イスラムアート紀行

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カテゴリ:美術/音楽/映画( 46 )

イランと日本の書で感じる、ペルシャのことわざ

◆ 美しい世界の手仕事プロジェクト ◆
桜便りが聞かれる春にお話があり、梅雨の頃から大急ぎで準備を始め、猛暑の夏にスタートし、ゲリラ豪雨や北京五輪、台風などもありながら、肌寒いくらいの9月末に終了したプロジェクトがありました。「美しい世界の手仕事プロジェクト」。

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(ウズベキスタンの刺繍布・スザニ / Oさんのコレクションより)

これまで、なんとなくチラチラと文中に書いていましたが、じつはそれをやっていました。途中まではこちらのブログも続けていたのですが、ある時期から疲れもあり、イスラムアート紀行を更新する余裕がなくなってしまいました。

「美しい世界の手仕事プロジェクト」は、西アジアや中央アジアなど日本ではあまり知られていない地域のことを、きれいなもの、本物、手仕事、工芸などを通じて紹介したいという思いで始めたものです。

150坪という広さの空間に、<第1回:バングラディシュの刺繍布カンタ><第2回:アフリカのリズムと布><第3回:インドシナの染織><第4回:彩りの道 シルクロード>の4テーマで、コレクターの皆さんのコレクションを展示しつつ、関連イベントを開催しました。趣旨やメンバー、内容などについて、もしもご興味がありましたら、ブログ「美しい世界の手仕事プロジェクト」をご参照ください。

カミングアウトもせず会場にいましたが、「イスラムアート紀行」を見ているという方が何人も訪ねてくださいました。ホントに読んでもらっているんだ、、となんだか不思議な感じでした。お話できてうれしかったです。どうもありがとうございました。


◆ 「書展 ペルシアのことわざから」 ◆

さて復活第1話は、、「書展 ペルシアのことわざから」(10月6日〜11日まで、イラン大使館にて開催)についてです。出展者のサブーリさんから資料をいただいて見ていても、どんな展覧会なのかさっぱりイメージできませんでしたが、行ってみてびっくり。ペルシアと日本の書が響きあい、これまで聴いたことのない音楽を聴いているような気分になりました。作品の力が生み出す心地良い緊張感に包まれて、ゆたかで贅沢な時の流れを楽しみました。

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(イラン大使館内の会場)

サブーリさんの作品とイランにある女性だけが陶芸に従事する村の陶器の記事を書いたのは、もう2年近く前になります。サブーリさんとは、その後ときどきお話する機会がありましたが、物静かで知的なお人柄は、備前を愛する彼の作品と呼応するように感じます。

今回の展覧会は、「イランと日本の書を通じて、ペルシャの諺を共感し、感動する空間に。サブーリは陶芸で、深山は新しい技法で表現する」というもの。たとえば、、「善をなせ、川に投げよ」というペルシャの諺があり、解釈は「報酬や利益を期待しない善行や人助けをすすめるものである。よい行いのお返しはいつか行為者に届く、という信念に基づいている」。

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(「善」の諺解説)

この諺を、サブーリさんは陶芸とペルシャ語で表現します。

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(「善」の陶。左に諺、右に「善」の文字)

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(「善」のペルシャの書)

一方、日本の書家・伊藤深山さんは、「善」を独自の技法で表現し、脇に和訳された諺の書を添えます。

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(「善」、日本の書)

このような組み合わせで、25の諺がイキイキと表現されているのです。深山さんも気さくにお話してくださり、技法について教えていただきました。ことばではうまく書けないと思うので、ここではご紹介できませんが、金と黒と金の滲みの白が絵画のようで、字の世界を強く印象づけます。

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(「耳」、ペルシアの書。お題の諺は、「壁に鼠あり、鼠に耳あり」)

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(「耳」、日本の書)

たとえば、上の「善」は、真ん中の「羊」の部分の回りに人が二人いるようです。「耳」は何かを聞いているようであり、英語の「E」にも見えます(EAR?)。「春」は人がのびのびと両手を広げ、草木が芽吹いているように見えます。

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(「春」、ペルシャの書。諺は、「豊年は春にわかる」)

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(「春」、日本の書)

サブーリさんの書は、陶の地色が洞窟の色にも見えて、なんだか古代の壁画を見ているような気持ちになってきました。ペルシャ語がわからないので字のようであり絵のようでもあり、、でも、じーっと見ていると、春は春に、耳は耳に見えてくるのが不思議。

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(「壷」、ペルシャの書。諺は、「水が壷にあるのに、喉がかわいて探しまわる」)

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(「壷」、日本の書)

日本の書もペルシャの書も、どちらも洗練されたゆたかな世界を見せてくれました。また諺も、ペルシャと日本、共通した概念のものが多いと感じました。もともとサブーリさんがペルシャの諺を楽しいかたちで紹介したいと思ったのが始まりなんだそうです。そこから生まれたコラボレーション。なごやかで楽しい気分になれる、こんな「遊び」、とてもうれしい。サブーリさん、深山さん、すてきな展覧会をありがとう!

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(「壷」、ペルシャの書、第2弾が! これはナスル体のようです)

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(「壷」、日本の書、こちらも第2弾で!)

