イスラムアート紀行

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軒先からの情報発信、「軒丸瓦」(写真=高句麗、新羅編)

今日の新聞に、小さな記事がありました。「平安時代の瓦が出土」。土族orientlibrary、反応!です。平安時代後半(11―12世紀)の瓦が大量に出土したのは、奈良県吉野町の金峯山寺。創建時の瓦とみられるそうです。「平瓦や軒瓦の破片が中心。唐草文付きの軒平瓦が1点あった。同研究所は製作技法から年代を推定した」。唐草文付きの軒平瓦、、きゃ〜、かっこいい!

専門家のコメントもあります。「当時、瓦葺きの屋根は格式の高い建物。こんな山中に建てた努力を考えれば、時の有力者の信仰をいかに集めていたかがわかる」。ということで、「山岳宗教の研究上、重要な資料」なんだそうです。

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(蓮花文軒丸瓦。三国時代、高句麗。6〜7世紀/東京国立博物館) 

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(渦文軒丸瓦。三国時代、高句麗。6〜7世紀/東京国立博物館) 

でも若い頃には、自分がこういう記事に反応するようになろうとは夢にも思っていませんでした。日本の歴史や日本の美術には、あまり興味がなかったのです。欧米から始まり、南アジアから西アジア、中央アジア、という旅行経験の変遷。イスラムの装飾タイルや土ものへの熱中。布や細密画への興味。そこから振り返るように見た日本のもの、、その多様さと魅力に年々関心が強くなっています。

日本のタイルについては、旧岩崎邸のヴィクトリアンタイルについて少し書きました。でも、その歴史的な意義は理解しますが、テイスト的に好みではないので、本当はあまり書きたいというものではありませんでした。やはりタイルの話題は、イスラムのものが多くなります。

でも、土の話題ならば、日本はスゴイです。日本の陶芸の多彩さと暮らしへの浸透度は世界一だと思うし、土壁や日本の左官技術も素晴らしい。木と水と、そして土の国だと思います。そして、今回のテーマである「瓦」は日本の「タイルのルーツ」と言われています。

「日本書紀」には、飛鳥時代に朝鮮半島の百済から仏舎利とともに僧、寺工、画工、瓦博士が送られたことが記されています。その際に一緒にもたらされたのが「墫(せん、煉瓦の意味)」や瓦でした。当時の都であった飛鳥の地に、日本で初めての本格的な寺院である飛鳥寺が建てられ、その屋根瓦が近くに築いた窯で制作されたそうです。その後、瓦は日本各地に建立された国分寺をはじめ、寺院や城の屋根に使われていきます。

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(蓮花軒丸瓦。統一新羅時代。7〜8世紀/東京国立博物館) 

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(獅子文軒丸瓦。統一新羅時代。8世紀/東京国立博物館) 

瓦の原料は、粘土に1割ほどの砂を混ぜたもの。板状にした粘土を円筒状木型に巻き付けて成形します。瓦自体も美しいものですが、瓦界の花形といえば、やはり軒先を飾る「軒丸瓦」「軒平瓦」でしょう。(以前、モンゴルの軒丸瓦の文様の謎について書きました=関連記事として文末に紹介)。

前回ご紹介した東京国立博物館。膨大な収蔵品の中から、このようなマイナーな品目も、がっつり紹介してくれています。同館の平成館・考古展示室には、なんと全国各地の「軒丸瓦」と「軒平瓦」がペアで、大きな壁面いっぱいに展示されているのです(涙)。

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(瓦ばかりでは地味!? 東京国立博物館・法隆寺宝物館。エントランスより外を見る。もうすぐ桜が見られそう。ホテルオークラのレストラン&喫茶もあり、そこから外を見るのも気持ちいいです。館の設計は谷口吉生)

奈良時代には蓮華文、唐草文が多く見られ、時代が新しくなると巴文や寺院名を入れるなど個性的なデザインも登場します。全国各地で模様や雰囲気が少しずつ違うのが、とても興味深いです。全部写真を撮ってきました。

で、それをアップしようとしましたが、あまりにも点数が多すぎ。でも全部見比べるからおもしろいのに、、と迷っているうちに、東洋館で撮った朝鮮半島の同時期の軒丸瓦の写真に見入ってしまいました。焼き物などでも、朝鮮半島のものって、繊細でほわんと柔らかい感じがして、なんとも魅力的。瓦も、日本のものと見比べてみると、どこか温かでやさしい印象です。

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(花文軒丸瓦。統一新羅時代。8世紀/東京国立博物館) 

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(鬼面文軒丸瓦。統一新羅時代。8〜9世紀/東京国立博物館) 

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(双鳥文軒丸瓦。統一新羅時代。8〜9世紀/東京国立博物館)

百済、高句麗、新羅は、日本の瓦の先輩。その影響を受けて、日本は独自の発達を遂げたと言われます。長い前置きでしたが、今回の写真は、日本の瓦の大先輩である朝鮮半島、6〜9世紀頃の軒丸瓦です。蓮花文、渦、双鳥など、時代的、地域的に模様をどう見ていくかにも興味があります。もっといろんなこと知りたいです!


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by orientlibrary | 2009-03-14 22:54 | タイルのデザインと技法