。華麗だけどゴテゴテしていない。そこが好きなのです。そんなこともあり、青淵文庫、予想していたより共鳴できました。

ウィーン分離派からの影響、建築史としてはそうなのかもしれませんが、タイルについて言えば、幾何学紋様と植物紋様の組合せや青緑の使用などは、私にはイスタムタイルと、また一部のヴィクトリアンタイルとの共通項として感じられました。そしてまた、「やきものとしての日本のタイル」の美しさも宿っていると感じました。「泰平タペストリータイル」の底力!日本のタイルも、もっと見て歩きたいと思います。
by orientlibrary | 2015-03-01 23:58 | 日本のタイル、やきもの

優美洗練!九谷焼美術館、超絶豪奢!横浜真葛焼

伝統ある産地、洗練の美意識と匠を伝える 「石川県九谷焼美術館」

イスラームの装飾タイル偏愛紀行ではありますが、日本の陶芸、工芸も、とても好きです。年々惹かれています。日本の陶芸産地には地元の陶芸をテーマにした博物館、美術館も多くあり、総合的かつ深く見られてありがたい存在。先日は、絵付けで有名な九谷焼を専門に展示紹介する「石川県九谷焼美術館」を訪ねました。

石川県九谷焼美術館は2002年開館。加賀市「古九谷の杜親水公園」内にあり、周囲の自然と一体化した心地よい美術館でした。設計は富田玲子さん(象設計集団)。公園と一体になったくつろぎ感、細部まで心配りされた素材使いや色使いなど、建築というものに久々に感動しました。行ってよかった。

e0063212_2193638.jpg
(小雨模様の天気でしたが、緑がしっとりとして気持ちも落着きます。やきものもまた雨に一層映えますから、雨もまた良しです)

e0063212_2194933.jpg
(公園内のなんらかの施設。何かはわからなくても、青をめざとく見つけ近寄ります。濃淡がやさしい日本の青。イスラームの紺碧の青を求めて旅をしていますが、こういう青も本当に好きなのです。九谷五彩、それぞれに何て魅惑なのでしょう)

e0063212_2110495.jpg
(公園内からも、次々と現れる五彩のやきもの。床に柱に壁面に。大きさを変えたり、表情を付けたり、見て歩くのが楽しい)

館内の常設展示は、
* 青手  (緑・黄・紺青・紫の4色を使い大胆な筆づかいで独自の世界を築きあげた青手古九谷、そして青手の伝統を受け継ついだ吉田屋窯、松山窯などの名品を紹介)
* 色絵・五彩  (「九谷五彩」と呼ばれる緑・黄・紺青・紫・赤の色絵の具で、山水や花鳥風月、人物などのモチーフを、大胆に繊細に描き出した色絵の名品を紹介)
* 赤絵・金襴  (宮本屋窯の飯田屋八郎右衛門によってスタイルが確立した赤絵細描の作品や、京都の名工永楽和全が伝えた金襴手の技法による九谷焼など、赤と金のコントラストで表現された作品を紹介)
など。見応えありました。

そして企画展示は現代作家の作品を多数展示。九谷と聞くと、ちょっと作風が古いのでは?というイメージの方もあるのでは?が、この現代作品が作風も多彩で、細密かつ力強く、圧倒的に素晴らしかったです。産地の底力!!!(展示作品が撮影不可なのは仕方ないことですが、アップできないことが非常に残念)

e0063212_21102191.jpg
(館内。直線曲線の変化、見え隠れする九谷カラー、ガラスだったり陶だったり。床や柱も陶の魅力をさまざまに伝える)

e0063212_2110443.jpg
(中庭には水琴窟。写真左上の青い椅子、なぜ斜めに置いてあるのかと思って座ってみると、ここから中庭がちょうど良く見えるのです。視線が低く、落着きます。展示室外の目立たないところに石のモザイクが。九谷カラーも使いシックです。右下は陶器破片を利用した飾り。大きな美術館ではないけれど、視線や素材の変化があるので飽きさせません)

2階の喫茶室も、作家さんの作品を使ってのセッティングが、とても洒落てました。庭を見ながら外のテラスで風に吹かれて、がおすすめです。

e0063212_21105610.jpg
(喫茶室にて。右下は青が美しい陶板)


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

横浜のやきもの・真葛焼 「宮川香山真葛ミュージアム」


数年前からでしょうか、「横浜のやきもの」ということと、「明治工芸の超絶技巧」という2点から、ずっと気になっていた横浜真葛焼と、その専門博物館である「宮川香山真葛ミュージアム」。今回、横浜のアートイベントの一環として館でもイベントがあることを知り、良い機会と出かけてきました。

豪奢な細工や幽玄の色彩が特色の真葛焼、九谷焼とはかなり趣きが異なりますが、圧巻の匠の技で見る者を魅了するのは同じ。明治を代表する陶芸家、宮川香山の世界に浸りました。

e0063212_2117553.jpg
(横浜駅から徒歩でも10分かからない立地。ビルの1階。HPを見るとお菓子の会社がスポンサーのようなのですが、地元の真葛焼を紹介しようとするエネルギーと意思がすごい。施設の維持は大変なことでしょう。拍手/館内の展示。広くはないけれど作品がきちんと見えるように気配り/下の中と右=イベントの「真葛焼鑑定会」の様子)

まず真葛焼について。あまり情報が見当たらないこともあり、館のチラシから引用します。

「世界を驚愕させた横浜真葛焼 〜 1842年、初代宮川香山は、京都真葛が原の代々やきものを生業とする家庭に生まれました。29歳のとき、輸出向けの陶磁器を製造するため、横浜大田村字富士山下に真葛焼を開窯します。1876年(明治9年)、フィラデルフィア万国博覧会に出品された真葛焼は絶賛され、その名は世界に知れ渡ります。その後、フランス、アメリカ、イギリスなど各地の万国博覧会で輝かしい受賞を重ねました。真葛焼は初代から、二代、三代へと引き継がれますが、1945年横浜大空襲で壊滅的な被害を受け、閉窯。四代目香山の復興努力もむなしく、その歴史は閉じられ、今では「幻のやきもの」と言われています」

19世紀の万博と日本の明治工芸については、薩摩焼の細工や漆の超絶技巧で関心を持つようになりました。真葛焼も「高浮彫」という精緻な彫刻を施した技法が特徴です。じつは好みとしては、豪華絢爛で派手なものは、いくら美しくても苦手。真葛焼の「高浮彫」も引いてしまう面もあります。今回もトークなどで熱の入ったお話を聞かなければ、派手だったなあ、と帰ったかもしれません。が、エピソードなども聞き、あらためてじっくり見ると、やはりすごい!と見入ります。

e0063212_21174014.jpg
(初代香山の作品。右上=蟹が施されている作品は遺作だそうです。土で作られた蟹、生きているようです/右下の彫刻=TV番組の「鑑定団」に出た作品で、「いい仕事してますね〜」の絶賛賛辞が。傷がなければ1千万円の価値とか。縁あってこちらに寄贈されたとのことです)

e0063212_21171557.jpg
(香山は当初薩摩焼を研究していくつもの作品を制作、輸出していましたが、金を多量に使うため多額の資金が必要。そこで金のかわりに、身近な動物や植物を精密な彫刻で彫りり込む「高浮彫」を生み出します。より細密な表現のために、庭に鷹や熊を飼うまでしたそうです。鳥の表情がすごい。細かい!)

e0063212_21165856.jpg
(ここまでゴテゴテすると(失礼!)、苦手を通り越して興味が。細工に気を取られるけれど絵付け部分の描き込み密度もすごい。もちろん元々の成形や焼成も。しかし高浮彫は完成まで何年もの時間が必要なため、香山は後に作風を一変し清朝磁器を元に釉薬の研究したり釉下彩の研究に没頭。美しい作品を残しており館内にも展示されています)

精緻な細工を特色としていた初期真葛焼も、写実的な作品がしだいに減少。二代目香山はのちに、「外国人が濃厚な作風に飽き、日本本来の趣味である清楚淡白なものを好むようになってきたからであった」と語っているそうです。マーケティング!

また二代目による初代への、次のような回想も。「故人は西洋向けのけばけばしいものよりも、日本向けの沈んだ雅致に富んだ物の方が得手のようでした」。実際、晩年の作品は滋味あふれ、伝統的な情緒あふれる作品が多いとのこと。
e0063212_21164643.jpg
(植物も細工と絵付けを重ね、独特の世界。ときはアールヌーヴォーの時代。時代の気分、共時性というのもあるのかも? 館内での解説などによると、窯には200名もの職人がいたこともあり、誰がどの部分をおこなったというのはわからないそうです。香山作品であり真葛焼窯全体の作品でもあるのでしょう)

e0063212_21162921.jpg
(今回の企画展示は、稀少で貴重な高浮彫を展示室に満載。多彩な作品を見られる貴重な機会だったようです。こちらの虫の表現、花や鳥に気を取られて最初は目につきませんでしたが、長時間見ているうちに、ささやかな表現もすごいなあと気づきました)

京都の腕の良い職人が、海外との交易盛んな時代に輸出に都合が良い横浜で窯を開き、薩摩焼に彫刻的要素を加えた華やかな作風をもって流行の世界万博で一世を風靡、そのために渾身の努力をする。けれども晩年は滋味あふれる雅な作品を制作。しかしその後、窯は、横浜の大空襲により三代香山が亡くなり、多くの資料も失われ、閉窯に。

美しい陶磁器群のなかに、時代が刻々と流れている。ときには華やかに、ときには辛く悲しく。さまざまに思いが巡ると同時に、超絶技巧と淡白な美を両立し得る日本陶芸の深さに、あらためて感慨をおぼえました。