そんなわけで、これからまた、タイルのことや西アジア、中央アジアのことなどを、少しずつ書いていきたいと思っています。のんびり旅ですが、よろしくお願いいたします。
by orientlibrary | 2008-10-09 00:44 | 美術/音楽/映画

バングラデシュの宝物、そして世界のきれいなもの


美しい世界の手仕事や本物にゆったりとひたる。
好みを同じくする人たちと出会う。
触ってみることができる。
規制されずに写真が撮れる。

そんな時空間を求めてきました。


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バングラデシュの宝物「カンタ」(望月真理コレクションより)。カンタは、使い込んで柔らかくなったサリーや腰巻きを再利用した手刺繍の布。赤ちゃんのおくるみなどを作ります。なんともいえないしっとりしたやわらかさに、心がほどけていきそうです。


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サリーの端糸を使って自由に心のままにチクチク縫い込んだ模様はベンガルの女性たちの心模様。自由きままで融通無碍、あたたかくやさしい生活の中の布。


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カンタが飾られているのは、もともとは、このような空間でした。SOHOみたいな150坪。とにかく広いです。


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手作りの造作により、空間は変身!刺繍家・望月真理さんが30年の歳月をかけて蒐集したカンタ30点を展示しました。このような古いカンタが一堂に展示されるのは稀です。座ってのんびりした気分で見られるように、床に手織りのキリムを敷き詰めています。


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こちらはラジャスターンの透ける布・ブロックプリントによる涼しげな「布の回廊」。


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多彩で華やかなインド・オリッサのサリーによるサリーウオール(壁)が続きます。布は広げて見てこそ楽しく、また発見があります。


すべてが手作りの実験的な場。
「美しい世界の手仕事プロジェクト」
心地いい波長を感じていただければと思います。


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by orientlibrary | 2008-07-16 09:34 | 美術/音楽/映画

「ジプシー・キャラバン」、音楽と旅を追体験!

今月12日から上映開始の『ジプシー・キャラバン』、ついに見ました。もう1回見たい。何回も見たい、味わいたい。

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イスラムタイル、中央アジア、土の建築、陶器、、私が強く惹かれる対象。どうして?自分でもわかりません。前世あのへんに住んでいたのかな、と思うしかありません。

そして、そこまで遺伝子的な感じではないけれど、強力に引き込まれるものもあります。ロマ(ジプシー)音楽、北インド音楽、カッワーリー(イスラム神秘主義の儀礼などで演奏される宗教音楽)、イスリミ(植物文様)、天幕、遊牧民、などです。う〜ん、、ぜんぶが一本の線でつながっている感じも、します。

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いちばん好きな映画を選ぶとしたら、迷わず『ラッチョ・ドローム』(トニー・ガトリフ監督)をあげます。ロマの故郷といわれるインド・ラジャスターンからひたすら西へ。トルコ、ハンガリー、ルーマニア、スロバキア、フランス、スペインへと、ロマが通った流浪の道筋を追い、それらの地で今を生きるロマ音楽家の演奏を聴かせる、音と映像だけのドキュメンタリー。一遍の壮大な叙事詩のような映画です。

『ラッチョ・ドローム』の映像は、ラジャスターンの砂漠から始まります。乾いた大地、哀愁の歌声、鈴を鳴らして踊る少女たち。『ジプシー・キャラバン』は、私の大好きなその場面を思い起こさせるように、ラジャスターンの少年の演奏と歌から始まりました。ロマの旅の始まりです。

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しかし今回は旅といっても、アメリカの都市を巡る6週間の「ジプシー・キャラバン・ツアー」。そこでの歌や演奏が映画の第1の軸です。どの街でも満員で、観客もおおいに盛り上がっていました。

撮影開始が2001年9月下旬。映画のスタッフは、アーティストは国を出られるのか、北米に入れるのか(「彼らのほとんどはイスラム教徒」とパンフに書かれていましたが、、このあたりちょっと疑問)心配したそうです。911後のアメリカといえば、愛国主義一色という報道が多かったですが、ジプシー音楽を楽しむというシーンもあったんですね、、。

参加したメンバーは、エスマ(マケドニア/ジプシークイーンといわれる歌姫)、タラフ・ドゥ・ハイドゥ−クス(ルーマニア/『ラッチョ・ドローム』にも出演。世界で公演している人気バンド。バンドの象徴であった最長老ニコラエは02年に78歳で逝去)、マハラジャ(インド/ラジャスターン砂漠民バンド。踊りも強烈)、アントニオ・エル・ビバ・フラメンコ・アンサンブル(スペイン/アントニオの踊り、ファナの歌唱!)、ファンファーラ・チョクルリーア(ルーマニア北東部/超高速の金管ブラスバンド)。

私はやはりマハラジャに惹かれました。エスマも凄かったです。ファナの声は大地です。ほんのさわりですが、ここ(公式サイト)で聴けます。


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映画の第2の軸は、出演音楽家の故郷の村や町でのふだんの暮らしの映像。これがいいんです!!ジャスミン・デラル監督(イギリス生まれ、子ども時代を南インドの村で祖父母と過ごす)が彼らの住む地へ行き、個人的な生活を撮られることをためらっていたアーティストと信頼関係を築きながら、飾りのない素顔と心にしみる語りを引き出しています。彼らの音楽の根っこにあるものが、こみあげるように伝わってきました。

