イスラムアート紀行

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途上国でかわいいモノづくり。そのパワーとセンスを学ぶ

心地良い空間、心地良い時間、人それぞれに違いますよね。美しいビーチリゾートやラグジュアリーなホテルで最高のサービスを受けるのがいちばんという方も多いと思いますが、私は、どうも苦手。高級なところや優雅さと縁のないことバレバレです。

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(インド・ラジャスターン・ナワーブの邸宅を一部使用したプチホテル。客室も居間も全体がひとりの女性デザイナーの布で統一されています。すべて花柄。組み合わせてもうるさくないのが不思議です)

◆ インドのインテリア  ◆
そんな私が宿泊先で心地いいと思うのは、清潔でこじんまりとして簡素。でもセンスの良さと気配りが各所から伝わってくるところ。ホテルなどはあまり写真を撮らないので残念ながら写真がないのですが、ウイグルの小さなホテルでは、ポットとコップの絶妙な配置に美的感性の高さを感じました。そういうのが好きなんです。

写真でご紹介しているのは、インド・ラジャスターンのナワーブ(イスラム藩主)の邸宅を一部使用したプチホテル。同・マハラジャホテル。インド・ヒマーチャルプラディーシュ州・プラグプルの旧家を改造したゲストハウス。そして、ラジャスターンのブロックプリントの工房です。使われている布の素材感がなんともいいんです☆

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(ナワーブのプチホテル。使い古した布を椅子のカバリングに利用。よくこなれていい心地になっています)

インドの布(繊細な木版捺染)やインテリアと出会ったのは95年頃。当時、インドの製品というとチープな雑貨や安価な衣料が大半で、イコール安物という印象が強く、「品質とセンスが抜群にいいものがあります」と言っても、実際に見せても、流通関係の方々にはいい反応がありませんでした(一般の人たちは「きれいね〜!」と高く評価してくれましたが、、)。「残念だけど仕方がない」、私も早々とあきらめました。

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(ラジャスターンのマハラジャホテル「サマードパレス」。ロールカーテンとすだれをミックスしたようなもの。蒸し暑い気候に最適。布は木版捺染。透けるように薄い木綿だから、こんなことも可能に)

◆ バングラディシュでかわいいバッグを作る ◆
バングラディシュで特産のジュートを使って「途上国発ブランド」のバッグを開発製造し日本で販売している山口さん。(本の内容と著者の紹介は、書くと長くなるので、ご興味のある方はamazonのこちらをごらんください。3月にテレビの『情熱大陸』でも紹介されたそうです)。読後、予感通り、ちょっとピシッとしました。

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(インド・ヒマーチャルプラディーシュ州・プラグプルの旧家を改造したゲストハウスの寝室部分=これはサブでメインはもっと広いですが私はここが好き。簡素で心地良い。ラジャスターンの木版捺染が各所に使われており、すだれロールカーテンも同じ。ヒマラヤと沙漠?でも距離的に近いんですよね、意外と)

彼女のガッツと行動力はすごいというか、すさまじい。イジメ、非行、男子柔道部でのド根性の日々、3ヶ月猛勉強で慶応大学入学、ワシントンの国際機関でのインターン、とにかく現場へと渡ったバングラディシュ、腐敗、格差、途上国ブランドという発想、ジュートとの出会い、工場での苦闘、日本での販路開拓。

ワシントンの国際機関の様子には驚きましたが、現実なんでしょうか。「途上国なんて行ったことないし、行きたいとも思わない」という職員たちの優雅なオフィスライフ。「国際機関はいつだってトップに存在する。僕たちトップは頭を使う」という職員に、彼女は「ものすごい違和感と現場との乖離」を感じ、1週間後にバングラ行きのチケットを取ります。

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(ラジャスターン・バグルーの工房。天井がサンプルのようになっていておもしろいです)

エピローグから一部、抜き出してみたいと思います。

 「バングラディシュで見てきた現実の中で自分の人生に最も影響を与えたものは、明日に向かって必死に生きる人たちの姿だった。食べ物が十分でない。きれいな服もない。家族もいない。約束された将来もない。そして生活はいつも政治により阻害され、きれいな水を飲むにも何キロも歩かなければならない。そんな人たちが毎日必死に生きていた。ただただ生きるために、生きていた」
 「そんな姿を毎日見ていたら、バングラディシュの人たちが自分に問いかけているような気がした。“君はなんでそんなに幸せな環境にいるのに、やりたいことをやらないんだ?”って」
 「他人にどう言われようが、他人にどう見られ評価されようが、たとえ裸になっても自分が信じた道を歩く。それがバングラディシュのみんなが教えてくれたことに対する私なりの答えだ」

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(ラジャスターン・サンガネールのブロックプリントの工房。ホワイトonホワイトの木版捺染です。私も作ってもらいました)

彼女が「本気でやりたいこと」は「バングラディシュでかわいいバッグをつくる」こと。しかもフェアトレードという方法ではなく、あくまでもデザインや品質で勝負する。この感じ、すごくすごくわかります。名を知られていない国のものでも、商品力で直球勝負をする。そして「かわいい」こと。軽い言葉のようですが、これがいちばん難しいと思います。「かわいい」という感覚的なものを、価値観や風土の違う国で形にすることの大変さは想像に難くありません。(山口さんたちのブランド「マザーハウス」サイトはこちら

25歳のガッツと行動力、号泣しながらも走り続ける一本気。現場や体験からにじみ出る素直な言葉の強さ。刺激を受けました。「本気」、ですね。

*補足* 「本気でやりたいこと」の部分について書籍紹介より引用==「バングラデシュで彼女を待ち受けていたものは、開発学の教科書には載っていない、すさまじい腐敗と格差でした。役所に水道を通してもらうのも賄賂、交通事故で警官に救急車を呼んでもらうことまで賄賂。この衝撃に彼女は怒り、そして誰も思いつかなかったアイデアをつかみます。必要なのは途上国への施しではない。貧しい国で作られたものを欲しくもないのに「かわいそうだから」という理由で高い値段で先進国のバイヤーが買っていくフェアトレードという発想じゃダメ、先進国の消費者が本当に「これカワイイ!」と思うものを、このアジア最貧国で作ろう。
こうして23歳のときにバングラデシュで起業を決意、特産のジュート(麻)を使った高品質バッグを現地で生産し輸入販売するマザーハウスを設立します。その後、現地での工場探し、物づくりに対する根本的な考え方の違い、嘘や裏切りなど、日本ではあり得ないような苦難の連続を次々と乗り越えていきます」 

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by orientlibrary | 2008-04-25 00:04 | インド/パキスタン