* * * * * *
これからも、たくさんの陶芸を見ていきたいと思います。今回ご紹介できなかった「河井寛次郎記念館」、機会があれば何かとまとめて書きたいと思います。

e0063212_21154474.jpg
(京都五条坂の河井寛次郎記念館。大好きな世界。河井さんの文章がまたいいですよね〜。。)


* * * * * *
&このところ、日本のタイルの動きがすごいです。ほんとにびっくり。個人ができる範囲ですが、取材などもおこないつつ、こちらも書きたいと思っています。
by orientlibrary | 2014-10-13 21:22 | 日本のタイル、やきもの

”みかわち焼”、やわらかな白と淡い呉須、超絶技巧が織りなす優美な陶世界

前回更新から時間が経ちました。時間の早さについていけてません。。こんなブログですが、どうぞよろしくお願いします。

この間、いろいろ見たものはあるのですが、今回は記憶の新しいところで、「江戸の美、明治の技、現代の匠  長崎 みかわち焼展」(渋谷ヒカリエ8階にて/1月20日まで)について。ライブトーク「みかわち焼めぐり」(講師:荒川正明さん)のお話を軸に、展示会場を巡るイメージで、ご紹介したいと思います。

* みかわち焼 * 400年の歴史をもつみかわち焼。江戸時代には平戸藩の藩主のための器や献上品をつくる「御用窯」として、篤い保護のもと採算を度外視したような繊細なやきものを残しています。幕末から明治・大正・昭和初期には、ヨーロッパへの輸出のための洋食器や宮内庁御用達の食器など、一時代の工芸を象徴した存在でした。こうして培われた職人技は、いまでもDNAとなり受け継がれ、うつわづくりが続けられています。(チラシより)

*「 」内=トークより、荒川さん、みかわちの作家の方、コーディネーターの坂井さんの言葉/写真の説明及び情報部分は、会場の展示解説、冊子「みかわち焼の見どころ・勘どころ」、チラシ等を基にしています。

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *

e0063212_0301472.jpg
(会場光景。江戸〜幕末、明治、大正、昭和初期のものから現代の作品まで貴重な名品揃い!「美術館や博物館に展示されているほどの逸品が、オープンな場で見られる。あり得ない。照明もいいし見やすい」と荒川さん。ガラスケースの中のものは撮影も可で嬉しい。下段左はライブトークの様子。熱心なオーディエンスがたくさん。作品を見ながらお話を聞けるので臨場感がありました)

16世紀末から現代に続くみかわち焼ですが、その歴史や功績がきちんと認識されたのは、この10年くらいのことなのだそうです。

「みかわち焼は、江戸時代、幕末明治は細工物で有名だった。平成10年以降の研究でわかってきたのは、これまで柿右衛門と言われてきたものの中にみかわち焼が入っていたこと。平戸藩三川内皿山代官所跡の発掘調査では柿右衛門と同じようなもの、余白を持ったものが出てきた。浅草の松浦家の屋敷の調査でも、ものすごくきれいな元禄前後の染付がたくさん出てきた。これまで肥前や有田として報告されていたものも、再度見直したらみかわちということが多い。みかわちを見逃していた。研究者の間で、やっとみかわちの本当に歴史が認識されてきた」

e0063212_0231198.jpg
(染付草花文輪花皿/江戸時代/高級食器としてつくられたものと考えられ、皿の中央〜見込み〜部分は無地に二重の線、その外側にはボカシ濃みによって地面と大胡石と草花が描かれている)

「有田では18世紀には量産が始まり雑器生産に向かうが、みかわちはこの(高い)レベルを維持し、18世紀になっても16世紀と同じ仕事している。余白があり繊細なタッチで秋草などを描いている。鍋島の藩窯と同じような松浦藩の藩窯。江戸中期にもレベルの高い仕事、いい仕事をしている」

e0063212_0233543.jpg
(白磁水差/江戸時代後期/蓋の表面には、原料に含まれる鉄分がホツとなって現れている。本来、磁器製品としては白い肌を損なうマイナス点になるが、長石分が多かったと推されるマット調の釉と調和し、むしろやわらかい印象を生み出した)

「白磁水差しは、やややわらかい感じ。なにかあか抜けた白磁の美しさ、破綻のない造形の美しさ。ヨーロッパでは磁器の時代、白磁が流行した時代。そういう世界の流れにしっかり沿いながら磁器の仕事を九州でやっていた。海外に近い、世界に開かれた造形感覚がここにあったと感じる。日本の磁器の中では異質な世界、真行草の真につながる造形を感じる」

e0063212_0235215.jpg
(献上手唐子絵銘々皿/江戸時代末期/器の中央部分に二重線が引かれたものを「献上手」と呼ぶ。七人唐子、松、蝶など)

「唐子絵銘々皿は典型的な唐子。18世紀の後半から作られた有田より先んじて中国モチーフを取り込んだ」

e0063212_025755.jpg
(染付雀竹文大皿/江戸時代/雀の躍動感と中央部の二重線、内部の大胆な余白で見る人にサイズ以上に大きな印象を与える)

「雀竹皿。周辺のものを自然に使う。色合いも自然。土を作るにしても今は精製する。鉄分を抜くので白い。これを抜ききらない侘び寂び的なものは当時の特徴。みかわちでは、天草の土を先端的に取り込んできたが、地元の土を混ぜながら発展した。地元の土を入れることで細工しやすくなった」

e0063212_026335.jpg
(上2点は大正時代のもの/染付透彫香炉〜透し彫りは器面の一部をくり抜いて模様を施す/染付菊文献上徳利〜淡い呉須の色や底に近い部分の唐草の線がみかわち焼ならではのもの)

e0063212_0263782.jpg
(上部に龍の細工、染付で唐獅子の絵、下部に剣先模様)

「(↑上写真)、繊細な技法を駆使した細工物。龍に唐獅子の絵。有名な狩野永徳の獅子には渦巻きがあり大きな気を宿している感じがするが、この獅子にはものすごい細かい渦巻きが全体にある。勢いがあり素晴らしい」

「狩野派の絵師がみかわちに来た。絵師が原画を描き、やきもの職人が描写していく。日本画をベースにしている。染付の濃みでぼかしていく。筆跡がでなくて日本画のようなぼかしがでる。その効果がこの染付の特徴」

「文様は剣先が多い。武士の心。失敗を恐れず挑戦する。変なものを世の中に出さない(心意気がある)」

e0063212_0264746.jpg
(左:白磁毛彫虎置物、江戸時代後期、髭や眉毛も彫られているのが釉のたまりによってわかるが、口の中の細かい歯や瞳には釉をかけないことでリアルな表情になっている/右:菊彫文鎮、明治15年、菊花飾細工、一枚ずつ切り起こして生まれる花びら)

e0063212_0305155.jpg
(染付秋草文椀/江戸時代/江戸時代末期以降のみかわち焼は「薄づくり」が特徴のひとつになるが、その100年ほど前に、この当時としては薄く精巧につくられた高級食器。淡い呉須で、野菊などの秋草が繊細に描かれている)

「江戸中期の蓋椀。有田や波佐見がくらわんか茶碗のようなものを作っている時に、みかわちでは量産だと思うが緻密な絵付けをしている。余白を持っており、いい仕事。18世紀にこういうものがあったことに驚く」

e0063212_0284261.jpg
(染付鯉陽刻花瓶/江戸時代後期〜末期/藍色の鯉に重なるように動いた白い鯉は、「置き上げ」の技法で描かれている。器本体と同じ土を水に溶いたものを何度も塗り重ねるようにして描き立体感をつくる)

「鯉が二匹。白い泥を塗って盛り上げる置き上げという技法。浮世絵でも広重に盛り上げる表現がある。時代の流行を取入れ、やきもので重要な部分を浮き上げたのだろうか。魅力がある」

e0063212_029248.jpg
(染付菊文角形水滴/明治時代初期/一枚一枚の細かい筋に至るまで描き、曲線が強調された花びらは、菊の流麗な魅力を引き出す。細密な描写とみかわち焼特有のボカシ濃みによって、絵画的な立体感をつくり出した)

「水滴。文房具、李朝が有名。菊水の意匠、永遠の命、吉祥。みかわちには菊の模様が多い」

e0063212_0293992.jpg
(中里陽山/昭和時代に名を馳せた陶工。卓越した絵付け技術。形のバランスやその薄さはみかわち焼の伝統。近代のみかわち焼の技術を体現/左はデミタスカップ、右は菊紋章入椀皿。薄づくりの皇室用食器としてつくられた。江戸時代以来のみかわち焼の特徴である淡い呉須が使われており繊細)

「品がいい。白磁の薄さは透けて向うが見えるくらいだ。ハレというか日常でも使いたい。欲しい」

e0063212_0295248.jpg
(現代の2点/虫籠鈴虫、嘉久房窯/白龍、嘉久房窯)

会場で頂いた『みかわち焼 散策ガイド 見方、買い方、歩き方』という冊子が充実!染付、唐子、透かし彫り、手捻り、菊花飾細工、置き上げ、薄づくりといった技法から、歴史、やきもの用語集、古写真、散策マップまで。ハンディサイズのこの冊子を持って歩けば、初めてでもスムーズに窯巡りができそうです。

昨年1月に引き続いての展覧会拝見。みかわち焼の端正・優美で品のいい佇まい、超絶技法を駆使した細密な表現、やわらかい白地、淡い青、薄づくり。美しいものに出会う、触れる幸せに存分に浸ることができました。作家の皆様、協同組合の皆様、開催準備をしてくださった皆様にお礼申し上げます。ありがとうございました。


