イスラムアート紀行

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神秘的or土着的宗教歌謡?どちらもナイス!Sufi Soul!

●私がイスラム文化に興味を持ったきっかけのひとつに、「カッワーリー」(イスラム神秘主義と関わりのある宗教音楽)があります。92年、来日したパキスタンのヌスラット・ファテ・アリ・ハーン(1948〜1997)のコンサート、よくわからないまま、「とにかくいいから」と友人に誘われ行ってみて、衝撃を受けました。いわゆる洋楽(ロックやブルース)を主に聴いていた私が初めて触れた世界。これは何!?この音楽の背景は何!?

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(パキスタン・ムルタンの聖者廟。ムルタンの青のタイルが見えます)

●それから月日がたちました。この間、イスラム圏にも旅行し、ヌスラットの出身地パキスタンにも行きました。でも現地でカッワーリーを聴きたいという願いはかないませんでした。やはり遠いものだったのです。

●ところが、このところ風向きが変わってきました。「ファイズ・アリー・ファイズ」などカッワーリー・ミュージシャンが来日。生のカッワーリー(〜スーフィー音楽)に触れる機会もできてきました。

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●それだけではありません。彼らと交流のあるる村山和之さん(西南アジアの音楽や舞踊の研究者)が、「南アジア、西アジア、中央アジアで見られる諸宗教の神秘主義的芸能(音楽・舞踊・演劇)を、老若男女の大衆に愛されてきた聖者と聖者の宮廷こと聖者廟ダルガーにおける諸パフォーマンスに視点を置いて考え考察し楽しむ。同行者と自由に広く交流する場」=「聖者の宮廷講」という勉強会をシリーズで開催。私も参加させてもらうようになったのです。

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●参加している皆さんは超熱心。ディープな雰囲気が充満しています。先日(「宮廷楽士考・2」)も魅力的な内容でしたので、ご紹介したくなりました。村山さん、サラーム海上さん(よろずエキゾ風物ライター&DJ)、勝手にすいません〜!

●まずサラームさんが、発売されたばかりの『SUFI SOUL 〜the mystic music of islam〜』(2005/UK)を上映&紹介してくれました。スコットランド人の歴史家が各地のスーフィーを訪ね歩くドキュメンタリーです。

●いきなりシリアのキリスト教会でスーフィーが祈っている場面でびっくり。融合しているところもあるんですね。続いてトルコのコンヤへ。メフレヴィー教団の旋回舞踊が有名。教団の人は言います。「これはダンスではなく祈りだ。銀河系など、すべてのものは回転する。旋回は誰でもできること。世界の祈りに参加することだ」。

●おもしろかったのは、バザールの鍛冶屋が鍋を叩く音と旋回のリズムの合致。同じなんです!このあたりがスーフィーの好ましいところだなあ。ところがスーフィー音楽は現在のトルコでは非合法。観光客用の名目での許可だけという状況。(その中でもしっかり息づいている様子も紹介されて一安心しましたが)。

●悲しかったのは、JAMAAL-ISLAMという組織の指導者が「音楽は悪い人間のすること、罪(sin)だ」と明言したこと。残念でなりません。どのような原理から出ているのかは知らないけれど、踊りや歌を禁止するのは人にとって不自然だと言いたい。女性ジャーナリストの「ムッラー(指導者)は人間の弱さを知らない。スーフィーはゆるす。人間の弱さを知っているから」との言葉にとても共感しました。(英語ヒアリングあやしいかも、、間違ってたらすいません)

●パキスタン、インドへ移り、さすが本場。ホッとする映像です。スーフィーロックの創始者ジェヌーンも登場。さらにモロッコへ。フェズの「聖なる音楽祭」も紹介されました。「自由で寛容なイスラムを音楽を通して見せていきたい」。いいですね〜!

●第2部は村山さんが今年2月、ラホールで撮った映像紹介聖者アリー・フジュウエリー(ダーター・ガンジ・パフシュ)の963回忌命日祭の模様。聖者の命日祭りはウルス(結婚)の名前で祝われ、祝典は二日間続くのだそうです。すごい!貴重!こういう映像を日本で見られるなんて!ありがたいです〜♪

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(村山和之さん撮影の映像を撮影/聖者廟地下音楽堂でのパフォーマンス)

●出演は、メヘル・アリー&シェール・アリー、ファイズ・アリー・ファイズ、モウルヴィー・アフマド・フセイン、リズワーン・ムアッザム&ムジャーヒド・アリー・ハーン(ヌスラットの甥の楽団)、スーフィー・カウワーリー・パーティ(アメリカの楽団)。

●「カウワーリー(村山さんの表記)は宗教儀礼に用いられるとはいえ、実質上、究極の恋愛歌謡である」というのが村山説。たしかに映像を見ていると、強烈な「愛」を感じます。神様への。

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(村山和之さん撮影の映像を撮影/ヌスラットの甥。熱唱!)

●<曲の種類>は次の3つがあるそうです。ハムド=神アッラー賛歌、ナアト=ムハンマド賛歌、マンカバト=聖者賛歌。基本的にはこの順番で演奏されます。今回は「ダーター」の名前が聞き取れる聖者賛歌が中心だったそうです。

●<曲の流れ>は、ナグマ=器楽演奏部、アーラープ=無拍子の前奏部(歌手の聴かせどころ)、バンディッシュ=曲の中心部分へ。各楽団が競い合うように歌い上げ、すごい熱気です。

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(村山和之さん撮影の映像を撮影/サンフランシスコのカッワーリー楽団。女性もいます)

●会場のド派手な電飾や花は地主で電気店主の寄付だとか。ステージ前では男たちがお札をばらまき、やたらにうろうろと歩き回り、ハグで挨拶し、青年がバラ水を撒布して回る。濃〜い男たちの世界でした。

●世界的に有名なヌスラットだけ聴いていると、ジャズ的な感じ、知的現代的な感じも漂うけれど、聖者廟でのコンサートは、あくまで土着的で身体的な歌謡の世界に見えました。3時間、貴重な映像に浸り、スーフィーへの関心がますます高まった会でした。村山さん、サラーム海上さん、どうもありがとうございました☆

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by orientlibrary | 2008-11-13 00:00 | インド/パキスタン