イスラムアート紀行

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光のかたち、水のかたち、豊穣のかたち

上野の東京国立博物館は、好奇心を満たしてくれるワクワクな場所。企画展を見に行くだけじゃ、もったいない!狙いは常設です。展示館が5つもあって、各館でそのときどきの特集陳列を楽しめます。たとえば今なら、東洋館で「インド細密画」、「ペルーの土壷」、「名物裂〜幾何学文と縞」、本館で「おひなさまと人形」、「仏像の道」などなど。

各館の建築も見応えあるし、シンボルの大きなユリノキを眺めればおおらかな気分に。長蛇の列を見ると帰りたくなる人、混雑が嫌いな人、デジカメを持って常設にゴー!(一部を除いて写真も可。ただしフラッシュや三脚は不可)

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(光背。銅製鍍金。飛鳥または三国(朝鮮)時代。6〜7世紀/東京国立博物館・法隆寺宝物館・展示品目解説を撮影)

博物館については、また書いてみたいと思いますが、今日の話題は、展示館のひとつである法隆寺宝物館にズラリと展示されている「光背」についてです。仏様の後光を表した光背、それだけを一堂にして見ると、デザインの多彩さと個性に驚きます。

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(光背。銅製鍍金。飛鳥時代。7世紀/東京国立博物館・法隆寺宝物館・展示品目解説を撮影)

そのうちに、なんだかどこかで見たような既視感がわいてきました。光背の形状は、光や舟形、宝珠、火焔などに分類されるようですが、全体的に上部が細くなった、滴のような、アーモンドのようなかたち。 どこかで見たことあるなあ。土族の私ですから、あのあたり?と思いめぐらしてみると、、やはりタイル!

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(アフマドヤサヴィー廟(1374)・内部壁面タイル/内部撮影禁止のためパンフレットより引用)

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(アフマドヤサヴィー廟(1374)・内部壁面タイル/内部撮影禁止のためパンフレットより引用)

イスラムタイルといえば、幾何学模様や花模様が多いのですが、あの滴みたいなかたちのものもときどきポイント的に使われているように思います。真っ先に思い出したのが、上↑のアフマドヤサヴィー廟のふっくらとしたタイル。ティムール時代のタイルは華美すぎず、力強く、でも可愛らしさもあって、とても好きなのです。

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(タブリースのブルーモスク(1465)・ファサード壁面/文末関連記事からの写真のほうがメダリオンがはっきりしていますが、、なぜかその写真が見つからないので、、)

タブリースのブルーモスクのファサード壁面の、メダリオンのような図柄も見事です。(↑)最高ですね!

時代が新しいもの、タイル装飾が華麗に花開いたイラン・サファヴィー朝やトルコ・オスマン朝の埋め尽くすようなデザインの中にも、丸みを帯びた凝った模様があります。ただし、上下にサブの円があるなど、滴形とは少し違います。タイル専門書のキャプションを見ると、これらは「マンダラ形(mandarla like shape)」となっています。マンダラというネーミングがよくわかりませんが、、

私は、どうもティムール時代〜カラコユンル朝あたりの滴のようなかたちに惹かれるようです。華麗なイランやトルコよりも、遊牧民的な匂いのする時代のもの。どっしりしていて、おおらかな感じのもの。光背も7世紀頃の素朴なものが好きです。

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(インド・サンガネールのブロックプリント。ムガルの花模様を復興した工房の作品)

でも、、光背は光だけど、タイルの滴のようなかたちはどこからきたんだろう? かたちを追いかけ始めたら大変なことになりそうだし、専門でもない私には無理。だから自由に想像を楽しみたいと思います。浮かんだのは、、滴(重要な水からの発想?)、壷、花瓶、ボタ(西アジアの花模様)、花模様の集合体(まとまりのかたち)、アーモンド、絨毯などのメダリオン。、、というよりも、洗練された花模様集合体やメダリオンの方が、古くからのデザインだった滴形を模したようにも思えます。

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(リシタンの陶器。豊穣のシンボル・ざくろは人気のある模様。リシタンは青で有名ですが茶や緑も使います)

ウズベキスタンのタイルに見られる滴形は、陶器やスザニでもおなじみのざくろ、唐辛子、太陽などにも見えてきます。光から太陽へ、想像は一巡り!仏教美術とイスラム美術が重なりあって見えてきたことにワクワクしました。

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(ウズベキスタン・フェルガナの聖者廟の壁面タイル。2004年頃完成)

リシタンの作家Aさんが手がけたフェルガナの聖者廟にも、滴的なデザイン(↑)があって、私好み。よく見ると、中に魚が泳いでいるようにも、唐辛子が踊っているようにも見えます。この自由さが好き!(魚や唐辛子のモチーフはよく使われます)

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(ウズベキスタンの刺繍布・スザニ。現代のもの。花をデザイン化。太陽にも見えます。大胆で明るい図柄。右下は唐辛子?唐辛子には魔除けの意味)

上野の光背から想像が広がり楽しかったです。ほんとにどこからきた模様なのかな。ご存じのかたは教えてくださいね!
博物館関係では軒丸瓦の話題も書いてみたいです。そして、滴形のタイルの写真におおいに触発された「ユーラシア大陸お仕事日記」さんの「シャーヒズインダの小宇宙」記事(Yさん、古い写真発見しましたよ!)と、もともとの青の話題。青はずっと気になっているテーマ。大きいテーマだけど、少しずつ調べてみようかなと思っています。

■ブログ内関連記事
 「巡礼地アフマド・ヤサヴィー廟 待望の訪問」
 「15世紀タイル装飾の傑作 タブリーズのブルーモスク」(メダリオンがきれいな1番上の写真がなぜかないので、、こちらでどうぞ)
by orientlibrary | 2009-03-07 00:04 | タイルのデザインと技法