--------------------------------------------------

次回は、こちらも陶酔の陶芸美、板谷波山(現在、出光美術館で「板谷波山の夢みたもの」開催中)について、日本の陶芸超ビギナーが素人目線で、素直に感じたことを書いてみたいと思っています。

&青の釉薬づくりも最終局面に入ってきました(と期待!)。

e0063212_0322641.jpg
(透明釉レシピは決定。3種類比率替え呈色剤を加えた下段左の6つのピースの中から一つ、望みの青が輝きますように。青の名前は「リシタンブルー OLK(オルカ)」=orientlibraryとカドヤ先生のイニシャルで=にしようかなとかイメージ先行、どんどん広がってます。青ができたら、いろいろ作ってみたいな〜)
by orientlibrary | 2014-01-20 00:47 | 日本のタイル、やきもの

かたち・きもち、民藝のうつわ、カンタ刺し

瀬戸から戻って1週間。この1週間、たくさんの「民藝のうつわ」に触れました。民藝のうつわ自体は、これまで見ていなかったわけではありません。が、この1週間、若い人たちの「民藝のうつわのある暮らし、空間、食」とでもいうようなテイストに出会いました。出会ったというよりも、興味が高まり、どうなっているのかな、どうしてなのかなと、どんどん出かけて行ったのです。

先週日曜日、瀬戸本業窯、民藝とのつながりの深い窯でギャラリーや資料館を見せていただきました。三彩、黄瀬戸、緑釉など、とても魅力的で使いやすそう。時間がなく、大急ぎで分けてもらった皿、やさしい色合いで軽くてサイズも程よくて使いやすい。手抜き料理も美味しく感じられて、とても満足です。

このようなうつわは、どこで買えるものなのか、ネットを見てみると、カジュアルなテイストの民藝の器や雑貨を販売するサイト、実店舗、けっこうありました。30代くらいの人がやっているみたい。え、そうなんだ、、民藝って今こうなってるんだ、人気の窯元があり、セレクトされ、程よい品揃えと価格で販売されているんだ、、この時点で、かなりの驚きがありました。

 注釈です。「民藝」と「民芸」。その違いはよくわかりません。後述の『日々、うつわ』によると、「柳らが「民藝」の言葉を使い始めた当時は、「藝」には「草木を植えること、修練によって得た技能」という意味があり、「草を刈る。香草の名」を意味する「芸」とはまったく異なるものであった。現在の使い分けとしては、元来の民藝の考えを踏襲するものは「民藝」、郷土色の強いもの、和風のものなどは「民芸」があてはめられることが多いようだ」とありました。わかりやすい説明です。今回の内容は、展覧会名や書籍での使用が「民藝」。個人的には旧漢字はあまり使いません。が、本文でだけ民芸と書くのもごちゃごちゃしてしまうので、民藝で統一しようと思います。今後はまた考えます)

---------------------------------------------

「日々、うつわ展 〜民藝のうつわのある、おいしい日常〜」

たまたま、東京ジャーミー(代々木上原)のすぐ近くの「CASE gallery」で、「日々、うつわ展〜民藝のうつわのある、おいしい日常〜」という展示が開催中であることを知りました。またしても土砂降りの雨でしたが、行ってきました。びっくりでした。

白い壁のシンプルな空間、木の展示台に各地のうつわ、壁にそのうつわに料理を盛った写真パネル。ギャラリーの方(坂元さん)とギャラリーが醸し出す、ナチュラルでデザイン感の高い雰囲気、なんだか「北欧」を感じていましたが、やはりというか、北欧と縁のあるスペースなのだそうです。厚かましくいろいろ聞く私に、坂元さんが親切に、そして端的に答えてくださってありがたかった。いまどきの「民藝のうつわ」、その感触をつかむことができました。

e0063212_23572518.jpg
(沖縄読谷北窯、小鹿田、小石原、石見など全国14の産地のうつわ/各産地のうつわのかたちや色にあった料理の写真と説明/お気に入りの小石原焼・飛び鉋皿を持つ坂元さん)

民藝のうつわが最近とみに好きになったという坂元さん、使いやすくて価格も手頃なのがよい、と。こういうセンスのいい人たちが手仕事のやきものを取り入れるようになる。うれしいですね。

e0063212_23583257.jpg
(やっぱり魅力的、一堂に揃ったうつわたち。北欧と和は重なり合うものがありますね。4枚のなかでひとつ、北欧の器集合写真があります。どれでしょうか?!)

書籍『日々、うつわ〜民藝のうつわのある、おいしい日常〜』(萩原健太郎著/誠文堂新光社)。9月末の発行。著者は1972年生まれ。簡潔な温かい文章で伝えたいことがよくわかります。

「全国の民窯をめぐるうちに、日本にはこれほど多くのうつわがあること、それぞれに地域に根ざした伝統や技術があることを知る。しかし、それらは価格も手頃なのにもかかわらず、日常のなかで見かける機会は多くない。(中略) うつわそのものを紹介するのではなく、うつわは使ってこそ輝きを放つことを証明したかった。料理のチカラを借りて、うつわの素晴らしさを伝えたいと思った」

料理がまた、いい。見かけだけのこじゃれたレシピじゃない、骨太な料理。筑前煮、かぼちゃのスープ、たまごサンド、ハンバーグ、親子どんぶりなど。これがおいしそうだし、器と合ってる。うつわが欲しくなる。これこそ、うつわと料理のしあわせなレシピ。

展覧会はすでに終了していますが、会期中にはトークイベントも。「民藝から北欧のデザインまで」「山陰のうつわ、料理、旅について」「調理から盛りつけまでの実演」も。「いま」を感じます。

このようなうつわを扱っている店がありますよ。え、それはどちらですか!?ということで、CASE galleryで教えてもらった「SML」(エスエムエル、ショップ、恵比寿)と「SMg」(エスエムジー、展示主体、目黒)に向かいます。

---------------------------------------------

「最高に美しいうつわ tableware as life」

目黒川沿いの道から少し入ったところにあるSMg。「因州 中井窯の仕事」展を開催中でした。黒いジャケットの眼鏡男子がじっくりセレクト中で、6点ほどまとめ買い。

因州中井窯は、緑、黒、白の染め分けが特徴。前述の『日々、うつわ』によると、「柳親子に愛された山陰を代表するモダン民藝」。和の力強さと感性が伝わります。インパクトがありますね。

e0063212_005464.jpg
(SMg。「因州 中井窯の仕事」展。スッキリした店内、ユーズドの木の什器が陶器の味わいを引き立てています)

こちらでSML監修の書籍、『最高に美しいうつわ』(エクスナレッジ/2013年4月発行)を購入。安西水丸氏の推選の言葉=「うつわ、陶芸家、店、すべてがセンス良くまとまったこんな本ができたことがうれしい」。同感。作家、うつわを扱う店舗やカフェのオーナーなど、様々な角度から、うつわ、思い、伝統を受け継いできた土地、風土、人々を見つめます。「今」が伝わる。写真がとてもいい。深い魅力を引き出しています。

徒歩でSMLへ。恵比寿らしいかわいいお店ですが、小鹿田焼、砥部焼など、上の2冊の本に登場する民藝のうつわたちが並んでいます。値段も数千円台が多い。民藝の店というと、敷居が高く独特の雰囲気、知識がないと恥ずかしいというイメージもありましたが、今の民藝のお店は気さくでカジュアル。暮らしのなかで使って欲しいという思いが伝わります。

e0063212_011486.jpg
(SML。手作り風の店内。人気は「やちむん」や「スリップウエア」。スリップウエアはファンが増えていてイベントなどもあるそうです)

SML、SMg、ともにこの数年内のオープン。話を聞いたスタッフの方々も、出会ったのはこの数年内とのお話。書籍も今年2冊。それ以前には、『Discover Japan TRAVEL 民藝のうつわをめぐる旅』(2010年)、『民藝の教科書1 うつわ』(2012年)も。今回は、「行ってきました!」だけで、とてもまとめられません。いつかまた書きたいと思います。

e0063212_012715.jpg
(左2点:瀬戸本業窯にて。上はクバの草ビロードと黄瀬戸の経年変化/右3点:本文でご紹介した書籍2冊。料理が美味しそう。写真もいい)

---------------------------------------------

カンタ、ラリーキルト

うつわから刺繍に話題は飛びます。民藝のうつわで感じた、伝統、継承、時代性、実用など。どの手工芸でも同じ課題や取組みや試みがあるように思います。

ブログでも何度かご紹介している刺繍家の望月真理さんの展覧会。真理さんは、インド東部のウエストベンガル地方などで盛んなカンタ(古い布のサリーをはぎあわせ刺し子を施し丈夫で美しい布に仕上げる)を現地で知り、調査と研究を続けています。「この文化の途絶えるのを惜しみ、シルクロードの終点である日本で受け継いでいきたいと願っております」。

e0063212_0405338.jpg
(ベンガルのカンタ)

真理さんは、カンタを日本人の眼と手と心で刺します。細密な手仕事、遊び心が魅力。ベンガルの大胆で明るい構図や色使いから学び、真理さんのカンタを、87歳の今も、日々、時間を惜しんで作り続けています。

e0063212_0412917.jpg
(真理さんのカンタ)
e0063212_918366.jpg
(真理さんのカンタ)

そのカンタ、この数年、「ラリーキルト」として、とりわけクオリティの高い手仕事のストールなどが紹介され、人気となっています。先日、横浜「エスニカ」の「染まるインディア」という展示とイベントで、コカリさんの展示を拝見。いつもながらセンスいい。

e0063212_035465.jpg
(ラリーキルトのストール。インドの手仕事はすごい)

e0063212_042159.jpg
(展示とイベント「染まるインディア」@エスニカ。陽射しが差し込む居心地良い展示空間)

