イスラムアート紀行

orientlib.exblog.jp

時空を駆け抜ける。一冊の本と。土の国へ。

先日、毛織物愛好家のSさんが「古本屋でみつけたんだけど」と見せてくれたもの、『シルクロード1 中国・ソ連・アフガニスタン』(山と渓谷社)という一冊の本でした。このエリアに超反応する私、パラパラ見ただけでも、椅子から落ちそうになるくらいのサプライズ。写真がすごい!光景が、タイルが、人が、、感動の嵐です。

e0063212_18243119.jpg
(『シルクロード1 中国・ソ連・アフガニスタン』表紙より引用/タイトルの書体とかもいい感じです)

本のタイトルから、もうピンときている方もありますよね。きっと1970年代くらいの本に違いないと。そう、昭和48年(1973年)初版本でした。1991年よりも、1979年よりも前です。

◆ 未知の地域、東トルキスタン ◆

中央アジアのオアシス都市(ブハラ、サマルカンドなど)は、「ソ連」となっています。「中国」は西安や敦煌などまでで、ウイグル地域は紹介されていません。さらに複雑な気持ちがしたのは、アフガニスタンのページです。「中国」=18ページ、「ソ連」=20ページなのにたいして、「アフガニスタン」=41ページもあるのです。アフガニスタンはシルクロードを語るとき欠かすことのできない地域であり、以前は日本でもこのようにきちんと紹介されていたのだ、ということがわかります。

「中国」の項、解説(吉田順一さん)には次のように書かれています。
・・・「新彊ウイグル自治区と称される東トルキスタンは、今でこそ中国領土の一部として安定しているが、近年まで実に経営の困難な地方であった」「シルクロードを担って繁栄してきた東トルキスタンも、16世紀以降、東洋航路の開発につれて衰え、やがて満州族が中国に建てた清朝の支配に入る」「現在の中国はこの異民族王朝の遺産を継承し、強力な権力と科学技術を武器に力強くこの地の開発を推しすすめている」「ただ政治的な理由から、依然この地がベールにつつまれたままなのは残念であるが、、」。

e0063212_18252430.jpg
(カシュガルにて/orientlibrary)

日中の国交が正常化したのが72年ですから、当時のウイグル地域の状況などは専門家でも謎だったのでしょうね。

◆ 古いタイルが語りかける、中央アジア ◆

「ソ連」の項は、加藤九祚さんの解説です。
・・・「この広大な地域には、遠い昔からイラン系の遊牧民や農耕民とチュルク系の遊牧民が活躍し、西からはヘレニズムや古代オリエントの文化、南からはイランやインドの文化、東からは中国の文化が十字路のように交錯した」。

写真を見ると、まさに文化の十字路。なんともいえない風情があります。タイルの写真もありました。有名な建造物もなかば崩壊し、美しく(ときには興ざめなくらいに)修復された現在の様子とは印象がかなり違います。でも、崩れた姿や剥がれた壁面も、これはこれで相当に魅力的。ヒワなんて別の街という感じですが、土の街の雰囲気がいいです!!

e0063212_18275127.jpg
(『シルクロード<1> 中国・ソ連・アフガニスタン』より。サマルカンドのビビハニム(モスク)のタイルの部分をトリミングして引用)

e0063212_18281651.jpg
(1998年のビビハニム/orientlibrary)

そしてさすがに加藤先生、「フェルガナ/コーカンド」と「タジク」が紹介されているのがうれしい!「パミール高原の山中には、多くの古い風習を残した住民が隔絶して住んでおり、民俗学上の宝庫となっている」。

タジクでは陶芸の絵付けをしてる写真があり、この緑!この黄色!と熱中してしまいました。ウズベキスタンの陶器は輝くような青色が魅力なのですが、伝統的には茶や緑、黄色なども多く、どちらかというと地元の人はこの系統を好むような印象があります。

e0063212_18444289.jpg
(『シルクロード1 中国・ソ連・アフガニスタン』より。タジクの陶器の部分をトリミングして引用)

「アシュハバード」もあります。アシュハバードってどこだろう?と思ったのですが、現在のトルクメニスタンの首都ですね。イラン国境にある街で、「アナウ遺跡」「ニサ遺跡」などもあるところ。憧れのアナウには行けませんが、アシュハバードとニサにはGWに(ツアーで)行く予定です。

e0063212_18261043.jpg
(『シルクロード1 中国・ソ連・アフガニスタン』裏表紙より引用/どこかは書いてありませんでしたが、アフガニスタン?)(追記:コメントをいただきました。アフガニスタンのヘラートだそうです。土味がいい感じ。ありがとうございました)


◆ 中世の趣、アフガニスタンの景 ◆

「アフガニスタン」の解説(神阪吉雄さん)、その後の過酷な歴史を思うと複雑な思いにとらわれます。・・・「素朴で力強い人間の臭いが、きびしくかつ美しい自然のなかに、いまも毅然として残っている」「物質文明に疲れ果てた現代人たちがすでに食いつぶしてしまったものが、ここにはまだ残っているのだ」。

e0063212_18294190.jpg
(『シルクロード1 中国・ソ連・アフガニスタン』より。ヘラートのジャーミー。タイルの部分をトリミングして引用/ティムール時代の都だったへラート。行きたい)

写真を見ると、まさに解説のまま。人間臭く毅然とした人々、峻烈で圧倒的な自然、タイルが美しい建造物、土の建築が立ち並ぶカーブル。どの光景も中世に迷い込んだかのようです。そして、今となっては大変に貴重なものが多いと思います。タイルオタクには、ヘラート、マザリシャリフのタイルがなんとも魅力的でした。一冊の本から、時間と空間を超えて、シルクロードに思いを馳せることができました。
by orientlibrary | 2008-03-12 18:54 | 中央ユーラシア暮らしと工芸