イスラムアート紀行

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「パレスチナの刺繍」を囲んで

◆ オバマ大統領就任演説 対イスラム外交 ◆
オバマ大統領の就任式を見ました。人々の熱気、、圧倒されました。オバマさんの就任演説は、ぜひ彼の言葉で聞きたいと思ったので英語で聞いていましたが、私にはむつかしい単語が多くわからない部分が大半。でも、自らの揺るぎない決意、責任と、一人一人への決意、行動への呼びかけ、その確固とした方向性、ヴィジョンの強さは感じることができました。

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(ガザの暮らしの安定と平和を願って(1)/イスラムの美意識。幾何学の端正で精緻なモザイクタイル/アフマド・ヤサヴィー廟/orientlibrary)

すでに新聞やネット等で、演説全文が紹介されています。その中から、イスラム世界と関わりのあるパートを抜き出してみます。(日本語=朝日新聞/英語=PBS)

*「イスラム世界に対して、私たちは、共通の利益と相互の尊敬に基づき、新たな道を模索する。紛争の種をまき、自分の社会の問題を西洋のせいにする国々の指導者に対しては、国民は、破壊するものではなく、築き上げるものであなたたちを判断することを知るべきだと言いたい」(To the Muslim world, we seek a new way forward, based on mutual interest and mutual respect. To those leaders around the globe who seek to sow conflict, or blame their society's ills on the West - know that your people will judge you on what you can build, not what you destroy. )
*「腐敗と謀略、反対者の抑圧によって権力にしがみついている者たちは、歴史の誤った側にいることに気づくべきだ。そして、握りしめたそのこぶしを開くのなら、私たちが手をさしのべることを知るべきだ」(To those who cling to power through corruption and deceit and the silencing of dissent, know that you are on the wrong side of history; but that we will extend a hand if you are willing to unclench your fist.)
*「私たちは、>責任ある形でイラクをその国民の手に委ねる過程を開始し、アフガニスタンの平和構築を始める。また古くからの友好国とかつての敵対国とともに、核の脅威を減らし、地球温暖化の恐れを巻き戻す不断の努力を行う」(We will begin to responsibly leave Iraq to its people, and forge a hard-earned peace in Afghanistan. With old friends and former foes, we will work tirelessly to lessen the nuclear threat, and roll back the specter of a warming planet. )

ガザ、パレスチナについては触れられていません。アフガニスタンの平和構築の具体的な方策が気になります。けれどもブッシュ政権のような傲慢きわまりない高圧的な敵対姿勢とは異なる理解と寛容が垣間みられ、平静に聞くことができました、、

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(ガザの暮らしの安定と平和を願って(2)/鳥のさえずり。バングラディシュのカンタ刺繍/望月真理さんのコレクションより)

◆ パレスチナの民族衣装 ◆
そのパレスチナですが、文化的側面については多くを知りません。けれどもきれいな刺繍の民族衣装は見たことがあります。『西アジア・中央アジアの民族服飾 〜イスラームのヴェールのもとに〜』(文化学園服飾博物館/文化出版局)で調べてみました。すると、、「女性の衣装には地方ごとの特色があったが、1948年のイスラエル建国以来、次第に失われていく」との説明。そうですか、、。

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「1948年のイスラエル建国により、パレスチナの人々は今までの生活から離れて難民生活を余儀なくされる人も多く、民族衣装を作るために必要な材料や、針仕事にたずさわる時間が大きく制限されるようになった。こうして地域ごとに受け継がれてきたドレスのモチーフや技術は簡略化された」という文章がありました。(「文化学園服飾博物館所蔵資料と現代の西アジア・中央アジアの服飾」/村上佳代さん)。以下、同様に、同論考より引用(一部要旨)させて頂きます。

「パレスチナの民族衣装では、胸部分に施される刺繍はそれぞれの地域で異なり、意味を持つものであった。刺繍は真綿糸(絹糸)や綿糸を用い、主にクロスステッチにより整然とした幾何学模様を施した。しかし1950年代以降のドレスの刺繍は、モチーフに地域性がなくなり、地を埋め尽くすような精緻なクロス・ステッチも見られなくなったりと、概して華やかさや重厚さは失われた」

「クロス・ステッチは“×”を連続させていくのではなく、まず一方に長い糸をわたし、対角に短い糸を何本かわたしてクロス・ステッチに見せる方法に簡略化された。ドレスの生地は手織りの綿や亜麻に代わって、化学繊維が用いられるようになったため、折り目を数えて整然と文様を刺すことができなくなったことが、上記のように美しいクロス・ステッチが衰退した要因のひとつであろう」