ラリーキルト、初めて見たときから、どんどん洗練度が高まっている気がします。カンタ、ラリーキルト、時代や人々の思いのなかで、どのように変わらない芯の部分と変化する姿を見せてくれるでしょうか。

---------------------------------------------

最後に、今日、たまたま発見!北欧の雑貨のオンラインショップ(北欧、暮らしの道具店)で、九谷の器の販売を開始と。「石川県の九谷焼の器の販売を
開始しました。当店でご紹介させていただく、
初めての和食器となります。『北欧の器』と『日本の器』。このふたつが絶妙にマッチしてくれることは、
これまでの特集やスタイリング写真などで、
何度となくご提案させていただきました。様々なものを組み合わせ編集する
楽しさをご提案できたらという想いで、
初めて和食器を仲間入りさせることにしました」だそうです。

北欧と和は重なり合うものが多い。まだまだいろんな動きがありそうです。

相変わらず長文ブログです。今の「民藝のうつわ」に興味を持って1週間、まとまりませんが、その時しか書けないものがあると思い、書いてみました。ふぅ〜〜(汗)
by orientlibrary | 2013-10-30 00:17 | 日本のタイル、やきもの

秋の瀬戸で本業タイルと出会う

瀬戸への小さな旅。
日本のやきもの産地を少しずつでも見て歩きたい。そして最近見始めた日本のタイル。瀬戸本業タイルは、やはりもう少し知りたい。「河井寛次郎の陶芸」展(瀬戸市美術館)も開催中。行ける時にはどんどん行こう!土砂降りに見舞われましたが、土味はたっぷり。今回は写真中心に、ざくっとご紹介。だんだん調べていきたいと思います。

雨自体は、けっして嫌いじゃありません。雨の日に本を読むのが好き。小雨なら散歩も好き。雨上がりの植物や景色も瑞々しくて好き。でも朝から丸一日土砂降りの散策、スニーカーはずぶ濡れ、地図はヨレヨレで見えなくなるし、寒い。

e0063212_0464792.jpg

ぼやきたくもなるけれど、やきものは雨の中で、ますますツヤツヤときれいなんですよね。いいなあ。見とれます。「窯垣の小径」はやきもの散歩道。塀や壁に埋め込まれた古い窯道具などが様々な模様を描きます。使い込まれたものは美しい。味わいがある。四季それぞれいいと思いますが、落葉の秋は色が合います。常滑の土管を積んだ散策路もいいし、土と土のものは相性がいい。茶系、緑系は落ち着きます。

e0063212_047082.jpg

窯垣の小径の道沿いにある「窯垣の小径ギャラリー」。雨の中、行く場所もなく途方にくれていたら、ギャラリーの方が小走りで来て早めに館を開けてくださいました。助かった〜。ギャラリーは、江戸時代の旧窯元のお屋敷を利用。地元作家の作品を展示販売しています。スタッフの皆さん(出展作家さん)が親切で、ほっこり和みます。

ギャラリーから少し歩いたところにあるのが「窯垣の小径資料館」。「建物はもと「本業焼」の窯元であった寺田邸を、そのままいかす形で改修したもの」だそうです。こちらに本業タイルが20点ほど展示されていました。資料館パンフレットより、「本業タイル」についての説明を引用させて頂きます。

——— 明治時代の日本における洋風建築の流行と共に「敷瓦」を前身とする「本業タイル」がさかんに使われるようになりました。これは「転写」技術の向上により、同一図柄で量産されたわが国の近代タイルの第1号ともいうべきものでした。本業タイルは、本業(陶器)の伝統的な調合による土を使い、土の表面の粗さを覆うために磁器の土を使って表面が化粧してあり、銅板転写による図柄の美しさとも相まって陶器でありながらあたかも磁器のように繊細で硬質感と近代感を兼ね備えたものとなっています。 ———

e0063212_048667.jpg
(写真は青のものばかりですが、茶系緑系もあります。本物をこんなにたくさん見るのは初めて。左右対象、幾何学と植物文様を合わせたもの等、このデザインの出自がピンと来ませんでしたが、ヴィクトリアンタイルの影響だと気づきました。けれども日本らしさが滲み出したようなものもあり、その混合が興味深いです)

資料館では、本業タイルが貼られた浴室及び便所も当時のままの姿で紹介。一枚で見るタイルとはまた違った印象です。当時はとてもモダンな空間だったのでしょうね。

時間は前後しますが、「瀬戸蔵ミュージアム」の展示タイルはこちら。

e0063212_049060.jpg
(瀬戸蔵ミュージアム。タイル生産の道具展示。代表的なデザインのパネル等)

名鉄尾張瀬戸駅から数分の複合施設「瀬戸蔵」(店舗、飲食、ホール等)、その2階と3階が瀬戸蔵ミュージアムです。吹抜けになっていて広い。陶房の再現ややきものの歴史等、日本のやきものビギナーの私にはとても有益で楽しいミュージアム。熱中しました。

e0063212_0492512.jpg
(瀬戸蔵ミュージアム。モロ(陶房)の再現。すごい!)

モロ(陶房)の再現がすごい。地元の人には見慣れた光景かもしれないけれど、小物など細部まで凝った展示は感動ものでした。かつ、陶器生産の行程や設備、道具を知ることができる。やはり、実物があるとわかりやすいです。一つのモーターを動力にして、ロクロなどいくつもの機械が動く。モーターという言葉の当時の輝きに思いを馳せました。

生活道具展示室では生産工程が具体的に見えてきて、とても勉強になりました。ビデオも全部見ました。3階の「瀬戸3万年の歴史」もわかりやすい。時系列、品目別に実物をひたすら見せる。アートな展示方法もあるでしょうけれど、ここではこのやり方がわかりやすいのでは。私は好みでした。

製品を出荷〜輸出する光景の再現も興味深かった。陶器の梱包ではエピソードもある私、箱詰めの輸出用陶器に見入りました。もっと詰め物はするだろうけど、基本、こんな感じだったの!?割れないのかな。紙と藁みたいなものでも、とにかくやきものが動かなければいい。ウズベキスタンのウスマノフ工房のパーフェクトパッキングを思い出す。工夫と技。最近は大量のエアパッキンに頼り過ぎなのかもしれない。

e0063212_050494.jpg
(瀬戸蔵ミュージアム。製品を出荷、輸出する光景の再現。右下2点は1970年代の輸出用との記載。「Occupied Japan」(連合国軍占領下の日本、1947-52年の5年間に日本で生産し輸出したもの)と図柄が同じなことに驚いた。でもどこかおとなしい。いつか両者の比較写真をアップしたいと思います)

さて、また土砂降りの窯垣の小径に戻ります。迷いながらも、ようやく登り窯に辿り着きました。が、土砂降りの中を歩いていたのは私だけではありませんでした。写真愛好家と思われる団体ご一行が、雨具の中にカメラを入れながら熱心に撮影旅。登り窯も、妙に満員な感じになってしまいました。寒さもあって、もう帰ろうかな、、と弱気になったところに、なぜかカフェらしきものを発見。登り窯の上部の横にカフェ?その名も「窯横カフェ」。入ってみます。

広過ぎず狭過ぎず、白い壁に木の床。ジャズっぽい音。雑誌やグリーン。若いお二人がオーナーのご様子。とにかくまずコーヒーを頂きます。やがて石油ストーブも登場し、体も暖まってきました。お店の方と少しおしゃべり。絵を描いている方々、瀬戸に移住し、セルフビルドでカフェ作り。今年2月のオープンだとか。感じいいカフェです。器もいいな。目の前には薪ストーブも。気になるのはその下に敷かれたタイルなんですよね。

e0063212_051942.jpg

相当好きなタイル。青の色味がいいな。ラスティックな質感も。このタイル、どうしたんですか?すると、登り窯の窯(瀬戸本業窯)の八代目に作ってもらった、と。注文で作ってもらえるんですか?さあ、どうかなあ。もうすぐ八代目が用事で来るので話してみたら、ということでiPadしながら八代目を待ちます。

やってきた八代目、カジュアルなファッションが似合ってます。資料館やギャラリーを見せて頂けることになり、ラッキー!資料館には、本業タイルが。「うちで作ってきたものです」。え〜、そうなの!?こちらだったんですか!

e0063212_0512822.jpg
(ペルシアにも輸出していたというタイル/六代目水野半次郎氏と民藝運動の方々/八代目/陶器の染付魚藻文。陶器の染付は珍しい。でもウズベキスタンやイラン、トルコは基本的に磁器ではないブルー&ホワイトなので私にとっては親しみある質感と化粧土の白/ギャラリーも見応えあり。こういうのが見たかった)

聞けば、民藝との関わりのある窯元。六代目が柳宗悦さん等と交流があり、昭和30〜40年代の大量生産の時代も手仕事を大事にしてきたのだそうです。黄瀬戸(これがまた、最近大好きなんですよ)と緑釉が特徴。いい色です。

瀬戸に行くからには本業タイルに触れたいと思っていた。でも、どうやってそこに辿り着けるのかわからなかった、というか、詳細を調べなかった。最初はあまり調べ込まずに先入観を持たずに行き、とにかく歩いて手がかりを探す。いつもそんなふうにしています。今回は土砂降りのおかげでカフェに入り、いつもなら短時間で出て歩き回るのに雨と寒さで出られず、そのおかげでタイルを見つけ、たまたまタイルを作った八代目が用事でカフェに。日本のタイルの現場と会えました。感謝。

