イスラムアート紀行

orientlib.exblog.jp

カテゴリ:絨緞/天幕/布/衣装( 38 )

春のアトラス/アジアな手仕事/ウズフード

黄、赤、紫、色とりどりの花々、まだ少し肌寒いけど、春の明るさって、やっぱりいいな。というわけで、布も花咲きます!明るい色の布、ウズベキスタンの絣布「アトラス、アドラス」。

e0063212_229528.jpg
(「シルクロードの贈り物」展示品より。サテンが入ったような光沢のあるもの。以前は引いていたけれど、最近はこういうのが好きになってきた。左下の白地系のアドラスの手触りもいいです。アドラスは日常使いできるのがいい。夏にサラッと着られそうです)

以前は、日本人には派手すぎ、実用には無理、と私も思っていました。でも、見る機会、触れる機会が増えるにつれて、だんだんこの明るく強い色合いに親しみを感じるようになりました。
いろんな経緯から、すでに相当な数のアトラス&アドラスを持っているにも関わらず、またどんどん増えています。こうなったら、ふだんも使いますよ〜!

e0063212_22135273.jpg
(同/モワレがきれい。光沢が魅力的。そして大きな文様。色!なかには日本の着物の柄のようなものも。きれいは世界をつなぐ)

e0063212_2217211.jpg
(同/色合わせがすごい。原色だけでなく、微妙な色を使って意外な組合せをしている。本当に魅力的な布)

ウズの青い陶器が止まらない時代を経て?、アトラスが止まらない?陶器は郵送の事情などもあり、止まってます。それが健全かも、、

----------------------------ー------------------

友人が骨董市で「これは昭和のものだから!」と強調されたと、複雑な顔。昭和って、すでに骨董?ま、それもまた良し。だって、こんなにいい感じですもん!

e0063212_2231171.jpg
(西早稲田の昭和な路地の一角にあるギャラリー。イベント時にはカフェも)

先日、西早稲田の「もくれんげ」という一軒家ギャラリーでの展示「彼方の手 此方の手 Vol3」に。アジアの藍染め衣料Ogさん、インドの刺繍などの手仕事Kocariさん、諸国アンティークFUCHISOさん。個性とセンスのゴールデントライアングルのような組合せ。「もくれんげ」さんも、昨秋一目惚れしたギャラリーです。

e0063212_22324882.jpg
(Ogのアジア服。陽射しが似合う。アジアの風を感じる時間。右下は「まかない」のランチ、いい感じなのでパチリ)

e0063212_22343831.jpg
(Kocariさんのラリーキルトは女性の憧れ。気持ちが華やぎます。ワクワク。お客さんたちも皆さん、ふんわりのいい笑顔)

e0063212_2241342.jpg
(FUCHISO。写真で伝えられないのが残念ですが、ディスプレー、素晴らしかった。さすがです。徹底したものが伝わってきました)

ついつい長居してしまった、心地いい展示会でした。ありがとうございました。

----------------------------ー------------------

冬のウズ旅、タシケントから少しずつ、と写真を準備していたのですが、なんか中途半端になりそうなので、今回はバザールやその周辺の食をご紹介したいと思います。

e0063212_22543512.jpg
(冬が過ぎ春になると野菜が出てくるウズ。バザールもフレッシュな色合いに。野菜のサモサ、食べたかった)

緑で爽やか!から、こちら不思議系!バザールの総菜売場、独特の陳列。にんじんサラダ山。積み上げますね〜。中央アジアのバザール、この積み上げ系が多いですが、いつ頃からこのような形式に?
疑問なのは、どうやって売っていくのかということ。下の方はどうなっているんでしょうか。売れていくと下に洗面器を置いて底上げするんでしょうか。謎です。

e0063212_2259830.jpg
(にんじん山のミニバージョンに挑戦しましたが、あえなく挫折。にんじんをこの量切るのは大変なことだと実感/馬の腸詰めと聞きましたが、、/麺と馬肉というウワサ/魚のフライらしい/ウズ名物クルタ。真ん丸だけでなくいろんな形があって楽しい。味は、、塩辛く酸っぱい/お醤油色のはよくわからない食べ物だった。タケノコを軟らかくしたような食感。謎。ウルグットのバザールで。地方の食べ物なのかなあ)

e0063212_2324396.jpg
(スーパーマーケットのレジに突然魚があってビックリした。干物よりもレアな感じ。チキンのオレンジ色もすごい/ノウルーズの定番スマック/飾りなのかドライなのか今も不明、リンゴ/これは食べる用のブドウと思われた/不思議なもの。不明/哀しい食事。肉類苦手な私、たまには温かいものを食べたいと。ラーメンは韓国製インスタント麺。これで15000スム。750円くらい。。。日本はすばらしい。外食もスーパーも何でもあるし、値段もこなれている)

----------------------------ー------------------

青のfacebook、「青の陶器とタイル好き * blue ceramic museum」よりサマリーです。

e0063212_23171686.jpg
(ウズの青い食器/イランの絵本の青/カシュガイ族の絨毯/カラーン・モスク(ブハラ)/ウルグベク・マドラサ(サマルカンド)/グール・アミール廟(サマルカンド))

更新が遅い上に、まとまらない内容ですが、このへんでアップします!

イランの地震、心配です。
by orientlibrary | 2013-04-16 23:37 | 絨緞/天幕/布/衣装

青の陶器&本/養蚕技術交流とアトラス/動植物文様

青のfacebook、「青の陶器とタイル好き * blue ceramic museum」。テーマを青に絞っての短い1トピック(1枚の写真と短いコメント)で、ぼちぼち続けています。

短いと書きやすい。そして1トピックだと意外と勉強になるというか、書く側の記憶に残ることを発見。トピックによる反応の違いなども、興味深いです。やはり「壮麗できれいなもの」が人気がある印象。マニアックな「かけら」や「和の余白系」は、個人的好みなんですね。

こちらでのサマリー紹介をしばらくしていなかったので、たまっています。一気に。小さいですが。

e0063212_23105974.jpg
(更新日順ではなくアトランダム。上段左から下段右に:カシュガルのアパク・ホージャー廟/ブハラ/サマルカンド、テッラカリマドラサ/景徳鎮古染付捻文杯/イラン90年代/キュタフヤのラスター彩/コチェル氏のブルー&ホワイト/タシケントの工芸博物館/タシケントのティムール博物館/シャーヒズインダ墓廟古写真/カラーン・モスクの水のタイル/ティラカリ・マドラサ/染付魚形硯、日本/ナディル・ディヴァンベギ・マドラサ/イズニック皿/シャーヒ・ズィンダ浮彫りタイル/パンジャーブの青いタイル/グール・アミール廟のミナレット/グールアミールのモザイク/イズニックの街角)

——————————————————————————————————————————————————

青の本紹介の続編です。

e0063212_23111188.jpg
(イラン・タブリーズの「マスジド・キャブート」(ブルーモスク)。現地で購入した資料2種類)

e0063212_2311192.jpg
(中近東文化センター附属博物館発行のペルシア陶器をテーマとした展覧会図録シリーズ3冊)

e0063212_23112835.jpg
(ウズベキスタンの歴史的建造物、タイル装飾に特化した「SAMARKAND・BUKHARA ・KHIVA」/中央アジア(トルケスタン)の歴史的建造物、歴史、美術等「MONUMENTS OF CENTRAL ASIA〜 A GUIDE TO THE ARCHEOLOGY, ART AND ARCHITECTURE OF TURKESTAN」)

e0063212_23114273.jpg
(庭をテーマにイランの建築と美術を美しい図版とともに紹介する「GARDENS OF IRAN〜Ancient Wisdom New Visions」/モロッコの工芸本。片手で持てないくらいにずっしりと重い。王制だからできるのかなとも思える素晴らしい美術本、しかも2冊。神保町の古本屋さんで購入。なかなかに高価だった「TRADITIONAL ISRAMIC CRAFT IN MOROCCAN ARCHITECTURE」)

