イスラムアート紀行

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ブルー&ホワイトの魅力、ポルトガルのアズレージョ

ある日のこと、ホラズムのタイルを惚れ惚れと眺めている私に、メールが到着しました。世界各地の街や建築を調査しているmikiさんからです。写真も添付されていました。青がきれいだ〜!!なになに、このタイルは!?ポルトガルの「アズレージョ」と呼ばれるタイルなのだそうです。

ポルトガルに調査に行くことになったという「Miki Korenagaさん」、「ポルトガルのタイルは“アズレージョ”といってカラフルなのですが、特に青いタイルがとても素敵で、教会などの壁面にも装飾的に使用されていたりします」と教えてくれました。(写真はすべてMiki Korenagaさんに掲載許可していただいたものです)

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◆ アズレージョって何!? ◆

ポルトガルのタイルは、タイル史の面からの調査研究事例はあるのでしょうか。日本では私は知らないのです。そんなわけで予備知識ゼロだったのですが、ネット等で見てみると、現代のポルトガルのアズレージョは商品として日本に輸入され、インテリア装飾などの提案がされているんですね。トルコをはじめ、ヨーロッパのタイル、メキシカンタイルなどは、商品としてしっかり流通しているなあと思います。

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また歴史の面では、ポルトガル公式観光ウエブサイトのなかの「ポルトガルのアズレージョ」(注:現在リンクできません)に、かなり詳しい説明がありました。(以下、同サイトより引用)

・・・ 「ポルトガル語のアズレージョは、アラビア語のAl-zuleiqueに由来しています。この言葉は、中世の時代にイスラム教徒が使用していた「なめらかで光沢のある小石」を意味しています」  (アラビア語由来!)

・・・ 「ポルトガルの歴代国王がアズレージョを使って床や壁を装飾することを好んだことから、15世紀終盤からはポルトガル国内でアズレージョが生産されるようになりました。そしてそれが何世紀にもわたってポルトガルの建築様式の重要な特徴となったわけですが、これは他の欧州諸国のいずれにも見られないポルトガル特有のスタイルになっていると言うことができます」  (15世紀=中央アジア、西アジアでタイル装飾が盛んな時代)

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・・・ 「18世紀になると、アズレージョは教会や修道院、宮殿、一般家屋、庭園、噴水、そして階段にまで「進出」しました。そして聖者の生活の様子を物語る幾何学模様や、ラ・フォンテーヌの寓話のような世俗的テーマや昔の物語の劇画のような役割で、アズレージョはポルトガルの建造物装飾の主要な特徴の1つになりました」   (18世紀=ヨーロッパの時代ですね。絵画中心なのもヨーロッパ的)

・・・ 「アズレージョは大量生産が可能で、耐久性に富み、加工が簡単なため、家々のファサードはさまざまな色やパターンのアズレージョで一面に覆われるようになりました。さらに時代が進むと、その店で何を商っているのかを宣伝するためのものまで登場しました。こうした例は、ポルトガルの町や村でごく普通に見られます」  (タイルを何百枚も使ったタイル絵が壁の装飾の定番に)

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◆ マジョリカタイル〜デルフトタイル ◆

15世紀までのあたりが、どうもまだすっきりしません。『イベリアのきらめき マジョリカ・タイル』(INAX)の中の「マジョリカ・タイルとはなにか」(山本正之さん)から、関連する文章を抜き出してみます(一部略している部分あります)。

・・・ 「イベリア半島では、8世紀になってイスラム教徒のムーア人が侵入し、15世紀末のスペイン王国独立まで約700年のあいだその支配下にありました。ムーア人は、モスクに代表されるイスラム建築をイベリア半島に持ち込みました。イスラム建築に欠かすことのできないタイルも同時に海を渡ったのです。スペインでは、イスラムのアラベスク模様、サラセン模様の入った白いタイルをアレスポと呼んでいますが、これが現在言われるマジョリカタイルの原型になります」

・・・ 「(スペイン、ポルトガルからなるイベリア半島は)ムーア人=イスラムの支配は長期に及びましたから、その影響は現在に強く残っています。マジョリカタイルもイスラムの影響の産物であり、その影響の下に発達していったのです」

・・・ 「(モザイクがあまりに手間がかかりすぎるため新技法が考えられたが)、古くから表面に直接絵を描くという手描き手法はありました。これをタイルに応用したのがスパニッシュ・マジョリカです。油絵などの影響もあるのでしょうが、紋章とか動物とか植物が盛んに描かれました。タイルでいうとデルフトの影響もあるだろうと思います。たぶんマジョリカタイルがマヨルカ島からジェノバへ渡りアルプスを越えてライン川を下りオランダへ入り、デルフト地方を通って再びピレネー山脈を越えてスペインに逆輸入したのだろうと考えられます」

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◆ 青と白の世界、染付との関係は?  ◆

「アズレージョ=デルフト由来説」に納得しきれなかった私、これなら納得。さらにいえば、青と白といえば「染付(青花磁器)」でしょう。染付とマジョルカ(さらにアズレージョ)との関連は不勉強でわかりませんが、この時代、中国の染付は圧倒的な憧れだったはず。オスマン朝シリアのタイルのブルー&ホワイトもきれいです。

今も昔も、世界的に人気のあるものには「共時性」があると思いますし、とくにポルトガルの人たちの感性には海や空を思わせる爽やかな青の世界がフィットしたのかな、などと想像をふくらませています。

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一面の青の世界、そして全体として素朴でのびのびとした健やかな感じの雰囲気がいいなあと思いました。それにしてもKorenagaさん、写真うまい!Korenagaさん、アズレージョに触れるきっかけをくれてどうもありがとう!どうぞ良き滞在&調査になりますように!
by orientlibrary | 2008-07-04 20:41 | タイルのデザインと技法