河井寛次郎の陶芸−科学者の眼と詩人の心−」展も良かった。鍛錬の賜物である圧倒的な技術が支える自由な個性の表現が、やわらかいあたたかい造形と色に結晶している。やきものは人柄なのかと感じました。釉薬の研究で定評があった寛次郎さんが最後に作り出した「碧釉」。深くどこまでも引き込まれる、かつ屹立するような、魅惑の青。最高でした。

最後に瀬戸で出会った青。

e0063212_052342.jpg
(窯垣の小径ギャラリーの庭2点/染付壷。瀬戸染付の特徴は没骨(もっこつ)技法。主に付立筆を用いて一気に描く/本業タイル)

今回はひとまず、ここまでに。今後も、産地シリーズ、「タイル人」も書いていきたいと思います。

* 「窯横カフェ」のfacebook、発見しました。ごはんやお菓子がおいしそうです!
* たくさんの「FBいいね!」ありがとうございました☆
by orientlibrary | 2013-10-22 01:04 | 日本のタイル、やきもの

ラスター彩、やきもの嫡伝、旅するポット、アジア染織、日本タイル

ラスター彩イラン里帰り展

大型台風ということで、外出を控えた方がいいのか、出ても大丈夫なのか、迷いますね。敬老の日前後は台風の確率が高い気がします。雨上がりを見計らい、やはり見たい!と出かけてきました。

まず、「七代 加藤幸兵衛茶陶展 <併催> ラスター彩イラン里帰り展」(新宿京王百貨店・京王ギャラリー/9月18日まで。最終日16時閉場)。(ラスター彩について、さらに加藤幸兵衛さんのラスター彩製作については、「ラスター彩と日本人-現代によみがえる虹色の輝き-1」「同-2」(iran Japanese Radio)に、わかりやすくまとめられています。イランでの展覧会の様子も垣間みられます。関心のある方は参照されることをおすすめします)

京王ギャラリー、ラスター彩も茶陶展も、存分に好きな陶器に浸れて幸せな時間でした。もちろん、例えば古民家や博物館の凝った展示で見られたらすごいと思います。でも都心で交通至便の百貨店が、これだけ充実の展示を企画して、誰にでも見られるようにしてくださったこと(無料)、その姿勢がうれしいです。

ペルシア陶器だけでなく、イスラームの文化や芸術は、一部博物館で触れることができますが、より多くの人の目に触れる機会は多くないように思います。また、百貨店ではどうしても「シルクロード」の冠がつきがちです。今回は、「イラン」がタイトルに入っており、イラン国立博物館出品作品40点が見られるのです。イスラーム陶器に親しみを感じている私には、そのこと自体が喜びでした。

e0063212_1630999.jpg
(上段左:左=展覧会図録、右=イランでの展覧会カタログ〔*次からの写真5点はこちらから引用〕/上段中と右:イラン人出展作家作品/下段左:ラスター彩壷、イラン・グルガン、9〜10世紀/下段中:ラスター彩十字タイル、タフテソレイマーン、13世紀/下段右:ラスター彩星形タイル、イラン・グルガン、14世紀/金色、玉虫色のなかの青が熱狂的に好きです)

ラスター彩展示の核は、加藤卓男氏と七代幸兵衛氏の作品展示。緻密、繊細、美しい光り、ペルシアのモチーフと和の感性の融合。あらためて圧巻と感じました。ペルシアの古陶も少しですがありました。鮮やかなコバルト青と羊の図柄の壷など、本当にできるものなら手に入れたい、、美しいものを手に入れるために権力を行使した王様の気持ちが理解できました。。

イランの現代作家によるラスター彩は、イラン陶芸家のfacebookページに今年春頃から随時アップされていたので、見ていました。オブジェが多く、幽玄な美意識は伝わりますが、細密さは追求されていない印象。ラスター彩ならではの発色を含め、イランでの今後の展開にも興味があります。

---------------------------------------------

美山三代展 “嫡伝展”

瀬戸・美山陶房、寺田美山氏、寺田康雄氏、寺田鉄平氏、三代の陶芸家による「美山三代展 “嫡伝展”」(アートスペース煌翔〜東京・阿佐ヶ谷〜にて9月21日まで。休み9月17日)。

「瀬戸の窯元では代々嫡子に築窯技法、釉薬調合等、製陶技術を秘伝として伝えてきました(嫡伝)」。そして「代々伝えられる技法だけでなかう個の制作意欲」も併せて見て欲しいとの趣旨の展覧会。現代はもちろん職業選択は自由。そうしたなかでも代々続くこと、その強さ、確かさ、律動を感じました。

e0063212_16311925.jpg
(三代それぞれの個性と多彩な作風/下段:織部三代三様。左:美山氏、中:康雄氏、右:鉄平氏)

---------------------------------------------

Asian textiles

Asian textiles <アジアの染織>」(ギャラリー囲織庵/世田谷区久我山/~17日まで。最終日17時まで)。トライバルラグを扱うTRIBEさんの展示会。ラグも質量ともにすごいですが、いつもいい布、持ってますね〜。グジャラートの「パトラ」、クメールの「ピダン」、ベンガルの「カンタ」やジャワ島の「カイン=更紗」、スマトラの霊船布「タンパン」、バリ島の儀礼布「ブバリ」など、アジア各地の染織品が見られます(&購入できます)。

e0063212_16321156.jpg
(濃い展示。逸品が目の前に。下段のお菓子はお客さんの差入れ。ココナッツパウダーを練乳で練り上げプルーンに挟んだスイーツ。やさしい甘さでした)

ギャラリー囲織庵、住宅地の中、竹や様々な緑に囲まれた趣きある民家ギャラリー。台風のニュースの中、うかがった側にはラッキーな静けさで、すっかり長居しておしゃべりを楽しませていただきました。素敵なオーナーとトライブさんに感謝。

---------------------------------------------

Occupied Japan

こちらは雨の連休ではなく、ちょっと前なのですが、「Occupied Japan」(連合国軍占領下の日本、1947-52年の5年間に日本から輸出したもの)の陶磁器と思われるものを、偶然拝見できました。以前「日本ーアフガニスタンークエッタ、旅した陶器たち」でご紹介したものと同じタイプのティーポットのようです。

e0063212_16331830.jpg
(上段左:品の良い絵付け。趣きあるポットで惹かれました/葡萄モチーフは輸出先の名産を意識したものでしょうか)

全体にザクッとしてかわいらしく、欲しかったけど、、値段が自分にはやや高かった(涙)。でもパキスタンから持ってくる手間や現地価格から考えると、妥当な価格でしょう。陶器を運ぶって、本当に大変ですから(しみじみ)。でも、じつは、、青地に花模様のティーポット、大事に飾っているものがあります。アフガニスタンを愛するcharsuqさんからいただいたもの。旅で運んだ大事な陶器、charsuqさん、本当にありがとうございます!!

---------------------------------------------

日本のタイル

8月の多治見・笠原旅で、その魅力に触れた「日本のタイル」、まだ資料などを読めていません。多治見旅では、タイル熱中人との出会いはもちろん、岐阜県現代陶芸美術館で「日根野作三と薫陶をうけた7人」を見て、日根野作三さんのことをもっと知りたくなって少し調べ始めたり、伊藤慶二さんも素晴らしく、、ますます興味やテーマの拡散傾向が強まっているのに、動きが遅くて、はかどりません。少しずつ進みます、、、

そう、日本のタイル。まず少しでも画像アップします。好きなタイルから!!青系ばかりなのは青好きゆえ、ご容赦を。とくに矢印模様のタイル、欲しかったですね〜、、、「手描150角 昭和45年頃製作 有限会社桝文製陶所」。ほんとステキです。フレームに入れて飾りたいです。

e0063212_16343219.jpg
(多治見市笠原の「モザイク浪漫館」所蔵品)

日本のタイル、外壁内壁に使われているものが多いですね。

e0063212_1635474.jpg
(多治見市、タイルの景/上段左と中:銀行の壁面で発見!色や形状が多彩。日本の四季を表すパターンが好まれるのでしょうか/上段右と下段中と右:多治見市の長江陶業にて。いまの建物や暮らしの中でのタイルの魅力を追求し提案。青好きゆえに青や白ばかり撮っていますが、もちろん色は多彩/下段左:このタイルに6月の「インテリアライフスタイル」(ビッグサイト)で出会い、日本のタイルに興味が高まったのでした。日本にも味わいある青いタイルがあるんだ、と)

マリンタイル」、多治見の長江陶業さんでも話題にのぼっていました。そのときは「え、そんなのあるんですか」と、相当ボケていた私。私の好きなR不動産の「tool box」、タイルのコーナーでも紹介されていたのに(見ていたのに)、、、これまで日本のタイルをいかにちゃんと、真剣に見ていなかったかということですね。深みのある青、海のようです。多治見には、モザイクタイルの流し台を作っている工房も。お話聞きたい工房が増えてます!!遠くないうちにうかがえれば、、。皆様、どうぞよろしくお願いいたします!