——————————————————————————————————————————————————

ウズベキスタンのテキスタイル「アトラス」、その元となる絹、養蚕の技術交流プロジェクト紹介の展覧会です。東京農工大学 ”シルクロードからの贈り物-ウズベキスタンにおける養蚕技術交流” 展、開催中(4月13日まで/東京農工大学科学博物館:東京都小金井市中町2-24-16)。

内容は、
1:農工大プロジェクト概要紹介と成果のパネル展示
2:2012年春開催の「アトラスハンディクラフトコンテスト」入賞作品、それをお手本にウズベキスタンで試作した製品を対にて展示
3:アトラスの日本での展開、可能性〜「KANNOTEXTILE」作品展示、博物会友の会によるアトラスを使っての作品展示
4:アトラス実物、アトラスの伝統衣装、ウズベキスタンの雑貨や書籍などの展示、演出。(*アトラスとはウズベキスタン伝統の絹の絣布。絹と木綿で織ったものはアドラス)

3月30日には、午後1時半より、同所にて、ウズベキスタンの布と旅と題した講演、ウズベキスタンダンスなども。楽しそう!^^ これを記念して(?)、アトラスに関わる光景を少々。

e0063212_2313356.jpg
(工房での制作の様子)

e0063212_2314357.jpg

e0063212_2314176.jpg
(コカンドやマルギランなどのバザールでの布類販売の光景)

大胆で活力ある模様とビビッドな色の組合せが素晴らしい。日本人には派手すぎると言われますが、見れば見るほど魅力を感じる布です。展示会場では、ウズ直行便!の30種類ほどのアトラス&アドラスが演出に使われていますよ。

ウズのテキスタイルの魅力、もう一つは、刺繍布の「スザニ」。これまでも何度かチラチラと書いてきていますが、こちらも大胆な模様構成と細密な手仕事、色使いで目の覚めるような布です。元々嫁入りに際して持参するもの。親族の思いが込められています。

e0063212_23144682.jpg
(博物館等で撮影)

アンティークではなくても、販売されている新しいものも、一針一針の手仕事に変わりはなく、大きなものは数ヶ月も要する力作揃い。

道路の無数の穴、剥がれているレンガなどを見ると、ざっくりしている印象ですが、細密なことをやるときはやる、という熱のようなものを感じるウズ工芸です。

——————————————————————————————————————————————————

春。友人知人たちの動きも活発に!?トライバルラグをとことん愛するディーラー、トライブさん、ホラサーン(マシャドなど)を中心としたイラン仕入れ旅から帰国。怒濤の勢いで?展示旅中。ホラサーンの香りを求めて、おじゃましてきました。「動植物文様の布 animals&flowers」(25日まで。新宿西口クリスタルスポットにて)。

動物や植物の文様は陶芸作品にも多いのですが、大きさのある絨毯やキリムでは、全体の構成がまず興味深い。物語がありますね。図像としても、織物や刺繍の多彩な技法を駆使した表現が面白い。色もカラフルです。

e0063212_23145157.jpg
(上段左の太陽神と獅子?はタイルでも有名なモチーフ。上段右は孔雀だそうです。下段、人間もいます。ラクダや鳥も。じつは最近気になっているのが「鳥」「魚」のモチーフ。やきものの鳥と魚を追いかけてみたいという野望がウズウズ、、)

クルドやシャーセバン、バルーチ、カシュガイなど、遊牧民のものが多いせいか、陶芸での表現よりも、自然でおおらか。より動物や植物に近いところにいる人たちの感性、思いが伝わります。

一方、パキスタン旅の報告会は、写真と映像と語りによる熱い熱い2時間半。「ドンパチやってるパキスタンも事実なら、ニコニコしてるパキスタンもまた事実」という村山和之さん。

e0063212_2315157.jpg
(この写真はorientlibraryです。ムルタン、ウッチュなど)

音楽、食、生活、人がイキイキとして、、行きたいな〜。(本当はパキスタンに行きたかった、この冬)。「写真撮れ」と言われるのはウズも一緒だな、とか、ラホールのタイルは黄色と緑で青がないな、とか、いろいろ感じた濃い時間。小さなカフェが満員ギチギチ。人気者〜!

ブログ更新が遅れ気味ですが、ゆっくりでも続けていきます。もっとしっかり調べて書いていきたい!
by orientlibrary | 2013-03-21 23:22 | 絨緞/天幕/布/衣装

Atlas Today、色使いと模様が魅力、ウズベキスタンの絹織物

アトラスです。大急ぎにて。ウズベキスタンの絹の絣布アトラス。大胆な模様と目の覚めるようなイキイキした色使いで、近年は欧米や日本のデザイナーにも注目されています。

まとめる余裕がないので、そのまんまですが、、「University of Nebraska - Lincoln DigitalCommons@University of Nebraska – Lincolnより。“Atlas Today: Patterns of Production, Bazaars and Bloomingdales Uzbekistan and Xinjiang, China”(Mary M. Dusenbury/2007〜2008年の調査による)」を意訳してみました。そのままの正確な訳ではないので、その点、ご了解くださいね。

e0063212_2311642.jpg
(マルギラン〜ウズベキスタン、フェルガナ〜の専門職家庭/2011夏)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

19世紀、中央アジアのハーン国、オアシスの街々では、統治者や富裕な商人、経済的な余裕のある男女は、大胆な模様の経絣、ベルベットの式服を纏っており、そのデザインの多彩さは驚くべきものであった。19世紀の絣(ikat/イカット)の衣装、織物は、今日の博物館や個人のコレクションとして記録や写真が残っている。1970年代以降は、蒐集家、ディーラー、研究者の関心の的となっている。

この大胆なイカットは、19世紀初頭より富裕で洗練された美意識を持つ人々の支持を得て、素晴らしい多彩さを見せている。19世紀末には、この「アトラス atlas」は富裕層だけでなく、簡素なタイプのものならば中央アジア中の人々(さらにはチュルク系のウイグルの人々)が着るようになっていた。

1865年、フェルガナ盆地コカンド・ハーン国の指揮官がパミールの山々やその周辺を行進したが、フェルガナの職人が作る豪華な彼のコートはしっかりと地元の人々の印象に焼き付いたようだ。数年後にはウズベクスタイルの絹絣のガウンが、かの地を訪れた商人や冒険家に提供された。今ではそれがロンドンのビクトリア&アルバート美術館の重要なコレクションとなっている。

ロシアの中央アジア支配、ハーン国統治者の死後には、安価な工業製品の布が広まり、絣織アトラスの豊かな伝統は荒廃した。本物のイカットは、安価な模造の絣に取って変わられ、模様はプリントとなった。ロシアと中央アジアの起業家たちがタッグを組んでフェルガナ地方を商業的なシルクの生産地に替え、今日に至っている。商業的とは、手織りと機械織りの両方を含む概念として理解されよう。

e0063212_23231732.jpg
(マルギランの著名な生産現場/2012夏)

中央アジアでの今日における手織りイカットの心臓部は、ウズベキスタンのフェルガナ地方にある。ソ連崩壊後、織物を家業とするいくつかのファミリーがアトラス織の復興に取組んでいる。その主役は、ファミリーの4代め、5代め、6代めの世代である。

復興に取組む若手世代は、数十、いやそれ以上の複雑な行程を要する絣布製作の主要なメンバーでもある。また製作の行程に欠かせない専門の技を持つ数百もの職人の家々を束ねているものもいる。デザインやマーケティングも重要であり、インターネットで国際的な市場を調査する担当もいる。