「刺繍はミシンによるものも見られ、厳かに輝いた金糸や銀糸も、さまざまな色のビニール・モール糸に取って代わられた。見頃のカッティングも、かつては前後、両脇と少なくとも4枚の布を用いて仕立てていたが、1980年代になると前後の見頃を脇で縫い合わせて両脇裾にスリットをいれただけの簡単な形に省略され、現在では同じ形のものが大量生産されるようになった」


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(『西アジア・中央アジアの民族服飾 〜イスラームのヴェールのもとに〜』/文化学園服飾博物館/文化出版局より引用/「ガザ地方〜晴れ着と日常着/地中海に面し、メジュデルが織物の名産地である。婚約が決まると結婚式や結婚後に着る民族衣装を何枚も準備する。上質な生地に華やかな装飾のものを晴れ着、簡素な装飾のものを日常着とする」)

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(『西アジア・中央アジアの民族服飾 〜イスラームのヴェールのもとに〜』/文化学園服飾博物館/文化出版局より引用/「ラーム・アッラ〜白地に赤糸刺繍」)

占領や封鎖という非常事態が長く続き、生活だけで精一杯ななかで、伝統の技術を継承していくことには大きな困難がともなうことでしょう。そんななかで、日本のNGOが伝統的手仕事の刺繍製品の生産から販売をサポートしています。深みのある色合いや独特の模様が魅力です。イベントなどで見かけたら、手にとってみてください。


◆ ガザからイスラエル軍撤退も、周辺に待機 ◆
日本パレスチナ医療協会・メルマガの「ニュース速報(090120)」より。・・・「ガザ地区の凄まじい破壊の状況が報道されはじめました。同地区のインフラのなかには、欧米、日本などの資金・技術協力で建設された施設も少なくありません。停戦宣言直後にイスラエルを訪問したEU諸国の6首脳は、せめて、「イスラエルが破壊したものを補償せよ」くらいは言ったのでしょうか。占領地住民のケアは、占領国の責任です。その資金を海外に支出させておいて、壊すだけ壊す。こんなことが白昼堂々とおこなわれているのに、国際社会は気に止めている様子もない。変だと思いませんか?」

同(090120)より (1/20 BBC)
* 12月27日から3週間余にわたったガザ攻撃の被害について、国連のジョン・ホルムズ事務次長は、ニューヨークの国連本部で記者会見、上水道システムの破壊で住民40万人への給水が止まっていることなど、概略を説明した。 
* ホルムズ氏によると、19日、10万人分の上水道が復旧したが、依然、40万人分が断水、電力供給は、一日平均12時間以下、10万人が難民化しているという。損壊した国連施設は50、医療施設は21になる。
* 記者団の質問に、事務次長は、住民が緊急に要する救済資金は数億ドル、ガザ地区全体の復興には数十億ドル必要だろうと応えた。
* 一方、自治政府のパレスチナ統計局は、住宅4100棟が全壊、さらに17000棟が損壊、また、工場や作業場1500、モスク20、治安施設31、さらに上下水道管10箇所が破壊されたとしている。統計局の推計では、損害総額は19億ドル、うちインフラの被害は2億ドルに及ぶという。
* ガザ市で取材中のBBC記者は、住民たちは、ガレキの下に埋もれた肉親や友人の死体を捜しながら、世界がこの暴力を止めるのに十分なことをしなかったと怒っている、とつたえた。
* パレスチナの医療筋によると、少なくともパレスチナ人1300人が殺され、うち3分の1が子ども、また負傷者は5500人にのぼる。UNRWAのガザ事務所によると、子どもたちの多くは、砲弾や爆弾の破片を無数に浴び、きわめて重傷だという 。

同(090121)より (1/21 BBC)
* イスラエル軍の報道官によると、軍は21日早朝までにガザ地区全域から撤退した。「しかし、わが軍はガザ地区周辺全域に部隊を待機させ、即応態勢をつづける」と報道官は語った。この発表は、オバマ大統領就任式開始(アメリカ東部時間20日正午)の13時間後。

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(ガザの暮らしの安定と平和を願って(3)/ガザ応援団。中央部の4点、青の刺繍ポシェット、陶器が真ん中にある時計、エルサレムの写真と刺繍のフレーム、丸くて小さいらくだがパレスチナのもの。そのまわりを世界のいろんなものが囲む。日本のお守り=厄よけ、チベットの法具、ウズじいちゃんズ、イランの太陽タイル、ヒンドウーの神様、などなど。ガザの皆さん、世界が見守っています!)
by orientlibrary | 2009-01-21 22:35 | 中東/西アジア