イスラムアート紀行

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カテゴリ:美術/音楽/映画( 46 )

イラク現代演劇4本&トークで4時間 濃い〜・・・

ときはバレンタインデー、ところは新宿の小劇場。挫折中のアラビア語クラスの課外授業編でイラクの現代演劇を見てきました。イラクは古代メソポタミア文明の地。サーマッラー(アッバース朝の都城址)も見たいし、行きたい国のひとつですが、タイル・建築も含めてあまり知識なし。おまけに演劇自体に疎いので、まったく予備知識なし。そんな私の見たまま感じたままの観劇メモですが、イラクの演劇公演自体が稀少でもあり、思うこともあったので、書いてみることにしました。(以下、少し長いので適当に、お好みで?・・

e0063212_23223973.gif●劇場は満員。床に座る形式のため、一番前の席に座った私の目の前に役者さん。構成は、イラク人劇作家のドラマを日本人役者が読むドラマリーディング(朗読)3本、イラク人の構成・演出・出演によるパントマイム、イラクと日本の関係者によるシンポジウム

● “ゴドーを待ちながら”のイラク受容だという抽象的な作品、国境線での逃走劇を描いた作品は、内容が理解できないわりには、日本人の役者さんたちの熱演のせいで最後まで目が離せませんでした。

●ドラマ朗読の『戦争時代のお父さん』は、誘拐され乞食として商売道具にされた年老いたお父さんを子供たちが奪い返すお話。なんと現実にあった出来事。大きなニュースにもなったそう。無法がまかり通り、人間さえ商品にされる社会、家族の裏切りや愛情。戦時下のイラクの話なんだけど、日本にもつながるような普遍性も。観客の反応も良。

●そしてパントマイム『バグダッドのオテロー僕たちには時間がない』は、正直、不可解(もとのヴェルディの「オテロ」自体を知らないし)。彫りの深い役者さんの真摯な表情がライティングで陰影を増し、鏡を手で割って血も出たりして・・。隣の女性はチラシで顔を隠してしまって泣きそう。その隣の人は役者さんが口から吹き上げた水を浴びてました。あの席でなくてよかったわ〜・・。

●シンポジウム(というより会場からの質疑応答が主)では、演劇関係者が多かったのか、イラクでの劇団運営をめぐる具体的な(生々しい)展開に。ただしイラクからの皆さんは、政治、宗教、社会の話は、慎重かつ断固として基本的に拒否。芸術の話のみ。

●たしかに、演劇という専門分野で来ているのに、どこへ行っても政治のことばかり聞かれるのもうんざでしょう。でも、あまりの素っ気なさに、いろいろ事情もあるのではないかと思いましたが・・。以下に、そのスケッチを少し。

* イラクには現在、伝統劇から現代劇まで合わせて25ほどの劇団がある。劇団員数は5名から20名など、いろいろ
* 劇団員には国から給料が支払われる(会場=「全員に?!」、、ため息)
* 劇場のキャパシティは500-600名。入場料はすべて無料(会場=「おお・・」)
* 概して善悪のはっきりした伝統劇の方が人気。現代劇を見る層はまだ少ない。しかし観客が一人でも意に介さない。メッセージを伝えたい
公演期間は観客数次第。人気があれば何ヶ月も続くし人が入らなければ3日で終わることもある。しかし終了を決定するのは監督で国ではない
* フセインの時代は検閲などもあったが、現在では自由に作ることができる
* 劇団員がどの宗派だろうと関係ない。実際、ここに座っているもの同士もスンニかシーアかとか互いに知らない

●会場に一人、「今日は観てないんだけどさあ」と言いながら、やたらと「需要」だとか「観客数」ばかり聞くオヤジがいて、「結局、市場は小さいんだな」とわかったようなことを言っているので、、、キレた。小さいから、どうなのさ。尊大な態度で浅薄なことを言う、すごいイヤだ。ずっと戦争や経済制裁が続いてきてさ、今も強い緊張状態なのに、演劇の市場の大小もないでしょうよ。何が言いたいの?!単に見下したいの?