最高の製品の多くを仕入れるのはトルコのディーラーである。父親世代はトルコに何度となく出向いたものだが、今の世代はインターネットで商売する。繊維産業には、監督官や財務の担当者も必要だ。多くの工房を見回り進捗状況を監督する。若手世代は、商人であり主要な制作者であり、プロデューサーでもあるといえる。

フェルガナ盆地とウイグルは生産において連動したネットワークを有しているが、それは複雑であると同時に流動的である。例えば、織り機は自分のものだが、経糸はすでに作られたものを購入する人もいる。フェルガナ盆地では多くの織り手は自分の設備を持たないが、仕事と糸は監督者から提供される。シルクの糸繰り機は動力のある設備により速度が向上した。手紡ぎ、手染めの糸は小さな織機で良く織りあげられる。

e0063212_23241660.jpg
(マルギランのアトラスをリードする工房にて/2012夏)

現在、アトラスのテーマは、他のシルク製品といかに差別化するかという段階に来ていると考えられる。ウズベキスタンでもウイグルでも、バザールには数えきれないほどのアトラスが売られている。売り手は、販売が好調で伸びていると話す。プリントのイカットは、中国や韓国で生産されている。街角で見られる大半の「アトラス」は高価ではないが化学繊維のものだ。ギラギラしたベルベット風プリントのアトラスにも魅力はある。

マルギランの木曜市、そこには多様な図柄の手織アトラスが登場する。ウズベキスタンだけでなく隣国からの商人たちが、きらびやかな模様と色の素晴らしい、このアトラスを仕入れに来る。デザインは季節ごとに変わり、ディーラーや蒐集家の購入意欲をそそる。

e0063212_23254314.jpg
(アトラスにまつわる写真/工芸博物館の絵画、お土産物、バザールの人形、ホテルの部屋のカーテン)

ウズベキスタンでは、現在、女性用の絣布の衣装は種類豊富になり、デザインや材質、シルエットも様々だ。アトラスは文化遺産であり、国や民族のアイデンティティの象徴にもなっている。

アトラスは、国際的なデザイナーたちにも注目され取り上げられている。例えば、オスカー・デ・ラ・ルンタは、いち早くマルギランのベルベットイカットとアドラスを使った。ラルフ・ローレンもコレクションで、手織り、プリント両方のアトラスを紹介した。

21世紀に入り、アトラスの大胆な柄や目の覚めるような色合いは、ソ連時代も伝統技術を脈々と守り抜いた幾世代もの職人たちの忍耐を賞賛し、アトラス新世紀に向けて復興し、子孫代々隆盛させようとしている彼らのビジョンと決意を示している。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

青のfacebookから、サマリー。一部です。

e0063212_2329570.jpg
(イラン90年代街角の青/サマルカンドのグール・アミール/カシュガルのアパク・ホージャー廟/キュタフヤのラスター彩/ブハラ・青の輝き/サマルカンドのシャーヒズインダ墓廟古写真)

ウズベキスタンに行ってきます。厳寒装備です。ではまた!毎日寒いですが、ご自愛くださいね!
by orientlibrary | 2013-02-18 23:33 | 絨緞/天幕/布/衣装

望月真理さんのミラクル刺繍ワールド。眼福のカンタ、カシミール

刺繍家の望月真理さん、初めてお会いしたのは2004年の夏でした。手仕事好き仲間と訪ねた福島いわきにある真理さんの工房。広い縁側のある古民家、裏には竹林が。
先生のお弟子さんたちも集まってくださり、皆さん持ち寄りのいわきの海の幸を生かした郷土料理を美味しく頂き、会話も花咲き、夜は花火をして、、とても楽しい夏の旅でした。

e0063212_21445559.jpg
(望月真理さん作品)

そのとき拝見した真理さんのコレクションには圧倒されました。アジアの山岳民族、インド、バングラデシュの衣装や刺繍のすばらしさ。けれども拝見したのはごく一部。量もすごかった。
その後、「美しい世界の手仕事プロジェクト」(2008年7〜9月/4企画)という文化紹介プロジェクトをおこなうことになり、第1回に真理さんの「カンタ」コレクションと自作カンタを展示させて頂きました(2008年7月開催)。経緯を他のブログに書いています。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
(2008年7月/orientlibrary/ 「美しい世界の手仕事プロジェクト」より)
とても全部は見られず、一部だったのですが、拝見したもののなかにバングラデシュのカンタがありました。カンタ、、見たことはありました。素朴な民衆の刺繍という印象を持っていました。

望月さんのカンタも、同じように素朴で、手仕事のあたたかさがありました。でも、それだけではない、なにかとてものびのびしたものを感じたのです。どこか「突き抜けている」感じというか、、。

のびのびと描かれた自然や人々、ユーモラスでゆったりした感じ、チクチク刺繍を楽しんでいる様子。でも、そのおおらかさのなかに何か強いものがある。根本的な姿勢、視点のようなものがある。

とらわれず、ものごとを受容していく強さ、人生を肯定するたくましさ、否定しないあたたかさ、ユーモアで何かを乗り越えていく感じ。ほんわりしたテイストのなかに潜む駆動感や突き抜け感。自由、自由だと私は思いました。精神が自由なのだと思いました。

数あるカンタのなかから、望月さんが惹かれたもの、望月さんの眼が選んだもの。望月さんの個性、生き方と波動が重なり合うもの。セレクトされたカンタからあふれる、おおらかで自由な精神のありように、蒐集とはこういうことなのかと思いました。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

e0063212_22262940.jpg
(真理さん作品のカンタ。大きな構図の中の小さな小さな動物たちですが、ついつい写真を撮ってしまいます)

真理さんは1926年生まれ、86歳。ヨーロッパ刺繍を学んだ後、カンタとの衝撃的な出会いがあり、東南アジアの山岳民族の刺繍に魅せられていきます。

**************
(真理さん文章 「カンタについて」)
インド、バングラデシュは、以前は国境がありませんでした。インドのウエストベンガル地方です。バングラデシュのジェソールあたりを中心として、カンタと呼ばれる刺し子が、かつて多くの家庭で作られていました。古くなって使用に耐えられなくなった木綿のサリーやドウティ(男性衣)を大切に保存しておき、目的に合わせて何枚か重ね、思い思いの図柄とそのまわりの空間も細かく刺し、ふとん、敷物、包む物等を作ったのです。これらは見事な民衆芸術の域にまで昇華しました。今ではこの仕事をする人もなく、この貴重な文化は途絶えてしまいました。

私が初めてカンタを知ったのは、1979年カルカッタの国立博物館で、その時の驚きと興奮は今も忘れられません。もちろん教科書もなく、作る人もいなくなり、十回に及ぶインド、バングラデシュの調査探訪が始まり、古いカンタを譲り受け、それを元に研究してまいりました。

カルカッタのグルサディミュージアム、アストッシュミュージアム、デリーの国立博物館は素晴らしいカンタがありますが、バングラデシュのダッカの国立博物館は数も質も見事な物ばかりです。この文化の途絶えるのを惜しみ、シルクロードの終点である日本で受け継いでいきたいと願っております。
**************

e0063212_965920.jpg
(2012年10月、4日間だけの開催だったコレクション&作品展。作品も多彩でアップしきれません。各地の技法の組合せ、日本の古布とのコラボ、韓国のポジャギ作品なども素敵です/上中右=家族四代の記憶と題された作品。真理さんのお母様の大島に真理さんが刺繍。絵はお孫さんが描いた絵を娘さんが拾い集めて保存したもの/下左は藍の古布、モン族の継ぎ合わせ)

