イスラムアート紀行

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カスバに咲く陶の花 アルジェリアのタイル

前回、私のタイル「3大哀感」を涙ながらに(笑)ご紹介しましたが、日本ではタイル装飾のある建築として知名度が最も高いのは「アルハンブラ宮殿」ではないかと思います。(なんと私、行ってません。どうも優先順位が後になってしまうんですよね、、。)次いでガウディの作品、あるいはモロッコ<などでしょうか。

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アルジェのモスク/モスクの年代名称等詳細不明/でも、いいですね〜、このブルーのタイル!/写真提供:「Y.Sさん」)

◆ マリーン朝、オスマン朝、ヨーロッパ ◆

装飾タイルの王道は、やはりアナトリアやイランなのですが、「マグレブ(北西アフリカ地域)とスペイン」もタイル装飾が盛んだった地域で、タイルの専門書でもかならず取り上げられています。

そんなマグレブの国、アルジェリアの装飾タイルの写真を提供していただきました。タジキスタンの記事の写真でお世話になった「Y.Sさん」です。けれども、年末年始にアルジェリアを旅行した「Y.Sさん」に写真を見せてもらうまで、私、「アルジェリアのタイル」には、まったくイメージありませんでした。

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(アルジェのモスク外観/いろいろな部位に効果的に使われているようです/写真提供:「Y.Sさん」)

私のテキストである『THE ART OF THE ISLAMIC TILE』を見ても、アルジェリアのタイルは、マグレブの章のモロッコ・マリーン朝の説明の中に小さな写真が2点あるのみです。ところが、「Y.Sさん」の写真には、ミナレットから路地の家々の壁など多彩な場所を彩るタイルがあったのです。

この地域のタイルに疎いのですが、ざっくりした印象では、モロッコのフェズの建造物が有名な「マリーン朝」、そして「オスマン朝」、さらに「>ヨーロッパ(スペイン〜フランス)」という3層のテイストを感じました。歴史的な流れとも、だいだい合致します。いろんな王朝や国が統治したんですよね。もともとはベルベル人の地域でしょうし、タイルって歴史を語りますね。

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(アルジェのモスク細部/幾何学文様と壷に入った植物の絵付けタイルのようです/写真提供:「Y.Sさん」)

首都アルジェは「カスバの女」という歌謡曲で歌われた街でもあります。そんな旅情もあわせて「Y.Sさん」の写真をお楽しみください。なお、タイルオタクのブログゆえ、タイルに焦点を合わせてトリミングしているところがあります。せっかくの構図なのに「Y.Sさん」、ゴメンね〜!そして感謝してます!ありがとう。


◆ マグレブのタイルの歴史や特徴など ◆

以下は、「イスラム建築における陶製タイル」(ギョニオル・オネイ著/多分『装飾タイル研究』だったと思います)の「4世紀から16世紀のスペインとモロッコのムーアタイル」から引用(「」内)しています。

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(アルジェのホテル「エル・ジャザイール」エントランス/色の明るさが独特です。絵柄はロココ調ともいえるような過剰感を感じます。オスマンよりもローロッパの影響でしょうか。このホテルは随所にタイル装飾があるそうです/写真提供:「Y.Sさん」)

「新しくベルベル政権の座についたアルモハッド朝族が、1147-1212年の間、スペインと北アフリカを統治した。アルモハッド時代(注:ムワッヒド朝のことだと思います)を通じて、ムーア芸術(注:ムーア人=北西アフリカのイスラム教徒)はスペイン、北アフリカ地方で開花し続けた」

「ナスル王国(1232-1492)は、彼らがキリスト教徒によってカスティリアから追放されるまで、ムーア芸術の最も印象的な作例を生み出し続けた。グラナダのアルハンブラ宮殿は、ムーア文明が到達した高度の洗練性と栄華を反映している輝かしい作例である。ナスル期の文明と芸術は、マリーン朝がそれによく似た芸術の形態を発展させた北西アフリカに反映されている。特にスペインからのムーア人陶芸家たちによって、北アフリカでなされたタイル装飾は、非常に興味深い」

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(アルジェ・カスバ地区の路地/白の壁にシックに映える絵付けのブルー&ホワイト。ファイアンスモザイクのような華やかさはありませんが、スキッとした清潔感がステキです/写真提供:「Y.Sさん」)

「ファイアンスモザイクは、ムーア芸術のうちで、最も一般的で広く用いられたタイル装飾の一つである。見事な植物文の白スタッコ装飾と合わせて用いられる。これらのタイルは優美な幾何学模様と明るい色合いで、内壁にイキイキとした外観を与えている」

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(アルジェの中央郵便局/クエンカタイル?/この郵便局は歴史のある建物でとても雰囲気が良いそうです。必見ですね!/写真提供:「Y.Sさん」)

「クエンカ技法とは、鋳型に文様の輪郭を深く彫り込み、柔らかい素地土にそれを押し当て、鋳型の彫った跡を突出した輪郭として浮き出すものである。続いてそれを焼成し、突出した輪郭によった囲まれた低い部分は、釉薬で満たされる。突出した輪郭は異なった釉薬が互いに混じり合うのを防ぐのである。クエンカタイルは、壁、階段、床、天井、座席、噴水を装飾するために用いられている」☆(注:上のタイルが「クエンカ技法」か「クエルダ・セカ技法」か判別できません。どなたかご教示いただけるとありがたいです!)

下の写真は、私がいちばん好きだったもの。ハンマームの入り口だそうです。東方イスラム圏ではタイルはあくまで権力者が作る建造物のための装飾素材。西方イスラム圏やヨーロッパは、一般の場、しかも床や階段などに使用されているのが特徴のひとつです。

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(アルジェ・カスバ地区のハンマーム入口/いろいろなタイルがつぎはぎのように使われていることが逆におもしろさになっています。ブルー&ホワイトはオスマン朝的。模様が独特/写真提供:「Y.Sさん」)
by orientlibrary | 2008-02-28 22:05 | タイルのデザインと技法