* * * * *
ブログ更新が遅れがちです。自分のスピードが落ちているのでしょう。いかんいかんと思っているのですが、こんなペースになってしまいます。ゆっくりすぎるブログですが、どうぞまたお立ち寄りください。

今回もコラージュ写真とトピック、いろいろ用意しました(まず写真の準備から入るので)。が、話の流れがますますバラバラになってしまうので、風景の一枚を今回のラストにします。信州駒ヶ根、初秋の空気と光り苔です。

e0063212_16361489.jpg
(ヒカリゴケは光前寺(長野県駒ヶ根市)にて。ヒカリゴケ(wikipediaより)=ヒカリゴケは自力で発光しているのではなく、原糸体にレンズ状細胞が暗所に入ってくる僅かな光を反射することによる。またレンズ状細胞には葉緑体が多量にあるため反射光は金緑色(エメラルド色)になる)/日本の緑の幸。心洗われる)
by orientlibrary | 2013-09-16 16:38 | 日本のタイル、やきもの

日本のタイル〜文京の銭湯「おとめ湯」&笠原タイル予告少々

多治見・笠原 土の旅

土(つち)の東濃、多治見旅、今回もたくさんのやきものやタイルに触れ、ステキな方々と出会い、語り、歩き、吞みました。日本一暑い町の座を一時的に四万十に譲った多治見ではありますが、もちろん熱暑覚悟で参上。ところが連日の20℃台。涼しくて動きやすく、夜などは肌寒いくらいでした。

e0063212_2223224.jpg
(サワリのみですが、、多治見市陶磁器意匠研究所、幸兵衛窯、セラミックパークMINO)

でも、気持ちは熱波!会った方々の熱いこと。いやはや、ハンパないです。そして、なんと今回は、一時帰国中のイスタンブル在住絵付け作家チニチニさんと一緒だったんですよ〜!
「青の魅惑」展でお世話になったチニチニさん。あの時は重い壷や皿をかついでイズニックやキュタヘヤを歩きましたが、日本のタイルの町を一緒に歩ける日がくるなんて、、本当にうれしかったです。

ですが、多治見のお話は次回に。今はあまりに未消化。日本のタイルについては、まったくスタディしてこなかったので、呆然としています。が、これはおもしろくなりそう、という予感。日本のタイル、和なんですよ!色やかたちが。これから少しずつ書いていきますね。

e0063212_22235472.jpg
(笠原にある「モザイク浪漫館」。今回はチラリと姿のみ。これから少しずつ調べて書いていきます)

---------------------------------------------

今日の話題に行く前に、お知らせを二つ。多治見の宝石「幸兵衛窯」、今回もうかがって夏のしつらえを堪能しました。幸兵衛窯といえば「ラスター彩」で有名。7月にはテヘランで「里帰り展」も。そのラスター彩の展示と、数ヶ月密着というテレビ番組の放映です。やきもの好き、ペルシア陶器ファン、ラスター彩マニア、いえいえ、皆さん、この美しいやきもの&その製作の現場やテヘランでの模様を見ましょう!

e0063212_22214362.jpg
(左上:「七代加藤幸兵衛茶陶展」カタログ表紙/他の3点は幸兵衛窯展示品)

(1)「七代加藤幸兵衛茶陶展」<併催>「ラスター彩イラン里帰り展」
*日時:2013年9月12日(木)〜18日(水) 午前10時〜午後8時(最終日は午後4時まで)
*場所:京王百貨店新宿店 6階 京王ギャラリー
*内容:七代幸兵衛さんの新作茶陶百余点の展観。ラスター彩を中心としたペルシャ陶技をはじめ、今回は美濃桃山陶も。また京王ギャラリー前特設会場にて「ラスター彩イラン里帰り展」として、イラン国立博物館での出品作40点を帰国後初めて展示。

(2)「ラスター彩、故郷に還る 〜 陶芸家・七代 加藤幸兵衛の熱き思い」
*日時:2013年9月21日(土)16:00〜17:15(75分)
*放送局:テレビ東京系ネットワーク(全国放送/テレビ愛知開局30周年特別番組)

<当ブログ内 関連記事>
□ 眼福の幸兵衛窯。新緑眩しい美濃を訪ねて
□ セミラックパークMINOと美濃のやきもの


---------------------------------------------

おとめ湯 見学会

今回は、銭湯です。「おとめ湯 見学会」(主催: 文京建築会ユース)に行ってきました。本日36℃超え、あふれるほどの見学者、銭湯内はサウナ状態。すごい熱気でした。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
本年6月30日をもって惜しまれながらも60年の長い歴史に幕を閉じた文京区千石の ”おとめ湯” 。

都内で残り少ない中庭のある豪華な造りで、富士山の溶岩石に、大きな1本ツツジ、その下を泳ぐ立派な鯉は入浴しながらも覗き窓から見ることが出来ます。丁寧なコテ装飾のツルがいたる所を舞う様子はまるで極楽浄土。可愛らしいピンクの漆喰壁に唐破風、格天井…古典的な銭湯のモチーフは勿論、銭湯全盛の華やかさを残す特有の仕掛けにあふれた、極上の癒し空間です。

近日中に解体の可能性が極めて高いこの建物を、この度、おとめ湯さんのご理解の元、大変貴重な公開の機会を頂きました。この機会を通し、移築、部分的移設、保存をご検討頂ける方を急募しております。

徹底された清掃により、タイル絵やコテ絵などが美しい状態で保存されています。

この地域を育んだ銭湯文化、地域の遺産を実際にご覧になれる最初で最後の機会となります。是非ご覧下さい。(以上、「おとめ湯 見学会」案内より)
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

銭湯への興味の元は、やはりタイル、そして鏝絵です。おとめ湯には中庭もあり、ちょっとしたリゾート!見学会では、建築家や学生でつくる文京建築会ユースの皆さんによる資料、図面も紹介されており、銭湯文化を垣間みることができました。資料の詳しさはさすが!以下、情報はユースさんの資料を引用、参照させて頂いています。

e0063212_2227417.jpg
(1954年創業。当時の銭湯経営者たちが華やかさを競った名残で正面入口の唐破風(からはふ)には千鳥が舞い、つがいの鶴が鏝絵で描かれています。文京区で営業する11の銭湯(おとめ湯廃業で現在は10)の冊子も。写真がきれい。ユースさんではネット販売も考えているそうです)

e0063212_22281963.jpg
(湯ぶねのタイル絵。章仙絵付けの号。創業時のまま。九谷のタイル製造者のもの。昭和30〜40年代には九谷焼タイルは高級ブランド。贅沢さを競う銭湯経営者がこぞって飾った。このような良好な状態で残っている章仙絵付けは珍しいそうです/中庭が見える洗い場/白のタイルも清潔感/昭和な感じの方形タイル。落着いた印象。体重計も)

e0063212_22283468.jpg
(銭湯の舞台裏、初めて見ました。薪をくべて炊く窯。大きな箱状のもののなかを通っていく。煙突までは距離がある。地下を煙が通っていく仕組み?右上は覗き穴。最後の客が出たのを確認するのだそうです/下は銭湯研究で有名な町田忍さんのトークの模様。下真ん中の黒いTシャツの方がおとめ湯オーナー。おとめ湯は徹底清掃で良好な状態を長く保ってきました/右下、「ゆすり、たかり、押売 御断り」。昭和)

e0063212_22341122.jpg
(煙突掃除の箒。さすがに長い/唐破風アップ。粋だ〜。/脱衣所も縁側があり、ゆったりした感じ。格調高い折上げ天井はあまりの暑さで写真撮り忘れ。残念!銭湯に折上げ格(ごう)天井はビックリ/うちわも昭和。全体に懐かしい。レトロ。こういう見学会に多くの人が集まる、そういう時代なのかな)

e0063212_2229217.jpg
(文京建築会ユース制作の冊子より。好みの3冊を購入/歌舞伎湯=このモザイクタイル、冊子で見ても質感の良さが伝わる。図柄はノイシュバンシュタイン城。浴槽の青いタイルも素敵/右下:白山浴場=これまたオシャレ!旅行好きのオーナー母がインドに行き帰国後に現地のイメージをスケッチして作成したというモザイク画。色合いも好き/真ん中=文京の銭湯のタイル。シック/右上:おとめ湯でポイントで使われていた花模様のタイルもかわいい)

寺社仏閣を模した「宮造り銭湯」は、東京特有の形式だそうです。最初の宮造り銭湯は大正12年、関東大震災のあと、焼け野原になった墨田区の土地で、銭湯建設の依頼を受けた宮大工の技術を持つ棟梁・津村享右氏が、多くのお客さんを呼ぶために今までにない銭湯を建ててみようと考えて作ったのが最初。たちまち評判となり、次々と同じ造りの銭湯ができていったのだそうです。

タイルと鏝絵を見に行ったのですが、銭湯そのものの魅力にも浸ることができました。いい汗でした。文京建築会ユースの皆様、ありがとうございました。千石(〜周辺)、かわいい雑貨店、不思議なカフェもあり、楽しかったです。
by orientlibrary | 2013-09-01 22:37 | 日本のタイル、やきもの

セミラックパークMINOと美濃のやきもの

-------------------------ー-------------------

セラミックパークMINO」は、「岐阜県現代陶芸美術館」と「オリベスクエア」と呼ばれるメッセ施設からなる、文化と産業の複合施設。設計は磯崎新氏。「緑のままの自然を残して、その隙間に人工的な構造物を作るなど自然環境との調和に配慮」「谷という地形を最大限利用し、方形の懸崖造りの施設」が特徴。
憧れつつ、写真だといまいちよくわからなかったのですが、現地はやはり迫力ありました。広大でモダンで気持ち良い。どの角度から見ても絵になる!それなのに、どこから撮ってもなんか違う。チマチマっとしてしまう。素人だし仕方ないです。いつものようにコラージュでごまかそう!^^

e0063212_2251598.jpg
(ギャラリーウオークからエントランスへ&屋上広場。陶の椅子の青がキレイ。ここで見た青空と新緑が忘れられない/「シデコブシが自生する中央の谷や尾根を壊さないよう駐車場を建物から離して北の谷に建物は南の谷に」「タイルや煉瓦など地元の陶磁器製品をできる限り使用」)

e0063212_22565618.jpg
(茶室〜水の階段。さすがの構築美/「屋上広場との一体利用も可能」)

e0063212_2314982.jpg
(大きな写真が展望台から見た全体像。広々として空気がいい。散策路としても魅力!左下は展望台から見えた木曽御岳山(ですよね?)。右下はウオークのところにあったタイルの街。あ、その上はえ〜と鰻丼です。コンベンションホールの「地元名店のカジュアルランチ」で。鰻ってものすごく好きではないんだけど、この鰻はふっわふわで人生一番のウナでした。/「自然を体感できるよう多くの遊歩道を設定」「陶片をギャラリーウォークの天井に貼り付け休憩施設の座面に陶板を使用」)