真理さん、カンタとの出会い、53歳のとき、、それからの展開、すごい!
インドの雄大な絵を描いた画家の秋野不矩さんも、初インドは54歳。インドに魅せられ風景や自然、寺院などをモチーフに作品を制作。そしてインドにとどまらず、ネパール、アフガニスタン、カンボジアなどを旅した日々は、真理さんと重なります。インドからの刺激、大きいものがあるのですね。

e0063212_2227395.jpg
(真理さん作品カンタの細部)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(柳宗玄さんの文章より)
家族のために心をこめて針を刺す。手間のかかる程愛情が布に移り、こうして作られた布は例外なしに見事である。
見方によれば雑巾の一種であるが、また見方を変えれば最高級の芸術品なのである。しかしカンタの時代はもう終わった。今も作ってはいるが、市販のけばけばしい色糸を用い、手間を出来るだけ省こうとする土産物である。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

柳さんの言葉、各地の手工芸全般に共通する部分もありますね。家族のためにコツコツと作っていたものに宿る美しさ。それが製品になったときにはどうしても効率が求められ変容していく。でも、土産物としての販売は貴重な現金収入になります。
またむしろカラフルで楽しく、期待される(わかりやすい)土地のイメージシンボルが入っている図柄の方が、旅行客に人気があるかもしれません。カンタだけではなく、伝統を今に生かす道として一つの流れになっているように思います。

e0063212_22461825.jpg
(真理さんコレクションより/上中はピーニャ(パイナップル繊維布)/上右はヨルダン/中左は透ける刺繍/中中はカシミール/帽子やミラー刺繍等)

サービス精神旺盛な真理さん、いろんな話をしてくださいます。
「(山岳の部族では)刺繍のできる女が敬われるのよ。刺繍の上手な順にお嫁に行く。なぜかというと、刺繍が上手ということは、根性がある、創造性がある、時間管理ができる、というその土地で暮らしていくのに大事な才覚があると考えられているから」

「刺繍は針と糸と布があれば、いつでもどこでもできる。手を動かすことに没頭できるって大事なこと。老後の趣味にはカンタが一番いいわよ」

「10年後にはどんなことをしてるかしらね」

わ〜、、 まいりました。日々老化を感じて溜息、、なんてついてる場合じゃないです、、ガツンです。

そして、じつは話が盛り上がって、、「仕方ないわね、秘蔵のものを見せてあげるわ」とバックヤードから出してきてくださったもの。ガツーン!カシミールの刺繍です〜!!!元々、こちら系が好きなうえに、素晴らしい逸品で、、先日のトルクメンのフラグメントに引き続き狂っちゃいました。。

e0063212_238569.jpg
(カシミールショール。ペイズリーの刺繍が群生する植物のよう。藍色一色、凛と潔い作品)

e0063212_239771.jpg
(カシミールショール。これ、熱狂しました。品の良い色合い、愛らしい花模様。洗練)

また袋に入れて封をして仕舞われました。ひとときの眼福眼福。

じつはこのショールに負けないくらい惹かれたのが、ボロボロになったカンタ。真理さんが「これを見て研究した」というカンタ。写真アップしようか迷いましたが、あまりに個人的な趣味なのでやめておきます。が、野趣ともいえるような強烈なパワー。まいりました。

アフガニスタンのことを書こうと思っているのですが、素晴らしいものを見るとついそちらが先になり、なかなか書けません。アフガンもウズも、もうかなり寒いでしょうね。日本も秋深まってきました。
by orientlibrary | 2012-10-28 23:29 | 絨緞/天幕/布/衣装

フラグメントからアンティーク絨毯まで。「コレクター」という人生の愉しみ方

いくつになっても、ワクワクする「出会い」はあるもの。そして出会いは、どのようにして出会ったかの場面によって、ずいぶん印象が違います。
古いやきものやテキスタイルとは、博物館やギャラリーで対面することが多いですが、好きなものに出会ったときには、ガラスにおでこをくっつけて一人で熱狂、感動。

でも、コレクターを訪問して、お話を聞きながら、ゆっくりじっくりたっぷり見せてもらうときの、モノとの出会いは格別。コレクターの熱が移り、、こちらも熱に浮かされてきます。見ている全員で、没頭と浮遊の狭間のようなハイな状態に。

絨毯やテキスタイルのコレクター、taiさん宅に蒐集した品々を拝見にうかがいました。蒐集は人柄ですね。taiさんのモノたちは、古くて傷んでいるものもあるけれど、それが「味」。クタ〜ッとしたところがエレガントでかわいくて、時間の経過がモノが持っていた世界をより深めている感じがします。そういうものを「選ぶ」。眼ですね。いや、心かな。
そんなわけで、今回は、見て触れて狂ったすてきなモノたちを、なんちゃって写真ではありますがシェアさせていただきます。

* … * … * …* … * … * … * …* … * … * … * … * * … * … * …* … * … * … * …* … * … * …*

きゃ〜!、、、かわいい!! taiさんにとっては「前菜に、まずこちらを」という感じだったと思いますが、私には主役級。ドカ〜ン。

e0063212_21174751.jpg
(トルクメン、テッケ族、女性衣装「chyrpy」(マント状の衣装)、フラグメント化していますが、そこがまた想像力をかきたてます!!)

元はこんなのですか〜?(↓)こんな黄色だったんですか〜?
e0063212_2120485.jpg
(Tekke Turkmen Chyrpy  Seref Ozen
Cocoon
Istanbul, Turkey より引用)

tribesakakiさんによると、「黄色は男子を出産し成人させた女性、白はめったにありませんがたしか63歳以上(61歳だったかも?)と聴いた事があります。濃紺や黒地は一般女性です」、「フラグメント化していましたが、紋様はばっちり残っていて一つ一つがテケ族の伝統モチーフでした。裏に使われていたラジャスタンの鬼手更紗も見事なもので、時代を感じる事ができました」とのこと。

フラグメントが興味深いのは、繊維や構造が垣間みられること。タイルや陶器の「かけら」にグッと引き寄せられていく私、布も断片にすごく惹かれます。なんでしょうか、この感覚。
裏地の木綿木版更紗に描かれたざっくりした模様のかわいらしさ。真っ赤で丸みのある花たち、青と赤の太陽のようなモチーフ、生命の樹のようなギザギザ。褪せた黄色。やわらかい。やさしい。
taiさん言うところの「老貴婦人」のエレガンスにやられました。はぁ〜。。。

* … * … * …* … * … * … * …* … * … * … * … * * … * … * …* … * … * … * …* … * …*

何気なく置かれた数十㎝の小さなクタッとした布、、こちらも「前菜」だったと思いますが、当然強く反応。だってウズのベルベットじゃないですか!

e0063212_21321677.jpg
(Central Asian Silk Velvet Ikat )

色が褪せていても、いい味わいの色合いになってますね〜。寄って見たときの、かすれ方がたまりません。色が落ちた青が渋爽やか(こんな言葉あり?)。

こちらに全体のイメージが。例えば、赤のベルベットはアップで大きく見るとこんな感じ。生き物のよう。立派な衣装で展示されているのもいいのですが、小さいものから大きなものを想像する。これが楽しいな〜。

* … * … * …* … * … * … * …* … * … * … * … * * … * … * …* … * … * … * …* … * …* … *

本当はここからが本題。taiさんはトライバルラグ(部族絨毯)とキリムのコレクターなのですから。とくに、バローチ(Baluch)とカシュガイ(Qashqaie)。私にとってうれしいのは、両者とも青がきれいなラグであること。赤系があまり得意ではないので、絨毯で青を楽しめるのがうれしい。
そんなわけで、以下すべて、青に寄った趣味趣味のディテール写真ばかりです。

e0063212_21432620.jpg
(バローチ族の絨毯、ディテール)

<バローチ民族 >
パキスタン、イラン、アフガニスタンの国境が交わる地域バローチスターン地方を中心に居住する民族であり、イラン系バローチー語を母語とするバローチ族とドラヴィダ系ブラーフィー語を母語とするブラーフィ族との総体をさし、ともに類似した民族文化を持っている。同地域ではパシュトウーン民族が隣人。宗教はイスラーム教スンニー派。狂信的ではなく原理主義やテロとは無縁。都市やオアシス、農漁村の定住民と遊牧民からなる。商業活動を潔しとせず、隣接する他民族に比べても概して金持ちは少ない。主食は小麦。他に肉、野菜、乳製品、ナツメヤシ、茶、(酒)など。
(以上、村山和之氏が以前レクチャーして下さった時のレジュメより引用させていただきました)