●「今のイラクでは盛んではなくても、アラブ世界全体では演劇の歴史がありますよ」「イラクは芸術文化の長い歴史のあるところですよ」「この脚本は層が厚くないと書けないレベルのものですよ」・・・会場や役者さんからも声が出始めて、オヤジは「アフリカの演劇なんかも観てみたいね」と引っ込んだ。行ってこい、アフリカに。で、終了したのが23時でした(疲)。

●私には内容はよくわからなかったけど、人間について何か表現したい人たちが真摯にやっていることは伝わった。イラクの人を間近で初めて見て、話すのを初めて聞いた。アラビア語がきれいだった。ホームシックになったり喜怒哀楽を表わしたり、同じ人間なんだなあ、それがコクッとわかってよかった。全体はゴツゴツとした違和感があったけど、体験型の私にはいい機会だった。

e0063212_2326129.jpg●イラクの作家や俳優さんが伝えたかったのは、「イラクだからではなく、普遍的なこと」。ただし、チラシなどを見たら「バグダッドからの証言者、来たる。イラクで何が起きているのか」とか「未曾有の史的体験を伝えにやってくる」などと書かれており、そのへんについて質問し拒否された人たちの気持ちも複雑ではないか、とは思いました。  

*写真は(上)「タイニイアリス・イラクNOW・プロジェクト」チラシ、(下)東トルコの老夫婦
by orientlibrary | 2006-02-15 23:40 | 美術/音楽/映画

人形劇って深いんだ!

【アジアの人形芝居と身体表現】・富士ゼロックス講堂

人形の本質や意味など知らなかったことばかりで、触発された。以下、内容を抜粋させて頂く。

人形は「ひとがた」、よりしろ、神を宿すものとされ、操る人は祭司。神ム人形ム人間。日本では下北半島のイタコ、木の人形(おしらさま)を使って託宣を告げる、神々と共に遊ぶことが大切、人形遣いの本質。

スートラには(経典)と(糸)の二つの意味がある。ダーラ(保持者、高度な技術を持つ宗教的な知識人)=神の意志を表す者。人は神の糸に操られる存在であり、人形芝居は神に操られる人の姿を表したもの、哲学的な意味があった。ゆえに操る人はバラモンにとってはイヤな存在だった。

祭りと結びついて漂泊的な性格もあった。門付けをする、ハリジャン扱いされて差別を受ける。しかし「賤民」の賤は恐れおののくという意味でむしろ聖なる世界である。現在のインドでは宗教性から娯楽に変化、人形遣いは芸人としての位置づけになってきた。

人形劇は古い歴史を持つ、演劇の原初形態、世界の人形劇の起源はインドにある。「糸繰り」(たった3本の糸で全身を操る)が最も広がっていった。ラジャスターンでは今も盛んで絵解きと組み合わせる。ローカルな英雄の話が中心。演じ手は隠れておこなう。早技変身など。(装置も簡単で旅に適する。自然の油による幻想的な暗さが魅力だと思った)

ケーララ、パーバカタカリ=ダイナミックで仮面を思わせる化粧が特徴。使い手が人形の役柄になりきる。変身の意味。

影絵人形芝居=9世紀頃東南アジアへ伝搬。インドネシアへ。変容の仕方が面白い。本来の主役ではなく脇役が人気になることも。

マリオネットは小さなマリア様という意味。ヨーロッパ中世教会で聖劇を十字架から下げた人形で演じた。人形の構造=胴体が空洞、足の有無、指使い、吊り棒、下からの棒使い等。昨今は映画産業の影響で群舞が人形劇にまで入ってきた。教育メディアとしてエイズキャンペーンなどに使われる。

本来は神聖で宗教的なものであったが、制約から自由になりつつある。<光=神の意向>と<影=意向の反映>の意味が薄れた。人形芝居は命が宿る瞬間が魅力であり、けれん、エンタテイメントとしての可能性がある。
by orientlibrary | 2005-02-28 02:01 | 美術/音楽/映画

カッワーリーを世田谷で聴く!