覚えている言葉(あいまいですが、主旨として)、印象に残った言葉をいくつかあげてみます。
 「北インドの旋法(ラーガ)は宝物だ。人生のすべてが詰まっている」(マハラジャ)
 「47人の子どもをひきとって育てたの。私は世界一幸せな母親よ」(エスマ)
 「母親は120キロもあって踊る姿は大聖堂(カテドラル)のようだった」(ファナ)
 「素敵な女性との出会いをいつも考えている。演奏しているとき以外は」(ニコラエ)
 「音楽は稼げる。それは大切なことさ。そして楽しい。楽しくないとできないんだ」(チョクルリーア:CDの売上げで故郷の村に電気をひいたそうです)

第3の軸は、ツアーバスでの様子や6週間の旅で生まれるアーティストたちの友情です。4カ国から集まった見知らぬもの同士、最初はぎこちないところもあったのですが、後半の一体感はとても興味深いものでした。「私たちはつながっている」と誰もが体感、実感していくのです。

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つながっていると感じるもの、それは北インドの旋法(ラーガ)。マハラジャの音楽は彼らのなかの誰にとっても親しみのあるものであり、皆が好き。音楽素人の私が聴いていても、各地の音楽の底流にラーガ的なものを感じました。

インド・ラジャスターン、ロマの故郷、そのラーガに皆が共振する、というのは、できすぎたエンディングといえるかもしれません。でも、演出でもなくやらせでもない、自然なものだったと思います。それがすごくよかった。見てよかったと思いました。

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ニコラエの葬式の場面、超絶バイオリンのカリウの演奏は音楽を超えていました。涙ボロボロでした。たくさんの感情がわきおこる映画でした。私も、ラジャスターンからアンダルシアまで、旅をしたような気がします。

*写真はいずれも、映画のチラシ、パンフレットなどから引用しています。

** ブログ内関連記事 **
 「UKからPKへ、音楽の旅。90年代初頭のパンジャーブ音楽を堪能!」
 「ロードムービーから音楽映像詩まで イスラム圏の映画が熱い!」
by orientlibrary | 2008-01-26 00:10 | 美術/音楽/映画

扉とカッワーリー イスラムの街を五感で感じるとき

「扉をあけて」
●イスラムの街を歩く愉しさのひとつは、迷路のような細い路地を、ちょっとドキドキしながら散策することではないでしょうか。人がひとり通れるくらいの細い道。でも、路地に面しては扉があるだけ。どんな人たちが住んでいるんだろう、家の中はどうなっているんだろう。扉をノックして入ってみたい誘惑にかられます。

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(展覧会パンフレットより引用)

●そんな「扉」をクローズアップした写真展が開催されています。(「サデグ・ミーリー写真展」/5月25日〜6月17日/東京のミーリー・コレクション・ショールームにて//中近東文化センター附属博物館でも17日まで同氏の「森羅万象」展を開催中)。ミーリーさんが撮るイランの扉は、重厚でありながら華麗で品があります。

●--- 「伝統的住宅はその内部にのみ開放され、街路面に窓を持たない。唯一の開口部が扉である」。けれども、「同時に、その裏側に広がる空間唯一の顔でもある」 ---。会期中に開催されたレクチャーの講師・ソレマニエ貴実也さんは、こう記します。
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(モロッコの扉/orientlibrary)

●扉の上部にクルアーンの一節を書いている家、ヨーロッパ風の天使を装飾した家など、扉には住み手のメッセージが込められています。そして、扉は装飾が美しいだけでなく、ある役割も果たしていたそうです。

●--- 「(扉は)ガージャール朝まで通常木製の2枚の長方形扉からなり(略)、中央の金具は円形のハルゲ棒状のチャコシが対になっていた」---。 叩くと高い音がするハルゲを叩くのは女性低い音がするチャコシを叩くのは男性。それによって扉まで出迎えるのが女性だったり男性だったりするのだそうです。

●レクチャーでは、扉の向こう=イランの住宅や中庭の写真が紹介されました。中の住宅の華麗なこと!中庭の綺麗なこと!テラスの心地よさそうなこと!窓や細部の細工の優雅なこと!お金持ちの住まいだそうですが、私から見たら「宮殿」でした。また気候風土を快適に暮らすためのたくさんの工夫がありました。いつか関連テーマのときに書いてみたいと思います。


「聖者の宮廷作法考」
●これまで当ブログでも何度かふれたことのあるスーフィーの音楽「カッワーリー」。好きな人は好き、知らない人は知らない、とはっきり分かれそうな、はっきり言って日本ではマイナーなジャンルの音楽。このカッワーリーをひたすら聴く会がありました。題して、「映像検証・イスラーム集団歌謡カッワーリーの現場」(主催:村山和之さん)。

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(パキスタン・ムルターンの聖者廟/orientlibrary)

●その第1回、「パキスタンにおけるカッワーリー記録映像集」です。「ダーター・ガンジ・バフシュ廟とカッワーリー集会とその周辺」など、臨場感あふれるその内容もすごかったけど、参加者の多さと熱心さにも驚きました。