なんて青でしょう。中央アジアの空を思わせるタイルや陶器の青の表情とはまた違い、絨毯の青は砂漠の夜を感じさせます。
taiさんのブログで、 「エレクトリック・ブルー」と呼ばれる「光る青」が使われた絨毯紹介している記事、「Balochi prayer rug 比較」。写真の青、光っています。

* … * … * …* … * … * … * …* … * … * … * … * * … * … * …* … * … * … * …* … * …* … *

絨毯の青です。深い。

e0063212_2152024.jpg
(左上:相当古そうな絨毯。クタクタになってもう布のような薄さに。だからこそ、この花模様が浮き上がって見えてきたのです。感激/下左と中:黒っぽい青、そこに白く小さい花。やられますね〜/下右:このような和室で拝見。床の間には「敷き瓦」、土族感激)

* … * … * …* … * … * … * …* … * … * … * … * * … * … * …* … * … * … * …* … * …* … *

は〜、、こんなに花や動物や星や不思議なものたちが、ぎっしりと満員電車のように織り込まれているのに、うるさくなく調和が取れて何の違和感もなく、物語に引込まれる。すごい、すごい。カシュガイのファンが多いのもうなずけます。青が美しいですよ〜。。

e0063212_21554663.jpg
(カシュガイ族の絨毯)

村の普通の女性が織った絨毯。どんな感性?何を見て育ち暮らしている?遊牧して羊を育て羊毛を刈り糸に紡ぎ植物から染料を作り毛を染め手作りの織り機にかけ織っていく。天幕の前で。絨毯素人にも、「無理矢理お金のためではなく、楽しそうに作っている」感じ、作ることへの熱が伝わります。魅力的ですね〜!

シンプルなテイストで人気の毛織物「ギャッベ」でおなじみのカシュガイ族ですが、ギャッベだけじゃないですよね! 、、あれ、検索してもギャッベばかり、、仕方ない、英語サイトを少し散策。で、下記のような感じです。 

<QASHQAIE TRIBE> 
南イランで最も名高い部族でありペルシャ語とチュルク系のカシュガイの言葉のバイリンガルである。領域は広く、イスファハーン州のアバデからペルシア湾岸のあたりまで。非常に多くの氏族があるが、主要なものは、Kashkooli, Sheesh Blocki, Khalaj, Farsi Madan, Safi Khani, Rahimi, Bayat, Darreh Shuyee。
素晴らしい絨毯や羊毛織物で有名。ときに、その昔絨毯の集散地であった「シーラーズ」を冠されることもある。羊毛はシーラーズ近郊の山岳や峡谷で産される。イランの他の地域と比較しても、格別に柔かく美しく深い色合いを持つ。深い青、暗いルビー赤はともに途方もなく美しい。輝くような羊毛は堅牢でもあり、シルク以上に透明だと言われている。カシュガイの絨毯は、イランの部族全ての中で最も有名だと言われてきた。とくにサドルバッグは多彩色の幾何学模様で飾られ、他の部族のものよりも優れている。

e0063212_22582627.jpg

e0063212_2258127.jpg
(wikipediaより2点)

* … * … * …* … * … * … * …* … * … * … * … * * … * … * …* … * … * … * …* … * …* … *

絨毯の端の部分にあるキリム(平織り)。絨毯産地では絨毯の価値が高く、キリムに重きを置かれなかったため、この部分がカットされた絨毯が流通しているケースが多いとのこと。

e0063212_22372611.jpg
(絨毯の端の部分、上下にあるキリムのパート。この色合い、質感!ざくざくして、かすれていて、、日本人好きですよね)

この美しいキリムがついているのは、貴重なのだそうです。もったいない!なんてことをするんでしょうか。taiさんのコレクションには、ちゃんとついていました。味わいがありますね〜。

* … * … * …* … * … * … * …* … * … * … * … * * … * … * …* … * … * … * …* … * …* … *

やっとここまで辿り着きました。「tekara wonder vol.1 ”The Balochi”  バローチ族の手仕事、芸能を紹介する10日間」。横浜青葉台のアジア家具店「エスニカ」にて開催中の”The Balochi”(10月12日〜21日)。

e0063212_2241299.jpg
(”The Balochi”の模様/上左:クイーンT作成のサドルバッグをつけたラクダも/上中:コレクションを説明するtaiさん/遊牧民の持ち物一覧を壁に展示、わかりやすい/下中:taiさんを囲んでの座談会/バローチ研究家・村山さんからバローチの音源を頂いてうれし〜!バローチのラグの上で記念撮影)

松島コレクション(1960~70年代に収集された遊牧民の毛織物)、taiさんのコレクション、tribeさんの展示と販売(バローチ族のラグやキリムを中心に、イラン~アフガニスタンに生活する遊牧系部族のラグ、キリム、袋物など)で、埋め尽くされています。こちらtekaraにも写真が。

時を経たもの、本物、手仕事の味わいを持つ部族の絨毯に、魔法にかかったように惹かれたというtaiさん。なんと蒐集を初めてまだ4年ほどとは!熱中人!愛情だけでなく、知識も素晴らしい。キリムや絨毯が好きな方がハマっているブログ、「My Favorite Rugs and Kilims」。ディープな話題、これからますます楽しみです。

まだ書きたい内容もあったんですが、長くなったので次回にします☆ ではまた!
by orientlibrary | 2012-10-14 23:14 | 絨緞/天幕/布/衣装

想いと技が凝縮した濃厚な美、民族の手仕事

久々活力。ペーパードライバーの路上講習が、そんなにこたえていたのかな?理由がわかりませんが、このところ集中力と気力が失せていました。あぶない、あぶない。

今回は、布系の話題です。

e0063212_22462386.jpg
(先日開催の「手仕事フェスタ5」にて(以下写真3点同様)/民族衣装特集。これはアフガン?パキスタン?いずれにしても、装飾の過剰さ、凝縮度がすごい。ジャラジャラ、キラキラ、重厚華美の迫力。いろんな意味合いがあるのでしょうけれど、きびしい気候風土に対峙するような強さも感じます)


e0063212_22531969.jpg
(木版のアジュラク(右側)、青と赤のバランスの良い両面染めのなかで「indomoyo」さんのおすすめのもの、到着を楽しみに待っています。木綿は夏に気持ち良さそう)


e0063212_22552876.jpg
(ウズベキスタンの絣布アトラス(絹)やアドラス(絹と木綿)が「ファッション」になっていてうれしい。日本人男性「KANNO」さんのデザインと製作。二度洗いしたという布はやわらかく肌触り、質感がいい。一見派手な印象ですが、意外と性別年齢を問わないかも。お洒落。素敵です)


e0063212_2343761.jpg
(苗(ミャオ)族の刺繍。細かい金属片を綴じ付けているようですが、とにかく稠密!ミャオ族の手仕事、本当に溜息のみ)


* … * … * …* … * … * … * …* … * … * … * … * * … * … * …* … * … * … * …* … * …

ミャオ族の刺繍については、以前の記事で、常滑の「苗族刺繍博物館」訪問時の驚きと感動を少しご紹介していました。

e0063212_2320488.jpg
(「苗族刺繍博物館」(以下写真8点同様)/メジャーの数値が信じられないような細かさ。正確にくるんくるんしています)


e0063212_2322547.jpg
(こちらもメジャーがかすんで見えてます。立体的で重厚感のある技法。色のコントラストが強烈)

