イスラムアート紀行

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「ジプシー・キャラバン」、音楽と旅を追体験!

今月12日から上映開始の『ジプシー・キャラバン』、ついに見ました。もう1回見たい。何回も見たい、味わいたい。

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イスラムタイル、中央アジア、土の建築、陶器、、私が強く惹かれる対象。どうして?自分でもわかりません。前世あのへんに住んでいたのかな、と思うしかありません。

そして、そこまで遺伝子的な感じではないけれど、強力に引き込まれるものもあります。ロマ(ジプシー)音楽、北インド音楽、カッワーリー(イスラム神秘主義の儀礼などで演奏される宗教音楽)、イスリミ(植物文様)、天幕、遊牧民、などです。う〜ん、、ぜんぶが一本の線でつながっている感じも、します。

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いちばん好きな映画を選ぶとしたら、迷わず『ラッチョ・ドローム』(トニー・ガトリフ監督)をあげます。ロマの故郷といわれるインド・ラジャスターンからひたすら西へ。トルコ、ハンガリー、ルーマニア、スロバキア、フランス、スペインへと、ロマが通った流浪の道筋を追い、それらの地で今を生きるロマ音楽家の演奏を聴かせる、音と映像だけのドキュメンタリー。一遍の壮大な叙事詩のような映画です。

『ラッチョ・ドローム』の映像は、ラジャスターンの砂漠から始まります。乾いた大地、哀愁の歌声、鈴を鳴らして踊る少女たち。『ジプシー・キャラバン』は、私の大好きなその場面を思い起こさせるように、ラジャスターンの少年の演奏と歌から始まりました。ロマの旅の始まりです。

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しかし今回は旅といっても、アメリカの都市を巡る6週間の「ジプシー・キャラバン・ツアー」。そこでの歌や演奏が映画の第1の軸です。どの街でも満員で、観客もおおいに盛り上がっていました。

撮影開始が2001年9月下旬。映画のスタッフは、アーティストは国を出られるのか、北米に入れるのか(「彼らのほとんどはイスラム教徒」とパンフに書かれていましたが、、このあたりちょっと疑問)心配したそうです。911後のアメリカといえば、愛国主義一色という報道が多かったですが、ジプシー音楽を楽しむというシーンもあったんですね、、。

参加したメンバーは、エスマ(マケドニア/ジプシークイーンといわれる歌姫)、タラフ・ドゥ・ハイドゥ−クス(ルーマニア/『ラッチョ・ドローム』にも出演。世界で公演している人気バンド。バンドの象徴であった最長老ニコラエは02年に78歳で逝去)、マハラジャ(インド/ラジャスターン砂漠民バンド。踊りも強烈)、アントニオ・エル・ビバ・フラメンコ・アンサンブル(スペイン/アントニオの踊り、ファナの歌唱!)、ファンファーラ・チョクルリーア(ルーマニア北東部/超高速の金管ブラスバンド)。

私はやはりマハラジャに惹かれました。エスマも凄かったです。ファナの声は大地です。ほんのさわりですが、ここ(公式サイト)で聴けます。


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映画の第2の軸は、出演音楽家の故郷の村や町でのふだんの暮らしの映像。これがいいんです!!ジャスミン・デラル監督(イギリス生まれ、子ども時代を南インドの村で祖父母と過ごす)が彼らの住む地へ行き、個人的な生活を撮られることをためらっていたアーティストと信頼関係を築きながら、飾りのない素顔と心にしみる語りを引き出しています。彼らの音楽の根っこにあるものが、こみあげるように伝わってきました。

覚えている言葉(あいまいですが、主旨として)、印象に残った言葉をいくつかあげてみます。
 「北インドの旋法(ラーガ)は宝物だ。人生のすべてが詰まっている」(マハラジャ)
 「47人の子どもをひきとって育てたの。私は世界一幸せな母親よ」(エスマ)
 「母親は120キロもあって踊る姿は大聖堂(カテドラル)のようだった」(ファナ)
 「素敵な女性との出会いをいつも考えている。演奏しているとき以外は」(ニコラエ)
 「音楽は稼げる。それは大切なことさ。そして楽しい。楽しくないとできないんだ」(チョクルリーア:CDの売上げで故郷の村に電気をひいたそうです)

第3の軸は、ツアーバスでの様子や6週間の旅で生まれるアーティストたちの友情です。4カ国から集まった見知らぬもの同士、最初はぎこちないところもあったのですが、後半の一体感はとても興味深いものでした。「私たちはつながっている」と誰もが体感、実感していくのです。

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つながっていると感じるもの、それは北インドの旋法(ラーガ)。マハラジャの音楽は彼らのなかの誰にとっても親しみのあるものであり、皆が好き。音楽素人の私が聴いていても、各地の音楽の底流にラーガ的なものを感じました。

インド・ラジャスターン、ロマの故郷、そのラーガに皆が共振する、というのは、できすぎたエンディングといえるかもしれません。でも、演出でもなくやらせでもない、自然なものだったと思います。それがすごくよかった。見てよかったと思いました。

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ニコラエの葬式の場面、超絶バイオリンのカリウの演奏は音楽を超えていました。涙ボロボロでした。たくさんの感情がわきおこる映画でした。私も、ラジャスターンからアンダルシアまで、旅をしたような気がします。

*写真はいずれも、映画のチラシ、パンフレットなどから引用しています。

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by orientlibrary | 2008-01-26 00:10 | 美術/音楽/映画