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(パキスタン・ムルターンの聖者廟「シャー・ルクネ・アーラム」(1320-24)・タイル装飾/orientlibrary)

カッワーリーの歌詞を翻訳紹介してこられた専門家、イスラム文化の専門家、音楽関係者、楽器や民族音楽の専門家から、一般愛好者、スーフィー音楽の求道者まで、多彩な顔ぶれ。「ここまで揃うことも、そうないでしょう」(村山さん)。

●いえいえ、これがスタートですよね!?2回目以降のプランやリクエストもあるようです。さらに多彩で濃い顔ぶれになるかもしれません。「初めてだけど聴いてみたい」という人たちが集まるかもしれません。イスラムタイルや土の建築、イスラム圏の工芸や織物などが好きな私にとっても、このような動きはとてもうれしく心強いことです。

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(ムルタン〜あるいはウッチュ〜のタイル/orientlibrary)

●当ブログ、このところ、なんだか気ぜわしく、なかなか更新できませんが、自分自身ももっとスタディしていかなくては、と思います。また、写真ですが、最近、重さを軽くしつつ、サイズを大きくしようとしていたため、画質が粗くなっていました。教えを請いつつ、こちらも改善していけたらと思います。これからもよろしくお願いします
by orientlibrary | 2007-06-07 23:57 | 美術/音楽/映画

ロードムービーから音楽映像詩まで イスラム圏の映画が熱い!

アフガニスタン映画祭、アラブ映画祭と、先週は映画ウイークでした。記憶に新しいうちに、感じたことなど少し書いてみたいと思います。映画や音楽を文字で表現するのは、いつも難しいなあと思います。なるべく短くしましたが、読むのも大変ですよね。どうぞ、適当なところで、、

驚いたのは、アラブ映画祭の盛況。立ち見の人もいるほどでした。2年前はけっこう静かだった記憶があります。中東に関心を持つ人が増えてきていることを実感することが多いこの頃ですが、今回の集客でもその感を強くしました。

e0063212_1433814.gif◆「長い旅」・・・フランスに住むモロッコ系移民家族。父は頑固で敬虔なムスリム。大学受験を控えた息子にメッカ巡礼に同行するように命令。息子は反発するが仕方なくボロ車を運転してメッカに行くことに。そして、なんとフランスからアラビア半島へ5千キロもの旅。次々起きる困難に「飛行機で行けば簡単じゃないか!」とキレる息子、「旅をすることで浄化される」と語る父。喧嘩を繰り返しながら、やっとの思いでメッカに到着。父は「お前のおかげで来られた」と感謝し巡礼におもむくが、、。映画の最後を書くわけにはいきませんが、もう、うるうる、、。

e0063212_144177.gif◆「バーブ・アジーズ」・・・なんとも不思議で、魅力的な映画。西アジア〜インド・パキスタンあたりの砂漠、スーフィー、スーフィー音楽などが好きな人には、たまらない映像世界。修行に生涯をささげるスーフィー(ダルビッシュ)的な生き方が、ごく自然に受け止められる。

祖末な衣服をまとい彷徨い歩く彼らの日々が、物質的満足よりも幸福なのではないかとさえ思えてくる。砂漠の地下モスクのタイル、王子の天幕と砂漠の踊り、きれいだったなあ。最後のシーンのバム、撮影の数ヶ月後に地震が起きたのだそうだ。本当に幻影のようだった。
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(パキスタン・ウッチュにて/イメージとして)

e0063212_144218.gif◆「古きサヌアの新しき日」・・・イエメン初の長編。予想していた以上に面白かった。身分の違いによる悲恋もの、ともいえるが、それだけではなく重層的。古都の建築と街並や路地、民族衣装と顔を隠した女性たち、有力者家族の横暴、結婚のしきたりや祝い、ナゲシ(ヘナは色付きでこちらは黒)の美しさ。

一番驚いたのは女性たちの暮らしや考え方。顔を隠す衣装の下でうわさ話に熱中し、喜怒哀楽を爆発させ、男を怒鳴りつけ、愛を全うし希望を捨てない、、映画と現実は違うのかもしれないが、それを差し引いても、忍従とか女性差別等のイメージとのあまりの違いに圧倒された。

◆「ヤコービエン・ビルディング」・・・エジプトで物議をかもし国会で上映について審議されたという問題作。本当にイスラム圏でこんな映画を作っていいの?上映していいの?と思ってしまった。・・・貧富の格差、同性愛、ドラッグ、売春、政治の腐敗と汚職、逮捕拷問などによる強権的治安維持、堕胎、セクハラ、、成績優秀な青年がイスラム過激派になるまでの過程も主軸になっている。

社会の諸問題がこれでもか、と登場して絡み合い、上映時間も3時間近い。にもかかわらず、展開が理解しやすく重苦しさに押しつぶされることもなく、娯楽映画としても楽しめてしまう。カイロが中東のハリウッドと言われる理由がわかる気がした。

e0063212_1445363.gif◆「カブール・トライアングル」・・・アフガニスタン、ドキュメント。なんとも重いが、これが現実。映画館で「重い」などと言っていられない、と自分のテンションを上げる。