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「苗族刺繍博物館」、禾苗(フゥミャオ)NET、雅+瑞さんのサイトmiao-japan.comより

ミャオの女性は子供の頃から刺繍や織物に慣れ親しみます。
自ら布を織って服を作る。

刺繍糸は絹。刺繍の図柄は蝶、鳥、虫、龍、虎、かえで…、身の回りの自然を抽象化したもの。

一針一針刺された刺繍は気が遠くなるほどに細かい。何年も何年も掛けて作られたものもある。
女性の愛情が造りだした芸術品。

若い女性が身に纏うのは色鮮やかな刺繍を施した服。
年配になると渋い緑や紺の刺繍がほどこされた服。 若い時の鮮やかな刺繍を藍で染め直して着たりもする。

苗族の刺繍、織物、藍染には、彼らの文化と歴史そして何より深く温かい心、優しい気持ちが凝縮されているのです。

技術、色彩、図案、全てが一つになって、見事な芸術性を持ちながらも、なんとも温かい感じがする。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

e0063212_23315299.jpg
(鳥の図柄。「苗族の刺繍法は実に多種多様。ひとくちに苗の刺繍といっても、彼らの暮らしの場・地域によって、図案・技法・色づかい等、それぞれ異なった特徴をもちます。そのひとつひとつは実に見事!山に暮らすもの達は鳥や虎、虫などを図案に取り入れます」miao-japan.com)


e0063212_23352331.jpg
(紫も美しいですね。神々しささえ感じます)

e0063212_23364629.jpg
(プリーツのスカートを埋め尽くす刺繍。たっぷりしたスカートは広げると巨大な布に。クラクラするほどの時間がかかりそう。でも、愛情こめて、腕によりをかけて刺す作業は、苦痛などではなく楽しみなのでしょうね。そんな勢いが伝わってくるようです)


e0063212_23483689.jpg
(プリーツ。ブルー&ホワイトがカッコいい)


e0063212_23464387.jpg
(人がいる!印象的な図柄。技法は、玉止めを作り縫い付けるもの、編み紐ををヒダヒダに縫い付けてゆくもの、裏側から刺していくものなど、10種以上あるそうです)

e0063212_23475840.jpg
(貝も使用。模様や素材、染、織、どれをとっても興味深い)


コレクター佐藤ご夫妻の情熱とお人柄の結晶であるコレクション。クオリティの高さ、素晴らしさ、多彩さ、量は圧倒的だと感じました。そのコレクションの一部(100点ほど)、この週末から横浜で見ることができます。

『Stitches & Stories 苗族刺繍の世界展』
*2012年6月2日(金)~10日(日)期間中は無休 12時~19時
*会場は「エスニカ」(上のリンクからごらんください)
*【特別講演】 6月3日(日)午後2時~4時/禾苗(フゥミャオ)NET代表・佐藤瑞代さんによるお話。苗族刺繍の技法やモチーフの解説の他、現地で行われている支援活動の紹介を映像や展示物とともに解説。

会の模様は、またご紹介したいと思います。

いきなりの雷雨など、どうなってるのかな〜と思う気候ですが、元気にいきたいですね!更新頻度アップ、めざしたい、、


e0063212_23502972.jpg
(博物館にあった瓦。中国?おおらかな土もので一息^^)
by orientlibrary | 2012-05-30 23:59 | 絨緞/天幕/布/衣装

新緑ウオーク、「大島紬」と「アトラス」の美に触れる

「ペーパードライバー講習」受講中です。想像以上の疲れ。あまりのブランクに、緊張度が最高レベル。ヒト、チャリ、バイク、対向車、ぜんぶコワイ。。暴走族とも言われた!?無茶かつ傍若無人な態度は影も形もありません。とにかく慣れ、場数。進むしかないです。

教習所の待ち時間、自動二輪の教習を見つつ、風を切って走るのっていいな、とも。でも、もうこれも、めちゃコワイ。中型二輪(オフロード)で、細い林道、崖みたいな道、くねくねカーブを喜んで走っていたのは遠い昔。倒れたら骨折、そして、、と、いろいろ現実の像を描いてショボンの今。仕方ない。慎重になったということで、これで良しとします。。

e0063212_13522841.jpg
(こんな車(付きゲル)で大草原を走るのならストレスなし?? でも戦闘など別の大きなストレスあり!?)


* … * … * …* … * … * … * …* … * … * … * … * * … * … * …* … * … * … * …* … * …

さて、、以前より興味津々だったフォトコラージュ、ようやく導入。なんでもコラージュしちゃってます。^^

e0063212_14135833.jpg


上は、先日、渋谷で遭遇した「おはら祭り」の様子。2000人もの踊り手さんが参加したようです。ビル街ではありますが、南の明るさと活気があり、いい感じでした。

e0063212_1551360.jpg


コンテスト形式だったらしく、入賞したグループを発表していましたが、もっとも目を引いた「東京奄美会」さん、やはり入賞。踊りが違う。手の動き、腰の入り方、足の曲げ方や角度、笑顔、全体の雰囲気。本場で育った人たちならではの空気がありました。

e0063212_1591438.jpg


そして、すっかり見入ってしまったのは、それぞれの方が着こなす「大島紬」の多彩さです。一人一人、皆さん違うんですよ!お気に入りを着ての参加なのでしょうね!

e0063212_158991.jpg


黒ベースなんだけど、華があります。模様のデザインもステキ。何よりも、手仕事の力でしょうか、奥行というか、深みというか、世界があるというか、見ていて飽きない。もっと見たいと思わせます。

大島紬、先染め手織りの手仕事のものは、数々の工程を経て完成までに半年から1年以上もかかるそうです。

そして特徴は、なんといっても「泥染め」ですよね。
「泥染め=テーチ木(和名:車輪梅)の樹皮の煮出し汁で染めた絹糸を、泥田で染める作業。泥に含まれる鉄分とテーチ木のタンニンが反応し、絹糸が赤茶色からだんだん黒く変化。テーチ木染めと泥染めを交互に何度も繰り返し、決して化学染料では合成しえない、独特な深みのある黒褐色に染め上げます」(本場奄美大島紬協同組合HP)

南の島独特の織物、本物は軽くてしなやかで「上質な普段着」なのだそうです。いいですね〜!!


* … * … * …* … * … * … * …* … * … * … * … * * … * … * …* … * … * … * …* … * …

こちらのコラージュは、先日ウズベキスタン大使館にて開催された「アトラス ハンディクラフトコンテスト」入賞者お祝いのパーティの模様。(*アトラスはウズベキスタンの絹の経絣。鮮やかな色と大胆な模様が特徴です)

e0063212_15241915.jpg


さすが、手作り人たちの集まり、優勝された方は今回もアトラスの帯で!(表彰式の時のシックな黒の帯とはまた違う華やかなものでした)。カラフルなアトラスはパーティのコサージュにもぴったり!

e0063212_15325993.jpg


ウズベキスタンの名物料理(チュチュワラやサモサなど)、ドライフルーツ、ワインなどもふるまわれました。

e0063212_15333627.jpg
(ウズベキスタン大使館の壁に飾られていました。リシタンの皿のようです)

アトラスは先染め平織りの絹布で、大島紬と共通。
新緑の季節、思いがけず、世界のいい手仕事と、愛情こめた着こなしをたっぷり見せていただきました。感謝です。

e0063212_15414092.jpg
(新緑と赤の対比が印象的。国立新美術館「大エルミタージュ美術館展」)
by orientlibrary | 2012-05-22 15:55 | 絨緞/天幕/布/衣装

ウズベキスタンの絹織物「アトラス」を使っての手工芸コンテストに295作品の応募!

