イスラムアート紀行

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多様な社会、奥深い文化。「中央ユーラシアの現在」を聞く

中央ユーラシア、、私の好きなタイルがある「中央アジア」も含む広い地域。けれども、日本ではあまり知られておらず関連情報も少ない地域。にもかかわらず、憧憬や旅情を強く感じる地域。そんな中央ユーラシアについてのシンポジウムが、先日、和光大学で開催されました。

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◆ 大きな変化の波の中にある 中央ユーラシア ◆
タイトルは「『シルクロード』は、いま 〜中央ユーラシアの現在をさぐる〜」。括弧付きのシルクロードが、ちょっと意味深です。私も、イスラムや中央アジアについて話すとき、つい「シルクロード」という言葉の“魔力” に頼ってしまいます。

けれども、浪漫な響きに満ちた「シルクロード」も、大きな社会変化の波の中にあります。豊富な天然資源、経済格差、イスラーム復興等、断片的に聞こえてくる当地域の現状。中央ユーラシアの今に焦点を当てたシンポジウムは、貴重な機会です。そして期待通り、第一線の研究者の方々のホットな報告を聞くことができました。中央アジアの写真とともに、ご紹介したいと思います。

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その前に、、「中央ユーラシア」とは、どの地域を指すのでしょうか。『中央ユーラシアを知る事典』(平凡社)より引用させて頂きます。

** 「現代の地域区分に従っていえば、クリミア半島、ヴォルガ・ウラル地方、カフカース、中央アジア、アフガニスタン、中国新彊(東トルキスタン)、西シベリアなどの諸地域を含む地域概念として使用する」
** 「現在ここにはいくつもの国境線が走っているが、歴史を振り返ってみれば、そこに明確な境界線があったわけではない。中央ユーラシアの境域は歴史を通して拡大と縮小を繰り返してきたことに留意しておきたい」 

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◆ 中国の観光開発と「シルクロード」、新彊ウイグル自治区観光計画 ◆
シンポジウムは、東から西へというプログラムの流れで、「シルクロードと中国の観光開発」(小林正典さん)からスタートしました。

驚いたのは 、中国の観光客数が2006年には約1億2千万人へと急伸しており、うち外国人は2,221万人であること。レジャーや余暇は今後、中国経済の中で大きな位置を占めるようになり(観光業は国家の基幹産業と明言)、2015年には海外からの客は延べ1億人と世界一の海外観光客受入国になるとの予測があること(世界観光機関)。国内観光客28億人超と合わせ、観光客総数はなんと30億人前後になるとみられているというのです。

中央ユーラシアとの関連では、もちろん「西部大開発」ですよね。気になります。「経済的に劣後する西部地域の活性化を目的とする21世紀の最重要政策」とのことですが、私の好きな東トルキスタン(新彊)も含まれるこの地域。「西気東輸」「西電東送」「南水北調」って、、西部の豊かな天然資源を中心地へ動かすプロジェクトが多いんですね、、。

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最近は中国も環境保全には積極的になってきたようなんですが、国をあげてダイナミックに動く中国だけに、ウイグルなどの人びとの暮らしや文化がどう変化していくのか、気になってしまいます。ちなみに「新彊ウイグル自治区観光計画目標」では、「シルクロード」が文化旅行のブランドとしておおいに活用されているようです。

「1つのブランド(シルクロード)、2つの優れた商品、3本の環線、4つの育成、6大製品、11の都市」などが具体的に示されているのにびっくり。しっかりマーケティングです。でも、数字で目標を作って表現していくのは社会主義テイストかな。

小林先生は、このような観光地開発について、環境保全とのジレンマや民族言語の衰退などの影響を指摘。「民族自治地方の経済計画は、あくまで国家計画の指導の下に位置づけられており、住民の声は反映されにくい」ことを課題にあげられました。

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◆ 「中央アジアのイスラーム復興」は次回!? ◆
シンポジウムは、「イスラーム復興の潮流とその行方」、「タジキスタンの光と陰」、「アルメニアの内と外」続きます。興味深いお話が多いので、また書いてみたいと思います。
by orientlibrary | 2007-12-07 11:53 | 中央アジア5カ国