イスラムアート紀行

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トラベク・ハニム廟、至高のモザイクタイル

憧れていました。クニャ(古)・ウルゲンチ。8〜14世紀に栄えたホレズム王国のオアシス都市です。有名ではありませんが、装飾タイル史のなかではかけがえのない足跡を残した地です。

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古いタイルが好きな私は、写真で見ている限りでは、「イル・アルスラン廟」(1170年)、「テケシュ廟」(1200年)の素朴さとターコイズブルーのタイルに惹かれていました。(次回ご紹介します)。しかし、実際に見て圧倒的に凄かったのは「トラベク・ハニム廟」(1370年)でした。

1370年、、タイル好きの方ならば、これは何かありそう!と思われますよね。そう、1300年代は装飾タイルがイキイキと力強く開花した時代。「アブド・アル・サマド廟群/ナタンズ」(1307-08)、「オルジェイトゥー廟/ソルタニエ」(1307-13)、「金曜モスク/ヤズド」(1325-34)、「金曜モスク/シラーズ」(1351)、そしてティムール一族の「シャーヒ・ジンダ墓廟群/サマルカンド」(1360年頃〜)、「アフマド・ヤサヴィー廟/トルケスタン」(1397-99/初期建造は1374年))、、トレベク・ハニム廟は、年代的にも地域的にも、まさにその渦中にあるのです!!

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トラベク・ハニム廟の外観は地味です。ドームも壊れており、壁面の装飾もわずかです。しかし崩壊してはいるものの味わいのあるムカルナスに惹かれつつ中に入ると、ほの暗いなかに見えてくる丸天井に息を飲みます。全面のモザイクタイル!

宇宙的な、曼荼羅のようにも見えるデザインは力強く、かつ優雅で、まさに至高の美です。暗いため色の美しさは一見してわかりませんが、写真で見ると多色モザイクの凄さがわかります。ターコイズブルー、コバルトブルー、赤、白、麦わら色、レモンイエロー、緑青色、黒。

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『The art of the Islamic tile』 は、次のように記しています。「類いまれな豪華さのある色調で、とりわけ赤は圧倒的に素晴らしい」「模様は無比の優雅さに満ち、部分的に金色の葉のハイライトがある」「モザイクは極限の繊細さがあり美の到達点にある」「壮大な廟の24角星をメインのモチーフとするデザインはモザイクタイルの究極の傑作である」。

トラベク・ハニム廟のタイルは、まず多色モザイクの色の発色の素晴らしさと、大胆な組み合わせという「色」が素晴らしい!!そして、精緻かつ力強いデザインが圧倒的!!

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廟のタイル写真も本で見てはいたんですが、、なにか実感がありませんでした。行ってみて実際に見て、実感がわいてきました。そして、写真を見たり本を見たりしていると、じわじわとその凄さを感じています。

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(『The art of the Islamic tile』より引用。やはり本の写真を借りないと表現できません、、残念!)

前出の『The art of the Islamic tile』によると、この廟は短命だった二人の皇子(フセインとヤスフ)の安息の場所として建てられたようですが、この地に1335年に滞在したイブン・バットゥータの記述によってトラベク・ハニム(ホレズムのジョチ・ウルス=チンギスハーンの長男ジョチの後裔=の妃)の廟として地域の伝統のなかに受け継がれているようです。

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(『The art of the Islamic tile』より引用)

クニャ・ウルゲンチは、2005年に世界遺産になりました。今後、観光も盛んになるでしょう。旅行社の皆さんにお願いです。ここはもう少し、時間の余裕を取って下さい。じっくり見られるようなスケジュールを組んでいただきたいと思います。土から究極の美しさを作り出すイスラムの美の世界を体感できるところです。しかも何度も行けないところです。

せっかくの機会なのです。イスラムの美、ここにあり!なんです。トルクメニスタンで見られる歴史的な工芸美です。さらにいえば、タイル的には<MAUSOLEUM OF NAJM AL-DIN KOBRA>は超のつく必須!!見たかったです。残念、、、でも、行けただけでも私は幸せです。今後もタイル旅を続けていこうと思います。

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by orientlibrary | 2008-06-25 00:44 | ウズベキスタンのタイルと陶芸