イスラムアート紀行

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ビビハニム、精緻なタイルの模型に感激!

●みどころの多いウズベキスタンにあって、首都のタシケントは私にはあまりピンとこない街。煌めくような青のタイルが美しいサマルカンドや古都ブハラに比べると、タイル的にもグッと引き寄せられるような感じがありません。

●けれども、タシケントにあるウズベキスタン歴史博物館にある「あるもの」は、タイルおたくの私を釘付けにします。それは、模型です。サマルカンドにある「ビビハニム・モスク」(1399-1406)を丸ごと、精密正確に再現しています。

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(ウズベキスタン歴史博物館内の模型。「ビビハニム・モスク」を丸ごと、精密正確に再現)

●ビビハニムは、ティムール朝を代表する巨大建築のひとつ。昔の写真を見ると形もないほどに崩壊していますが、近年見違えるほど立派に修復され、壁面やドーム屋根を埋め尽くす美しいタイルが見られます。

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(ウズベキスタン歴史博物館内の模型。「ビビハニム・モスク」を丸ごと、精密正確に再現)

●模型で驚くのは、タイルのデザインが完璧に表現されていることです。見ると一片はで作られているようでした。それに色を塗り組み合わせてタイル装飾の模様を再現しているのです。

●模型を見ると、タイルのデザインがどのようになされたかが、垣間みられます。そしてまた、このような完璧な模型があって初めて修復ができたのだと感じ入りました。

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(ウズベキスタン歴史博物館内の模型。「ビビハニム・モスク」を丸ごと、精密正確に再現)

●ビビハニムについては、イスラム美術の泰斗である杉村棟先生が「中央アジアにおけるティムール時代の建築遺構と装飾タイル」(『シルクロード学研究7』)で、詳細に記述されています。これによると、ビビハニムの特徴は次の通り。

・ 四方を中庭で囲み、イーワーンを配置したイランの伝統的な4イーワーン形式をとる
・ 新しい試みは、(1)ポータルが建物正面の特異な位置を占めている (2)すべてのイーワーンの背後にドームが架けられていること、イーワーンの間の全域に約400本の柱が建てられたこと、ミナレットが建物の主要部分に設けられた(美的効果) (3)建物の主要部分は外観が記念碑的な様相を呈している
・ 無釉の浮彫タイルは、主門と角柱に見られ浅浮彫の五角形と星形タイルが使用されている
・ ポータルの上には単彩の六角形と星形タイルが使われている
・ 礼拝ホールへ続く入り口上方には銘文帯が人目を引く
・ 釉下彩タイルはスパンドル上で花文を表し、また銘文帯として壁面に嵌め込まれている
・ 色彩は(ティムール朝の)他の遺構に共通した青の濃淡、白、黄土色の組み合わせである
モザイクタイルはスパンドルに使われている
・ 残存するかなりの部分は施釉レンガで覆われており、いわゆるハザルバフの技法により、方形クーフィー体でアリーなど聖なる名前が表されている
・ ポータルとその脇のミナレットもそれが3色で装飾されている

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(ウズベキスタン歴史博物館内の模型。「ビビハニム・モスク」を丸ごと、精密正確に再現)


●ホラズムやトルケスタン、タブリーズなど、見れば見るほど、知れば知るほど、14世紀初期から15世紀にかけての装飾タイルは、イキイキとして美しいと思います。ティムール朝でそれが爆発的に花開いたという感じです。

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●博物館には、サマルカンドをはじめブハラやヒワの古いタイルも展示しています。厚みや色が間近に見られてうれしいですが、タイルの本場の博物館であることを考えると数はそれほど多くありません。古いタイルがいかに貴重かということでしょう。

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●ウズベキスタンといっても、「どこにあるの?」と聞かれることが多かった以前に比べると、観光地、目的地としても存在感が強まってきた感のあるウズベク。ミリ単位の木片の模型を見て、あらためてこの国のタイルへの愛好や緻密な工芸の力を強く感じました。現代の職人さんたちの意欲と高い技術によって、これからもいい形で歴史的な建造物の修復が進んでいくといいなと思います。

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by orientlibrary | 2008-07-11 23:51 | ウズベキスタンのタイルと陶芸