イスラムアート紀行

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堪能!正倉院宝物、美の世界

秋晴れの奈良公園。朝8時半の奈良国立博物館には、すでにたくさんの人が並んでいました。シニア層がメインですが、若い人もちらほら。朝早くからがんばったね!

秋の「正倉院展」、今回で第59回。長い歴史があるんですね。なかなか見る機会がなかったのですが、今回は関西の用事と時期が合い、初の見学がかないました。人混みを危惧していましたが、人の少ないところを選びながら回ると意外と大丈夫。しっかり見ることができました。
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ポスターのキービジュアルになっている「紫檀金鈿柄香炉」(看板の写真をご参照ください)の花模様もなんともいえず優雅だったのですが、今回は「思わず身を乗り出した度」の高いもの3つをご紹介したいと思います。(展示品の写真は展覧会図録からの引用です。いずれも部分をクローズアップしたものであり全体ではありません)

◆ 花氈 フェルトの敷物 ◆
「花氈(フェルトの敷物)」=舶来品だそうですが、私のイメージする天平って、こういう感じなんです。大きく循環する唐花文の力強さ。どこかエキゾチックで優美かつ大胆。フェルトの質感にも思わず引き込まれました。

「羊や山羊の毛を重ね合わせアルカリ性溶液を加えて巻き締めるなどして圧力をかけ、繊維を絡み合わせて密度を高めてフェルト状にする、縮絨と呼ばれる工程を経て、文様部分にくぼみを付けて色染めの毛を嵌め込んだ後、再度本格的に圧縮したと考えられる」(『展覧会図録』解説より。以下「 」内は同様)。
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◆ 羊木臈纈屏風 ◆
「羊木臈纈屏風」(ろうけつ染めの屏風)=この羊さん、メディアでもよく紹介されていますよね。「(巻いた角を持つ羊の)形はササン朝ペルシアの羊文様に通じ、胴部の三角文はトルファンのアスターナ出土の錦に類例がある」。これ!これですよ〜!ササン朝とか、トルファンとか、正倉院はこれでなくっちゃ!!

樹木、草の緑青色もインパクトがあり、猿・鳥・羊なども配されていて、見ていて楽しいのもいいですね。
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◆ 紫檀木画箱 ◆
華麗な文様や手の込んだ手法が際だつ箱類。私は「紫檀木画箱」(モザイクの箱)の端正さに惹かれました。ツゲを材料に紫檀の薄板を貼り、絵画文木画の文様を表しています。象牙、緑に染めた鹿の角、ツゲなどの材をそれぞれ棒状に組み合わせて作ったブロックを1ミリメートルの厚さに切り離し、これを紫檀地に陥入するのだそうです。

模様が魅力的!「飛鳥(ヤツガシラ)を中心に置いた八花形花文」の回りに、花や雲や鳥が流麗に舞います。ツゲの褐色に角の緑、象牙の白がアクセントになり、優美な曲線の文様がイキイキして見えます。
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◆ 正倉院と東大寺 ◆
正倉院にも行ってみました。校倉作り、高床式の巨大な木造の8世紀中頃の倉庫建築。ずっしりした重量感があります。この中に、夢のような宝物が満載されていたと思うとクラクラしますね!(ここも人が多く、引きがないので写真横が入りませんでした。)
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そして東大寺。東大寺が蔵した財物や什宝類を集めた蔵であった正倉院。このような蔵がいくつもあったとか。奈良時代ってスゴイなあ。勢いがありますね。
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◆ 東アジアの文化の粋、旺盛な文化受容 ◆
e0063212_2045406.jpg「正倉院宝物を見れば、それが当時の世界文化を反映したものであることがわかる」。唐、新羅、ササン朝ペルシア、中央アジア、、。

「染織品や器物には中国や西域起源の器形や装飾モチーフも多く見られ、まさに当時の国際性豊かな文化をかいま見る思いがする」。

図録の解説文はこう締めくくります。「私たちは正倉院宝物を通して、天平期の文物の、そして8世紀の東アジアの文化の粋を目の当たりにすることができる。わが天平人の旺盛な文物受容と再生産、すなわち文化の力がそこには感じられる」。


e0063212_2046192.jpg毎年たくさんの人が訪れる正倉院展。現代人にとっても、何か心が引き寄せられるものがあるのでしょう。自然の材料から創り出す工芸美の極致、遠い異国の文化の香り。時を超えた、輝くような美の世界を見られたことに、感謝したい気持ちです。

(人の絵は「墨絵段弓」より。なんと数センチの弓身に芸人などがぎっしりと描かれています。)
by orientlibrary | 2007-11-02 00:09 | 日本のいいもの・光景