イスラムアート紀行

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初期イスラム建築を代表する「岩のドーム」(エルサレム)

◆◆ 追記 ◆◆:長くパレスチナに関わってきたジャーナリスト・広河隆一さんのブログで、大手メディアのガザ報道についての記事=「メディアとガザ報道」が反響をよんでいるようです。関心のある方はごらん下さい。


◆◆ 追記 ◆◆:日本パレスチナ医療協会のメルマガ(2009.01.15夜受信)・「ニュース速報」の冒頭部分を転載します。

* ガザ攻撃によるパレスチナ人の死者はついに1000人を超えました。負傷者は5000人に近づいています。その多くは、手足を吹き飛ばされたり、全身に砲弾の破片を浴びたりしている重傷者です。
* 数字の魔力は、想像力をマヒさせます。殺された人、ひとりひとりにその人生があったということを忘れさせます。両親が居て、兄弟姉妹があり、友人がいたということを。
* 日本の新聞も、連日の紙面でガザ攻撃のことを詳しく報道しています。邦字各紙をていねいに読むだけでも、いま何が起きているか、かなりのことを知ることができます。ただ、気になるのが、ハマースの枕詞としてつかわれる「イスラム原理主義組織」とか「イスラム過激派」という表現です。
* それなら、イスラエルの前になぜ、「ユダヤ教原理主義国家」「ユダヤ人至上主義国家」とか「過激派国家」という形容詞を付けないのか。このような批判があっても不思議ではありません。
* 事情に詳しくない読者が多いわけですから、「イスラエル」は知っていても「ハマス」は知らなかった人が少なくない。だから、「ハマス」にはなんらかの形容詞を付けたほうがわかりやすいのは確かでしょう。しかし、偏見を助長するような形容詞は避けるべきです。とくに「イスラム過激派」はやめていただきたい。
* 各紙編集責任者の皆さん、もう少し妥当な形容詞を考えてください。たとえば、TBSテレビのニュース番組では、「対イスラエル強硬派」を使っています。」

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(エルサレムの岩のドーム。アラビア語でクッバ・アル・サフラ。687-692/『ISLAM 初期の建築 バグダッドからコルドバまで』より引用)

この連休、イスラエルのガザ攻撃に対する抗議行動(デモ、シンポジウムなど)がおこなわれました。私は参加できなかったのですが、日本パレスチナ医療協会(JPMA)のメルマガ(日刊に近い頻度でパレスチナ状勢に関する世界のメディアの情報の翻訳や現地からのレポートを発信)から、その模様などを抜粋して引用させていただきます。

・ 「東京では10日、「ガザに光りを!」をスローガンに、約1500人(主催者発表)が港区の芝公園で集会、5キロのコースを行進した。パレード後、シンポジウムが開かれ、会堂に入りきれない参加者は、別室でディスカッションを聴いた。電話インタビューの録音を通じて、現地の生々しい模様も伝えられた。
・ 11日には、「東京外国語大学中東イスラーム研究教育プロジェクト」による、緊急集会「イスラエルによるガザ侵攻を考える」が開かれた。100席しかない会場に2倍の参加者が詰めかけ、半数は立ったまま、4時間半のディスカッションに加わった。(「緊急集会」の詳しい模様は、いずれ、「東京外国語大学中東イスラーム研究教育プロジェクト」のホームページに掲載されるということです)

◆ 追記 ◆:「パレスチナ子どものキャンペーン」のニュースに集会の模様が詳しく載っていました。また、「パレスチナ子どものキャンペーン」HPには、<パレスチナ基礎知識>や<ガザの基礎知識>もあります。わかりやすく書かれています。参照なさってください。

クリスマス明けから年末年始、気持ちもふさぐような報道が続きました。10日には、イスラエル軍が「白リン弾」を使用した可能性が高いという報道がありました。(以下、毎日新聞より)

・ 「人権団体HRWの専門家らは9、10の両日、イスラエル側のガザ境界から、ガザ市やジャバリヤ難民キャンプ方面で砲弾が空中さく裂し、白煙を吐く多数の物体が落下する様子を確認。さらにメディアの映像などから、これらが白リン弾である可能性が濃厚と判断した」
・ 「白リン弾は、皮膚に触れると骨を溶かすほど激しく燃焼し続け、人体に深刻な被害をもたらすのが特徴だ。第二次大戦の空爆などにも使用され、消火が難しいことからその非人道性が指摘された」
・ 「HRWは、白リン弾を焼夷(しょうい)弾と位置付け、人口密集地にある軍事目標や、民間人を焼夷兵器で攻撃することを禁じた「特定通常兵器使用禁止制限条約(CCW)第3議定書」に違反する疑いがあるとした」

■ 白リン弾(毎日新聞より)=空気と反応して発火、発煙する兵器。ざんごうの敵兵をいぶり出したり、対戦車砲に対する煙幕として有効とされる。消火が極めて困難なことや、人体への被害が大きいことから「人間を焼き尽くす兵器」とも言われる。

