イスラムアート紀行

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イランと日本の書で感じる、ペルシャのことわざ

◆ 美しい世界の手仕事プロジェクト ◆
桜便りが聞かれる春にお話があり、梅雨の頃から大急ぎで準備を始め、猛暑の夏にスタートし、ゲリラ豪雨や北京五輪、台風などもありながら、肌寒いくらいの9月末に終了したプロジェクトがありました。「美しい世界の手仕事プロジェクト」。

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(ウズベキスタンの刺繍布・スザニ / Oさんのコレクションより)

これまで、なんとなくチラチラと文中に書いていましたが、じつはそれをやっていました。途中まではこちらのブログも続けていたのですが、ある時期から疲れもあり、イスラムアート紀行を更新する余裕がなくなってしまいました。

「美しい世界の手仕事プロジェクト」は、西アジアや中央アジアなど日本ではあまり知られていない地域のことを、きれいなもの、本物、手仕事、工芸などを通じて紹介したいという思いで始めたものです。

150坪という広さの空間に、<第1回:バングラディシュの刺繍布カンタ><第2回:アフリカのリズムと布><第3回:インドシナの染織><第4回:彩りの道 シルクロード>の4テーマで、コレクターの皆さんのコレクションを展示しつつ、関連イベントを開催しました。趣旨やメンバー、内容などについて、もしもご興味がありましたら、ブログ「美しい世界の手仕事プロジェクト」をご参照ください。

カミングアウトもせず会場にいましたが、「イスラムアート紀行」を見ているという方が何人も訪ねてくださいました。ホントに読んでもらっているんだ、、となんだか不思議な感じでした。お話できてうれしかったです。どうもありがとうございました。


◆ 「書展 ペルシアのことわざから」 ◆

さて復活第1話は、、「書展 ペルシアのことわざから」(10月6日〜11日まで、イラン大使館にて開催)についてです。出展者のサブーリさんから資料をいただいて見ていても、どんな展覧会なのかさっぱりイメージできませんでしたが、行ってみてびっくり。ペルシアと日本の書が響きあい、これまで聴いたことのない音楽を聴いているような気分になりました。作品の力が生み出す心地良い緊張感に包まれて、ゆたかで贅沢な時の流れを楽しみました。

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(イラン大使館内の会場)

サブーリさんの作品とイランにある女性だけが陶芸に従事する村の陶器の記事を書いたのは、もう2年近く前になります。サブーリさんとは、その後ときどきお話する機会がありましたが、物静かで知的なお人柄は、備前を愛する彼の作品と呼応するように感じます。

今回の展覧会は、「イランと日本の書を通じて、ペルシャの諺を共感し、感動する空間に。サブーリは陶芸で、深山は新しい技法で表現する」というもの。たとえば、、「善をなせ、川に投げよ」というペルシャの諺があり、解釈は「報酬や利益を期待しない善行や人助けをすすめるものである。よい行いのお返しはいつか行為者に届く、という信念に基づいている」。

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(「善」の諺解説)

この諺を、サブーリさんは陶芸とペルシャ語で表現します。

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(「善」の陶。左に諺、右に「善」の文字)

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(「善」のペルシャの書)

一方、日本の書家・伊藤深山さんは、「善」を独自の技法で表現し、脇に和訳された諺の書を添えます。

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(「善」、日本の書)

このような組み合わせで、25の諺がイキイキと表現されているのです。深山さんも気さくにお話してくださり、技法について教えていただきました。ことばではうまく書けないと思うので、ここではご紹介できませんが、金と黒と金の滲みの白が絵画のようで、字の世界を強く印象づけます。

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(「耳」、ペルシアの書。お題の諺は、「壁に鼠あり、鼠に耳あり」)

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(「耳」、日本の書)

たとえば、上の「善」は、真ん中の「羊」の部分の回りに人が二人いるようです。「耳」は何かを聞いているようであり、英語の「E」にも見えます(EAR?)。「春」は人がのびのびと両手を広げ、草木が芽吹いているように見えます。

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(「春」、ペルシャの書。諺は、「豊年は春にわかる」)

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(「春」、日本の書)

サブーリさんの書は、陶の地色が洞窟の色にも見えて、なんだか古代の壁画を見ているような気持ちになってきました。ペルシャ語がわからないので字のようであり絵のようでもあり、、でも、じーっと見ていると、春は春に、耳は耳に見えてくるのが不思議。

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(「壷」、ペルシャの書。諺は、「水が壷にあるのに、喉がかわいて探しまわる」)

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(「壷」、日本の書)

日本の書もペルシャの書も、どちらも洗練されたゆたかな世界を見せてくれました。また諺も、ペルシャと日本、共通した概念のものが多いと感じました。もともとサブーリさんがペルシャの諺を楽しいかたちで紹介したいと思ったのが始まりなんだそうです。そこから生まれたコラボレーション。なごやかで楽しい気分になれる、こんな「遊び」、とてもうれしい。サブーリさん、深山さん、すてきな展覧会をありがとう!

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(「壷」、ペルシャの書、第2弾が! これはナスル体のようです)

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(「壷」、日本の書、こちらも第2弾で!)

そんなわけで、これからまた、タイルのことや西アジア、中央アジアのことなどを、少しずつ書いていきたいと思っています。のんびり旅ですが、よろしくお願いいたします。
by orientlibrary | 2008-10-09 00:44 | 美術/音楽/映画