◆「カブール・シネマ」・・・映画大好きの孤児の少年。しかし内戦で映画館にロケット弾が打ち込まれる。少年は破壊された映写機やフィルムを拾い集めて、リヤカーの上に映写可能な箱を作り生計をたてる。しかし、これを知ったタリバーンは映画箱を壊し、少年をさらし者にする。ラストシーンの暗さに少々めげた。

e0063212_1451282.gif◆「渡り鳥」・・・86年制作。深刻化する紛争や難民の姿を予見、警鐘を鳴らした幻の名作。在日アフガン人の関係者も強力リコメンド。花婿殺しや武器収奪など、無法の連続。ジハードを掲げる武装集団の山中での訓練は壮絶。難民キャンプでの大麻パーティ、殺された弟の花嫁との結婚に悩む武装組織のリーダー。最後に花嫁が立ち上がり復習するも悲惨な最期。あまりの重さに見終わった後、虚脱状態。

e0063212_1016494.gif骨太でシリアスな映画が好き。しかしアフガン、今回はちょっとキツかった、というのが本音です。どうしてだろう。絶望の中の希望というのが見えてこなかった。もしかして、86年の映画ということと関係があるのかもしれません。

*映画の写真は、アラブ映画祭、アフガニスタン映画祭のチラシより引用。
by orientlibrary | 2007-03-20 02:17 | 美術/音楽/映画

アフガニスタン映画祭、アラブ映画祭、イスラム建築の本2冊

2005年11月の「第1回アフガニスタン映画祭」、重くて暗くて、絶望しかないようにも思える映画を、丸一日見続けました。でも不思議なことに、そんな映画を何本も何本も見たにもかかわらず、何か希望を感じたのです。救いのない現実を描いているのに、どうしてそんなふうに感じるんだろう。

e0063212_21581232.gifそれは、製作する側が希望を持っているからではないか。希望を持って描けば、絶望からさえも希望が見えてくるのではないか・・・。そんなことを感じていました。そして先日、新聞のコラムで『「希望」という名の砂から』という作家の司修さんのエッセイを読んだのです。

インドのサタジット・レイ監督による『大地のうた』3部作について、「鑑賞者は彼女の表情を見るだけで絶望を感じた。それなのに、見る者の心は暗くならない。何も希望らしきものが描かれていないのに、映像の裏側に『希望』が感じられるのだ」。

第2回アフガニスタン映画祭」が開催されます。前回驚きを持って見た『ブズカシ』(多民族が争う迫力ある伝統的競技ドキュメント映像)、『石打ち刑』(不条理すぎる!)などの他、全10本。

ある日本在住アフガン人の方は、『渡り鳥』を強力リコメンド。80年代社会主義政権時代に作られた映画で、「これから紛争が増加するであろうアフガニスタンの姿を予見し、さらに当時のアフガニスタン社会への警鐘を鳴らした問題作」だそうです。

e0063212_21584016.gifこちらは3年目の「アラブ映画祭2007」。「アラブのハリウッド」と呼ばれるエジプト映画、12本を集めての回顧展が目玉です。

何回か見たことあるエジプト映画、アクション系でナンセンスというか、、ちょっと不思議なものが多い印象があります。チラシに「ケバブムービー」なんて書いてありますが、いっそ「カリウッド」(カイロ)とかにしたら?

私のお目当ては、アラブ新作の方ですね。『バーブ・アジーズ』(チェニジア/ペルシャからカザフスタン、砂漠旅の映像詩)、『長い旅』(モロッコ/メッカ巡礼の旅、ロードムービーの傑作)などをチェックしています。

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映画から話題は変わって、、今日到着した本2冊です。まず『IALAMIC ART AND ARCHITECTURE 650-1250』 (YALE UNIVERSITY PRESS)。イスラムへの認識・知識に欠けると言われるアメリカ、でも美術や建築の研究は少なくない印象を受けます。この本も、イスラム草創期から拡大期まで網羅されているようです。

どうもタイルについては少なそうですが、陶器はあります。装飾タイルは11世紀くらいから存在感を高めてきますが、そのあたりのイスラム世界の美術を概観できそうです。

e0063212_221250.gifもう一冊は、『BUKHARA THE EASTERN DOME OF ISLAM』 (MENGES)。ウズベキスタンの古都ブハラだけの建築や街を研究した本。プランの図解が豊富ですごいです。建築もまた幾何学的な展開であることを、強烈に感じます。楽しみです。
by orientlibrary | 2007-02-15 22:09 | 美術/音楽/映画

イスラム建築の本、イラン陶芸家、アザーンCD旅、アラブ映画祭

今回は、最近気になっているイスラム(〜建築やデザイン)関連のトピックを書いていきたいと思います。

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 TOPIC(1) 『イスラーム建築 その魅力と特質』 
イスラム圏の建築やデザインに興味があっても、関連する本を見つけるのはなかなか大変です。とくに日本語で書かれたり訳されたりしたものは、数が少ないのです。そんななか研究者の方の熱意が伝わる本に出会うのは大きな喜びです。