ブログ「美しい世界の手仕事プロジェクト」にて、「ウズベキスタンの絹織物アトラスを使った手工芸品コンテスト」「アトラス・ハンディクラフト・コンテスト、順調に進行中」「アトラスコンテスト関連トピック〜雲の織物アブルバンディ」、とご案内してきたウズベキスタンの絹織物「アトラス」を使った手工芸品のコンテスト。2月末が応募締切でした。

e0063212_2361213.jpg
(ウズベキスタンの工房にて。括りの作業)

アトラスやウズベキスタンについては、日本ではあまり知られていません。それに加えて、告知から締切までの応募期間が短いこと、説明会に出向いて布を購入する手間ひまが必要なこと、初めての取り組みであること、賞金や賞品による引力が少ないこと、著作権の放棄要請など、応募が少なくなりそうな要素がたくさん、、でした。

e0063212_2381226.jpg
(伝統的アトラスの工房)

ところが、応募作品数は295!!私がお礼を言うのもおかしいのかもしれませんが、中央アジアやかの地の装飾文化に関心のある者として、とてもうれしいです。応募頂いた皆様に心よりお礼申し上げます。

しかもその作品はすべてが、工夫とセンスがあふれる力作、細かい手仕事の美しい作品ばかりで、圧倒されるほど。アトラスがこんなふうになるなんて、こういう発想や視点があるのか、と驚く作品も少なくありませんでした。

e0063212_22505949.jpg
(ごらんください!多彩な295作品。本当に素敵です!!!)

日本はすごいな。仕事がていねいで、きっちりきちんとしたつくり。安心して使えます。使い勝手や最適なサイズなど細かいところまでよく考えられている。ボタンなどの装飾品やちょっとしたアクセントが、こなれていてかわいい。いいものをたくさん見てきた方々の作品だなあと思いました。

独立後20年経つ中央アジアですが、製造業やものづくりは進行形。暮らしのなかの「モノ」も限られており、商品開発への発想はそう簡単ではないかもしれません。
そんななか、今回のコンテスト作品は、今後大きな刺激とヒントになっていくのではないでしょうか。

そして、もうひとつ、感謝したいことがあります。「石巻復興支援ネットワーク」の皆様のご尽力で、石巻の女性たちから19作品の応募をいただきました。仮設住宅にお住まいの方もあります。
石巻からの作品は、邪気のない、素直で、心が温かくなるような作品が多いと感じました。そのうちの1点(エコ草履)が「つくば市長賞」、もう1点(巾着)が「輝け石巻賞」でした!!おめでとうございます。^^

3月18日には、つくば市内で「表彰式」が開催されました。最優秀賞、ウズベキスタン大使賞、茨城県知事賞等々、賞状と副賞が送られました


e0063212_2303523.jpg
(表彰式会場の様子)

e0063212_22591136.jpg
(授賞式の様子)

e0063212_22595135.jpg
(アトラクション。ウズベキスタン出身のアノーラさんの歌とウズベクダンスのyulduzさん。きれい〜☆)

e0063212_23161268.jpg
(TBSの番組にも出ているアノーラさん)

e0063212_23164945.jpg
(yulduzさんとスタジオの方々。ウズダンスは衣装も髪型も明るくて可愛い!)

e0063212_2312068.jpg
e0063212_23183084.jpg
(最優秀賞(作品=伝統袋物)受賞の方、当日の帯もアトラスでした!シックな色と模様ですが大胆な魅力があります。アトラスは和とも相性がいいですね)

私もアトラスの魅力をあらためて感じたコンテストでした。応募された皆様、企画実施された東京農工大事務局の皆様、ありがとうございました。
by orientlibrary | 2012-03-19 23:21 | 絨緞/天幕/布/衣装

羅、経錦。北村武資、究極の織の世界

『「織」を極める〜人間国宝 北村武資』(Kitamura Takeshi Master of Contemporary Weaving)/東京国立近代美術館 工芸館/4月15日まで)。タイトル通り、まさに究極の織の世界。”組織の美”とも言うべき細密さと優美さに魅了されました。

e0063212_2049257.jpg
(展覧会チラシ)

・・・・・・・・・・
北村武資は1935年京都生まれ。京都西陣で得た高度な織の技術と現代的な感覚によって、織の造形に新たな地平を切り開きました。1995年に「羅」、2000年には「経錦」で重要無形文化財保持者に認定され、今日を代表する作家として国内外で高く評価されています。(展覧会資料より)
・・・・・・・・・・

* … * … * …* … * … * … * …* … * … * … * … * * … * … * …* … * … * … * …* … * …

e0063212_2052107.jpg
(書籍表紙/代表作「碧地透文羅裂地」azure tomon-ra fabric 1992)

e0063212_20544310.jpg
(「まさに綟織(もじりおり)の極と言うべき作品で、少し離れてみればまさに蝉の羽根のように見え、われらが羅として考えているものとはまったく性格の異なる作品であり、経糸が整然と綟れ、解けていく動きを追うのも楽しかった」/書籍解説文より引用)

・・・・・・・・・・
「羅」は複雑なもじり組織(たて糸がからみ合ったところによこ糸を織り込む)が透明感に満ちた生地を作ります。中国前漢時代までさかのぼる歴史を持つこの織物は、日本では中世以降衰微しましたが、北村の挑戦は古代織の再生にとどまらず、過去に例のない経糸の大胆な動きで文様と陰翳とを構築する「透文羅」の創造にいたりました。(展覧会資料)
・・・・・・・・・・

e0063212_20585548.jpg
(萌黄地透文羅裂地 yellow-green tomon-ra fabric 2010/チラシより)

・・・・・・・・・・
同じく綟織に属する紗や絽が隣り合う2本1組の経糸を一方向に綟らせるのに対して、羅は1本の経糸が3本先の経糸を求め、しかも左右に振れながら緯糸の通り道を開く。経糸が交差点にいたる動きの複雑さと綟りが緯糸の密着を押しとどめることから、羅は編目状の組織となり、他の綟織よりもさらに際立った透明感を可能とする。(書籍解説文より)
・・・・・・・・・・

e0063212_2164698.jpg
(羅織着物「四ツ菱欅文羅」 kimono of ra fabric with four lozenge on crossed-parallel-line 2000/書籍より部分)


e0063212_21444612.jpg
(花房文羅金裂地 ra-kin fabric with braided flower pattern 1981/書籍より部分)


e0063212_2133988.jpg
(裂地「黄地透文羅」 yellow tomon-ra fabric 1996/書籍より部分)

全部スキャンして、さらには組織を拡大で紹介したい衝動にかられますが、、そういうわけにもいかず、、 ご興味ある方は展覧会で実物をごらんください。

* … * … * …* … * … * … * …* … * … * … * … * * … * … * …* … * … * … * …* … * …

・・・・・・・・・・
古代織の「経錦」においても、困難とみなされてきた大型の文様を織り上げ、つややかな質感と豊かな色彩は整然としたパターンに生き生きとした表情をもたらします。どちらの技法についても「織物の組織そのものが表現」と考える北村のきれ地は、わずかな厚みのなかでたて糸が複雑に交錯し、静かなムーブマンと奥行さえ感じさせるものとなりました。(展覧会資料)
・・・・・・・・・・

e0063212_2104978.jpg
(経錦丸帯「瑞松」 one-piece sash of tate-nishiki fabric "auspicious pine" 1992/チラシより)

e0063212_2113313.jpg
(経錦丸帯「瑞松」 /書籍より/帯として動きが加わると表情がさらにゆたかに。やわらかく、陰影にも深みがある)