あれ?これだけ?幸兵衛窯同様、ここでも狂ってたのに。そうなんです、こちらは撮影禁止の場所が多く、写真がないので、どう書いていっていいか迷います。が、「陶芸作家展2013」、良かったです。「二名の人間国宝を含む重鎮から若手作家まで、 美濃を拠点に活動する陶芸作家110名の作品が一堂に会しての展示販売会」。大盛況。陶芸家一人一人の個性があって、じっくりと楽しめました。
来場者のやきものの見方を見ていると、日本人って本当にやきものが好きなんだなあと思います。自然です。機会あるごとにいいものを見ている日本人、暮らしのなかにやきものが当たり前のようにある日本。最高です。

ステージイベントは、皆さん携帯やデジカメで撮っていたので、便乗。アップしていいのかな??

e0063212_23163249.jpg
(青山鉄郎さんの作陶実演。土練り、轆轤引きを間近で拝見できました。語りもお人柄が出て和やかなパフォーマンスタイム。青山さんの青の湯のみ。写真、色が違うんですが、GR、CXというカメラ(いずれもコンデジ)の違いでしょうか。実物は左の方に近い感じです)

実演された青山さん、偶然というか、会場内でもっとも惹かれた青のやきものの作者。青の湯のみを分けていただきました。少しですがお話もできて、うれしかったです。青山さん、自然の中に入り、山や樹々や川を見るのが好き、と。この茶碗の青、清流のように感じます。茶や黄色も、なんだか渓谷や里山を思わせます。すごく好きで、目の前に置いて、いつも見ています。
ずっとイスラームの青を見てきましたが、コバルトブルーはかの地の紺碧の空のよう。この茶碗の青は水のよう。美濃の作家さんの青、いくつか拝見しましたが、日本の澄んだ水を感じました。穏やか、かつ清冽。惹かれます。

岐阜県現代陶芸美術館では、「アジア・木と土に見る“みんぞくのかたち”」を見ました。

---------------------------------------------

そんなわけで、ブログでは、もう一度、感動の幸兵衛窯に戻ります。桃山様式の穴窯では、職人さんが作業中。静かな庭園と窯、幸せなひとときでした。

e0063212_23374031.jpg
(古陶磁資料館、半地上式桃山様式の穴窯)

e0063212_23513019.jpg
(スタッフが見せてくださった加藤卓男さん手書き原稿。地図、正確/詳細な日記。チケットや写真、スケッチなど。何度も書きますが、この時点ですでに凡人とは違いますね、、)

e0063212_23465283.jpg
(ペルシア染付鶏冠壷 13世紀/淡青釉金彩花鳥文双耳壷 七代加藤幸兵衛/「シルクロード望見」七代加藤幸兵衛より 「背のうに陶のわざのみ籠み籠めて西の胡国へわが勇み行く」。七代加藤幸兵衛さんのイラン国立考古博物館での「ラスター彩里帰り展」、この夏7月4日から23日までだそうです。煌めく旅になりそうですね)

陶芸作家展でも、作家による書画が展示されていたんですが、当然なのかもしれませんが、書も絵も巧み!やきものを作る人って、デッサンから書道まで多才!加藤幸兵衛さんの「歌と画」も素敵でした。いちばん好きだった歌、「一粒の麦たらむわれオアシスに雪解け水の満ち来る春に」(オアシスの春は百花繚乱である。人も植物も生命の讃歌を奏でる。俺だってイランのオアシスの春の畑にまかれた一粒の麦なのかな)。

-------------------------ー-------------------

多治見(美濃)の土、水、空、緑、やきもの、人との出会いに感謝します。拙い拙い十七文字ですが、心をこめて。

白壁の蔵に青葉の淡き影 
藤棚に花揺れ光り踊りおり  
新緑を映して流る川逸る  
桃山の穴窯万緑迫りけり  
まだ白き木曽御岳や風薫る  
万緑や鳥の形の雲一つ  
川面いま輝く五月うつくしき  
by orientlibrary | 2013-05-18 00:34 | 日本のタイル、やきもの

眼福の幸兵衛窯。新緑眩しい美濃を訪ねて

数日前のことなのに時間の感覚がなく、「いい思い出」としてひとこまひとこまが蘇る旅。岐阜県、美濃・多治見。
日本の陶芸産地を訪ねたいと思っていながら、意外に腰が重い私。ぜひ行きたいと思っていた多治見は、これまで何度も宿泊予約をしたのにキャンセルする結果になり(ブラックリスト寸前だったかも)、なかなか行けなかったところ。今回がご縁のタイミングだったんだろうなと思う。鮮やかな新緑、五月の風と光、清流、真っ青な空、最高でした。もちろん陶器も、人も、食も。本当に行って良かった。
数日間の小さな旅ですが、幸兵衛窯、虎渓山永保寺、セラミックパークMINOなど、一度では書けない感じです。今回は、イスラーム陶器と和の趣きが大好きな私にとって、熱狂時間となった「幸兵衛窯」の一端を、写真中心ではありますがご紹介したいと思います。

e0063212_22284469.jpg
(JR多治見駅の陶オブジェ/1時間に1本のバスに乗り窯元が集まる山間の市之倉へ/土壁の蔵、大きな青空にクラクラしながら地図を片手に歩く/見えてきた幸兵衛窯)

(以下は幸兵衛窯ホームページを参照しています)
幸兵衛窯は1804年に初代加藤幸兵衛が開窯。間もなく江戸城本丸等へ染付食器を納める御用窯に。五代幸兵衛は、青磁、金襴手、染付、赤絵、天目など中国陶磁をはじめ、乾山、李朝など幅広い技法を駆使した名品を生み出し、幸兵衛窯の礎を築き上げました。
六代の加藤卓男氏は、ペルシア陶器や正倉院三彩の技法の復元で有名。ラスター彩、青釉、三彩、ペルシア色絵など伝統と独創の融合した作品を制作。人間国宝。
現当主、七代加藤幸兵衛氏は、桃山陶やペルシア陶器といった幅広い作風を展開。三十余名の熟練職人とともに品格ある和食器を制作しています。

e0063212_2234695.jpg
(幸兵衛本館。加藤卓男展示室/上右は加藤卓男さんの制作現場再現/旅先の日記やメモ。偉大な仕事をする人たちは、記録からすでに違うと、いつも思う。一日の疲れもあるだろうに、旅先の宿でこのような正確で美しい日記を書くこと自体がすごい。すでに作品!)

主な展示館が3つ。とにかく建物全体が重厚で素晴らしい。内部の展示や調度も、本物逸品揃いでずっしり見応え。展示作品は一部ガラスケースに入っているけれど、多くはそのまま展示されている、、驚きです。数センチまで近づいても大丈夫。もちろん触らないけれど、伝わってくるものがある。「生」!しかも、写真撮影もOK。こんな太っ腹な陶器展示って、、私設ならではでしょうか。最高です!

e0063212_235227.jpg
(加藤卓男氏作品。緑釉、青釉、ラスター彩、色絵)

代表作30点ほどとスケッチや日記。大作!ラスター彩!幅広い技法!それぞれに超一流の完成度。クラクラしつつ、「古陶磁資料館」へ。圧巻!言葉なし。

e0063212_23204755.jpg
(古陶磁資料館。約200年前の古民家を福井県大野市より移築。三階建て。庭園をはさんで桃山様式の半地上式穴窯/建物と陶磁器と調度としつらえと。贅沢な時間を満喫。ペルシア古陶、美濃古陶など)

e0063212_23264651.jpg
(古陶磁資料館の多彩な展示物は、最適な美しい居場所に)

入り口の青いタイルが目印の工芸館、五代加藤幸兵衛と当代の七代加藤幸兵衛の作品を展示。こちらも建物としつらえ、演出に熱狂。随所に飾られた花と器も和ませてくれます。写真は七代加藤幸兵衛氏が、この夏、テヘランの考古学博物館で展示するラスター彩。こういうものも惜しみなく展示されて、本当に感動です。

e0063212_23303472.jpg
(七代加藤幸兵衛氏のラスター彩。ペルシアのモチーフと日本的な感性。細密で上品!)