【カッワーリーの真髄】・世田谷パブリックシアター
 
イスラム神秘主義の音楽、カッワーリーの真髄。メヘル・アーリー、シェール・アーリーのアンサンブル。聖者の命日祭「ウルス」(結婚の意味・聖者の死は神との結婚を意味する)での儀礼を再現。音楽や舞踏を含む宗教的な音楽会、勤行でもある。神への真の愛(イシ
ュク)、神との永遠なる合一(ウイサール)といった真理、法悦の境地へと導く。

アラビア語の「カウル(話す)」に由来し、元来イスラム神秘主義(クルアーンの内面的な解釈に重点を置き修行する)の宗教儀礼で歌われているカッワーリーは、13世紀にフスロウが考案したとされる。北インド音楽を基本にペルシア語と北インドの言語で書かれている。

会場は儀礼を再現。赤、青などの大胆な色とモチーフの布やペイント。ダルガーの五角形。両面太鼓(ドール)と火ばさみ形の金属製のラッパ(チムター)を賑やかに奏でてアンサンブルが登場。クルアーンの朗唱。そしてカッワーリーへ。
by orientlibrary | 2004-07-24 01:53 | 美術/音楽/映画

遙かなるクルディスタン

【遙かなるクルディスタン】・BOX東中野

トルコ国内には1200万人のクルド人が暮らしていると言われるが、しばらく前まではクルド語を話すことも禁止されていたそうだ。住民が強制退去させられ廃墟となった村は3000以上、多くの村人は大都市に移動、スラムに住み抑圧や差別を受けているという。映画は都会の片隅に生き政治や社会に翻弄される貧しいトルコ人とクルド人の二人の青年の友愛を描く。廃墟となったクルドの村への旅が、見る者の心をしめつける。

04年にトルコ東部を旅行したとき、クルド人の住むエリアには、旅行者でも感じる重い緊張感があった。トルコの中の一民族として生きることの不条理さ、鬱屈とした気分、これに対するトルコ人の脅かされるような不安感のようなものが、国境付近の町や村の空気を重くしていた。
by orientlibrary | 2002-11-30 01:05 | 美術/音楽/映画

ユーラシアの音楽会

【音の回廊 東西擦弦楽器の出会い】・東京オペラシティ

NPOユーラシアンクラブの企画主催。中央アジア一帯で幅広く演奏されるキジャック(4弦を弓で弾く)は、ヴァイオリンの起源とも言われている。モンゴル固有の楽器・馬頭琴(2弦)の起源もこの地域、日本の琵琶のルーツもクシャン・バクトリア地域と考えられているそうだ

東西交易の要衝である中央アジアのオアシス都市一帯をルーツとして、楽器も音楽も東西に伝わった・・・ユーラシアの民族との交流活動を地道におこなっているユーラシアンクラブの代表である大野さんの視点、感性、行動力がコンサートに結実した。

キジャックの演奏家ボハディルさんは、ウズベク旅行時にブハラの街で演奏していた人と似ているなあと思っていたら、やはりブハラの人。世界は狭い?
by orientlibrary | 2002-10-31 01:02 | 美術/音楽/映画

ラッチョドローム

【ラッチョドローム】・シアターイメージフォーラム

「ガッジョディーロ」「ベンゴ」など。ジプシーの血を引くトニー・ガトリフ監督、ジプシー3部作最初の作品。

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11世紀頃、インドの砂漠地帯ラジャスターンを出発、中東、バルカン半島、ヨーロッパ、南北アメリカなど、流浪の旅を続けるロマ(エジプトからヨーロッパに来たと考えられたためジプシーと呼ばれるようになった)。そんなロマが辿った壮大な旅を、各地に生きるロマの現実の姿と、多彩な音楽や踊りを通して描く音楽映像詩。

出発点ラジャスターン、褐色の砂漠で踊るカラフルな衣装の美女とアップテンポの音のプロローグから、すでに圧倒的。トルコ、エジプトから中欧へ。ルーマニアの「タラフ・ドゥ・ハイドゥータス」は世界的に有名。ラストはロマの旅のすべての要素を内包したような、スペインのフラメンコ。

いまだに迫害や差別も多いロマ、彼らは何を考えて何を軸として生きているのか。一面的な情報が多い中で、音楽から伝わるのは強烈な生への賛歌。生のなかには苦しみも哀しみもある。それをも含めての、原初的な生との感性の交感が、私の心の中の何かと感応する。
by orientlibrary | 2002-07-31 00:57 | 美術/音楽/映画