・・・・・・・・・・
経糸で色柄を織り出すには経糸に色糸を使わなければならない。織り出そうとする色が三色ならば三種類の、四色ならば四種類の色糸が必要である。一般には三重経と言われ、三色三本の糸を一組として経糸に使う。織り出そうとする色糸を表に出しながら横糸を入れていく。その為に経糸には細い糸(通常の三分の一の太さ)を使わなくてはならない。他にも四重経、六重経と言われる経錦もあるが、これらを織るには大変高度な技術と手間が必要なので経錦と呼ばれる織物のほとんどは三重経である。
(WEB「結城屋きもの博物館」)
・・・・・・・・・・

e0063212_21554.jpg
(経錦裂地「青花」 tate-nishiki fabric "blue flower" 2009/書籍より部分)

e0063212_2116090.jpg
(七宝連珠文経錦丸帯 one-piece sash of tate-nishiki fabric with interlocking circle pattern 2010/書籍裏表紙より部分/これが織!?実物を見ても、まだ信じられない。実物は白の色合いが、よりやさしい印象。同じ大きさの円の円周を4分の1ずつ重ねて繋いだ七宝文様。円の内側に花文)

・・・・・・・・・・
北村氏の織った経錦は、きめの細い柔らかな織が特徴である。色糸は三色しか使えないので華やかな、あるいは複雑で豪華な織柄を出すことはできないけれども、単純な上品さとでも言える作風である。そして、帯の本来の使命である「帯を締める」ということに関しては絶品である。その柔らかさは緯錦では得られない締め心地だと言う。(WEB「結城屋きもの博物館」)
・・・・・・・・・・

日本の伝統的文様の律儀な美。そして色の魅力。複雑な中間色から鮮やかな原色まで、さまざまな色で織り上げる。まさに多彩。斬新な模様も楽しい。contemporary weavingと言われるゆえんでしょうか。
細密の極地は濃厚濃密でありつつ、透明で繊細優美でした。コツコツと織り続けて、けっして寡作ではない氏の作品群に、日本の匠の底力を感じ、うれしくなりました。世界の人に見て欲しいです。

* 「織」を極める人間国宝 北村武資::北村の初期から今日までの作品約130点を、2期(前期2月7日~3月11日/後期3月13日~4月15日)に分けて展観。
by orientlibrary | 2012-03-01 22:28 | 絨緞/天幕/布/衣装

ペルシア、ムガルの草花愛好から生まれた「ペイズリー」

ペイズリー、あの先方がちょこっと傾いだ感じに惹きつけられます。ずっと気になる存在。
装飾タイルや中東、中央ユーラシアあたりが、気になりかけていた頃、松濤美術館(東京・渋谷)で見た「ペイズリー模様の展開 ーカシミアショールを中心に」(1993年)。自分が「このあたり」のものに惹かれる傾向があることを自覚しました。

e0063212_1883866.jpg
(「ペイズリー模様の展開 ーカシミアショールを中心に」図録より引用/カシミールショールの裾に施された草花模様、17世紀後半、綾地絹織)

とくに、ペルシアの花模様「ボテ」、インド・ムガル朝の花模様「ブータ」の神秘的な清楚さに魅了され、ブータからカシミールショールにあらわれたペイズリー模様への変化にドキドキしました。
けれども、(時代の美意識もあるのでしょうけれど)19世紀中頃からの過剰なまでに濃密になったペイズリーは苦手。ヨーロッパの洗練されつつも濃厚なタイプも苦手。
装飾タイルと同じで、生命力があり、生き生きして、ピュアで、どこかかわいいものが好きです。それが自分にとっての「きれい」。

e0063212_17465826.jpg
(文化学園服飾博物館ホームページより)

文化学園服飾博物館(東京・新宿)で、「ペイズリー文様 発生と展開」が開催中(3月14日まで)。
ペルシア、ムガルから中央アジアや日本、ヨーロッパなど、世界のペイズリーが一気に見られてペイズリー好きには、とてもうれしい展覧会でしたが、残念ながら図録がないので、記憶にとどめるのみ。

e0063212_17481888.jpg
(左:掛布(部分)インド、19世紀末/右:ショール(部分)インド・カシミール地方、19世紀初期/文化学園服飾博物館ホームページより引用)

まだ少し展示の記憶があるうちに、自分の手持ちの写真や布で<ペイズリー讃歌>を。

と、その前に少しだけ。起源は、イラン・サファヴィー朝の花模様にあると言われます。それがインドのムガル朝に伝わり、宮殿などに描かれた花模様が王侯貴族のショールにも。当初は、大地に根を張り風にそよぐ一輪の花、それが次第に花が密集した灌木の姿になり、根の代わりに花瓶が描かれるなどしていきます。

e0063212_1837031.jpg
(タージマハルの大理石レリーフ。固い石とは思えないほど優美に花模様を表す。しっかりと大地に根ざしている。17世紀頃)

e0063212_18381056.jpg
(ムガルの花模様。根が描かれている。たぶんジャイプールのアンバー城?)

e0063212_18334777.jpg
(ムガルインドの花模様を再現したサンガネールのブロックプリント(木版捺染)。固い木に細密な線を彫り出し精密に捺していく。一本の清楚な花、大地を感じさせる根がついている/orientlibrary)

e0063212_18282140.jpg
(カシミールショールの17世紀頃の花模様を思わせるサンガネールのブロックプリント。風に揺れるように少し傾いでいる/orientlibrary)

e0063212_21461937.jpg
(糸杉、生命の樹?ペイズリー的にも見える。透ける白地が涼しげ。orientlibrary)

e0063212_18252357.jpg
(サンガネールのブロックプリント。花や灌木が一つにまとまり少し傾いだり壺に入るなどしてくる/orientlibrary)

e0063212_1815488.jpg
(インド更紗、型/18〜19世紀/鳥のような動物に襲いかかるライオンと孔雀。その周りには大小の花をつけた花唐草が隙間なく配され、両端にはペイズリー模様をあらわす/東博にて撮影)

e0063212_18175612.jpg
(肩掛け/赤紫地ペイズリー花文様絞り/インドネシアスマトラ島バレンバン/20世紀初頭/インドネシアのペイズリーはインドのものとは逆さまに描かれる/東博にて撮影)

e0063212_18191216.jpg
(イランで購入した飾り布。草花がびっしりぎっしり詰まったペイズリーがぎっしり並び重量感大。orientlibrary)

e0063212_18394025.jpg
(オスマントルコの女性の衣装。バックルがペイズリー。重厚カワイイ)

e0063212_18403137.jpg
(オスマントルコの女性の衣装とバックル。少しペイズリー入ってる?きっと世界中で流行したんでしょうね!)

e0063212_18222963.jpg
(バングラデシュの刺繍布カンタ/望月コレクションより/自由でノビノビした模様。色もカラフル)

e0063212_1823255.jpg
(同上。愛らしさや動きからミジンコを連想!?)

e0063212_1841517.jpg
(タイルではペイズリーはこれまで見た経験がないのですが、、滴形が近いかな。滴形はタイルの模様にたくさんあり!)

e0063212_18423797.jpg
(ウズベキスタン・リシタンの青の陶器。これはペイズリーというより唐辛子だと思いますが、、)

中央アジアでは、この傾いだ水滴状の模様は、アーモンド、唐辛子などとも言われます。ウズベキスタンの織物「アトラス」「アドラス」にも多数登場。
ヨーロッパでは、球果や松かさ(多産や豊穣の象徴)とも。日本では、勾玉模様とも呼びますよね。

なぜ、ペイズリーと呼ばれるか、は、産業革命期のイギリスのペイズリー市で機械織りのカシミール風のショールが大量生産されたため。
ペルシア生まれ、ムガル育ちの模様なのに、ヨーロッパの地名がついても意外と違和感がないのは、(個人的な見解ですが)ペルシアのPが入っていること、ムガルなどのLが入っていることで、オリエンタルなニュアンスがあるからだと思います。^^

ペルシア、ムガルの植物愛好、自然観、生き生きと描く美的感性、それを「根」として花開き、世界で愛されるようになったペイズリー。あらためて、いいなあと思いました。
寒さは続きますが、立春頃らしく花のトピックでした!
by orientlibrary | 2012-02-05 19:18 | 絨緞/天幕/布/衣装