イスラムアート紀行

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ふしぎなひつじから数寄者まで、秋の美術工芸散歩

◆ ふしぎひつじのファンタジー?  ◆
気持ちのいいお天気の日が続きます。夏好きの私も、今年の秋は、秋という季節っていいなあと思います。そんなある日、通りがかりに目についたのは、懐かしい感じの絵。向井潤吉アトリエ館(世田谷区)での展覧会のポスターでした。

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昭和初期に活躍した画家の多くは、安定した収入の一助として本の挿絵や装丁の仕事をしていたそうです。民家の絵で有名な向井潤吉さんも絵本や挿絵を描いており、それらをテーマにした展覧会のようです。

ゆったりした絵の世界、やさしい色合いに惹かれて見ていましたが、一番上左の絵が、妙に気になりました。「ひつじのいるけしき」と題されていますが、ちょっとした違和感を感じました。富士山を思わせる美しい山、水色の湖、たっぷりの草、静かでやさしい、そしてやや密集した風景、そのなかに「ひつじ」がいるのがなんだか不思議感があったのです。

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(ひつじのいるけしき/『あそび』8集Ⅰ編一号P2-3/1955)

これって、私の思い込みかもしれません。羊だっていろんな地域にいるのでしょう。でも私がこれまで見た羊のいる光景って、乾燥地帯、沙漠に近いところ、茫洋とした草原。

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(ヨルダン/ペトラ遺跡。山羊?羊?)

だから向井さんの絵のように、水と緑豊かな湿潤なところ、そしてこじんまりした風景のなかににいる羊というのが、どうもピンとこないものがあって、、、でもそれが逆にファンタジーのように感じました。

しかもこの(絵の)羊、山羊っぽい。(当初、羊だと思って記事と写真を用意していましたが、ふと、あれ?!山羊?!と慌てて書き換えて、、でも「ひつじのいるけしき」と書いてあったのを思い出し、、、、、非常に混乱しました)。これは写生による絵?それとも想像の絵?(向井さん、羊を見たことがなかったのかも、、という気がしてきました)。皆さんはどんな印象を持たれましたか?

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装飾タイルは、幾何学模様、植物模様やカリグラフィーが主体で、人や動物は基本的には表現されません。けれども例外もあります。有名な例のひとつが、ブハラの「ナディール・ディワン・ベギ・マドラサ」(1622)の鳥。(この鳥はスィーモルグ」:エルブルズ山に棲む霊鳥。賢者にも優る知恵を持ち、星に届くほど巨大な巣を作る鳥の王と言われています)。イキイキとしたモザイクタイルが見事です。

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そして気になるのが、鳥の下にいる生き物。これって何?スィーモルグの寓話と関係のある生き物なんでしょうか。スィーモルグはペルシア語のようなので、地域的に羊的なものかななどと想像するのですが、この生き物にまで言及した記述を見たことがなく、わかりません。


◆ 日本の美の感性「数寄」  ◆
秋は展覧会が満開です。ジョットやフェルメールなどが開催中なのは知っているのですが、やはり私はこういうのに惹かれます。「茶人のまなざし 森川如春庵の世界」(日本橋の三井記念美術館/11月30日まで)。

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チラシのコピーは、「益田鈍翁が驚嘆。16歳で「時雨」を所有した名古屋の数寄者」。「時雨」は本阿弥光悦作。さらに19歳で「乙御前」(同じく光悦)を所持。10代で二つの光悦の名椀を所蔵したその審美眼、感性が益田鈍翁などの数寄者を驚かせ、交友を深めていきました。

そんな森川如春庵のコレクションやゆかりの品々を展示した展覧会は、器から書までジャンルはバラバラなのですが、一貫した趣味のようなものが感じられて見るのが楽しかった。そのテイストを一言でいうと、やはり「数寄」になるのかもしれません。

会場の三井美術館も、重厚な内装で落ち着きがあり、展示も見やすく工夫されていました。休憩できる椅子が各所にあるのも親切。(対照的なのが都心にある陶芸系の某美術館。デザイン主体の心地悪さで行く気がしなくなります)。三井美術館が所蔵する美術工芸品3700点は三井家(三井グループ)のコレクション。昔のお金持ちは、お金もどんどん稼いだのでしょうが、美術工芸に造詣が深く、いいものを集め、公開した人が多いように思います。

「没後七十年 数寄者益田鈍翁 心づくしの茶人」も畠山美術館(港区)で12月14日まで開催中です。(まだ見ていません)

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陶芸関係では、出光美術館で「陶磁の東西交流 景徳鎮・柿右衛門・古伊万里からデルフト・マイセン」が11月1日スタートで12月23日まで。テイスト的には正直、好みではないのですが、時間があったら見ようかな。

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ぜひ行きたいと思っているのが、五島美術館(世田谷区)の「古渡り更紗 江戸を染めたインドの華」(11月30日まで)。インド更紗の深みのある色合いや図柄の魅力はもちろん、日本での応用(陣羽織や小物などに仕立てられた)も興味があります。

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関連して、大倉集古館(港区)で「インドネシア更紗のすべて 伝統と融合の芸術」が開催中(12月21日まで)。

世の中の動き、語られているお金の単位、もうさっぱりわかりません。追いつめられるような気持ちがしてきます。工芸を見ていると、その世界に遊ぶことができます。小さなものに大きな世界が宿っているような気がします。
by orientlibrary | 2008-10-31 01:11 | 美術/音楽/映画