深見奈緒子さんの『世界のイスラーム建築』(講談社新書)は、各地の事例や特色が詳しく紹介されていて、わかりやすい文章でありながら骨太で中身が深い。これが新書の気軽さで手に入るのですから、本当にうれしい一冊です。

『イスラムの建築文化』(原書房)は、インド建築のオーソリティ、神谷武夫さんの訳書。87年に出版されています。ところが絶版で入手がむつかしく、私も購入できていません。

こうした状況のなか、神谷さんが『イスラーム建築 その魅力と特質』を1月にも上梓されるということで楽しみにしていました。神谷さんの『インド建築案内』(TOTO出版)はインドの人もビックリの中身の濃さ。今度の本も、どんなに素晴らしい本だろうかと、本当にドキドキです。

どんな内容かご興味のある方は、こちらをごらんください。スペイン、イラン、トルコなどの名作はもちろん、ムルターン(パキスタン)の「シャー・ルクネ・アーラーム廟」が入っているのがうれしい。インド・パキスタン世界のイスラム建築は通常あまり紹介されませんし、ムルターンはなおさらなのです。

内容は、礼拝空間としてのモスク、材料・構法・装飾、住宅や宮殿から水利施設、病院まで建築種別の紹介、イスラム建築の特質(楽園願望、皮膜的建築、アーチとドームなど)まで。すべての記述に写真が添えられているとのこと。

ところが、種々の事情(「お知らせ〜出版の遅れ」)から出版が延期になっているということです。残念なことです。出版社の方には、待ち望まれた貴重な本であることを、ぜひわかって頂きたいです。

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 TOPIC(2) イラン陶芸家の作品、渋谷で見られます! 
昨年11月に記事でご紹介したイランの陶芸家ティムア・サブーリさん(東京芸大大学院に留学中)。その後、ある流れのなかで、コンタクトをとってお会いしました。知的な芸術家を体現したような、でもスノッブではなく気さくで、前向きな努力家でした。サブーリさんは、現在、渋谷のギャラリーでのイランの若手アーティストの展覧会(2月14日まで)に参加されています。イラン人陶芸家のセンスと技術、すごいなあ!とあらためて思いました。

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 TOPIC(3) アザーンCDが旅してきました 
「アジアのかわいいもの」で「アザーン時計」をご紹介したときに、シリアのアザーン朗唱が入ったCDのことも少し書きました。

すると、音大でアザーンを研究しているという方からコンタクトがありました。「音や音楽を、音楽的あるいは音響的に分析するだけではなくて、そこに関わる人や風土や文化などを音楽から切り離さずに総合的に研究をしていく」という研究のしかたが盛んになっているそうなのです。

なるほどお、、そういうことも初めて知りました。ブログのおかげです。ご縁で、CDは小さな旅をして帰ってきました。とってもかわいい友だちを連れて、、。かわいいものシリーズでいつかご紹介したいと思います。どうもありがとうございました♪

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 TOPIC(4) アラブ映画祭2007 3月開催! 
昨年見逃した「アラブ映画祭」、今年は3月9〜18日。サウジやイエメン、“中東のハリウッド”エジプト映画の回顧展などがあるようです。今年は行ってきます!

この他、スーフィーやシーア派についての研究会が増えていること、受講している「中東の都市」の講座のことなどについて、書きたかったのですが、また折をみてにします。

*写真は、シリア・ヨルダンの植物。上から、「ひなげし」、「糸杉」、「夾竹桃」、「イチジク」。
by orientlibrary | 2007-02-06 19:19 | 美術/音楽/映画

お寺で聴くサズ、和の空間で見る部族の絨緞

トルコを代表する民族楽器「サズ」。そのコンサートがお寺であり、しかもお寺には真っ赤な部族の絨緞が敷きつめられている、、そんな珍しくも魅力的な催しが、日野市にある安養寺でおこなわれました。安養寺は築500年とという真言宗の名刹です。
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●演奏者はトルコで修行された大平清さん(↓)。イラクの刺繍布を背に赤い絨毯に囲まれての叙情的な弾き語り。哀愁のある音色に、多くの人が聴き入りました。

e0063212_2336659.gif●サズは長い竿(ネック)が特徴の撥弦楽器(つまびいて弾く)です。

●なんと、古代ヒッタイト遺跡の石刻にサズの原形と考えられる楽器が彫られていたり、イランのスーサ遺跡の9000年前の土器にも長い竿を持って座った楽人の描写があるそうです。え〜!すごく古い歴史を持つ楽器なんですね!