■ 「天井のない監獄」・ガザ(朝日新聞より)=種子島より少し小さい面積に約150万人が暮らす。うち約100万人が48年の第1次中東戦争で、いまのイスラエルにある故郷を追われた難民と子孫たちだ。総延長約75キロのイスラエルとエジプトとの境界は金網フェンスやコンクリート壁でふさがれている。人や物の出入りができるのは5カ所の検問所だけ。住民はガザを「天井のない監獄」と呼ぶ。特にイスラエルとの「2国家共存」に反対するハマスが07年6月にガザを支配してから、イスラエルはほぼ完全封鎖を敷いた。建設用資材や機械部品が入らず、生産した農作物などを輸出できない。もともと高かった失業率が今は5割を超すといわれる。
 
非道。停戦を。安全を。尊厳を。

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(エルサレムの岩のドーム、壁面のモザイクタイル装飾、オスマン朝時代に加えられたもの。下部にはビザンチン様式の大理石腰壁/『ISLAM 初期の建築 バグダッドからコルドバまで』より引用)


◆ エルサレムの岩のドーム ◆

私に何かできることは、、、歴史あるこの地域の建築や装飾について書いてみたいと思いました。初期イスラム建築の代表的建造物であるエルサレムの岩のドームについて。以下、『世界のイスラーム建築』(深見奈緒子著/講談社現代新書)より、抜粋(〜まとめ)・引用させていただいています。

・ ウマイヤ朝(661-750、首都は古都ダマスカス)=イベリア半島から中央アジアにいたる地域にイスラム教を報ずるアラブ族による支配が実現した
・ 初期キリスト教建築と(ダマスカスの)ウマイヤモスクの共通点は多い。ローマ時代からの聖地がキリスト教、イスラム教の寺院へと変転、土地も持つ聖性が宗教を超えて継承されていく

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(岩のドーム、ビザンチン様式のモザイク装飾/『ISLAMIC ART AND ARCHITECTURE 650-1250』より引用)

<エルサレムの岩のドーム>
・ 岩のドーム=八角形の台座にこんもりとドームが載っている。これをつなぐ円筒形の部分をドラムと呼ぶ。室内に光を取り込む窓を設ける
・ 八角形の壁の部分は大理石の腰壁の上部一面にタイル細工が施される。オスマン朝期に大改修して付加された
・ 平面構成は当初のもの。それ以前のイスラムの造形(立方体のカーバ神殿や中庭を囲む預言者モスク)とはまったく異なる
・ 円堂を取り囲む周廊建築の系譜=4世紀ローマの廟や聖墳墓教会など初期キリスト教建築に
・ドームは木造で内側はガラスモザイク。外側は鉛板で覆われる。円柱やピア(角柱)。腰壁の大理石。ビザンツ建築のハギヤソフィヤとの相似。この地方にいたキリスト教徒の職人が工事に携わった
・ 初期キリスト教教会堂にあった殉教者洗礼堂や廟建築の精神を受け継いで、カリフ・アブド・アル・マリクは岩を覆う建築を建てた。聖なるものを覆う建築としてドームを採用した
・岩のドームは 祈念碑であってモスク建築ではない
・ 墓建築が多様に発展したこともイスラム建築の特色。ドームを冠した墓建築の原点は岩のドーム
・一神教徒が聖都とあがめるエルサレムの地に壮麗なドームを造営しイスラム建築において記念堂というジャンルを確立した

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(岩のドーム、ビザンチン様式のモザイク装飾/『ISLAMIC ART AND ARCHITECTURE 650-1250』より引用)

<モスクと教会>
・ (ダマスカスの)ウマイヤモスクと岩のドームの共通点=地中海色が強い。初期キリスト教との接点がある。ガラスモザイクによる光の効果、下層のアーチの上の重なる上層の二連アーチによるリズム感、中央切り妻破風の下に三連アーチが醸し出す正面性、軽やかな円柱とピアとの使用による単位の設定、半円形アーチに近い馬蹄形アーチによる分節、大理石の抜き打ちパネル、板状大理石を用いて文様のような効果を生む方法など
・ シリアには多くの教会があった。イスラム教徒は教会堂をモスクに転用しキリスト教徒の工人を徴用し教会堂建築から多くを学んだ
・ しかしモスクと教会は、方位や光、空間の目的などに相違があり、独自の建築の歴史を持っている

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(岩のドームの平面図と断面図。円墓は神聖な岩の上にそびえる。八角形のドームは四角形の回転原理が基本。互いから見て45度の角度に位置している。幾何学的な美しさのある構成/『ISLAM 初期の建築 バグダッドからコルドバまで』より引用)

それぞれの歴史や文化や暮らしや人生を尊重してください。劣悪な環境の中で生まれ育ち、常に暴力にさらされ、尊厳を踏みにじられている人たちに、完全封鎖で逃げ場もない中に、圧倒的な軍備で空から攻撃する、市民が避難した国連の学校にまで空爆する、破壊的な兵器を好き放題使用する、、そんな非道があっていいのか。強欲なやりたい放題はいつかきっと断罪される、と信じたい。
by orientlibrary | 2009-01-12 21:21 | 社会/文化/人