幸兵衛釜、当然陶磁器を見に行ったわけですが、驚いたのは絨毯の活用。日本の展示空間でこんなにたくさんの絨毯を見たことは今までありません。さすがペルシア陶器の研究者。ペルシアの美感を象徴するような手織り絨毯、その配し方と、流麗ながら枯れ感のある、どこか植物的な絨毯の数々を楽しませていただきました。

e0063212_233914100.jpg
(幸兵衛窯展示で使われていた絨毯、多数あった中の一部。真ん中のはバローチですか? →→→ こういう時はトライバルラグに詳しいSさんに♪「イラン南部のアフシャール族のもの」ではないかとのことです。南部なんですね。文様の構成が近く良し遠目良し、くたーっとしていて好きな絨毯でした。幸兵衛窯の絨毯、産地や文様それぞれ違うと思いますが、何か共通したトーンがあって興味深かった。やさしく素朴な洗練感のある野趣、的なものかなあ。セレクトする眼を感じました)

日本国内の観光名所を格付けするミシュラン・グリーンガイド・ジャポン(フランス語版)第2版改訂版(2011年発売)で、幸兵衛窯が再度2ツ星を獲得。「近くにいれば、寄り道をして訪れるべき場所」なのだとか。真っ当な評価ですね。(個人的には三ツ星ですが)

e0063212_23412024.jpg
(お気に入りのタイル/花のあしらい/日本やアジアの調度とやきものの組合せ。余白のバランス、色合わせ/ ラスター彩タイル!LOVE!!顔をくっつけるような距離でしみじみ拝見。これ普通はガラスケースの中ですよ、、淡い青がふわんとしてきれい!)

明治時代から盃の生産が盛んな市之倉町。「さかづき美術館」には行ってみましたが、窯元巡りは全然できていない。野と山と川のある郷、散策したい。

眼福の幸兵衛窯編、今回ここまでに。多治見シリーズ、続きます。

* たくさんのfacebookいいね!ありがとうございます *
by orientlibrary | 2013-05-06 23:55 | 日本のタイル、やきもの

青TODAY@テーブルウエアフェスティバル/悲願のウズ本&口琴ライブ

東京ドームいっぱいに、日本の陶芸産地、海外ブランド、アンティーク、テーブルコーディネートコンテスト発表展示などが繰り広げられる「テーブルウエアフェスティバル2013」。漫然と見ていると、たくさん見た〜で満足してしまうので、今年は軸を「青」に絞り、各地、各ブランド、各工房の青の表情を見ることに。結果、あらためて、やきものでの青色の比率の高さ、とくに日本のやきものでの青比率の高さと青の表現の多彩さに感じ入りました。

今回は写真中心に、フェスティバルの内容紹介ではなく、好きなもの、気になったものを選んでの青の陶器のご紹介です。産地やブランドと写真の照合があやういので、記載しない方が確実かと思い、日本、海外くらいの記載とさせて頂きます。すいません。

e0063212_21591740.jpg
(日本/多治見?/若手作家の明るい青の表現。女性好みのイラストや色合い、清潔感のある可愛らしさ。昨年のフェスで一番勢いを感じた多治見、今年も多彩な器形、鮮度のある色合いとデザイン、そして暮らしに溶け込み愛着を持って使われそうな器群で見応えがあり、安定していました。手の届くプライスもうれしい。)

e0063212_2210407.jpg
(日本/波佐見/大きなブースで賑わっていた波佐見。今の暮らしに似合う多彩な青。プレゼンテーションも商品がよく見えて勢いが伝わります)

e0063212_22165071.jpg
(日本/有田?/上段左:「JAPAN BLUE」というブランド名。豊かな水に恵まれた日本の水の清冽さを表現する試み。何度も吹き付けを重ねて青に深みを出しているとのこと。右も買いやすい価格だったと記憶。薄手で涼しげ。下段も有田だったと思う。デザイン性の高いものなど、様々な取組みを紹介。下右はレンジOK)

e0063212_2211797.jpg
(海外/このところ雑貨店でよく見かける北欧陶器。青い小花模様は女性好みの王道。手の届く価格帯。まだまだ人気が広がるのでは。有名ブランドもカジュアルな青使い。白の中の青がスッキリと涼しげ)

e0063212_2214686.jpg
(海外/フランス、イタリアなどの陶器とガラス。青の色味が違うことを感じます。日本はこのターコイズブルーではなく、もう少し紫系の紫陽花のような青、または水色。紺色もこのような重厚なものではなく、軽みがあります。同じ青で同じ色番号だとしても、素材や表現で微妙に違うのだろうなと感じました)

e0063212_2283670.jpg
(日本/ガラス、ワインクーラーなど/小樽など/ガラスも日本の青と繊細でやさしい自然モチーフが生きていました。コバルトブルーのどっしりしたテーブルと椅子も和のカフェなどに良さそうです)

e0063212_2244122.jpg
(日本/三川内焼/以前衝撃の出会いとして書いた「長崎みかわち焼」。三川内焼の工房出展、細密な絵付けで淡い色合いの染付が見事でした。海外に紹介したい絵付けです。今回思い出してみると、三川内焼、見たことはあったようです。渋谷ヒカリエでのプレゼンテーションが、鮮度高く強烈で、初めて見た感を抱かせました。プレゼンテーションや展示設計、演出、本当に本当に大事だと思います。今回も、有名産地でも技術が素晴らしい工房でも、プレゼンテーションが従来型のところは残念ながら魅力が発揮されていませんでした。もったいなさすぎます)

e0063212_2251076.jpg
(日本/ノリタケ、1904年創業/日本初のディナー皿を開発。ディナーウェアを主体に日本の洋食器産業の礎を築いてきたノリタケ。今回は日本で人気をよんだスイーツの歴史と合わせてのプレゼンテーションでした。華美で重厚な青が印象的なティーセット。すみれ色系と青の組合せも可憐)

e0063212_22293943.jpg
(日本/大倉陶園、1919年創業/日本のブランドのプレゼンテーション、上質で洗練されていました。自分には縁遠い華麗豪奢さですが、美しいものとしてスッと受け入れることができます。ぼかしのある青は、大倉陶園独自の技法「岡染め」によるもの。釉をかけて本焼成した白生地にコバルト絵具で絵付けし、再度1460度の高音で焼成。この間コバルトの青色は釉薬と柔らかに融合し、釉面に絵具が滲透。絵具の拡散により独特のぼかしができるそうです。中央アジアの絵付けを見慣れていると、日本の手描き絵付けの精緻な優美さは逆に新鮮です。イスラーム陶器は幾何学模様や様式的な植物模様が多いですが、自然への敬意や共感を描ききるような日本の絵付けには、しずかな力が満ちているように感じます)

e0063212_223245.jpg
(日本/幸兵衛釜/やはり目が止まります。ペルシア陶器の研究、ラスター彩の復元で有名な六代加藤卓男さんの幸兵衛釜。七代加藤幸兵衛さんのラスター彩も見事。今年の夏、テヘランの博物館で展覧会が開催されるそうです!イランの方々に、日本陶芸、日本のラスター彩をぜひ見ていただきたいと思います。商品が一堂に紹介された今回、セルジューク朝的な青に黒彩のもの、生命の樹などをモチーフにしたペルシア色絵のシリーズがやはり素敵でした。星座別の絵付けタイルも洒落ていて、立てかけたり壁に掛けたりできるようになっていました。このあたりがウズのタイルでは難しい。いろんなことを総合して、やきもののレベルが世界一高い日本、誰もがやきものを見る眼があり暮らしに溶け込んでいる日本で、中央アジアの陶器やタイルが「商品」として動いていくのは、簡単ではないと感じました。食品衛生法も課題。ただ、ウズベキスタンのざっくりした絵付けと日本にない青が、人気があることも確か。飾り物としての道はありそうです。アントレプレナーが出てくれば、、/今回のお買い物は幸兵衛釜で、下段右の湯のみと星座タイル☆)

-------------------------ー-------------------

この本、欲しかった、、「Uzbekistan: Heirs to the Silk Road」。買おうか迷っている間に絶版になり、今ではものすごく高額になってしまって、とても手が出ませんでした。(Amazon現時点で、新品82,000円強、中古20,000円強。海外からの輸入にて)。

e0063212_22215969.jpg

その本が、現在、私の横に(狂喜)。この幸運がなぜ訪れたかというと、、先日、ある大学の研究室におじゃました際、たくさんの方々の濃くて楽しい会話を聞きつつ、壁面を埋め尽くす本の中に、何か磁気を発している存在を感じたのです。それがこの赤い表紙の「Uzbekistan」。「ブックオフで安かった」とS先生。

思わず抱え込み、必死で見る私。「絶版なんですよ、、高いんですよ、、」とうわ言のように繰り返す私に、寛大なS先生、「1年間、貸してあげましょう」。狂喜しつつ、まだ見続ける私。先生「、、あげようか、、」即答「ありがとうございます!!!」

魅力なのは、例えば陶芸で18〜19世紀のリシタン陶器の写真実例があること。数少ない書籍でも、10〜11世紀、ティムール朝、そしてソ連崩壊後の陶器で、間がない。ソ連時代末期のパンフレットは偶然入手したけれど、18世紀頃は空白のゾーンでした。現在興味を持って資料を探している絣布「アトラス」なども図解と模様実例が豊富。細密画、金属加工、建築、室内装飾、服飾小物など、全体クラクラです。

寛大なS先生に幸あれ!神のご加護を。約束通り、今後、この本の内容を紹介したり、得た知識を何らかの形で生かしていきます!ありがとうございました!! (今後定期的にブックオフをチェックします♪)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

画像下段、『口琴のひびく世界』(直川礼緒著)。「中央アジアの音楽 テュルク・ミュージック・イン・トーキョー」での直川礼緒さんの口琴に圧倒され、ずっと気になっていました。ご縁があって日本口琴協会の定例会に初参加。Steev Kindwaldさんライブ、共演:立岩潤三さん(パーカッション)。強烈に素晴らしかった。現時点では、まだ言葉にできません。ことばになるのは、まだ先だと思います。

口琴については、内心「やばい」と思っている面も。素朴の極致のような楽器、けれども音世界の深さは無限とも思えます。価値観、生き方が変わるくらいに。なので、当面は隅の方でひっそりと聴いていようと思います。
by orientlibrary | 2013-02-11 22:33 | 日本のタイル、やきもの