伝統的には吟遊詩人が使う楽器だったそうですが、しだいに大衆の間に広がり、踊りの伴奏や祝いの音楽に欠かすことのできない、とても人気のある楽器になっているそうです。一方、オスマンの宮廷音楽などには使われないとのこと。

●「中央アジア、ペルシャ、アラブと、トルコ人のユーラシア大陸移動の歴史を感じさせてくれる音楽であると言えます」(大平さん)。同地域の土の建築文化に惹かれている私には、共鳴する波長を感じる楽器です。

●また、サズを好んで使う「アレヴィー」という人たちのことを、はじめて知りました。アレヴィーは東部アナトリアに多く、シーア派と共通する要素があるためにスンナ派とは相容れない点が多いのだそうです。「その宗教感情を表出するために、サズの調べにのせて詩をうたうのです。アレヴィーにとって、サズは切り離すことのできない関係にあります」(大平さん)。

e0063212_23464349.gif●イスラム教というと歌舞音曲禁止というイメージもありますが、地域的には音楽大好き、踊り大好きというエリア。音楽が信仰の気持ちを表す軸となるスーフィズムなどにも興味がある私にとっては、イスラム圏と音楽は切り離せません。

●コンサートでは、アラブ音楽で「楽器の女王」とも言われる「ウード」の演奏もありました。こちらは繊細な音色です。

●ウードは3世紀から栄えたササン朝ペルシャ時代の弦楽器を起源に持ち、ギターや琵琶、リュートなどの先祖といわれる楽器だそうです。形も卵型でやわらかい印象。胴の装飾の透かし文様が工芸品のようにきれいでした(↑)。

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●さて、絨毯のほうは、、和の空間に乾燥地帯の遊牧民の絨毯がこんなに合うなんて!!お寺の暗い照明だと、赤のトーンが沈み目にやさしい落ち着きのある色に変化するのです。

e0063212_2338170.gif●そう、天幕のなかには電気なんてありません。自然の暗さの中で心身をなごませる色、それでいて活力をもたらしてくれる色、それが部族の赤。そんな赤の秘密を体感した気がします。


●安養寺さんは、8年間もこのようなコンサート(無料)を継続して開催していらっしゃるそうです。

●各所に配された飾りのセンスの良さと和モダンな感覚。そしてお寺を地域に開かれた場にしようという信念にもとづいた住職ご夫妻のきめ細かなホスピタリティに感服しました。安養寺さんのご近所の皆さんがうらやましいなあ!


*「More Day Most Accord」さんのTB記事(↓)にパキスタンのスーフィーのお祭りや音楽のことが紹介されています。どうもありがとうございました。
by orientlibrary | 2006-12-25 00:10 | 美術/音楽/映画

中央アジアの映画や演劇、独特の世界が魅力

先日、アジアの新進映画監督の作品を集めた映画祭「第7回>東京フィルメックス」で、「天国に行くにはまず死すべし」(タジキスタン/ジャムシェド・ウスモノフ監督)が最優秀作品賞になりました。受賞理由は、「その映画的な知性。登場人物と環境の流動的でダイナミックな関係性を捉える話法。監督自身の人間性に対する真摯で力強い視点を高く評価します」とのこと(同映画祭HP)。

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映画を見ていないので、新聞記事(日経)の表現を借りると「舞台は中央アジアのある都市だが、どこの国でも起こりうる普遍性のある作品」「男と女の不安、心の揺れが鮮明に伝わってくる」「現代人の目覚めを描く」などとあります。

以前見たタジク映画「ルナ・パパ」は、笑いや哀愁もある不思議系のストーリーで私は結構好きでした。キルギスの「あの娘と自転車に乗って」は青春映画という感じで中央アジアの景色を楽しみました。また、私は見ていないけど、ウズベキスタンの「UFO少年アブドラジャン」は、ある種有名ですよね。

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10月に、中央アジアの現代演劇事情についてのお話を聞く機会がありました。来年日本で「コーランに倣(なら)いて」という演劇を上演するマーク・ヴァイル氏を中心とするワークショップです。

タシケントにあるイルホム劇場の演出家であるヴァイル氏の活動は、とても興味深いものでした。日本ではなかなか聞けない内容であり、はじめて聞くことばかりで面白かったのですが、書きだすと長くなってしまうので、ほんのさわりだけご紹介したいと思います。

イルホムとはインスピレーションの意味。劇団はソ連における初の独立劇団として76年に開設されました。当時のソ連はブレジネフの「停滞の時代」。厳しい検閲があり、ソルジェニーツインなどの多くの優れた作家が追放されたり亡命が相次いだ時期でした。そうしたなかでの独立劇団の誕生は事件だったそうです。

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タイル好きの私にとって、タシケントはあまり惹かれる街ではありません。ロシア風の都会という印象です。けれども、70年代当時、タシケントは、モスクワ、レニングラード、キーロフに次ぐソ連邦第4の都市でモスクワと並ぶ演劇の中心地だったそうです。

ヴァイル氏は語ります。「70年代は興味深い時代でした。重要な文化はモスクワが中心でしたが、新しい動きはリトアニアやタシケントなど周縁からおきてきたのです。モスクワでは新しいものへの締めつけがありましたが、遠く離れているせいで大丈夫だったのです」。

政府お仕着せの演劇に飽き足らない俳優たちが、国営劇場の公演後、イルホム劇場に集まって自分たちの芝居を演じ、多くの観客が集まったそうです。俳優たちは10年間ほどは、まったく無給だったとか。

こうして、イルホムの名はタシケントのみならずソ連全土で知られるように。しかし初のモスクワ公演に千人もの観客が集まり警官が取り囲むなどの騒ぎになったあと、ウズベキスタン政府の締め付けがきびしくなり上演禁止なども。

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その後、ペレストロイカからウズベキスタンの独立へ。演劇も新しい国のアイデンティティを模索します。この数年は、イスラム原理主義など寛容さを失いつつある宗教に問題意識を持っているというヴァイル氏、新作のテーマは「コーランは各人の心の中にある、ということがメッセージ」と教えてくれました。

ビデオで見せてもらったいくつかの演劇作品は、どれも実験的でシュール。どういうわけか、中央アジアの映画や演劇って、私の知る限り、すっごい<超現実不思議系土着モダン難解もの>というか、、純朴という中央アジアのイメージをあっさり裏切られるもの、多いです。

*写真は、タシケント光景。
by orientlibrary | 2006-12-01 23:28 | 美術/音楽/映画

UKからPKへ、音楽の旅。90年代初頭のパンジャーブ音楽を堪能!

イギリスで生まれ育ったパキスタン系の人気ミュージシャンが自分の音楽のルーツを探る旅に出る。向かったのは父母の故郷であるパンジャーブの街ラホール。そこで伝統的な民族音楽や宗教音楽に触れた彼は、、、こんなドキュメンタリー映画があると聞けば、何をおいても出かけますよね!

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開催されたのは和光大学。昨年『西南アジア諸民族の音像と風土』という衝撃的な音像に出会った「アジアの芸能」の課題授業編(主催:村山和之さん)です。(昨年の様子はこちら。長い間求めていた音楽に浸れた至福の時間)。

今回もまた貴重な映像です。タイトルは『PARDESI』(1992年・フランス、撮影は91年)。村山先生の資料によると、「pardesi=パルデースイー」とは外国をあらわすPARDESと同様にペルシア語起源の言葉で、異邦人や異郷人を指すそうです。

最近の音楽動向にはまったく疎い私、、主人公のアキ・ナワーズという人も知りませんでした。参加されていた専門家の方の解説でサザン・デス・カルトというバンドのドラマーだった人(その後、ファン・ダ・メンタル)で、音楽のジャンルは「ポジティブ・パンク」。このようなパンクは、現在の「アジアン・アンダーグラウンド」の礎となったのだそうです。

映像は、イギリス・ヨークシャーのパキスタンコミュニティから始まります。コミュニティのパーティ(バングラビート!)、UKでのアジア系音楽シーンも興味深かったけど、やはり私はアキ・ナワーズがパンジャーブについてからの音楽体験に深く同調していきました。90年代初頭のパンジャーブ音楽が堪能できて最高でした。

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聖者廟でカッワーリーやただひたすら神の名を唱える声明のような音楽を聴き、収穫を祝う村の祭りの歌を聴き、伝統的なハヤールやタブラを聴き、高名な専門家に会って話を聞くアキ。しかし、「スピリチュアリティ」や「アイデンティティ」を希求して訪れた、みずからのルーツであるパンジャーブの音と出会い、浸りながらも、彼の表情には次第に混迷が現れてきました。

1回きりの早い英語のディクテーションなので怪しいのですが(字幕はフランス語)、パキスタンの専門家に自分の音楽が評価されないばかりか、「もっと古典を学べ」と言われたアキが、「ラーガ?それって誰のものだっていうんですか?自分はそういうものから自由でいたいんです」と抗弁するシーンが印象的でした。

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上映後は参加者によるディスカッション。これも面白かった。アジア音楽に詳しいUさんによると、「アキはこの後音楽を発表していない」とのこと。彼は「古典・伝統」とその後どう対峙したんでしょうか。気になります。彼は、故郷でPARDESIであることを感じただけなんでしょうか。

これは、いろんなジャンルでいえること。古典や伝統は、やはりきちんと学ぶべきなんでしょうか。でも数十年かかりますよね。いや、それでも学びきれないものかもしれない、、

「古典」と「現代」の間の厚い壁、音楽に携わる階層の地位と特性、沖縄音楽の状況との比較、音楽と宗教、90年代初頭のパキスタンの経済からの視点、コミュニティの問題、など、それぞれの専門の意見が刺激的でした。ひとつの映像を、ある種の共通項と、それぞれの専門性で話し合う。貴重な機会でした。村山先生、シュクラン!

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そして、自分がもしも日本の移民の2世、3世だとしたら、どんな音楽を自分のルーツだと思うだろうと考えてしまいました。民謡でもない、邦楽でもない、歌謡曲でもない。意外と津軽三味線なんかに反応したりして、、

また海外で「日本の歌を歌え」と言われた時何を歌った?という話にもなりました。出たのは『大きな栗の木の下で』(スコットランドかどこかの歌では!?)、『はとぽっぽ』(アフリカの歌だと言われたそうです)、『ゲゲゲの鬼太郎』(その線があった!)など。私は以前、『さくら』『うみ』で撃沈した経験があります。日本の歌って盛り下がり気味ですよね、、。

その後は、畳の部屋に場所を移して飲み会に突入。アジアや音楽の話をサカナに大量のアルコールが消えていったのでした。ほんと、皆さんコアです、、。

*写真は、上から順に、ムガルの都だったラホール、ウッチュの聖者廟で、若い女性たち、ラホールフォートの壁面(タイルが少し残っている)
by orientlibrary | 2006-07-04 01:20 | 美術/音楽/映画